説明

配線基板、実装基板および実装構造体、並びに配線基板の製造方法

【課題】本発明は、スルーホール導体が括れ部を有することによって、そのスルーホール導体によって囲まれる領域に充填される絶縁体が熱膨張を起こしても、スルーホール導体に加わる応力を分散させることによって、スルーホール導体が破壊されず、スルーホール導体の電気的接続を安定にすることが可能な配線基板、実装基板及び実装構造体、並びに配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】厚み方向に貫通するスルーホールSを有する配線基板5であって、スルーホールSの内壁面に沿って形成されるスルーホール導体10と、スルーホール導体によって囲まれる領域Tに充填される絶縁体13と、を備え、スルーホール導体10は、厚み方向の途中に括れ部10Mを有しており、スルーホール導体10を断面視して括れ部10Mの両端の高さ位置が厚み方向にずれていることを特徴とする配線基板5。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種オーディオビジュアル機器や家電機器、通信機器、コンピュータ機器およびその周辺機器などの電子機器に使用される実装基板およびそれに使用される配線基板に関するものである。本発明はさらに、実装基板に半導体素子を実装した実装構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)等の半導体素子を実装する実装基板として、樹脂製の実装基板が用いられている。また、近年においては、LSIの処理能力向上に伴い、実装基板の端子の数も増加傾向にある。かかる実装基板には、実装基板の端子の数を増加させつつ実装基板の剛性を維持するために、剛性の優れた配線基板が使用されている。
【0003】
配線基板は、上下方向に貫通する円柱状のスルーホールと、該スルーホールの内壁面に沿って形成される円筒状のスルーホール導体と、スルーホール導体によって囲まれる領域に充填される絶縁体と、を備えている。スルーホールを微細にし、スルーホール導体の数を増やすことによって、実装基板の端子の数を増加することができる。
【0004】
スルーホールは、図12に示すように、配線基板5Xに対しドリル孔あけ加工を施すことによって形成することができ、スルーホール導体10Xは、スルーホールSXの内壁面に対しメッキ法を用いて形成することができる。また、絶縁体13Xは、スルーホール導体10Xによって囲まれる領域に熱硬化性樹脂を充填し、熱硬化することで形成することができる(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−93247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述した特許文献1に記載の配線基板は、絶縁体が円柱状であって、スルーホール導体と絶縁体との熱膨張率が異なるため、外部から配線基板に熱を加えると、配線基板及び絶縁体が上下左右に熱膨張を起こし、スルーホール導体に応力が加わり、スルーホール導体が破壊されることがある。特に、スルーホール及びスルーホール導体が微細に形成された配線基板においては、スルーホール導体の破壊が起き易く、スルーホール導体の電気的接続が不安定になり、製品不良が発生し、製造歩留まりが低下するといった問題があった。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであって、絶縁体が熱膨張を起こしても、スルーホール導体に加わる応力を分散させることによって、スルーホール導体が破壊されず、スルーホール導体の電気的接続を安定にすることが可能な配線基板、実装基板及び実装構造体、並びに配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の配線基板は、厚み方向に貫通するスルーホールを有する配線基板であって、前記スルーホールの内壁面に沿って形成されるスルーホール導体と、前記スルーホール導体によって囲まれる領域に充填される絶縁体と、を備え、前記スルーホール導体は、厚み方向の途中に括れ部を有しており、前記スルーホール導体を断面視して前記括れ部の両端の高さ位置が厚み方向にずれていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の配線基板は、前記括れ部に沿ったスルーホール導体の外周が、楕円形であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の実装基板は、前記配線基板と、前記配線基板の一主面及び他主面に形成される導電層と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の実装構造体は、前記実装基板と、前記実装基板にフリップチップ実装される半導体素子と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の配線基板の製造方法は、基板の一主面に向けてレーザー光を照射して、前記基板に凹状の第1開口部を形成する工程と、前記基板の他主面であって、平面視して前記基板の前記第1開口部と一部重なる位置に向けてレーザー光を照射し、前記第1開口部と接続するように凹状の第2開口部を形成する工程と、前記第1開口部及び前記第2開口部の内壁面に沿ってスルーホール導体を形成する工程と、前記スルーホール導体によって囲まれる領域に絶縁体を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、絶縁体が熱膨張を起こしたときに、スルーホール導体に加わる応力を分散させることによって、スルーホール導体が破壊されるのを効果的に防止することができ、スルーホール導体の電気的接続を安定にするこが可能は配線基板、実装基板及び実装構造体、並びに配線基板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる実装構造体の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。かかる実装構造体は、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置又はその周辺機器などの電子機器に使用されるものである。
【0014】
図1は本実施形態に係る実装構造体1の平面図、図2は本実施形態に係る実装構造体1の断面図である。本実施形態に係る実装構造体1は、実装基板2と、実装基板2に半田等のバンプ3を介してフリップチップ実装された、IC又はLSI等の半導体素子4と、を含んで構成されている。また、実装基板2は、配線基板5と、配線基板5の一主面及び他主面に積層される導電層6と、絶縁層7と、を含んで構成されている。
【0015】
かかる配線基板5は、多数の単繊維8を樹脂で含浸してなる繊維層9を複数層積層した基材から成るとともに、上下方向に貫通するスルーホールSが形成されている。また、スルーホールSは、上方に向かって開口する凹状の第1開口部S1と、下方に向かって開口する凹状の第2開口部S2とを有し、第1開口部S1と第2開口部S2とを接続するとともに、平面視して第1開口部S1の中心と第2開口部S2の中心軸がずれて形成されている。さらに、スルーホールSの内壁面に沿ってスルーホール導体10が形成されている。かかるスルーホール導体10は、厚み方向の途中に括れ部10Mを有しており、スルーホール導体10を断面視して前記括れ部10Mの両端の高さ位置が厚み方向にずれて形成されている。
【0016】
以下に、配線基板5に積層される導電層6及び絶縁層7について説明する。導電層6は、所定の電気信号を伝達する機能を備えたライン状の信号線路6aと、半導体素子4を共通の電位、例えばアース電位にする機能を備えた平板状のグランド層6bとを含んでいる。また、信号線路6aは、グランド層6bに対して、絶縁層7を介して対向するように配置されている。また、導電層6は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル又はクロム等の金属材料からなる。
【0017】
絶縁層7は、接着層7aとフィルム層7bとから構成されている。フィルム層7bは、接着層7aを介して配線基板5に対して貼り合わされている。接着層7aは、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂等が使用される。なお、かかる熱硬化性樹脂としては、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、シリコン樹脂又はビスマレイミドトリアジン樹脂のうち少なくともいずれか一つを使用することができる。熱可塑性樹脂としては、半田リフロー時の加熱に耐える耐熱性を有する必要があることから、構成する材料の軟化温度が200℃以上であることが望ましく、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリフェニレンエーテル樹脂等を使用することができる。
【0018】
フィルム層7bは、配線基板5の平坦性を確保するために精密に厚さが制御されている。また、フィルム層7bは、弾性変形可能であって、耐熱性と硬さに優れた特性の材料であることが望ましい。この様な特性を有するフィルム層7bとしては、例えば、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂又は液晶ポリマー樹脂等を用いることができる。なお、フィルム層7bの厚みは、例えば1μm以上20μm以下となるように設定されている。
【0019】
絶縁層7は、配線基板5及び導電層6に対して積層し、例えば加熱プレス装置を用いて加熱しながら加圧した後、冷却することによって硬化する。また、絶縁層7は、厚み寸法が例えば1μm以上10μm以下となるように設定されている。
【0020】
絶縁層7には、その上下方向を貫くビア導体11が形成されている。かかるビア導体11は、上下位置の異なる導電層6同士を電気的に接続するためのものである。かかるビア導体11は、配線基板5の一主面側から実装基板2の一主面側(配線基板5の他主面側から実装基板2の他主面側)に向けて幅広な逆テーパー状に形成されており、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル又はクロム等の導電材料から成る。
【0021】
次に、配線基板5について詳述する。図3は、配線基板5の繊維層9に対応するA部分を拡大した断面図である。図3に示すように、繊維層9は、配線基板5の剛性を良好に維持するものであって、単繊維8が多数敷き詰められて設けられている。
【0022】
繊維層9を構成する一方向に配列された多数の単繊維8は、繊維層9の一端から他端にまで延在されている。単繊維8は、例えばポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂又は全芳香族ポリエステル樹脂等の低熱膨張樹脂から成る。かかる単繊維8の熱膨張率は、繊維の長手方向(X方向)に直交する断面方向(Z方向)の熱膨張率が、繊維の長手方向(X方向)の熱膨張率より大きい。その単繊維8の断面方向(Z方向)の熱膨張率は、40ppm/℃以上120ppm/℃以下であって、単繊維8の長手方向(X方向)の熱膨張率は、−10ppm/℃以上10ppm/℃以下である。なお、熱膨張率は、JISK7197に準ずる。また、単繊維8は長尺状に形成されており、その断面方向(Z方向)の断面が円形であって、その直径は例えば3μm以上15μm以下に形成されている。
【0023】
また、X方向に沿って配列される繊維層9の数と、Y方向に沿って配列される繊維層9の数は、一致していることが好ましい。繊維層9を構成する単繊維8は、長手方向の熱膨張率と断面方向の熱膨張率が異なるため、繊維層9をX方向又はY方向の一方に多く偏って配置すると、配線基板5に外部から熱が加えた際に、配線基板5が歪んでしまうことがある。そのため、X方向に沿って配列される繊維層9の数とY方向に沿って配列される繊維層9の数を近づけることによって、熱膨張の際に配線基板5が歪むのを抑制することができる。
【0024】
また、繊維層9に対する単繊維8の体積比率が、30体積%以上80体積%以下に設定されている。繊維層9に対する単繊維8の体積比率が30体積%以上だと、繊維層9に含有される単繊維8が十分に確保され、単繊維8の優れた剛性が繊維層9に影響を及ぼし、配線基板5全体の反りを少なくすることができる。また、繊維層9に対する単繊維8の体積比率が80体積%を超えると、繊維層9を作製する際に、単繊維8同士の間に空気が多く混入することがある。気泡が多いと、樹脂の硬化後は、その気泡が空隙となって、空隙に導電層等から導電材料が析出し、配線基板5の電気的信頼性が低下する。そのため、繊維層9に対する単繊維8の体積比率を80体積%以下にすることで、配線基板5内の気泡を低減することができる。
【0025】
繊維層9に含まれる樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂又はポリフェニレンエーテル樹脂等から成る。なお、樹脂に多数のフィラー12が含有されていても構わない。フィラー12は、球状であって、フィラー12の径は、例えば0.05μm以上6μm以下に設定されており、熱膨張率は、例えば−5ppm/℃以上5ppm/℃以下である。なお、フィラー12は、例えば酸化珪素(シリカ)、炭化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム又は水酸化アルミニウム等から成る。
【0026】
配線基板5には、基材を厚み方向に貫通するスルーホールSが形成されている。かかるスルーホールSには、導電性を有する銅めっき等からなるスルーホール導体10が形成されている。また、配線基板5の厚み方向の厚みは、例えば100μm以上1200μm以下に設定されている。
【0027】
図3は、スルーホールS及びスルーホール導体10の拡大断面図である。また、図4は、スルーホールS及びスルーホール導体10の概観斜視図である。図3又は図4に示すように、スルーホールSは、第1開口部S1及び第2開口部S2を有している。スルーホールSは、レーザー装置を用いて、配線基板5の上面及び下面に対してレーザー光が照射され、配線基板5の一部分を刳り貫くことによって形成される。また、第1開口部S1及び第2開口部S2の開口径は、例えば20μm以上250μm以下に形成されている。なお、開口径は、配線基板5の上面又は下面に沿って平行に配線基板5を切断したときのスルーホールSの直線距離である。なお、第1開口部S1と第2開口部S2との接続箇所は、楕円状に形成されている。
【0028】
第1開口部S1と第2開口部S2との相対位置は、第1開口部S1の中心軸R1と第2開口部S2の中心軸R2との間の距離が、例えば10μm以上開口径の1/2以下ずれた関係となっている。なお、中心軸とは、配線基板の上面又は下面に対して垂直な直線のうち、レーザー光によって刳り貫かれた領域の中心を通過する直線である。
【0029】
スルーホール導体10は、スルーホールSの内壁面に沿って形成されており、括れ部10Mを有している。括れ部10Mは、スルーホール導体10を断面視して、スルーホール導体10の側壁10aに形成される凹部D(第1凹部Da、第2凹部Db)を含んでいる。かかる括れ部10Mは、凹部Dを端部とするとともに、配線基板の上面又は下面に対して傾斜したスルーホール導体10Mの一部である。なお、スルーホール導体の断面とは、中心軸R1(中心軸R2)に平行であって、中心軸R1(中心軸R2)を通過する面である。
【0030】
また、括れ部10Mの端部の高さ位置、すなわち凹部Dの高さ位置は、配線基板の厚み方向にずれて形成されている。図4に示す括れ部10Mの外周は、楕円状に形成されているが、スルーホール導体10を断面視して、スルーホール導体10の側壁10aに形成される凹部D(第1凹部Da、第2凹部Db)の高さ位置がずれているのであれば、楕円状でなく、例えば多角形状や、外周が蛇行するような形状であっても構わない。
【0031】
ここで、括れ部10Mの両端(第1凹部Da、第2凹部Db)を通る直線L1は、配線基板の上面又は下面に沿った直線L2に対して、傾斜角度AGが45°以上135°以下(つまり配線基板の上面又は下面に平行な面に対して±45°以内)となるように設定されている。傾斜角度AGが45°未満の場合、傾斜角度が緩やかであるため、後述するようにスルーホール導体に印加される応力の緩和が不十分である。一方、傾斜角度が135°を超える場合も、傾斜角度が緩やかとなり、スルーホール導体に印加される応力の緩和が不十分となる。なお、スルーホール導体10は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル又はクロム等の導電材料から成り、配線基板5の主面又は他主面に形成された導電層6同士を電気的に接続している。
【0032】
また、スルーホール導体10は、括れ部10Mを有することによって、配線基板5からスルーホール導体10を上方又は下方に抜けにくくすることができる。その結果、スルーホール導体10がスルーホールSの内壁面から剥離しにくく、スルーホール導体10の電気的接続を安定にすることができ、製造歩留まりを向上させることができる。
【0033】
スルーホール導体10によって囲まれる領域Tには、配線基板5の平坦性を良好にするために絶縁性の樹脂からなる絶縁体13が充填されている。絶縁体13は、スルーホール導体10が括れ部10Mを有することによって、絶縁体13の側壁13Mがスルーホール導体10の内壁面に沿って湾曲した形状となる。
【0034】
ここで、スルーホール導体の破壊について説明する。スルーホール導体の破壊について調査解析を行った結果、スルーホール導体の破壊は配線基板の熱膨張量とスルーホール導体の熱膨張量の差が大きくなると発生しやすいことが判明した。配線基板が厚み方向に熱膨張を起こすと、スルーホール導体は厚み方向に引き伸ばされるように応力が加わり、スルーホール導体が破壊されることがある。図12に示す特許文献1に記載の配線基板は、絶縁体が円柱状であって、スルーホール導体は円筒状であるため、配線基板の厚み方向の熱膨張に対して、スルーホール導体が受ける応力は、配線基板の厚み分の長さに加わることになる。本発明の実施形態に係る配線基板においては、スルーホール導体が括れ部を有することによって、スルーホール導体の長さを配線基板の厚み分の長さよりも長くすることができる。そのため、配線基板の厚み方向の熱膨張に対して、スルーホール導体が受ける応力を、括れ部にも加えることによって、スルーホール導体が受ける応力を分散させることができる。この結果、スルーホール導体が受ける単位長さ当りの応力を小さくすることができ、スルーホール導体が破壊されるのを効果的に防止することができる。このことによって、本発明の実施形態に係る配線基板は微細なスルーホール導体を形成した場合でも、加熱冷却の繰り返しによるスルーホール導体の破壊が抑制され、基板の信頼性が大幅に向上する。
【0035】
また、配線基板の厚みを変えることなく、スルーホール導体に括れ部を設け、スルーホール導体の長さを長くしたことによって、配線基板が厚み方向に熱膨張を起こしても、スルーホール導体が受ける応力を緩和することができ、スルーホール導体の破壊を抑制することができる。
【0036】
また、前記括れ部に沿ったスルーホール導体の外周を楕円形にしたことによって、括れ部の周囲とスルーホール導体との接触面積を大きくすることができ、括れ部の周囲が熱膨張を起こしても、スルーホール導体が括れ部の周囲から剥離しにくく、スルーホール導体の電気的接続を安定にすることができる。
【0037】
また、絶縁体13をスルーホール導体10によって囲まれる領域Tに充填することによって、スルーホールSの直上又は直下にビア導体11を形成することができ、実装基板2の小型化に寄与することができる。
【0038】
また、絶縁体13には、非金属無機フィラー14が含有されている。非金属無機フィラー14は、球状であって、非金属無機フィラー14の径は、例えば0.05μm以上6μm以下に設定されており、熱膨張率は、例えば−5ppm/℃以上5ppm/℃以下である。なお、非金属無機フィラー14は、例えば酸化珪素(シリカ)、炭化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム又は水酸化アルミニウム等から成る。
【0039】
絶縁体13に低熱膨張である非金属無機フィラー14が含有されていることによって、絶縁体13全体の熱膨張率を下げることができる。その結果、スルーホール導体10の内側からスルーホール導体10に向かって絶縁体が膨張及び収縮するのを抑制することができ、スルーホール導体10が破壊されるのを有効的に防止することができる。
【0040】
また、半導体素子4には、絶縁層7の熱膨張率と近似する材料が使用され、例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム砒素リン、窒化ガリウム、炭化珪素等を用いることができる。なお、半導体素子4の厚み寸法は、例えば0.1mmから1mmのものを使用することができる。
【0041】
上述したように本実施形態によれば、スルーホール導体10が括れ部10Mを有することによって、スルーホール導体10によって囲まれる領域Tに充填される絶縁体13の形状を湾曲させ、外部から加わる熱に起因して、絶縁体13が膨張しても、スルーホール導体10に加わる応力を分散させることができ、スルーホール導体10の破壊を抑制することができる。その結果、スルーホール導体10の電気的接続を良好に維持することができ、電気的信頼性に優れるとともに製造歩留まりを向上させることが可能な配線基板、実装基板及び実装構造体、並びに配線基板の製造方法を提供することができる。
【0042】
次に、上述した実装構造体1の製造方法について、図6から図9を用いて説明する。
【0043】
まず、実装構造体1を作製する前段階として、基板としての配線基板5を準備する。
【0044】
配線基板5は、以下の工程を得て作製することができる。まず、図6(a)に示すように、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂から成る単繊維8に、例えばエポキシ樹脂を含浸させた繊維シート15を、作製予定の配線基板5の厚みに合わせて複数枚準備する。図6(a)においては、繊維シート15を6枚準備し、X方向に沿って単繊維8が配列された繊維シート15と、X方向と直交するY方向に沿って単繊維8が配列された繊維シート15とを交互に積層するように配置する。なお、繊維シート15の枚数は、配線基板5の厚みに合わせた準備するので6枚に限定されない。また、繊維シート15は、熱硬化後に、繊維層9として機能する。
【0045】
次に、図6(b)に示すように、繊維シート15の端部が一致するようにして、重ね合わせる。そして、図6(c)に示すように、重ね合わせた繊維シート15に、例えば加熱プレス機を用いてエポキシ樹脂が熱硬化し、繊維シート15同士を接着させることで、繊維層9を複数層積層してなる配線基板5を作製することができる。なお、配線基板5の厚みは、例えば100μmから1200μmに設定されている。
【0046】
次に、作製した配線基板5の上面に、図7(a)に示すように、例えば炭酸ガスレーザー装置や、TAGレーザー装置を用いて、レーザー光を照射し、配線基板5の一部を刳り貫くことによって、凹状の第1開口部S1を形成する。なお、第1開口部S1を形成するための、レーザー光の強度は、例えば1パルスあたり2μJ以上100mJ以下であって、照射する時間は、例えば1パルスあたり20n秒以上1000n秒以下である。
【0047】
さらに、図7(b)に示すように、配線基板5の下面であって、第1開口部S1の中心軸R1からずれた位置に対して、レーザー光を照射し、凹状の第2開口部S2を形成する。かかる第2開口部S2の形成方法は、第1開口部S1の形成方法と同様の方法を用いる。このようにして、配線基板5を上下方向に貫通するスルーホールSを形成することができる。なお、スルーホールSは、第1開口部S1と第2開口部S2の接続箇所が楕円状となる。
【0048】
そして、図7(c)に示すように、無電界めっき等により、配線基板5の表面にメッキを被着させ、スルーホールSの内壁面にスルーホール導体10を形成する。スルーホール導体10は、第1開口部S1及び第2開口部S2の内壁面に沿って形成される。なお、スルーホール導体10によって囲まれる領域Tは、上下方向に貫通している。
【0049】
次に、図8(a)に示すように、スルーホール導体10によって囲まれる領域Tに、例えばポリイミド等の樹脂を充填し、熱硬化することによって、絶縁体13を形成する。なお、絶縁体13を構成する樹脂には、予め非金属無機フィラー14を混ぜ合わせておくことが好ましい。絶縁体13に非金属無機フィラー14が含有されていることで、絶縁体13全体の熱膨張率を下げることができ、絶縁体13の熱膨張を抑制することができる。
【0050】
さらに、図8(b)に示すように、絶縁体13の直上及び直下を被覆するように、従来周知の蒸着法、CVD法又はスパッタリング法等によって、導電層を構成する材料を被着させる。
【0051】
次に、図8(c)に示すように、配線基板5の一主面及び他主面に、レジストを塗布し、露光現像を行った後、エッチング処理をして、グランド層6bを形成する。さらに、図9(a)に示すように、グランド層6b上に、ポリイミド樹脂等を介してフィルム層7bを貼り合わせる。そして、例えば加熱プレス機を用いて、加熱・加圧することで、フィルム層7bを配線基板5に固着する。なお、フィルム層7bに接着させた樹脂は、硬化後に接着層7aとなる。このようにして、接着層7aとフィルム層7bとから成る絶縁層7を形成することができる。
【0052】
そして、図9(b)に示すように、絶縁層7に、例えばYAGレーザー装置又はCOレーザー装置を用いて、ビア孔Bを形成する。ビア孔Bは、絶縁層7の一主面に対して垂直方向から、絶縁層7の一主面に向けてレーザー光が照射されることによって形成される。なお、ビア孔Bは、レーザーの出力を調整することによって、上部よりも下部が幅狭な逆テーパー状に形成することができる。さらに、図9(c)に示すように、ビア孔Bに、従来周知のめっき処理を施し、導電材料を充填することによってビア導体11を形成する。
【0053】
次に、絶縁層7の上面に対して、従来周知の蒸着法、CVD法又はスパッタリング法等によって、信号線路6aを構成する材料を被着させる。そして、その表面にレジストを塗布し、露光現像を行った後、エッチング処理をして信号線路6aを形成する。信号線路6aは、絶縁層7を介してグランド層6bと対向する箇所に形成される。このようにして、実装基板2を作製することができる。
【0054】
さらに、上述した絶縁層7及び導電層6の積層工程を繰り返すことで、多層配線の実装基板も作製することができる。そして、実装基板2に対してバンプ3を介して半導体素子4をフリップチップ実装することによって、実装構造体1を作製することができる。
【0055】
なお、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0056】
図10に示すように、配線基板の断面にて、スルーホールSにおける第1開口部S1と第2開口部S2とのずれる向きを、一律同じ向きにするように形成することもできる。このように、スルーホールSの括れる傾きを、一律同じ向きにすることによって、隣接するスルーホールS同士の間を短くすることができ、単位面積当たりのスルーホール導体の数を増やすことができ、高性能で且つ小型化の配線基板を作製することができる。
【0057】
図11に示すように、スルーホールSPを、レーザー光の出力を調整して、上部から下部に向かって開口径が順次小さくなる第1開口部と、上部から下部に向かって開口径が順次大きくなる第2開口部とを接続したものであっても構わない。そして、かかるスルーホールSPの内壁面に沿って形成されるスルーホール導体10Pを断面視すると、スルーホール導体10Pの側壁が屈折して形成されるため、厚み方向に配線基板が熱膨張を起こしたとしても、スルーホール導体10Pが厚み方向に抜けにくく、スルーホールSPの内壁面からスルーホール導体10Pが剥離するのを抑制することができる。スルーホール導体10Pの破壊を防止することができ、スルーホール導体10Pの電気的接続を安定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る実装構造体の平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る実装構造体の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る繊維層を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るスルーホール導体の拡大断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るスルーホール導体の拡大斜視図である。
【図6】図6(a)乃至図6(c)は、本発明の実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【図7】図7(a)乃至図7(c)は、本発明の実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【図8】図8(a)乃至図8(c)は、本発明の実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【図9】図9(a)乃至図9(c)は、本発明の実施形態に係る配線基板の製造工程を説明する断面図である。
【図10】本発明のその他の実施形態に係る実装構造体の断面図である。
【図11】本発明のその他の実施形態に係る実装構造体の断面図である。
【図12】従来技術を説明するスルーホール導体の断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 実装構造体
2 実装基板
3 バンプ
4 半導体素子
5 配線基板
6 導電層
6a 信号線路
6b グランド層
7 絶縁層
7a 接着層
7b フィルム層
8 単繊維
9 繊維層
10 スルーホール導体
10M 括れ部
11 ビア導体
12 フィラー
13 絶縁体
14 非金属無機フィラー
15 繊維シート
S スルーホール
S1 第1開口部
S2 第2開口部
R1 中心軸
R2 中心軸
D 凹部
T 領域
B ビア孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に貫通するスルーホールを有する配線基板であって、
前記スルーホールの内壁面に沿って形成されるスルーホール導体と、
前記スルーホール導体によって囲まれる領域に充填される絶縁体と、を備え、
前記スルーホール導体は、厚み方向の途中に括れ部を有しており、前記スルーホール導体を断面視して前記括れ部の両端の高さ位置が厚み方向にずれていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板において、
前記括れ部に沿ったスルーホール導体の外周が、楕円形であることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線基板と、前記配線基板の一主面及び他主面に形成される導電層と、を備えたことを特徴とする実装基板。
【請求項4】
請求項3に記載の実装基板と、前記実装基板にフリップチップ実装される半導体素子と、を備えたことを特徴とする実装構造体。
【請求項5】
基板の一主面に向けてレーザー光を照射して、前記基板に凹状の第1開口部を形成する工程と、
前記基板の他主面であって、平面視して前記基板の前記第1開口部と一部重なる位置に向けてレーザー光を照射し、前記第1開口部と接続するように凹状の第2開口部を形成する工程と、
前記第1開口部及び前記第2開口部の内壁面に沿ってスルーホール導体を形成する工程と、
前記スルーホール導体によって囲まれる領域に絶縁体を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−54761(P2009−54761A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219594(P2007−219594)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】