配線基板の非接触搬送装置及び方法、樹脂製配線基板の製造方法
【課題】被搬送物である配線基板の帯電を防止することにより、配線基板の歩留まりを向上することができる配線基板の非接触搬送装置を提供すること。
【解決手段】本発明の非接触搬送装置は吸引部20を備える。吸引部20は、吸引面21に凹部73が設けられるとともに、凹部73の内周面にて開口するエア吹出穴81が設けられる。非接触搬送装置は、エア吹出穴81から凹部73の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、配線基板110の基板主面120を吸引面21に吸引保持して搬送する。また非接触搬送装置では、吸引部20とは別体にイオナイザを設け、イオナイザから放出されるイオンエアをエア吹出穴81から噴出するエアとして用いる。
【解決手段】本発明の非接触搬送装置は吸引部20を備える。吸引部20は、吸引面21に凹部73が設けられるとともに、凹部73の内周面にて開口するエア吹出穴81が設けられる。非接触搬送装置は、エア吹出穴81から凹部73の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、配線基板110の基板主面120を吸引面21に吸引保持して搬送する。また非接触搬送装置では、吸引部20とは別体にイオナイザを設け、イオナイザから放出されるイオンエアをエア吹出穴81から噴出するエアとして用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物である配線基板を、気流の作用を利用して搬送する配線基板の非接触搬送装置及び方法、非接触搬送装置を用いた樹脂製配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、配線基板は、複数の製造工程を経て製造され、導通検査を行う検査工程を受けた後に出荷される。また、配線基板は、製造工程が終了する度に、次の工程を行うためのラインに搬送されるようになっている。なお、従来の搬送方法としては、エア吸着穴が開口された吸着ヘッドの下面に配線基板の表面を負圧で吸着し、この状態で、配線基板を吸着ヘッドとともに搬送する方法などが提案されている。しかし、吸着ヘッドで配線基板を搬送すると、吸着ヘッドの汚れや磨耗によって生じた異物(粉塵)が配線基板に付着するなどの問題がある。
【0003】
そこで、配線基板などの被搬送物を非接触状態で吸引しながら搬送することにより、配線基板への異物の付着を少なくした搬送装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。かかる搬送装置は、搬送ヘッド、搬送ヘッドの先端面(吸引面)にて開口する気体供給孔、及び、搬送ヘッドに装着されるとともに円板部を有するノズルなどを備えている。そして、搬送ヘッドの吸引面を配線基板に接近させ、気体供給孔から供給されたエアを吸引面と円板部との間に形成されたスリットを介して外部に導出すると、エアが搬送ヘッドの外側に放射状に放出される。これにより、ノズル付近と配線基板との空間が負圧となり、配線基板が搬送ヘッドに吸引保持される。この状態において、ロボットアームなどを用いて搬送ヘッドを搬送すれば、配線基板を非接触状態で搬送することができる。
【特許文献1】特開2005−219922号公報(図1〜図5など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、放出されたエアの一部が配線基板に衝突するため、エアと配線基板との摩擦によって静電気が発生し、配線基板が帯電してしまう。このとき、配線基板の表面には周囲に浮遊している異物が付着しやすくなっており、一旦付着すると異物の除去が困難である。また、配線基板搬送後に実施される上記の検査工程では、配線基板の表面上のはんだバンプに対してプローブなどの検査用治具を当接させることにより、配線基板の導通検査を行っている。従って、はんだバンプの表面に異物が付着した状態で導通検査を行うと、プローブとはんだバンプとの間に導通しない異物が噛み込んでしまうため、本来良品であるにもかかわらず、検査工程において不良品であると判定される可能性がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、被搬送物である配線基板の帯電を防止することにより、配線基板の歩留まりを向上することができる配線基板の非接触搬送装置及び方法を提供することにある。また、第2の目的は、上記の非接触搬送装置を用いた好適な樹脂製配線基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして上記課題を解決するための手段(手段1)としては、吸引面に凹部が設けられるとともに、前記凹部の内周面にて開口するエア吹出穴が設けられた吸引部を備え、前記エア吹出穴から前記凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する非接触搬送装置において、前記吸引部とは別体にイオナイザを設け、前記イオナイザから放出されるイオンエアを前記エア吹出穴から噴出するエアとして用いることを特徴とする配線基板の非接触搬送装置がある。
【0007】
従って、上記手段1の非接触搬送装置によると、イオナイザから放出されるイオンエアをエア吹出穴から噴出するエアとして用いているため、エアの一部を配線基板の基板主面に衝突させて、エアに含まれるイオンを基板主面に接触させることができる。これにより、配線基板に帯電した静電気が中和されるため、静電気に起因する配線基板への異物の付着を抑えることができる。ゆえに、例えば搬送後の導通検査において、異物の付着に起因して配線基板が不良品であると判定されにくくなるため、配線基板の歩留まりを向上することができる。
【0008】
なお、「配線基板」は、単一製品の配線基板だけでなく、配線基板となるべき基板形成領域が平面方向に沿って複数配置された多数個取り用配線基板も含むものとする。上記配線基板の形成材料としては、セラミック、金属、半導体などの無機材料や、樹脂などの有機材料を挙げることができ、コスト性、加工性、絶縁性、機械的強度などを考慮してそれらの中から適宜選択することができる。セラミック材料の好適例としては、例えばアルミナ、ガラスセラミック、結晶化ガラス等の低温焼成材料、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素などがある。金属材料の好適例としては、銅、銅合金、鉄ニッケル合金などがある。半導体材料の好適例としては、例えばシリコンなどがある。そして、樹脂材料の好適例としては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などがある。そのほか、これらの樹脂とガラス繊維(ガラス織布やガラス不織布)やポリアミド繊維等の有機繊維との複合材料を使用してもよい。あるいは、連続多孔質PTFE等の三次元網目状フッ素系樹脂基材にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂−樹脂複合材料等を使用してもよい。特に、低コスト化などの観点からすれば、配線基板の形成材料として樹脂材料などの有機材料を選択することが好ましい。このような配線基板であれば、微細な導体層を比較的簡単にかつ正確に形成することができる。
【0009】
また、配線基板の形成材料は樹脂材料などの有機材料であることが好ましいが、特に、前記配線基板は、複数の突起電極が配置された電極形成領域を前記基板主面上に有する樹脂製配線基板であることが好ましい。その理由は、配線基板を接触状態で搬送しようとする場合に、配線基板の基板主面に形成された突起電極が吸引部に押し潰されて変形するという問題が起こり、これを解決するうえで上記手段の非接触搬送装置を採用する意義が発生するからである。また、樹脂製配線基板には静電気が溜まりやすいという問題があるため、これを解決するうえで上記手段を採用する意義が大きいからである。
【0010】
ここで、前記吸引部は、吸引面に設けられた凹部や、凹部の内周面にて開口するエア吹出穴などを有する。エア吹出穴の数は特に限定されないが、例えば2つであることが好ましい。仮に、吸引部がエア吹出穴を多数有している場合、吸引部の加工コストが高くなるという問題がある。一方、吸引部がエア吹出穴を1つしか有していない場合、エア吹出穴から凹部の内周面に沿ってエアを噴出したとしても、噴出したエアは真っ直ぐ流れる可能性が高いため、例えば旋回流などを形成することが困難になる。なお、前記吸引部の構造は特に限定されないが、例えば、金属材料からなる吸引部本体に樹脂製パッドを取り付けた構造であり、前記樹脂製パッドの正面が前記吸引面となっていることが好ましい。このようにすれば、配線基板の基板主面が吸引部の吸引面に接触したとしても、配線基板を傷付けなくても済む。
【0011】
また、上記イオナイザ(静電気除去器)としては、AC方式のものやDC方式のものが挙げられる。AC方式のイオナイザは、1本の放電針を備え、放電針に交流電圧を印加してコロナ放電を行うことにより、陽(+)イオンと陰(−)イオンとを交互に発生させるものである。一方、DC方式のイオナイザは、2本の放電針(正極側及び負極側の放電針)を備え、正極側の放電針に直流電圧を印加してコロナ放電を行うことにより、陽イオンを発生させるとともに、負極側の放電針に直流電圧を印加してコロナ放電を行うことにより、陰イオンを発生させるものである。
【0012】
ここで、前記イオナイザから前記吸引部に至るまでの機器は、導電性を付与した帯電防止材料を用いて構成されていることが好ましい。仮に、上記の機器が帯電防止材料ではない材料を用いて構成されると、エアが機器を通過する間に、エアに含まれるイオンが機器に帯電した静電気の中和に用いられてしまう。その結果、吸引部に至る頃にはエアのイオン量が減ってしまうため、エアを放出しても、配線基板に帯電した静電気を効率良く中和できない。また、上記の機器が導電性を付与しない材料を用いて構成されると、機器が帯電しやすくなる。
【0013】
なお、導電性を付与した帯電防止材料としては、金属材料や、プラスチック(ポリアミド、ポリウレタンなど)に導電性付与剤を混入させることにより導電性を付与した導電性プラスチックなどが挙げられる。ここで、導電性付与剤としては、カーボン系材料からなるもの、金属系材料からなるもの、その他の材料からなるものが挙げられる。カーボン系材料からなる導電性付与剤としては、カーボンブラック(アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラックなど)、炭素繊維(PAN系、ピッチ系)、黒鉛などが挙げられる。金属系材料からなる導電性付与剤としては、金属微粉末(銀、銅、ニッケルなど)、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウムなど)、金属繊維(アルミ、ステンレスなど)、ウィスカー(アルミ、ステンレスなど)などが挙げられる。その他の材料からなる導電性付与剤としては、ガラスビーズや合成繊維などが挙げられる。
【0014】
また、上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、吸引部の吸引面に設けられた凹部の内周面にて開口するエア吹出穴を設け、前記エア吹出穴から前記凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する方法において、前記エア吹出穴から噴出するエアとして、前記吸引部とは別体に設けられたイオナイザから放出されるイオンエアを用いることを特徴とする配線基板の非接触搬送方法がある。
【0015】
従って、上記手段2の非接触搬送方法によると、エア吹出穴から噴出するエアがイオナイザから放出されるイオンエアであるため、エアの一部が配線基板の基板主面に衝突した際に、エアに含まれるイオンが基板主面に接触する。これにより、配線基板に帯電した静電気が中和されるため、静電気に起因する配線基板への異物の付着を抑えることができる。ゆえに、例えば搬送後の導通検査において、異物の付着に起因して配線基板が不良品であると判定されにくくなるため、配線基板の歩留まりを向上することができる。
【0016】
また、上記課題を解決するための別の手段(手段3)としては、上記手段1に記載の非接触搬送装置を用いて、複数の突起電極が配置された電極形成領域を前記基板主面上に有する樹脂製配線基板を搬送する搬送工程を行うことにより、前記樹脂製配線基板を製造する方法であって、前記イオンエアに含まれるイオンを接触させて前記樹脂製配線基板に帯電した静電気を除去する除電工程を、前記搬送工程と同時に行うことを特徴とする樹脂製配線基板の製造方法がある。
【0017】
従って、上記手段3の製造方法によると、上記手段1の非接触搬送装置を用いて異物が付着しにくい樹脂製配線基板を製造することができる。ゆえに、例えば搬送工程後及び除電工程後の導通検査において、異物の付着に起因して樹脂製配線基板が不良品であると判定されにくくなるため、樹脂製配線基板の歩留まりを向上することができる。また、除電工程を搬送工程と同時に行うため、樹脂製配線基板を効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
図1に示されるように、非接触搬送装置1は、搬送用多関節ロボット2及び搬送ヘッド11を備え、被搬送物である配線基板110を気流の作用を利用して搬送するものである。
【0020】
図2に示されるように、本実施形態の配線基板110は、ICチップ搭載用のオーガニック・パッケージ(樹脂製配線基板)であり、複数の製造工程後であって検査工程前の状態を示している。配線基板110は、略矩形板状のコア基板111と、コア基板111のコア主面112(図2では上面)上に形成される第1ビルドアップ層114と、コア基板111のコア裏面113(図2では下面)上に形成される第2ビルドアップ層115とからなる。ビルドアップ層114,115は、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)からなる樹脂絶縁層と、銅からなる導体層とを交互に積層した構造を有している。また、配線基板110の基板主面120上(第1ビルドアップ層114の上面上)における複数箇所には、端子パッド116(突起電極)がアレイ状に形成され、配線基板110の基板裏面121上(第2ビルドアップ層115の下面上)における複数箇所には、BGA用パッド117がアレイ状に形成されている。さらに、端子パッド116の表面上には、複数のはんだバンプ118(突起電極)が配設されている。各はんだバンプ118には、矩形平板状をなすICチップの端子が接続されるようになっている。なお、各端子パッド116及び各はんだバンプ118からなる領域は、ICチップを搭載可能な電極形成領域119である。
【0021】
図1,図3,図4に示されるように、前記搬送ヘッド11は、前記搬送用多関節ロボット2のアーム3の先端に装着されている。搬送ヘッド11は、アーム3の先端に接続される接続板12と、4本の連結棒13を介して接続板12に連結される支持板14と、支持板14に支持される流体圧アクチュエータであるエアシリンダ15と、上端部において支持板14に連結されるとともに互いに離間した状態で下方に延びる一対の腕部16とを備えている。エアシリンダ15は、箱状をなすシリンダ本体17と、シリンダ本体17内に上下動可能に収容されたピストン(図示略)と、ピストンに連結された可動部であるロッド(図示略)とを有している。ロッドは、シリンダ本体17内にエアが供給されてピストンが下方に移動したときにシリンダ本体17の下端部から突出し、シリンダ本体17内からエアが排出されてピストンが上方に移動したときにシリンダ本体17内に後退するようになっている。また、ロッドの先端には、配線基板110を吸引する吸引部20が取り付けられている。吸引部20は、ロッドによって支持されており、吸引面21を配線基板110に向けた状態で配線基板110に対して接近及び離間するようになっている。
【0022】
また図1,図3,図4に示されるように、搬送ヘッド11は、配線基板110を位置ずれ不能に保持固定する基板保持部材181を備えている。基板保持部材181は、2本のネジ182を介して各腕部16に固定される部材本体183と、上端部において部材本体183に接続されるとともに互いに離間した状態で下方に延びる4つの接触部184とを備えている。各接触部184は、吸引面21を構成する四辺の外側から吸引部20の吸引面21を包囲するように配置されている。なお、各接触部184は、配線基板110よりも硬度が低い樹脂(本実施形態ではポリエチレン樹脂)によって形成されている。また、各接触部184は、下端部内側にそれぞれ面取り部185を有している。各面取り部185は、エアシリンダ15のロッドを後退させることで配線基板110を基板保持部材181に近づけた基板保持固定時に、配線基板110の外周縁に接触するようになっている(図24参照)。
【0023】
図5〜図8に示されるように、前記吸引部20は、上蓋部31、吸引部本体22、ノズル支持体51、ノズル本体61及び樹脂製パッド40を備えている。図9に示されるように、上蓋部31は、金属材料(本実施形態では、プラチナを含有するアルミニウム合金)によって形成され、縦35mm×横35mm×高さ6mmの略矩形板状をなしている。上蓋部31の4つの角部のうち3つの角部にはネジ挿通孔32が設けられ、残り1つの角部には第1ポート取付孔33が設けられている。また、上蓋部31の中央部には、直径7mmの第1ノズル挿通孔34が設けられている。そして、3つのネジ挿通孔32のうち2つのネジ挿通孔32と第1ノズル挿通孔34との間にはシャフト取付孔35が設けられ、残り1つのネジ挿通孔32と第1ノズル挿通孔34との間には第3ポート取付孔36が設けられている。
【0024】
図5,図6,図8に示されるように、第1ポート取付孔33には第1ポート91が取り付けられ、第3ポート取付孔36には第3ポート93が取り付けられている。また、上蓋部31の中央部には、金属材料(本実施形態ではSUJ2)によって形成されたシャフト94が取り付けられている。シャフト94は、棒状の円管部95と、円管部95の下端部に一体形成された略矩形板状の支持板96とを有している。円管部95には、第1ノズル挿通孔34に連通する貫通孔97が設けられ、円管部95の上端部には、貫通孔97に連通する第2ポート取付孔98が設けられている。さらに、第2ポート取付孔98には第2ポート92が取り付けられている。なお、各ポート91〜93は、導電性金属によって形成され、各ポート91〜93には帯電防止チューブ99が接続されている。また、支持板96の両端部には一対のネジ孔(図示略)が設けられている。従って、両ネジ孔にネジ100を挿通し、挿通したネジ100をシャフト取付孔35に螺着させることにより、シャフト94が上蓋部31に固定される。
【0025】
図10〜図12に示されるように、前記吸引部本体22は、金属材料(本実施形態ではアルミニウム)によって形成され、縦35mm×横35mm×高さ18.5mmの略直方体状をなしている。吸引部本体22には、同吸引部本体22の下面24にて開口する収容凹部25が設けられている。本実施形態の収容凹部25は、内径18mm、深さ12.5mmに設定されている。また、吸引部本体22の中央部には、直径7mmの第2ノズル挿通孔26が設けられている。第2ノズル挿通孔26は、上蓋部31の第1ノズル挿通孔34に連通するとともに、吸引部本体22の上面23及び収容凹部25の底面を貫通している。さらに、吸引部本体22において第2ノズル挿通孔26の両側には、上面23及び収容凹部25の底面を貫通する支持体取付孔27が設けられている。
【0026】
また、吸引部本体22には、上面23及び下面24を貫通する12個の集塵流路191が設けられている。各集塵流路191は、吸引部本体22における収容凹部25の外側領域に配置されるとともに、第2ノズル挿通孔26の中心軸線を基準として等角度(30°)間隔で配置されている。さらに、吸引部本体22の上面23には、エアが流通可能な共通集塵流路192が円形状に形成されている。共通集塵流路192には、吸引部本体22の内部にて個々の集塵流路191が合流するようになっている。そして、共通集塵流路192は、上蓋部31の前記第3ポート取付孔36に連通し、真空引き手段である集塵ユニット151(図22参照)に接続されている。
【0027】
図10に示されるように、吸引部本体22の4つの角部のうち3つの角部には蓋部取付穴28が設けられている。よって、前記ネジ挿通孔32にネジ29(図8参照)を挿通し、挿通したネジ29を蓋部取付穴28に螺着させることにより、上蓋部31が吸引部本体22に固定される。また、上記4つの角部のうち残り1つの角部には、前記第1ポート取付孔33に連通し、上面23及び下面24を貫通する吸着流路195が設けられている。図11,図12に示されるように、吸引部本体22の下面24には、エアが流通可能な共通吸着流路196が略正方形状に形成されている。そして、共通吸着流路196は、上蓋部31の前記第1ポート取付孔33に連通し、真空引き手段である吸着ユニット161(図22参照)に接続されている。
【0028】
図13,図14に示されるように、前記ノズル支持体51は、吸引部本体22の前記収容凹部25に収容されている。ノズル支持体51は、金属材料(本実施形態ではアルミニウム)によって形成され、直径18mm×高さ14mmの略円柱状をなしている。ノズル支持体51には、同ノズル支持体51の下面53にて開口する収容部54が設けられている。本実施形態の収容部54は、内径16mm、深さ7.5mmに設定されている。また、ノズル支持体51の中央部には、直径7mmの第3ノズル挿通孔55が設けられている。第3ノズル挿通孔55は、吸引部本体22の前記第2ノズル挿通孔26に連通するとともに、ノズル支持体51の上面52及び収容部54の底面を貫通している。さらに、ノズル支持体51において第3ノズル挿通孔55の両側には、上面52及び収容部54の底面を貫通するノズル取付孔57が設けられている。また、ノズル支持体51において第3ノズル挿通孔55の両側には、上面52にて開口するネジ取付穴56が設けられている。よって、前記支持体取付孔27にネジ30(図8参照)を挿通し、挿通したネジ30をネジ取付穴56に螺着させることにより、ノズル支持体51が吸引部本体22に固定される。
【0029】
図15〜図18に示されるように、前記ノズル本体61は、金属材料(本実施形態ではアルミニウム)によって形成され、前記吸引面21の一部を構成する下端面62を有している。また、ノズル本体61は、棒状の軸部63と、軸部63の下端部に形成された本体部64とを有している。軸部63は、直径7mm×高さ15.2mmの略円柱状をなし、第3ノズル挿通孔55、第2ノズル挿通孔26及び前記第1ノズル挿通孔34に挿入されている。なお、第1ノズル挿通孔34には、第1ノズル挿通孔34と軸部63との隙間を塞ぐOリング60(図8参照)が軸部63の上端面に接触した状態で取り付けられている。
【0030】
一方、本体部64は、直径15mm×高さ8.6mmの略円柱状をなし、ノズル支持体51の収容部54に収容されている。本体部64において軸部63の両側には、本体部64の上面にて開口するネジ取付穴65が設けられている。よって、前記ノズル取付孔57にネジ58(図8参照)を挿通し、挿通したネジ58をネジ取付穴65に螺着させることにより、ノズル本体61がノズル支持体51に固定される。また、本体部64の上端部における外周面には、高さ0.5mmの上側張出部66が突設されている。これにより、本体部64の上端部の直径が16mmとなるため、本体部64の上端部は収容部54の内側面に接触するようになる(図8参照)。一方、本体部64の下端部における外周面には、高さ1.5mmの下側張出部67が突設されている。これにより、本体部64の下端部の直径が18mmとなり、下側張出部67はノズル支持体51の前記下面53に接触するようになる(図8参照)。その結果、本体部64の外周面と収容部54の内側面との間には、空間S(図8参照)が生じるようになる。
【0031】
図15,図16,図18に示されるように、ノズル本体61の内部には、イオンエアを供給するエア流路71が設けられている。また、ノズル本体61には、エア流路71の内壁面及びノズル本体61の外周面を貫通する迂回流路72が設けられている。なお、迂回流路72を通過したイオンエアは、上記の空間Sに導かれる。
【0032】
図15,図17,図18に示されるように、ノズル本体61の下端面62には下方から見て円形状をなす凹部73が設けられている。凹部73の開口部分には、凹部73内で発生した旋回流F1(図23,図24参照)を効率良く凹部73の外部に放出するための面取り部74が設けられている。また、凹部73の中心には、断面略台形状の除塵用ノズル75が突設されている。さらに、ノズル本体61には、凹部73の内壁面76(内周面)及び前記本体部64の外周面にて開口する第1エア吹出穴81が2箇所に設けられている。各第1エア吹出穴81は、除塵用ノズル75の中心軸線を基準としたときに点対称となるように配置されており、内壁面76において凹部73の周方向に沿って開口している。各第1エア吹出穴81は、空間Sに導かれたイオンエアを凹部73内に噴出するようになっている。そして、それぞれの第1エア吹出穴81から噴出されるイオンエアは、凹部73の周方向に沿って導かれ、旋回流F1を形成するようになっている。即ち、本実施形態の吸引部20は、吸引部本体22と配線基板110との間に発生する空気流によって生じるベルヌーイ効果を利用して配線基板110を保持するようにしたベルヌーイチャックである。
【0033】
図15〜図18に示されるように、凹部73内において第1エア吹出穴81とは異なる位置には、前記エア流路71に連通する第2エア吹出穴82が設けられている。即ち、エア流路71は、第1エア吹出穴81及び第2エア吹出穴82のそれぞれにイオンエアを供給する共通の流路である。また、第2エア吹出穴82は、第1エア吹出穴81よりも凹部73の中心に近接して配置されている。具体的に言うと、第2エア吹出穴82は、除塵用ノズル75の先端にて開口するように配置されている。そして、第2エア吹出穴82は、エア流路71を流れるイオンエアを前記配線基板110の基板主面120に向けて垂直に吹き付けるようになっている。なお、第2エア吹出穴82の内径は、噴出するイオンエアによって基板主面120上の異物を除去でき、かつ配線基板110を持ち上げる力を相殺しない程度の大きさに設定されることが好ましい。仮に、第2エア吹出穴82の内径が小さ過ぎると、第2エア吹出穴82から噴出するイオンエアの勢いが小さくなり過ぎるため、イオンエアが配線基板110の基板主面120に届きにくくなる。一方、第2エア吹出穴82の内径が大き過ぎると、第2エア吹出穴82から噴出するイオンエアの勢いが大きくなり過ぎて配線基板110を持ち上げる力を相殺してしまうため、配線基板110が持ち上がらなくなる。
【0034】
図19〜図21に示されるように、前記樹脂製パッド40は、前記吸引部本体22に取り付けられ、正面(下面)が前記吸引面21となっている。樹脂製パッド40は、樹脂材料(本実施形態ではエーテル系ウレタン)によって形成され、縦35mm×横35mm×高さ2.5mmの略矩形板状をなしている。また、樹脂製パッド40の中央部には、直径18.3mmの貫通孔41が設けられている。貫通孔41は、前記本体部64の凹部73等を露出させるようになっている(図7参照)。さらに、樹脂製パッド40には、前記集塵流路191に連通する12個の集塵穴42が設けられている。各集塵穴42は、貫通孔41及び凹部73の外側領域にて開口するように配設され、凹部73を包囲するように凹部外周縁に沿って複数箇所に配設されている(図7参照)。具体的に言うと、各集塵穴42は、貫通孔41の中心軸線を基準として等角度(30°)間隔で配置されている。また、吸引面21において各集塵穴42の外側領域には、各集塵穴42を包囲する集塵防壁43が突設されている。集塵防壁43は、内径が26mmであって外径が29mmの円環状をなし、高さが1.2mmに設定されている。
【0035】
図19,図21に示されるように、吸引面21の最外周部、即ち、樹脂製パッド40の4つの角部には、吸引面21より1.5mmだけ突出した凸部44が形成されている。さらに、樹脂製パッド40には、4個の真空吸着穴45がそれぞれの凸部44にて開口するように配設されている。即ち、各真空吸着穴45は、貫通孔41及び凹部73の外側領域にて開口するように配設されている。そして、各真空吸着穴45は、樹脂製パッド40を貫通する吸着流路46に連通しており、個々の吸着流路46は、吸引部本体22の前記共通吸着流路196に合流している(図8参照)。
【0036】
なお、前記基板保持部材181の接触部184には、静電電位センサ105(図22,図23参照)が設置されている。静電電位センサ105は、接触部184内に埋設されており、接触部184の面取り部185から露出するように配置されている。つまり、静電電位センサ105は、前記配線基板110の外周縁に接触する位置に設けられている。静電電位センサ105は、配線基板110に帯電した静電気を測定して、静電気測定信号を出力するようになっている。
【0037】
次に、非接触搬送装置1のシステム構成について説明する。
【0038】
図22に示されるように、非接触搬送装置1は、加圧エアを送り出すエア供給源131を備えている。また、非接触搬送装置1は、エア供給源131と吸引部20との間を連通しうるエア供給経路を構成するエア供給流路130を備えている。エア供給流路130は、下流側において、旋回流形成経路を構成する第1エア流路140と、集塵経路を構成する第2エア流路150と、真空引き経路を構成する第3エア流路160とに分岐している。第1エア流路140は、帯電防止チューブ99(図6参照)及び第2ポート92(図5,図22のb参照)を介して吸引部20のエア流路71に連通している。第2エア流路150は、帯電防止チューブ99及び第3ポート93(図5,図22のc参照)を介して吸引部20の集塵流路191に連通している。第3エア流路160は、帯電防止チューブ99及び第1ポート91(図5,図22のa参照)を介して吸引部20の吸着流路195に連通している。
【0039】
図22に示されるように、エア供給流路130上にはエア供給バルブ132が設置されている。エア供給バルブ132は、エア供給源131の下流側に配置されており、エア供給流路130を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。エア供給バルブ132は、開状態に切り替えられた際に、下流側にエアを供給可能とするようになっている。なお、本実施形態のエア供給バルブ132は、図示しないソレノイドにより作動する電磁弁である。
【0040】
また、エア供給流路130上には、エア供給流路130内のエア圧力を一定値に調整する空気圧調整ユニット133が設置されている。即ち、空気圧調整ユニット133は、エア供給流路130を介してエア供給バルブ132及びエア供給源131と流路的に接続されている。空気圧調整ユニット133は、エアフィルタ134、圧力計135及び減圧弁136を備えている。エアフィルタ134は、エア供給バルブ132の下流側に配置されており、エア供給流路130内を通過するエアに含まれる異物を除去するようになっている。また、圧力計135は、エアフィルタ134の下流側に配置されており、エア供給流路130内を通過するエアの圧力を計測するようになっている。さらに、減圧弁136は、圧力計135の下流側に配置されており、エア供給流路130内を通過するエアの減圧を行い、減圧したエアを下流側に供給するようになっている。
【0041】
図22に示されるように、前記第1エア流路140上には、DC方式のイオナイザ141が設置されている。即ち、イオナイザ141は、前記吸引部20とは別体に設けられている。イオナイザ141は、空気圧調整ユニット133の下流側に配置されており、第1エア流路140と連通するイオナイザ本体142と、イオナイザ本体142内に突出する2本の放電針(正極側及び負極側の放電針)と、各放電針に直流電圧を印加する高圧電源とを備えている。各放電針は、直流電圧が印加された際にコロナ放電を行うことにより、先端部分の周囲にイオンを発生させるようになっている。詳述すると、正極側の放電針は、印加する直流電圧の極性が正(+)である場合に陽イオンを発生させ、負極側の放電針は、印加する直流電圧の極性が負(−)である場合に陰イオンを発生させるようになっている。そして、イオナイザ141は、イオナイザ本体142内に導かれてきたエアに発生させたイオンを混合させることにより、イオンエアを生成するようになっている。さらに、イオナイザ141は、生成したイオンエアを第1エア流路140の下流側に放出するようになっている。
【0042】
また図22に示されるように、第1エア流路140上には、電磁弁143及びエアフィルタ144が設置されている。電磁弁143は、イオナイザ141の下流側に配置されており、第1エア流路140を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。電磁弁143は、開状態に切り替えられた際に、下流側にイオンエアを供給可能とするとともに、イオンエアを適宜排気してエア圧力を減圧調整するようになっている。なお、本実施形態の電磁弁143は、単動ソレノイドによって作動する2位置、直動ノーマルクローズの電磁弁であり、後述する制御装置101から出力される制御信号に基づいて開状態に切り替えられる。また、エアフィルタ144は、電磁弁143の下流側に配置されており、第1エア流路140内を通過するイオンエアに含まれる異物を除去するようになっている。
【0043】
なお、エアフィルタ144を通過したイオンエアは、前記帯電防止チューブ99及び前記第2ポート92を介して吸引部20のエア流路71に導かれる。ここで、イオナイザ141から吸引部20に至るまでの機器は、導電性を付与した帯電防止材料を用いて構成されている。具体的に言うと、電磁弁143及びエアフィルタ144は、導電性金属によって形成されている。また、イオナイザ141と電磁弁143とをつなぐ流路、電磁弁143とエアフィルタ144とをつなぐ流路、及び、エアフィルタ144と吸引部20とをつなぐ流路は、ポリウレタンにカーボンブラックを混入させた材料からなる帯電防止チューブ99を用いて形成されている。
【0044】
図22に示されるように、前記第2エア流路150上には集塵ユニット151が設置されている。集塵ユニット151は、電磁弁152、エジェクタ153,154、サイレンサ155、逆止弁156及びエアフィルタ157を備えている。電磁弁152は、前記空気圧調整ユニット133の下流側に配置されており、第2エア流路150を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。電磁弁152は、開状態に切り替えられた際に、エジェクタ153にエアを供給可能とするとともに、エアを適宜排気してエア圧力を減圧調整するようになっている。なお、本実施形態の電磁弁152は、単動ソレノイドによって作動する2位置、直動ノーマルクローズの電磁弁であり、制御装置101から出力される制御信号に基づいて開状態に切り替えられる。エジェクタ153は、電磁弁152及びエアフィルタ157の下流側に配置されている。エジェクタ153は、吸引部20の集塵穴42近傍にあるエアを、集塵流路191、第3ポート93及びエアフィルタ157等を介して吸引するようになっている。そして、エジェクタ153に吸引されたエアは、エジェクタ154に流れるようになっている。また、エジェクタ154は、エジェクタ153、エアフィルタ157及び逆止弁156の下流側に配置されている。エジェクタ154は、集塵穴42近傍にあるエアを、集塵流路191、第3ポート93、エアフィルタ157及び逆止弁156等を介して吸引するようになっている。そして、エジェクタ154の下流側にはサイレンサ155が配置され、サイレンサ155は、エジェクタ154から流れてきたエアを排気するとともに、エアの排気音を小さくするようになっている。また、逆止弁156は、エジェクタ154とエアフィルタ157との間に配置されており、エアがエアフィルタ157からエジェクタ154に流れるようにする一方、エアがエジェクタ154からエアフィルタ157に流れるのを防止するようになっている。
【0045】
図22に示されるように、前記第3エア流路160上には吸着ユニット161が設置されている。また、第3エア流路160は、基板吸着流路158と真空破壊流路159とに分岐している。
【0046】
基板吸着流路158上には、第1電磁弁162、エジェクタ163,164、サイレンサ165、逆止弁166及びエアフィルタ167が設置されている。第1電磁弁162は、空気圧調整ユニット133の下流側に配置されており、基板吸着流路158を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。第1電磁弁162は、開状態に切り替えられた際に、エジェクタ163にエアを供給可能とするとともに、エアを適宜排気してエア圧力を減圧調整するようになっている。なお、本実施形態の第1電磁弁162は、単動ソレノイドによって作動する2位置、直動ノーマルクローズの電磁弁であり、制御装置101から出力される制御信号に基づいて開状態に切り替えられる。エジェクタ163は、第1電磁弁162及びエアフィルタ167の下流側に配置されている。エジェクタ163は、吸引部20の真空吸着穴45近傍にあるエアを、吸着流路195、第1ポート91及びエアフィルタ167等を介して真空引きするようになっている。そして、エジェクタ163に吸引されたエアは、エジェクタ164に流れるようになっている。また、エジェクタ164は、エジェクタ163、エアフィルタ167及び逆止弁166の下流側に配置されている。エジェクタ164は、真空吸着穴45近傍にあるエアを、吸着流路195、第1ポート91、エアフィルタ167及び逆止弁166等を介して真空引きするようになっている。そして、エジェクタ164の下流側にはサイレンサ165が配置され、サイレンサ165は、エジェクタ164から流れてきたエアを排気するとともに、エアの排気音を小さくするようになっている。また、逆止弁166は、エジェクタ164とエアフィルタ167との間に配置されており、エアがエアフィルタ167からエジェクタ164に流れるようにする一方、エアがエジェクタ164からエアフィルタ167に流れるのを防止するようになっている。
【0047】
図22に示されるように、前記真空破壊流路159上には、第2電磁弁168、流量調整弁169及び圧力スイッチ170が設置されている。第2電磁弁168は、空気圧調整ユニット133の下流側に配置されており、真空破壊流路159を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。第2電磁弁168は、開状態に切り替えられた際に、エアフィルタ167と吸引部20とをつなぐ接続流路にエアを供給して、その接続流路の真空度を弱めるようになっている。それとともに、第2電磁弁168は、開状態に切り替えられた際に、真空破壊流路159を流れるエアを適宜排気して減圧調整するようになっている。なお、本実施形態の第2電磁弁168は、単動ソレノイドによって作動する2位置、直動ノーマルクローズの電磁弁であり、制御装置101から出力される制御信号に基づいて開状態に切り替えられる。また、流量調整弁169は、第2電磁弁168と圧力スイッチ170とをつなぐ流路の途中に配置されており、真空破壊流路159を流れるエアを定量的に排気してそのエアの圧力が一定値となるよう減圧調整する絞り弁である。圧力スイッチ170は、流量調整弁169及びエアフィルタ167の下流側に配置されている。圧力スイッチ170は、真空破壊流路159内の圧力が所定値を超えたこと(即ち、真空破壊されていること)を契機としてオン状態となり、真空破壊信号を制御装置101のCPU102に対して出力するようになっている。
【0048】
次に、非接触搬送装置1の電気的構成について説明する。
【0049】
図22に示されるように、非接触搬送装置1は、装置全体を制御する制御装置101を備えている。制御装置101は、CPU102、ROM103、RAM104及び入出力回路等により構成されている。CPU102は、エア供給バルブ132、イオナイザ141、電磁弁143,152、第1電磁弁162及び第2電磁弁168に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。
【0050】
また、CPU102には、前記静電電位センサ105から出力された静電気測定信号が入力されるようになっている。そして、CPU102は、静電気測定信号が示す静電気の電荷の極性に基づいて、前記吸引部20によって吸引される配線基板110が正(+)に帯電しているか負(−)に帯電しているかを判定するようになっている。配線基板110が正に帯電していると判定された場合、CPU102は、イオナイザ141に駆動信号を出力し、直流電圧を印加して負極側の放電針に陰イオンを発生させる制御を行うようになっている。一方、配線基板110が負に帯電していると判定された場合、CPU102は、イオナイザ141に駆動信号を出力し、直流電圧を印加して正極側の放電針に陽イオンを発生させる制御を行うようになっている。このような制御によれば、配線基板110に帯電した静電気を確実に中和させることができる。
【0051】
なお本実施形態では、DC方式のイオナイザ141を用いているが、それに代えてAC方式のイオナイザを用いてもよい。AC方式のイオナイザは、イオナイザ本体と、イオナイザ本体内に突出する1本の放電針と、放電針に交流電圧を印加する高圧電源とを備えている。放電針は、交流電圧が印加された際に、印加する交流電圧の極性に応じて陽イオンまたは陰イオンを発生させるようになっている。この場合、CPU102は、静電電位センサ105から出力された静電気測定信号が入力されると、静電気測定信号が示す静電気の電荷量に基づいて配線基板110が帯電しているか否かを判定する。配線基板110が帯電していると判定された場合、CPU102は、イオナイザ141に駆動信号を出力し、イオナイザ141の出力を強くする制御を行う。一方、配線基板110が帯電していないと判定された場合、CPU102は、イオナイザ141に駆動信号を出力し、イオナイザ141の出力を弱くする制御を行う。このような制御によれば、配線基板110の帯電を確実に防止することができる。また、イオナイザ141が必要以上に作動することを防止することができる。
【0052】
次に、配線基板110の非接触搬送方法を説明する。
【0053】
本実施形態の配線基板110は、複数の製造工程を経て製造され、導通検査を行う検査工程を受けた後に出荷される。なお、配線基板110は、製造工程が終了する度に基板支持台171上に配置される(図23参照)。この状態において、非接触搬送装置1を用いて配線基板110を搬送する搬送工程を行う。詳述すると、搬送用多関節ロボット2のアーム3を駆動して搬送ヘッド11を下降させる。さらに、エアシリンダ15を駆動してロッドを突出させ、配線基板110の基板主面120に吸引部20の吸引面21を接近させる。
【0054】
この状態において、CPU102は、エア供給バルブ132、イオナイザ141及び電磁弁143,152に駆動信号を出力する。これにより、エア供給バルブ132及び電磁弁143,152が開状態に切り替わるとともに、イオナイザ141が作動する。その結果、エア供給源131から送り出された加圧エアが、エア供給流路130を通過して第1エア流路140上のイオナイザ141に流入する。イオナイザ141は、イオナイザ本体142内に導かれてきたエアにイオンを混合させることにより、イオンエアを生成する。そして、イオナイザ141は、生成したイオンエアをイオナイザ141の下流側に放出する。さらに、イオナイザ141から放出されたイオンエアが、第1エア流路140及び第2ポート92(図5,図22のb参照)を介して吸引部20内に流入し、ノズル本体61のエア流路71に導かれる。
【0055】
そして、エア流路71に導かれたイオンエアは、迂回流路72、空間S及び第1エア吹出穴81を順番に通過し、第1エア吹出穴81から凹部73の内周面に沿って噴出する。さらに、第1エア吹出穴81から噴出されたイオンエアは、凹部73の周方向に沿って流れて旋回流F1を形成する。その後、旋回流F1の流速が遠心力で高められることにより、旋回流F1が高速流となる。さらに、旋回流F1を形成したイオンエアの一部は、凹部73外に流出して吸引面21と基板主面120との隙間を通過し、この際に高速流となって吸引部20の外側に放出される(図23の矢印F2参照)。その結果、吸引面21と基板主面120との間に生じた空間が負圧となり、配線基板110の基板主面120が吸引面21に吸引保持される。
【0056】
また、エア流路71に導かれたイオンエアは、第2エア吹出穴82に流入し、第2エア吹出穴82から配線基板110の基板主面120に向けて垂直に吹き付けられる。これにより、基板主面120上の異物が除去される。
【0057】
なお、本実施形態の搬送工程では、イオンエアに含まれるイオンを接触させて配線基板110に帯電した静電気を除去する除電工程を同時に行う。詳述すると、旋回流F1を形成するイオンエアと第2エア吹出穴82から吹き付けられたイオンエアとを基板主面120に衝突させ、イオンエアに含まれるイオンを基板主面120に接触させる。その結果、配線基板110に帯電した静電気が中和されて除去される。
【0058】
また、エア供給源131から送り出された加圧エアは、エア供給流路130を通過して第2エア流路150上のエジェクタ153,154に流入する。なお、エジェクタ153,154は、吸引部20の集塵穴42近傍にあるイオンエア(即ち、旋回流F1を形成したイオンエアの大部分)を、集塵流路191、第3ポート93(図5,図22のc参照)を介して吸引する。これにより、配線基板110の基板主面120上に付着している異物がイオンエアとともに回収される。なお、集塵穴42から吸引されるイオンエアの総流量は、第1エア吹出穴81から噴出されるイオンエアの総流量よりも大きくなるように設定されている。
【0059】
次に、エアシリンダ15を駆動してロッドを後退させ、吸引部20を配線基板110と共に上昇させる。なお、吸引部20を上昇させる前の段階では、ロッドが下方に突出しているため、基板保持部材181の接触部184の先端面が吸引部20の吸引面21よりも上方に位置している。このとき、配線基板110に接触部184が接触しないため、配線基板110を傷付ける心配がない。そして、配線基板110を、基板支持台171から離間させるとともに、基板保持部材181の接触部184に近づける。その結果、各接触部184の面取り部185が配線基板110の外周縁(四辺)に接触し、配線基板110が位置ずれ不能に保持固定される(図24参照)。なお図24では、説明の便宜上、吸引面21と基板主面120との隙間を大きくしているが、実際の隙間はもっと狭く(例えば1mm以下)になっている。
【0060】
この状態において、CPU102は、第1電磁弁162に駆動信号を出力する。これにより、第1電磁弁162が開状態に切り替わり、エア供給源131から送り出された加圧エアが、エア供給流路130及び第3エア流路160を通過して基板吸着流路158上のエジェクタ163,164に流入する。なお、エジェクタ163,164は、吸引部20の真空吸着穴45近傍にあるイオンエアを、吸着流路195、第1ポート91(図5,図22のa参照)を介して真空引きする。その結果、ベルヌーイ効果による吸引力と真空引きによる吸着力とによって、配線基板110の基板主面120が吸引面21により安定的に吸引保持される。なお本実施形態では、ベルヌーイ効果を利用して配線基板110を吸引する力よりも、真空引きによって配線基板110を吸着する力のほうが大きくなっている。
【0061】
次に、搬送用多関節ロボット2のアーム3を駆動し、検査工程用のラインに配線基板110を搬送する。そして、検査工程用のラインにおいて配線基板110の釈放を行い、検査工程用のラインの基板支持台上に配線基板110を配置する。具体的に言うと、CPU102は、第2電磁弁168に駆動信号を出力する。これにより、第2電磁弁168が開状態に切り替わり、エア供給源131から送り出された加圧エアが、エア供給流路130及び第3エア流路160を通過して真空破壊流路159に導かれ、エアフィルタ167と吸引部20とをつなぐ接続流路に供給される。その結果、接続流路の真空破壊が行われ、接続流路の真空度が弱められ、配線基板110を吸引する力が弱くなる。
【0062】
次に、エアシリンダ15を駆動してロッドを突出させることにより、吸引部20を下降させる。これにより、配線基板110の基板主面120に吸引部20の吸引面21が接近するとともに、配線基板110が基板保持部材181から遠ざけられて各接触部184と非接触の状態となる。そして、CPU102は、電磁弁143を閉状態に切り替える制御を行い、第1エア流路140を遮断する。それと同時に、CPU102は、電磁弁152を閉状態に切り替える制御を行って第2エア流路150を遮断するとともに、第1電磁弁162及び第2電磁弁168を閉状態に切り替える制御を行って第3エア流路160を遮断する。これにより、吸引部20へのイオンエアの供給が停止され、第1エア吹出穴81及び第2エア吹出穴82からのイオンエアの噴出が終了する。また、集塵穴42からのイオンエアの吸引が終了するとともに、真空吸着穴45からのイオンエアの真空引きが終了する。その結果、搬送工程が終了し、配線基板110が検査工程用のラインの基板支持台上に配置される。
【0063】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0064】
(1)本実施形態の非接触搬送装置1では、イオナイザ141から放出されるイオンエアを旋回流F1を形成するエアとして用いているため、イオンエアの一部を配線基板110の基板主面120に衝突させて、イオンエアに含まれるイオンを基板主面120に接触させることができる。これにより、配線基板110に帯電した静電気が中和されるため、静電気に起因する配線基板110への異物の付着を抑えることができる。ゆえに、搬送後の導通検査において、基板主面120上のはんだバンプ118に対してプローブ(図示略)を当接させた際に、プローブとはんだバンプ118との間に導通しない異物が噛み込むことが防止される。その結果、配線基板110が異物の存在に起因して不良品であると判定されにくくなるため、配線基板110の歩留まりを向上することができる。
【0065】
(2)本実施形態では、イオナイザ141が吸引部20とは別体になっており、両者が流路的に接続されているため、イオナイザ141を吸引部20に設ける場合に比べて、吸引部20の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0066】
(3)例えば、イオナイザ141を基板支持台171の近傍に設置し、イオナイザ141から放出したイオンエアを直接配線基板110に接触させることにより、配線基板110に帯電した静電気を除去することが考えられる。しかし、搬送用多関節ロボット2のアーム3を駆動して配線基板110を搬送する際には、イオンエアを配線基板110に接触させることができない。そこで本実施形態では、配線基板110の至近距離から常時イオンエアを噴出させている。この場合、搬送時にイオンエアを配線基板110に接触させ続けることができるため、配線基板110に帯電した静電気を素早く除去することができる。
【0067】
(4)例えば、吸引部20の凹部73内にイオンを発生させる放電針を設け、放電針によって発生させたイオンをエア吹出穴81,82から噴出したエアに混合させて、イオンエアを形成することが考えられる。しかし、噴出したエアの流れは速いため、エアにイオンを混合させることは困難である。その結果、エアを配線基板110に接触させたとしても、配線基板110に帯電した静電気を除去できない可能性がある。そこで本実施形態では、イオナイザ141から放出されたイオンエアをエア吹出穴81,82から噴出させている。この場合、エア吹出穴81,82から噴出されるイオンエアには確実にイオンが混合されているため、イオンエアを配線基板110に接触させれば、配線基板110に帯電した静電気を確実に除去することができる。
【0068】
(5)本実施形態では、第1エア吹出穴81から噴出して旋回流F1を形成するエアをイオンエアとしているため、イオンエアを噴出するエア吹出穴を第1エア吹出穴81とは別々に設ける必要がない。しかも、第1エア吹出穴81から噴出されるエアだけでなく、第2エア吹出穴82から噴出されるエアもイオンエアである。このため、第2エア吹出穴82から噴出されるエアに、基板主面120上の異物を除去する機能だけでなく、静電気を中和させる機能も持たせることができる。従って、配線基板110に帯電した静電気を効率良く中和させることができる。しかも、本実施形態の吸引部20では、旋回流F1を形成するエアとイオンエアとが共通の流路を介して供給され、ノズル本体61内において第1エア吹出穴81と第2エア吹出穴82とに振り分けられている。このため、旋回流F1を形成するエアが流れる旋回流形成流路とイオンエアが流れるイオン流路とを別々に形成する場合に比べて、吸引部20の小型化、軽量化、構成の簡略化を図ることができる。
【0069】
(6)従来の搬送方法として、エア吸着穴が開口された吸着ヘッドの下面に配線基板110の基板主面120を負圧で吸着し、この状態で、配線基板110を吸着ヘッドとともに搬送する技術が提案されている。しかし、吸着ヘッドで配線基板110を搬送すると、基板主面120上に配置された突起電極(端子パッド116及びはんだバンプ118)が吸着ヘッドに押し潰されて変形してしまう可能性がある。
【0070】
そこで本実施形態では、基板保持固定時に、基板保持部材181の接触部184に設けられた面取り部185を配線基板110の外周縁に接触させている。これにより、基板主面120の吸引面21への接触が避けられるため、基板主面120上の突起電極を傷付けなくて済むようになる。また、面取り部185が配線基板110の外周縁に接触することで、配線基板110と接触部184との接触面積が小さくなるため、配線基板110が傷付くことを確実に防止できる。
【0071】
なお、本実施形態を以下のように変更してもよい。
【0072】
・上記実施形態では、第1エア流路140上にイオナイザ141が設置されていたが、イオナイザ141は、エア供給流路130上に設置されていてもよい。即ち、イオナイザ141は、吸引部20のエア流路71にエアを導く経路であれば、どの部分に設置されていてもよい。しかし、イオナイザ141は、第1エア流路140上に設置されていることが好ましい。仮に、イオナイザ141をエア供給流路130上に設置すると、イオンエアの一部が、電磁弁152→エジェクタ153→エジェクタ154→サイレンサ155の順番に流れてサイレンサ155から排出される。しかも、イオンエアの一部が、第1電磁弁162→エジェクタ163→エジェクタ164→サイレンサ165の順番に流れてサイレンサ165からも排出される。その結果、多くのイオンエアが無駄になってしまう。
【0073】
・上記実施形態において、集塵ユニット151及び吸着ユニット161の少なくとも一方を省略してもよい。また、吸着ユニット161を省略しない場合、吸着ユニット161の真空破壊流路159上に設置された機器(第2電磁弁168、流量調整弁169及び圧力スイッチ170)を省略してもよい。
【0074】
・上記実施形態では、基板保持部材181の接触部184に静電電位センサ105が設置されていたが、静電電位センサ105は、基板支持台171などの他の場所に設置されていてもよい。
【0075】
・上記実施形態では、エア供給バルブ132、イオナイザ141、電磁弁143、電磁弁152、第1電磁弁162及び第2電磁弁168の制御を1つのCPU102で制御するようにしたが、各制御を別々のCPUで行うように構成してもよい。
【0076】
・上記実施形態では、配線基板110の基板主面120を吸引面21に吸引保持した後、ロッドを後退させて吸引部20を配線基板110と共に上昇させることにより、基板保持部材181の接触部184を配線基板110の外周縁に接触させて、配線基板110を位置ずれ不能に保持固定していた。しかし、ロッドが後退した状態の搬送ヘッド11を下降させて吸引部20を配線基板110に接近させると同時に、接触部184を配線基板110の外周縁に接触させ、その後に吸引部20によって配線基板110を吸引保持してもよい。
【0077】
・上記実施形態の非接触搬送装置1は、単一製品の配線基板110を搬送するようになっていたが、例えば、配線基板110となるべき基板形成領域が平面方向に沿って複数配置された多数個取り用配線基板を搬送するようにしてもよい。
【0078】
・上記実施形態では、吸引部20を装着した搬送用多関節ロボット2を用いて配線基板110を搬送していたが、吸引部20を装着したコンベアなどの搬送手段を用いて配線基板110を搬送してもよい。
【0079】
次に、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0080】
(1)吸引面に凹部が設けられるとともに、前記凹部の内周面にて開口するエア吹出穴である第1エア吹出穴が設けられた吸引部を備え、前記第1エア吹出穴から前記凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する非接触搬送装置において、前記基板主面にエアを吹き付けるための第2エア吹出穴を前記凹部内において前記第1エア吹出穴とは異なる位置に設け、前記吸引部とは別体にイオナイザを設け、前記イオナイザから放出されるイオンエアを前記第1エア吹出穴から噴出するエアとして用いることを特徴とする配線基板の非接触搬送装置。
【0081】
(2)吸引面に凹部が設けられるとともに、前記凹部の内周面にて開口するエア吹出穴が設けられた吸引部を備え、前記エア吹出穴から前記凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する非接触搬送装置において、前記基板主面上の異物を回収する集塵穴を前記吸引面における前記凹部の外側領域にて開口するように配設し、前記吸引部とは別体にイオナイザを設け、前記イオナイザから放出されるイオンエアを前記エア吹出穴から噴出するエアとして用いることを特徴とする配線基板の非接触搬送装置。
【0082】
(3)吸引面に凹部が設けられるとともに、前記凹部の内周面にて開口するエア吹出穴が設けられた吸引部を備え、前記エア吹出穴から凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する非接触搬送装置において、前記基板主面を前記吸引面に吸引保持した際に前記配線基板の外周縁に接触させて、前記配線基板を位置ずれ不能に保持固定する基板保持部材を設け、前記吸引部とは別体にイオナイザを設け、前記イオナイザから放出されるイオンエアを前記エア吹出穴から噴出するエアとして用いることを特徴とする配線基板の非接触搬送装置。
【0083】
(4)吸引面に凹部が設けられるとともに、前記凹部の内周面にて開口するエア吹出穴が設けられた吸引部を備え、前記エア吹出穴から前記凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する非接触搬送装置において、真空引きするための真空吸着穴を、前記凹部の外側領域にて開口するように配設し、前記吸引部とは別体にイオナイザを設け、前記イオナイザから放出されるイオンエアを前記エア吹出穴から噴出するエアとして用いることを特徴とする配線基板の非接触搬送装置。
【0084】
(5)吸引面に凹部が設けられるとともに、前記凹部の内周面にて開口するエア吹出穴である第1エア吹出穴が設けられた吸引部を備え、前記第1エア吹出穴から前記凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する非接触搬送装置において、前記吸引部は、金属材料からなる吸引部本体と、前記吸引部本体の下面にて開口する収容凹部に収容された筒状のノズル本体と、前記収容凹部の開口端面に取り付けられる樹脂製パッドとを備え、前記吸引面の一部を構成する前記ノズル本体の下端面に前記凹部を設け、前記凹部の中心に除塵用ノズルを突設し、前記基板主面にエアを吹き付けるための第2エア吹出穴を前記除塵用ノズルの先端にて開口するように設け、前記ノズル本体の内部に、前記第1エア吹出穴及び前記第2エア吹出穴の両方にエアを供給する共通のエア流路を設け、前記エア流路の内壁面及び前記ノズル本体の外周面にて開口する迂回流路を設け、前記迂回流路を通過して前記ノズル本体の外周面と前記収容凹部の内側面側との間に生じる空間に導かれたエアを、前記ノズル本体の外周面にて開口する前記第1エア吹出穴に導くようにし、前記基板主面上の異物を回収する集塵穴を、前記吸引面における前記凹部を包囲するように凹部外周縁に沿って複数箇所に配設し、真空引きするための真空吸着穴を、前記凹部の外側領域にて開口するように複数配設し、複数の前記真空吸着穴に連通する個々の吸着流路を前記吸引部本体の内部にて共通吸着流路に合流させ、複数の前記集塵穴に連通する個々の集塵流路を前記吸引部本体の内部にて共通集塵流路に合流させるとともに、前記共通吸着流路及び前記共通集塵流路を真空引き手段に接続し、前記吸引部とは別体にイオナイザを設け、前記イオナイザから放出されるイオンエアを前記第1エア吹出穴から噴出するエアとして用いることを特徴とする配線基板の非接触搬送装置。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明を具体化した一実施形態の非接触搬送装置を示す概略図。
【図2】配線基板の概略構成を示す断面図。
【図3】搬送ヘッドの概略構成を示す断面図。
【図4】搬送ヘッドの概略構成を示す側面図。
【図5】吸引部を示す正面図。
【図6】吸引部を示す上面図。
【図7】吸引部を示す下面図。
【図8】図6のA−A線断面図。
【図9】上蓋部を示す上面図。
【図10】吸引部本体を示す上面図。
【図11】図10のB−B線断面図。
【図12】吸引部本体を示す下面図。
【図13】ノズル支持体を示す上面図。
【図14】図13のC−C線断面図。
【図15】ノズル本体を示す正面図。
【図16】ノズル本体を示す上面図。
【図17】ノズル本体を示す下面図。
【図18】図16のD−D線断面図。
【図19】樹脂製パッドを示す上面図。
【図20】図19のE−E線断面図。
【図21】図19のF−F線断面図。
【図22】非接触搬送装置を示す回路図。
【図23】配線基板の非接触搬送方法を示す説明図。
【図24】配線基板の非接触搬送方法を示す説明図。
【符号の説明】
【0086】
1…非接触搬送装置
20…吸引部
21…吸引面
73…凹部
81…エア吹出穴としての第1エア吹出穴
99…機器としての帯電防止チューブ
110…被搬送物としての配線基板
116…突起電極としての端子パッド
118…突起電極としてのはんだバンプ
119…電極形成領域
120…基板主面
141…イオナイザ
143…機器としての電磁弁
144…機器としてのエアフィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物である配線基板を、気流の作用を利用して搬送する配線基板の非接触搬送装置及び方法、非接触搬送装置を用いた樹脂製配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、配線基板は、複数の製造工程を経て製造され、導通検査を行う検査工程を受けた後に出荷される。また、配線基板は、製造工程が終了する度に、次の工程を行うためのラインに搬送されるようになっている。なお、従来の搬送方法としては、エア吸着穴が開口された吸着ヘッドの下面に配線基板の表面を負圧で吸着し、この状態で、配線基板を吸着ヘッドとともに搬送する方法などが提案されている。しかし、吸着ヘッドで配線基板を搬送すると、吸着ヘッドの汚れや磨耗によって生じた異物(粉塵)が配線基板に付着するなどの問題がある。
【0003】
そこで、配線基板などの被搬送物を非接触状態で吸引しながら搬送することにより、配線基板への異物の付着を少なくした搬送装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。かかる搬送装置は、搬送ヘッド、搬送ヘッドの先端面(吸引面)にて開口する気体供給孔、及び、搬送ヘッドに装着されるとともに円板部を有するノズルなどを備えている。そして、搬送ヘッドの吸引面を配線基板に接近させ、気体供給孔から供給されたエアを吸引面と円板部との間に形成されたスリットを介して外部に導出すると、エアが搬送ヘッドの外側に放射状に放出される。これにより、ノズル付近と配線基板との空間が負圧となり、配線基板が搬送ヘッドに吸引保持される。この状態において、ロボットアームなどを用いて搬送ヘッドを搬送すれば、配線基板を非接触状態で搬送することができる。
【特許文献1】特開2005−219922号公報(図1〜図5など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、放出されたエアの一部が配線基板に衝突するため、エアと配線基板との摩擦によって静電気が発生し、配線基板が帯電してしまう。このとき、配線基板の表面には周囲に浮遊している異物が付着しやすくなっており、一旦付着すると異物の除去が困難である。また、配線基板搬送後に実施される上記の検査工程では、配線基板の表面上のはんだバンプに対してプローブなどの検査用治具を当接させることにより、配線基板の導通検査を行っている。従って、はんだバンプの表面に異物が付着した状態で導通検査を行うと、プローブとはんだバンプとの間に導通しない異物が噛み込んでしまうため、本来良品であるにもかかわらず、検査工程において不良品であると判定される可能性がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、被搬送物である配線基板の帯電を防止することにより、配線基板の歩留まりを向上することができる配線基板の非接触搬送装置及び方法を提供することにある。また、第2の目的は、上記の非接触搬送装置を用いた好適な樹脂製配線基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして上記課題を解決するための手段(手段1)としては、吸引面に凹部が設けられるとともに、前記凹部の内周面にて開口するエア吹出穴が設けられた吸引部を備え、前記エア吹出穴から前記凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する非接触搬送装置において、前記吸引部とは別体にイオナイザを設け、前記イオナイザから放出されるイオンエアを前記エア吹出穴から噴出するエアとして用いることを特徴とする配線基板の非接触搬送装置がある。
【0007】
従って、上記手段1の非接触搬送装置によると、イオナイザから放出されるイオンエアをエア吹出穴から噴出するエアとして用いているため、エアの一部を配線基板の基板主面に衝突させて、エアに含まれるイオンを基板主面に接触させることができる。これにより、配線基板に帯電した静電気が中和されるため、静電気に起因する配線基板への異物の付着を抑えることができる。ゆえに、例えば搬送後の導通検査において、異物の付着に起因して配線基板が不良品であると判定されにくくなるため、配線基板の歩留まりを向上することができる。
【0008】
なお、「配線基板」は、単一製品の配線基板だけでなく、配線基板となるべき基板形成領域が平面方向に沿って複数配置された多数個取り用配線基板も含むものとする。上記配線基板の形成材料としては、セラミック、金属、半導体などの無機材料や、樹脂などの有機材料を挙げることができ、コスト性、加工性、絶縁性、機械的強度などを考慮してそれらの中から適宜選択することができる。セラミック材料の好適例としては、例えばアルミナ、ガラスセラミック、結晶化ガラス等の低温焼成材料、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素などがある。金属材料の好適例としては、銅、銅合金、鉄ニッケル合金などがある。半導体材料の好適例としては、例えばシリコンなどがある。そして、樹脂材料の好適例としては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などがある。そのほか、これらの樹脂とガラス繊維(ガラス織布やガラス不織布)やポリアミド繊維等の有機繊維との複合材料を使用してもよい。あるいは、連続多孔質PTFE等の三次元網目状フッ素系樹脂基材にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂−樹脂複合材料等を使用してもよい。特に、低コスト化などの観点からすれば、配線基板の形成材料として樹脂材料などの有機材料を選択することが好ましい。このような配線基板であれば、微細な導体層を比較的簡単にかつ正確に形成することができる。
【0009】
また、配線基板の形成材料は樹脂材料などの有機材料であることが好ましいが、特に、前記配線基板は、複数の突起電極が配置された電極形成領域を前記基板主面上に有する樹脂製配線基板であることが好ましい。その理由は、配線基板を接触状態で搬送しようとする場合に、配線基板の基板主面に形成された突起電極が吸引部に押し潰されて変形するという問題が起こり、これを解決するうえで上記手段の非接触搬送装置を採用する意義が発生するからである。また、樹脂製配線基板には静電気が溜まりやすいという問題があるため、これを解決するうえで上記手段を採用する意義が大きいからである。
【0010】
ここで、前記吸引部は、吸引面に設けられた凹部や、凹部の内周面にて開口するエア吹出穴などを有する。エア吹出穴の数は特に限定されないが、例えば2つであることが好ましい。仮に、吸引部がエア吹出穴を多数有している場合、吸引部の加工コストが高くなるという問題がある。一方、吸引部がエア吹出穴を1つしか有していない場合、エア吹出穴から凹部の内周面に沿ってエアを噴出したとしても、噴出したエアは真っ直ぐ流れる可能性が高いため、例えば旋回流などを形成することが困難になる。なお、前記吸引部の構造は特に限定されないが、例えば、金属材料からなる吸引部本体に樹脂製パッドを取り付けた構造であり、前記樹脂製パッドの正面が前記吸引面となっていることが好ましい。このようにすれば、配線基板の基板主面が吸引部の吸引面に接触したとしても、配線基板を傷付けなくても済む。
【0011】
また、上記イオナイザ(静電気除去器)としては、AC方式のものやDC方式のものが挙げられる。AC方式のイオナイザは、1本の放電針を備え、放電針に交流電圧を印加してコロナ放電を行うことにより、陽(+)イオンと陰(−)イオンとを交互に発生させるものである。一方、DC方式のイオナイザは、2本の放電針(正極側及び負極側の放電針)を備え、正極側の放電針に直流電圧を印加してコロナ放電を行うことにより、陽イオンを発生させるとともに、負極側の放電針に直流電圧を印加してコロナ放電を行うことにより、陰イオンを発生させるものである。
【0012】
ここで、前記イオナイザから前記吸引部に至るまでの機器は、導電性を付与した帯電防止材料を用いて構成されていることが好ましい。仮に、上記の機器が帯電防止材料ではない材料を用いて構成されると、エアが機器を通過する間に、エアに含まれるイオンが機器に帯電した静電気の中和に用いられてしまう。その結果、吸引部に至る頃にはエアのイオン量が減ってしまうため、エアを放出しても、配線基板に帯電した静電気を効率良く中和できない。また、上記の機器が導電性を付与しない材料を用いて構成されると、機器が帯電しやすくなる。
【0013】
なお、導電性を付与した帯電防止材料としては、金属材料や、プラスチック(ポリアミド、ポリウレタンなど)に導電性付与剤を混入させることにより導電性を付与した導電性プラスチックなどが挙げられる。ここで、導電性付与剤としては、カーボン系材料からなるもの、金属系材料からなるもの、その他の材料からなるものが挙げられる。カーボン系材料からなる導電性付与剤としては、カーボンブラック(アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラックなど)、炭素繊維(PAN系、ピッチ系)、黒鉛などが挙げられる。金属系材料からなる導電性付与剤としては、金属微粉末(銀、銅、ニッケルなど)、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウムなど)、金属繊維(アルミ、ステンレスなど)、ウィスカー(アルミ、ステンレスなど)などが挙げられる。その他の材料からなる導電性付与剤としては、ガラスビーズや合成繊維などが挙げられる。
【0014】
また、上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、吸引部の吸引面に設けられた凹部の内周面にて開口するエア吹出穴を設け、前記エア吹出穴から前記凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する方法において、前記エア吹出穴から噴出するエアとして、前記吸引部とは別体に設けられたイオナイザから放出されるイオンエアを用いることを特徴とする配線基板の非接触搬送方法がある。
【0015】
従って、上記手段2の非接触搬送方法によると、エア吹出穴から噴出するエアがイオナイザから放出されるイオンエアであるため、エアの一部が配線基板の基板主面に衝突した際に、エアに含まれるイオンが基板主面に接触する。これにより、配線基板に帯電した静電気が中和されるため、静電気に起因する配線基板への異物の付着を抑えることができる。ゆえに、例えば搬送後の導通検査において、異物の付着に起因して配線基板が不良品であると判定されにくくなるため、配線基板の歩留まりを向上することができる。
【0016】
また、上記課題を解決するための別の手段(手段3)としては、上記手段1に記載の非接触搬送装置を用いて、複数の突起電極が配置された電極形成領域を前記基板主面上に有する樹脂製配線基板を搬送する搬送工程を行うことにより、前記樹脂製配線基板を製造する方法であって、前記イオンエアに含まれるイオンを接触させて前記樹脂製配線基板に帯電した静電気を除去する除電工程を、前記搬送工程と同時に行うことを特徴とする樹脂製配線基板の製造方法がある。
【0017】
従って、上記手段3の製造方法によると、上記手段1の非接触搬送装置を用いて異物が付着しにくい樹脂製配線基板を製造することができる。ゆえに、例えば搬送工程後及び除電工程後の導通検査において、異物の付着に起因して樹脂製配線基板が不良品であると判定されにくくなるため、樹脂製配線基板の歩留まりを向上することができる。また、除電工程を搬送工程と同時に行うため、樹脂製配線基板を効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
図1に示されるように、非接触搬送装置1は、搬送用多関節ロボット2及び搬送ヘッド11を備え、被搬送物である配線基板110を気流の作用を利用して搬送するものである。
【0020】
図2に示されるように、本実施形態の配線基板110は、ICチップ搭載用のオーガニック・パッケージ(樹脂製配線基板)であり、複数の製造工程後であって検査工程前の状態を示している。配線基板110は、略矩形板状のコア基板111と、コア基板111のコア主面112(図2では上面)上に形成される第1ビルドアップ層114と、コア基板111のコア裏面113(図2では下面)上に形成される第2ビルドアップ層115とからなる。ビルドアップ層114,115は、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)からなる樹脂絶縁層と、銅からなる導体層とを交互に積層した構造を有している。また、配線基板110の基板主面120上(第1ビルドアップ層114の上面上)における複数箇所には、端子パッド116(突起電極)がアレイ状に形成され、配線基板110の基板裏面121上(第2ビルドアップ層115の下面上)における複数箇所には、BGA用パッド117がアレイ状に形成されている。さらに、端子パッド116の表面上には、複数のはんだバンプ118(突起電極)が配設されている。各はんだバンプ118には、矩形平板状をなすICチップの端子が接続されるようになっている。なお、各端子パッド116及び各はんだバンプ118からなる領域は、ICチップを搭載可能な電極形成領域119である。
【0021】
図1,図3,図4に示されるように、前記搬送ヘッド11は、前記搬送用多関節ロボット2のアーム3の先端に装着されている。搬送ヘッド11は、アーム3の先端に接続される接続板12と、4本の連結棒13を介して接続板12に連結される支持板14と、支持板14に支持される流体圧アクチュエータであるエアシリンダ15と、上端部において支持板14に連結されるとともに互いに離間した状態で下方に延びる一対の腕部16とを備えている。エアシリンダ15は、箱状をなすシリンダ本体17と、シリンダ本体17内に上下動可能に収容されたピストン(図示略)と、ピストンに連結された可動部であるロッド(図示略)とを有している。ロッドは、シリンダ本体17内にエアが供給されてピストンが下方に移動したときにシリンダ本体17の下端部から突出し、シリンダ本体17内からエアが排出されてピストンが上方に移動したときにシリンダ本体17内に後退するようになっている。また、ロッドの先端には、配線基板110を吸引する吸引部20が取り付けられている。吸引部20は、ロッドによって支持されており、吸引面21を配線基板110に向けた状態で配線基板110に対して接近及び離間するようになっている。
【0022】
また図1,図3,図4に示されるように、搬送ヘッド11は、配線基板110を位置ずれ不能に保持固定する基板保持部材181を備えている。基板保持部材181は、2本のネジ182を介して各腕部16に固定される部材本体183と、上端部において部材本体183に接続されるとともに互いに離間した状態で下方に延びる4つの接触部184とを備えている。各接触部184は、吸引面21を構成する四辺の外側から吸引部20の吸引面21を包囲するように配置されている。なお、各接触部184は、配線基板110よりも硬度が低い樹脂(本実施形態ではポリエチレン樹脂)によって形成されている。また、各接触部184は、下端部内側にそれぞれ面取り部185を有している。各面取り部185は、エアシリンダ15のロッドを後退させることで配線基板110を基板保持部材181に近づけた基板保持固定時に、配線基板110の外周縁に接触するようになっている(図24参照)。
【0023】
図5〜図8に示されるように、前記吸引部20は、上蓋部31、吸引部本体22、ノズル支持体51、ノズル本体61及び樹脂製パッド40を備えている。図9に示されるように、上蓋部31は、金属材料(本実施形態では、プラチナを含有するアルミニウム合金)によって形成され、縦35mm×横35mm×高さ6mmの略矩形板状をなしている。上蓋部31の4つの角部のうち3つの角部にはネジ挿通孔32が設けられ、残り1つの角部には第1ポート取付孔33が設けられている。また、上蓋部31の中央部には、直径7mmの第1ノズル挿通孔34が設けられている。そして、3つのネジ挿通孔32のうち2つのネジ挿通孔32と第1ノズル挿通孔34との間にはシャフト取付孔35が設けられ、残り1つのネジ挿通孔32と第1ノズル挿通孔34との間には第3ポート取付孔36が設けられている。
【0024】
図5,図6,図8に示されるように、第1ポート取付孔33には第1ポート91が取り付けられ、第3ポート取付孔36には第3ポート93が取り付けられている。また、上蓋部31の中央部には、金属材料(本実施形態ではSUJ2)によって形成されたシャフト94が取り付けられている。シャフト94は、棒状の円管部95と、円管部95の下端部に一体形成された略矩形板状の支持板96とを有している。円管部95には、第1ノズル挿通孔34に連通する貫通孔97が設けられ、円管部95の上端部には、貫通孔97に連通する第2ポート取付孔98が設けられている。さらに、第2ポート取付孔98には第2ポート92が取り付けられている。なお、各ポート91〜93は、導電性金属によって形成され、各ポート91〜93には帯電防止チューブ99が接続されている。また、支持板96の両端部には一対のネジ孔(図示略)が設けられている。従って、両ネジ孔にネジ100を挿通し、挿通したネジ100をシャフト取付孔35に螺着させることにより、シャフト94が上蓋部31に固定される。
【0025】
図10〜図12に示されるように、前記吸引部本体22は、金属材料(本実施形態ではアルミニウム)によって形成され、縦35mm×横35mm×高さ18.5mmの略直方体状をなしている。吸引部本体22には、同吸引部本体22の下面24にて開口する収容凹部25が設けられている。本実施形態の収容凹部25は、内径18mm、深さ12.5mmに設定されている。また、吸引部本体22の中央部には、直径7mmの第2ノズル挿通孔26が設けられている。第2ノズル挿通孔26は、上蓋部31の第1ノズル挿通孔34に連通するとともに、吸引部本体22の上面23及び収容凹部25の底面を貫通している。さらに、吸引部本体22において第2ノズル挿通孔26の両側には、上面23及び収容凹部25の底面を貫通する支持体取付孔27が設けられている。
【0026】
また、吸引部本体22には、上面23及び下面24を貫通する12個の集塵流路191が設けられている。各集塵流路191は、吸引部本体22における収容凹部25の外側領域に配置されるとともに、第2ノズル挿通孔26の中心軸線を基準として等角度(30°)間隔で配置されている。さらに、吸引部本体22の上面23には、エアが流通可能な共通集塵流路192が円形状に形成されている。共通集塵流路192には、吸引部本体22の内部にて個々の集塵流路191が合流するようになっている。そして、共通集塵流路192は、上蓋部31の前記第3ポート取付孔36に連通し、真空引き手段である集塵ユニット151(図22参照)に接続されている。
【0027】
図10に示されるように、吸引部本体22の4つの角部のうち3つの角部には蓋部取付穴28が設けられている。よって、前記ネジ挿通孔32にネジ29(図8参照)を挿通し、挿通したネジ29を蓋部取付穴28に螺着させることにより、上蓋部31が吸引部本体22に固定される。また、上記4つの角部のうち残り1つの角部には、前記第1ポート取付孔33に連通し、上面23及び下面24を貫通する吸着流路195が設けられている。図11,図12に示されるように、吸引部本体22の下面24には、エアが流通可能な共通吸着流路196が略正方形状に形成されている。そして、共通吸着流路196は、上蓋部31の前記第1ポート取付孔33に連通し、真空引き手段である吸着ユニット161(図22参照)に接続されている。
【0028】
図13,図14に示されるように、前記ノズル支持体51は、吸引部本体22の前記収容凹部25に収容されている。ノズル支持体51は、金属材料(本実施形態ではアルミニウム)によって形成され、直径18mm×高さ14mmの略円柱状をなしている。ノズル支持体51には、同ノズル支持体51の下面53にて開口する収容部54が設けられている。本実施形態の収容部54は、内径16mm、深さ7.5mmに設定されている。また、ノズル支持体51の中央部には、直径7mmの第3ノズル挿通孔55が設けられている。第3ノズル挿通孔55は、吸引部本体22の前記第2ノズル挿通孔26に連通するとともに、ノズル支持体51の上面52及び収容部54の底面を貫通している。さらに、ノズル支持体51において第3ノズル挿通孔55の両側には、上面52及び収容部54の底面を貫通するノズル取付孔57が設けられている。また、ノズル支持体51において第3ノズル挿通孔55の両側には、上面52にて開口するネジ取付穴56が設けられている。よって、前記支持体取付孔27にネジ30(図8参照)を挿通し、挿通したネジ30をネジ取付穴56に螺着させることにより、ノズル支持体51が吸引部本体22に固定される。
【0029】
図15〜図18に示されるように、前記ノズル本体61は、金属材料(本実施形態ではアルミニウム)によって形成され、前記吸引面21の一部を構成する下端面62を有している。また、ノズル本体61は、棒状の軸部63と、軸部63の下端部に形成された本体部64とを有している。軸部63は、直径7mm×高さ15.2mmの略円柱状をなし、第3ノズル挿通孔55、第2ノズル挿通孔26及び前記第1ノズル挿通孔34に挿入されている。なお、第1ノズル挿通孔34には、第1ノズル挿通孔34と軸部63との隙間を塞ぐOリング60(図8参照)が軸部63の上端面に接触した状態で取り付けられている。
【0030】
一方、本体部64は、直径15mm×高さ8.6mmの略円柱状をなし、ノズル支持体51の収容部54に収容されている。本体部64において軸部63の両側には、本体部64の上面にて開口するネジ取付穴65が設けられている。よって、前記ノズル取付孔57にネジ58(図8参照)を挿通し、挿通したネジ58をネジ取付穴65に螺着させることにより、ノズル本体61がノズル支持体51に固定される。また、本体部64の上端部における外周面には、高さ0.5mmの上側張出部66が突設されている。これにより、本体部64の上端部の直径が16mmとなるため、本体部64の上端部は収容部54の内側面に接触するようになる(図8参照)。一方、本体部64の下端部における外周面には、高さ1.5mmの下側張出部67が突設されている。これにより、本体部64の下端部の直径が18mmとなり、下側張出部67はノズル支持体51の前記下面53に接触するようになる(図8参照)。その結果、本体部64の外周面と収容部54の内側面との間には、空間S(図8参照)が生じるようになる。
【0031】
図15,図16,図18に示されるように、ノズル本体61の内部には、イオンエアを供給するエア流路71が設けられている。また、ノズル本体61には、エア流路71の内壁面及びノズル本体61の外周面を貫通する迂回流路72が設けられている。なお、迂回流路72を通過したイオンエアは、上記の空間Sに導かれる。
【0032】
図15,図17,図18に示されるように、ノズル本体61の下端面62には下方から見て円形状をなす凹部73が設けられている。凹部73の開口部分には、凹部73内で発生した旋回流F1(図23,図24参照)を効率良く凹部73の外部に放出するための面取り部74が設けられている。また、凹部73の中心には、断面略台形状の除塵用ノズル75が突設されている。さらに、ノズル本体61には、凹部73の内壁面76(内周面)及び前記本体部64の外周面にて開口する第1エア吹出穴81が2箇所に設けられている。各第1エア吹出穴81は、除塵用ノズル75の中心軸線を基準としたときに点対称となるように配置されており、内壁面76において凹部73の周方向に沿って開口している。各第1エア吹出穴81は、空間Sに導かれたイオンエアを凹部73内に噴出するようになっている。そして、それぞれの第1エア吹出穴81から噴出されるイオンエアは、凹部73の周方向に沿って導かれ、旋回流F1を形成するようになっている。即ち、本実施形態の吸引部20は、吸引部本体22と配線基板110との間に発生する空気流によって生じるベルヌーイ効果を利用して配線基板110を保持するようにしたベルヌーイチャックである。
【0033】
図15〜図18に示されるように、凹部73内において第1エア吹出穴81とは異なる位置には、前記エア流路71に連通する第2エア吹出穴82が設けられている。即ち、エア流路71は、第1エア吹出穴81及び第2エア吹出穴82のそれぞれにイオンエアを供給する共通の流路である。また、第2エア吹出穴82は、第1エア吹出穴81よりも凹部73の中心に近接して配置されている。具体的に言うと、第2エア吹出穴82は、除塵用ノズル75の先端にて開口するように配置されている。そして、第2エア吹出穴82は、エア流路71を流れるイオンエアを前記配線基板110の基板主面120に向けて垂直に吹き付けるようになっている。なお、第2エア吹出穴82の内径は、噴出するイオンエアによって基板主面120上の異物を除去でき、かつ配線基板110を持ち上げる力を相殺しない程度の大きさに設定されることが好ましい。仮に、第2エア吹出穴82の内径が小さ過ぎると、第2エア吹出穴82から噴出するイオンエアの勢いが小さくなり過ぎるため、イオンエアが配線基板110の基板主面120に届きにくくなる。一方、第2エア吹出穴82の内径が大き過ぎると、第2エア吹出穴82から噴出するイオンエアの勢いが大きくなり過ぎて配線基板110を持ち上げる力を相殺してしまうため、配線基板110が持ち上がらなくなる。
【0034】
図19〜図21に示されるように、前記樹脂製パッド40は、前記吸引部本体22に取り付けられ、正面(下面)が前記吸引面21となっている。樹脂製パッド40は、樹脂材料(本実施形態ではエーテル系ウレタン)によって形成され、縦35mm×横35mm×高さ2.5mmの略矩形板状をなしている。また、樹脂製パッド40の中央部には、直径18.3mmの貫通孔41が設けられている。貫通孔41は、前記本体部64の凹部73等を露出させるようになっている(図7参照)。さらに、樹脂製パッド40には、前記集塵流路191に連通する12個の集塵穴42が設けられている。各集塵穴42は、貫通孔41及び凹部73の外側領域にて開口するように配設され、凹部73を包囲するように凹部外周縁に沿って複数箇所に配設されている(図7参照)。具体的に言うと、各集塵穴42は、貫通孔41の中心軸線を基準として等角度(30°)間隔で配置されている。また、吸引面21において各集塵穴42の外側領域には、各集塵穴42を包囲する集塵防壁43が突設されている。集塵防壁43は、内径が26mmであって外径が29mmの円環状をなし、高さが1.2mmに設定されている。
【0035】
図19,図21に示されるように、吸引面21の最外周部、即ち、樹脂製パッド40の4つの角部には、吸引面21より1.5mmだけ突出した凸部44が形成されている。さらに、樹脂製パッド40には、4個の真空吸着穴45がそれぞれの凸部44にて開口するように配設されている。即ち、各真空吸着穴45は、貫通孔41及び凹部73の外側領域にて開口するように配設されている。そして、各真空吸着穴45は、樹脂製パッド40を貫通する吸着流路46に連通しており、個々の吸着流路46は、吸引部本体22の前記共通吸着流路196に合流している(図8参照)。
【0036】
なお、前記基板保持部材181の接触部184には、静電電位センサ105(図22,図23参照)が設置されている。静電電位センサ105は、接触部184内に埋設されており、接触部184の面取り部185から露出するように配置されている。つまり、静電電位センサ105は、前記配線基板110の外周縁に接触する位置に設けられている。静電電位センサ105は、配線基板110に帯電した静電気を測定して、静電気測定信号を出力するようになっている。
【0037】
次に、非接触搬送装置1のシステム構成について説明する。
【0038】
図22に示されるように、非接触搬送装置1は、加圧エアを送り出すエア供給源131を備えている。また、非接触搬送装置1は、エア供給源131と吸引部20との間を連通しうるエア供給経路を構成するエア供給流路130を備えている。エア供給流路130は、下流側において、旋回流形成経路を構成する第1エア流路140と、集塵経路を構成する第2エア流路150と、真空引き経路を構成する第3エア流路160とに分岐している。第1エア流路140は、帯電防止チューブ99(図6参照)及び第2ポート92(図5,図22のb参照)を介して吸引部20のエア流路71に連通している。第2エア流路150は、帯電防止チューブ99及び第3ポート93(図5,図22のc参照)を介して吸引部20の集塵流路191に連通している。第3エア流路160は、帯電防止チューブ99及び第1ポート91(図5,図22のa参照)を介して吸引部20の吸着流路195に連通している。
【0039】
図22に示されるように、エア供給流路130上にはエア供給バルブ132が設置されている。エア供給バルブ132は、エア供給源131の下流側に配置されており、エア供給流路130を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。エア供給バルブ132は、開状態に切り替えられた際に、下流側にエアを供給可能とするようになっている。なお、本実施形態のエア供給バルブ132は、図示しないソレノイドにより作動する電磁弁である。
【0040】
また、エア供給流路130上には、エア供給流路130内のエア圧力を一定値に調整する空気圧調整ユニット133が設置されている。即ち、空気圧調整ユニット133は、エア供給流路130を介してエア供給バルブ132及びエア供給源131と流路的に接続されている。空気圧調整ユニット133は、エアフィルタ134、圧力計135及び減圧弁136を備えている。エアフィルタ134は、エア供給バルブ132の下流側に配置されており、エア供給流路130内を通過するエアに含まれる異物を除去するようになっている。また、圧力計135は、エアフィルタ134の下流側に配置されており、エア供給流路130内を通過するエアの圧力を計測するようになっている。さらに、減圧弁136は、圧力計135の下流側に配置されており、エア供給流路130内を通過するエアの減圧を行い、減圧したエアを下流側に供給するようになっている。
【0041】
図22に示されるように、前記第1エア流路140上には、DC方式のイオナイザ141が設置されている。即ち、イオナイザ141は、前記吸引部20とは別体に設けられている。イオナイザ141は、空気圧調整ユニット133の下流側に配置されており、第1エア流路140と連通するイオナイザ本体142と、イオナイザ本体142内に突出する2本の放電針(正極側及び負極側の放電針)と、各放電針に直流電圧を印加する高圧電源とを備えている。各放電針は、直流電圧が印加された際にコロナ放電を行うことにより、先端部分の周囲にイオンを発生させるようになっている。詳述すると、正極側の放電針は、印加する直流電圧の極性が正(+)である場合に陽イオンを発生させ、負極側の放電針は、印加する直流電圧の極性が負(−)である場合に陰イオンを発生させるようになっている。そして、イオナイザ141は、イオナイザ本体142内に導かれてきたエアに発生させたイオンを混合させることにより、イオンエアを生成するようになっている。さらに、イオナイザ141は、生成したイオンエアを第1エア流路140の下流側に放出するようになっている。
【0042】
また図22に示されるように、第1エア流路140上には、電磁弁143及びエアフィルタ144が設置されている。電磁弁143は、イオナイザ141の下流側に配置されており、第1エア流路140を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。電磁弁143は、開状態に切り替えられた際に、下流側にイオンエアを供給可能とするとともに、イオンエアを適宜排気してエア圧力を減圧調整するようになっている。なお、本実施形態の電磁弁143は、単動ソレノイドによって作動する2位置、直動ノーマルクローズの電磁弁であり、後述する制御装置101から出力される制御信号に基づいて開状態に切り替えられる。また、エアフィルタ144は、電磁弁143の下流側に配置されており、第1エア流路140内を通過するイオンエアに含まれる異物を除去するようになっている。
【0043】
なお、エアフィルタ144を通過したイオンエアは、前記帯電防止チューブ99及び前記第2ポート92を介して吸引部20のエア流路71に導かれる。ここで、イオナイザ141から吸引部20に至るまでの機器は、導電性を付与した帯電防止材料を用いて構成されている。具体的に言うと、電磁弁143及びエアフィルタ144は、導電性金属によって形成されている。また、イオナイザ141と電磁弁143とをつなぐ流路、電磁弁143とエアフィルタ144とをつなぐ流路、及び、エアフィルタ144と吸引部20とをつなぐ流路は、ポリウレタンにカーボンブラックを混入させた材料からなる帯電防止チューブ99を用いて形成されている。
【0044】
図22に示されるように、前記第2エア流路150上には集塵ユニット151が設置されている。集塵ユニット151は、電磁弁152、エジェクタ153,154、サイレンサ155、逆止弁156及びエアフィルタ157を備えている。電磁弁152は、前記空気圧調整ユニット133の下流側に配置されており、第2エア流路150を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。電磁弁152は、開状態に切り替えられた際に、エジェクタ153にエアを供給可能とするとともに、エアを適宜排気してエア圧力を減圧調整するようになっている。なお、本実施形態の電磁弁152は、単動ソレノイドによって作動する2位置、直動ノーマルクローズの電磁弁であり、制御装置101から出力される制御信号に基づいて開状態に切り替えられる。エジェクタ153は、電磁弁152及びエアフィルタ157の下流側に配置されている。エジェクタ153は、吸引部20の集塵穴42近傍にあるエアを、集塵流路191、第3ポート93及びエアフィルタ157等を介して吸引するようになっている。そして、エジェクタ153に吸引されたエアは、エジェクタ154に流れるようになっている。また、エジェクタ154は、エジェクタ153、エアフィルタ157及び逆止弁156の下流側に配置されている。エジェクタ154は、集塵穴42近傍にあるエアを、集塵流路191、第3ポート93、エアフィルタ157及び逆止弁156等を介して吸引するようになっている。そして、エジェクタ154の下流側にはサイレンサ155が配置され、サイレンサ155は、エジェクタ154から流れてきたエアを排気するとともに、エアの排気音を小さくするようになっている。また、逆止弁156は、エジェクタ154とエアフィルタ157との間に配置されており、エアがエアフィルタ157からエジェクタ154に流れるようにする一方、エアがエジェクタ154からエアフィルタ157に流れるのを防止するようになっている。
【0045】
図22に示されるように、前記第3エア流路160上には吸着ユニット161が設置されている。また、第3エア流路160は、基板吸着流路158と真空破壊流路159とに分岐している。
【0046】
基板吸着流路158上には、第1電磁弁162、エジェクタ163,164、サイレンサ165、逆止弁166及びエアフィルタ167が設置されている。第1電磁弁162は、空気圧調整ユニット133の下流側に配置されており、基板吸着流路158を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。第1電磁弁162は、開状態に切り替えられた際に、エジェクタ163にエアを供給可能とするとともに、エアを適宜排気してエア圧力を減圧調整するようになっている。なお、本実施形態の第1電磁弁162は、単動ソレノイドによって作動する2位置、直動ノーマルクローズの電磁弁であり、制御装置101から出力される制御信号に基づいて開状態に切り替えられる。エジェクタ163は、第1電磁弁162及びエアフィルタ167の下流側に配置されている。エジェクタ163は、吸引部20の真空吸着穴45近傍にあるエアを、吸着流路195、第1ポート91及びエアフィルタ167等を介して真空引きするようになっている。そして、エジェクタ163に吸引されたエアは、エジェクタ164に流れるようになっている。また、エジェクタ164は、エジェクタ163、エアフィルタ167及び逆止弁166の下流側に配置されている。エジェクタ164は、真空吸着穴45近傍にあるエアを、吸着流路195、第1ポート91、エアフィルタ167及び逆止弁166等を介して真空引きするようになっている。そして、エジェクタ164の下流側にはサイレンサ165が配置され、サイレンサ165は、エジェクタ164から流れてきたエアを排気するとともに、エアの排気音を小さくするようになっている。また、逆止弁166は、エジェクタ164とエアフィルタ167との間に配置されており、エアがエアフィルタ167からエジェクタ164に流れるようにする一方、エアがエジェクタ164からエアフィルタ167に流れるのを防止するようになっている。
【0047】
図22に示されるように、前記真空破壊流路159上には、第2電磁弁168、流量調整弁169及び圧力スイッチ170が設置されている。第2電磁弁168は、空気圧調整ユニット133の下流側に配置されており、真空破壊流路159を開状態または閉状態に切り替えるようになっている。第2電磁弁168は、開状態に切り替えられた際に、エアフィルタ167と吸引部20とをつなぐ接続流路にエアを供給して、その接続流路の真空度を弱めるようになっている。それとともに、第2電磁弁168は、開状態に切り替えられた際に、真空破壊流路159を流れるエアを適宜排気して減圧調整するようになっている。なお、本実施形態の第2電磁弁168は、単動ソレノイドによって作動する2位置、直動ノーマルクローズの電磁弁であり、制御装置101から出力される制御信号に基づいて開状態に切り替えられる。また、流量調整弁169は、第2電磁弁168と圧力スイッチ170とをつなぐ流路の途中に配置されており、真空破壊流路159を流れるエアを定量的に排気してそのエアの圧力が一定値となるよう減圧調整する絞り弁である。圧力スイッチ170は、流量調整弁169及びエアフィルタ167の下流側に配置されている。圧力スイッチ170は、真空破壊流路159内の圧力が所定値を超えたこと(即ち、真空破壊されていること)を契機としてオン状態となり、真空破壊信号を制御装置101のCPU102に対して出力するようになっている。
【0048】
次に、非接触搬送装置1の電気的構成について説明する。
【0049】
図22に示されるように、非接触搬送装置1は、装置全体を制御する制御装置101を備えている。制御装置101は、CPU102、ROM103、RAM104及び入出力回路等により構成されている。CPU102は、エア供給バルブ132、イオナイザ141、電磁弁143,152、第1電磁弁162及び第2電磁弁168に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。
【0050】
また、CPU102には、前記静電電位センサ105から出力された静電気測定信号が入力されるようになっている。そして、CPU102は、静電気測定信号が示す静電気の電荷の極性に基づいて、前記吸引部20によって吸引される配線基板110が正(+)に帯電しているか負(−)に帯電しているかを判定するようになっている。配線基板110が正に帯電していると判定された場合、CPU102は、イオナイザ141に駆動信号を出力し、直流電圧を印加して負極側の放電針に陰イオンを発生させる制御を行うようになっている。一方、配線基板110が負に帯電していると判定された場合、CPU102は、イオナイザ141に駆動信号を出力し、直流電圧を印加して正極側の放電針に陽イオンを発生させる制御を行うようになっている。このような制御によれば、配線基板110に帯電した静電気を確実に中和させることができる。
【0051】
なお本実施形態では、DC方式のイオナイザ141を用いているが、それに代えてAC方式のイオナイザを用いてもよい。AC方式のイオナイザは、イオナイザ本体と、イオナイザ本体内に突出する1本の放電針と、放電針に交流電圧を印加する高圧電源とを備えている。放電針は、交流電圧が印加された際に、印加する交流電圧の極性に応じて陽イオンまたは陰イオンを発生させるようになっている。この場合、CPU102は、静電電位センサ105から出力された静電気測定信号が入力されると、静電気測定信号が示す静電気の電荷量に基づいて配線基板110が帯電しているか否かを判定する。配線基板110が帯電していると判定された場合、CPU102は、イオナイザ141に駆動信号を出力し、イオナイザ141の出力を強くする制御を行う。一方、配線基板110が帯電していないと判定された場合、CPU102は、イオナイザ141に駆動信号を出力し、イオナイザ141の出力を弱くする制御を行う。このような制御によれば、配線基板110の帯電を確実に防止することができる。また、イオナイザ141が必要以上に作動することを防止することができる。
【0052】
次に、配線基板110の非接触搬送方法を説明する。
【0053】
本実施形態の配線基板110は、複数の製造工程を経て製造され、導通検査を行う検査工程を受けた後に出荷される。なお、配線基板110は、製造工程が終了する度に基板支持台171上に配置される(図23参照)。この状態において、非接触搬送装置1を用いて配線基板110を搬送する搬送工程を行う。詳述すると、搬送用多関節ロボット2のアーム3を駆動して搬送ヘッド11を下降させる。さらに、エアシリンダ15を駆動してロッドを突出させ、配線基板110の基板主面120に吸引部20の吸引面21を接近させる。
【0054】
この状態において、CPU102は、エア供給バルブ132、イオナイザ141及び電磁弁143,152に駆動信号を出力する。これにより、エア供給バルブ132及び電磁弁143,152が開状態に切り替わるとともに、イオナイザ141が作動する。その結果、エア供給源131から送り出された加圧エアが、エア供給流路130を通過して第1エア流路140上のイオナイザ141に流入する。イオナイザ141は、イオナイザ本体142内に導かれてきたエアにイオンを混合させることにより、イオンエアを生成する。そして、イオナイザ141は、生成したイオンエアをイオナイザ141の下流側に放出する。さらに、イオナイザ141から放出されたイオンエアが、第1エア流路140及び第2ポート92(図5,図22のb参照)を介して吸引部20内に流入し、ノズル本体61のエア流路71に導かれる。
【0055】
そして、エア流路71に導かれたイオンエアは、迂回流路72、空間S及び第1エア吹出穴81を順番に通過し、第1エア吹出穴81から凹部73の内周面に沿って噴出する。さらに、第1エア吹出穴81から噴出されたイオンエアは、凹部73の周方向に沿って流れて旋回流F1を形成する。その後、旋回流F1の流速が遠心力で高められることにより、旋回流F1が高速流となる。さらに、旋回流F1を形成したイオンエアの一部は、凹部73外に流出して吸引面21と基板主面120との隙間を通過し、この際に高速流となって吸引部20の外側に放出される(図23の矢印F2参照)。その結果、吸引面21と基板主面120との間に生じた空間が負圧となり、配線基板110の基板主面120が吸引面21に吸引保持される。
【0056】
また、エア流路71に導かれたイオンエアは、第2エア吹出穴82に流入し、第2エア吹出穴82から配線基板110の基板主面120に向けて垂直に吹き付けられる。これにより、基板主面120上の異物が除去される。
【0057】
なお、本実施形態の搬送工程では、イオンエアに含まれるイオンを接触させて配線基板110に帯電した静電気を除去する除電工程を同時に行う。詳述すると、旋回流F1を形成するイオンエアと第2エア吹出穴82から吹き付けられたイオンエアとを基板主面120に衝突させ、イオンエアに含まれるイオンを基板主面120に接触させる。その結果、配線基板110に帯電した静電気が中和されて除去される。
【0058】
また、エア供給源131から送り出された加圧エアは、エア供給流路130を通過して第2エア流路150上のエジェクタ153,154に流入する。なお、エジェクタ153,154は、吸引部20の集塵穴42近傍にあるイオンエア(即ち、旋回流F1を形成したイオンエアの大部分)を、集塵流路191、第3ポート93(図5,図22のc参照)を介して吸引する。これにより、配線基板110の基板主面120上に付着している異物がイオンエアとともに回収される。なお、集塵穴42から吸引されるイオンエアの総流量は、第1エア吹出穴81から噴出されるイオンエアの総流量よりも大きくなるように設定されている。
【0059】
次に、エアシリンダ15を駆動してロッドを後退させ、吸引部20を配線基板110と共に上昇させる。なお、吸引部20を上昇させる前の段階では、ロッドが下方に突出しているため、基板保持部材181の接触部184の先端面が吸引部20の吸引面21よりも上方に位置している。このとき、配線基板110に接触部184が接触しないため、配線基板110を傷付ける心配がない。そして、配線基板110を、基板支持台171から離間させるとともに、基板保持部材181の接触部184に近づける。その結果、各接触部184の面取り部185が配線基板110の外周縁(四辺)に接触し、配線基板110が位置ずれ不能に保持固定される(図24参照)。なお図24では、説明の便宜上、吸引面21と基板主面120との隙間を大きくしているが、実際の隙間はもっと狭く(例えば1mm以下)になっている。
【0060】
この状態において、CPU102は、第1電磁弁162に駆動信号を出力する。これにより、第1電磁弁162が開状態に切り替わり、エア供給源131から送り出された加圧エアが、エア供給流路130及び第3エア流路160を通過して基板吸着流路158上のエジェクタ163,164に流入する。なお、エジェクタ163,164は、吸引部20の真空吸着穴45近傍にあるイオンエアを、吸着流路195、第1ポート91(図5,図22のa参照)を介して真空引きする。その結果、ベルヌーイ効果による吸引力と真空引きによる吸着力とによって、配線基板110の基板主面120が吸引面21により安定的に吸引保持される。なお本実施形態では、ベルヌーイ効果を利用して配線基板110を吸引する力よりも、真空引きによって配線基板110を吸着する力のほうが大きくなっている。
【0061】
次に、搬送用多関節ロボット2のアーム3を駆動し、検査工程用のラインに配線基板110を搬送する。そして、検査工程用のラインにおいて配線基板110の釈放を行い、検査工程用のラインの基板支持台上に配線基板110を配置する。具体的に言うと、CPU102は、第2電磁弁168に駆動信号を出力する。これにより、第2電磁弁168が開状態に切り替わり、エア供給源131から送り出された加圧エアが、エア供給流路130及び第3エア流路160を通過して真空破壊流路159に導かれ、エアフィルタ167と吸引部20とをつなぐ接続流路に供給される。その結果、接続流路の真空破壊が行われ、接続流路の真空度が弱められ、配線基板110を吸引する力が弱くなる。
【0062】
次に、エアシリンダ15を駆動してロッドを突出させることにより、吸引部20を下降させる。これにより、配線基板110の基板主面120に吸引部20の吸引面21が接近するとともに、配線基板110が基板保持部材181から遠ざけられて各接触部184と非接触の状態となる。そして、CPU102は、電磁弁143を閉状態に切り替える制御を行い、第1エア流路140を遮断する。それと同時に、CPU102は、電磁弁152を閉状態に切り替える制御を行って第2エア流路150を遮断するとともに、第1電磁弁162及び第2電磁弁168を閉状態に切り替える制御を行って第3エア流路160を遮断する。これにより、吸引部20へのイオンエアの供給が停止され、第1エア吹出穴81及び第2エア吹出穴82からのイオンエアの噴出が終了する。また、集塵穴42からのイオンエアの吸引が終了するとともに、真空吸着穴45からのイオンエアの真空引きが終了する。その結果、搬送工程が終了し、配線基板110が検査工程用のラインの基板支持台上に配置される。
【0063】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0064】
(1)本実施形態の非接触搬送装置1では、イオナイザ141から放出されるイオンエアを旋回流F1を形成するエアとして用いているため、イオンエアの一部を配線基板110の基板主面120に衝突させて、イオンエアに含まれるイオンを基板主面120に接触させることができる。これにより、配線基板110に帯電した静電気が中和されるため、静電気に起因する配線基板110への異物の付着を抑えることができる。ゆえに、搬送後の導通検査において、基板主面120上のはんだバンプ118に対してプローブ(図示略)を当接させた際に、プローブとはんだバンプ118との間に導通しない異物が噛み込むことが防止される。その結果、配線基板110が異物の存在に起因して不良品であると判定されにくくなるため、配線基板110の歩留まりを向上することができる。
【0065】
(2)本実施形態では、イオナイザ141が吸引部20とは別体になっており、両者が流路的に接続されているため、イオナイザ141を吸引部20に設ける場合に比べて、吸引部20の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0066】
(3)例えば、イオナイザ141を基板支持台171の近傍に設置し、イオナイザ141から放出したイオンエアを直接配線基板110に接触させることにより、配線基板110に帯電した静電気を除去することが考えられる。しかし、搬送用多関節ロボット2のアーム3を駆動して配線基板110を搬送する際には、イオンエアを配線基板110に接触させることができない。そこで本実施形態では、配線基板110の至近距離から常時イオンエアを噴出させている。この場合、搬送時にイオンエアを配線基板110に接触させ続けることができるため、配線基板110に帯電した静電気を素早く除去することができる。
【0067】
(4)例えば、吸引部20の凹部73内にイオンを発生させる放電針を設け、放電針によって発生させたイオンをエア吹出穴81,82から噴出したエアに混合させて、イオンエアを形成することが考えられる。しかし、噴出したエアの流れは速いため、エアにイオンを混合させることは困難である。その結果、エアを配線基板110に接触させたとしても、配線基板110に帯電した静電気を除去できない可能性がある。そこで本実施形態では、イオナイザ141から放出されたイオンエアをエア吹出穴81,82から噴出させている。この場合、エア吹出穴81,82から噴出されるイオンエアには確実にイオンが混合されているため、イオンエアを配線基板110に接触させれば、配線基板110に帯電した静電気を確実に除去することができる。
【0068】
(5)本実施形態では、第1エア吹出穴81から噴出して旋回流F1を形成するエアをイオンエアとしているため、イオンエアを噴出するエア吹出穴を第1エア吹出穴81とは別々に設ける必要がない。しかも、第1エア吹出穴81から噴出されるエアだけでなく、第2エア吹出穴82から噴出されるエアもイオンエアである。このため、第2エア吹出穴82から噴出されるエアに、基板主面120上の異物を除去する機能だけでなく、静電気を中和させる機能も持たせることができる。従って、配線基板110に帯電した静電気を効率良く中和させることができる。しかも、本実施形態の吸引部20では、旋回流F1を形成するエアとイオンエアとが共通の流路を介して供給され、ノズル本体61内において第1エア吹出穴81と第2エア吹出穴82とに振り分けられている。このため、旋回流F1を形成するエアが流れる旋回流形成流路とイオンエアが流れるイオン流路とを別々に形成する場合に比べて、吸引部20の小型化、軽量化、構成の簡略化を図ることができる。
【0069】
(6)従来の搬送方法として、エア吸着穴が開口された吸着ヘッドの下面に配線基板110の基板主面120を負圧で吸着し、この状態で、配線基板110を吸着ヘッドとともに搬送する技術が提案されている。しかし、吸着ヘッドで配線基板110を搬送すると、基板主面120上に配置された突起電極(端子パッド116及びはんだバンプ118)が吸着ヘッドに押し潰されて変形してしまう可能性がある。
【0070】
そこで本実施形態では、基板保持固定時に、基板保持部材181の接触部184に設けられた面取り部185を配線基板110の外周縁に接触させている。これにより、基板主面120の吸引面21への接触が避けられるため、基板主面120上の突起電極を傷付けなくて済むようになる。また、面取り部185が配線基板110の外周縁に接触することで、配線基板110と接触部184との接触面積が小さくなるため、配線基板110が傷付くことを確実に防止できる。
【0071】
なお、本実施形態を以下のように変更してもよい。
【0072】
・上記実施形態では、第1エア流路140上にイオナイザ141が設置されていたが、イオナイザ141は、エア供給流路130上に設置されていてもよい。即ち、イオナイザ141は、吸引部20のエア流路71にエアを導く経路であれば、どの部分に設置されていてもよい。しかし、イオナイザ141は、第1エア流路140上に設置されていることが好ましい。仮に、イオナイザ141をエア供給流路130上に設置すると、イオンエアの一部が、電磁弁152→エジェクタ153→エジェクタ154→サイレンサ155の順番に流れてサイレンサ155から排出される。しかも、イオンエアの一部が、第1電磁弁162→エジェクタ163→エジェクタ164→サイレンサ165の順番に流れてサイレンサ165からも排出される。その結果、多くのイオンエアが無駄になってしまう。
【0073】
・上記実施形態において、集塵ユニット151及び吸着ユニット161の少なくとも一方を省略してもよい。また、吸着ユニット161を省略しない場合、吸着ユニット161の真空破壊流路159上に設置された機器(第2電磁弁168、流量調整弁169及び圧力スイッチ170)を省略してもよい。
【0074】
・上記実施形態では、基板保持部材181の接触部184に静電電位センサ105が設置されていたが、静電電位センサ105は、基板支持台171などの他の場所に設置されていてもよい。
【0075】
・上記実施形態では、エア供給バルブ132、イオナイザ141、電磁弁143、電磁弁152、第1電磁弁162及び第2電磁弁168の制御を1つのCPU102で制御するようにしたが、各制御を別々のCPUで行うように構成してもよい。
【0076】
・上記実施形態では、配線基板110の基板主面120を吸引面21に吸引保持した後、ロッドを後退させて吸引部20を配線基板110と共に上昇させることにより、基板保持部材181の接触部184を配線基板110の外周縁に接触させて、配線基板110を位置ずれ不能に保持固定していた。しかし、ロッドが後退した状態の搬送ヘッド11を下降させて吸引部20を配線基板110に接近させると同時に、接触部184を配線基板110の外周縁に接触させ、その後に吸引部20によって配線基板110を吸引保持してもよい。
【0077】
・上記実施形態の非接触搬送装置1は、単一製品の配線基板110を搬送するようになっていたが、例えば、配線基板110となるべき基板形成領域が平面方向に沿って複数配置された多数個取り用配線基板を搬送するようにしてもよい。
【0078】
・上記実施形態では、吸引部20を装着した搬送用多関節ロボット2を用いて配線基板110を搬送していたが、吸引部20を装着したコンベアなどの搬送手段を用いて配線基板110を搬送してもよい。
【0079】
次に、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0080】
(1)吸引面に凹部が設けられるとともに、前記凹部の内周面にて開口するエア吹出穴である第1エア吹出穴が設けられた吸引部を備え、前記第1エア吹出穴から前記凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する非接触搬送装置において、前記基板主面にエアを吹き付けるための第2エア吹出穴を前記凹部内において前記第1エア吹出穴とは異なる位置に設け、前記吸引部とは別体にイオナイザを設け、前記イオナイザから放出されるイオンエアを前記第1エア吹出穴から噴出するエアとして用いることを特徴とする配線基板の非接触搬送装置。
【0081】
(2)吸引面に凹部が設けられるとともに、前記凹部の内周面にて開口するエア吹出穴が設けられた吸引部を備え、前記エア吹出穴から前記凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する非接触搬送装置において、前記基板主面上の異物を回収する集塵穴を前記吸引面における前記凹部の外側領域にて開口するように配設し、前記吸引部とは別体にイオナイザを設け、前記イオナイザから放出されるイオンエアを前記エア吹出穴から噴出するエアとして用いることを特徴とする配線基板の非接触搬送装置。
【0082】
(3)吸引面に凹部が設けられるとともに、前記凹部の内周面にて開口するエア吹出穴が設けられた吸引部を備え、前記エア吹出穴から凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する非接触搬送装置において、前記基板主面を前記吸引面に吸引保持した際に前記配線基板の外周縁に接触させて、前記配線基板を位置ずれ不能に保持固定する基板保持部材を設け、前記吸引部とは別体にイオナイザを設け、前記イオナイザから放出されるイオンエアを前記エア吹出穴から噴出するエアとして用いることを特徴とする配線基板の非接触搬送装置。
【0083】
(4)吸引面に凹部が設けられるとともに、前記凹部の内周面にて開口するエア吹出穴が設けられた吸引部を備え、前記エア吹出穴から前記凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する非接触搬送装置において、真空引きするための真空吸着穴を、前記凹部の外側領域にて開口するように配設し、前記吸引部とは別体にイオナイザを設け、前記イオナイザから放出されるイオンエアを前記エア吹出穴から噴出するエアとして用いることを特徴とする配線基板の非接触搬送装置。
【0084】
(5)吸引面に凹部が設けられるとともに、前記凹部の内周面にて開口するエア吹出穴である第1エア吹出穴が設けられた吸引部を備え、前記第1エア吹出穴から前記凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する非接触搬送装置において、前記吸引部は、金属材料からなる吸引部本体と、前記吸引部本体の下面にて開口する収容凹部に収容された筒状のノズル本体と、前記収容凹部の開口端面に取り付けられる樹脂製パッドとを備え、前記吸引面の一部を構成する前記ノズル本体の下端面に前記凹部を設け、前記凹部の中心に除塵用ノズルを突設し、前記基板主面にエアを吹き付けるための第2エア吹出穴を前記除塵用ノズルの先端にて開口するように設け、前記ノズル本体の内部に、前記第1エア吹出穴及び前記第2エア吹出穴の両方にエアを供給する共通のエア流路を設け、前記エア流路の内壁面及び前記ノズル本体の外周面にて開口する迂回流路を設け、前記迂回流路を通過して前記ノズル本体の外周面と前記収容凹部の内側面側との間に生じる空間に導かれたエアを、前記ノズル本体の外周面にて開口する前記第1エア吹出穴に導くようにし、前記基板主面上の異物を回収する集塵穴を、前記吸引面における前記凹部を包囲するように凹部外周縁に沿って複数箇所に配設し、真空引きするための真空吸着穴を、前記凹部の外側領域にて開口するように複数配設し、複数の前記真空吸着穴に連通する個々の吸着流路を前記吸引部本体の内部にて共通吸着流路に合流させ、複数の前記集塵穴に連通する個々の集塵流路を前記吸引部本体の内部にて共通集塵流路に合流させるとともに、前記共通吸着流路及び前記共通集塵流路を真空引き手段に接続し、前記吸引部とは別体にイオナイザを設け、前記イオナイザから放出されるイオンエアを前記第1エア吹出穴から噴出するエアとして用いることを特徴とする配線基板の非接触搬送装置。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明を具体化した一実施形態の非接触搬送装置を示す概略図。
【図2】配線基板の概略構成を示す断面図。
【図3】搬送ヘッドの概略構成を示す断面図。
【図4】搬送ヘッドの概略構成を示す側面図。
【図5】吸引部を示す正面図。
【図6】吸引部を示す上面図。
【図7】吸引部を示す下面図。
【図8】図6のA−A線断面図。
【図9】上蓋部を示す上面図。
【図10】吸引部本体を示す上面図。
【図11】図10のB−B線断面図。
【図12】吸引部本体を示す下面図。
【図13】ノズル支持体を示す上面図。
【図14】図13のC−C線断面図。
【図15】ノズル本体を示す正面図。
【図16】ノズル本体を示す上面図。
【図17】ノズル本体を示す下面図。
【図18】図16のD−D線断面図。
【図19】樹脂製パッドを示す上面図。
【図20】図19のE−E線断面図。
【図21】図19のF−F線断面図。
【図22】非接触搬送装置を示す回路図。
【図23】配線基板の非接触搬送方法を示す説明図。
【図24】配線基板の非接触搬送方法を示す説明図。
【符号の説明】
【0086】
1…非接触搬送装置
20…吸引部
21…吸引面
73…凹部
81…エア吹出穴としての第1エア吹出穴
99…機器としての帯電防止チューブ
110…被搬送物としての配線基板
116…突起電極としての端子パッド
118…突起電極としてのはんだバンプ
119…電極形成領域
120…基板主面
141…イオナイザ
143…機器としての電磁弁
144…機器としてのエアフィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引面に凹部が設けられるとともに、前記凹部の内周面にて開口するエア吹出穴が設けられた吸引部を備え、前記エア吹出穴から前記凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する非接触搬送装置において、
前記吸引部とは別体にイオナイザを設け、前記イオナイザから放出されるイオンエアを前記エア吹出穴から噴出するエアとして用いる
ことを特徴とする配線基板の非接触搬送装置。
【請求項2】
前記イオナイザから前記吸引部に至るまでの機器は、導電性を付与した帯電防止材料を用いて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線基板の非接触搬送装置。
【請求項3】
前記配線基板は、複数の突起電極が配置された電極形成領域を前記基板主面上に有する樹脂製配線基板であることを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板の非接触搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非接触搬送装置を用いて、複数の突起電極が配置された電極形成領域を前記基板主面上に有する樹脂製配線基板を搬送する搬送工程を行うことにより、前記樹脂製配線基板を製造する方法であって、
前記イオンエアに含まれるイオンを接触させて前記樹脂製配線基板に帯電した静電気を除去する除電工程を、前記搬送工程と同時に行う
ことを特徴とする樹脂製配線基板の製造方法。
【請求項5】
吸引部の吸引面に設けられた凹部の内周面にて開口するエア吹出穴を設け、前記エア吹出穴から前記凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する方法において、
前記エア吹出穴から噴出するエアとして、前記吸引部とは別体に設けられたイオナイザから放出されるイオンエアを用いることを特徴とする配線基板の非接触搬送方法。
【請求項1】
吸引面に凹部が設けられるとともに、前記凹部の内周面にて開口するエア吹出穴が設けられた吸引部を備え、前記エア吹出穴から前記凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する非接触搬送装置において、
前記吸引部とは別体にイオナイザを設け、前記イオナイザから放出されるイオンエアを前記エア吹出穴から噴出するエアとして用いる
ことを特徴とする配線基板の非接触搬送装置。
【請求項2】
前記イオナイザから前記吸引部に至るまでの機器は、導電性を付与した帯電防止材料を用いて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線基板の非接触搬送装置。
【請求項3】
前記配線基板は、複数の突起電極が配置された電極形成領域を前記基板主面上に有する樹脂製配線基板であることを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板の非接触搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非接触搬送装置を用いて、複数の突起電極が配置された電極形成領域を前記基板主面上に有する樹脂製配線基板を搬送する搬送工程を行うことにより、前記樹脂製配線基板を製造する方法であって、
前記イオンエアに含まれるイオンを接触させて前記樹脂製配線基板に帯電した静電気を除去する除電工程を、前記搬送工程と同時に行う
ことを特徴とする樹脂製配線基板の製造方法。
【請求項5】
吸引部の吸引面に設けられた凹部の内周面にて開口するエア吹出穴を設け、前記エア吹出穴から前記凹部の内周面に沿って噴出したエアにより発生する負圧によって、被搬送物である配線基板の基板主面を前記吸引面に吸引保持して搬送する方法において、
前記エア吹出穴から噴出するエアとして、前記吸引部とは別体に設けられたイオナイザから放出されるイオンエアを用いることを特徴とする配線基板の非接触搬送方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
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【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−98178(P2010−98178A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268884(P2008−268884)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
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