説明

酵素SOAT−1を阻害する新規N−フェニルアセトアミド誘導体並びにこれらを含む医薬組成物及び化粧品組成物

本発明は、一般式(I)の新規化合物並びにこのような化合物を含む化粧品組成物及び医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素SOAT-1(ステロール-O-アシルトランスフェラーゼ-1;ACAT-1[アシル-補酵素Aコレステロールアシルトランスフェラーゼ]とも称する)の阻害剤である新規N−フェニルアセトアミド誘導体に関する。本発明はまた、ヒト若しくは動物用医薬品における使用を意図する医薬組成物における、又は化粧品組成物におけるこれらの誘導体の使用、及びそれらの非治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
SOAT-1阻害型の活性を有する組成物は、コレステロール及びその誘導体が関与する生物学的プロセスを制御する活性を有するとして、文献に幅広く記載されている。この種の化合物は、このような性質により、多くの病態の治療及び予防に、より詳細には皮膚科学及び心血管系疾患又は中枢神経系の病気の治療及び予防に有力な可能性を有する。SOAT-1阻害剤の生物学的作用のほとんどは、酵素SOAT-1によるコレステロールエステルの合成阻害によって媒介される。SOAT-1阻害分子を記載している先行技術文献のうち、動脈硬化症又は高コレステロール血症の治療用化合物を記載しているものとしては、例えば、WO 96/10559、EP 0 370 740、EP 0 424 194、US 4 623 663、EP 0 557 171、US 5 003 106、EP 0 293 880、EP 0 433 662及びUS 5 106 873を挙げることができる。心血管系疾患、特に高コレステロール血症及び動脈硬化症の治療におけるSOAT-1阻害剤の治療可能性もまた、Kharbanda R. K.ら、Circulation、2005、11、804頁に記載されている。SOAT-1阻害剤のアルツハイマー病治療可能性もまた、文献、例えば、Puglielli, L.ら、Nature Neurosciences 2003、6(4)、345頁によって報告されている。
【0003】
特許US 6 133 326、US 6 271 268及びWO 2005/034931は、皮脂の産生を阻害するSOAT-1阻害化合物を記載している。特に皮膚科学の分野においては、過剰な皮脂の産生及びそれに関連する全ての症状を予防することが特に有益である。皮脂は皮脂腺によって産生され、皮脂腺は顔、肩、背中及び頭皮に最も集中してみられる。皮脂は皮膚表面で分泌され、皮膚表面において、皮膚の細菌叢及び真菌叢の制御を可能とする皮膚バリアや微小環境の維持に関連して、重要な役割を果たす。
【0004】
皮脂の過剰産生は一般に、脂ぎった外観の皮膚又は頭皮に関係し、不快感や容貌悪化の原因となる。更に、皮脂の過剰産生は、脂漏性皮膚炎を引き起こすと考えられ、ざ瘡発生又は悪化の増加と関連する。皮脂腺でSOAT-1によって産生されるコレステロールエステルは、Nikkari, T.によってJ. Invest. Derm. 1974、62、257頁に記載されるように、トリグリセリド、ワックスエステル及びスクアレンを含む数種の脂質の中の皮脂成分の1つである。したがって、この酵素又は他のアシルトランスフェラーゼの阻害により、皮脂産生の阻害が可能であると考えられる。特許US 6 133 326には特に、ACAT-1(SOAT-1としても知られる)阻害剤による皮脂の抑制が記載されている。しかし、現在のところ、このような阻害剤を用いた治療法は市販されていない。脂漏過多(hyperseborrhoea)に関連する障害を治療又は緩和することができる唯一の治療法は、全身ホルモン療法又は13-シス-レチノイン酸による全身療法であるが、それらの治療法には副作用があるため、適用分野が非常に限られる。したがって、皮脂の過剰産生に関連する病気及び病態を治療するための医薬品及び化粧品が明らかに必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 96/10559
【特許文献2】EP 0 370 740
【特許文献3】EP 0 424 194
【特許文献4】US 4 623 663
【特許文献5】EP 0 557 171
【特許文献6】US 5 003 106
【特許文献7】EP 0 293 880
【特許文献8】EP 0 433 662
【特許文献9】US 5 106 873
【特許文献10】US 6 133 326
【特許文献11】US 6 271 268
【特許文献12】WO 2005/034931
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kharbanda R. K.ら、Circulation、2005、11、804頁
【非特許文献2】Puglielli, L.ら、Nature Neurosciences 2003、6(4)、345頁
【非特許文献3】Nikkari, T.、J. Invest. Derm. 1974、62、257頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これに関連して、本発明は、酵素SOAT-1の強力な阻害剤である新規N−フェニルアセトアミド誘導体を提供することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの主題は、下記一般式(I):
【0009】
【化1】

[式中、
R1は、C1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキル、C1〜C6アルキルオキシ、C1〜C6フルオロアルキル、C1〜C6フルオロアルキルオキシ又は-(CH2)n-C3〜C7シクロアルキル基を表し、
R2及びR3は同一であるか又は異なり、水素、フッ素、塩素、臭素若しくはヨウ素原子又はC1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6アルキルオキシ、C1〜C6フルオロアルキル、又は、C1〜C6フルオロアルキルオキシ又は-(CH2)n-C3〜C7シクロアルキル基を表し、
R4及びR4’は同一であるか又は異なり、C1〜C6シクロアルキル、-(CH2)n-C3〜C7シクロアルキル、若しくは、任意選択で1個から3個のRa基で置換されているC1〜C6アルキル基を表し、又は、R4及びR4’は、それらを生じる炭素原子と環状C1〜C6アルキルを形成し、
R5は、S(O)p、COORbおよびCN基から選択される少なくとも1個、2個又は3個の同一又は異なる置換基で置換されているフェニル基(任意選択にRa基によって伴われる)、-(CH2)n-アリール基(前記アリール基は、1個または複数のS(O)p、COORaまたはCN基で置換されている)から選択される基を表し;
Raは、水素、フッ素若しくは塩素原子又はC1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキル、C1〜C6アルキルオキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6フルオロアルキル、又はC1〜C6フルオロアルキルオキシ基を表し、
Rbは、C1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキル又は-(CH2)n-C3〜C7シクロアルキル基を表し、
nは1、2、または3を表し、
pは、0、1又は2を表す]
に相当し、酵素SOAT-1の阻害剤である新規N−フェニルアセトアミド誘導体、並びにそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物又は水和物及びそれらの配座異性体又は回転異性体である。
【0010】
式(I)の化合物は、1個又は複数の不斉炭素原子を含むことができる。したがって、式(I)の化合物は、エナンチオマーの混合物又はジアステレオマーの混合物の形態で存在する場合がある。これらのエナンチオマー及びジアステレオマー並びにラセミ混合物を含むそれらの混合物は、本発明の一部をなす。
【0011】
式(I)の化合物は、塩基又は酸付加塩の形態で存在できる。このような酸付加塩は、本発明の一部をなす。これらの酸付加塩は、薬学的に許容される酸を用いて調製するのが有利であるが、例えば、式(I)の化合物の精製又は単離に有用な他の酸の塩もまた、本発明の一部をなす。これらの酸は、例えば、ピクリン酸、シュウ酸又は光学活性酸(例えば、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸若しくはカンファースルホン酸)、及び塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸二水素塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩又はp-トルエンスルホン酸などの生理学的に許容される塩を形成する酸であることができる。生理学的に許容される塩の総説については、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection and Use、Stahl及びWermuth著(Wiley-VCH、2002)を参照のこと。
【0012】
溶媒和物又は水和物は、合成プロセスの直後に得ることができ、化合物(I)は水和物、例えば、一水和物若しくは半水和物の形態で又は反応若しくは精製溶媒の溶媒和物の形態で単離できる。
【0013】
本発明は、1個又は複数の原子が、同じ原子番号を有するが天然で大勢を占めている原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子で置き換えられている、同位体標識された式(I)の薬学的に許容される化合物を含む。本発明の化合物に含めることができる同位体の例としては、2H及び3Hなどの水素同位体、11C、13C及び14Cなどの炭素同位体、36Clなどの塩素同位体、18Fなどのフッ素同位体、123I及び125Iなどのヨウ素同位体、13N及び15Nなどの窒素同位体、15O、17O及び18Oなどの酸素同位体、32Pなどのリン同位体並びに35Sなどのイオウ同位体が挙げられる。11C、18F、15O及び13Nなどの、陽電子を放出する同位体による置換は、陽電子放出型断層撮影(Positron Emission Tomography)検査において、受容体の占有の検討に有用であると考えられる。
【0014】
本発明の文脈において、以下の定義が適用される:
アリール: 6〜10個の炭素原子を含む単環式又は二環式芳香族基。言及できるアリール基の例としては、フェニル及びナフチル基が挙げられる。
b及びcが1〜6の値を取ることができるCb〜Cc: 炭素数がb〜cの炭化水素系鎖(例えば、C1〜C6は、1〜6個の炭素原子を含むことができる炭化水素系鎖である)、
アルキル: 直鎖又は分岐鎖飽和脂肪族基(例えば、C1〜C6アルキル基は炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖炭化水素系鎖、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル又はヘキシルを表す)、
シクロアルキル: 3〜7個の炭素原子を含む、任意選択で分岐した、飽和環状炭化水素系鎖(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルを表す)、
アルキルオキシ: -O-アルキル基、
アルキルチオ: -S-アルキル基、
フルオロアルキル: 1個又は複数の水素原子がフッ素原子で置き換えられているアルキル基、
フルオロアルキルオキシ: 1個又は複数の水素原子がフッ素原子で置き換えられているアルキルオキシ基。
【0015】
本発明によれば、前記で定義した式(I)の化合物の中で特に好ましいのは、以下の特性の1つ又はそれらの組み合わせを有するものである:
R1がメチル、エチル又はイソプロピル基を表す、
R2が塩素若しくは臭素原子又はメチル、エチル、イソプロピル若しくはtert-ブチル基を表す、
R3が水素原子を表す、
R4およびR4’はどちらも同じであり、メチル、エチル、プロピル基を表し、または、R4およびR4’基は、それらを生じる炭素原子と、シクロペンチル若しくはシクロヘキシル環を形成する。
【0016】
以下の化合物とそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物及び水和物並びにその配座異性体又は回転異性体とが特に好ましい:
4-{3-[(2,6-ジイソプロピルフェニルカルバモイル)メチル]-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-1-イル}安息香酸エチルエステル、
2-[1-(4-シアノフェニル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-3-イル]-N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)アセトアミド、
2-[1-(3-シアノ-4-メチルフェニル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-3-イル]-N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)アセトアミド、
N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-[1-(4-メチルスルファニルフェニル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-3-イル]アセトアミド、
N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-[1-(4-メタンスルホニルフェニル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-3-イル]アセトアミド、
4-{3-[(2,6-ジイソプロピルフェニルカルバモイル)メチル]-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-1-イル}安息香酸メチルエステル。
【0017】
本発明の主題はまた、一般式(I)の化合物の調製方法である。
【0018】
本発明によれば、式(I)の化合物は、下記スキーム1に記載した一般的方法に従って調製できる。
【0019】
【化2】

【0020】
R1、R2、R3、R4、R4’及びR5が前に定義した通りである式(I)の化合物は、スキーム1に従って並びに、比ゆ的に、例えば、Dunbar, B.ら、Pharmazie 2002、57 (7)、438頁;Pinza, M.ら、J. Med. Chem. 1993、36 (26)、4214頁;Coudert, P.ら、Pharm. Acta Helv. 1991、66 (5-6)、155頁又はUsifoh, C.O.、Arch. Pharm. 2001、334 (11)、366頁によって記載される反応を用いて、式(II)のジオキソ-イミダゾリジンと式(III)のクロロアセトアミドとを塩基の存在下で反応させることによって調製できる。R5’基は前記で定義したR5基又は当業者に知られている方法によってR5に転化されるR5の前駆体を表す。
【0021】
中間体(II)及び(III)の合成
一般式(II)のジオキソ-イミダゾリジンでは、( R4およびR4’が式(I)の化合物に関して前記で定義した通りである)、かつ、R5’基は、式(I)の化合物の化合物として前記に定義した通りであるか、当業者に知られている方法によってR5へ転化されるR5の前駆体である。一般式(II)のジオキソ-イミダゾリジンは、下記スキーム2によって調製できる。
【0022】
【化3】

【0023】
式(VI)のニトリル化合物は、例えば、Matsumoto K.ら、Helv. Chim. Acta 2005、88 (7)、1734〜1753頁又はNieto M.J.ら、J. Comb. Chem. 2005、7 (2)、258〜263頁に記載された条件に従って、トリメチルシリルシアニドの存在下で式(IV)のケトンと式(V)のアミンとを反応させることによって得られる。
【0024】
ケトン(IV)及びアミン(V)は市販化合物であるか、又は当業者に周知の手法に従って調製される。
【0025】
スキーム2経路1
式(II)のジオキソ-イミダゾリジン中間体は、例えば、特許DE 1 032 258に記載された条件に従って、ニトリル誘導体(VI)をイソシアン酸カリウムと反応させた後に酸性媒体で処理することよって、調製できる。
【0026】
スキーム2経路2
酸の存在下で、例えば、Beths R. L.ら、J. Chem. Soc.、1927、1310頁に記載された条件下において、式(VI)の化合物のニトリル官能基を加水分解させることによって、式(VII)の第1級アミドを得ることが可能である。Papadopoulos, E.P.ら、J. Org. Chem. 1977、42、3925頁に記載されたようにして、適切なイソシアン酸アリールの存在下で環化を行うことによって、式(II)のジオキソ-イミダゾリジンを得ることが可能である。
【0027】
一般式(III)のクロロアセトアミドは、下記スキーム3[式中、R1、R2及びR3は、式(I)の化合物に関して定義した通りである]に示されるように、例えば、Davion, Y.ら、Heterocycles 2004、63 (5)、1093頁又はJuaristi, E.ら、J. Org. Chem. 1999、64 (8)、2914頁に記載された塩基の存在下における式(VIII)のアニリンと塩化クロロアセチルとの反応によって、調製できる。
【0028】
【化4】

【0029】
この方法に使用する反応中間体中に存在する可能性のある官能基は、予想化合物の絶対的な合成を確実にする保護基によって不可逆的に又は一時的に保護することができる。保護反応及び脱保護反応は、当業者に周知の手法に従って実施する。用語「アミン、アルコール又はカルボン酸の一時的保護基」は、「Protective Groups in Organic Chemistry」、McOmie J.W.F.編、Plenum Press、1973;「Protective Groups in Organic Synthesis」、第2版、Greene T.W.及びWuts P.G.M.、John Wiley & Sons発行、1991;並びに「Protecting Groups」、Kocienski P.J.、1994、Georg Thieme Verlagに記載されたような保護基を意味する。
【0030】
本発明による化合物(I)並びにそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物及び/又は水和物は、酵素SOAT-1に対する阻害特性を有する。酵素SOAT-1に対するこの阻害活性は、実施例7に記載したように、HepG2一次酵素試験(primary enzymatic test)によって測定する。本発明の好ましい化合物は、酵素反応を50%阻害できる濃度(IC50)が1000nM以下、優先的には300nM以下、有利には50nM以下である。
【0031】
本発明の主題はまた、医薬としての、前述した式(I)の化合物、それらの薬学的に許容される塩並びにそれらの薬学的に許容される溶媒和物及び/又は水和物である。
【0032】
本発明の主題はまた、脂漏過多、ざ瘡、脂漏性皮膚炎若しくはアトピー性皮膚炎などの皮脂腺障害、眼瞼炎若しくはマイボーム腺炎(マイボーム腺の障害)などの眼病態、又は高コレステロール血症、動脈硬化症若しくはアルツハイマー病などの病態の予防及び/又は治療用医薬の製造のための、式(I)の少なくとも1種の化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物及び/若しくは水和物の使用である。本発明による化合物は、ざ瘡治療用の医薬組成物の製造に特に好適である。このように、本発明による化合物は、前記病態への使用に好適である。
【0033】
本発明の主題はまた、生理学的に許容される担体中に、少なくとも1種の前記で定義した式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物及び/若しくは水和物を含む医薬組成物又は化粧品組成物である。したがって、本発明による組成物は、所望の化粧品又は医薬の形態及び選択された投与方法に従って選択される、生理学的に許容される担体又は少なくとも1種の生理的に若しくは薬学的に許容される添加剤を含む。
【0034】
用語「生理学的に許容される担体又は媒体」は、皮膚、粘膜及び/又は外皮と適合性の担体を意味する。
【0035】
本発明による組成物の投与は、経腸、非経口、直腸、局所又は眼経路によって実施できる。好ましくは、医薬組成物は、局所適用に好適な形態に調整する。
【0036】
経腸経路を用いる場合、組成物、より詳細には医薬組成物は、錠剤、ゲルカプセル剤、コーティング錠、シロップ剤、懸濁剤、液剤、散剤、顆粒剤、乳剤、制御放出を可能にするマイクロスフェア若しくはナノスフェア又は脂質若しくはポリマーベシクルの形態であることができる。非経口経路を用いる場合、組成物は、灌流又は注射用の液剤又は懸濁剤の形態であることができる。
【0037】
本発明による組成物は、目的とする治療効果、予防効果又は美容効果を得るのに充分な量の、本発明による化合物を、含む。本発明による化合物は一般に、約0.001〜100mg/kg体重の日用量で1日1〜3回に分けて投与する。化合物は全身的には、組成物の重量に対して、一般に0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜2重量%の濃度で使用する。
【0038】
局所経路を用いる場合、本発明による医薬組成物は、より詳細には、皮膚及び粘膜の治療を意図するものであり、軟膏剤、クリーム剤、乳剤、ポマード、散剤、含浸パッド、合成洗剤(syndet)、液剤、ゲル剤、スプレー剤、ムース剤、懸濁剤、ローション剤、スティック剤、シャンプー又は洗浄ベースの形態であることができる。これはまた、制御放出を可能にする、ミクロスフェア若しくはナノスフェア又は脂質若しくはポリマーベシクルの懸濁剤又はパッチ剤及びヒドロゲル剤の形態であることもできる。この局所用組成物は、無水形態、含水形態又は乳剤の形態であることができる。
【0039】
化合物は局所的には、組成物の総重量に対して、一般に0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜2重量%の濃度で使用される。
【0040】
本発明による式(I)の化合物並びにそれらの薬学的に許容される塩又は溶媒和物及び/若しくは水和物はまた、化粧品分野で、特に身体及び毛髪衛生用に、より詳細には皮膚若しくは毛髪又は頭皮の油っぽさの抑制又は予防に使用される。
【0041】
したがって、本発明の主題は、生理学的に許容される担体中に、少なくとも1種の式(I)の化合物を、任意選択でその薬学的に許容される塩又は溶媒和物及び/若しくは水和物の形態で含む身体又は毛髪の衛生のための組成物の化粧品としての使用である。
【0042】
化粧品として許容される担体中に少なくとも1種の式(I)の化合物或いはその薬学的に許容される塩又は溶媒和物及び/若しくは水和物を含む、本発明による化粧品組成物は特に、クリーム、乳液、ローション、ジェル、軟膏、ポマード、ミクロスフェア若しくはナノスフェア又は脂質若しくはポリマーベシクルの懸濁液、含浸パッド、化粧液、スプレー、ムース、スティック、石けん、シャンプー或いは洗浄ベースの形態であることができる。
【0043】
化粧品組成物の式(I)の化合物の濃度は、組成物の全重量に対して0.001〜3重量%である。
【0044】
前述の医薬及び化粧品組成物はまた、医薬組成物に関して不活性な又は薬理活性さえある添加物又はこれらの添加物、特に
湿潤剤、
フレーバーエンハンサー、
保存剤、例えば、パラヒドロキシ安息香酸エステル、
安定剤、
湿度調整剤、
pH調整剤、
浸透圧調整剤、
乳化剤、
UV-A及びUV-B遮断剤、
酸化防止剤、例えば、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール若しくはブチルヒドロキシトルエン、スーパーオキシドジスムターゼ、ユビキノール又は特定の金属キレート化剤、
皮膚軟化剤(emollient)、
保湿剤(moisturizer)、例えば、グリセロール、PEG-400、チアモルホリノン及びその誘導体、又は尿素
カロテノイド、特にβ-カロテン、
α-ヒドロキシ酸及びα-ケト酸若しくはそれらの誘導体(例えば、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、マンデル酸、酒石酸、グリセリン酸若しくはアスコルビン酸)並びにそれらの塩、アミド若しくはエステル、又はβ-ヒドロキシ酸若しくはそれらの誘導体(例えば、サリチル酸)及びそれらの塩、アミド若しくはエステル
の組み合わせを含むこともできる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
言うまでもなく、当業者は、本発明に本質的に関連する有益な性質が、想定される添加によって悪影響を受けないか又は実質的に受けないように、これらの組成物に添加する任意化合物を注意深く選択するであろう。更に、一般に、式(I)の化合物に関して前記で示したのと同じ優先傾向を、本発明の化合物を用いる医薬並びに化粧品組成物及び医薬組成物と本発明の化合物の使用とに準用する。
【0046】
本発明による式(I)の活性化合物のいくつかの調製例、並びにこのような化合物の生物活性の結果を以下に実例として示すが、これらは限定的な性質を持たない。
【0047】
方法
(実施例)
(実施例1)
4-{3-[(2,6-ジイソプロピルフェニルカルバモイル)メチル]-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-1-イル}安息香酸エチルエステル
ステップ1.1 4-(1-シアノシクロヘキシルアミノ)安息香酸エチルエステル
スキーム2による調製
0℃の酢酸20mlにおけるシクロヘキサノン(出発原料2)1.25g(12.1mmol、1当量)の溶液中に、エチル4-アミノベンゾエート(出発原料1)2g(12.1mmol、1当量)を加える。この溶液を15分間撹拌し、シアン化トリメチルシリル1.6ml(12mmol、1当量)を加える。この反応媒体を室温で5時間撹拌する。次いで、これを氷冷水酸化アンモニウム溶液中にゆっくり注ぎ、酢酸エチルで抽出する。有機相を合し、水洗する。これらを硫酸ナトリウム上で乾燥させる。残渣を、ジクロロメタンとヘプタンから沈殿させる。生成物4-(1-シアノシクロヘキシルアミノ)安息香酸エチルエステルが、白色固体の形態で得られる。融点=101〜102℃。
【0048】
ステップ1.2 4-(1-カルバモイルシクロヘキシルアミノ)安息香酸エチルエステル
スキーム2、経路2による調製
4-(1-シアノシクロヘキシルアミノ)安息香酸エチルエステル550mg(2.02mmol)を濃硫酸20mlに溶解する。反応媒体を室温で5時間撹拌する。反応媒体を、穏やかに氷に注ぎ、水酸化ナトリウムでpH12にし、得られる混合物を酢酸エチルで抽出する。有機相を合し、水洗する。それらを硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶媒を蒸発させる。生成物をシリカゲル(60/40 ヘプタン/酢酸エチル)上でクロマトグラフ分離する。生成物4-(1-カルバモイルシクロヘキシルアミノ)安息香酸エチルエステルを白色固体の形態で得る。融点155〜157℃。
【0049】
ステップ1.3 4-(2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-1-イル)安息香酸エチルエステル
スキーム2、経路2、環化工程による調製
2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアネート380μl(1.85mmol、1.2当量)を、15mlのトルエンにおける4-(1-カルバモイルシクロヘキシルアミノ)安息香酸エチルエステル450mg(1.55mmol、1当量)の溶液にに加える。反応媒体をマイクロ波照射下で、180℃で2時間撹拌する。トルエンを蒸発させ、残渣をシリカゲル(50/50ヘプタン/酢酸エチル)上で精製する。生成物4-(2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-1-イル)安息香酸エチルエステルが、白色固体の形態で得られる。融点=223〜225℃。
【0050】
ステップ1.4 4-{3-[(2,6-ジイソプロピルフェニルカルバモイル)メチル]-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-1-イル}安息香酸エチルエステル
スキーム1による合成
炭酸カリウム87mg(0.63mmol、1当量)を、30mlのジメチルホルムアミドにおける、4-(2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-1-イル)安息香酸エチルエステル200mg(0.63mmol、1当量)、および、2-クロロ-N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)アセトアミド160mg(0.63mmol、1当量)の溶液に加える。この反応媒体を室温で一晩撹拌する。次いで、これを水中に注ぎ、酢酸エチルで抽出する。有機相を合し、水洗する。これらを硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶媒を蒸発させる。残渣を、ジクロロメタンとヘプタンとから沈殿させる。生成物4-{3-[(2,6-ジイソプロピルフェニルカルバモイル)メチル]-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-1-イル}安息香酸エチルエステルが、白色固体の形態で得られる。融点=210〜212℃。
NMR (CDCl3) 1 (m, 1H); 1.18-1.3 (m, 12H); 1.39-1.45 (m, 3H); 1.56-1.75 (m, 5H); 2.04-2.15 (m, 4H); 3.07-3.39 (m, 2H); 3.92-4.49 (m, 4H); 6.79-7.42 (m, 6H); 8.13-8.17 (m, 2H)
【0051】
中間体2-クロロ-N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)アセトアミドの調製
スキーム3による合成
ジクロロメタン1リットル中における2,6-ジイソプロピルフェニルアミン(出発原料3)300ml(1.59mol)の溶液に、トリエチルアミン222ml(1.59mol)を加える。この反応混合物を0℃に冷却し、次いで塩化クロロアセチル127mL(1.59mol)を滴加する。添加完了後直ちに、氷浴を取り外し、媒体を20分間撹拌する。次いで、これを水中に注ぎ、ジクロロメタンで抽出する。有機相を合し、水洗する。これらを、硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶媒を蒸発させる。残渣を、シリカゲルに通して濾過する(溶離剤:ジクロロメタン)。濾液を蒸発させ、次いでヘプタン中で磨砕する。2-クロロ-N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)アセトアミドが、白色固体の形態で得られる。融点=146〜148℃。
【0052】
(実施例2)
2-[1-(4-シアノフェニル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-3-イル]-N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)アセトアミド
ステップ2.1 1-(4-ヨードフェニルアミノ)シクロヘキサンカルボニトリル
スキーム2による調製
0℃で、4-ヨードアニリン3g(13.7mmol、1当量)を、20mlの酢酸中におけるシクロヘキサノン1.4ml(13.5mmol、1当量)の溶液に加える。溶液を一瞬撹拌し、シアン化トリメチルシリル1.8ml(13.5mmol、1当量)を加える。反応媒体を一晩室温で撹拌する。次いで、氷冷水酸化アンモニウム溶液に穏やかに注ぎ、ジクロロメタンで抽出する。有機相を合し、水洗する。それらを硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶媒を蒸発させ、次いで残渣をシリカゲル上でクロマトグラフ分離する。生成物1-(4-ヨードフェニルアミノ)シクロヘキサンカルボニトリルが白色固体の形態で得られる。融点=101〜103℃。
【0053】
ステップ2.2 1-(4-ヨードフェニル)-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカン-2,4-ジオン
スキーム2、経路1による調製
シアン酸カリウム1.8g(22.2mmol、2当量)を、30℃で、30mlの氷酢酸中における1-(4-ヨードフェニルアミノ)シクロヘキサンカルボニトリル3.7g(11.3mmol、1当量)の溶液に加える。反応媒体を、60℃で一晩撹拌する。5mlの塩酸、次いで、3mlの水を加える。媒体を、90℃に1時間熱し、次いで、室温で3時間保持する。次いで、水を反応媒体に注ぎ、形成された沈殿を濾過し、次いで、シリカゲル(50/50 ヘプタン/酢酸エチル)上でクロマトグラフ分離する。180mgの1-(4-ヨードフェニル)-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカン-2,4-ジオンがオレンジ色の固体の形態で得られる。融点=249〜51℃。
【0054】
ステップ 2.3 N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-[1-(4-ヨードフェニル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-3-イル]アセトアミド
スキーム1による調製
この化合物は、1-(4-ヨードフェニル)-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカン-2,4-ジオンから開始し、前記のステップ1.4に記載した手順で調製される。融点=262〜264℃。
【0055】
ステップ2.4 2-[1-(4-シアノフェニル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-3-イル]-N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)アセトアミド
J. Org. Chem.、1998、63、8224-8228頁において記載された方法に従う。
シアン酸カリウム38mg(0.58mmol、2当量)および、ヨウ化銅5.5mg(0.029mmol、0.1当量)を、10mlのテトラヒドロフランにおける、N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-[1-(4-ヨードフェニル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-3-イル]アセトアミド170mg(0.29mmol、1当量)に加える。反応媒体を20分間窒素で脱気し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム17mg (0.015μmol、0.05当量)に加える。媒体を80℃に6時間熱する。媒体を室温まで冷やし、酢酸エチルで 希釈し、次いで、セライトで濾過する。濾液を水洗する。有機相を合する。それらを硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶媒を蒸発させ、残渣をジクロロメタンおよびヘプタンから沈殿させる。生成物2-[1-(4-シアノフェニル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-3-イル]-N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)アセトアミドが、白色固体の形態で得られる。融点=280〜282℃。
1H NMR (DMSO) 0.97-1.00 (m, 1H); 1.06-1.08 (d, 6H); 1.12-1.13 (d, 6H); 1.44-1.56 (m, 5H); 1.86-1.96 (m, 2H); 1.99-2.03 (m, 2H); 3.01-3.09 (m, 2H); 4.31 (s, 2H); 7.14-7.16 (d, 2H, J = 7.68 Hz); 7.24-7.27 (m, 1H); 7.51-7.53 (d, 2H, J = 8.44 Hz); 7.97-7.99 (d, 2H, J = 8.44 Hz); 9.54 (s, 1H).
【0056】
(実施例5)
N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-[1-(4-メタンスルホニルフェニル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-3-イル]アセトアミド
オキソン0.421g(0.684mmol、2.2当量)を、5mlのメタノールおよび2mlの脱塩水における、(実施例2に従って調製した)N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-[1-(4-メチルスルファニルフェニル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-3-イル]アセトアミド0.158g(0.311mmol、1当量)の溶液に加える。反応媒体を室温で18時間撹拌する。水およびジクロロメタンを加え、有機相を数回水洗し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで、濃縮し、乾燥させる。生成物N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-[1-(4-メタンスルホニルフェニル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-3-イル]アセトアミドが固体の形態で得られる。融点=250℃。
1H NMR (DMSO): 9.55 (1H, s); 8.05 (2H, d, J = 8.6 Hz); 7.58 (2H, d, J = 8.6 Hz); 7.28-7.24 (1H, m); 7.15 (2H, d, J = 7.68 Hz); 4.32 (2H, s); 3.30 (3H, s); 3.11-3.04 (2H, m); 2.05-2.01 (2H, m); 1.97-1.88 (2H, m); 1.58-1.45 (5H, m); 1.12-1.07 (12H, m); 0.98-0.94 (1H, m)
【0057】
(実施例6)
4-{3-[(2,6-ジイソプロピルフェニルカルバモイル)メチル]-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-1-イル}安息香酸メチルエステル
4-{3-[(2,6-ジイソプロピルフェニルカルバモイル)メチル]-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-1-イル}安息香酸エチルエステル33mgを、10mlのメタノールに溶解し、1滴の濃硫酸を加え、溶液を18時間還流する。混合物を72時間還流する。溶媒を蒸発させる。残渣をDCMに溶解し、ヘプタンをわずかに曇りが現れるまで加え、溶液を室温、窒素下で16時間撹拌する。生成物4-{3-[(2,6-ジイソプロピルフェニルカルバモイル)メチル]-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-1-イル}安息香酸メチルエステルが細かな白色の針状の形態で得られる。
NMR (DMSO) 0.88-1.29 (m, 13H); 1.45-1.57 (m, 5H); 1.87-2.03 (m, 4H); 3.02-3.12 (m, 2H); 3.88 (s, 3H); 4.31 (s, 2H); 7.15 (d, 2H); 7.26 (t, 1H); 7.45 (d, 2H); 8.06 (d, 2H); 9.55 (s, 1H)
【0058】
(実施例3及び4)
実施例3及び4は、下記Table1(表1)に記載する通りである。これらの化合物は、実施例1、2、5及び6に記載した出発原料1、2及び3の代わりにTable1(表1)に記載した生成物を用いて、前記方法に従って合成する。
【0059】
【表1A】

【0060】
【表1B】

【0061】
【表1C】

【0062】
(実施例7)
生物学的試験
本発明による式(I)の化合物を、以下の文献:「Identification of ACAT1- and ACAT2-specific inhibitors using a novel, cell based fluorescence assay: individual ACAT uniqueness」、J. Lipid. Res. (2004) 第45巻、378〜386頁からヒントを得た、酵素ACAT-1に対する阻害活性を評価するための試験に供した。
【0063】
この試験の原理は、螢光が環境によって異なるコレステロール類似体であるNBD-コレステロールの使用に基づく。この分子は、極性環境では弱い螢光を発するのに対して、非極性環境下では強い螢光を発する。遊離NBD-コレステロールは、細胞膜に挿入され、この極性環境で弱い螢光を発する。NBD-コレステロールがACATによってエステル化されると、NBD-コレステロールエステルは非極性の脂肪滴(lipid droplet)中に入り、その後に強い螢光を発する。
【0064】
以下の方法を適用する:HepG2細胞を、底が黒色透明の96ウェルプレート中においてNBD-コレステロール(1μg/ml)及び式(I)の試験化合物の存在下で細胞3000個/ウェルの割合でインキュベートする。37℃において5% CO2下で6時間インキュベート後、上下逆向きにすることよって培地を取り除き、細胞をPBS 100μlで2回洗浄する。溶解緩衝液(lysis buffer)(10mM NaPO4、1% Igepal)50μlを添加した後、プレートを5分間振盪し、Fusion装置(Perkin-Elmer)で螢光を読み取る(励起490nm、発光540nmm)。例として、得られるIC50は、化合物(1)については2.4nM、化合物(2)については77nM、化合物(3)については2.5nM、、化合物(4)については1.5nM、化合物(5)については31nMである。
【0065】
(実施例8)
製剤
本発明による化合物を含む種々の製剤を以下に示す。
A-経口経路
(a)0.2gの錠剤
化合物1 0.01g
澱粉 0.114g
リン酸二カルシウム 0.020g
シリカ 0.020g
ラクトース 0.030g
タルク 0.010g
ステアリン酸マグネシウム 0.005g
(b)5mlバイアル中飲用懸濁液
化合物3 0.001g
グリセロール 0.500g
70%ソルビトール 0.500g
サッカリン酸ナトリウム(sodium saccharinate) 0.010g
パラヒドロキシ安息香酸メチル 0.040g
フレーバーエンハンサー 適量
精製水 適量(5mlまで)
B-局所経路
(a)軟膏剤
化合物2 0.300g
薬局方白色ワセリン 適量(100gまで)
(d)ローション剤
化合物4 0.100g
ポリエチレングリコール(PEG400) 69.900g
95%エタノール 30.000g
(e)疎水性軟膏剤
化合物1 0.300g
ミリスチン酸イソプロピル 36.400g
シリコーン油(Rhodorsil 47 V 300) 36.400g
蜜ろう 13.600g
シリコーン油(Abil 300 000cSt) 適量(100gまで)
(f)非イオン性水中油型クリーム剤
化合物6 1.000g
セチルアルコール 4.000g
モノステアリン酸グリセリル 2.500g
PEG50ステアレート 2.500g
シアバター 9.200g
プロピレングリコール 2.000g
パラヒドロキシ安息香酸メチル 0.075g
パラヒドロキシ安息香酸プロピル 0.075g
滅菌脱イオン水 適量(100gまで)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
R1は、C1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキル、C1〜C6アルキルオキシ、C1〜C6フルオロアルキル、又は、C1〜C6フルオロアルキルオキシ、又は、-(CH2)n-C3〜C7シクロアルキル基を表し、
R2及びR3は同一であるか又は異なり、水素、フッ素、塩素、臭素若しくはヨウ素原子又はC1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキル、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6アルキルオキシ、C1〜C6フルオロアルキル、又は、C1〜C6フルオロアルキルオキシ又は-(CH2)n-C3〜C7シクロアルキル基を表し、
R4及びR4’は同一である又は異なり、C3〜C7シクロアルキル、-(CH2)n-C3〜C7シクロアルキル、若しくは、任意選択で1個から3個のRa基で置換されているC1〜C6アルキル基を表し、又は、R4及びR4’は、それらを生じる炭素原子と環状C1〜C6アルキルを形成し、
R5は、S(O)p、COORbおよびCN基から選択される少なくとも1個、2個又は3個の同一又は異なる置換基で置換されているフェニル基(任意選択でRa基によって伴われる)、-(CH2)n-アリール基、(前記アリール基は1個または複数のS(O)p、COORaまたはCN基で置換されている)から選択される基を表し、
Raは、水素、フッ素若しくは塩素原子又はC1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキル、C1〜C6アルキルオキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6フルオロアルキル、又はC1〜C6フルオロアルキルオキシ基を表し、
Rbは、C1〜C6アルキル、C3〜C7シクロアルキル又は-(CH2)n-C3〜C7シクロアルキル基を表し、
nは1、2、または3を表し、
pは、0、1又は2を表す]
の化合物、並びにそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物又は水和物及びそれらの配座異性体又は回転異性体。
【請求項2】
以下の特性
R1がメチル、エチル又はイソプロピル基を表す、
R2が塩素若しくは臭素原子又はメチル、エチル、イソプロピル若しくはtert-ブチル基を表す、
R3が水素原子を表す、
R4およびR4’はどちらも同じであり、メチル、エチル、若しくはプロピル基を表し、または、R4およびR4’基は、それらを生じる炭素原子と、シクロペンチル若しくはシクロヘキシル環を形成する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
以下の化合物
4-{3-[(2,6-ジイソプロピルフェニルカルバモイル)メチル]-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-1-イル}安息香酸エチルエステル、
2-[1-(4-シアノフェニル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-3-イル]-N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)アセトアミド、
2-[1-(3-シアノ-4-メチルフェニル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-3-イル]-N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)アセトアミド、
N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-[1-(4-メチルスルファニルフェニル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-3-イル]アセトアミド、
N-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-[1-(4-メタンスルホニルフェニル)-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-3-イル]アセトアミド、
4-{3-[(2,6-ジイソプロピルフェニルカルバモイル)メチル]-2,4-ジオキソ-1,3-ジアザスピロ[4.5]デカ-1-イル}安息香酸メチルエステル、
並びにそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、配座異性体及び回転異性体から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
医薬としての、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
生理学的に許容される担体中に、請求項1から3のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物を含む医薬組成物。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物の濃度が、組成物の総重量に対して、0.001〜10重量%であることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物の濃度が、組成物の総重量に対して、、0.01〜2重量%であることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
生理学的に許容される担体中に、請求項1から3のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする化粧品組成物。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物の濃度が、組成物の総重量に対して0.001〜3重量%であることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
局所適用に好適な形態であることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
クリーム剤、乳剤、ローション剤、ゲル剤、軟膏剤、ポマード、ミクロスフェア若しくはナノスフェア又は脂質若しくはポリマーベシクルの懸濁剤、含浸パッド、液剤、スプレー剤、ムース剤、スティック剤、石けん、シャンプー又は洗浄ベースの形態であることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の組成物の、身体又は毛髪の衛生のための化粧品としての使用。
【請求項13】
脂漏過多、ざ瘡、脂漏性皮膚炎若しくはアトピー性皮膚炎などの皮脂腺障害、眼瞼炎若しくはマイボーム腺炎などの眼病態、又は高コレステロール血症、動脈硬化症及びアルツハイマー病の予防及び/又は治療用医薬の製造のための、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項14】
ざ瘡治療用医薬の製造のための、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2012−518675(P2012−518675A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551493(P2011−551493)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052494
【国際公開番号】WO2010/097464
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】