説明

酸化窒素含有ジヒドロリポ酸及びその治療用途

【課題】DHLAから誘導され、且つ多種の病気及び疾患の治療に有益なS−ニトロソチオール化合物を提供する。
【解決手段】ジヒドロリポ酸のジニトロソ誘導体を有する化合物が提供される。狭心症、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、腎不全、心筋梗塞、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、及びこれら種々の病気及び疾患に関連する標的器官損傷を包含する種々の病気及び疾患を治療するための、前記化合物を含有する医薬組成物及び該化合物の使用方法がさらに提供される。該化合物は、患者の血管拡張を改善し、低密度リポタンパク質酸化を低減し、そして炎症を低減するのに有益である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2009年2月19日付けで出願され、その全体の開示が参照により本願明細書に組み込まれている米国仮出願第61/207781号の利益を特許請求している。
【0002】
本発明の分野
本発明は、ジヒドロリポ酸(DHLA)の酸化窒素誘導体を有する化合物に、且つそれらの使用方法に関する。特に、本発明は、DHLAから誘導され、且つ、狭心症、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、腎不全、心筋梗塞、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、及びこれら種々の病気及び疾患に関連する標的器官損傷を包含する多種の病気及び疾患の治療に有益なS−ニトロソチオール化合物に関する。さらには、本発明は、血管拡張を改善し、低密度リポタンパク質酸化を低減し、腎不全を低減し、そして炎症を低減するための、そのような治療を必要とする患者への、DHLAの酸化窒素誘導体を有する化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
現在、多種の抗炎症剤及び抗酸化剤が入手可能であるか、又は自然発生しており、患者の酸化ストレス又は炎症の程度を低減し得ている。植物及び動物においては、1つのそのような薬剤はαリポ酸である。チオクト酸としてもまた既知であるαリポ酸は、植物及びヒトを含む動物により合成され、自然分泌される8炭素脂肪酸であり、身体において幾つかの重要な機能を補助している。αリポ酸は、通常は酸化されたジスルフィド形態で見られるが、チオール形態に還元され、そしてジヒドロリポ酸(DHLA)を形成し得る2個の硫黄原子を含有している。実際に、個々の身体は通常、あるαリポ酸をDHLAに転換しており、そして、αリポ酸と比較した場合に、より強力な抗酸化剤として機能し得るものと信じられている。これに関して、αリポ酸が細胞によって直ちに取り込まれ、そして細胞外で、その後に細胞から直ちに分泌され得、そしてαリポ酸とともに有力な抗酸化剤として作用する、DHLAに還元されることがまた観察されている。
【0004】
有力な抗酸化剤として、αリポ酸及びDHLAは、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素、ペルオキシ亜硝酸、及び次亜塩素酸を包含する種々の遊離ラジカル及び酸化剤を捕捉し得る。これら遊離ラジカルは、多くの慢性病の病態生理に関わっているため、種々の形態のリポ酸の薬物療法効果は、大部分、その抗酸化特性によると信じられている。しかしながら、その抗酸化特性に加えて、リポ酸はまた、有力な抗炎症剤でもある。リポ酸は、炎症応答において中心的な役割を果たすIKK/NF−kB信号の活性化を阻害する。さらには、多くの健康面の利点は、コレステロール低下、細胞によるグルコース吸収の向上、神経機能の刺激、肝臓毒素の低下、グルタチオン及びアスコルビン酸濃度の上昇、及び脳卒中の予防を包含するリポ酸によるものである。さらには、最近の報告がまた、αリポ酸が、少なくとも部分的にその抗炎症効果に依存して、アテローム性動脈硬化症の進行を阻害したことを示している(非特許文献1)。
【0005】
大きな医薬性能を有する他の分子が、酸化窒素(NO)である。一般的に認識されているように、ニトログリセリンは、狭心症の痛みを低減するために頻繁に処方され、そしてNOを発生することによってそのように作用し、冠状動脈壁及び細動脈壁を弛緩させる。しかしながら、NOはまた、種々の他の生理学的効果を媒介する非常に有力な調節分子でもあると見られている。例えば、NOは、血圧を支配し、血管を拡張し、且つ、個人の殆ど全ての筋肉の動作を制御し得る。免疫系がまた、ウイルス性、細菌性、及び寄生性感染を防除するのにNOを用い、そしてさらに、免疫系が腫瘍を防除するのにNOを利用することを示している。さらには、NOは、神経細胞間のメッセージを伝達し、そしてそれによって、学習、記憶、睡眠、痛み、及び抑鬱の過程に関連している。
【0006】
にもかかわらず、ある健康面の利点は、リポ酸及びニトログリセリンのようなNO−供与分子の投与に依存しているが、リポ酸はいまだ、唯一の栄養補助食品として広くみなされ続けており、そして多くのNO−供与分子は、僅かな特定用途について使用され続けているのみである。しかしながら、NOがチオールと反応して、生体内でS−ニトロソシステイン及びS−ニトロソグルタチオンのようなS−ニトロソチオールを形成し、且つ重要なNO−供与分子を形成し得るという事実は、評価され始めている。そうして、多くのS−ニトロソチオールは今や、化学合成され、そして臨床的に使用し得るNO−供与薬としての保証を示している(例えば、参照により本願明細書に組み込まれている非特許文献2を参照されたし)。
【0007】
しかしながらこれまで、これらS−ニトロソチオール化合物は、室温にて、或いは光に曝露された場合に不安定であることが判明しているので、NO−供与分子を用いて得られ得る健康面の利点を完全に受けることは、未だ完全に実現していない。さらには、NO基がどのように安定し得、そしてどのようにDHLAのようなリポ酸化合物の構造に効率的に導入され得るかが未知であるため、リポ酸に関連した最大の利点を得るように設計され得た化合物は、未だに安定且つ効果的なNO−供与分子として補助し得ていない。実際に、これまで、最少の毒性で、リポ酸の及びNOの利点が、多種の病気及び疾患並びにそれらの原因を標的にすることによる種々の多機能性の治療効果を示し得る一の化合物に統合され得るように、多くのリポ酸化合物がNO基と組み合わせられたができなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Zhang W,Bird KE,McMillen TS,LeBoeuf RC,Hagen TM,Frei B.Dietary α−Lipoic Acid Supplementation Inhibits Atherosclerotic Lesion Dvelopment in Apolipoprotein E−Deficient and Apolipoprotein E/Low−Density Lipoprotein Receptor−Deficient Mice.Circulation.2008;117:421−428
【非特許文献2】Miller MR,他,Recent Developments in Nitric Oxide Donor Drugs.Brit.J.Pharm.151:305−321(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、リポ酸化合物をNO基と組み合わせた化合物が、非常に望ましく、且つ、種々の病気及び疾患を治療するのに潜在的に非常に利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の概要
従って本発明の目的は、DHLAの有利な特性を提供し得、及び、効果的なNO−供与体として補助する化合物の能力をまた阻害することもなく、及びそのため、DHLA及びNOの作用が示される種々の病気及び疾患を治療する方法に利用される、ジヒドロリポ酸(DHLA)の酸化窒素誘導体を有する化合物を提供することである。
【0011】
本発明の目的はまた、本発明の化合物の有効量を、治療を必要とする患者に投与することによる、狭心症、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、腎不全、心筋梗塞、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、及びこれら種々の病気及び疾患に関連する標的器官損傷を包含する種々の病気及び疾患を治療する方法を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、血管拡張を改善する方法であって、そのような治療を必要とする患者に本発明の化合物の有効量を投与して、それにより血管拡張を改善する方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、低密度リポタンパク質酸化を低減する方法であって、そのような治療を必要とする患者に本発明の化合物の有効量を投与して、それにより低密度リポタンパク質酸化を低減する方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、炎症を軽減する方法であって、その治療を必要とする患者に本発明の化合物の有効量を投与することにより患者の炎症の程度を軽減する方法を提供することである。
【0015】
これらの及び他の目的は、DHLAの有利な特性とNO供与体のそれとを有する化合物を有する本発明により、提供される。本発明の好ましい態様において、下記一般式(I):
【化1】


(式中、
mは、1又は2の整数であり;
nは、1ないし10の整数であり;
及びRは、独立して、H、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、COOH、COOCH、COOCHCH
【化2】


からなる群より選択される)
を有する化合物又はその医薬的に許容され得る塩又は溶媒和物が提供される。
【0016】
本発明の他の好ましい態様において、下記一般式(XV):
【化3】


(式中、
及びRは、独立して、H、CH、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、CHCHCHCHCOOCH、CHCHCHCHCHCOOH、及びCHCHCHCHCOOCHCHから成る群より選択される)
を有する化合物、又はその医薬的に許容され得る塩又は溶媒和物が提供される。
【0017】
さらには、本発明は、本発明の化合物が、医薬的に許容され得るビヒクル、キャリヤー、又は賦形剤をさらに含有するか、又は徐放製剤形態にある、医薬組成物を提供する。
【0018】
本願明細書に開示される本発明の目的及び範囲内において、これら態様及び他の代替及び改変は、本願の明細書、図面、及び限定されない実施例の研究において当業者にとってたやすく明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、αリポ酸、ジヒドロリポ酸(DHLA)、モノニトロソリポ酸(6−メルカプト−8−[(オキシドアザニリジン)−λ−スルファニル]オクタン酸)、及びジニトロソリポ酸(6,8−ビス[(オキシドアザニリジン)−λ−スルファニル]オクタン酸)の骨格構造を示す図である。
【図2】図2は、DHLAのジニトロソ誘導体とともにウシ血清アルブミンをインキュベートした後のニトロソチロシン残基についてのウエスタンブロットを示す図である。
【図3】図3は、エチルアルコール中のDHLAのジニトロソ誘導体の可視スペクトルを示すグラフである。
【図4】図4は、低密度リポタンパク質(LDL)を種々の濃度のDHLAのジニトロソ誘導体と接触させることによる、LDL酸化の阻害を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
好ましい態様の詳細な説明
本発明に従い、ジヒドロリポ酸(DHLA)の酸化窒素(NO)誘導体を有する化合物が提供される。特に、本発明は、DHLAの有利な特性を有し、そして安定且つ効果的なNO供与体として補助し得る化合物を提供する。これら化合物は、狭心症、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、腎不全、心筋梗塞、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、及びこれら種々の病気及び疾患に関連する標的器官損傷を包含する種々の病気及び疾患を治療するのに使用され得る。特に、幾つかの態様において、該化合物は、患者の血管拡張を改善し、低密度リポタンパク質(LDL)酸化を低減し、腎不全を改善し、或いは炎症を低減するために、そのような治療を必要とする患者に投与され得る。
【0021】
本発明の好ましい態様の一において、本発明で有用な化合物は、下記一般式(I):
【化4】


(式中、
mは、1又は2の整数であり;
nは、1ないし10の整数であり;
及びRは、独立して、H、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、COOH、COOCH、COOCHCH
【化5】


からなる群より選択され、
破線の結合(−−−)は、該化合物の残基へのR基の結合点を示す)
を有する。
【0022】
本発明の一の好ましい態様において、下記式(II):
【化6】


により示される、式中のmが1であり、nが1であり、Rがメチル基であり、Rがメチル基であり、そしてRがCOOHである、式(I)で表される化合物が提供される。
【0023】
本発明の他の好ましい態様において、下記式(III):
【化7】


により示される、式中のmが1であり、nが1であり、RがHであり、Rが第三ブチル基であり、そしてRがCOOHである、式(I)で表される化合物が提供される。
【0024】
本発明のさらに他の好ましい態様において、下記(IV):
【化8】


により示される、式中のmが2であり、nが1であり、Rがメチル基であり、Rがエチル基であり、且つRがCOOHである、式(I)で表される化合物が提供される。
【0025】
本発明のさらに他の態様において、下記式(V):
【化9】


により示される、式中のmが2であり、nが1であり、RがHであり、Rが第三ブチル基であり、且つRがCOOCHCHである、式(I)で表される化合物が提供される。
【0026】
本発明の他の好ましい態様において、下記式(VI):
【化10】


により示される、式中のmが1であり、nが1であり、Rがメチル基であり、Rがメチル基であり、及びRがCOOCHである、式(I)で表される化合物が提供される。
【0027】
本発明の別の態様において、下記式(VII):
【化11】


により示される、式中のmが1であり、nが5であり、Rがメチル基であり、Rがメチル基であり、及びRがCOOHである、式(I)で表される化合物が提供される。
【0028】
本発明の他の態様において、下記式(VIII):
【化12】


により示される、式中のmが2であり、nが4であり、RがHであり、Rが第三ブチル基であり、及びRがCOOHである、式(I)で表される化合物が提供される。
【0029】
本発明の他の好ましい態様において、下記式(IX):
【化13】


により示される、mが1であり、nが1であり、RがHであり、RがHであり、及びR
【化14】


である、式(I)で表される化合物が提供される。
【0030】
本発明のさらに別の好ましい態様において、下記式(X):
【化15】


により示される、式中のmが1であり、nが1であり、RがHであり、RがHであり、且つR
【化16】


である、式(I)で表される化合物が提供される。
【0031】
本発明のさらに他の好ましい態様において、下記式(XI):
【化17】


により示される、式中のmが1であり、nが1であり、RがHであり、RがHであり、及びR
【化18】


である、式(I)で表される化合物が提供される。
【0032】
本発明の他の好ましい態様において、下記式(XII):
【化19】


により示される、式中のmが1であり、nが1であり、RがHであり、RがHであり、及びR
【化20】


である、式(I)で表される化合物が提供される。
【0033】
本発明の別の好ましい態様において、下記式(XIII):
【化21】


により示される、式中のmが1であり、nが1であり、RがHであり、RがHであり、及びR
【化22】


である、式(I)で表される化合物が提供される。
【0034】
本発明の他の好ましい態様において、下記式(XIV):
【化23】


により示される、式中のmが1であり、nが1であり、RがHであり、RがHであり、及びR
【化24】


である、式(I)で表される化合物が提供される。
【0035】
本発明の他の態様において、本発明において有用な化合物は、下記一般式(XV):
【化25】


(式中、
及びRは、独立して、H、CH、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、CHCHCHCHCOOCH、CHCHCHCHCHCOOH、及びCHCHCHCHCOOCHCHから成る群より選択される)
を有する。
【0036】
本発明の一の好ましい態様において、下記式(XVI):
【化26】


により示される、式中のRがメチル基であり、Rがメチル基であり、及びRがCHCHCHCHCOOCHである、式(XV)で表される化合物が提供される。
【0037】
本発明の他の好ましい態様において、下記式(XVII):
【化27】


により示される、式中のRがメチル基であり、Rがメチル基であり、且つRがCHCHCHCHCHCOOHである、式(XV)で表される化合物が提供される。
【0038】
本発明の別の好ましい態様において、下記式(XVIII):
【化28】


により示される、式中のRがメチル基であり、Rがメチル基であり、及びRがCHCHCHCHCOOCHCHである、式(XV)で表される化合物が提供される。
【0039】
本発明の前述の化合物は、安定且つ効果的なNO−供与化合物として補助し得る。一般に、多くのS−ニトロソ化合物は、室温にて、或いは光の存在中で安定ではなく、そしてそのため、−20℃以下の温度にて、又は暗環境にて保管されて、NO基を硫黄原子上に保持し、結果としてその生物活性を保持する。しかしながら、本発明の化合物は、一般に室温にて安定であり、そのため、より長時間の室温での保管後でも、効果的なNO供与分子として役立ち得ることが決定されている。これに関して、立体障害による、硫黄原子への第三炭素原子の隣接が分子の安定化を促進し、そのため本発明の化合物が安定なNO−供与分子として役立ち得ることが観察されている。さらには、NO放出後に、該化合物がリポ酸を発生し、そしてそのためにもまた、リポ酸の効果的な供給源として役立っていると信じられる。
【0040】
さらには、上記指摘した、本願明細書に包含される化合物は、1つ以上の付加的な部分が核構造に組み込まれている式に関連して記載される。これら態様において、本発明の化合物についての参照は、化合物の1つ以上の部分の立体異性体を包含し得る。そのような立体異性体は、化合物の幾つかの態様の代表であるが、しかしながら、本願明細書に開示される式及び式についての参照は、示される化合物の全ての活性立体異性体を包含することを意図している。さらには、本発明の化合物は、幾つかの態様において、1つ以上のさらなる不斉炭素原子を包含し得、そしてラセミ体且つ光学活性形態で存在し得る。これら他の形態の全ては、本発明の範囲内にあるものと考慮される。そして、本発明の化合物は、立体異性形態で存在し得、そして得られた生成物は従って、異性体の混合物であり得る。
【0041】
本発明に従うと、本願明細書に記載される化合物の全ては、当業者により認識されるような、医薬的に許容され得る塩又は溶媒和物の形態で提供され得る。塩は、適した酸及び/又は適した塩基を用いて形成され得る。本発明の化合物との塩を形成し得る適した酸は、トリフルオロ酢酸(TFA)、塩酸(HCl)、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、リン酸酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アントラニル酸、ケイ皮酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸等のような無機酸を包含する。本発明の化合物との塩を形成し得る適した塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム等のような無機塩基;並びに、モノ−、ジ−及びトリ−アルキル及びアリールアミン(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン等)、及び置換されていてもよいエタノールアミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン等)のような有機塩基を包含する。
【0042】
本願明細書において用いられる、用語“溶媒和物”とは、溶質、例えば本発明の化合物又はその医薬的に許容され得る塩の1つ以上の分子と、溶媒の1つ以上の分子とにより形成される錯体又は凝集体を意味する。そのような溶媒和物は、典型的に、実質的に固定した溶質と溶媒のモル比を有する結晶固体である。代表的な溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸等を包含するが、これらに限定されない。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は、水和物である。また、用語“医薬的に許容され得る塩又はその溶媒和物”とは、本化合物の医薬的に許容され得る塩の溶媒和物のような、塩と溶媒和物の全ての置換体を包含するものとする。
【0043】
本発明の組成物のさらに他の態様において、そしてさらに下記するように、本願明細書に記載される化合物及び医薬的に許容され得るビヒクル、キャリヤー又は賦形剤を含有する医薬組成物が提供される。例えば、経口投与のための組成物の固体製剤は、コーンスターチ、ゼラチン、ラクトース、アカシア、ショ糖、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸ジカルシウム、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、又はアルギン酸のような適したキャリヤー又は賦形剤を含有し得る。使用され得る崩壊剤は、微結晶セルロース、コーンスターチ、ナトリウムスターチグリコレート、及びアルギン酸を包含するが、これらに限定されない。使用され得るタブレットバインダーは、アカシア、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン(ポビドン(POVIDONE)(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ショ糖、スターチ、及びエチルセルロースを包含する。使用され得る滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、シリコーン溶液、タルク、ワックス、オイル、及びコロイダルシリカを包含する。さらには、固体製剤は被覆され得ないか、或いはそれらは、胃腸管中での崩壊及び吸収を遅らせ、そしてそれによって、より長時間の間持続した/延長した作用を与えるために、既知の技術によって被覆され得る。例えば、持続性/延長性放出の製剤を得るために、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルが使用され得る。徐放性製剤を配合するための多数の技術は当業者に既知であり、参照により本願明細書に組み込まれている下記参照文献:米国特許第4891223号;6004582号;5397574号;5419917号;5458005号;5458887号;5458888号;5472708号;6106862号;6103263号;6099862号;6099859号;6096340号;6077541号;5916595号;5837379号;5834023号;5885616号;5456921号;5603956号;5512297号;5399362号;5399359号;5399358号;5725883号;5773025号;6110498号;5952004号;5912013号;5897876号;5824638号;5464633号;5422123号;及び4839177号;並びに国際公開第98/47491号に記載の技術を含め本発明に従い使用され得る。
【0044】
一の好ましい態様において、ポリ無水物をベースとした技術を利用した本発明の化合物の徐放性製剤が提供される。当業者により認識されるように、ポリ無水物は、その生分解特性及び生体適合特性のため、薬品投与のための別のポリマー種である。幾つかの態様において、ポリ無水物をベースとした製剤の放出速度は、ポリマー構造中に変化を組み込むことにより数倍も変わり得る。そして、本願明細書に記載される化合物の徐放性製剤の幾つかの態様において、徐放性製剤を与えるために用いられるポリマーは、ポリ[1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン、ポリ[1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン−コ−セバシン酸無水物]、ポリ[1,3−ビス(p−カルボキシフェノキシ)メタン−コ−セバシン酸無水物]、及びポリ(フマル酸無水物)より選択される。ポリ無水物をベースとした製剤の他に、幾つかの態様において、さらに下記するように、徐放性製剤を与えるために、キトサンをベースとした放出制御技術が使用され得る。
【0045】
さらには、経口投与のための化合物の液体製剤は、水中で又は他の水性ビヒクル中で調製され得、そして、メチルセルロース、アルギネート、トラガカント、ペクチン、ケルギン(kelgin)、カラギーナン、アカシア、ポリビニルピロリドンのような種々の懸濁剤を含有し得、及び、本組成物の有効成分と一緒に、湿潤剤、甘味剤、及び着色剤及び芳香剤を含有する溶液、エマルジョン、シロップ、及びエリキシルを含有し得る。
【0046】
治療される患者の肺への吸入のために、慣用の方法によって、種々の液体及び粉末製剤がまた調製され得る。例えば、組成物は、適した噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適したガスの使用とともに、加圧されたパック又は噴霧器から発射されるエアゾールスプレーの形態で慣用的に提供され得る。例えば、吸入器(inhaler)又は吸入器(insufflator)用のゼラチンのカプセル及びカートリッジは、本化合物と、ラクトース又はスターチのような適した粉末ベースとの粉末混合物を含有して配合され得る。
【0047】
本化合物の注射製剤は、植物油、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチル酸イソプロピル、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)等のような種々のキャリヤーを含有し得る。静脈注射のため、化合物の水溶性バージョンが滴下法により投与され得、それにより、本発明の医薬組成物及び生理学的に許容され得る賦形剤を含有する製剤が点滴される。生理学的に許容され得る賦形剤は、例えば、5%デキストロース、0.9%食塩水、リンガー液又は他の適した賦形剤を含有し得る。筋肉内用製剤、例えば本化合物の適した可溶性塩形態の無菌製剤が、注射用水である、0.9%食塩水、又は5%グルコース溶液のような医薬賦形剤中に溶解され、そして投与され得る。水性ベースの懸濁液として、又は長鎖脂肪酸のエステル(例えば、オレイン酸エスエル)のような医薬的に許容され得るオイルベースの懸濁液として、本化合物の適した不溶性形態が調製され、そして投与され得る。
【0048】
上記製剤の他に、本発明の化合物はまた、カカオ脂又は他のグリセリドのような慣用の坐薬ベースを包含する、坐薬又は停留浣腸のような直腸用組成物として配合され得る。さらには、本組成物はまた、本組成物を、適したポリマー材又は疎水性材と(例えば、許容し得るオイル中のエマルジョンとして)、又はイオン交換樹脂と組み合わせることにより、貯蔵用製剤として、又は難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として、配合され得る。
【0049】
本発明の幾つかの態様において、本発明の化合物は、ナノ粒子中に配合され得る。本発明の範囲内のナノ粒子は、単一の分子水準にある粒子、並びに微視的特性を示す粒子の凝集体のものを包含すると意味される。興味ある化合物を配合するナノ粒子を使用しそして作成する方法は、当業者に既知であり、且つ、参照により本願明細書に組み込まれている下記参照文献:米国特許第6395253号、6387329号、6383500号、6361944号、6350515号、6333051号、6323989号、6316029号、6312731号、6306610号、6288040号、62722262号、6268222号、6265546号、6262129号、6262032号、6248724号、6217912号、6217901号、6217864号、6214560号、6187559号、6180415号、6159445号、6149868号、6121005号、6086881号、6007845号、6002817号、5985353号、5981467号、5962566号、5925564号、5904936号、5856435号、5792751号、5789375号、5770580号、5756264号、5705585号、5702727号、及び5686113号に見出され得る。
【0050】
ナノ粒子はしばしば、10nmないし1μmの寸法範囲にある固体のコロイド粒子であるとみなされ、活性化合物又は活性剤(例えば、本発明の化合物)が溶解され、封入され、カプセル化され、又は吸着されるか、或いは外部接触部分に付着して、動態安定性及び固い形態を与える巨大分子集合体から構成され得る。本発明の幾つかの態様において、生体高分子をベースとしたナノ粒子製剤が、本願明細書に開示される主題事項の化合物の効果的な投与のために使用される。幾つかの態様において、キトサン/ポリグルロネートナノ粒子、ポリ(D,L−乳酸)/酢酸エチルをベースとしたナノ粒子、PLGA−、PLGA:ポロキサマー−、又はPLGA:ポロキサミン/ジクロロメタンで媒介されたナノ粒子、ポリエチレングリコール化されたポリマーミセル、又はアルブミンのナノ粒子を使用した製剤が提供され得る。当業者により認知されているように、組成物ビヒクルとしてのナノ粒子の製剤は、本方法に使用される生体高分子の種類に依存する。
【0051】
本発明の一の好ましい態様において、キトサン/ポリグルロネートの組み合わせから誘導されるナノ粒子製剤が提供され得る。キトサンは、グルコサミン及びN−アセチルグルコサミン残基から成る天然に存在する多糖類であり、甲殻類の甲殻から通常得られるキチンの部分的脱アセチル化により誘導され得る。キトサンは、生体適合性があり、低毒性であり、低免疫原性であり、そして酵素により分解し得ると知れている。この点において、本発明の化合物のナノ粒子製剤は、まずは、適した緩衝液中でグルタミン酸キトサンを溶解し、そして同様に、硫酸ナトリウム緩衝液中にポリグルロネートを溶解することにより、調製され得る。溶液はその後、マイクロフィルターを通して濾過され、そしてその後、キトサン溶液を、等量のポリグルロネート溶液に添加し、そしてその後、室温にて粒子をインキュベートすることによって、ナノ粒子製剤が調製され得る。この点において、ナノ粒子中へ本発明の化合物を配合するために、極性溶媒中の所望の量の本化合物は、ポリグルロネート溶液にまず添加され得、そしてその後、混合物がキトサン溶液と組み合わされ得る。得られたナノ粒子はその後、使用或いはさらなる解析前に室温にてインキュベートされ得る(例えば、Hoffman AS,The origins and evolution of “controlled” drug delivery systems,Journal of Controlled Release,132(2008),153−163参照のこと)。
【0052】
さらに本発明の化合物に関し、本発明の化合物が、リポ酸の酸化窒素誘導体、より特に、DHLAの酸化窒素誘導体を包含することに再度留意される。本願明細書において使用される用語“誘導体”とは、親化合物と構造上類似の、及び親化合物から誘導され得る化学化合物の化学的又は生物学的に変性された型を意味する。親化合物が出発材料となって、“誘導体”を生成するが、“類似体”を生成するための出発材料として親化合物が必ずしも用いられないという点で、“誘導体”は“類似体”とは相違する。従って、誘導体は、親化合物の化学的又は物理学的特性とは相違していても、又はしていなくともよい。例えば、誘導体は、より親水性であり得るか、又は親化合物と比較して反応性を変化し得る。この点について、誘導化(即ち、変性)は、分子内の1つ以上の部分の置換(例えば、官能基の変化)を包含し得る。例えば、水素原子が、フッ素原子又は塩素原子のようなハロゲンにより置換され得るか、或いは他の例として、ヒドロキシル基(−OH)が、カルボン酸部分(−COOH)に置換され得る。
【0053】
本願明細書において使用される用語“誘導体”とはまた、親化合物の複合体及びプロドラッグ(即ち、生理学的条件下で元の化合物に転化し得る、化学的に変性された誘導体)を包含する。例えば、プロドラッグは、有効成分の不活性形態であり得る。生理学的条件下、プロドラッグは、化合物の活性形態に転化され得る。プロドラッグは例えば、アシル基により(アシルプロドラッグ)又はカルバメート基により(カルバメートプロドラッグ)、1つ又は2つの水素原子を窒素原子に置換することにより、形成され得る。プロドラッグに関するさらなる情報は、例えば、参照により本願明細書に組み込まれている、Fleisher他,Advanced Drug Delivery Reviews 19(1996)115:Design of Prodrugs,H.Bundgaard(編集),Elsevier,1985;又は、H.Bundgaard,Drugs of the Future 16(1991)443に見出される。
【0054】
本発明の幾つかの態様において、本発明の化合物(即ち、式(I)又は(XV)で表される化合物)の製造方法が提供される。一の好ましい態様において、式(I)で表される化合物の製造方法は、αリポ酸又はその誘導体を用意し;前記αリポ酸又はその誘導体を還元して、ジヒドロリポ酸又はジヒドロリポ酸誘導体を形成し;ジヒドロリポ酸のニトロソ形態を形成するのに十分な時間の間、前記ジヒドロリポ酸又はその誘導体を酸化窒素に曝露し;そして前記ジヒドロリポ酸のニトロソ形態を精製することから成る。
【0055】
本発明に従うと、下記にさらに詳細に記載されるように、本願明細書に開示される化合物を用いて、種々の病気又は疾患、或いはそれらの根本的な原因を治療する方法もまた提供される。一の好ましい態様において、式(I)又は(XV)で表される化合物、又はその医薬的に許容され得る塩又は溶媒和物を有する本発明の化合物の有効量を患者に投与して、それによって、該患者の病気又は疾患を治療することから成る、リポ酸化合物(例えば、ジヒドロリポ酸)及びNO−供与化合物の投与が示す病気又は疾患を治療する方法が提供される。幾つかの態様において、病気又は疾患は、狭心症、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、腎不全、心筋梗塞、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、及びこれら種々の病気及び疾患に関連する標的器官損傷より選択される。
【0056】
本願明細書に使用される用語“治療”又は“治療する”とは、予防的治療及び治療的治療を包含するが、これらに限定されない、病気又は疾患の如何なる治療にも関する。また、用語“治療”又は“治療する”とは、病気又は疾患を、或いは病気又は疾患の発現を予防すること;病気又は疾患の進行を阻害すること;病気又は疾患のさらなる発現を停止又は阻害すること;病気又は疾患の重病度を軽減すること;病気又は疾患に関連した症状を改善又は除くこと;及び病気又は疾患、或いは病気又は疾患に関連した1つ以上の症状の退行を引き起こすこと、を含むが、これらに限定されない。
【0057】
本発明の一の好ましい態様において、式(I)又は(XV)で表される化合物、又はその医薬的に許容され得る塩又は溶媒和物を有する本発明の化合物の有効量を患者に投与して、それによって該患者の高血圧症を治療することから成る、高血圧症を治療する方法が提供される。
【0058】
本発明の他の好ましい態様において、式(I)又は(XV)で表される化合物、又はその医薬的に許容され得る塩又は溶媒和物を有する本発明の化合物の有効量を患者に投与して、それによって該患者の脂質異常症を治療することから成る、脂質異常症を治療する方法が提供される。
【0059】
本願明細書に開示される治療用組成物の投与のため、マウス動物モデルに投与された投与量に基づいたヒト投与量を推定する慣用の方法は、マウス投与量をヒト投与量に転換するための転換係数:kg当りのヒト投与量=kg当りのマウス投与量×12を使用して行われ得る(Freireich他,(1966)Cancer Chemother Rep.50:219−244)。この方法は、体重は問題無く、ある代謝機能及び排出機能と良好な相互関係を達成するために、薬物は体表面積の平方メートル当りのミリグラムで与えられ得る。さらには、体表面積は、Freireich他(Freireich他,(1966)Cancer Chemother Rep.50:219−244)により記載されるように、成人及び子供並びに異なった動物種における薬物投与のための共通の分母として使用され得る。簡潔には、同等のmg/m投与量として、所与種におけるmg/kg投与量を表すには、該投与量に適当なkm係数を乗じたものである。ヒト成人において、100mg/kgは、100mg/kg×37kg/m=3700mg/mに等しい。
【0060】
本発明の方法に従う治療用組成物を投与する適した方法は、全身浸透性投与、非経口投与(血管内投与、筋肉内投与、静脈内投与を含む)、経口投与、口腔投与、直腸投与、皮下投与、腹腔内投与、吸入、気管内導入、外科的移植、経皮投与、局所注射、及び超高速注射/衝撃を包含するがこれらに限定されない。適当な場合、連続的な点滴が標的部位での薬物蓄積を高め得る(米国特許第6180082号を参照のこと)。
【0061】
投与の経路に関わらず、本発明の化合物は一般的に、所望の応答を達成するのに有効な量で投与される。また、本願明細書で使用される用語“有効量”とは、測定し得る生物学的応答(例えば、血圧低下又は組織血流の改善)を生じるのに十分な治療用組成物(例えば、式(I)又は(XV)で表される化合物、及び医薬的に許容され得るビヒクル、キャリヤー、又は賦形剤を含有する組成物)の量に関する。本発明の治療用組成物中の有効成分の実際の投与量は、特定の患者及び/又は用途のための所望の治療応答を達成するのに有効な活性化合物(群)の量を投与するために、変化し得る。もちろん、どの特定の場合における有効量も、治療用組成物の活性、製剤、投与経路、他の薬剤又は治療との組み合わせ、治療される病状の重傷度、及び物理学的条件及び治療される患者のこれまでの医療経歴を包含する種々の要因に依存する。好ましくは、最少の投与量が投与され、そして、最少の有効量に対する用量制限毒性がなければ、その投与量は増加する。治療的に有効量の決定及び調整、並びに、いつどのようにそのような調整を行うかの評価は、当業者に既知である。
【0062】
リポ酸化合物(例えばジヒドロリポ酸)及びNO−供与化合物の投与が示す病気又は疾患を治療する方法のある態様において、これら化合物は、およそ10mg/日ないしおよそ600mg/日の投与量で投与され得る。他の態様において、これら化合物は、およそ100mg/日ないしおよそ400mg/日で投与され得る。またさらなる態様において、これら化合物は、毎日300mgの開始量で投与され得、そしてその後、投与量を限定する毒性無く、最少有効量まで段階的に上げ得る。
【0063】
配合及び投与量に関するさらなる助言については、各々が参照により本願明細書に組み込まれている、米国特許第5326902号及び第5234933号;PCT国際公開第WO93/25521号;Berkow他,(1997)The Merck Manual of Medical Information,Home 編集 Merck Research Laboratories,Whitehouse Station,New Jersey;Goodman他,(2006)Goodman&Gilman’s the Pharmacological Basis of Therapeutics,11th 編集 McGraw−Hill Health Professions Division,New York;Ebadi.(1998)CRC Desk Reference of Clinical Pharmacology.CRC Press,Boca Raton,Florida;Katzung,(2007)Basic&Clinical Pharmacology,10th 編集 Lange Medical Books/McGraw−Hill MedicalPub.Division,New York;Remington他,(1990)Remington’sPharmaceutical Sciences,18th 編集 Mack Pub.Co.,Easton,Pennsylvania;Speight他,(1997)Avery’s Drug Treatment:A Guide to the Properties,Choice,Therapeutic Use and Economic Value of Drugs in Disease Management,4th 編集 Adis International,Auckland/Philadelphia;and Duch,他(1998)Toxicol.Lett.100−101:255−263を参照されたし。
【0064】
本願明細書に記載される治療方法のさらに他の態様において、本発明の化合物の有効量を患者に投与することが、該患者の低密度リポタンパク質(LDL)の酸化の程度を低減させる。LDL酸化を低減するために、本発明に従い患者に投与される治療組成物の有効量は、患者の事情、及び達成される所望の結果に応じて変化するが、日常的な試験を用いて容易に決定され得る。
【0065】
最近の研究が示されているところによれば、患者の血管系中の多量の反応性酸素種が、その後の炎症プロセスを開始し、そして動脈壁に対して内膜損傷を引き起こす酸化LDL(ox−LDL)のような、タンパク質の酸化の増加を生じる(Witztum JL, Steinberg D. J Clin Invest 1991 ;88:1785-1792参照のこと)。この損傷の機構はまだ確立されておらず、超酸化物のような酸素により誘導される遊離ラジカルによる酸化窒素(NO)の失活を包含し得る一方で、これら患者に見られる炎症応答は、炎症プロセスを調節し、且つフォーム細胞形成を促進し得る、VCAM及び腫瘍壊死因子−α(TNF−α)のような、種々の炎症分子の遺伝子発現に影響することが観察されている(例えば、Rajagopalan S, Harrison DG. Circulation 1996;94:240-243;Henninger DD 他Circ Res 1997;81 :274-281;Stannard AK, 他Atherosclerosis 2001 ;154:31-38;及びLibby P,他. Curr Opin Lipidol 1996;7:330-335を参照のこと)。ox−LDLの増加に伴うNO量の減少は、アテローム性動脈硬化症のプロセスの免疫調節剤として機能する(Vergnani L, 他. Circulation 2000;101 :1261-1266)。しかしながら、本発明の化合物は、LDL酸化量を有意に低減させるために効果的に使用され得ることを示すデータが、本願明細書に開示される。
【0066】
LDL酸化量を測定する種々の方法は当業者に既知であり、そして本発明に従い使用され得る。例えば、LDL酸化の量は、患者から血漿試料を得、超遠心分離によりLDLを単離し、そしてその後にCuSOを含有する標準的アッセイを用いてox−LDLへとLDLを酸化することにより、測定され得る(例えば、Zieden B, 他,Br J Clin Pharmacol 1995;39:201-3を参照のこと)。LDLが酸化する感受性を示す酸化の時間のずれは、そのため、患者に生じるLDL酸化の量を確認し得るように、分光光度計を使用して測定され得る。
【0067】
本発明の他の態様において、患者の血管拡張を改善するのに効果的な本発明に従う化合物の量を、治療を必要とする患者に投与することによって、血管拡張を改善する方法が提供される。また、血管拡張を改善するために、本発明に従い患者に投与される治療組成物の有効量は、患者の事情及び達成される所望の結果に応じて変化するが、日常的な試験を用いて容易に決定され得る。
【0068】
患者の血管拡張の程度を測定する種々の方法は、上腕動脈の内皮依存性及び内皮非依存性血管拡張を評価するために高分解能超音波を用いる非侵襲性の流量依存性拡張技術を包含する本発明に従い使用され得る。簡潔には、その試験は、酸化窒素を放出させるために上腕の内皮を刺激して、その後上腕の血管拡張を引き起こす。生じた血管拡張はその後、内皮機能のマーカーとして測定され且つ定量され得る。
【0069】
本願明細書に開示される治療方法の他の態様において、患者への本発明の組成物の投与が、例えば患者の炎症分子の血清濃度を低減させることによって、患者の炎症の程度を低減させる。本願明細書において挙げられるように、最近の証拠が示すところによれば、患者の血管内の多量の反応性酸素種が、その後の炎症プロセスを開始させ、動脈壁に対して内膜損傷を引き起こし、そして種々の炎症分子の遺伝子発現に影響する、酸化LDL(ox−LDL)のような増加したタンパク質酸化を生ずる。しかし、患者に対して本発明の化合物を投与することによって、患者の炎症分子の血清濃度が有利に低下し、それにより患者の炎症の程度を低減させると信じられる。
【0070】
当業者に既知の種々の方法が、患者の炎症分子の血中濃度の低下を決定するために使用され得る。例えば、ある態様において、患者の炎症分子の発現量は、当業者に既知のいずれのRNA同定アッセイを用いても、患者から得られた生体試料(例えば、組織試料、尿試料、唾液試料、血液試料、血清試料、血漿試料、又はそれらの副画分)中の炎症分子(例えば、PAI−1、VCAM−1、レプチン、又はアディポネクチン)をコードする遺伝子のmRNAに対して探査することにより決定され得る。簡潔には、RNAは、試料から抽出され得、cDNAに増幅され、転換され、標識され、そして基質、例えばアレイ、又はマイクロアレイに固定された、或いはリアルタイムPCR(例えばバイオラッドラボラトリーズ(Bio−Rad Laboratories),ヘルキュール(Hercules),カリフォルニア州から入手可能であるような、定量的リアルタイムPCR)により定量された既知RNAのハイブリダイゼーションプローブのような、既知の配列のプローブとハイブリダイズされ得る。試料の核酸分子が結合するプローブは既知であるため、試料中の分子が同定され得る。この点に関し、炎症性遺伝子によりコードされるmRNAの1つ以上のためのDNAプローブが、基質に固定され得、そして本発明に従う方法の実施用に提供される。
【0071】
試料中の炎症分子の濃度を決定することに関し、質量分析及び/又はイムノアッセイ装置及び方法が、試料中の炎症分子を測定するために使用され得るが、他の方法もまた使用され得、それは当業者に良く知られている。例えば、その全体的に参照により本願明細書に組み込まれている、米国特許第6143576号;6113855号;6019944号;5985579号;5947124号;5939272号;5922615号;5885527号;5851776号;5824799号;5679526号;5525524号;及び5480792号を参照されたい。イムノアッセイ装置及び方法は、興味対象の検体の存在又は量に関連するシグナルを生じさせるため、種々のサンドイッチ的、競合的、又は非競合的アッセイフォーマットで、標識された分子を使用し得る。さらには、バイオセンサー及び光学的イムノアッセイのようなある方法及び装置が、標識された分子を必要とすることなく、検体の存在又は量を決定するために使用され得る。例えば、全体的に参照により本願明細書に組み込まれている、米国特許第5631171号;及び5955377号を参照されたい。
【0072】
例えば、酵素免疫測定法(ELISA)、放射免疫測定(RIA)、競合的結合アッセイ等のような、どの適するイムノアッセイをも使用し得る。炎症分子に対する抗体の特異的な免疫学的結合は、直接的に又は間接的に決定され得る。直接的な標識は、抗体に結合した、蛍光性の又は発光性のタグ、金属、染料、放射性ヌクレオチド等を含有する。間接的な標識は、アルカリフォスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ等のような、当業者に良く知られた種々の酵素を含有する。
【0073】
炎症分子に対して特異的な固定化された抗体又はその断片の使用がまた、本発明により考慮される。抗体は、磁性の又はクロマトグラフィーのマトリックス粒子のような種々の固形支持体上に、アッセイプレート(マイクロタイターウェルのような)の表面上に、固形の基質材(プラスチック、ナイロン、紙のような)の断片上等に、固定化され得る。アッセイ用断片は、固体支持体上にアレイ中の抗体又は多数の抗体を被覆することにより調製され得る。この断片は、その後、試験用の生体試料中に浸漬され得、そしてその後、洗浄、及び例えば着色されたスポットのような測定し得るシグナルを生じる検出段階を通して速やかに処理され得る。
【0074】
患者の炎症分子の存在及び/又は定量を行うために、質量分析法(MS)が単独で、又は他の方法(例えばイムノアッセイ)と組み合わせて、使用され得る。本発明に従い使用され得るMS法の例は、液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC−MS);例えば直接スポットMALDI−TOF又は液体クロマトグラフィーMALDI−TOF質量分析法のようなマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型MS分析法(MALDI−TOF−MS);例えば液体クロマトグラフィー(LC)ESI−MSのようなエレクトロスプレーイオン化MS法(ESI−MS);及び表面促進レーザー脱離/イオン化飛行時間型MS分析法(SELDI−TOF−MS)を包含するがこれらに限定されない。これらの種のMS分析の各々は、例えば、3連四重極質量分析計のような商業上入手可能な分光計を用いて行われ得る。生体試料中の炎症分子のようなペプチドの存在及び量を検出するためのMS分析を使用する方法は、当業者に既知である。さらなる手引きのため、参照により本願明細書に組み込まれている、米国特許第6925389号;6989100号;及び6890763号を参照されたい。
【0075】
本願明細書に記載される種々の治療方法に関し、本願明細書に開示される方法のある態様は、定性評価(例えば、患者の炎症遺伝子の発現の有無)を必要とするにすぎないが、補本方法の他の態様は、定量評価(例えば、患者のLDL酸化の低減量又は患者の血管拡張の程度)を必要とする。そのような定量的評価は、例えば上記方法の一を用いて、当業者に理解されるとおりに、行われる。
【0076】
当業者はまた、患者のある特徴(例えば、LDL−酸化)の程度の低下又はある特徴(例えば、血管拡張)の改善を測定することが統計的分析であることを理解するであろう。例えば、患者のLDL−酸化の程度の低減は、LDL−酸化の対照水準と比較され得、そしてLDL−酸化の程度が対照水準よりも低いか又は等しいと、統計的有意性の水準により証明されるようにLDL−酸化の低減の指標となり得る。統計的有意性はしばしば、2つ又はそれ以上の母集団を比較し、そして信頼区間及び/又はp値を決定することにより決定される。例えば、参照により全体的に本願明細書に組み込まれているDowdy及びWearden,Statistics for Research,John Wiley & Sons,New York,1983を参照されたい。本発明の主題事項の好ましい信頼区間は、90%、95%、97.5%、98%、99%、99.5%、99.9%及び99.99%である一方で、好ましいp値は、0.1、0.05、0.025、0.02、0.01、0.005、0.001、及び0.0001である。
【0077】
本発明の化合物は、リポ酸、特にDHLAの有利な特性と、酸化窒素のそれとを有するように設計される。また、本願明細書に開示される化合物は、有力な抗酸化剤、抗炎症化合物として、及びミトコンドリア保護剤として有益であると信じられる。結局、本願明細書に開示される化合物は、リポ酸及び酸化窒素の有利な特性が示される、多数の病気又は疾患の治療に使用できる、ということが従って考えられる。
【0078】
例えば、本化合物は、糖尿病の治療に特に有用であるということが考えられる。この点について、本発明の組成物は、酸化的ストレスを低減し、インシュリンのシグナル伝達を改善し、反応性酸素及び窒素種の過剰生成から引き起こされる糖尿病性合併症を治療し、そして、高血糖、高インシュリン血症、脂質異常症及び酸化的ストレスの血漿マーカーの年齢依存性発現を防止するのに有用である、ということが考えられる。さらには、本組成物は、糖尿病において生じる代謝機能不全のかなりの部分を占めると仮定されるミトコンドリア減退を抑制するのに有用であることがまた考えられる。
【0079】
別例として、本組成物は、高血圧症、心筋梗塞、脳卒中、アテローム性動脈硬化症、及びこれら種々の病気及び疾患に関連する標的器官損傷を治療するのに有用であることがまた、考えられる。この点について、本化合物は、例えば、内皮依存性血管弛緩を改善し、付着分子及びケモカインを低減し、血清トリグリセリドを低減し、そして炎症遺伝子発現を低減することにより、内皮機能不全を改善し得ると考えられる。さらには、本組成物は、例えば、その後の顕性タンパク尿及び腎不全への微量アルブミン尿の進行を低下させるか又は抑制することにより、糖尿病及び高血圧症における腎機能を改善し、及び/又は腎機能の悪化を遅延させることが考えられる。
【0080】
本発明のさらなる用途において、本願明細書に記載される化合物は、血管拡張に対して内皮に利用できるNO分子を作り出し、それにより、患者に生じ得る冠動脈狭心症を脱却又は回避することにより、狭心症を治療するのに有用であると考えられる。
【0081】
本発明のさらに他の用途において、本発明の化合物は、S−ニトロソチオールを有しているため、かかる化合物は、特に種々の病気を治療するのに有利となることが考えられる。例えば、S−ニトロソチオールは動脈及び静脈について一般的に選択性であり、有用な抗血小板剤であり、且つ血管緊張に影響しない投与量で凝集を抑制するため、本発明のS−ニトロソチオール化合物は、組織選択性により、他種のNO−供与分子を超える利点を有することが期待される。別例として、NO種を直接に転換するS−ニトロソチオールの能力が、遊離NOの放出無く他のチオール鎖を通して生物活性を通過させ得ることが期待される。この生物活性化の機構は、従って、攻撃性酸素ラジカルからNO部分を効果的に保護することにより、本発明のS−ニトロソチオール化合物を、酸化ストレス状態の影響をより受けにくくさせ得る。さらに別例として、本発明のS−ニトロソチオール化合物は、効果的な血管拡張剤であることが期待され、そのためその治療を必要とする患者の内皮機能不全を治療するのに使用され得るであろう。さらには、S−ニトロソチオール化合物は、生体適合性ポリマーと併用されると、ヘパリン又は有力な抗血小板剤の全身投与の必要無く、血栓症及び再狭窄のような多数の望ましくない合併症を低減することが期待される。さらには、さらに別例として、S−ニトロソチオール化合物は、抗酸化剤及びアポトーシス酵素の調節を介した神経保護特性があることを示しているため、結果として、本発明のS−ニトロソチオール化合物は、神経変性疾患の進行を遅延させるのに、或いは、神経再生を促進するのに使用され得ることが期待される。最後に、内因性S−ニトロソチオールの補給が患者の創傷治癒を促進することが示唆されているため、本発明のS−ニトロソチオール化合物の投与は、創傷治癒特性を促進することもまた考えられる。
【0082】
本願明細書において使用される用語“患者”とは、ヒトと動物の患者の双方を包含する。従って、動物用の治療用途が、本願明細書に開示される主題事項に従い提供される。また、本願明細書に開示される主題事項は、ヒトのような哺乳類、並びにシベリアトラのような絶滅危惧される重要な哺乳類;ヒトによる消費のために農場で飼育される動物のような経済的重要性の哺乳類;及び/又はペットとして又は動物園で保有される動物のようなヒトに対し社会的重要性のある動物の治療を提供する。そのような動物例は、ネコ及びイヌのような肉食動物;ブタ(pig)、ブタ(hog)、及びイノシシを包含するイノシシ属;畜牛、ウシ、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、野牛及びラクダ;及びウマのような反芻動物及び/又は有蹄動物を包含するが、これらに限定されない。ヒトに対して経済的に重要であるため、絶滅危惧される及び/又は動物園で保有される種類の鳥類、並びに、家禽、より特に飼育用家禽、即ちシチメンチョウ、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ホロホロチョウ等のような家禽を包含する鳥類の治療がまた提供される。従って、飼育用ブタ、反芻動物、有蹄動物、ウマ(競走馬含む)、家禽等を包含するがこれらに限定されない家畜の治療がまた提供される。
【0083】
本願明細書に記載される主題事項の態様は、改変を受け、そして本発明の目的範囲内の他の改変された態様は、本願明細書に提供される情報の研究後に当業者に明らかとなるであろう。本願明細書で提供される情報、及び特に記載される実施態様の詳細が、理解の明確さのためにまずは提供され、そして限定される必要のないことがそこから理解されるべきである。
【0084】
さらには、本願で使用される用語は、当業者により良く理解されるものと信じられる一方で、定義は、本願明細書に開示される主題事項の説明を促進するために記載される。定義されない限り、本願明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解されるのと同様の意味を有する。本願明細書に記載されるのと類似の又は同等のいかなる方法、装置及び材料も、本願明細書に開示される主題事項の実施又は試験において使用され得、そして代表的方法及び材料は上記記載されている。
【0085】
さらには、特許請求の範囲を包含する本願で用いられる場合、長期にわたる特許法の慣習に従うと、用語“a”、“an”及び“the”は、“1又はそれ以上”を意味する。従って例えば、“炎症分子”とは、そのような複数の分子を包含する。また、指摘されない限り、本願明細書及び特許請求の範囲で使用される成分量を表す全ての数字、反応条件のような特性は、用語“およそ”によって全ての場合に改変されるものと理解されるべきである。従って反対に、指摘されない限り、本願明細書及び特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明により得られることが求められる所望の特性に依存して変化し得る近似値である。
【0086】
本願明細書において使用される用語“およそ”とは、物質の量、質量、時間、容量、濃度又はパーセンテージに関する場合には、特定した量から、ある態様では±20%、ある態様では±10%、ある態様では±5%、ある態様では±1%、ある態様では±0.5%、及びある態様では±0.1%の変動を包含すると意味され、そのような変動は、開示される方法を実施するのに適切である。
【実施例】
【0087】
実施例
以下、本発明の好ましい態様の局面を例示する実施例を与える。実施例に開示される技術は発明の実施において良く機能することが本発明者により見出された技術を表すことが、当業者により認められるべきであり、それにより、その実施のための好ましい様式を構成するものとみなされ得る。しかしながら、本願明細書の開示の観点において、当業者であれば、本発明の精神及び目的から逸脱することなく、開示される特定の態様において多くの変更を為し、そして同様の結果を得ることを認めるべきである。
【0088】
実施例1−ジヒドロリポ酸のジニトロソ誘導体の合成及び特性評価
ジヒドロリポ酸(DHLA)のジニトロソ誘導体を合成するために、2種の原料を使用して、最初にDHLA:1)市販のDHLA及び2)ホウ化水素を用いて又は他のチオールを用いたリポ酸の還元により製造されたDHLAを得た。後者の場合、DHLAは、使用前に溶媒を用いて抽出し、乾燥した。下記合成手順において記載される、リポ酸、DHLA、ホウ化水素ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、システイン、β−メルカプトエタノール、ウシ血清アルブミン(BSA)及び他の一般試薬を包含する化学物質及び試薬は、シグマ ケミカル社(Sigma Chemical Company)(セントルイス,ミズーリ州)から購入した。
【0089】
合成手順において、酸化窒素を、亜硝酸ナトリウムと希塩酸(HCl)との反応によって発生させた。典型的な反応において、過剰の亜硝酸ナトリウム(およそ200mg)は、使用された分液漏斗の用途及び寸法に基づき調節した容量及び規定度のHClを有する、6N塩酸の1mLを用いて処理した。エチルアルコール(100μL)中のDHLA(10mg)をドライアイス−アセトン槽中で冷却した。ボルテックスによって試料を頻繁に混合し、そして亜硝酸ナトリウム/HCl反応において放出されたNOを、DHLA溶液に通して発泡させた。ピンク色溶液の形成が直ちに見られた。色彩の暗色化が発生しなくなると、発泡が停止した。
【0090】
これら手順において、DHLAを含有していない溶液は、色彩が黄色になったことが観察された。対照的に、DHLAのみを含有する溶液は、無色となることが観察されたが、亜硝酸塩/HCl及びDHLAの双方を含有する溶液は、色彩がピンク色となることが観察された。後者の生成物は、DHLA又はリポ酸とは区別されることがさらに観察され、そして薄層クロマトグラフィー上で単一の生成物として泳動した。該生成物はまた、350及び545nmにて2つのピークを有する特徴的な可視スペクトルも与え、そして上記反応は出発材料の残存も無く100%完全であることが明らかであった。
【0091】
とりわけ、生じたDHLAの酸化窒素誘導体を特徴付けるために、最初に高速液体クロマトグラフィーを行い、そして反応においてリポ酸は残存していないことが観察された。また、ニトロソ誘導体がピンク色による特徴的な可視スペクトルを有しているため、生成物の可視スペクトル解析が行われ、そして特徴的なスペクトルがおよそ545nm付近でのピークにより観察された(図3)。最後に、各々の反応の前後においてスルフヒドラル(sulfhydral)含量をも測定したところ、反応後に遊離スルフヒドラル基が実際に見られなかった。
【0092】
これら一連の反応から、図1に示すとおり、ジニトロシル化生成物及びモノニトロシル化生成物を包含する2種の生成物がもっともらしい。酸性条件下でのチオラクトンの形成は、モノニトロシル化生成物に有利に働くと信じられる。また、特定のジニトロシル化生成物を製造するために、リポ酸をそのメチルエステルへと転換し、そしてその後、生成物を還元してチオールを発生させ、その後酸化窒素と反応させた。かかる生成物は、強い紫色を有しており、そしてその後の5,5’−ジチオ−ビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)反応により決定したとおり、生成物中に遊離チオールは残存していなかった。
【0093】
概して、これら合成手順から、NOと還元リポ酸(ジヒドロリポ酸;DHLA)との反応が、545nm及び350nmにて吸収するニトロソチオールの典型的なスペクトルを示すピンク色溶液を生じたことが観察された。化合物は遊離チオール基を有していなかったため、赤色固体が生成され、そして該色はリポ酸とは見られなかった。さらには、対照として使用される他の還元チオール(システイン、グルタチオン)が類似のニトロソチオール化合物を生じたことがまた観察された。DHLAとともにインキュベートすると、他のNO供与体の分解から生じたNOもまたニトロソ−DHLAを生じた。最後に、室温にて保管したDHLA−NO溶液は、分解し、数時間内に色を失ったことが観察された。しかしながら、−80℃にて保管したDHLA−NOは、545nmでのOD吸光度を全く失うことなく、3ヶ月までの間その着色を維持した。DHLAが、545nmでのOD吸光度を全く失うことなく、少なくとも1ヶ月間、−20℃にて安定であることがまた観察された。
【0094】
実施例2−ジヒドロリポ酸のジニトロソ誘導体によるウシ血清アルブミンのニトロ化
酸化窒素(NO)を供与するDHLAのジニトロソ誘導体(6,8−ビス[(オキシドアザニリジン)−λ−スルファニル]オクタン酸、即ち“NO−DHLA”)の能力を決定するため、最初にウシ血清アルブミン(BSA)を水中に25mg/mLにて製造した。100μLのアルコール中の高濃度のBSA(15ないし30μL)をその後、高濃度のNO−DHLA(0ないし15μL)と混合し、そして1時間インキュベートした。表1がインキュベーションを表す。
【表1】

【0095】
インキュベーションの終了時に、分子量マーカーとともにSDS−PAGE電気泳動により試料を分離した。電気泳動終了時に、ブロットをその後、ニトロセルロースメンブランに転写し、1:1000希釈率の抗ニトロチロシン抗体を用いてウエスタンブロッティングを行った(オックスフォード バイオメディカル リサーチ(Oxford Biomedical Research),ロチェスター ヒルズ,ミシガン州)。ニトロセルロース上の非特定部位を、牛乳タンパク質を用いて4℃にて16時間ブロックし、そしてその後、ポリクローナル抗ニトロチロシンウサギ抗体を用いて重ねた。抗ウサギIgGと結合させたペルオキシダーゼを第二抗体として使用した。代表的なウエスタンブロットを、レーン1が、分子量マーカーを含有し;レーン2ないし4がそれぞれ、NO−DHLAが全く無い0、15及び30μLのBSAのみを有する対照試料を含有し;レーン5が、BSA及びNO−DHLAをいずれも15μL含有し;レーン6が、NO−DHLAを10μL及びBSAを20μL含有し;レーン7が、NO−DHLAを7.5μL及びBSAを22.5μL含有し;及びレーン8が、NO−DHLAを6μL及びBSAを24μL含有する、図2に示した。
【0096】
タンパク質のチロシンアミノ酸はニトロ化を受けやすく、そのため酸化窒素包含の生体内証拠として採用され得るニトロチロシンを形成しやすい(例えば、MacMillan−Crow LA,他,Nitration and inactivation of manganese super oxide dismutase in chronic rejection of human renal allografts.Proc Natl Acad Sci USA.1996年10月15日;93(21):11853−8を参照のこと)。前述の実験結果の解析に基づくと、それにより、未処理のアルブミンは、検出し得るニトロチロシン残基を有していなかったが、NO−DHLA酸とともにインキュベートした試料は、NO−供与化合物として効果的に機能するNO−DHLAを示す抗体との強い反応性を示したことが観察された。
【0097】
実施例3−ジヒドロリポ酸のジニトロソ誘導体による低密度リポタンパク質酸化の阻害
ジヒドロリポ酸のジニトロソ誘導体(6,8−ビス[(オキシドアザニリジン)−λ4−スルファニル]オクタン酸、即ち“NO−DHLA”)が低密度リポタンパク質(LDL)酸化を阻害し得るかどうかを決定するために、エチルアルコール中で、単独又はNO−DHLAとともに、LDLをインキュベートした。これら溶液のスペクトル解析を、スペクトル部分における吸光度がLDLの酸化脂肪酸成分の形成の指標となる、234のO.D.にて、行った。
【0098】
図4は、これら実験からの結果の代表的なスペクトルであり、ここで、試料1、2及び3は、それぞれ、1、2.5及び5μLのエチルアルコール中にLDLを含有する対照試料を表しており、試料4、5、6は、それぞれ、1、2.5及び5μL中のNO−DHLAの10、25、及び50μMと混合したLDLを表す。図4のグラフに示されるように、X軸は時間(分)であり、Y軸は234でのO.D.であるところ、NO−DHLAは、測定された濃度にて、LDLの酸化を効果的に抑制し、或いは有意に低減した。また、DHLAの酸化窒素誘導体は、その全てが心疾患の重要な要因とみられるアテローム性動脈硬化症、糖尿病、高血圧症、及び炎症に対して有意な効果を有し得るものと信じられる。
【0099】
実施例4:5−(5,7−ビス(ニトロソスルファニル)ヘプチルオキシ)ベンゾ[d][1,3]ジオキシドの合成
5−(5,7−ビス(ニトロソスルファニル)ヘプチルオキシ)ベンゾ[d][1,3]ジオキシド、即ち3,4−メチレンオキシフェニルリポエートのジニトロソ誘導体を合成するために、三段階反応を利用した。反応の第一段階においては、メチレンジオキシフェノール及びdl−リポ酸からO−リポイルメチレンジオキシフェノール(3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート)を合成した。簡潔には、最初に、窒素雰囲気下、ハロゲン化溶媒を用いてリポ酸及びメチレンジオキシフェノールを処理することにより、3,4−メチレンジオキシフェニルリポエートを製造した。250mL丸底フラスコ中で、3,4−メチレンジオキシフェノールの4.5g(0.033モル)、ジメチルアミノ−ピリジン5g(0.4モル)及びジクロロメタンの120mLを混合し、そして15分間良く攪拌した。αリポ酸の7.4g(0.036モル)をその後、10分間以上、部分的に添加した。N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドヒドロクロリドの8.6g(0.8モル)をその後、45分間以上、上記溶液に添加し、そして一晩、攪拌し続けた。およそ24時間の反応時間後、予期される生成物の形成及び出発材料である3,4−メチレンジオキシフェノールの消失を決定するために、該出発材料とともに、粗生成物の薄層クロマトグラフィー(3:1のヘキサン:酢酸エチル溶媒系)を確認した。反応が終了したことを決定した後、減圧下、ジクロロメタンをその後蒸発させ、そして厚い黄色塊を得、それをその後、3:1のヘキサン:酢酸エチル溶媒系を用いたフラッシュカラムクロマトグラフィー上で直接に精製した。
【0100】
その後、ゆっくりとした溶出を行って、生成物をより高い純度とした。簡潔に言うと、得られた黄色綿状の固体を、結晶化法によって再精製した。90%エタノールを用いて結晶化を行い、手順としては、継続して攪拌しながら、10分間以上かけて、温エタノール(およそ35mL)中に化合物(およそ2g)をゆっくりと添加した。化合物の完全な溶解後、薄黄色溶液を急速に濾過し、そしてゆっくりとした結晶化のために一晩置いた。その後、生じた輝く綿状固体を濾過し、そして真空乾燥機を用いて乾燥したところ、総収率は65ないし73%であった。該反応の前述部分の概略式は、下記のとおりである。
【化29】


【0101】
結晶化した化合物をその後、高分解能プロトンNMRによって特徴付けて、反応手順中の中間体の形成を確認した。該中間体生成物の典型的なプロトン化学シフト値が、(CDCl):6.77−6.75(1H,一重項)、6.59−6.58(1H,二重項)、6.52−6.49(1H,二重項の二重項)、5.97(2H,一重項)、3.61−3.57(1H,多重項)、3.19−3.10(2H,多重項)、2.56−2.52(2H,三重項)、2.51−2.45(2H,多重項)、1.95−1.86(2H,多重項)、1.79−1.73(4H,多重項)、1.58−1.53(2H,多重項)であることを観測した。
【0102】
合成手順の第二段階において、3,4−メチレンジオキシフェニルリポエートを還元して3,4−メチレンジオキシフェニルジヒドロリポエートを得るために、水素化ホウ素ナトリウムを用いた。該反応手順のかかる部分の概略式は、下記のとおりである。
【化30】


【0103】
簡潔に言うと、3,4−メチレンジオキシフェニルリポエート(0.36g)をエタノールの25mL中に溶解し、そして5分間良く攪拌した。その後、水素化ホウ素ナトリウム0.149g(1mM)を2時間以上かけて該溶液に添加した。次に、粗生成物を引き出すために、減圧下にてエタノールを蒸発させ、続いて飽和塩化アンモニウム(15mL)を用いて処理した。該水性相中の有機化合物をジクロロメタンを用いて抽出し(2×50mL)、そして減圧下にて乾燥するまで蒸発させた。
【0104】
合成手順の第三段階において、3,4−メチレンジオキシフェニルジヒドロリポエートのジニトロソ誘導体を形成させた。該反応手順部分の概略式は、下記のとおりであった。
【化31】


【0105】
簡潔には、第二段階において製造した得られたジチオール中間体をエタノール(25mL)中に溶解し、そしてドライアイス及びアセトンを用いて−20℃まで冷却した。同時に、亜硝酸ナトリウム及び濃塩酸を反応させることによって酸化窒素ガスを発生させた。その後、酸化窒素ガスを2時間、ジチオール溶液に通した。該溶液は、S−ニトロソ化合物の特徴である濃桃色に変化した。かかる濃桃色溶液のUV−可視スペクトル解析は、330及び540nmにて2つの特徴的な吸収ピークを示した。該生成物を−80℃にて保存し、そして下記構造:
【化32】


を有することを決定した。
【0106】
実施例5 5−(5,7−ビス(ニトロソスルファニル)ヘプチルオキシ)−6−ニトロベンゾ[d][1,3]ジオキソールの合成
5−(5,7−ビス(ニトロソスルファニル)ヘプチルオキシ)−6−ニトロベンゾ[d][1,3]ジオキソール、即ち3,4−メチレンジオキシフェニル−6−ニトロリポエートのジニトロソ誘導体を合成するために、3段階合成手順を用いた。該合成手順の第一段階において、ニトロメチレンジオキシフェノール及びαリポ酸を下記概略式のとおりに反応させた。
【化33】


【0107】
簡潔には、100mL丸底フラスコ中で、3,4−メチレンジオキシ6−ニトロフェノールの0.17g(0.001モル)及びトリエチルアミンの0.1g(140μL;0.2モル)及びジクロロメタンの50mLを混合し、そして10分間良く攪拌した。該溶液は、赤みがかった橙色となった。その後、αリポ酸0.25g(0.0015モル)を5分間以上かけて添加した。その後、該溶液にN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(EDCl)の0.4g(0.002モル)を15分間以上かけて添加し、そして該溶液を一晩攪拌し続けた。およそ36時間の反応時間後、所望の中間体生成物の形成及び出発材料の消失を確認するため、出発材料を用いて粗生成物の薄層クロマトグラフィー(20%ヘキサン:酢酸エチル溶媒系)を確認した。反応が完了したことが決定された後、減圧下でジクロロメタンを蒸発させた。厚い黄色塊が得られ、そして20%ヘキサン:酢酸エチル溶媒系を用いた予備の薄層クロマトグラフィー上で直接に精製した。適切なバンドをプレートから剥がし、そしてその後、酢酸エチルを用いて注意深く溶出した。
【0108】
その後、得られた淡黄色固体を、結晶化法によって再精製した。結晶化は95%エタノールを用いて行い、該手順としては、継続して攪拌しながら、5分間以上かけて、温エタノール(およそ10mL)中に化合物(およそ50mg)をゆっくりと添加した。化合物の完全な溶解後、生じた溶液を急速に濾過し、そしてゆっくりとした結晶化のために一晩置いた。その後、生じた黄色固体を濾過し、そして真空乾燥機を用いて乾燥した。総収率は42%であった。結晶化した中間体生成物をその後、高分解能プロトンNMRをも敷いて特徴付けたところ、該生成物の典型的なプロトン化学シフト値は、(CDCl):7.59(1H,一重項)、6.45(1H,一重項)、6.15(2H,一重項)、3.68−3.60(1H,多重項)、3.21−3.13(2H,多重項)、2.66−2.64(2H,三重項)、2.52−2.47(2H,多重項)、1.97−1.92(2H,多重項)、1.84−1.75(4H,多重項)、1.74−1.58(2H,多重項)であった。
【0109】
合成の第二段階においては、下記概略式に示すとおり、3,4−メチレンジオキシフェニル6−ニトロリポエートを還元して3,4−メチレンジオキシフェニル6−ニトロジヒドロリポエートを得るために、水素化ホウ素ナトリウムを用いた。
【化34】



簡潔には、3,4−メチレンジオキシフェニル6−ニトロリポエート(0.4g)をエタノール25mL中に溶解し、そして5分間よく攪拌した。その後、2時間以上かけて、水素化ホウ素ナトリウム0.149g(1mM)を部分的に該溶液に添加した。次に、粗生成物を引き出すために、減圧下にてエタノールを蒸発させ、続いて飽和塩化アンモニウム(15mL)を用いて処理した。水性相中の有機化合物を、ジクロロメタンを用いて抽出し(2×50mL)、そして減圧下にて乾燥するまで蒸発させた。さらに精製せずに、合成手順の次段階のために直接用いる最終的なジヒドロ化合物を、薄黄色の半固体として得た。
【0110】
合成手順の第三段階においては、下記概略式に示すとおりに、3,4−メチレンジオキシフェニル6−ニトロジヒドロリポエートのジニトロソ誘導体を形成させた。
【化35】


【0111】
簡潔には、第二段階で製造された得られたジチオール中間体をエタノール(25mL)中に溶解し、そしてドライアイス及びアセトンを用いて−20℃まで冷却した。同時に、亜硝酸ナトリウム及び濃塩酸を反応させることによって酸化窒素ガスを発生させた。その後、酸化窒素ガスをジチオール溶液に2時間通した。該溶液は、S−ニトロソ化合物の特徴である濃桃色に変化した。かかる濃桃色溶液のUV−可視スペクトル解析は、330及び540nmにて2つの特徴的な吸収ピークを示した。生成物を−80℃にて保管し、そして下記の化学構造:
【化36】


を有することを決定した。
【0112】
実施例6 1−(6,8−ビス(ニトロソスルファニル)オクタノイル)ピペリジン−2−カルボン酸の合成
1−(6,8−ビス(ニトロソスルファニル)オクタノイル)ピペリジン−2−カルボン酸の合成を、三段階手順によって行った。該手順の第一段階を、下記概略式において示す。
【化37】



該手順の第一段階は、(DL)−ピペコリニルメチルエステル及び(DL)−αリポ酸からの(DL)−ピペコリニルメチルエステルリポ酸の合成であった。簡潔には、(DL)−ピペコリニルメチルエステルリポ酸の合成は、上記式に示すとおり、適切なカップリング材を用いて、(DL)−ピペコリン酸メチルエステルと(DL)−αリポ酸とを組み合わせることによって完了した。該反応の第一段階は、窒素雰囲気下で行われた。(DL)−αリポ酸0.206g(1mM);(DL)−ピペコリン酸メチルエステルヒドロクロリド0.166g(1mM);ジメチルアミノピペリジン0.122g(1mM);及びトリエチルアミン0.101g(1mM,0.140mL)を、塩化メチレン(35mL)中に溶解し、そして100mL丸底フラスコ中で混合した。該フラスコの内容物を室温にて5分間良く攪拌した。フラスコの内容物を同時に攪拌ながら、カップリング剤EDCl0.287g(1.5mM)を、1.5時間以上かけて部分的に添加した。出発材料の消失及び新規生成物の形成を比較するために、薄層クロマトグラフィーを用いて反応の完了を観測した。一晩攪拌後、ロータリーエバポレーターを用い、減圧下で塩化メチレンを蒸発させた。酢酸エチル:ヘキサン:メタノールが90:5:10の比を有する蛍光調製した薄層クロマトグラフィーを用いて、粗生成物を精製した。その後、所望の化合物バンドを剥がし、そして酢酸エチル(350mL)を用いた連続溶出によって、該バンドから化合物を抽出した。乾燥するまで真空下にて溶媒を蒸発させた。薄黄色で高粘性液体が59%の収率で得られ、(DL)−ピペコリニルメチルエステルリポ酸であると決定された。
【0113】
反応手順の第二段階においては、下記概略式に示すとおり、還流条件下、1Mエタノール性水酸化カリウム中にて(DL)−ピペコリニルメチルエステルリポ酸の脱エステル化によって、(DL)−ピペコリニルリポ酸を合成した。
【化38】


【0114】
簡潔には、反応は窒素雰囲気下にて行い、そして(DL)−ピペコリニルメチルエステルリポ酸0.158g(0.5mM)を、還流冷却器付きの50mL丸底フラスコ中に入れた。1mMエタノール性水酸化カリウムの25mLを添加し、そして混合物を24時間還流した。薄層クロマトグラフィーによって反応過程を観測した。一晩の還流後、減圧下にてエタノールを除去し、続いて水30mLを添加し、そしてジクロロメタンを用いて水性相を抽出した(2×25mL)。水性相を100mL三角フラスコに注意深く移し、氷塊上で良く冷却し、そして溶液のpHが酸性となるまで1N塩酸を用いて酸性化した。その後、水性相をジクロロメタンを用いて抽出し(2×50mL)、食塩水を用いて洗浄し、そして、無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、そして濾過した。真空下にて溶媒を蒸発させて、(DL)−ピペコリニルリポ酸であると決定された黄色半固体を75%の収率で得た。
【0115】
反応手順の第三段階においては、下記に示すとおり、第一に、ピペコリニルリポ酸から1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピペリジン−2−カルボン酸を合成した。
【化39】


【0116】
反応手順のかかる段階を行うために、最初に、L−ピペコリニルリポ酸0.165gをエタノール25mL中に溶解し、そして5分間良く攪拌した。その後、水素化ホウ素ナトリウム(37mg)を2時間以上かけて該溶液に段階的に添加した。次に、粗生成物を引き出すために、減圧下にてエタノールを蒸発させ、続いて飽和塩化アンモニウム(15mL)を用いて処理した。水性相中の有機化合物をジクロロメタンを用いて抽出し(2×50mL)、そして減圧下にて乾燥するまで蒸発させた。生じたジメルカプト誘導体をカラムクロマトグラフィー上で精製して、精製形態にある化合物を得た。
【0117】
チオール化合物の特性は、酸化窒素ガスとの反応によるニトロソ誘導体の形成を包含する。また、生じたジチオール化合物は、その存在を確認するために、該化合物を酸化窒素ガスと反応させることによって試験される。そして簡潔には、中間体をエタノール(25mL)中に溶解し、そしてドライアイス及びアセトンを用いて−20℃まで冷却した。同時に、亜硝酸ナトリウム及び濃塩酸を反応させることにより、酸化窒素ガスを発生させた。その後、下記に示す反応を達成するために、酸化窒素ガスを2時間かけてジチオール溶液に通した。
【化40】


【0118】
かかる反応の間に、溶液は、S−ニトロソ化合物の特性である濃桃色に変化した。この濃桃色溶液のUV−可視スペクトル解析は、ジチオール化合物の存在を確定する330及び540nmにて2つの特徴的な吸収ピークを示した。その後、該化合物を、下記化学構造を有するものと決定した。
【化41】


【0119】
実施例7 (s)−1−(6,8−ビス(ニトロソスルファニル)オクタノイル)ピロリジン−2−カルボン酸の合成
(s)−1−(6,8−ビス(ニトロソスルファニル)オクタノイル)ピロリジン−2−カルボン酸を合成するために、下記に示す光学的に活性なL−プロリンメチルエステル及びαリポ酸から開始するために、三段階手順を用いた。
【化42】


【0120】
反応手順の第一段階においては、適したカップリング剤を用いて、L−プロリンメチルエステル及びリポ酸をカップリングすることにより、L−プロリルメチルエステルリポ酸を合成した。簡潔には、窒素雰囲気下で反応の第一段階を行った。リポ酸0.206g(1mM)、L−プロリンメチルエステルヒドロクロリド0.166g(1mM)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)の1当量0.122g(1mM)、及びトリエチルアミン0.101g(0.140mL)を、100mL丸底フラスコ中で混合した。フラスコの内容物を塩化メチレン(40mL)中に溶解し、そして室温にて10分間良く攪拌した。フラスコの内容物を同時に攪拌しながら、カップリング剤1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCl)0.287g(1.5mM)を3時間以上かけて部分的に添加した。出発材料の消失及び新規生成物の形成を比較することによって、薄層クロマトグラフィーを用いて反応の完了を観測した。
【0121】
一晩攪拌後、ロータリーエバポレーターを用い、減圧下にて塩化メチレンを蒸発させた。酢酸エチル:ヘキサン:メタノールが90:5:10の比を有する蛍光調製した薄層(FPTL)クロマトグラフィーを用い、生じた粗生成物を精製した。所望の化合物バンドを剥がし、そして酢酸エチル(350mL)を用いた連続溶出によって該バンドから化合物を抽出した。乾燥するまで溶媒を蒸発させ、そして残存する僅かな溶媒を真空ポンプ下で除去した。黄色半固体が62%の収率で得られた。該化合物をプロトン核磁気共鳴(NMR)分析を用いて特徴付け、そして化合物の化学シフト値に基づきピークが与えられた。化合物の分子量は、318.1(M+1)であることが決定され、そして反応のこの点において、該化合物は、L−プロリルメチルエステルリポ酸であると決定された。
【0122】
反応手順の第二段階においては、下記概略式に示されるとおり、還流条件下にて1Mエタノール性水酸化カリウム中でのL−プロリルメチルエステルリポ酸の脱エステル化によって、L−プロリルリポ酸を合成した。
【化43】


【0123】
反応手順の第一部分と同様に、かかる反応段階もまた、窒素雰囲気下で行った。簡潔には、L−プロリルメチルエステルリポ酸0.158g(0.5mM)を、還流冷却器付きの50mL丸底フラスコ中に入れた。1mMエタノール性水酸化カリウムの25mLを添加し、そして24時間還流した。出発材料の消失及び新規生成物の形成を比較することにより、薄層クロマトグラフィーによって観測した。
【0124】
一晩還流後、減圧下にて反応混合物からエタノールを除去し、そしてエタノールの除去後、30mLの水を添加した。その後、水性相をジクロロメタンを用いて抽出し(2×25mL)、そして100mL三角フラスコに注意深く移し、氷塊上で良く冷却し、そして溶液のpHが酸性となるまで1N塩酸を用いて酸性化した。その後、水性相をジクロロメタンを用いて抽出し(2×50mL)、食塩水を用いて洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより乾燥し、そして濾過した。減圧下で溶媒を蒸発させ、そして黄色の半固体を75%の収率で得た。得られた化合物をプロトンNMR分光法を用いて特徴付け、そして化合物の化学シフト値に基づきピークが与えられた。化合物の分子量は326.1(M+23)、607.3(二量体)であり、ここで、M+23はナトリウム付加物であり(Na分子量=23)、そのため該反応の点において、該化合物はL−プロリルリポ酸であることが決定された。
【0125】
反応手順の第三段階においては、下記概略式に示すとおり、L−プロリルリポ酸のジスルフィド部分をジチオール部分に転換して、1−(6,8−ジメルカプトオクタニル)ピロリジン−2−カルボン酸を製造した。
【化44】


【0126】
ジチオール誘導体へのL−プロリルリポ酸のこの転換を行うために、L−プロリルリポ酸0.15gをエタノール25mL中に溶解し、そして5時間良く攪拌した。水素化ホウ素ナトリウム(37mg)を2時間以上かけて該溶液に部分的に添加した。次に、粗生成物を引き出すために、減圧下にてエタノールを蒸発させ、続いて飽和塩化アンモニウム(15mL)を用いて処理した。ジクロロメタンを用いて水性相中の有機化合物を抽出し(2×50mL)、そして減圧下にて乾燥するまで蒸発させた。生じたジメルカプト誘導体をカラムクロマトグラフィー上で精製して、精製形態にある化合物を得た。
【0127】
ジチオール化合物の存在を確認するため、チオール化合物の特性が、下記に示す酸化窒素ガスとの反応下でのニトロソ誘導体の形成を包含するために、該化合物を酸化窒素ガスと反応させることによって、試験した。
【化45】


【0128】
かかる解析を行うために、中間体をエタノール(25mL)中に溶解し、そしてドライアイス及びアセトンを用いて−20℃まで冷却した。同時に、亜硝酸ナトリウム及び濃塩酸を反応させることによって、酸化窒素ガスを発生させた。その後、酸化窒素ガスを2時間、ジチオール溶液に通した。該溶液は、S−ニトロソ化合物の特性である濃桃色に変化した。かかる濃桃色溶液のUV−可視スペクトル解析はさらに、330及び540nmでの2つの特徴的な吸収ピークを示し、下記化学構造を有することが決定されたジチオール化合物の存在を確認した。
【化46】


【0129】
本明細書全体を通して、種々の参照文献が言及された。全てのその参照文献は、参照により本願明細書に組み込まれている。本発明の種々の詳細、本願明細書に開示される主題事項の目的から逸脱することなく変えることができることがまた理解される。さらには、前述の記載は、例示目的のためのみであり、限定目的ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


(式中、
mは、1又は2の整数であり;
nは、1ないし10の整数であり;
及びRは、独立して、H、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、COOH、COOCH、COOCHCH
【化2】


からなる群より選択される)
を有する化合物又はその医薬的に許容され得る塩又は溶媒和物。
【請求項2】
前記化合物は、式(II):
【化3】


を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物は、式(III):
【化4】


を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物は、式(IV):
【化5】


を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物は、式(V):
【化6】


を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物は、式(VI):
【化7】


を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物は、式(VII):
【化8】


を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物は、式(VIII):
【化9】


を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物は、式(IX):
【化10】


を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物は、式(X):
【化11】


を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物は、式(XI):
【化12】


を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物は、式(XII):
【化13】


を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
前記化合物は、式(XIII):
【化14】


を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
前記化合物は、式(XIV):
【化15】


を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物及び医薬的に許容され得るヒビクル、キャリヤー、又は賦形剤を含有する、医薬組成物。
【請求項16】
式(XV):
【化16】


(式中、
及びRは、独立して、H、CH、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、CHCHCHCHCOOCH、CHCHCHCHCHCOOH、及びCHCHCHCHCOOCHCHから成る群より選択される)
を有する化合物、又はその医薬的に許容され得る塩又は溶媒和物。
【請求項17】
前記化合物は、式(XVI):
【化17】


を有する、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
前記化合物は、式(XVII):
【化18】


を有する、請求項16に記載の化合物。
【請求項19】
前記化合物は、式(XVIII):
【化19】


を有する、請求項16に記載の化合物。
【請求項20】
下記式(I):
【化20】


(式中、
mは、1又は2の整数であり;
nは、1ないし10の整数であり;
及びRは、独立して、H、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、COOH、COOCH、COOCHCH
【化21】


から成る群より選択される)
及び(XV):
【化22】


(式中、
及びRは、独立して、H、CH、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、CHCHCHCHCOOCH、CHCHCHCHCHCOOH、及びCHCHCHCHCOOCHCHから成る群より選択される)
から成る群より選択される化合物、又はその医薬的に許容され得る塩又は溶媒和物の有効量を、必要とする患者に投与することから成る、血管拡張を増大させる方法。
【請求項21】
下記式(I):
【化23】


(式中、
mは、1又は2の整数であり;
nは、1ないし10の整数であり;
及びRは、独立して、H、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、COOH、COOCH、COOCHCH
【化24】


から成る群より選択される)
及び(XV):
【化25】


(式中、
及びRは、独立して、H、CH、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、CHCHCHCHCOOCH、CHCHCHCHCHCOOH、及びCHCHCHCHCOOCHCHから成る群より選択される)
から成る群より選択される化合物、又はその医薬的に許容され得る塩又は溶媒和物の有効量を、必要とする患者に投与することから成る、低密度リポタンパク質酸化を低減する方法。
【請求項22】
下記式(I):
【化26】


(式中、
mは、1又は2の整数であり;
nは、1ないし10の整数であり;
及びRは、独立して、H、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、COOH、COOCH、COOCHCH
【化27】


から成る群より選択さる)
及び(XV):
【化28】


(式中、
及びRは、独立して、H、CH、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、CHCHCHCHCOOCH、CHCHCHCHCHCOOH、及びCHCHCHCHCOOCHCHから成る群より選択される)
から成る群より選択される化合物、又はその医薬的に許容され得る塩又は溶媒和物の有効量を、必要とする患者に投与することから成る、炎症を軽減する方法。
【請求項23】
下記式(I):
【化29】


(式中、
mは、1又は2の整数であり;
nは、1ないし10の整数であり;
及びRは、独立して、H、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、COOH、COOCH、COOCHCH
【化30】


から成る群より選択される)
及び(XV):
【化31】


(式中、
及びRは、独立して、H、CH、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、CHCHCHCHCOOCH、CHCHCHCHCHCOOH、及びCHCHCHCHCOOCHCHから成る群より選択される)
から成る群より選択される化合物、又はその医薬的に許容され得る塩又は溶媒和物の有効量を、必要とする患者に投与することから成る、高血圧を治療する方法。
【請求項24】
下記式(I):
【化32】


(式中、
mは、1又は2の整数であり;
nは、1ないし10の整数であり;
及びRは、独立して、H、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、COOH、COOCH、COOCHCH
【化33】


から成る群より選択される)
及び(XV):
【化34】


(式中、
及びRは、独立して、H、CH、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、CHCHCHCHCOOCH、CHCHCHCHCHCOOH、及びCHCHCHCHCOOCHCHから成る群より選択される)
から成る群より選択される化合物、又はその医薬的に許容され得る塩又は溶媒和物の有効量を、必要とする患者に投与することから成る、脂質異常症を治療する方法。
【請求項25】
下記式(I):
【化35】


(式中、
mは、1又は2の整数であり;
nは、1ないし10の整数であり;
及びRは、独立して、H、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、COOH、COOCH、COOCHCH
【化36】


から成る群より選択される)
及び(XV):
【化37】


(式中、
及びRは、独立して、H、CH、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、CHCHCHCHCOOCH、CHCHCHCHCHCOOH、及びCHCHCHCHCOOCHCHから成る群より選択される)
から成る群より選択される化合物、又はその医薬的に許容され得る塩又は溶媒和物の有効量を、必要とする患者に投与することから成る、腎不全を改善する、或いは腎機能の低下を遅延させる方法。
【請求項26】
前記方法は、糖尿病及び高血圧症から成る群より選択される状態を改善しるために投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
下記式(I):
【化38】


(式中、
mは、1又は2の整数であり;
nは、1ないし10の整数であり;
及びRは、独立して、H、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、COOH、COOCH、COOCHCH
【化39】


から成る群より選択される)
及び(XV):
【化40】


(式中、
及びRは、独立して、H、CH、及び第三ブチル基から成る群より選択され;及び
は、CHCHCHCHCOOCH、CHCHCHCHCHCOOH、及びCHCHCHCHCOOCHCHから成る群より選択される)
から成る群より選択される化合物、又はその医薬的に許容され得る塩又は溶媒和物の有効量を、必要とする患者に投与することから成る、微量アルブミン尿症の進行を低減するか又は予防する方法。
【請求項28】
αリポ酸又はその誘導体を用意し;
前記αリポ酸又はその誘導体を還元して、ジヒドロリポ酸又はジヒドロリポ酸誘導体を形成し;
ジヒドロリポ酸のニトロソ形態を形成するのに十分な時間の間、前記ジヒドロリポ酸又はその誘導体を酸化窒素に曝露し;そして
前記ジヒドロリポ酸のニトロソ形態を精製する
ことから成る、請求項1に記載の化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−507325(P2013−507325A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552969(P2011−552969)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/024772
【国際公開番号】WO2010/096677
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(511133462)インヴアスク セラピューテイックス インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】