説明

酸素センサの故障検出装置

【課題】酸素センサの出力電圧が、正常の電圧範囲にある場合でも、酸素センサの故障判定を行うことができる酸素センサの故障検出装置を提供する。
【解決手段】酸素センサ126は、燃料供給量の増減制御中に正常に動作している場合に、目標空燃比に対してリッチとなる状態で出力される第1出力電圧域と、目標空燃比に対してリーンとなる状態で出力される第2出力電圧域とを備える。故障判断部202は、燃料噴射弁98への燃料供給量の増加又は減少の制御が所定時間継続しているにもかかわらず、当該増加又は減少の制御により出力される酸素センサ126の出力電圧Vxが、第2出力電圧域から第1出力電圧域に移行しない状態である場合、又は第1出力電圧域から第2出力電圧域に移行しない状態である場合には、出力電圧Vxが第2出力電圧域又は第1出力電圧域に存在している場合であっても、酸素センサ126が故障状態であると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素センサの故障検出装置に関し、例えば内燃機関を備えた車両(自動二輪車等)に用いて好適な酸素センサの故障検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸素センサの故障検出装置として、空燃比フィードバック領域中の所定領域(診断領域)において、酸素センサの故障検出を行うことが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、診断領域として、酸素センサが正常であれば、酸素センサが活性化している領域に設定している。そして、酸素センサの故障検出は、酸素センサの出力電圧が、正常時に出力され得る出力電圧の範囲(酸素センサが正常である場合に、空燃比フィードバック制御中に出力され得る出力電圧の範囲)から外れていることを検出した場合に、酸素センサが故障していると判定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−18367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のような従来技術では、酸素センサの出力電圧が、正常時に出力され得る出力電圧の範囲から外れたときに、故障と判定するため、酸素センサの出力電圧が当該範囲から外れるまでは、故障の判定を行うことができず、故障判定が遅れるおそれや、故障の判定ができないことも考えられる。
【0006】
従って、酸素センサの出力電圧が、正常の電圧範囲にある場合でも、酸素センサの故障判定を行うことができる手法が望まれていた。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、酸素センサの出力電圧が、正常の電圧範囲にある場合でも、酸素センサの故障判定を行うことができる酸素センサの故障検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 本発明の請求項1に係る酸素センサの故障検出装置は、排気中の酸素濃度に関連した出力電圧を出力する酸素センサ(126)と、所定の空燃比フィードバック領域(204)にて、目標空燃比となるように前記酸素センサ(126)の出力電圧に基づき、燃料供給量を増減制御するフィードバック制御手段(200)を有する制御装置(144)とを備え、前記制御装置(144)は、前記燃料供給量の増減制御中における前記酸素センサ(126)の出力電圧(Vx)に基づいて前記酸素センサ(126)の故障状態の有無を判断する故障判断手段(202)を含む酸素センサの故障検出装置において、前記酸素センサ(126)は、当該酸素センサ(126)が前記燃料供給量の増減制御中に正常に動作している場合に、前記目標空燃比に対してリッチとなる状態で出力される第1出力電圧域(Z1)と、前記目標空燃比に対してリーンとなる状態で出力されると共に、前記第1出力電圧域(Z1)よりも低い第2出力電圧域(Z2)とを備え、前記故障判断手段(202)は、前記燃料供給量の増減制御中において、前記燃料供給量の増加又は減少の制御が所定時間継続しているにもかかわらず、当該増加又は減少の制御により出力される前記出力電圧(Vx)が、前記第2出力電圧域(Z2)から前記第1出力電圧域(Z1)に移行しない状態である場合、又は前記第1出力電圧域(Z1)から前記第2出力電圧域(Z2)に移行しない状態である場合には、前記出力電圧(Vx)が前記第2出力電圧域(Z2)又は前記第1出力電圧域(Z1)に存在している場合であっても、前記酸素センサ(126)が故障状態であると判断することを特徴とする。
【0009】
[2] 本発明の請求項2に係る酸素センサの故障検出装置は、請求項1記載の酸素センサの故障検出装置において、前記故障判断手段(202)による故障状態の有無の判断は、前記空燃比フィードバック領域(204)中であって、且つ、スロットル開度(THx)とエンジン回転数(NEx)が、それぞれ所定以上である故障検出領域(236)にあるときに行うことを特徴とする。
【0010】
[3] 本発明の請求項3に係る酸素センサの故障検出装置は、請求項2記載の酸素センサの故障検出装置において、前記故障検出領域(236)のエンジン回転数(NEd)は、クラッチが接続した際のエンジン回転数よりも大きい回転数であることを特徴とする。
【0011】
[4] 本発明の請求項4に係る酸素センサの故障検出装置は、請求項3記載の酸素センサの故障検出装置において、前記制御装置(144)は、前記酸素センサ(126)の出力電圧(Vx)が前記第1出力電圧域(Z1)にある場合に前記燃料供給量を減量するための補正値(KO2)を算出し、前記酸素センサ(126)の出力電圧(Vx)が前記第2出力電圧域(Z2)にある場合に前記燃料供給量を増量するための補正値(KO2)を算出する補正値算出手段(210)を備え、前記補正値(KO2)は、増量に対する上限値及び減量に対する下限値が設定され、前記故障判断手段(202)は、前記補正値(KO2)が前記上限値にあるとき、前記酸素センサ(126)の出力電圧(Vx)を検出することを特徴とする。
【0012】
[5] 本発明の請求項5に係る酸素センサの故障検出装置は、請求項4記載の酸素センサの故障検出装置において、前記第2出力電圧域(Z2)の範囲から所定の故障判定電圧(Vb)が設定され、前記故障判断手段(202)は、前記酸素センサ(126)の出力電圧(Vx)が前記故障判定電圧(Vb)以下になった場合に、前記酸素センサ(126)が故障状態であると判断することを特徴とする。
【0013】
[6] 本発明の請求項6に係る酸素センサの故障検出装置は、請求項5記載の酸素センサの故障検出装置において、前記故障判断手段(202)は、前記酸素センサ(126)の出力電圧(Vx)が前記故障判定電圧(Vb)以下になった回数が複数回となった場合に、前記酸素センサ(126)が故障状態であると判断することを特徴とする。
【0014】
[7] 本発明の請求項7に係る酸素センサの故障検出装置は、請求項6記載の酸素センサの故障検出装置において、前記故障判断手段(202)は、前記スロットル開度(THx)とエンジン回転数(NEx)が、前記故障検出領域(236)に入って、最初に前記酸素センサ(126)の出力電圧(Vx)が前記故障判定電圧(Vb)以下になったときにのみ、前記回数を更新することを特徴とする。
【0015】
[8] 本発明の請求項8に係る酸素センサの故障検出装置は、請求項6又は7記載の酸素センサの故障検出装置において、前記故障判断手段(202)は、前記スロットル開度(THx)とエンジン回転数(NEx)が、前記空燃比フィードバック領域(204)中であるとき、前記酸素センサ(126)の出力電圧(Vx)の、前記第1出力電圧域(Z1)から前記第2出力電圧域(Z2)への反転、あるいは、前記第2出力電圧域(Z2)から前記第1出力電圧域(Z1)への反転を検出した際に、前記回数を0にリセットすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
(1) 請求項1に係る本発明によれば、燃料供給量の増減制御(フィードバック制御)中で、燃料供給量が増加傾向となる場合は、燃料供給量が増加していくにつれて酸素センサの出力電圧が、第1出力電圧域に入るのが正常である。しかし、前記出力電圧が第2出力電圧域でとどまっている場合は、当該酸素センサの出力電圧が異常、すなわち、酸素センサが故障状態である可能性が高いと判断することができる。このように、本発明においては、上述のフィードバック制御中において、酸素センサが正常に動作している場合に出力される出力電圧の範囲(正常の出力電圧の範囲)を故障検出の監視範囲とした場合であっても、酸素センサの故障を検出することができる。その結果、酸素センサの出力電圧が正常の出力電圧の範囲から外れるまで待つ必要がなくなり、故障検出のタイミングを早めることができる。逆に、上述のフィードバック制御中で、燃料供給量が減少傾向となる場合は、燃料供給量が減少していくにつれて酸素センサの出力電圧が、第2出力電圧域に入るのが正常である。しかし、前記出力電圧が第1出力電圧域でとどまっている場合は、当該酸素センサの出力電圧が異常、すなわち、酸素センサが故障状態である可能性が高いと判断することができる。
【0017】
(2) 例えばガス欠(燃料がなくなること)の場合は、燃料供給量を増加させる制御を行っても、燃料は供給されないため、酸素センサの出力電圧が第2出力電圧域でとどまり、酸素センサが正常であっても、故障状態として判断するおそれがある。そこで、請求項2に係る本発明によれば、前記故障判断手段による故障状態の有無の判断を、前記空燃比フィードバック領域中であって、且つ、スロットル開度とエンジン回転数が、それぞれ所定以上である故障検出領域にあるときに行うようにしたので、ガス欠時の酸素センサの故障誤判定を防止することができる。
【0018】
(3) 請求項3に係る本発明によれば、ガス欠の場合、エンジン回転数はクラッチが接続した際のエンジン回転数以下であるため、前記故障検出領域のエンジン回転数を、クラッチが接続した際のエンジン回転数よりも大きい回転数とすることで、ガス欠時の酸素センサの故障誤判定を防止することができる。
【0019】
(4) 請求項4に係る本発明によれば、補正値算出手段にて得られた補正値が上限値になるまでは、酸素センサが正常に動作している可能性が高いため、前記補正値が前記上限値にあるとき、前記酸素センサの出力電圧を検出して故障状態の有無を判断することで、酸素センサの故障誤判定を防止することができる。
【0020】
(5) 請求項5に係る本発明によれば、酸素センサが故障状態であるか否かの判定を行う基準である故障判定電圧を、第2出力電圧域の範囲から設定するようにしたので、故障検出のタイミングを早めることができる。
【0021】
(6) 請求項6に係る本発明によれば、前記酸素センサの出力電圧が前記故障判定電圧以下になった回数が複数回となった場合に、前記酸素センサが故障状態であると判断することで、酸素センサの故障誤判定を防止することができる。
【0022】
(7) 請求項7に係る本発明によれば、前記スロットル開度とエンジン回転数が、前記故障検出領域に入って、最初に前記酸素センサの出力電圧が前記故障判定電圧以下になったときに故障判断のための回数が更新され、そのまま前記故障検出領域に入った状態で、前記酸素センサの出力電圧が前記故障判定電圧以下であっても前記回数は更新されない。一旦、前記故障検出領域から出た後、再度、前記故障検出領域に入って、最初に前記酸素センサの出力電圧が前記故障判定電圧以下になったときに前記回数が更新されることになる。これにより、瞬時に回数が更新されるという不都合がなくなり、酸素センサの故障誤判定を防止することができる。
【0023】
(8) 請求項8に係る本発明によれば、前記スロットル開度とエンジン回転数が、前記空燃比フィードバック領域中であるとき、正常な酸素センサからの出力電圧は、燃料供給量の増減制御に応じて、第1出力電圧域と第2出力電圧域を行き来することになる。従って、上述の領域において、酸素センサの出力電圧が前記第1出力電圧域から前記第2出力電圧域への反転、あるいは、前記第2出力電圧域から前記第1出力電圧域への反転を検出した際に、前記回数を0にリセットすることで、酸素センサの故障誤判定を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態に係る酸素センサの故障検出装置(故障判断部)が設置される自動二輪車の一例を示す側面図である。
【図2】自動二輪車の内燃機関におけるシリンダヘッド付近の縦断面を左方から見た図である。
【図3】図2におけるIII−III矢視図である。
【図4】内燃機関の制御系の一例を示すブロック図である。
【図5】空燃比フィードバック領域、短絡故障検出領域及び第1開放故障検出領域を示すマップである。
【図6】空燃比フィードバック制御部の構成を示す機能ブロック図である。
【図7】酸素センサの出力電圧の第1出力電圧域及び第2出力電圧域を説明するための図である。
【図8】酸素センサの出力電圧に基づくフィードバック補正係数の変化を示す波形図である。
【図9】短絡故障判断部の構成を酸素センサ動作確認部と共に示す機能ブロック図である。
【図10】短絡故障判断部における短絡故障検出領域判別部の処理動作を示すフローチャートである。
【図11】短絡故障判断部における短絡故障仮判断部の処理動作を示すフローチャートである。
【図12】短絡故障判断部における短絡故障確定判断部の処理動作を示すフローチャートである。
【図13】酸素センサ動作確認部の処理動作を示すフローチャートである。
【図14】第1開放故障判断部の構成を酸素センサ動作確認部と共に示す機能ブロック図である。
【図15】第2開放故障判断部の構成を酸素センサ動作確認部と共に示す機能ブロック図である。
【図16】空燃比フィードバック領域及び第2開放故障検出領域を示すマップである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る酸素センサの故障検出装置を例えば自動二輪車に適用した実施の形態例を図1〜図16を参照しながら説明する。
【0026】
先ず、本実施の形態に係る酸素センサの故障検出装置10(図4参照)を搭載した自動二輪車12について図1を参照しながら説明する。
【0027】
自動二輪車12は、図1に示すように、車体前部14と車体後部16とが車体フレーム18を介して連結されて構成されている。車体前部14は、その上部に、ハンドル20が回転自在に取り付けられ、下部に前輪22が軸支されている。車体後部16は、その上部にシート24が取り付けられ、下部に後輪26が軸支されている。
【0028】
また、この自動二輪車12は、車体フレーム18の前端部に位置するヘッドパイプ28に、前輪22を軸支する左右一対のフロントフォーク30がステアリングステム32を介して操向可能に枢支されている。ステアリングステム32の上部には、ハンドル20が取り付けてある。
【0029】
車体フレーム18の前部を構成する1本のメインフレーム34がヘッドパイプ28から斜め下方に延出し、曲がって水平に後方に延びている。この水平部には、運転者の足を載せるステップフロア36が設置されている。
【0030】
メインフレーム34の後端部は、左右方向に延在するクロスフレーム38の左右方向中間部に接合されている。クロスフレーム38には、左右一対のピボットプレート40が接合され、このピボットプレート40とパワーユニット42との間に介装された懸架リンク44によって、パワーユニット42は上下方向に揺動可能に支持されている。クロスフレーム38の左右端部には左リヤフレーム46Lと右リヤフレーム46Rの前端部がそれぞれ接合されている。
【0031】
左右リヤフレーム46L、46Rは、クロスフレーム38から斜め上方に延びた後、屈曲して、傾斜を緩めている。また、斜め上方に延びる左右リヤフレーム46L、46Rの途中において、クロスメンバー48によって互いに連結接合されている。右リヤフレーム46Rの前半部は左リヤフレーム46Lの前半部より高い。左右リヤフレーム46L、46Rの後端は、車幅方向の水平な連結部材50によって互いに連結接合されている。
【0032】
左右リヤフレーム46L、46Rの上方には、運転者用と同乗者用の座面を有するシート24が設けてある。左右リヤフレーム46L、46Rの間の、シート24の前部下方には収納ボックス52が設けてあり、シート24の後部下方には、燃料タンク54が設けてある。車体フレーム18は合成樹脂からなるボディカバー56によって覆われている。
【0033】
パワーユニット42の後部は、リヤクッション58を介して左リヤフレーム46Lに支持されている。パワーユニット42の後述する動力伝達装置60の後端部には後輪26が軸支されている。前輪22の上方にはフロントフェンダ62が、後輪26の上方にはリヤフェンダ64が設けてある。
【0034】
パワーユニット42は、内燃機関66と、動力伝達装置60とから構成されている。内燃機関66のクランクケースと動力伝達装置60のケースの前部はつながっており、クランク軸68が両者の中間の壁を貫通している。
【0035】
内燃機関66は、クランクケースから順次前方へ結合されるシリンダブロック70、シリンダヘッド72、及びシリンダヘッドカバー74(図2参照)から構成されている。
【0036】
動力伝達装置60は、Vベルト式無段変速機と歯車減速機とにより構成されている。歯車減速機の最後部の歯車の軸は後車軸となっており、後輪26(図1参照)が一体的に取り付けられている。
【0037】
図2は、内燃機関66のシリンダヘッド72付近の縦断面を左方から見た図である。すなわち、シリンダ軸線C方向に対する側面視の図である。図を説明するにあたり、図中の矢印Frの方向を前方、矢印Upの方向を上方、矢印Dnの方向を下方として説明する。図において、シリンダヘッド72は、ボルト76によってシリンダブロック70に結合され、シリンダヘッドカバー74は、図示していないボルトによってシリンダヘッド72に結合されている。シリンダヘッド72の上部には、上流端が上方に向けて開口し、下流端が燃焼室78に開口する湾曲した吸気ポート80が形成されている。シリンダヘッド72の下部には、上流端が燃焼室78に開口し、下流端が下方に開口する湾曲した排気ポート82が形成されている。
【0038】
シリンダヘッド72には、燃焼室78の吸気口84を開閉する吸気弁86と、燃焼室78の排気口88を開閉する排気弁90とが、それぞれバルブガイド92に摺動可能に嵌装されている。吸気ポート80の上流端開口には吸気管94が接続されている。吸気管94の上流端にはスロットルボディ96(図1参照)が接続されている。吸気管94には、燃料噴射弁98が装着され、その先端は、吸気ポート80に臨んでいる。排気ポート82の下流端には排気管100(図1参照)が接続されている。
【0039】
バルブスプリング102によって閉弁方向に付勢される吸気弁86と排気弁90は、シリンダヘッド72とシリンダヘッドカバー74とで形成される動弁室104内の動弁装置106によって開閉駆動される。動弁室104内に、水平に1本のカム軸108がボールベアリングを介して回転可能に枢支され、このカム軸108に吸気カム110と排気カム112が一体に形成されている。吸気ロッカー軸114がカム軸108の前上方にシリンダヘッド72に架設され、排気ロッカー軸116がカム軸108の前下方にシリンダヘッド72に架設されている。この吸気ロッカー軸114と排気ロッカー軸116にそれぞれ吸気ロッカーアーム118と排気ロッカーアーム120が揺動可能に枢支されている。上記ロッカーアーム118、120の一端には、上記カム110、112に当接するローラ122がそれぞれ枢支され、上記ロッカーアーム118、120の他端には当接部材124がそれぞれ装着され、この当接部材124がそれぞれ吸気弁86と排気弁90の頂部に当接し、カム軸108の回転に応じて吸気弁86と排気弁90とを開閉する。
【0040】
排気ポート82の下流端に近い内壁面に酸素センサ126の装着孔128が開口し、酸素センサ126の先端部が排気ポート82内に露出している。排気ポート82の上流側から上記装着孔128に至る排気ガス捕集溝130が排気ポート82の内壁に設けてある。
【0041】
図3は、図2のIII−III矢視図である。すなわち、シリンダヘッド72を後方から見たシリンダ軸線C方向視の図である。なお、上述の図2は、図3のII−II断面図である。図中の矢印Upの方向が上方、矢印Lの方向が左方、矢印Rの方向が右方である。図3は、シリンダヘッド72を燃焼室78側から見た図である。燃焼室78周辺の面は、シリンダブロック70に対する当接面132である。図には、燃焼室78の吸気口84と排気口88が見える。吸気口84には吸気ポート80が連なり、排気口88には排気ポート82が連なっている。シリンダヘッド72には、酸素センサ126が、排気ポート82の下流部に臨むように装着されている。
【0042】
図2及び図3において、排気ポート82の通路形状は、内燃機関66のシリンダ軸線C方向に対する側面視(図2参照)にて、排気口88から排気管取付け部134に向けて湾曲しているが、さらに、シリンダ軸線C方向視(図3参照)にても、左右方向に曲がり形状となっている。図3において、排気ポート82の内壁に、排気口88と排気管取付け部134との間で、排気ガスの流れ方向に沿う排気ガス捕集溝130が設けてある。排気ガス捕集溝130の後方に酸素センサ126が取り付けてある。従って、排気ガス捕集溝130によって排気ガスが酸素センサ126に導かれるので、内燃機関66の始動時において酸素センサ126の活性化を早めることができる。
【0043】
また、自動二輪車12の内燃機関66には、図4に模式的に示すように、上述した吸気管94及び排気管100が設けられ、内燃機関66とエアクリーナ136間に吸気管94が配管されている。吸気管94に設けられたスロットルボディ96には、スロットル弁138が設けられる。吸気管94上で、内燃機関66とスロットルボディ96との間には燃料噴射弁98が設けられる。
【0044】
スロットル弁138は、ハンドル20(図1参照)に取り付けられたスロットルグリップの回動操作に応じて回動し、その回動量(スロットル開度THx)がスロットル開度センサ140で検知される。すなわち、運転者のスロットルグリップの操作に応じて、スロットル弁138を開閉することで内燃機関66へ供給する空気量を可変とする。
【0045】
内燃機関66には、内燃機関66のエンジン回転数NExを検出するエンジン回転数センサ142(Neセンサ)が設けられ、内燃機関66の排気管100には、排気ガス中の酸素濃度を検出する上述した酸素センサ126が設けられる。この酸素センサ126にて検知される酸素濃度は、排気ガスの空燃比に相当する。これらスロットル開度センサ140、エンジン回転数センサ142、酸素センサ126等からの各検出信号は、エンジン制御装置(エンジン・コントロール・ユニット:ECU144)に入力される。スタータスイッチ146は、イグニッションキーの操作により内燃機関66を始動させるスイッチである。
【0046】
ECU144は、少なくとも空燃比フィードバック制御部200と、故障判断部202とを有する。
【0047】
空燃比フィードバック制御部200は、所定の空燃比フィードバック領域204(図5参照)にて、空燃比が目標空燃比となるように、酸素センサ126の出力電圧Vxに基づいて、燃料供給量を増減制御する。
【0048】
そして、この空燃比フィードバック制御部200は、図6に示すように、基本噴射量算出部206と、リッチ・リーン判定部208と、フィードバック補正係数算出部210と、統合補正係数算出部212と、噴射量補正部214と、燃料噴射時間算出部216とを有する。
【0049】
空燃比フィードバック領域204は、図5において斜線の領域で示すように、空燃比フィードバックを行うスロットル開度とエンジン回転数の組み合わせの範囲を示す情報マップである。この空燃比フィードバック領域204は、下限回転数NEa、上限回転数NEb、下限スロットル開度THa、上限スロットル開度THbで囲まれた領域である。なお、下限回転数NEa、アイドル上限回転数NEc、下限スロットル開度THa、上限スロットル開度THbで囲まれた領域はアイドル領域である。また、下限回転数NEa、上限回転数NEb、下限スロットル開度THa、上限スロットル開度THb、アイドル上限回転数NEcは、それぞれ増大方向(実線)と減少方向(破線)とでヒステリシスを有するように設定されている。従って、空燃比フィードバック領域204は、正確には、下限回転数NEaの増大方向(実線)、上限回転数NEbの減少方向(破線)、下限スロットル開度THaの増大方向(実線)、上限スロットル開度THbの減少方向(破線)で囲まれた領域である。
【0050】
図6に示す基本噴射量算出部206は、エンジン回転数センサ142からのエンジン回転数NExとスロットル開度センサ140からのスロットル開度THxに基づいて基本噴射量マップ218を参照しつつ目標空燃比を得るための基本燃料噴射量T0を定める。
【0051】
リッチ・リーン判定部208は、酸素センサ126からの出力電圧Vx(酸素濃度)に基づいて排気ガスのリッチ及びリーンの程度を判定する。
【0052】
フィードバック補正係数算出部210は、リッチ・リーン判定部208からの判定結果に基づいてフィードバック補正係数KO2を算出する。
【0053】
具体的には、酸素センサ126の出力電圧Vxの範囲は、図7に示すように、例えばVmin(例えば0V)〜Vmax(例えば5V)であるが、不活性状態のときの出力電圧の範囲を除くと、すなわち、空燃比フィードバック制御中での出力電圧Vxの範囲は、Vmin〜Va(例えば1.15V)である。また、理論空燃比に対応する出力電圧Vxは、Vref(例えば0.6V)である。従って、リッチ・リーン判定部208は、酸素センサ126の出力電圧VxがVrefより大きく、Va以下(第1出力電圧域Z1)であれば、リッチ判定を行い、酸素センサ126の出力電圧VxがVrefより小さく、Vmin以上(第2出力電圧域Z2)であれば、リーン判定を行う。そして、図8に示すように、酸素センサ126の出力電圧Vxが第2出力電圧域Z2にあって、リーン判定がなされると、フィードバック補正係数算出部210は、燃料供給量を増加させるべく、基準値(1.0)よりも大きい値をフィードバック補正係数KO2として算出する。リーン判定が時間的に継続すると、それに応じてフィードバック補正係数の値を段階的に増加させる。反対に、酸素センサ126の出力電圧Vxが第1出力電圧域Z1にあって、リッチ判定がなされると、フィードバック補正係数算出部210は、燃料供給量を減少させるべく、基準値(1.0)よりも小さい値をフィードバック補正係数KO2として算出する。リッチ判定が時間的に継続すると、それに応じてフィードバック補正係数の値を段階的に減少させる。このフィードバック補正係数KO2には上限リミットと下限リミットが設定され、過剰にリッチ化及びリーン化されないようにしている。上限リミットとしては、例えば1.25が挙げられ、下限リミットとしては、例えば0.82が挙げられる。
【0054】
また、このフィードバック補正係数算出部210は、後述する故障判断部202において、酸素センサ126の短絡故障あるいは開放故障(断線故障)が確定すると、フィードバック補正係数KO2を1.0に固定して出力する。短絡故障あるいは開放故障の確定の判断は、例えば故障状態フラグ220を参照することにより行われる。この場合、例えば故障状態フラグ220の値が0のとき、「故障なし」、故障状態フラグ220の値が1のとき、「短絡故障」、故障状態フラグ220の値が2のとき、「開放故障」とすればよい。
【0055】
統合補正係数算出部212は、フィードバック補正係数KO2及び経時変化対応補正係数KBUに基づいて、酸素センサ126の出力電圧Vxによる空燃比制御のための統合補正係数KTを、KT=KO2×KBUの演算式によって算出する。ここで、経時変化対応補正係数KBUは、内燃機関66の劣化等の経時変化に応じて変化するように学習しつつ定められる。
【0056】
算出されたフィードバック補正係数KO2及び経時変化対応補正係数KBUは、所定の周期でメモリ222(不揮発性記憶部)に記憶され、自動二輪車12の電源をオフ(システム停止)した後にも保持される。メモリ222に記憶されたフィードバック補正係数KO2及び経時変化対応補正係数KBUは、例えばイグニッションキーの操作によるスタータスイッチ146のON動作時(システム起動時)に基づいて読み込まれ、初期値として利用される。
【0057】
噴射量補正部214は、基本噴射量算出部206からの基本噴射量T0を統合補正係数算出部212からの統合補正係数KTに基づいて補正して補正燃料噴射量T1を求める。具体的には、補正燃料噴射量T1を、T1=T0×KTの演算式によって求める。
【0058】
燃料噴射時間算出部216は、噴射量補正部214からの補正燃料噴射量に対応した燃料噴射時間を求める。ECU144は、燃料噴射弁98を駆動して、算出された燃料噴射時間にわたって燃料を噴射する。すなわち、ECU144は、酸素センサ126の出力電圧Vxに基づく空燃比を目標空燃比(理論空燃比)に近づけるように、燃料噴射弁98からの燃料噴射量を制御することになる。特に、この例では、ECU144は、空燃比を目標空燃比とするための基本燃料噴射量T0をスロットル開度THx及びエンジン回転数NExに基づいて定めると共に、酸素センサ126の出力電圧Vxに応じて定められるフィードバック補正係数KO2と、内燃機関66の経時変化に応じて変化するように学習しつつ定められた経時変化対応補正係数KBUとを基本燃料噴射量T0に乗算して補正燃料噴射量T1を求めることで、吸気圧及び大気圧に基づくことなく、燃料噴射量を制御することができる。
【0059】
次に、故障判断部202は、図4に示すように、酸素センサ126の短絡故障を判断するための短絡故障判断部224と、酸素センサ126の開放故障を判断するための開放故障判断部226と、酸素センサ動作確認部228とを有する。
【0060】
短絡故障判断部224は、図9に示すように、短絡故障検出領域判別部230と、短絡故障仮判断部232と、短絡故障確定判断部234とを有する。
【0061】
短絡故障検出領域判別部230は、スロットル開度THxとエンジン回転数NExが、短絡故障検出領域236(図5参照)にあるか否かを判別し、短絡故障検出領域236にあれば、検出領域フラグ238の値を1にし、短絡故障検出領域236になければ、検出領域フラグ238の値を0にする。
【0062】
短絡故障検出領域236は、図5に示すように、空燃比フィードバック領域204内であって、且つ、空燃比フィードバック制御によって燃料供給量を増量し、酸素センサ126の出力電圧Vxが高くなる条件の領域であり、空燃比フィードバック領域204内のエンジン回転数NEd、上限エンジン回転数NEbの増大方向(実線)、スロットル開度THc、上限スロットル開度THbの減少方向(破線)で囲まれた領域である。エンジン回転数NEd及びスロットル開度THcは、それぞれ所定以上に設定され、本実施の形態では、エンジン回転数NEdとして、クラッチが接続した際のエンジン回転数(クラッチINのエンジン回転数:例えば4000rpm)よりも大きいエンジン回転数に設定され、また、スロットル開度THcとして、スロットル弁138の可動範囲の82%以上に設定される。具体的には、エンジン回転数NEdとして、例えば5000rpmが設定され、スロットル開度THcとして、例えば65.9°が設定される。なお、スロットル弁138の可動範囲を0°〜80°とし、75°以上を全開状態としている。
【0063】
短絡故障仮判断部232は、スロットル開度THxとエンジン回転数NExが、短絡故障検出領域236に入った際に動作し、燃料供給量を増加する制御が所定時間継続しているにもかかわらず、酸素センサ126の出力電圧Vxが、第2出力電圧域Z2から第1出力電圧域Z1に移行しない状態である場合に、酸素センサ126が短絡故障であると仮決定する。一旦、仮決定が行われると、スロットル開度THxとエンジン回転数NExが、短絡故障検出領域236から外れて、再度短絡故障検出領域236に入るまで、短絡故障の判断処理を行わない。
【0064】
短絡故障確定判断部234は、短絡故障仮判断部232での仮決定が複数回にわたって行われた場合に、初めて短絡故障であると確定し、例えば故障状態フラグ220の値を1にする。これにより、フィードバック補正係数算出部210は、短絡故障の確定によって、酸素センサ126の出力電圧Vxに基づいたフィードバック補正係数KO2の算出を行わず、フィードバック補正係数KO2を1.0に固定する。
【0065】
酸素センサ動作確認部228は、スロットル開度THxとエンジン回転数NExが、一旦、短絡故障検出領域236から外れて、空燃比フィードバック領域204にある場合に、酸素センサ126の出力電圧Vxを監視し、酸素センサ126の出力電圧Vxが、第1出力電圧域Z1から第2出力電圧域Z2への反転、あるいは、第2出力電圧域Z2から第1出力電圧域Z1への反転を検出した際に、仮決定の回数を0にリセットする。つまり、酸素センサ126は正常であると判断する。
【0066】
ここで、上述した短絡故障判断部224及び酸素センサ動作確認部228の処理動作について図10〜図13を参照しながら説明する。短絡故障判断部224の短絡故障検出領域判別部230、短絡故障仮判断部232及び短絡故障確定判断部234、並びに酸素センサ動作確認部228はECU144によってマルチタスク方式で動作する。
【0067】
最初に、短絡故障検出領域判別部230の処理動作について図10を参照しながら説明する。
【0068】
先ず、図10のステップS1において、現在のスロットル開度THx及びエンジン回転数NExが、空燃比フィードバック領域204(図5参照)に入っているか否かを判別する。この判別は、現在のスロットル開度THxが下限スロットル開度THa以上、上限スロットル開度THb以下であって、且つ、現在のエンジン回転数NExが下限エンジン回転数NEa以上、上限エンジン回転数NEb以下であるかどうかで行われる。
【0069】
現在のスロットル開度THx及びエンジン回転数NExが、空燃比フィードバック領域204に入っていれば、次のステップS2に進み、現在のエンジン回転数NExが短絡故障検出領域236(図5参照)のエンジン回転数の範囲に入っているか否かを判別する。この判別は、現在のエンジン回転数NExがエンジン回転数NEd以上、上限エンジン回転数NEb以下であるかどうかで行われる。
【0070】
現在のエンジン回転数NExが短絡故障検出領域236のエンジン回転数の範囲に入っていれば、次のステップS3に進み、現在のスロットル開度THxが短絡故障検出領域236のスロットル開度の範囲に入っているか否かを判別する。この判別は、現在のスロットル開度THxがスロットル開度THc以上であるかどうかで行われる。
【0071】
現在のスロットル開度THxが短絡故障検出領域236のスロットル開度の範囲に入っていれば、次のステップS4に進み、検出領域フラグ238の値を1にする。
【0072】
一方、上述のステップS1において、現在のスロットル開度THx及びエンジン回転数NExが、空燃比フィードバック領域204に入っていないと判別された場合、あるいはステップS2において、現在のエンジン回転数NExが、短絡故障検出領域236のエンジン回転数の範囲に入っていないと判別された場合、あるいはステップS3において、現在のスロットル開度THxが、短絡故障検出領域236のスロットル開度の範囲に入っていないと判別された場合は、ステップS5に進み、検出領域フラグ238の値を0にする。
【0073】
上述のステップS4又はステップS5での処理が終了した段階で、この短絡故障検出領域判別部230での処理が一旦終了する。この短絡故障検出領域判別部230は、例えば3秒〜10秒のうちの任意の時間単位で起動される。
【0074】
次に、短絡故障仮判断部232の処理動作について図11を参照しながら説明する。
【0075】
先ず、図11のステップS101において、検出領域フラグ238の値が1であるか否かを判別する。
【0076】
検出領域フラグ238の値が1であれば、次のステップS102に進み、インクリメントフラグ240の値が0であるか否かを判別する。このインクリメントフラグ240は、短絡故障検出領域236に入って最初の仮判断であるかどうかを判別するためのフラグであり、値が0であれば、短絡故障検出領域236に入って最初の仮判断であることを示し、値が1であれば短絡故障検出領域236に入った状態で2回目以降の仮判断であることを示す。本実施の形態では、短絡故障検出領域236に入って最初の仮判断のみを有効として処理を進めるようにしている。
【0077】
そして、インクリメントフラグ240の値が0であれば、上述した図10のステップS2及びステップS3と同様に、現在のエンジン回転数NExが短絡故障検出領域236のエンジン回転数の範囲に入っているか否かを判別し(ステップS103)、現在のスロットル開度THxが短絡故障検出領域236のスロットル開度の範囲に入っているか否かを判別する(ステップS104)。
【0078】
現在のエンジン回転数NExが短絡故障検出領域236のエンジン回転数の範囲に入っており、また、現在のスロットル開度THxが短絡故障検出領域236のスロットル開度の範囲に入っていれば、次のステップS105に進み、フィードバック補正係数算出部210からのフィードバック補正係数KO2が上限リミットの値であるか否かを判別する。
【0079】
上限リミットの値であれば、次のステップS106に進み、酸素センサ126の出力電圧Vxが短絡故障判定電圧Vb以下であるか否かを判別する。短絡故障判定電圧Vbは、第2出力電圧域Z2から任意に選択できるが、本実施の形態では、仮判断であっても、酸素センサ126の短絡故障を確実に検出するため、燃料供給量を増加しているにもかかわらず、リーンの度合いが高い状態が続いていることを検出するようにしている。そのため、短絡故障判定電圧Vbとしては、第2出力電圧域Z2のうち、リーンの度合いが高いことを示す0.055〜0.065Vのうちの任意の電圧が選択可能で、本実施の形態では、0.059Vを使用している。
【0080】
上述のステップS106において、酸素センサ126の出力電圧Vxが短絡故障判定電圧Vb以下であると判別された場合は、次のステップS107において、計時が開始されていないか否かを判別する。計時はECU144からの基準クロックを計時カウンタ242にて計数することにより行われる。従って、計時カウンタ242の値が0であれば、計時が開始されていないことになる。計時が開始されていなければ、次のステップS108に進み、計時を開始する。
【0081】
計時を開始した後、次のステップS109において、計時を開始してから所定時間taが経過したか否かを判別する。この判別は、計時カウンタ242の値が所定時間taに相当する基準クロック数以上であるかどうかで行われる。所定時間taとしては、例えば3秒〜5秒等が挙げられる。
【0082】
所定時間taが経過していなければ、上述のステップS105以降の処理を繰り返し、所定時間taが経過していれば、ステップS110に進み、酸素センサ126が短絡故障であると仮決定し、仮決定フラグ244の値を1にする。
【0083】
一方、上述のステップS101において、検出領域フラグ238の値が1でないと判別された場合は、ステップS111に進み、インクリメントフラグ240の値を0にする。
【0084】
ステップS111での処理が終了した場合、あるいは、ステップS102において、インクリメントフラグ240の値が0でないと判別された場合、あるいはステップS103において、現在のエンジン回転数NExが、短絡故障検出領域236のエンジン回転数の範囲に入っていないと判別された場合、あるいはステップS104において、現在のスロットル開度THxが、短絡故障検出領域236のスロットル開度の範囲に入っていないと判別された場合、あるいはステップS105において、フィードバック補正係数KO2が上限リミット未満であると判別された場合、あるいはステップS106において、酸素センサ126の出力電圧Vxが短絡故障判定電圧Vbを超えていると判別された場合は、ステップS112に進み、仮決定フラグ244の値を0にする。
【0085】
上述のステップS110又はステップS112での処理が終了した段階で、この短絡故障仮判断部232での処理が一旦終了する。この短絡故障仮判断部232は、例えば上述の所定時間taよりも長い例えば10秒〜30秒のうちの任意の時間単位で起動される。
【0086】
次に、短絡故障確定判断部234の処理動作について図12を参照しながら説明する。
【0087】
先ず、図12のステップS201において、酸素センサ126の短絡故障が仮決定されたか否か、すなわち、仮決定フラグ244の値が1であるか否かを判別する。
【0088】
仮決定フラグ244の値が1であれば、次のステップS202に進み、仮決定カウンタ246の値を+1更新する。また、インクリメントフラグ240の値を1にし、仮決定フラグ244の値を0にリセットする。
【0089】
次のステップS203において、仮決定カウンタ246の値が規定値Daであるか否かを判別する。規定値Daとしては、酸素センサ126が短絡故障状態である蓋然性が高い仮決定の回数が選ばれ、本実施の形態では4を使用している。
【0090】
仮決定カウンタ246の値が規定値Daであれば、ステップS204に進み、酸素センサ126が短絡故障状態であると確定し、故障状態フラグ220の値を1にする。これにより、フィードバック補正係数算出部210は、フィードバック補正係数KO2を1.0に固定して出力する。すなわち、酸素センサ126の出力電圧Vxに基づく空燃比フィードバック制御を停止する。
【0091】
一方、上述のステップS203において、仮決定カウンタ246の値が規定値Da未満であると判別された場合は、次のステップS205に進み、仮決定フラグ244の値を0にリセットする。
【0092】
上述のステップS201において、仮決定フラグ244の値が0であると判別された場合、あるいはステップS204又はステップS205での処理が終了した段階で、この短絡故障確定判断部234での処理が一旦終了する。この短絡故障確定判断部234は、例えば3秒〜10秒のうちの任意の時間単位で起動される。
【0093】
次に、酸素センサ動作確認部228の処理動作について図13を参照しながら説明する。ここでは、2つのフラグ(今回の電圧域判定フラグ248及び前回の電圧域判定フラグ250)が使用される。
【0094】
先ず、図13のステップS301において、現在のスロットル開度THx及びエンジン回転数NExが、空燃比フィードバック領域204に入っているか否かを判別する。
【0095】
現在のスロットル開度THx及びエンジン回転数NExが、空燃比フィードバック領域204に入っていれば、次のステップS302に進み、現在の酸素センサ126の出力電圧Vxが第1出力電圧域Z1(Vrefより大きく、Va以下)に入っている否かを判別する。
【0096】
出力電圧Vxが、第1出力電圧域Z1に入っていれば、次にステップS303に進み、今回の電圧域判定フラグ248の値を1にし、出力電圧Vxが、第1出力電圧域Z1に入っていない、すなわち、第2出力電圧域Z2に入っていれば、次にステップS304に進み、今回の電圧域判定フラグ248の値を2にする。
【0097】
次のステップS305において、前回の電圧域判定フラグ250の値が初期値(例えば0)と異なる値であるか否かを判別する。すなわち、前回の電圧域判定フラグ250が第1出力電圧域Z1を示す値「1」又は第2出力電圧域Z2を示す値「2」であるかを判別する。
【0098】
前回の電圧域判定フラグ250が初期値でなければ次のステップS306に進み、今回の電圧域判定フラグ248の値と前回の電圧域判定フラグ250の値とが異なるか否かを判別する。すなわち、酸素センサ126の出力電圧Vxが第1出力電圧域Z1から第2出力電圧域Z2に、あるいは第2出力電圧域Z2から第1出力電圧域Z1に反転しているか否かを判別する。
【0099】
各値が異なっていれば、次のステップS307に進み、酸素センサ126が正常に動作しているとして、故障状態フラグ220の値を初期値0にリセットすると共に、仮決定カウンタ246の値を初期値0にリセットし、仮決定フラグ244も初期値0にリセットする。
【0100】
上述のステップS307での処理が終了した段階、あるいは上述のステップS301において、現在のスロットル開度THx及びエンジン回転数NExが、空燃比フィードバック領域204に入っていないと判別された場合、あるいはステップS305において、前回の電圧域判定フラグ250が初期値であると判別された場合、あるいはステップS306において、今回の電圧域判定フラグ248の値と前回の電圧域判定フラグ250の値とが同じであると判別された場合に、この酸素センサ動作確認部228での処理が一旦終了する。この酸素センサ動作確認部228は、例えば3秒〜10秒のうちの任意の時間単位で起動される。
【0101】
このように、本実施の形態に係る故障判断部202の短絡故障判断部224においては、以下に示す効果を奏する。
【0102】
すなわち、酸素センサ126の出力電圧Vxに基づく燃料供給量の増減制御(空燃比フィードバック制御)中で、燃料供給量が増加傾向となる場合、酸素センサ126が正常であれば、燃料供給量が増加していくにつれて酸素センサ126の出力電圧Vxが第1出力電圧域Z1に入ることとなる。このような正常動作に対して、酸素センサ126の出力電圧Vxが第2出力電圧域Z2でとどまっている場合は、酸素センサ126の出力電圧Vxが異常、すなわち、酸素センサ126が短絡故障状態である蓋然性が高いこととなる。
【0103】
本実施の形態に係る短絡故障判断部224は、この原理を利用して、燃料供給量が増加しているにもかかわらず、酸素センサ126の出力電圧Vxが第2出力電圧域Z2にとどまっている場合に、酸素センサ126が短絡故障状態であると判断するようにしている。つまり、上述の空燃比フィードバック制御中において、酸素センサ126が正常に動作している場合に出力される出力電圧の範囲のうち、第2出力電圧域Z2を短絡故障検出の監視範囲とした場合であっても、酸素センサ126の短絡故障状態を検出することができる。その結果、酸素センサ126の出力電圧Vxが正常の出力電圧の範囲(第1出力電圧域Z1及び第2出力電圧域Z2)から外れるまで待つ必要がなくなり、故障検出のタイミングを早めることができる。
【0104】
上述のように、第2出力電圧域Z2を短絡故障検出の監視範囲とした場合、酸素センサ126が正常であっても、短絡故障状態として判断する故障誤判定を行うおそれがある。例えばガス欠(燃料がなくなること)の場合は、燃料供給量を増加させる制御を行っても、燃料は供給されないため、酸素センサ126の出力電圧Vxが第2出力電圧域Z2でとどまり、酸素センサ126が正常であっても、短絡故障状態として判断するおそれがある。そこで、本実施の形態では、スロットル開度THxとエンジン回転数NExが、空燃比フィードバック領域204中であって、且つ、それぞれ所定以上である短絡故障検出領域236にあるときに短絡故障の判断を行うようにしたので、ガス欠時の酸素センサ126の故障誤判定を防止することができる。例えばガス欠の場合のエンジン回転数はクラッチが接続した際のエンジン回転数以下であるが、短絡故障検出領域236のエンジン回転数NEdを、クラッチが接続した際のエンジン回転数よりも大きい回転数としたので、スロットル開度が大きく、且つエンジン回転数が低いような、ガス欠時によく見られる領域を短絡故障検出領域236から省いて、ガス欠時の酸素センサ126の故障誤判定を確実に防止することができる。
【0105】
また、短絡故障判断部224では、フィードバック補正係数算出部210にて得られたフィードバック補正係数KO2が上限リミットの値である場合に、初めて酸素センサ126の出力電圧Vxを検出して故障状態を判断するようにしている。これは、フィードバック補正係数KO2が上限リミットの値になるまでは、酸素センサ126が正常に動作している可能性が高いことから、上述のように、フィードバック補正係数KO2が上限リミットの値にあるときに、酸素センサ126の出力電圧Vxを検出して故障状態の有無を判断することで、酸素センサ126の故障誤判定を防止することができる。
【0106】
さらに、本実施の形態では、フィードバック補正係数KO2が上限リミットの値であって、且つ、酸素センサ126の出力電圧Vxが短絡故障判定電圧Vb以下の状態が所定時間taにわたって継続した場合に、短絡故障状態であると仮決定し、この仮決定の回数が複数回(本実施の形態では仮決定カウンタ246の値が4)となった場合に、初めて酸素センサ126が短絡故障状態であると確定するようにしたので、酸素センサ126の故障誤判定を確実に防止することができる。
【0107】
特に、本実施の形態では、スロットル開度THxとエンジン回転数NExが、短絡故障検出領域236に入って、最初にフィードバック補正係数KO2が上限リミットの値であって、且つ、酸素センサ126の出力電圧Vxが短絡故障判定電圧Vb以下の状態が所定時間Taにわたって継続した場合に、仮決定の回数(仮決定カウンタ246の値)を更新するようにしており、短絡故障検出領域236に入った状態で、フィードバック補正係数KO2が上限リミットの値であって、且つ、酸素センサ126の出力電圧Vxが短絡故障判定電圧Vb以下の状態が所定時間taの2倍以上にわたって継続したとしても、前記回数は更新されない。一旦、短絡故障検出領域236から出た後、再度、短絡故障検出領域236に入って、最初にフィードバック補正係数KO2が上限リミットの値であって、且つ、酸素センサ126の出力電圧Vxが短絡故障判定電圧Vb以下の状態が所定時間taにわたって継続したときに前記回数が更新されることになる。これにより、瞬時に回数が更新されるという不都合がなくなり、酸素センサ126の故障誤判定を確実に防止することができる。
【0108】
ところで、スロットル開度THxとエンジン回転数NExが、空燃比フィードバック領域204中であって、且つ、短絡故障検出領域236以外であるとき、正常な酸素センサ126からの出力電圧Vxは、燃料供給量の増減制御に応じて、第1出力電圧域Z1と第2出力電圧域Z2を行き来することになる。そこで、本実施の形態では、酸素センサ動作確認部228において、酸素センサ126の出力電圧Vxが第1出力電圧域Z1から第2出力電圧域Z2への反転、あるいは、第2出力電圧域Z2から第1出力電圧域Z1への反転を検出した際に、少なくとも仮決定の回数(仮決定カウンタ246の値)を0にリセットするようにしたので、酸素センサ126の故障誤判定を防止することができる。
【0109】
次に、開放故障判断部226について図14及び図15を参照しながら説明する。
【0110】
開放故障判断部226は、2つの構成例、すなわち、第1開放故障判断部226A(図14参照)及び第2開放故障判断部226B(図15参照)がある。
【0111】
第1開放故障判断部226Aは、図14に示すように、第1開放故障検出領域判別部252Aと、第1開放故障仮判断部254Aと、第1開放故障確定判断部256Aとを有する。
【0112】
第1開放故障検出領域判別部252Aは、スロットル開度THxとエンジン回転数NExが、空燃比フィードバック領域204から外れた第1開放故障検出領域258A(図5参照)にあるか否かを判別する。この第1開放故障検出領域258Aは、スロットル開度THxがフェールカットを示す領域であり、例えば図5に示すように、エンジン回転数NEe、上限エンジン回転数NEb、スロットル開度0°、スロットル開度THdで囲まれた領域である。エンジン回転数NEeはアイドル上限回転数NEcよりも僅かに大きく、スロットル開度THdは、エンジン回転数NEeにおける下限スロットル開度THaとほぼ同じである。
【0113】
第1開放故障仮判断部254Aは、スロットル開度THxとエンジン回転数NExが、第1開放故障検出領域258Aに入った際に動作し、フェールカット中でもかかわらず酸素センサ126の出力電圧Vxが第1出力電圧域Z1あるいはそれ以上の電圧である状態である場合に、酸素センサ126が開放故障であると仮決定する。一旦、仮決定が行われると、スロットル開度THxとエンジン回転数NExが、第1開放故障検出領域258Aから外れて、再度第1開放故障検出領域258Aに入るまで、開放故障の判断処理を行わない。
【0114】
第1開放故障確定判断部256Aは、第1開放故障仮判断部254Aでの仮決定が複数回にわたって行われた場合に、初めて開放故障であると確定し、例えば故障状態フラグ220の値を2にする。これにより、フィードバック補正係数算出部210は、開放故障の確定によって、酸素センサ126の出力電圧Vxに基づいたフィードバック補正係数KO2の算出を行わず、フィードバック補正係数KO2を1.0に固定する。
【0115】
この第1開放故障判断部226Aにおける第1開放故障検出領域判別部252A、第1開放故障仮判断部254A及び第1開放故障確定判断部256A、並びに酸素センサ動作確認部228においても、図10〜図13に示す短絡故障検出領域判別部230、短絡故障仮判断部232及び短絡故障確定判断部234、並びに酸素センサ動作確認部228と同様の処理動作を行わせてもよい。この場合、短絡故障検出領域236として第1開放故障検出領域258Aを用い、検出領域フラグ238の代わりに第1検出領域フラグ260Aを用い、仮決定フラグ244の代わりに第1仮決定フラグ262Aを用い、インクリメントフラグ240の代わりに第1インクリメントフラグ264Aを用い、計時カウンタ242の代わりに第1計時カウンタ266Aを用い、仮決定カウンタ246の代わりに第1仮決定カウンタ268Aを用いるようにして、短絡故障判断部224及び後述する第2開放故障判断部226Bとの動作上の干渉(データの不測の書き換え等)を回避することが好ましい。
【0116】
なお、空燃比フィードバック領域204から外れた第1開放故障検出領域258Aは、スロットルグリップの回動角を0°程度とし、且つ、エンジン回転数を上げるという特別な操作を行わない限り到達しないため、この第1開放故障判断部226Aにおいては、第1開放故障仮判断部254Aにおいて最初の開放故障が仮決定された時点で、開放故障として確定させてもよい。
【0117】
また、上述した短絡故障判断部224の短絡故障仮判断部232では、図11のステップS105において、フィードバック補正係数KO2が上限リミットであるか否かを判別している。この第1開放故障判断部226Aにおける第1開放故障仮判断部254Aに対応させると、フィードバック補正係数KO2が下限リミットであるか否かの判別になるが、この判別処理は省略してもよい。
【0118】
次に、第1開放故障仮判断部254Aの別案として、第2開放故障判断部226Bは、図15に示すように、第2開放故障検出領域判別部252Bと、第2開放故障仮判断部254Bと、第2開放故障確定判断部256Bとを有する。
【0119】
第2開放故障検出領域判別部252Bは、スロットル開度THxとエンジン回転数NExが、空燃比フィードバック領域204内の第2開放故障検出領域258B(図5参照)にあるか否かを判別する。この第2開放故障検出領域258Bは、空燃比フィードバック制御によって燃料供給量を減少し、酸素センサ126の出力電圧Vxが低くなる条件の領域であり、例えば図16に示すように、空燃比フィードバック領域204内のエンジン回転数NEd、上限エンジン回転数NEbの増大方向(実線)、スロットル開度THe、下限スロットル開度THaの増大方向(実線)で囲まれた領域である。エンジン回転数NEdとして、上述した短絡故障検出領域236と同様に、クラッチが接続した際のエンジン回転数(クラッチINのエンジン回転数)よりも大きい回転数に設定され、スロットル開度THeとして、スロットル弁138の可動範囲の25%以下に設定される。具体的には、エンジン回転数NEdとして、例えば5000rpmが設定され、スロットル開度THeとして、例えば20.0°が設定される。
【0120】
第2開放故障仮判断部254Bは、スロットル開度THxとエンジン回転数NExが、第2開放故障検出領域258Bに入った際に動作し、燃料供給量を減少する制御が所定時間継続しているにもかかわらず、酸素センサ126の出力電圧Vxが、第1出力電圧域Z1から第2出力電圧域Z2に移行しない状態である場合に、酸素センサ126が開放故障であると仮決定する。一旦、仮決定が行われると、スロットル開度THxとエンジン回転数NExが、第2開放故障検出領域258Bから外れて、再度第2開放故障検出領域258Bに入るまで、開放故障の判断処理を行わない。
【0121】
第2開放故障確定判断部256Bは、第2開放故障仮判断部254Bでの仮決定が複数回にわたって行われた場合に、初めて開放故障であると確定し、例えば故障状態フラグ220の値を2にする。これにより、フィードバック補正係数算出部210は、開放故障の確定によって、酸素センサ126の出力電圧Vxに基づいたフィードバック補正係数KO2の算出を行わず、フィードバック補正係数KO2を1.0に固定する。
【0122】
この第2開放故障判断部226Bにおける第2開放故障検出領域判別部252B、第2開放故障仮判断部254B及び第2開放故障確定判断部256B、並びに酸素センサ動作確認部228においても、図10〜図13に示す短絡故障検出領域判別部230、短絡故障仮判断部232及び短絡故障確定判断部234、並びに酸素センサ動作確認部228と同様の処理動作を行わせてもよい。この場合、短絡故障検出領域236として第2開放故障検出領域258Bを用い、検出領域フラグ238の代わりに第2検出領域フラグ260Bを用い、仮決定フラグ244の代わりに第2仮決定フラグ262Bを用い、インクリメントフラグ240の代わりに第2インクリメントフラグ264Bを用い、計時カウンタ242の代わりに第2計時カウンタ266Bを用い、仮決定カウンタ246の代わりに第2仮決定カウンタ268Bを用いるようにして、短絡故障判断部224及び第1開放故障判断部226Aとの動作上の干渉(データの不測の書き換え等)を回避することが好ましい。また、短絡故障判定電圧Vbに代えて開放故障判定電圧Vcを使用する。この開放故障判定電圧Vcは、第1出力電圧域Z1から任意に選択できるが、本実施の形態では、仮判断であっても、酸素センサ126の開放故障を確実に検出するため、燃料供給量を減少しているにもかかわらず、リッチの度合いが高い状態が続いていることを検出できるように、第1出力電圧域Z1のうち、リッチの度合いが高いことを示す(Va−0.065V)〜(Va−0.055V)のうちの任意の電圧が選択可能である。
【0123】
なお、上述した短絡故障判断部224の短絡故障仮判断部232では、図11のステップS105において、フィードバック補正係数KO2が上限リミットであるか否かを判別している。この第2開放故障判断部226Bにおける第2開放故障仮判断部254Bに対応させると、フィードバック補正係数KO2が下限リミットであるか否かの判別になるが、スロットル開度が全閉状態での判別ではないため、フィードバック補正係数KO2が下限リミットにならないおそれがある。そこで、この判別処理を省略することが好ましい。
【0124】
なお、本発明に係る酸素センサの故障検出装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0125】
10…故障検出装置 12…自動二輪車
60…動力伝達装置 66…内燃機関
98…燃料噴射弁 126…酸素センサ
138…スロットル弁 140…スロットル開度センサ
142…エンジン回転数センサ 144…ECU
200…空燃比フィードバック制御部 202…故障判断部
204…空燃比フィードバック領域 206…基本噴射量算出部
208…リッチ・リーン判定部 210…フィードバック補正係数算出部
212…統合補正係数算出部 214…噴射量補正部
216…燃料噴射時間算出部 218…基本噴射量マップ
220…故障状態フラグ 224…短絡故障判断部
226…開放故障判断部 226A…第1開放故障判断部
226B…第2開放故障判断部 228…酸素センサ動作確認部
230…短絡故障検出領域判別部 232…短絡故障仮判断部
234…短絡故障確定判断部 236…短絡故障検出領域
238…検出領域フラグ 240…インクリメントフラグ
242…計時カウンタ 244…仮決定フラグ
246…仮決定カウンタ 248…今回の電圧域判定フラグ
250…前回の電圧域判定フラグ 258A…第1開放故障検出領域
258B…第2開放故障検出領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気中の酸素濃度に関連した出力電圧を出力する酸素センサ(126)と、
所定の空燃比フィードバック領域(204)にて、目標空燃比となるように前記酸素センサ(126)の出力電圧に基づき、燃料供給量を増減制御するフィードバック制御手段(200)を有する制御装置(144)とを備え、
前記制御装置(144)は、前記燃料供給量の増減制御中における前記酸素センサ(126)の出力電圧(Vx)に基づいて前記酸素センサ(126)の故障状態の有無を判断する故障判断手段(202)を含む酸素センサの故障検出装置において、
前記酸素センサ(126)は、当該酸素センサ(126)が前記燃料供給量の増減制御中に正常に動作している場合に、前記目標空燃比に対してリッチとなる状態で出力される第1出力電圧域(Z1)と、前記目標空燃比に対してリーンとなる状態で出力されると共に、前記第1出力電圧域(Z1)よりも低い第2出力電圧域(Z2)とを備え、
前記故障判断手段(202)は、前記燃料供給量の増減制御中において、前記燃料供給量の増加又は減少の制御が所定時間継続しているにもかかわらず、当該増加又は減少の制御により出力される前記出力電圧(Vx)が、前記第2出力電圧域(Z2)から前記第1出力電圧域(Z1)に移行しない状態である場合、又は前記第1出力電圧域(Z1)から前記第2出力電圧域(Z2)に移行しない状態である場合には、前記出力電圧(Vx)が前記第2出力電圧域(Z2)又は前記第1出力電圧域(Z1)に存在している場合であっても、前記酸素センサ(126)が故障状態であると判断することを特徴とする酸素センサの故障検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の酸素センサの故障検出装置において、
前記故障判断手段(202)による故障状態の有無の判断は、前記空燃比フィードバック領域(204)中であって、且つ、スロットル開度(THx)とエンジン回転数(NEx)が、それぞれ所定以上である故障検出領域(236)にあるときに行うことを特徴とする酸素センサの故障検出装置。
【請求項3】
請求項2記載の酸素センサの故障検出装置において、
前記故障検出領域(236)のエンジン回転数(NEd)は、クラッチが接続した際のエンジン回転数よりも大きい回転数であることを特徴とする酸素センサの故障検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の酸素センサの故障検出装置において、
前記制御装置(144)は、前記酸素センサ(126)の出力電圧(Vx)が前記第1出力電圧域(Z1)にある場合に前記燃料供給量を減量するための補正値(KO2)を算出し、前記酸素センサ(126)の出力電圧(Vx)が前記第2出力電圧域(Z2)にある場合に前記燃料供給量を増量するための補正値(KO2)を算出する補正値算出手段(210)を備え、
前記補正値(KO2)は、増量に対する上限値及び減量に対する下限値が設定され、
前記故障判断手段(202)は、前記補正値(KO2)が前記上限値にあるとき、前記酸素センサ(126)の出力電圧(Vx)を検出することを特徴とする酸素センサの故障検出装置。
【請求項5】
請求項4記載の酸素センサの故障検出装置において、
前記第2出力電圧域(Z2)の範囲から所定の故障判定電圧(Vb)が設定され、
前記故障判断手段(202)は、前記酸素センサ(126)の出力電圧(Vx)が前記故障判定電圧(Vb)以下になった場合に、前記酸素センサ(126)が故障状態であると判断することを特徴とする酸素センサの故障検出装置。
【請求項6】
請求項5記載の酸素センサの故障検出装置において、
前記故障判断手段(202)は、前記酸素センサ(126)の出力電圧(Vx)が前記故障判定電圧(Vb)以下になった回数が複数回となった場合に、前記酸素センサ(126)が故障状態であると判断することを特徴とする酸素センサの故障検出装置。
【請求項7】
請求項6記載の酸素センサの故障検出装置において、
前記故障判断手段(202)は、前記スロットル開度(THx)とエンジン回転数(NEx)が、前記故障検出領域(236)に入って、最初に前記酸素センサ(126)の出力電圧(Vx)が前記故障判定電圧(Vb)以下になったときにのみ、前記回数を更新することを特徴とする酸素センサの故障検出装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載の酸素センサの故障検出装置において、
前記故障判断手段(202)は、前記スロットル開度(THx)とエンジン回転数(NEx)が、前記空燃比フィードバック領域(204)中であるとき、前記酸素センサ(126)の出力電圧(Vx)の、前記第1出力電圧域(Z1)から前記第2出力電圧域(Z2)への反転、あるいは、前記第2出力電圧域(Z2)から前記第1出力電圧域(Z1)への反転を検出した際に、前記回数を0にリセットすることを特徴とする酸素センサの故障検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−246857(P2012−246857A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120069(P2011−120069)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】