説明

重合体組成物、フィルム及び容器

【課題】フィルムのシール層に用いることにより、該フィルムのガラスに対するシール強度が密封性と開封性とを両立させたものとなり、かつ、該フィルムを剥離したガラスの剥離面の外観が優れたものとなるポリオレフィン系重合体組成物を提供すること。
【解決手段】下記ビニル化合物重合体(A)とオレフィン重合体とを特定量含有し、ビニル化合物重合体(A)のメルトフローレートとオレフィン重合体のメルトフローレートとの比が1〜200である重合体組成物。
ビニル化合物重合体(A):下記ビニル化合物(X)単位と炭素原子数2〜20のα−オレフィン単位と不飽和カルボン酸類単位とをそれぞれ特定量含有し、メルトフローレートが0.1〜300g/10分である重合体。
ビニル化合物(X):一般式CH2=CH−R(Rは、2級アルキル基、3級アルキル基または脂環式炭化水素基。)で表されるビニル化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体組成物、フィルム及び容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装容器には、内容物を保護する観点から、すなわち、輸送中や取り扱い中に容器本体と蓋材とのシールが剥がれて内容物が漏れ出ないように、シール強度の高い密封性に優れる材料が求められている。一方、シール強度が高すぎると、蓋材を手で開封しにくいことや開封時に内容物が飛び出すことがあり、開封性が低下してしまう。このように、包装容器には、密封性と開封性という二律背反の性能が求められており、これまでに、種々の包装容器用の蓋材が検討、提案されている。
例えば、ポリオレフィン系重合体を用いた蓋材としては、エチレン−1−ブテン共重合体あるいはエチレン−1−ヘキセン共重合体を単独でシール層に用いたフィルム(例えば、特許文献1参照。)、無水マレイン酸変性ポリプロピレンを単独でシール層に用いたフィルム(特許文献2参照。)などが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−52897号公報
【特許文献2】実開平5−51768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のポリオレフィン系重合体をシール層に用いた蓋材は、ガラス製容器本体に対する密封性と開封性、ならびに、剥離後のガラス製容器本体の剥離面の外観において、十分満足のいくものではなかった。
かかる状況のもと、ポリオレフィン系重合体をシール層に用いた上記の性能を有する蓋材について鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、フィルムのシール層に用いることにより、該フィルムのガラスに対するシール強度が密封性と開封性とを両立させたものとなり、かつ、該フィルムを剥離したガラスの剥離面の外観が優れたものとなるポリオレフィン系重合体組成物、該重合体組成物からなるシール層を有するフィルム、及び、該フィルムからなる蓋材とガラス容器本体とをシールしてなる容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一は、下記ビニル化合物重合体(A)とオレフィン重合体を含有し、ビニル化合物重合体(A)とオレフィン重合体との総量を100重量%として、ビニル化合物重合体(A)の含有量が30〜90重量%であり、オレフィン重合体の含有量が70〜10重量%であり、ビニル化合物重合体(A)のメルトフローレート(MFRA)とオレフィン重合体のメルトフローレート(MFRPO)との比(MFRA/MFRPO)が1〜200である重合体組成物にかかるものである。
ビニル化合物重合体(A):下記ビニル化合物(X)に基づく単量体単位と炭素原子数2〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位と不飽和カルボン酸類に基づく単量体単位とを含有し、ビニル化合物(X)に基づく単量体単位と炭素原子数2〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位との総量を100mol%として、ビニル化合物(X)に基づく単量体単位の含有量が3〜50mol%であり、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が97〜50mol%であり、ビニル化合物重合体(A)を100重量%として、不飽和カルボン酸類に基づく単量体単位の含有量が0.01〜5重量%であり、メルトフローレート(MFRA)が0.1〜300g/10分である重合体。
ビニル化合物(X):一般式CH2=CH−R(式中、Rは、2級アルキル基、3級アルキル基または脂環式炭化水素基を表す。)で表されるビニル化合物。
【0006】
また、本発明の第二は、上記の重合体組成物からなるシール層を有するフィルムにかかるものである。
【0007】
更に、本発明の第三は、上記のフィルムからなる蓋材とガラス容器本体とをシールしてなる容器にかかるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、フィルムのシール層に用いることにより、該フィルムのガラスに対するシール強度が密封性と開封性とを両立させたものとなり、かつ、該フィルムを剥離したガラスの剥離面の外観が優れたものとなるポリオレフィン系重合体組成物、該重合体組成物からなるシール層を有するフィルム、及び、該フィルムからなる蓋材とガラス容器本体とをシールしてなる容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において「重合」という語は、単独重合のみならず、共重合を包含したものであり、また「重合体」という語は単独重合体のみならず共重合体を包含したものである。
【0010】
本発明の重合体組成物は、下記ビニル化合物重合体(A)とオレフィン重合体とを含有するものである。
ビニル化合物重合体(A):下記ビニル化合物(X)に基づく単量体単位と炭素原子数2〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位と不飽和カルボン酸類に基づく単量体単位とを含有し、ビニル化合物(X)に基づく単量体単位と炭素原子数2〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位との総量を100mol%として、ビニル化合物(X)に基づく単量体単位の含有量が3〜50mol%であり、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が97〜50mol%であり、ビニル化合物重合体(A)を100重量%として、不飽和カルボン酸類に基づく単量体単位の含有量が0.01〜5重量%であり、メルトフローレート(MFRA)が0.1〜300g/10分である重合体。
ビニル化合物(X):一般式CH2=CH−R(式中、Rは、2級アルキル基、3級アルキル基または脂環式炭化水素基を表す。)で表されるビニル化合物。
【0011】
ビニル化合物(X)は、一般式CH2=CH−Rで表される化合物であり、式中のRは、2級アルキル基、3級アルキル基または脂環式炭化水素基を表す。該2級アルキル基の炭素原子数は、好ましくは3〜20であり、3級アルキル基の炭素原子数は、好ましくは4〜20であり、脂環式炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは3〜20である。また、脂環式炭化水素基としては、好ましくはシクロアルカンからの一価基であるシクロアルキル基であり、より好ましくは3〜16員環を有するシクロアルキル基であり、更に好ましくは3〜10員環を有するシクロアルキル基である。Rとしては、3〜10員環を有する炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数4〜20の3級アルキル基が好ましい。
【0012】
ビニル化合物(X)の具体例として、置換基Rが2級アルキル基であるビニル化合物(X)としては、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、3−メチル−1−ヘプテン、3−メチル−1−オクテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ヘプテン、3,4−ジメチル−1−オクテン、3,5−ジメチル−1−ヘキセン、3,5−ジメチル−1−ヘプテン、3,5−ジメチル−1−オクテン、3,6−ジメチル−1−ヘプテン、3,6−ジメチル−1−オクテン、3,7−ジメチル−1−オクテン、3,4,4−トリメチル−1−ペンテン、3,4,4−トリメチル−1−ヘキセン、3,4,4−トリメチル−1−ヘプテン、3,4,4−トリメチル−1−オクテンなどがあげられる。置換基Rが3級アルキル基であるビニル化合物(X)としては、3,3−ジメチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ヘプテン、3,3−ジメチル−1−オクテン、3,3,4−トリメチル−1−ペンテン、3,3,4−トリメチル−1−ヘキセン、3,3,4−トリメチル−1−ヘプテン、3,3,4−トリメチル−1−オクテンなどがあげられる。置換基Rが脂環式炭化水素基であるビニル化合物(X)としては、ビニルシクロプロパン、ビニルシクロブタン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタンなどの置換基Rがシクロアルキル基であるビニル化合物;5−ビニル−2−ノルボルネン、1−ビニルアダマンタン、4−ビニル−1−シクロヘキセンなどがあげられる。
【0013】
ビニル化合物(X)としては、好ましくは、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、3,5−ジメチル−1−ヘキセン、3,4,4−トリメチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、3,3,4−トリメチル−1−ペンテン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタン、5−ビニル−2−ノルボルネンである。より好ましくは、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、3,3,4−トリメチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネンである。更に好ましくは、3,3−ジメチル−1−ブテン、ビニルシクロヘキサンである。最も好ましくは、ビニルシクロヘキサンである。
【0014】
炭素原子数2〜20のα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン等があげられ、これらは1種以上で使用される。α−オレフィンとして、好ましくは、エチレン、プロピレンであり、より好ましくはエチレンである。
【0015】
不飽和カルボン酸類の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ナジック酸、メチルナジック酸、ハイミック酸、アンゲリカ酸、テトラヒドロフタル酸、ソルビン酸、メサコン酸などの不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水ハイミック酸などの不飽和カルボン酸無水物;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−i−ブチル、メタクリル酸−i−ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジメチルエステルなどの不飽和カルボン酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸−N−モノエチルアミド、マレイン酸−N,N−ジエチルアミド、マレイン酸−N−モノブチルアミド、マレイン酸−N,N−ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸−N−モノエチルアミド、フマル酸−N,N−ジエチルアミド、フマル酸−N−モノブチルアミド、フマル酸−N,N−ジブチルアミドなどの不飽和カルボン酸アミド;マレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどの不飽和カルボン酸イミド;塩化マレオイルなどの不飽和カルボン酸ハライド;アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウムなどの不飽和カルボン酸金属塩などがあげられる。また、上記の不飽和カルボン酸類を組み合わせて使用してもよい。不飽和カルボン酸類としては、無水マレイン酸が好ましい。
【0016】
ビニル化合物重合体(A)は、必要に応じ、ビニル化合物(X)に基づく単量体単位(以下、ビニル化合物(X)単位と記す。)とα−オレフィンに基づく単量体単位(以下、α−オレフィン単位と記す。)と不飽和カルボン酸類に基づく単量体単位(以下、不飽和カルボン酸類単位と記す。)とに加え、他の単量体単位を含有していてもよい。他の単量体としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルナフタレン、メタクリル酸ヒドロキシエチル等を例示することができる。
【0017】
ビニル化合物重合体(A)において、ビニル化合物(X)単位とα−オレフィン単位との総量を100mol%として、ビニル化合物(X)単位の含有量は3〜50mol%であり、α−オレフィン単位の含有量は97〜50mol%である。密封性を高める観点から、好ましくは、ビニル化合物(X)単位の含有量は4〜40mol%であり、α−オレフィン単位の含有量は96〜60mol%であり、より好ましくは、ビニル化合物(X)単位の含有量は5〜30mol%であり、α−オレフィン単位の含有量は95〜70mol%であり、さらに好ましくは、ビニル化合物(X)単位の含有量は8〜25mol%であり、α−オレフィン単位の含有量は92〜75mol%であり、特に好ましくは、ビニル化合物(X)単位の含有量は10〜20mol%であり、α−オレフィン単位の含有量は90〜80mol%である。該ビニル化合物(X)単位の含有量およびα−オレフィン単位の含有量は、プロトン核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトルやカーボン核磁気共鳴(13C−NMR)スペクトルにより求められる。
【0018】
ビニル化合物重合体(A)において、ビニル化合物重合体(A)を100重量%として、不飽和カルボン酸類単位の含有量は0.01〜5重量%である。該含有量が少なすぎると、密封性が低下する(シール強度が弱くなり過ぎる)ことがあり、該含有量は、好ましくは、0.03重量%以上であり、より好ましくは、0.05重量%以上である。また、該含有量が多すぎると開封性が低下する(シール強度が強くなり過ぎる)ことがあり、該含有量は、好ましくは、4.8重量%以下であり、より好ましくは、4.5重量%以下である。
【0019】
ビニル化合物重合体(A)のメルトフローレート(MFRA)は、0.1〜300g/10分である。該メルトフローレート(MFRA)が小さすぎると、密封性が低下する(シール強度が弱くなり過ぎる)ことがあり、該メルトフローレート(MFRA)は、好ましくは2g/10分以上であり、より好ましくは5g/10分以上であり、更に好ましくは10g/10分以上であり、特に好ましくは50g/10分以上である。また、該メルトフローレート(MFRA)が大きすぎると、開封性が低下する(シール強度が強くなり過ぎる)ことがあり、好ましくは290g/10分以下であり、より好ましくは270g/10分以下であり、更に好ましくは250g/10分以下である。なお、該メルトフローレート(MFRA)は、JIS K7210−1995に規定された方法に従い、荷重21.2Nおよび温度190℃の条件で測定される。
【0020】
ビニル化合物重合体(A)の製造方法としては、遷移金属錯体と助触媒成分(アルミニウム化合物、ホウ素化合物等)とを接触処理してなる重合触媒により、ビニル化合物(X)とα−オレフィンとを共重合してビニル化合物(X)とα−オレフィンとの共重合体を製造し、次いで、該共重合体に不飽和カルボン酸類をラジカル発生剤によりグラフト重合させる方法をあげることができる。
【0021】
上記の遷移金属錯体としては、例えば、遷移金属がジルコニウムである遷移金属錯体として、エチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロマイド、エチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(インデニル)ジルコニウムジブロマイド、ビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジブロマイド、ビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジブロマイド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジブロマイド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、シクロペンタジエニルジメチルアミノジルコニウムジクロライド、シクロペンタジエニルフェノキシジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレン(tert−ブチルアミノ)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレン(n−ブチルアミノ)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド等があげられる。
【0022】
また、遷移金属がチタンである遷移金属錯体として、メチレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、メチレン(メチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、メチレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、メチレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、メチレン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、メチレン(フルオレニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(メチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(フルオレニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(メチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドジフェニルメチレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(フルオレニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(メチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(n−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(tert−ブチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジエチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(インデニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、ジメチルシリル(フルオレニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド等があげられる。
【0023】
助触媒成分としては、アルミニウム化合物として、下記(a1)、(a2)および(a3)をあげることができる。
(a1)一般式 E1aAlZ3-aで表される有機アルミニウム化合物
(a2)一般式 {−Al(E2)−O−}bで表される環状のアルミノキサン
(a3)一般式 E3{−Al(E3)−O−}cAlE32で表される線状のアルミノキサン
(式中、aは0<a≦3を満足する数を、bは2以上の整数を、cは1以上の整数を表す。E1、E2およびE3は炭化水素基を表し、該炭化水素基はハロゲン原子で置換されていてもよく、複数のE1、複数のE2および複数のE3はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。Zは水素原子またはハロゲン原子を表し、複数のZは同じであっても異なっていてもよい。)
【0024】
(a1)の有機アルミニウム化合物の一般式において、E1は炭化水素基を表し、好ましくは炭素原子数1〜8の炭化水素基であり、より好ましくはアルキル基である。
【0025】
(a1)の有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、ジヘキシルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムクロライド;メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、ヘキシルアルミニウムジクロライド等のアルキルアルミニウムジクロライド;ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジヘキシルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド等の有機アルミニウム化合物をあげることができる。
【0026】
(a2)および(a3)のアルミノキサンの一般式において、E2およびE3は炭化水素基を表し、好ましくは炭素原子数1〜8の炭化水素基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ノルマルペンチル基、ネオペンチル基等のアルキル基であり、更に好ましくは、メチル基、イソブチル基である。
【0027】
(a2)および(a3)のアルミノキサンの一般式において、bは2以上の整数であり、cは1以上の整数である。好ましくは、bは2〜40、cは1〜40である。
【0028】
また、助触媒成分としては、ホウ素化合物として、下記(c1)、(c2)および(c3)をあげることができる。
(c1)一般式 BQ123で表されるホウ素化合物
(c2)一般式 G+(BQ1234-で表されるホウ素化合物
(c3)一般式 (L−H)+(BQ1234-で表されるホウ素化合物
(式中、Bは3価の原子価状態のホウ素原子を表し、Q1、Q2、Q3およびQ4はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基または2置換アミノ基を表し、該炭化水素基はハロゲン原子で置換されていてもよい。G+は無機または有機のカチオンを表し、Lは中性ルイス塩基を表し、(L−H)+はブレンステッド酸を表す。)
【0029】
(c1)〜(c3)のホウ素化合物の一般式において、Q1、Q2、Q3およびQ4はそれぞれ独立にハロゲン原子、炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基または2置換アミノ基を表し、該炭化水素基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Q1、Q2、Q3およびQ4として、好ましくは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20の置換シリル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基または炭素原子数2〜20のアミノ基であり、該炭化水素基は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、より好ましくは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、該炭化水素基は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、更に好ましくは、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基であり、特に好ましくは、炭素原子数1〜20のフッ素化炭化水素基であり、最も好ましくは、炭素原子数6〜20のフッ素化アリール基である。
【0030】
(c2)のホウ素化合物の一般式において、G+は無機または有機のカチオンを表し、具体例としては、フェロセニウムカチオン、アルキル置換フェロセニウムカチオン、銀陽イオンなどの無機のカチオン;トリフェニルメチルカチオンなどの有機のカチオンがあげられる。好ましくはカルベニウムカチオンであり、より好ましくはトリフェニルメチルカチオンである。
【0031】
(c2)および(c3)のホウ素化合物の一般式において、(BQ1234-としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどがあげられる。
【0032】
(c3)のホウ素化合物の一般式において、Lは中性ルイス塩基であり、(L−H)+はブレンステッド酸であり、(L−H)+の具体例としては、トリアルキル置換アンモニウム、N,N−ジアルキルアニリニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアリールホスホニウムなどがあげられる。
【0033】
(c1)のホウ素化合物の具体例としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等があげられ、好ましくは、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0034】
(c2)のホウ素化合物の具体例としては、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどをあげることができ、好ましくは、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0035】
(c3)のホウ素化合物の具体例としては、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどをあげることができ、好ましくは、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0036】
助触媒成分としてアルミニウム化合物を用いる場合、アルミニウム化合物の接触処理量としては、ビニル化合物共重合体(X)を効率よく製造する観点から、アルミニウム化合物のアルミニウム原子換算として、遷移金属錯体の遷移金属原子1モルあたり、好ましくは1000〜15000モルであり、より好ましくは5000〜15000モルである。また、助触媒成分としてホウ素化合物を用いる場合、ホウ素化合物の接触処理量としては、ビニル化合物共重合体(X)を効率よく製造する観点から、遷移金属錯体の遷移金属原子1モルあたり、好ましくは0.01〜100モルであり、より好ましくは0.5〜10モルである。
【0037】
ビニル化合物(X)とα−オレフィンと任意に使用される他の単量体とを共重合する方法としては、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法等を用いることができる。液相中で重合を行う場合は、重合溶媒として、ブタン、ヘキサン、ヘプタンなどの飽和炭化水素系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒があげられ、重合温度は、通常10〜120℃である。α−オレフィンとしてエチレンを用いる場合は、エチレンの圧力は、通常0.1〜5.0MPaである。また、気相中で重合を行う場合は、重合温度は、通常50〜100℃であり、α−オレフィンとしてエチレンを用いる場合は、エチレンの圧力は、通常0.1〜5.0MPaである。
【0038】
また、重合法は、バッチ式であってもよく、連続式でもよい。重合体の分子量を調節するために水素などの連鎖移動剤を添加することもできる。
【0039】
ラジカル発生剤としては、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、メチルアセトアセテートペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレイト、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロペルオキシド、パラメンタンハイドロペルオキシド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジハイドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、α,α’−ビス(tert−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、コハク酸ペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、m−トルノイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネイト、ジ−2−エチルへキシルペルオキシジカーボネイト、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネイト、ビス(4−tert−ブチルシクロへキシル)ペルオキシジカーボネイト、ジミリスチルペルオキシジカーボネイト、ジ−2−エトキシエチルペルオキシジカーボネイト、ジメトキシイソプロピルペルオキシカーボネイト、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)ペルオキシジカーボネイト、ジアリルペルオキシジカーボネイト、tert−ブチルペルオキシアセテイト、tert−ブチルペルオキシイソブチレイト、tert−ブチルペルオキシピバレイト、tert−ブチルペルオキシネオデカノエイト、クミルペルオキシネオデカノエイト、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエイト、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエイト、tert−ブチルペルオキシラウレイト、tert−ブチルペルオキシベンゾエイト、ジ−tert−ブチルペルオキシイソフタレイト、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)−3−ヘキシン、tert−ブチルペルオキシマレイン酸、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネイト、クミルペルオキシオクトエイト、tert−へキシルペルオキシネオデカネイト、tert−へキシルペルオキシピバレイト、tert−ブチルペルオキシネオヘキサノエイト、tert−へキシルペルオキシネオヘキサノエイト、クミルペルオキシネオヘキサノエイト、アセチルシクロへキシルスルフォニルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシアリルカーボネイトなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル、ジメチルアゾイソブチレートなどのアゾ化合物などをあげることができる。
【0040】
ラジカル発生剤の使用量としては、ビニル化合物共重合体(X)1kgあたり、通常、0.001〜0.5モルであり、好ましくは0.005〜0.1モルである。
【0041】
ビニル化合物(X)とα−オレフィンとの共重合体に不飽和カルボン酸類をグラフト重合させる方法としては、該共重合体と不飽和カルボン酸類とラジカル発生剤とを溶融混練してグラフト重合せしめる方法、該共重合体をトルエン、キシレンなどの溶媒に溶解したのち、不飽和カルボン酸類とラジカル発生剤とを添加してグラフト重合せしめる方法などがあげられる。上記の製造方法は、通常、約40〜350℃程度の温度で行われる。
【0042】
オレフィン重合体としては、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、1−ブテン単独重合体、4−メチル−1−ペンテン単独重合体等のオレフィン単独重合体;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−ヘプテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・1−ノネン共重合体、エチレン・1−デセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ヘキセン共重合体等のエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィン共重合体;プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体等のプロピレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体;エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・1−オクテン共重合体等のエチレンとプロピレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体をあげることができる。また、2種以上の重合体を併用してもよい。
【0043】
オレフィン重合体としては、好ましくは、エチレンに基づく単量体を50重量%以上有する重合体(ポリエチレン系樹脂)、プロピレンに基づく単量体を50重量%以上有する重合体(ポリプロピレン系樹脂)であり、より好ましくは、エチレンに基づく単量体を50重量%以上有する重合体である。
【0044】
本発明の重合体組成物においては、ビニル化合物重合体(A)とオレフィン重合体との総量を100重量%として、ビニル化合物重合体(A)の含有量が30〜90重量%であり、オレフィン重合体の含有量が70〜10重量%である。該ビニル化合物重合体(A)の含有量が多すぎる(該オレフィン重合体の含有量が少なすぎる)と、開封性が低下する(シール強度が強くなりすぎる)ことがあり、好ましくは、ビニル化合物重合体(A)の含有量が80重量%以下であり、オレフィン重合体の含有量が20重量%以上であり、より好ましくは、ビニル化合物重合体(A)の含有量が70重量%以下であり、オレフィン重合体の含有量が30重量%以上である。また、該ビニル化合物重合体(A)の含有量が少なすぎる(該オレフィン重合体の含有量が多すぎる)と、密封性が低下する(シール強度が弱くなり過ぎる)ことがあり、好ましくは、ビニル化合物重合体(A)の含有量が40重量%以上であり、オレフィン重合体の含有量が60重量%以下であり、より好ましくは、ビニル化合物重合体(A)の含有量が50重量%以上であり、オレフィン重合体の含有量が50重量%以下である。
【0045】
本発明の重合体組成物においては、ビニル化合物重合体(A)のメルトフローレート(MFRA)とオレフィン重合体のメルトフローレート(MFRPO)との比(MFRA/MFRPO)が1〜200である。該比が小さすぎると密封性が低下する(シール強度が弱くなり過ぎる)ことがあり、該比は、好ましくは、2以上である。また、該比が大きすぎると剥離面の外観が低下することがあり、好ましくは100以下である。
【0046】
本発明の重合体組成物は、フィルムのシール層材料として好適に使用される。本発明の重合体組成物をシール層としたフィルムとしては、単層フィルムでもよく、シール層に加え、合成樹脂層、紙層、インキ層、蒸着層、アルミ箔層などを少なくとも1層有する積層フィルムでもよい。該合成樹脂層としては、例えば、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン系樹脂;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体等のポリスチレン系樹脂;ポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリアミド樹脂;メタクリル樹脂;ポリ塩化ビニリデン;エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物;ポリビニルアルコール樹脂などを樹脂成分とする層をあげることができる。
【0047】
本発明の樹脂組成物、上記合成樹脂層には、本発明の効果が損なわれない範囲において、相溶化剤、帯電防止剤、安定剤、顔料、染料、抗菌剤、防曇剤、滑剤、抗ブロッキング剤、可塑剤(ミネラルオイルなど)、ワックス、粘着付与剤、無機・有機充填剤などが含有されていてもよい。上記安定剤としては、フェノール系安定剤、フォスファイト系安定剤、アミン系安定剤、アミド系安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、沈降防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。上記顔料としては、酸化チタン(ルチル型)、酸化亜鉛などの遷移金属化合物、カーボンブラックなどが挙げられる。上記ワックスとしては、エチレン樹脂ワックス、プロピレン樹脂ワックス、フィッシャー・トロプスワックスなどの合成ワックス、パラフィンワックス、マイクロワックスなどの石油ワックス、木ロウ、カルナパワックス、ミツロウなどの天然ワックスなどが挙げられる。上記粘着付与剤としては、テンペル系樹脂、ロジン類などが挙げられる。上記無機・有機充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ウオラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、ガラスフレーク、硫酸バリウム、クレー、カリオン、微粉末シリカ、マイカ、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、セライト、シリコン樹脂粒子、フェノール樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリメチルメタクリレート粒子などがあげられる。
【0048】
本発明の重合体組成物からなるシール層の厚み(単層フィルムである場合は、フィルム厚み)は、通常5〜150μmであり、好ましくは10〜100μmである。積層フィルムとする場合、シール層の厚みは、フィルム厚みを100%として、好ましくは3〜70%であり、より好ましくは5〜50%である。
【0049】
本発明の重合体組成物をシール層としたフィルムの製造方法としては、公知の方法をあげることができる。単層フィルムの製造方法として、インフレーション成形法や、Tダイキャスト成形法等をあげることができる。積層フィルムの製造方法として、共押出インフレーション成形法、共押出Tダイキャスト成形法、共押出ラミネート成形法等によって製造することができる。また、共押出ラミネート成形法;予め成形されたフィルムをドライラミネート法により貼合する方法;予め成形されたフィルムを積層したのち熱プレスする方法などがあげられる。
【0050】
本発明の重合体組成物をシール層としたフィルムのガラスへのシール強度は、密封性と開封性とを両立したものとなる。なお、ガラスへのシールをヒートシールで行う場合、通常、ヒートシール温度は、120〜220℃であり、ヒートシール時間は、1〜10秒であり、ヒートシール圧力は、1〜5kg/cm2である。
【0051】
上述の通り、本発明の重合体組成物をシール層としたフィルムは、ガラスに対して密封性と開封性とを両立したシール強度を有し、フィルムを剥離したガラスの剥離面は、外観に優れる。そのため、本フィルムは、ガラス容器本体の蓋材として好適に用いられる。本発明の重合体組成物をシール層としたフィルムからなる蓋材とガラス容器本体とをシールしてなる容器は、調味料、香辛料などの包装に好適に用いられる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。
実施例における共重合体の性質は、下記の方法によって測定した。
【0053】
(1)極限粘度([η]、単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用い、テトラリンを溶媒として135℃で測定した。
【0054】
(2)メルトフローレート(単位:g/10分)
JIS K7210−1995に規定された方法に従い、荷重21.2Nおよび温度190℃の条件で測定した。
【0055】
(3)重合体中のビニルシクロヘキサン単位含有量
エチレン−ビニルシクロヘキサン共重合体中のビニルシクロヘキサンに基づく単量体単位(ビニルシクロヘキサン単位)含有量は、カーボン核磁気共鳴法によって、次の測定条件により、カーボン核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定し、下記式より算出した。
<測定条件>
装置:Bruker社製 ARX400
測定溶媒:オルトジクロロベンゼンとオルトジクロロベンゼン−d4の4:1(容積比
)混合液
測定温度:408K
測定方法:Powergate Decouping法
パルス角度:45度
測定基準:トリメチルシラン
<算出式>
ビニルシクロヘキサン単位含有量(mol%)=100×A/(B−2A)
A:45ppm〜40ppmのシグナルの積分積算値
B:35ppm〜25ppmのシグナルの積分積算値
【0056】
(4)重合体中の無水マレイン酸単位含有量
重合体1gをキシレン20mlに溶解し、メタノール300mlで再沈殿した。得られた再沈殿物を80℃、8時間真空乾燥した後、熱プレスにより厚さ100μmのフィルムに作成した。赤外線吸収スペクトル分析法により該フィルムの1780cm-1付近の吸収を測定し、重合体中の無水マレイン酸に基づく単量体単位(無水マレイン酸単位)含有量を求めた。
【0057】
(5)結晶化温度(単位:℃)、ガラス転移点(単位:℃)、融点(単位:℃)
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製 SSC−5200)を用いて次の条件で示差走査熱量測定曲線を測定し、結晶化温度は降温時の示差走査熱量測定曲線から、ガラス転移点および融点は2回目の昇温時の示差走査熱量測定曲線から求めた。
<測定条件>
昇温(1回目):20℃から200℃まで10℃/分で昇温後、200℃で10分間保持した。
降温:1回目の昇温の操作後、直ちに200℃から−100℃まで10℃/分で降温後、−100℃で10分間保持した。
昇温(2回目):降温の操作後、直ちに−100℃から200℃まで10℃/分で昇温した。
【0058】
(6)シール強度
ポリエステルフィルム[ユニチカ(株)製 商品名「PTMX」、厚さ12μm]の片面に、脂肪族エステル系コート剤[主剤(三井武田ケミカル(株)製 商品名「タケラックXA−525」)、硬化剤(三井武田ケミカル(株)製 商品名「タケネートXA−52」)、酢酸エチルをそれぞれ10対1対15の重量比で混合したもの]を、コーター[康井精機(株)製]により塗布し、次に、片面をコロナ処理したポリエチレン系樹脂のフィルム[住友化学製 商品名「スミカセン L405」、厚み30μm]を、そのコロナ処理面が脂肪族エステル系コート剤塗布面となるように、該ポリエステルフィルムに圧着し、40℃のオーブンにて24時間加熱し、ポリエステル樹脂層/ポリエチレン系樹脂層からなる2層フィルムを得た。
次に、該2層フィルムのポリエチレン系樹脂層側に、実施例または比較例で得られたフィルムを積層し、圧縮成形機((株)神藤金属工業所製)にて、圧力100kg/cm2、温度220℃、時間1分圧着することにより、3層フィルムを調製した。
該3層フィルムを、その実施例または比較例の重合体層側がソーダガラス(平岡特殊硝子製作(株)製、厚み=2mm、100mm角)に、圧力3kg/cm2、時間1秒、温度180℃ないし200℃の条件にて巾20mmの帯状にヒートシールした。なお、ヒートシールでは、該3層フィルム実施例または比較例で得られた樹脂層側の面が、ソーダガラス側の面となるようにした。
帯状ヒートシールの巾方向と垂直方向に、15mm巾の試験片を切り出し、該試験片を用いて、引張試験機により、温度23℃、引張速度300mm/分の条件で、ソーダガラスと3層フィルムとのシール強度を測定した。
【0059】
(7)剥離面状態
上記(6)シール強度の測定後のソーダガラスの剥離面を目視観察し、次の基準により評価した。数字が大きいほど剥離面の外観が優れる(綺麗である)ことを示す。
3:剥離面に樹脂の付着がない。
2:剥離面に樹脂の付着が僅かに認められる。
1:剥離面に樹脂の付着が多く認められる。
【0060】
実施例1
[重合体の調製]
乾燥窒素で置換したSUS製リアクター中にビニルシクロへキサン38.6kgとトルエン364kgを投入し、密閉状態にて50℃に昇温した。次に、水素を0.015MPa導入した。水素の導入が終了した後、エチレンを0.6MPa導入した。次に、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液[東ソー・アクゾ(株)製、トリイソブチルアルミニウム濃度 20wt%]1.0kgを仕込み、つづいてジエチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド 0.1gを脱水トルエン 8.7kgに溶解したものと、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート 3gを脱水トルエン 12.2kgに溶解したものを投入し、重合を開始した。重合中は、重合液を撹拌し、エチレンの圧力が0.6MPaに保持されるように、リアクター中にエチレンを供給した。重合開始してから2時間後に、重合液中にエタノールを0.9kg添加した。次に、重合液に重合液と等量の2wt%塩酸水溶液を添加し、水層と有機層の分離を行った。有機層を回収し、アセトン中に投じ、白濁した白色固体をロ取した。該固体をアセトンで洗浄し、減圧乾燥した結果、エチレン・ビニルシクロへキサン共重合体(以下、重合体(s)と記す。)を得た。該重合体(s)のエチレン単位の含有量は88mol%、ビニルシクロヘキサン単位の含有量は12mol%であった。また、融解ピークは1本のみ確認され、融点は62℃であり、[η]は0.5dl/gであった。
【0061】
重合体(s)100重量部と、無水マレイン酸0.4重量部と、1,3−ビス(t−ブチルパーオキサイソプロピル)ベンゼン0.04重量部とを予備混合し、次に、押出機(設定温度250℃)にて溶融混練を行った。得られたエチレン・ビニルシクロへキサン・無水マレイン酸共重合体重合体(以下、重合体(a)と記す。)の無水マレイン酸単位の含有量は0.2wt%であった。また、融解ピークは1本のみ確認され、融点は60℃であり、[η]は0.5dl/g、メルトフローレートは160g/10分であった。
【0062】
[組成物およびフィルムの調製]
重合体(a)40gとポリエチレン系樹脂(住友化学(株)製 商品名「スミカセンE FV203」、メルトフローレート=2g/10分)20gとを、溶融混練機(東洋精機(株)製ラボプラストミル)を用いて、150℃、5分間混練して重合体組成物を得た。得られた重合体組成物を圧縮成形機((株)神藤金属工業所製)にて圧力100kg/cm2、温度220℃にてプレス成形し、厚み70μmのフィルムを得た。該フィルムを用いたシール強度および剥離面状態の評価結果を表1に示す。
【0063】
比較例1
実施例1で得られた重合体(s)を圧縮成形機((株)神藤金属工業所製)にて圧力100kg/cm2、温度160℃にてプレス成形し、厚み70μmのフィルムを得た。該フィルムを用いたシール強度および剥離面状態の評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ビニル化合物重合体(A)とオレフィン重合体を含有し、ビニル化合物重合体(A)とオレフィン重合体との総量を100重量%として、ビニル化合物重合体(A)の含有量が30〜90重量%であり、オレフィン重合体の含有量が70〜10重量%であり、ビニル化合物重合体(A)のメルトフローレート(MFRA)とオレフィン重合体のメルトフローレート(MFRPO)との比(MFRA/MFRPO)が1〜200である重合体組成物。
ビニル化合物重合体(A):下記ビニル化合物(X)に基づく単量体単位と炭素原子数2〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位と不飽和カルボン酸類に基づく単量体単位とを含有し、ビニル化合物(X)に基づく単量体単位と炭素原子数2〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位との総量を100mol%として、ビニル化合物(X)に基づく単量体単位の含有量が3〜50mol%であり、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量が97〜50mol%であり、ビニル化合物重合体(A)を100重量%として、不飽和カルボン酸類に基づく単量体単位の含有量が0.01〜5重量%であり、メルトフローレート(MFRA)が0.1〜300g/10分である重合体。
ビニル化合物(X):一般式CH2=CH−R(式中、Rは、2級アルキル基、3級アルキル基または脂環式炭化水素基を表す。)で表されるビニル化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の重合体組成物からなるシール層を有するフィルム。
【請求項3】
請求項2に記載のフィルムからなる蓋材とガラス容器本体とをシールしてなる容器。

【公開番号】特開2009−108181(P2009−108181A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281362(P2007−281362)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】