説明

重合性フラーレン

【課題】 本発明は、任意の形状に賦形可能で、工業的に生産が容易な光、熱重合性のフラーレンを提供する。
【解決手段】 下記の一般式(1)で示されることを特徴とする重合性フラーレン。Cn[(SiRO)(SiRO)SiR−X−OC(O)−CR=CH]k (1)(ここで、R〜Rはそれぞれ独立に水素または炭素数1から12のアルキル基、アリールアルキル基、アリール基を表し、Xは炭素数3から12のアルキレン基を、Rは水素または炭素数1から12のアルキル基を表し、Cは炭素数nのフラーレンを表す。また、nは60以上の正数を、m、jは重合度を表わし1から100の正数を、kは1から11の正数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フラーレンは非線型光学効果を示す化合物であり、種々の電子デバイスへの応用が考えられている。重合性フラーレンは薄膜形成能、賦形可能なポリマー原料として、特に次世代大容量光通信システムに不可欠の光スイッチ材料としての利用が期待される。
【背景技術】
【0002】
フラーレン誘導体及びフラーレン含有重合体としては、感光性を有するフラーレンオルガノシラン共重合体(例えば、特許文献1参照。)、アニオン化した部位を持つフラーレン誘導体、水酸基含有フラーレン或いはエポキシ基含有フラーレン重合体の製造方法(例えば、特許文献2参照。)、ジカルボキシル化フラーレンのビスシクロプロポネイトアダクトモノマーを芳香族ジアミンと溶液中で110℃の温度下3時間、重縮合させてフラーレン含有ポリアミドを得る方法(例えば、特許文献3参照。)、(メタ)アクリロイル基を有するフラーレン誘導体、及び重合物、ならびに硬化物の製造方法(例えば、特許文献4参照。)が開示されている。また、水酸基含有フラーレン、ポリアルキレンオキシドグリコール、及びジイソシアネート化合物を重合してフラーレン含有ポリウレタンを製造する方法(例えば、特許文献5参照。)が開示されている。さらに、フラーレンオルガノシロキサン共重合体が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。フラーレンにアルコキシ基、水酸基、酸無水物基を導入し、ポリアミック酸を合成した後、フラーレン含有ポリイミドを得る方法(例えば、特許文献7参照。)、また、オルガノアニリノフラーレン−ジメチルシロキサントリブロック共重合体の合成方法(例えば、非特許文献1参照。)、バックミンスターフラーレンC60含有シロキサンハイブロッドの製法(例えば、非特許文献2参照。)、ゾルゲル法によるC60−シリカハイブリッド材の製造方法(例えば、非特許文献3参照。)の製造方法等が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−62105号公報
【特許文献2】特開2003−238692号公報
【特許文献3】特開平10−45905号公報
【特許文献4】特開平8−283199号公報
【特許文献5】特開平8−183830号公報
【特許文献6】特開平9−157398号公報
【特許文献7】特開平9−301943号公報
【非特許文献1】ジャーナルオブマクロモレキュラーサイエンス誌、A40巻、No.12、1263頁、2003年
【非特許文献2】ACSシンポジウムシリーズ、572巻、「無機及び有機金属ポリマーII」、9章、92頁、1994年
【非特許文献3】ジャーナルオブゾル−ゲルサイエンスアンドテクノロジー誌、22巻、219頁、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フラーレンを光スイッチ材料等の機能材料として利用するには、フラーレン分子単独で任意の形の成形体を得ることが難しいため、無機或いは有機ポリマーと複合させて所望の形状のフラーレン含有高分子を得る必要がある。この例として非特許文献1、2、3には、ゾルゲル法によるフラーレン−シロキサンハイブリッド材料が提案されているが、短時間で成形体を得るのが難しく経済性に問題があった。本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、熱重合或いは光重合により、従来に対して短時間でフラーレン含有重合体を得ることができる重合性フラーレンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、かかる問題点を解決するため鋭意検討した結果、フラーレンに熱或いは光照射により重合する特定の反応性基を導入した重合性フラーレンが、短時間でフラーレン含有重合体を得ることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、下記の一般式(1)で示されることを特徴とする重合性フラーレンに関するものである。
[(SiRO)(SiRO)SiR−X−OC(O)−CR=CH]k
(1)
(ここで、R〜Rはそれぞれ独立に水素または炭素数1から12のアルキル基、アリールアルキル基、アリール基を表し、Xは炭素数3から12のアルキレン基を、Rは水素または炭素数1から12のアルキル基を表し、Cは炭素数nのフラーレンを表す。また、nは60以上の正数を、m、jは重合度を表わし1から100の正数を、kは1から11の正数を表す。)
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明の重合性フラーレンは、上記一般式(1)で示される構造を有するものであり、ここで、R〜Rはそれぞれ独立に水素または炭素数1から12のアルキル基、アリールアルキル基、アリール基を表し、Xは炭素数3から12のアルキレン基を、Rは水素または炭素数1から12のアルキル基を表し、Cは炭素数nのフラーレンを表す。また、nは60以上の正数を、m、jは重合度を表わし1から100の正数を、kは1から11の正数を表す。
【0008】
本発明の重合性フラーレンを構成するR〜Rはそれぞれ独立に水素または炭素数1から12のアルキル基、アリールアルキル基、アリール基を表し、炭素数1から12のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等;炭素数1から12のアリールアルキル基としては、例えばベンジル基;炭素数1から12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、これらの中でも水素、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0009】
本発明の重合性フラーレンを構成するXは、炭素数3から12のアルキレン基を表し、炭素数3から12のアルキレン基としては、例えばプロピレン基、ブチレン基等が挙げられ、その中でもプロピレン基が好ましい。
【0010】
本発明の重合性フラーレンを構成するRは、水素または炭素数1から12のアルキル基を表し、炭素数1から12のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、これら中でも水素、メチル基が好ましい。
【0011】
本発明の重合性フラーレンに用いるCで示されるフラーレンとしては、炭素数60以上のフラーレンであり、例えばC60フラーレン、C70フラーレン、C74フラーレン、C76フラーレン、C78フラーレン、C82フラーレン等が例示される。
【0012】
また、本発明の重合性フラーレンを構成する一般式(1)におけるm、jは、重合度を表し1から100の正数である。また、一般式(1)におけるkは、フラーレンに結合した反応性基の数を表し、1から11の正数である。
【0013】
これらフラーレンの製造方法は、例えば「ジャーナルオブマクロモレキュラーサイエンス誌、A40巻、No.12、1263頁、2003年」に記載の方法により合成することができる。
【0014】
本発明の重合性フラーレンの製造方法は、一般式(1)で示される重合性フラーレンが得られる限り如何なる方法をも用いることが可能であり、その中でも容易に一般式(1)で示される重合性フラーレンが製造可能であることから、フラーレンにシラン化合物を反応させフラーレンにシランを導入したシラン含有フラーレンを得た後、重合性化合物を反応させる方法が好ましく用いられる。
【0015】
その際のフラーレンにシランを導入する方法としては、例えば「ACSシンポジウムシリーズ、572巻、「無機及び有機金属ポリマーII」、9章、92頁、1994年」に記載の方法の通り、フラーレン(C)と下記の一般式(2)で示されるシラン化合物を反応させることにより、フラーレンにシランを導入したシラン含有フラーレンを得ることができる。
H−(SiRO)−(SiR1011O)−SiR1213H (2)
(ここで、R〜R13はそれぞれ独立に水素または炭素数1から12のアルキル基、アリールアルキル基、アリール基を、p、rは重合度を表わし1から100の正数を表す。)
該シラン含有フラーレンを得るのに用いる一般式(2)で表されるシラン化合物におけるR〜R13はそれぞれ独立に水素または炭素数1から12のアルキル基、アリールアルキル基、アリール基を表し、炭素数1から12のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等;炭素数1から12のアリールアルキル基としては、例えばベンジル基;炭素数1から12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、これらの中でも下記の構造で示されるシラン化合物が好ましい。
【0016】
【化1】

(ここで、R16〜R27はそれぞれ独立に水素、メチル基、フェニル基を、qは重合度を表わし1から100の正数を表す。)
これらの中でも一般式(2)で示されるシラン化合物としては、特に1,1,5,5−テトラメチル−3,3,−ジフェニルトリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3,−ジフェニルトリシロキサン、1,1,3,5,5−ペンタメチル−3−フェニルトリシロキサン等のトリシロキサン類が好ましい。シラン化合物としてビニル基を分子鎖中に有するものも用いることができる。
【0017】
本発明の重合性フラーレンの製造の際のフラーレン(C)と一般式(2)で示されるシラン化合物の反応に用いられる溶剤は、フラーレンが溶解し、シラン化合物と反応しない溶剤であれば何ら制限なく用いることができ、例えばジエチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロフォルム等が例示される。なお、反応を促進できることから触媒を用いることが好ましく、該触媒としては、ジコバルトオクトカルボニルが好適に用いられる。
【0018】
また、反応温度は、溶剤の沸点以下及び凝固点以上であれば何ら制限を受けることなく実施することができ、好ましくは0℃から100℃、特に好ましくは室温から80℃であり、更に好ましくは40℃から80℃である。
【0019】
フラーレンとシラン化合物の反応仕込み比はモル比でフラーレン1モルに対してシラン化合物が0.5から30倍モルが好適であり、更に好ましくは1から20倍モルである。
【0020】
本発明の重合性フラーレンの製造方法は、シラン含有フラーレンを製造した後、重合性化合物を反応させることにより得られるものであり、該重合性化合物としては、シラン含有フラーレンと反応し一般式(1)で示される重合性フラーレンが得られる限り如何なる重合性化合物をも用いることが可能であり、その中でも特に一般式(3)で表される重合性化合物が好ましい。
CH=CH−R14−OC(O)−CR15=CH (3)
(ここで、R14は炭素数1から10のアルキレン基を、R15は水素または炭素数1から12のアルキル基を表す。)
本発明の重合性フラーレンの製造に用いられる一般式(3)で示される重合性化合物におけるR14は炭素数1から10アルキレン基であり、炭素数1から10アルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基等が挙げられ、その中でもメチレン基が好ましい。
【0021】
また一般式(4)におけるR15は水素または炭素数1から12のアルキル基であり、炭素数1から12のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、これら中でも水素、メチル基が好ましい。
【0022】
そして、具体的な一般式(3)で示される重合性化合物としては、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート等が挙げられる。
【0023】
シラン含有フラーレンと重合性化合物の反応に用いられる溶剤は、シラン含有フラーレンと重合性化合物が溶解し、これら化合物と反応しない溶剤であれば何ら制限なく用いることができ、例えばジエチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、THF、クロロフォルム等が例示される。また、反応温度としては、溶剤の沸点以下及び凝固点以上であれば何ら制限を受けることなく実施することができ、好ましくは0℃から100℃、特に好ましくは室温から80℃であり、更に好ましくは40℃から80℃である。
【0024】
シラン含有フラーレンと重合性化合物の反応仕込み比はモル比でフラーレンに付加したシラン化合物のシラン1モルに対して重合性化合物が0.8から2倍モルが好ましく、特に好ましくは1.0から1.2倍モルである。
【0025】
本発明の重合性フラーレンは、有する反応基を加熱或いは光照射にて、重合せしめ任意のフラーレン含有重合体、例えば硬化膜等の膜、フィルム、シート等に賦形可能である。加熱により重合させる場合は、例えばトルエン、ベンゼン等の有機溶剤に溶解させた溶液を、塗布、コーティング、基材フィルム上に流延した後、溶剤を常温あるいは使用する溶剤の沸点以下の温度で揮発させて成膜し、該成膜フィルムを50〜300℃の温度範囲で例えばアゾ系開始剤等の開始剤存在下加熱重合し硬化膜を形成できる。一方、光照射により重合させる場合は、例えば紫外線(UV)照射によりアゾ系開始剤等の開始剤存在下光重合して硬化膜を形成することができ、この場合のUV照射時間は30分から8時間が好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、任意の形状に賦形可能で、工業的に生産が容易な光、熱重合性のフラーレンを提供することができる。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、本発明の実施例における反応は、特に断らない限り窒素下で行った。また、C60フラーレンはメルク社から販売されている高純度品(99%以上)を用い、他の試薬等は特に断りのない限り市販品を用いた。
【0028】
実施例1
攪拌機、窒素導入管を取り付けた500ミリリットルの4つ口フラスコに脱水したトルエン200ml、C60フラーレン0.5g(0.694ミリモル)、及び1,1,5,5−テトラメチル−3,3,−ジフェニルトリシロキサンを0.785g(2.776ミリモル)仕込んだ。更に触媒としてジコバルトオクトカルボニル0.001gを仕込み、80℃で反応を3時間継続した。この反応溶液にアリルメタクリレート0.263g(2.082ミリモル)及び塩化白金酸0.5ミリグラムを仕込み、更に80℃で3時間反応をおこなった。反応液を冷却後、得られた反応液をエバポレータで濃縮し、ヘキサン洗浄を数回おこなった後、減圧下で乾燥し1.2g(収率89%)の重合性フラーレンを得た。元素分析値からC60含有量は37%であり、C601分子に対し平均して3モルのシランが付加していることが分かった。
60[(SiCHCHO)(SiCHCHO)SiCHCH−CHCHCH−OC(O)−C(CH)=CH
得られた重合性フラーレン0.4gにトルエン0.6g、重合開始剤としてベンゾフェノンを0.001g入れ均一溶液を得た後、窒素置換を3回行い溶存酸素を除き、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に流延した。室温で窒素気流下、一昼夜放置し、更に40℃から100℃まで昇温し乾燥した。その後室温で30分UV照射を行い均一な硬化膜を得た。得られた膜を剥離したところ透明黄茶色のフレキシブルなフィルムであった。
【0029】
実施例2
攪拌機、窒素導入管を取り付けた500ミリリットルの4つ口フラスコに脱水したトルエン200ml、C60フラーレン0.5g(0.694ミリモル)、及び1,1,5,5−テトラメチル−3,3,−ジフェニルトリシロキサンを0.588g(2.082ミリモル)仕込んだ。更に触媒としてジコバルトオクトカルボニル0.001gを仕込み、80℃で反応を3時間継続した。この反応溶液にアリルメタクリレート0.263g(2.082ミリモル)及び塩化白金酸0.5ミリグラムを仕込み、更に3時間反応をおこなった。反応液を冷却後、得られた反応液をエバポレータで濃縮し、ヘキサン洗浄を数回おこなった後、減圧下で乾燥し1.15g(収率85%)の重合性フラーレンを得た。元素分析値からC60含有量は37%であり、C601分子に対し平均して3モルのシランが付加していることが分かった。
60[(SiCHCHO)(SiCHCHO)SiCHCH−CHCHCH−OC(O)−C(CH)=CH
得られた重合性フラーレン0.4gにトルエン0.6g、重合開始剤としてベンゾフェノンを0.001g入れ均一溶液を得た後、窒素置換を3回行い溶存酸素を除き、PETフィルム上に流延した。室温で窒素気流下、一昼夜放置し、更に40℃から100℃まで昇温し乾燥した。その後30分UV照射を行い均一な硬化膜を得た。得られた膜を剥離したところ透明黄茶色のフレキシブルなフィルムであった。
【0030】
実施例3
攪拌機、窒素導入管を取り付けた500ミリリットルの4つ口フラスコに脱水したトルエン200ml、C60フラーレン0.5g(0.694ミリモル)、及び1,1,5,5−テトラメチル−3,3,−ジフェニルトリシロキサンを0.196g(0.694ミリモル)仕込んだ。更に触媒としてジコバルトオクトカルボニル0.001gを仕込み、80℃で反応を3時間継続した。この反応溶液にアリルメタクリレート0.088g(0.694ミリモル)及び塩化白金酸0.5ミリグラムを仕込み、更に3時間反応をおこなった。反応液を冷却後、得られた反応液をエバポレータで濃縮し、ヘキサン洗浄を数回おこなった後、減圧下で乾燥し0.62g(収率80%)の重合性フラーレンを得た。元素分析値からC60含有量は64%であり、C601分子に対し平均して1モルのシランが付加していることが分かった。
60[(SiCHCHO)(SiCHCHO)SiCHCH−CHCHCH−OC(O)−C(CH)=CH
得られた重合性フラーレン0.2gにトルエン0.3g、重合開始剤としてベンゾフェノンを0.001g入れ均一溶液を得た後、窒素置換を3回行い溶存酸素を除き、PETフィルム上に流延した。室温で窒素気流下、一昼夜放置し、更に40℃から100℃まで昇温し乾燥した。その後30分UV照射を行い均一な硬化膜を得た。得られた膜を剥離したところ透明黄茶色のフレキシブルなフィルムであった。
【0031】
実施例4
攪拌機、窒素導入管を取り付けた500ミリリットルの4つ口フラスコに脱水したトルエン200ml、C60フラーレン0.5g(0.694ミリモル)、及び1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン1.129g(2.776ミリモル)を仕込んだ。更に触媒としてジコバルトオクトカルボニル0.001gを仕込み、80℃で反応を3時間継続した。この反応溶液にアリルメタクリレート0.263g(2.082ミリモル)及び塩化白金酸0.5ミリグラムを仕込み、更に3時間反応をおこなった。反応液を冷却後、得られた反応液をエバポレータで濃縮し、ヘキサン洗浄を数回おこなった後、減圧下で乾燥し1.5g(収率89%)の重合性フラーレンを得た。元素分析値からC60含有量は37%であり、C601分子に対し平均して3モルのシランが付加していることが分かった。
【0032】
60[(SiCHCHO)(SiCO)SiCHCH−CHCHCH−OC(O)−C(CH)=CH
得られた重合性フラーレン0.4gにトルエン0.6g、重合開始剤としてベンゾフェノンを0.001g入れ均一溶液を得た後、窒素置換を3回行い溶存酸素を除き、PETフィルム上に流延した。室温で窒素気流下、一昼夜放置し、更に40℃から100℃まで昇温し乾燥した。その後30分UV照射を行い均一な硬化膜を得た。得られた膜を剥離したところ透明黄茶色のフレキシブルなフィルムであった。
【0033】
実施例5
攪拌機、窒素導入管を取り付けた500ミリリットルの4つ口フラスコに脱水したトルエン200ml、C60フラーレン0.5g(0.694ミリモル)、及び1,1,3,5,5−ペンタメチル−3−フェニルトリシロキサン0.975g(2.776ミリモル)を仕込んだ。更に触媒としてジコバルトオクトカルボニル0.001gを仕込み、80℃で反応を3時間継続した。この反応溶液にアリルアクリレート0.232g(2.082ミリモル)及び塩化白金酸0.5ミリグラムを仕込み、更に3時間反応をおこなった。反応液を冷却後、得られた反応液をエバポレータで濃縮し、ヘキサン洗浄を数回おこなった後、減圧下で乾燥し1.4g(収率90%)の重合性フラーレンを得た。元素分析値からC60含有量は37%であり、C601分子に対し平均して3モルのシランが付加していることが分かった。
【0034】
60[(SiCHCHO)(SiCCHO)SiCHCH−CHCHCH−OC(O)−CH=CH
得られた重合性フラーレン0.4gにトルエン0.6g、重合開始剤としてベンゾフェノンを0.001g入れ均一溶液を得た後、窒素置換を3回行い溶存酸素を除き、PETフィルム上に流延した。室温で窒素気流下、一昼夜放置し、更に40℃から100℃まで昇温し乾燥した。その後30分UV照射を行い均一な硬化膜を得た。得られた膜を剥離したところ透明黄茶色のフレキシブルなフィルムであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で示されることを特徴とする重合性フラーレン。
[(SiRO)(SiRO)SiR−X−OC(O)−CR=CH]k
(1)
(ここで、R〜Rはそれぞれ独立に水素または炭素数1から12のアルキル基、アリールアルキル基、アリール基を表し、Xは炭素数3から12のアルキレン基を、Rは水素または炭素数1から12のアルキル基を表し、Cは炭素数nのフラーレンを表す。また、nは60以上の正数を、m、jは重合度を表わし1から100の正数を、kは1から11の正数を表す。)
【請求項2】
(nは60以上の正数を表す。)で示されるフラーレンと下記の一般式(2)
H−(SiRO)−(SiR1011O)−SiR1213H (2)
(ここで、R〜R13はそれぞれ独立に水素または炭素数1から12のアルキル基、アリールアルキル基、アリール基を、p、rは重合度を表わし1から100の正数を表す。)
で示されるシラン化合物を反応させた後、下記の一般式(3)
CH=CH−R14−OC(O)−CR15=CH (3)
(ここで、R14は炭素数1から10のアルキレン基を、R15は水素または炭素数1から12のアルキル基を表す。)
で示される重合性化合物を付加させることを特徴とする請求項1に記載の重合性フラーレンの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の重合性フラーレンを重合して得られることを特徴とするフラーレン含有重合体。

【公開番号】特開2006−298801(P2006−298801A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120738(P2005−120738)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】