金属リングの湾曲度を測定する方法およびその装置
【課題】金属リングの局所的なうねり成分を抽出して、金属リングの形状を高精度に測定できる金属リングの湾曲度を測定する方法およびその装置を提供すること。
【解決手段】リング湾曲度測定方法は、金属リングに複数の測定点を設け(ステップS1)、一対の支持ローラに掛け渡す手順(ステップS2)と、金属リングの一側端縁の一部を直線状にクランプする保持手順(ステップS3)と、各測定点での変位量を測定する測定手順(ステップS4)と、金属リングを測定対象区間だけ移動させる移動手順(ステップS5)と、仮想空間上に、測定点を1つずつずらしながら(ステップS8)、金属リングの1周分に亘る各測定点での変位量を切り採る切り採り手順(ステップS9)と、切り採られた金属リングの1周分に亘る各測定点での変位量に基づいて、金属リングの湾曲度を算出する手順(ステップS10)と、を備える。
【解決手段】リング湾曲度測定方法は、金属リングに複数の測定点を設け(ステップS1)、一対の支持ローラに掛け渡す手順(ステップS2)と、金属リングの一側端縁の一部を直線状にクランプする保持手順(ステップS3)と、各測定点での変位量を測定する測定手順(ステップS4)と、金属リングを測定対象区間だけ移動させる移動手順(ステップS5)と、仮想空間上に、測定点を1つずつずらしながら(ステップS8)、金属リングの1周分に亘る各測定点での変位量を切り採る切り採り手順(ステップS9)と、切り採られた金属リングの1周分に亘る各測定点での変位量に基づいて、金属リングの湾曲度を算出する手順(ステップS10)と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属リングの湾曲度を測定する方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、無段変速機の動力伝達用のベルトとして、金属ベルトが知られている。
図17は、金属ベルトBの一部を示す斜視図である。
金属ベルトBは、少しずつ周長の異なる無端帯状の金属リングWが複数積層されて形成される。金属リングWは、幅方向に断面視で、中央部が外方に凸となる円弧形状である。これにより、金属リングWを積層して金属ベルトBを構成する際に、金属リングWが互いに係合するので、積層状態を容易に保持できる。
積層された金属リングWは、複数のエレメントEにより、一体に結束される。エレメントEは、一対の凹部E1が形成された板状部材であり、これら一対の凹部E1に、金属リングWが積層された状態で挿入される。
【0003】
このような金属リングWは、例えば、以下の手順で製造される。
すなわち、まず、マルエージング鋼等の超強力鋼の薄板状の鋼材を用意し、この薄板状の鋼材における相反方向に位置する両端部を、対向させつつ筒状にして溶接し、筒状部材とする。次に、この筒状部材に第1の溶体化処理を施した後、この第1の溶体化処理が施された筒状部材を所定の幅で裁断して輪切り状部材とし、この輪切り状部材を圧延する。次に、この圧延した輪切り状部材に第2の溶体化処理を施して、曲げ伸びに対する耐力を向上させる。次に、第2の溶体化処理では、金属リングWの周長にばらつきが生じるので、金属リングWの周長を補正する。
【0004】
ここで、この金属リングWには、製造工程において、側端縁Sや周面Fに凹凸が生じる場合があるため、金属ベルトを製造する際には、金属リングの湾曲度を測定する装置が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
すなわち、特許文献1に示された装置は、金属リングが掛け渡されてこの金属リングを回動自在に支持する一対の支持ローラと、これら一対の支持ローラに掛け渡された金属リングの一側端縁に摺接する接触子と、この接触子を金属リングの延在方向に沿って移動させる移動手段と、接触子の変位量を検出する検出手段と、を備える。移動手段は、一対の支持ローラの上側に設けられている。
【0006】
ここで、金属リングは無端帯状であるのに対し、移動手段は支持ローラの上側にのみ設けられているため、接触子を金属リングの全周に亘って移動させることはできない。
そこで、この装置によれば、金属リングの周範囲を複数の測定区間に分割し、この測定区間ごとに接触子の変位量を検出して、金属リングの湾曲度を測定する。例えば、金属リングを第1区間および第2区間の2つに分割した場合、まず、第1区間について、移動手段により接触子を摺接させた状態で移動させて、検出手段により接触子の変位量を検出する。次に、一対の支持ローラを回転させて金属リングを回転させ、第2区間について、接触子を摺接させた状態で移動させて、検出手段により接触子の変位量を検出する。そして、第1区間および第2区間での検出結果を合成演算して、金属リングの湾曲度を測定する。
【特許文献1】特開2002−243432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、金属リングの側端縁Sや周面Fに生じる凹凸の中には、局所的なうねり成分を有するものがある。しかしながら、上述の装置では、複数の測定区間ごとに接触子の変位量を検出し、これら検出結果を合成演算して金属リングの湾曲度を測定するため、局所的なうねり成分を抽出できず、金属リングの湾曲度を高精度に測定できない場合があった。
【0008】
本発明は、金属リングの局所的なうねり成分を抽出して、金属リングの形状を高精度に測定できる金属リングの湾曲度を測定する方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のリング湾曲度測定方法は、金属リングの一側端縁または周面の周範囲を複数に分割して所定間隔おきに複数の測定点を設け、前記金属リングを回動自在な一対の支持ローラに掛け渡し、前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲の一部を直線状にクランプする保持手順を含む、無端帯状の金属リングの湾曲度を測定するリング湾曲度測定方法であって、前記金属リングを前記支持ローラに掛け渡した後に、前記金属リングの直線状にクランプした部分を測定対象区間とし、当該測定対象区間に含まれる測定点のそれぞれでの変位量を測定する測定手順と、前記一対の支持ローラを回転させて、前記金属リングを前記測定対象区間の長さだけ移動させる移動手順と、前記保持手順、前記測定手順、および前記移動手順を、前記金属リングの周範囲を複数周するまで繰り返す繰り返し手順と、前記繰り返し手順にて前記金属リングの周範囲を複数周するまで繰り返しつつ、前記複数の測定点のそれぞれでの複数周分の変位量を仮想空間上に記録する変位量記録手順と、前記仮想空間上で、測定点を1つずつずらしながら、当該測定点から前記金属リングの周範囲を1周して当該測定点に至るまでの、前記金属リングの1周分に亘る前記測定点のそれぞれでの変位量を、複数個切り採る切り採り手順と、前記切り採られた金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれについて測定された前記複数の変位量に基づいて、前記金属リングの湾曲度を算出する湾曲度算出手順と、を有することを特徴とする。
【0010】
この場合、変位量記録手順では、前記繰り返し手順にて前記金属リングの周範囲を少なくとも2周するまで繰り返しつつ、前記複数の測定点のそれぞれでの複数周分の変位量を仮想空間上に記録することが好ましい。
【0011】
この場合、前記湾曲度算出手順では、前記切り採られたもののそれぞれについて、前記金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれの変位量を近似する所定次数以上の近似曲線を求めることが好ましい。
【0012】
この場合、前記湾曲度算出手順では、前記切り採られたもののそれぞれについて、3次以上のルジャンドル関数を用いて前記近似曲線を求めることが好ましい。
【0013】
この場合、前記湾曲度算出手順では、前記切り採られたもののそれぞれについて、前記近似曲線と、当該切り採られたものに含まれる測定点のそれぞれの変位量と、の差分に基づいて、前記金属リングの湾曲度として、前記ルジャンドル関数の次数に等しい次数のうねり成分を求めることが好ましい。
【0014】
この場合、前記湾曲度算出手順では、前記切り採られたもののそれぞれについて求めた前記うねり成分に基づいて、前記測定点のそれぞれについて前記複数個のうねり成分値を求めて、これらうねり成分値のうち最頻値を求め、当該最頻値を前記各測定点での前記金属リングの湾曲度とすることが好ましい。
【0015】
以上の発明によれば、まず、金属リングの一側端縁または周面の周範囲を複数に分割して所定間隔おきに複数の測定点を設け、各測定点での変位量を測定する。ここで、繰り返し手順により、保持手順、測定手順、および移動手順を、金属リングの周範囲を少なくとも2周するまで繰り返す。このため、各測定点での変位量を、金属リングの周範囲の複数周に亘って測定することになる。
次に、複数の測定点のそれぞれでの複数周分の変位量を仮想空間上に記録し、この仮想空間上で、測定点を1つずつずらしながら、測定点から金属リングの周範囲を1周してこの測定点に至るまでの、金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれでの変位量を、複数個切り採る。
次に、切り採られたもののそれぞれについて、3次以上のルジャンドル関数を用いて、金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれの変位量を近似する近似曲線を求める。
次に、切り採られたもののそれぞれについて、近似曲線と、切り採られたものに含まれる測定点のそれぞれの測定された変位量と、の差分に基づいて、うねり成分を求める。これにより、切り採られたもののそれぞれについて、金属リングの局所的なうねり成分を抽出できる。
次に、うねり成分に基づいて、測定点のそれぞれについて複数個のうねり成分値を求めて、これらうねり成分値のうち最頻値を求め、この最頻値を各測定点での金属リングの湾曲度とする。これにより、金属リングの局所的なうねり成分を考慮して、金属リングの湾曲度を高精度に測定できる。よって、金属リングの製造工程中の異状工程を容易に特定でき、複数の金属リングのうち湾曲度が高すぎるものを排除できる。
【0016】
本発明のリング湾曲度測定装置は、無端帯状の金属リングの湾曲度を測定するリング湾曲度測定装置であって、前記金属リングが掛け渡される一対の支持ローラと、前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲の一部を直線状にクランプするリング固定手段と、前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲の変位量を測定する測定手段と、前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲のうち、前記リング固定手段により直線状にクランプされた部分を測定対象区間とし、当該測定対象区間を前記金属リングの延在方向に沿って前記測定手段を移動させる移動手段と、前記一対の支持ローラ、前記リング固定手段、前記測定手段、および前記移動手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲を複数に分割して所定間隔おきに複数の測定点を設け、前記リング固定手段で前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲の一部を直線状にクランプする保持手順と、前記金属リングを前記支持ローラに掛け渡した後に、前記金属リングの直線状にクランプした部分を測定対象区間とし、当該測定対象区間に含まれる測定点のそれぞれでの変位量を測定する測定手順と、前記一対の支持ローラを回転させて、前記金属リングを前記測定対象区間の長さだけ移動させる移動手順と、前記保持手順、前記測定手順、および前記移動手順を、前記金属リングの周範囲を複数周するまで繰り返す繰り返し手順と、前記繰り返し手順にて前記金属リングの周範囲を複数周するまで繰り返しつつ、前記複数の測定点のそれぞれでの複数周分の変位量を仮想空間上に記録する変位量記録手順と、前記仮想空間上で、測定点を1つずつずらしながら、当該測定点から前記金属リングの周範囲を1周して当該測定点に至るまでの、前記金属リングの1周分に亘る前記測定点のそれぞれでの変位量を、複数個切り採る切り採り手順と、前記切り採られた金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれについて測定された前記複数の変位量に基づいて、前記金属リングの湾曲度を算出する湾曲度算出手順と、を行うことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、上述の効果と同様の効果がある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、まず、金属リングの一側端縁または周面の周範囲を複数に分割して所定間隔おきに複数の測定点を設け、各測定点での変位量を測定する。ここで、繰り返し手順により、保持手順、測定手順、および移動手順を、金属リングの周範囲を少なくとも2周するまで繰り返す。このため、各測定点での変位量を、金属リングの周範囲の複数周に亘って測定することになる。
次に、複数の測定点のそれぞれでの複数周分の変位量を仮想空間上に記録し、この仮想空間上で、測定点を1つずつずらしながら、測定点から金属リングの周範囲を1周してこの測定点に至るまでの、金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれでの変位量を、複数個切り採る。
次に、切り採られたもののそれぞれについて、3次以上のルジャンドル関数を用いて、金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれの変位量を近似する近似曲線を求める。
次に、切り採られたもののそれぞれについて、近似曲線と、切り採られたものに含まれる測定点のそれぞれの測定された変位量と、の差分に基づいて、うねり成分を求める。これにより、切り採られたもののそれぞれについて、金属リングの局所的なうねり成分を抽出できる。
次に、うねり成分に基づいて、測定点のそれぞれについて複数個のうねり成分値を求めて、これらうねり成分値のうち最頻値を求め、この最頻値を各測定点での金属リングの湾曲度とする。これにより、金属リングの局所的なうねり成分を考慮して、金属リングの湾曲度を高精度に測定できる。よって、金属リングの製造工程中の異状工程を容易に特定でき、複数の金属リングのうち湾曲度が高すぎるものを排除できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るリング湾曲度測定装置1の概略構成を示す図である。図2は、図1のI−I断面図である。図3は、図1のII−II断面図である。
【0020】
リング湾曲度測定装置1は、無端帯状の金属リングWの湾曲度を測定するものであり、ベース2、一対の支持ローラ3、4、リング固定手段5、リング回動手段6、測定手段としての変位センサ7、移動手段32、および図示しない制御手段を備える。
【0021】
図4は、一対の支持ローラ3、4を示す平面図である。
一対の支持ローラ3、4は、所定の間隔を空けて、ベース2に回動自在に軸支されており、鍔状の当接部8を備える。支持ローラ3、4には、金属リングWが掛け渡され、当接部8には、この金属リングWの下縁が当接する。
【0022】
リング回動手段6は、開閉自在な爪部材21で金属リングWを把持可能な把持手段22と、把持手段22を金属リングWに接近、離間させる昇降シリンダ23と、把持手段22を金属リングWの延在方向に沿って移動する移動フレーム24と、を備える。
【0023】
ベース2には、金属リングWの延在方向に沿ってレール25が延設されており、移動フレーム24は、レール25に摺動自在に支持される摺動部材26を備える。
【0024】
このリング回動手段6は、昇降シリンダ23で把持手段22を金属リングWに接近させ、爪部材21で金属リングWを把持した状態で、図示しないシリンダにより、移動フレーム24を金属リングWの延在方向に沿って移動させることで、支持ローラ3、4に掛け渡された金属リングWを回動させることができる。
【0025】
リング固定手段5は、支持ローラ3、4に掛け渡された金属リングWの一部を直線状にクランプする。このリング固定手段5は、第1把持ブロック9および第2把持ブロック10を備える。
【0026】
第1把持ブロック9は、金属リングWの内側に設けられる。ベース2には、レール11が延設されており、第1把持ブロック9は、レール11に摺動可能に支持されて、金属リングWの内周面に向かって進退する。
【0027】
第2把持ブロック10は、金属リングWの外側に第1把持ブロック9に対向して設けられる。ベース2には、レール12が延設されており、第2把持ブロック10は、このレール12に摺動可能に支持されて、金属リングWの外周面に向かって進退する。
【0028】
第1把持ブロック9には、駆動シリンダ13のシリンダ部14の後端部が連結されている。
一方、第2把持ブロック10には、駆動シリンダ13に平行に延びる一対の駆動ロッド15の一端が連結され、両駆動ロッド15の他端は、連結部材16を介して駆動シリンダ13のピストンロッド17に連結されている。また、第2把持ブロック10は、ベース2に連結されたバネ18により、金属リングWの外周面に向かって付勢されている。
【0029】
ベース2には、第1把持ブロック9が前進して金属リングWの外周面に当接する位置(クランプ位置)と、第1把持ブロック9が後退して金属リングWの外周面から離間する位置(クランプ解除位置)と、で第1把持ブロック9を停止させる第1ストッパ19が設けられている。また、第2把持ブロック10が後退して金属リングWの外周面から離間する位置(クランプ解除位置)で第2把持ブロック10を停止させる第2ストッパ20が設けられている。
【0030】
このリング湾曲度測定装置1は、駆動シリンダ13のピストンロッド17を伸長させると、図5に示すように金属リングWの一側端縁Sの一部が直線状にクランプされ、駆動シリンダ13のピストンロッド17を収縮させると、金属リングWの一側端縁Sの一部のクランプが解除される。
【0031】
また、第1把持ブロック9と第2把持ブロック10とは、支持ローラ3、4間に延在する金属リングWの一部に沿って金属リングWの周範囲の1/4の長さを有する形状に形成されている。さらに、第1把持ブロック9と第2把持ブロック10とは、金属リングWをクランプしたときに、金属リングWの略下半部に圧接して、金属リングWの略上半部が露出するように設けられている。
【0032】
図6は、変位センサ7の側面図である。
変位センサ7は、センサ本体27と、センサ本体27に基端側が連結された伸縮自在の伸縮ロッド28と、伸縮ロッド28の先端側に連結された接触子29と、を備える。伸縮ロッド28は、例えば図示しないスプリングにより、金属リングWの一側端縁Sに向かって付勢される。接触子29は、金属リングWの一側端縁Sに当接する当接ローラ30と、当接ローラ30を回転自在に軸支するローラホルダ31と、を備える。接触子29は、金属リングWの一側端縁Sの凹凸に応じて、金属リングWの延在方向と略直交する方向に変位する。制御手段では、この接触子29の変位量に基づいて、金属リングWの一側端縁Sの変位量を検出する。
【0033】
なお、本実施例では、変位センサ7に接触子29を設けたが、これに限らず、例えば接触子29の代わりにレーザを射出するレーザ射出部を設けてもよい。これによれば、レーザにより、金属リングWの一側端縁Sの変位量を検出できるとともに、可動部分を減らして、変位センサ7の故障率を低下させることができる。
【0034】
移動手段32は、変位センサ7を、金属リングWの一側端縁Sのうち第1把持ブロック9および第2把持ブロック10により直線状にクランプされた部分で、金属リングWの延在方向に沿って移動させる。
この移動手段32は、金属リングWの延在方向に沿ってベース2に延設されるレール33と、変位センサ7に連結されてレール33に沿って摺動自在の支持フレーム34と、支持フレーム34を駆動するロッドレスシリンダ35と、を備える。この移動手段32は、ロッドレスシリンダ35により、レール33に沿って支持フレーム34を移動させる。
なお、レール33およびロッドレスシリンダ35の両端部は、支持ローラ3、4の外方まで延出する。このため、この延出部分に支持フレーム34を移動させることで、金属リングWが延在する領域から、変位センサ7を退避させることができる。
【0035】
支持フレーム34には、ラック36およびピニオンギヤ37を介して、ロータリーエンコーダ38が接続されている。ロータリーエンコーダ38は、支持フレーム34の移動距離を検出することで、金属リングWの延在方向に移動した変位センサ7の距離を検出する。ベース2には、支持フレーム34の位置を検出して、金属リングWの直線状にクランプされた部分の両端うち支持ローラ3側に変位センサ7が位置することを検出するためのリミットスイッチ39が設けられる。
【0036】
制御手段は、リング固定手段5、リング回動手段6、変位センサ7、および移動手段32等を制御するとともに、接触子29の変位量に基づいて、金属リングWの湾曲度を算出する。
【0037】
リング湾曲度測定装置1を用いて金属リングWの湾曲度を測定する手順について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
まず、ステップS1において、金属リングWの一側端縁Sの周範囲を複数に分割して所定間隔おきに複数の測定点を設ける。ここでは、金属リングWの一側端縁Sの周範囲を42個に分割して所定間隔おきに43個の測定点P0〜P42(P0)を設ける。ここで、測定点P42は、測定点P0から金属リングWの周範囲を1周させた点であり、測定点P0に等しい。
なお、本実施例では、測定点の数を43個としたが、なるべく大きな素数であるのが好ましい。測定点の数を大きくすることで、後述するように、金属リングWの一側端縁Sの変位量を多数の位置で測定できる。また、測定点を素数とすることで、金属リングWの一側端縁Sの周期的特徴を検出する際に、リング湾曲度測定装置1による周期的影響を抑制できる。
【0039】
次に、ステップS2において、金属リングWを支持ローラ3、4に掛け渡す。
具体的には、まず、移動手段32により変位センサ7を退避させ、リング固定手段5の第1把持ブロック9と第2把持ブロック10とを離間させる。第1把持ブロック9と第2把持ブロック10とは、駆動シリンダ13のピストンロッド17を収縮させると、離間する。すなわち、駆動シリンダ13のピストンロッド17を収縮させると、まず、駆動シリンダ13のシリンダ部14がピストンロッド17と相対的に移動し、第1把持ブロック9が後退して第1ストッパ19により停止する。続いて、さらに駆動シリンダ13のピストンロッド17を収縮させると、駆動ロッド15を介して、第2把持ブロック10がバネ18の付勢に抗して後退位置で第2ストッパ20に当接し、第1把持ブロック9と第2把持ブロック10とが離間する。
この状態で、金属リングWを支持ローラ3、4に掛け渡す。このとき、金属リングWは、図4に示したように、支持ローラ3、4に設けられた当接部8に下縁が当接するので、確実に支持される。
【0040】
次に、ステップS3において、金属リングWの一側端縁Sの一部を直線状にクランプする。
具体的には、図5に示したように、駆動シリンダ13のピストンロッド17を伸長させると、まず、バネ18の付勢によって第2把持ブロック10が前進する。次に、ピストンロッド17に沿って相対的にシリンダ部14が移動し、第1把持ブロック9が前進して第1ストッパ19により停止する。これにより、第1把持ブロック9および第2把持ブロック10で、金属リングWの一側端縁Sの一部が直線状にクランプされる。
【0041】
次に、ステップS4において、金属リングWの一側端縁Sのうち直線状にクランプされた部分を測定対象区間とし、この測定対象区間に含まれる測定点で、接触子29の変位量をそれぞれ検出する。検出した各測定点での変位量は、後述の仮想空間上に記録される。
例えば、図8では、測定点P0、P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8、P9、P10が測定対象区間に含まれる。そして、まず、移動手段32により、変位センサ7を測定対象区間の両端のうち支持ローラ4側の上方に移動させ、図示しない昇降シリンダにより、変位センサ7の接触子29が備える当接ローラ30を下降させて、金属リングWの一側端縁Sに当接させる。次に、移動手段32により、変位センサ7を金属リングWの延在方向に沿って測定対象区間だけ移動させる。すると、接触子29は、金属リングWの一側端縁Sのうち測定対象区間の凹凸に応じて変位するので、制御手段により、測定対象区間に含まれる測定点P0〜P10で、接触子29の変位量をそれぞれ検出する。
【0042】
次に、ステップS5において、金属リングWの一側端縁Sの一部のクランプを解除し、金属リングWを回動させる。
具体的には、まず、接触子29を測定対象区間の両端のうち支持ローラ3側まで移動させると、リミットスイッチ39が作動して、昇降シリンダにより、当接ローラ30を金属リングWと干渉しない位置まで上昇させる。次に、移動手段32により、変位センサ7を退避させる。
そして、リング回動手段6の作動を開始させるとともに、リング固定手段5の第1把持ブロック9と第2把持ブロック10とを離間させて、測定対象区間の長さ、すなわち金属リングWの周範囲の1/4の長さだけ回動させる。すなわち、まず、昇降シリンダ23により、直線状にクランプされた金属リングWに把持手段22を接近させ、把持手段22の爪部材21により、金属リングWを把持する。すると、第1把持ブロック9と第2把持ブロック10とが離間して、金属リングWの一側端縁Sの一部のクランプが解除される。次に、図示しないシリンダにより、移動フレーム24を金属リングWの延在方向に移動させることで、支持ローラ3、4に掛け渡された金属リングWを回動させる。
【0043】
このステップS5の手順を行うことで、金属リングWの一側端縁Sの周範囲のうち測定対象区間となる範囲を変更できる。
例えば、図8に示した状態でステップS5の手順を行うと、図9に示す状態になる。この図9に示す状態で金属リングWの一側端縁Sの一部を直線状にクランプすれば、測定対象区間には、測定点P11、P12、P13、P14、P15、P16、P17、P18、P19、P20が含まれることになる。
【0044】
次に、ステップS6において、接触子29の変位量の検出を、金属リングWの周範囲の2周に亘って行ったか否かを判別する。
具体的には、ロータリーエンコーダ38により、金属リングWの延在方向に移動した変位センサ7の距離が、金属リングWの周範囲の2周以上であるか否かを判別する。この判別がNOであれば、ステップS3に移る。一方、この判別がYESであれば、金属リングWが2周して、測定点P0〜P42(P0)のそれぞれで接触子29の変位量を検出したので、ステップS7に移る。
【0045】
ステップS7において、図10に示すように、測定点P0〜P42(P0)の全てを切り採り点として、仮想空間上で金属リングWの1周分の変位量データが切り採られたか否かを判別する。例えば、B1は、測定点P0を切り採り点とする変位量データである。この変位量データB1には、測定点P0から金属リングWの周範囲を1周して測定点P0に至るまでの、金属リングWの1周分に亘る測定点P0〜P42(P0)のそれぞれでの変位量が含まれる。
この判別がNOであれば、ステップS8に移る。一方、この判別がYESであれば、測定点P0〜P42(P0)の全てをそれぞれ1回ずつ切り採り点として、仮想空間上で金属リングWの1周分の変位量データが切り採られたので、ステップS10に移る。
【0046】
ステップS8において、仮想空間上で切り採り点を1つずらす。
ステップS9において、仮想空間上で、切り採り点から金属リングWの周範囲を1周してこの切り採り点に至るまでの、金属リングWの1周分の変位量データを切り採る。
ステップS10において、図11に示す金属リングWの湾曲度算出処理を行う。
【0047】
ステップS11において、測定点P0〜P42(P0)のいずれか1つを測定開始点とし、測定開始点を基準として金属リングWの一側端縁Sを1周するまでの間で、局所的なうねりが発生しているか否かを判別する。この判別がYESであれば、ステップS12に移り、NOであれば、ステップS13に移る。
【0048】
ステップS12において、各測定点において、測定した変位量からうねり成分を除去する。具体的には、各測定点で測定した変位量に対して、K(Kは、0≦K≦30を満たす整数)次のうねりフィルタを掛けて、うねり成分を除去する。
具体的には、金属リングWのうねり量Rを、以下の式で表す。
【数1】
【0049】
ここで、Aは、金属リングWのうねり量Rの振幅であり、ω1、ω2は、金属リングWを回転させた場合の角速度である。
すなわち、金属リングWの1周分に亘る曲がり形状(湾曲度)のデータを、変位量データB1〜B43として切り採った後、その形状と微小な高次の曲がり形状とを演算により分離する。さらに換言すると、その分離動作とは、求められた曲がり形状(湾曲度)と、その近似曲線との差を算出することである。近似曲線の関数には、ルジャンドル関数を採用した。このルジャンドル関数の最適次数は、図12に示す金属リングWの1周分に亘る曲がり形状(湾曲度)のデータを、統計的判断を可能とする数、本実施例では43本用意して、これらの43本のデータから設定する。
【0050】
図13は、ルジャンドル関数の次数と、図12の曲がり形状の近似率と、の関係を示す図である。
図13に示すように、ルジャンドル関数を3次関数まで採用することで、90%以上の曲がり形状が近似されることが統計的に明らかになっている。ルジャンドル関数を4次関数以上まで採用すると、曲がり形状の99%以上が近似され、高次の曲がり形状成分まで近似されることが予測できるため、本実施形態では、ルジャンドル関数の最適次数を3次に設定する。
【0051】
そこで、図14に示すように、変位量データB1〜B43のそれぞれについて、3次のルジャンドル関数を用いて、金属リングWの1周分に亘る測定点P0〜P42(P0)のそれぞれの変位量を近似する近似曲線を求め、求めた近似曲線と、切り採った変位量データに含まれる測定点のそれぞれの測定された変位量と、の差分を算出して、微小な高次の曲がり形状を求める。すなわち、近似曲線を採用することで、微小な曲がり形状から低次の次数成分を除去する。
【0052】
次に、図15に示すように、これら微小な高次の曲がり形状のパワースペクトルを算出する。すると、特定の次数成分の含有率を求めることができるので、図16に示すように、特定の次数成分をもつ曲がり形状のみをフーリエ逆変換から算出して、K次のうねり成分を抽出する。これにより、測定点P0〜P42(P0)のそれぞれで測定した変位量から、K次のうねり成分を除去する。
【0053】
ステップS13において、測定点P0〜P42(P0)の全てについて、測定開始点として、局所的なうねりの発生を検討したか否かを判別する。この判別がYESであれば、ステップS14に移り、NOであれば、ステップS11に移る。
【0054】
ステップS14において、次数ごとに、43本の曲がり形状(湾曲度)のデータから得られた、測定点P0〜P42(P0)のそれぞれについて、変位量が最も大きいものを抽出し、これら抽出した変位量に基づいて、金属リングWの湾曲度を算出する。
なお、他の例として、測定点P0〜P42(P0)のそれぞれについて複数回、本実施形態では43個の変位量を、所定の数値範囲ごとに分類して、これら複数の所定の数値範囲のうち分類された変位量の数が最も多いものを判別し、判別した所定の数値範囲の中央値、つまり最頻値を抽出してもよい。
【0055】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)金属リングWの周範囲を42個に分割して、所定間隔おきに43個の測定点P0〜P42(P0)を設け、測定点P0〜P42(P0)のそれぞれでの接触子29の変位量を検出する。ここで、接触子29の変位量の検出を、金属リングWの周範囲の2周に亘って行うので、測定点P0〜P42(P0)のそれぞれでは、2回ずつ接触子29の変位量を測定することになる。
そして、測定点P0〜P42(P0)の全てを切り採り点として、仮想空間上で金属リングWの1周分の変位量データを切り採る。これにより、仮想空間上に、43個の変位量データB1〜B43が切り採られる。これら43個の変位量データB1〜B43について、金属リングWの1周分に亘る測定点P0〜P42(P0)のそれぞれの変位量を近似する近似曲線を求め、求めた近似曲線と、切り採った変位量データに含まれる測定点のそれぞれの測定された変位量と、の差分に基づいて、金属リングWの局所的なうねり成分を抽出できる。
【0056】
(2)局所的なうねり成分を抽出した後、各測定点で変位量が最も大きいものを抽出して、これら抽出した変位量に基づいて、金属リングWの湾曲度を算出する。したがって、局所的な湾曲度を高次成分として定量化できるので、製造工程中の問題工程の特定が可能となり、複数の金属リングのうち湾曲度の高すぎるものを排除できる。また、測定点P1〜P42(P0)のそれぞれについて、測定回数ごとの変位量に誤差が生じても、最も大きな変位量に基づいて、金属リングWの湾曲度を算出するので、算出した湾曲度は高くなる。よって、無段変速機に用いる金属リングWを選別する際に、選別する条件を厳しくすることができる。
【0057】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係るリング湾曲度測定装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1のI−I断面図である。
【図3】図1のII−II断面図である。
【図4】一対の支持ローラを示す平面図である。
【図5】リング固定手段の動作を説明するための図である。
【図6】変位センサの側面図である。
【図7】前記リング湾曲度測定装置を用いて金属リングの湾曲度を測定する手順を示すフローチャートである。
【図8】前記リング湾曲度測定装置を用いて金属リングの湾曲度を測定する手順を説明するための図である。
【図9】前記リング湾曲度測定装置を用いて金属リングの湾曲度を測定する手順を説明するための図である。
【図10】仮想空間上で切り採った金属リングの1周分の変位量データを示す図である。
【図11】金属リングの湾曲度算出処理を示すフローチャートである。
【図12】金属リングの1周分に亘る曲がり形状のデータを示す図である。
【図13】ルジャンドル関数の次数と、曲がり形状の近似率と、の関係を示す図である。
【図14】金属リングの微小な高次の曲がり形状を示す図である。
【図15】前記金属リングの微小な高次の曲がり形状のパワースペクトルを示す図である。
【図16】特定の次数成分をもつ金属リングの曲がり形状を示す図である。
【図17】金属ベルトの一部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
1 リング湾曲度測定装置
3、4 支持ローラ
5 リング固定手段
6 リング回動手段
7 変位センサ(測定手段)
9 第1把持ブロック
10 第2把持ブロック
29 接触子
32 移動手段
W 金属リング
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属リングの湾曲度を測定する方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、無段変速機の動力伝達用のベルトとして、金属ベルトが知られている。
図17は、金属ベルトBの一部を示す斜視図である。
金属ベルトBは、少しずつ周長の異なる無端帯状の金属リングWが複数積層されて形成される。金属リングWは、幅方向に断面視で、中央部が外方に凸となる円弧形状である。これにより、金属リングWを積層して金属ベルトBを構成する際に、金属リングWが互いに係合するので、積層状態を容易に保持できる。
積層された金属リングWは、複数のエレメントEにより、一体に結束される。エレメントEは、一対の凹部E1が形成された板状部材であり、これら一対の凹部E1に、金属リングWが積層された状態で挿入される。
【0003】
このような金属リングWは、例えば、以下の手順で製造される。
すなわち、まず、マルエージング鋼等の超強力鋼の薄板状の鋼材を用意し、この薄板状の鋼材における相反方向に位置する両端部を、対向させつつ筒状にして溶接し、筒状部材とする。次に、この筒状部材に第1の溶体化処理を施した後、この第1の溶体化処理が施された筒状部材を所定の幅で裁断して輪切り状部材とし、この輪切り状部材を圧延する。次に、この圧延した輪切り状部材に第2の溶体化処理を施して、曲げ伸びに対する耐力を向上させる。次に、第2の溶体化処理では、金属リングWの周長にばらつきが生じるので、金属リングWの周長を補正する。
【0004】
ここで、この金属リングWには、製造工程において、側端縁Sや周面Fに凹凸が生じる場合があるため、金属ベルトを製造する際には、金属リングの湾曲度を測定する装置が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
すなわち、特許文献1に示された装置は、金属リングが掛け渡されてこの金属リングを回動自在に支持する一対の支持ローラと、これら一対の支持ローラに掛け渡された金属リングの一側端縁に摺接する接触子と、この接触子を金属リングの延在方向に沿って移動させる移動手段と、接触子の変位量を検出する検出手段と、を備える。移動手段は、一対の支持ローラの上側に設けられている。
【0006】
ここで、金属リングは無端帯状であるのに対し、移動手段は支持ローラの上側にのみ設けられているため、接触子を金属リングの全周に亘って移動させることはできない。
そこで、この装置によれば、金属リングの周範囲を複数の測定区間に分割し、この測定区間ごとに接触子の変位量を検出して、金属リングの湾曲度を測定する。例えば、金属リングを第1区間および第2区間の2つに分割した場合、まず、第1区間について、移動手段により接触子を摺接させた状態で移動させて、検出手段により接触子の変位量を検出する。次に、一対の支持ローラを回転させて金属リングを回転させ、第2区間について、接触子を摺接させた状態で移動させて、検出手段により接触子の変位量を検出する。そして、第1区間および第2区間での検出結果を合成演算して、金属リングの湾曲度を測定する。
【特許文献1】特開2002−243432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、金属リングの側端縁Sや周面Fに生じる凹凸の中には、局所的なうねり成分を有するものがある。しかしながら、上述の装置では、複数の測定区間ごとに接触子の変位量を検出し、これら検出結果を合成演算して金属リングの湾曲度を測定するため、局所的なうねり成分を抽出できず、金属リングの湾曲度を高精度に測定できない場合があった。
【0008】
本発明は、金属リングの局所的なうねり成分を抽出して、金属リングの形状を高精度に測定できる金属リングの湾曲度を測定する方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のリング湾曲度測定方法は、金属リングの一側端縁または周面の周範囲を複数に分割して所定間隔おきに複数の測定点を設け、前記金属リングを回動自在な一対の支持ローラに掛け渡し、前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲の一部を直線状にクランプする保持手順を含む、無端帯状の金属リングの湾曲度を測定するリング湾曲度測定方法であって、前記金属リングを前記支持ローラに掛け渡した後に、前記金属リングの直線状にクランプした部分を測定対象区間とし、当該測定対象区間に含まれる測定点のそれぞれでの変位量を測定する測定手順と、前記一対の支持ローラを回転させて、前記金属リングを前記測定対象区間の長さだけ移動させる移動手順と、前記保持手順、前記測定手順、および前記移動手順を、前記金属リングの周範囲を複数周するまで繰り返す繰り返し手順と、前記繰り返し手順にて前記金属リングの周範囲を複数周するまで繰り返しつつ、前記複数の測定点のそれぞれでの複数周分の変位量を仮想空間上に記録する変位量記録手順と、前記仮想空間上で、測定点を1つずつずらしながら、当該測定点から前記金属リングの周範囲を1周して当該測定点に至るまでの、前記金属リングの1周分に亘る前記測定点のそれぞれでの変位量を、複数個切り採る切り採り手順と、前記切り採られた金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれについて測定された前記複数の変位量に基づいて、前記金属リングの湾曲度を算出する湾曲度算出手順と、を有することを特徴とする。
【0010】
この場合、変位量記録手順では、前記繰り返し手順にて前記金属リングの周範囲を少なくとも2周するまで繰り返しつつ、前記複数の測定点のそれぞれでの複数周分の変位量を仮想空間上に記録することが好ましい。
【0011】
この場合、前記湾曲度算出手順では、前記切り採られたもののそれぞれについて、前記金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれの変位量を近似する所定次数以上の近似曲線を求めることが好ましい。
【0012】
この場合、前記湾曲度算出手順では、前記切り採られたもののそれぞれについて、3次以上のルジャンドル関数を用いて前記近似曲線を求めることが好ましい。
【0013】
この場合、前記湾曲度算出手順では、前記切り採られたもののそれぞれについて、前記近似曲線と、当該切り採られたものに含まれる測定点のそれぞれの変位量と、の差分に基づいて、前記金属リングの湾曲度として、前記ルジャンドル関数の次数に等しい次数のうねり成分を求めることが好ましい。
【0014】
この場合、前記湾曲度算出手順では、前記切り採られたもののそれぞれについて求めた前記うねり成分に基づいて、前記測定点のそれぞれについて前記複数個のうねり成分値を求めて、これらうねり成分値のうち最頻値を求め、当該最頻値を前記各測定点での前記金属リングの湾曲度とすることが好ましい。
【0015】
以上の発明によれば、まず、金属リングの一側端縁または周面の周範囲を複数に分割して所定間隔おきに複数の測定点を設け、各測定点での変位量を測定する。ここで、繰り返し手順により、保持手順、測定手順、および移動手順を、金属リングの周範囲を少なくとも2周するまで繰り返す。このため、各測定点での変位量を、金属リングの周範囲の複数周に亘って測定することになる。
次に、複数の測定点のそれぞれでの複数周分の変位量を仮想空間上に記録し、この仮想空間上で、測定点を1つずつずらしながら、測定点から金属リングの周範囲を1周してこの測定点に至るまでの、金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれでの変位量を、複数個切り採る。
次に、切り採られたもののそれぞれについて、3次以上のルジャンドル関数を用いて、金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれの変位量を近似する近似曲線を求める。
次に、切り採られたもののそれぞれについて、近似曲線と、切り採られたものに含まれる測定点のそれぞれの測定された変位量と、の差分に基づいて、うねり成分を求める。これにより、切り採られたもののそれぞれについて、金属リングの局所的なうねり成分を抽出できる。
次に、うねり成分に基づいて、測定点のそれぞれについて複数個のうねり成分値を求めて、これらうねり成分値のうち最頻値を求め、この最頻値を各測定点での金属リングの湾曲度とする。これにより、金属リングの局所的なうねり成分を考慮して、金属リングの湾曲度を高精度に測定できる。よって、金属リングの製造工程中の異状工程を容易に特定でき、複数の金属リングのうち湾曲度が高すぎるものを排除できる。
【0016】
本発明のリング湾曲度測定装置は、無端帯状の金属リングの湾曲度を測定するリング湾曲度測定装置であって、前記金属リングが掛け渡される一対の支持ローラと、前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲の一部を直線状にクランプするリング固定手段と、前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲の変位量を測定する測定手段と、前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲のうち、前記リング固定手段により直線状にクランプされた部分を測定対象区間とし、当該測定対象区間を前記金属リングの延在方向に沿って前記測定手段を移動させる移動手段と、前記一対の支持ローラ、前記リング固定手段、前記測定手段、および前記移動手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲を複数に分割して所定間隔おきに複数の測定点を設け、前記リング固定手段で前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲の一部を直線状にクランプする保持手順と、前記金属リングを前記支持ローラに掛け渡した後に、前記金属リングの直線状にクランプした部分を測定対象区間とし、当該測定対象区間に含まれる測定点のそれぞれでの変位量を測定する測定手順と、前記一対の支持ローラを回転させて、前記金属リングを前記測定対象区間の長さだけ移動させる移動手順と、前記保持手順、前記測定手順、および前記移動手順を、前記金属リングの周範囲を複数周するまで繰り返す繰り返し手順と、前記繰り返し手順にて前記金属リングの周範囲を複数周するまで繰り返しつつ、前記複数の測定点のそれぞれでの複数周分の変位量を仮想空間上に記録する変位量記録手順と、前記仮想空間上で、測定点を1つずつずらしながら、当該測定点から前記金属リングの周範囲を1周して当該測定点に至るまでの、前記金属リングの1周分に亘る前記測定点のそれぞれでの変位量を、複数個切り採る切り採り手順と、前記切り採られた金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれについて測定された前記複数の変位量に基づいて、前記金属リングの湾曲度を算出する湾曲度算出手順と、を行うことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、上述の効果と同様の効果がある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、まず、金属リングの一側端縁または周面の周範囲を複数に分割して所定間隔おきに複数の測定点を設け、各測定点での変位量を測定する。ここで、繰り返し手順により、保持手順、測定手順、および移動手順を、金属リングの周範囲を少なくとも2周するまで繰り返す。このため、各測定点での変位量を、金属リングの周範囲の複数周に亘って測定することになる。
次に、複数の測定点のそれぞれでの複数周分の変位量を仮想空間上に記録し、この仮想空間上で、測定点を1つずつずらしながら、測定点から金属リングの周範囲を1周してこの測定点に至るまでの、金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれでの変位量を、複数個切り採る。
次に、切り採られたもののそれぞれについて、3次以上のルジャンドル関数を用いて、金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれの変位量を近似する近似曲線を求める。
次に、切り採られたもののそれぞれについて、近似曲線と、切り採られたものに含まれる測定点のそれぞれの測定された変位量と、の差分に基づいて、うねり成分を求める。これにより、切り採られたもののそれぞれについて、金属リングの局所的なうねり成分を抽出できる。
次に、うねり成分に基づいて、測定点のそれぞれについて複数個のうねり成分値を求めて、これらうねり成分値のうち最頻値を求め、この最頻値を各測定点での金属リングの湾曲度とする。これにより、金属リングの局所的なうねり成分を考慮して、金属リングの湾曲度を高精度に測定できる。よって、金属リングの製造工程中の異状工程を容易に特定でき、複数の金属リングのうち湾曲度が高すぎるものを排除できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るリング湾曲度測定装置1の概略構成を示す図である。図2は、図1のI−I断面図である。図3は、図1のII−II断面図である。
【0020】
リング湾曲度測定装置1は、無端帯状の金属リングWの湾曲度を測定するものであり、ベース2、一対の支持ローラ3、4、リング固定手段5、リング回動手段6、測定手段としての変位センサ7、移動手段32、および図示しない制御手段を備える。
【0021】
図4は、一対の支持ローラ3、4を示す平面図である。
一対の支持ローラ3、4は、所定の間隔を空けて、ベース2に回動自在に軸支されており、鍔状の当接部8を備える。支持ローラ3、4には、金属リングWが掛け渡され、当接部8には、この金属リングWの下縁が当接する。
【0022】
リング回動手段6は、開閉自在な爪部材21で金属リングWを把持可能な把持手段22と、把持手段22を金属リングWに接近、離間させる昇降シリンダ23と、把持手段22を金属リングWの延在方向に沿って移動する移動フレーム24と、を備える。
【0023】
ベース2には、金属リングWの延在方向に沿ってレール25が延設されており、移動フレーム24は、レール25に摺動自在に支持される摺動部材26を備える。
【0024】
このリング回動手段6は、昇降シリンダ23で把持手段22を金属リングWに接近させ、爪部材21で金属リングWを把持した状態で、図示しないシリンダにより、移動フレーム24を金属リングWの延在方向に沿って移動させることで、支持ローラ3、4に掛け渡された金属リングWを回動させることができる。
【0025】
リング固定手段5は、支持ローラ3、4に掛け渡された金属リングWの一部を直線状にクランプする。このリング固定手段5は、第1把持ブロック9および第2把持ブロック10を備える。
【0026】
第1把持ブロック9は、金属リングWの内側に設けられる。ベース2には、レール11が延設されており、第1把持ブロック9は、レール11に摺動可能に支持されて、金属リングWの内周面に向かって進退する。
【0027】
第2把持ブロック10は、金属リングWの外側に第1把持ブロック9に対向して設けられる。ベース2には、レール12が延設されており、第2把持ブロック10は、このレール12に摺動可能に支持されて、金属リングWの外周面に向かって進退する。
【0028】
第1把持ブロック9には、駆動シリンダ13のシリンダ部14の後端部が連結されている。
一方、第2把持ブロック10には、駆動シリンダ13に平行に延びる一対の駆動ロッド15の一端が連結され、両駆動ロッド15の他端は、連結部材16を介して駆動シリンダ13のピストンロッド17に連結されている。また、第2把持ブロック10は、ベース2に連結されたバネ18により、金属リングWの外周面に向かって付勢されている。
【0029】
ベース2には、第1把持ブロック9が前進して金属リングWの外周面に当接する位置(クランプ位置)と、第1把持ブロック9が後退して金属リングWの外周面から離間する位置(クランプ解除位置)と、で第1把持ブロック9を停止させる第1ストッパ19が設けられている。また、第2把持ブロック10が後退して金属リングWの外周面から離間する位置(クランプ解除位置)で第2把持ブロック10を停止させる第2ストッパ20が設けられている。
【0030】
このリング湾曲度測定装置1は、駆動シリンダ13のピストンロッド17を伸長させると、図5に示すように金属リングWの一側端縁Sの一部が直線状にクランプされ、駆動シリンダ13のピストンロッド17を収縮させると、金属リングWの一側端縁Sの一部のクランプが解除される。
【0031】
また、第1把持ブロック9と第2把持ブロック10とは、支持ローラ3、4間に延在する金属リングWの一部に沿って金属リングWの周範囲の1/4の長さを有する形状に形成されている。さらに、第1把持ブロック9と第2把持ブロック10とは、金属リングWをクランプしたときに、金属リングWの略下半部に圧接して、金属リングWの略上半部が露出するように設けられている。
【0032】
図6は、変位センサ7の側面図である。
変位センサ7は、センサ本体27と、センサ本体27に基端側が連結された伸縮自在の伸縮ロッド28と、伸縮ロッド28の先端側に連結された接触子29と、を備える。伸縮ロッド28は、例えば図示しないスプリングにより、金属リングWの一側端縁Sに向かって付勢される。接触子29は、金属リングWの一側端縁Sに当接する当接ローラ30と、当接ローラ30を回転自在に軸支するローラホルダ31と、を備える。接触子29は、金属リングWの一側端縁Sの凹凸に応じて、金属リングWの延在方向と略直交する方向に変位する。制御手段では、この接触子29の変位量に基づいて、金属リングWの一側端縁Sの変位量を検出する。
【0033】
なお、本実施例では、変位センサ7に接触子29を設けたが、これに限らず、例えば接触子29の代わりにレーザを射出するレーザ射出部を設けてもよい。これによれば、レーザにより、金属リングWの一側端縁Sの変位量を検出できるとともに、可動部分を減らして、変位センサ7の故障率を低下させることができる。
【0034】
移動手段32は、変位センサ7を、金属リングWの一側端縁Sのうち第1把持ブロック9および第2把持ブロック10により直線状にクランプされた部分で、金属リングWの延在方向に沿って移動させる。
この移動手段32は、金属リングWの延在方向に沿ってベース2に延設されるレール33と、変位センサ7に連結されてレール33に沿って摺動自在の支持フレーム34と、支持フレーム34を駆動するロッドレスシリンダ35と、を備える。この移動手段32は、ロッドレスシリンダ35により、レール33に沿って支持フレーム34を移動させる。
なお、レール33およびロッドレスシリンダ35の両端部は、支持ローラ3、4の外方まで延出する。このため、この延出部分に支持フレーム34を移動させることで、金属リングWが延在する領域から、変位センサ7を退避させることができる。
【0035】
支持フレーム34には、ラック36およびピニオンギヤ37を介して、ロータリーエンコーダ38が接続されている。ロータリーエンコーダ38は、支持フレーム34の移動距離を検出することで、金属リングWの延在方向に移動した変位センサ7の距離を検出する。ベース2には、支持フレーム34の位置を検出して、金属リングWの直線状にクランプされた部分の両端うち支持ローラ3側に変位センサ7が位置することを検出するためのリミットスイッチ39が設けられる。
【0036】
制御手段は、リング固定手段5、リング回動手段6、変位センサ7、および移動手段32等を制御するとともに、接触子29の変位量に基づいて、金属リングWの湾曲度を算出する。
【0037】
リング湾曲度測定装置1を用いて金属リングWの湾曲度を測定する手順について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
まず、ステップS1において、金属リングWの一側端縁Sの周範囲を複数に分割して所定間隔おきに複数の測定点を設ける。ここでは、金属リングWの一側端縁Sの周範囲を42個に分割して所定間隔おきに43個の測定点P0〜P42(P0)を設ける。ここで、測定点P42は、測定点P0から金属リングWの周範囲を1周させた点であり、測定点P0に等しい。
なお、本実施例では、測定点の数を43個としたが、なるべく大きな素数であるのが好ましい。測定点の数を大きくすることで、後述するように、金属リングWの一側端縁Sの変位量を多数の位置で測定できる。また、測定点を素数とすることで、金属リングWの一側端縁Sの周期的特徴を検出する際に、リング湾曲度測定装置1による周期的影響を抑制できる。
【0039】
次に、ステップS2において、金属リングWを支持ローラ3、4に掛け渡す。
具体的には、まず、移動手段32により変位センサ7を退避させ、リング固定手段5の第1把持ブロック9と第2把持ブロック10とを離間させる。第1把持ブロック9と第2把持ブロック10とは、駆動シリンダ13のピストンロッド17を収縮させると、離間する。すなわち、駆動シリンダ13のピストンロッド17を収縮させると、まず、駆動シリンダ13のシリンダ部14がピストンロッド17と相対的に移動し、第1把持ブロック9が後退して第1ストッパ19により停止する。続いて、さらに駆動シリンダ13のピストンロッド17を収縮させると、駆動ロッド15を介して、第2把持ブロック10がバネ18の付勢に抗して後退位置で第2ストッパ20に当接し、第1把持ブロック9と第2把持ブロック10とが離間する。
この状態で、金属リングWを支持ローラ3、4に掛け渡す。このとき、金属リングWは、図4に示したように、支持ローラ3、4に設けられた当接部8に下縁が当接するので、確実に支持される。
【0040】
次に、ステップS3において、金属リングWの一側端縁Sの一部を直線状にクランプする。
具体的には、図5に示したように、駆動シリンダ13のピストンロッド17を伸長させると、まず、バネ18の付勢によって第2把持ブロック10が前進する。次に、ピストンロッド17に沿って相対的にシリンダ部14が移動し、第1把持ブロック9が前進して第1ストッパ19により停止する。これにより、第1把持ブロック9および第2把持ブロック10で、金属リングWの一側端縁Sの一部が直線状にクランプされる。
【0041】
次に、ステップS4において、金属リングWの一側端縁Sのうち直線状にクランプされた部分を測定対象区間とし、この測定対象区間に含まれる測定点で、接触子29の変位量をそれぞれ検出する。検出した各測定点での変位量は、後述の仮想空間上に記録される。
例えば、図8では、測定点P0、P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8、P9、P10が測定対象区間に含まれる。そして、まず、移動手段32により、変位センサ7を測定対象区間の両端のうち支持ローラ4側の上方に移動させ、図示しない昇降シリンダにより、変位センサ7の接触子29が備える当接ローラ30を下降させて、金属リングWの一側端縁Sに当接させる。次に、移動手段32により、変位センサ7を金属リングWの延在方向に沿って測定対象区間だけ移動させる。すると、接触子29は、金属リングWの一側端縁Sのうち測定対象区間の凹凸に応じて変位するので、制御手段により、測定対象区間に含まれる測定点P0〜P10で、接触子29の変位量をそれぞれ検出する。
【0042】
次に、ステップS5において、金属リングWの一側端縁Sの一部のクランプを解除し、金属リングWを回動させる。
具体的には、まず、接触子29を測定対象区間の両端のうち支持ローラ3側まで移動させると、リミットスイッチ39が作動して、昇降シリンダにより、当接ローラ30を金属リングWと干渉しない位置まで上昇させる。次に、移動手段32により、変位センサ7を退避させる。
そして、リング回動手段6の作動を開始させるとともに、リング固定手段5の第1把持ブロック9と第2把持ブロック10とを離間させて、測定対象区間の長さ、すなわち金属リングWの周範囲の1/4の長さだけ回動させる。すなわち、まず、昇降シリンダ23により、直線状にクランプされた金属リングWに把持手段22を接近させ、把持手段22の爪部材21により、金属リングWを把持する。すると、第1把持ブロック9と第2把持ブロック10とが離間して、金属リングWの一側端縁Sの一部のクランプが解除される。次に、図示しないシリンダにより、移動フレーム24を金属リングWの延在方向に移動させることで、支持ローラ3、4に掛け渡された金属リングWを回動させる。
【0043】
このステップS5の手順を行うことで、金属リングWの一側端縁Sの周範囲のうち測定対象区間となる範囲を変更できる。
例えば、図8に示した状態でステップS5の手順を行うと、図9に示す状態になる。この図9に示す状態で金属リングWの一側端縁Sの一部を直線状にクランプすれば、測定対象区間には、測定点P11、P12、P13、P14、P15、P16、P17、P18、P19、P20が含まれることになる。
【0044】
次に、ステップS6において、接触子29の変位量の検出を、金属リングWの周範囲の2周に亘って行ったか否かを判別する。
具体的には、ロータリーエンコーダ38により、金属リングWの延在方向に移動した変位センサ7の距離が、金属リングWの周範囲の2周以上であるか否かを判別する。この判別がNOであれば、ステップS3に移る。一方、この判別がYESであれば、金属リングWが2周して、測定点P0〜P42(P0)のそれぞれで接触子29の変位量を検出したので、ステップS7に移る。
【0045】
ステップS7において、図10に示すように、測定点P0〜P42(P0)の全てを切り採り点として、仮想空間上で金属リングWの1周分の変位量データが切り採られたか否かを判別する。例えば、B1は、測定点P0を切り採り点とする変位量データである。この変位量データB1には、測定点P0から金属リングWの周範囲を1周して測定点P0に至るまでの、金属リングWの1周分に亘る測定点P0〜P42(P0)のそれぞれでの変位量が含まれる。
この判別がNOであれば、ステップS8に移る。一方、この判別がYESであれば、測定点P0〜P42(P0)の全てをそれぞれ1回ずつ切り採り点として、仮想空間上で金属リングWの1周分の変位量データが切り採られたので、ステップS10に移る。
【0046】
ステップS8において、仮想空間上で切り採り点を1つずらす。
ステップS9において、仮想空間上で、切り採り点から金属リングWの周範囲を1周してこの切り採り点に至るまでの、金属リングWの1周分の変位量データを切り採る。
ステップS10において、図11に示す金属リングWの湾曲度算出処理を行う。
【0047】
ステップS11において、測定点P0〜P42(P0)のいずれか1つを測定開始点とし、測定開始点を基準として金属リングWの一側端縁Sを1周するまでの間で、局所的なうねりが発生しているか否かを判別する。この判別がYESであれば、ステップS12に移り、NOであれば、ステップS13に移る。
【0048】
ステップS12において、各測定点において、測定した変位量からうねり成分を除去する。具体的には、各測定点で測定した変位量に対して、K(Kは、0≦K≦30を満たす整数)次のうねりフィルタを掛けて、うねり成分を除去する。
具体的には、金属リングWのうねり量Rを、以下の式で表す。
【数1】
【0049】
ここで、Aは、金属リングWのうねり量Rの振幅であり、ω1、ω2は、金属リングWを回転させた場合の角速度である。
すなわち、金属リングWの1周分に亘る曲がり形状(湾曲度)のデータを、変位量データB1〜B43として切り採った後、その形状と微小な高次の曲がり形状とを演算により分離する。さらに換言すると、その分離動作とは、求められた曲がり形状(湾曲度)と、その近似曲線との差を算出することである。近似曲線の関数には、ルジャンドル関数を採用した。このルジャンドル関数の最適次数は、図12に示す金属リングWの1周分に亘る曲がり形状(湾曲度)のデータを、統計的判断を可能とする数、本実施例では43本用意して、これらの43本のデータから設定する。
【0050】
図13は、ルジャンドル関数の次数と、図12の曲がり形状の近似率と、の関係を示す図である。
図13に示すように、ルジャンドル関数を3次関数まで採用することで、90%以上の曲がり形状が近似されることが統計的に明らかになっている。ルジャンドル関数を4次関数以上まで採用すると、曲がり形状の99%以上が近似され、高次の曲がり形状成分まで近似されることが予測できるため、本実施形態では、ルジャンドル関数の最適次数を3次に設定する。
【0051】
そこで、図14に示すように、変位量データB1〜B43のそれぞれについて、3次のルジャンドル関数を用いて、金属リングWの1周分に亘る測定点P0〜P42(P0)のそれぞれの変位量を近似する近似曲線を求め、求めた近似曲線と、切り採った変位量データに含まれる測定点のそれぞれの測定された変位量と、の差分を算出して、微小な高次の曲がり形状を求める。すなわち、近似曲線を採用することで、微小な曲がり形状から低次の次数成分を除去する。
【0052】
次に、図15に示すように、これら微小な高次の曲がり形状のパワースペクトルを算出する。すると、特定の次数成分の含有率を求めることができるので、図16に示すように、特定の次数成分をもつ曲がり形状のみをフーリエ逆変換から算出して、K次のうねり成分を抽出する。これにより、測定点P0〜P42(P0)のそれぞれで測定した変位量から、K次のうねり成分を除去する。
【0053】
ステップS13において、測定点P0〜P42(P0)の全てについて、測定開始点として、局所的なうねりの発生を検討したか否かを判別する。この判別がYESであれば、ステップS14に移り、NOであれば、ステップS11に移る。
【0054】
ステップS14において、次数ごとに、43本の曲がり形状(湾曲度)のデータから得られた、測定点P0〜P42(P0)のそれぞれについて、変位量が最も大きいものを抽出し、これら抽出した変位量に基づいて、金属リングWの湾曲度を算出する。
なお、他の例として、測定点P0〜P42(P0)のそれぞれについて複数回、本実施形態では43個の変位量を、所定の数値範囲ごとに分類して、これら複数の所定の数値範囲のうち分類された変位量の数が最も多いものを判別し、判別した所定の数値範囲の中央値、つまり最頻値を抽出してもよい。
【0055】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)金属リングWの周範囲を42個に分割して、所定間隔おきに43個の測定点P0〜P42(P0)を設け、測定点P0〜P42(P0)のそれぞれでの接触子29の変位量を検出する。ここで、接触子29の変位量の検出を、金属リングWの周範囲の2周に亘って行うので、測定点P0〜P42(P0)のそれぞれでは、2回ずつ接触子29の変位量を測定することになる。
そして、測定点P0〜P42(P0)の全てを切り採り点として、仮想空間上で金属リングWの1周分の変位量データを切り採る。これにより、仮想空間上に、43個の変位量データB1〜B43が切り採られる。これら43個の変位量データB1〜B43について、金属リングWの1周分に亘る測定点P0〜P42(P0)のそれぞれの変位量を近似する近似曲線を求め、求めた近似曲線と、切り採った変位量データに含まれる測定点のそれぞれの測定された変位量と、の差分に基づいて、金属リングWの局所的なうねり成分を抽出できる。
【0056】
(2)局所的なうねり成分を抽出した後、各測定点で変位量が最も大きいものを抽出して、これら抽出した変位量に基づいて、金属リングWの湾曲度を算出する。したがって、局所的な湾曲度を高次成分として定量化できるので、製造工程中の問題工程の特定が可能となり、複数の金属リングのうち湾曲度の高すぎるものを排除できる。また、測定点P1〜P42(P0)のそれぞれについて、測定回数ごとの変位量に誤差が生じても、最も大きな変位量に基づいて、金属リングWの湾曲度を算出するので、算出した湾曲度は高くなる。よって、無段変速機に用いる金属リングWを選別する際に、選別する条件を厳しくすることができる。
【0057】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係るリング湾曲度測定装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1のI−I断面図である。
【図3】図1のII−II断面図である。
【図4】一対の支持ローラを示す平面図である。
【図5】リング固定手段の動作を説明するための図である。
【図6】変位センサの側面図である。
【図7】前記リング湾曲度測定装置を用いて金属リングの湾曲度を測定する手順を示すフローチャートである。
【図8】前記リング湾曲度測定装置を用いて金属リングの湾曲度を測定する手順を説明するための図である。
【図9】前記リング湾曲度測定装置を用いて金属リングの湾曲度を測定する手順を説明するための図である。
【図10】仮想空間上で切り採った金属リングの1周分の変位量データを示す図である。
【図11】金属リングの湾曲度算出処理を示すフローチャートである。
【図12】金属リングの1周分に亘る曲がり形状のデータを示す図である。
【図13】ルジャンドル関数の次数と、曲がり形状の近似率と、の関係を示す図である。
【図14】金属リングの微小な高次の曲がり形状を示す図である。
【図15】前記金属リングの微小な高次の曲がり形状のパワースペクトルを示す図である。
【図16】特定の次数成分をもつ金属リングの曲がり形状を示す図である。
【図17】金属ベルトの一部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
1 リング湾曲度測定装置
3、4 支持ローラ
5 リング固定手段
6 リング回動手段
7 変位センサ(測定手段)
9 第1把持ブロック
10 第2把持ブロック
29 接触子
32 移動手段
W 金属リング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属リングの一側端縁または周面の周範囲を複数に分割して所定間隔おきに複数の測定点を設け、前記金属リングを回動自在な一対の支持ローラに掛け渡し、前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲の一部を直線状にクランプする保持手順を含む、無端帯状の金属リングの湾曲度を測定するリング湾曲度測定方法であって、
前記金属リングを前記支持ローラに掛け渡した後に、前記金属リングの直線状にクランプした部分を測定対象区間とし、当該測定対象区間に含まれる測定点のそれぞれでの変位量を測定する測定手順と、
前記一対の支持ローラを回転させて、前記金属リングを前記測定対象区間の長さだけ移動させる移動手順と、
前記保持手順、前記測定手順、および前記移動手順を、前記金属リングの周範囲を複数周するまで繰り返す繰り返し手順と、
前記繰り返し手順にて前記金属リングの周範囲を複数周するまで繰り返しつつ、前記複数の測定点のそれぞれでの複数周分の変位量を仮想空間上に記録する変位量記録手順と、
前記仮想空間上で、測定点を1つずつずらしながら、当該測定点から前記金属リングの周範囲を1周して当該測定点に至るまでの、前記金属リングの1周分に亘る前記測定点のそれぞれでの変位量を、複数個切り採る切り採り手順と、
前記切り採られた金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれについて測定された前記複数の変位量に基づいて、前記金属リングの湾曲度を算出する湾曲度算出手順と、を有することを特徴とするリング湾曲度測定方法。
【請求項2】
請求項1記載のリング湾曲度測定方法において、
変位量記録手順では、前記繰り返し手順にて前記金属リングの周範囲を少なくとも2周するまで繰り返しつつ、前記複数の測定点のそれぞれでの複数周分の変位量を仮想空間上に記録することを特徴とするリング湾曲度測定方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のリング湾曲度測定方法において、
前記湾曲度算出手順では、前記切り採られたもののそれぞれについて、前記金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれの変位量を近似する所定次数以上の近似曲線を求めることを特徴とするリング湾曲度測定方法。
【請求項4】
請求項3記載のリング湾曲度測定方法において、
前記湾曲度算出手順では、前記切り採られたもののそれぞれについて、3次以上のルジャンドル関数を用いて前記近似曲線を求めることを特徴とするリング湾曲度測定方法。
【請求項5】
請求項4記載のリング湾曲度測定方法において、
前記湾曲度算出手順では、前記切り採られたもののそれぞれについて、前記近似曲線と、当該切り採られたものに含まれる測定点のそれぞれの変位量と、の差分に基づいて、前記金属リングの湾曲度として、前記ルジャンドル関数の次数に等しい次数のうねり成分を求めることを特徴とするリング湾曲度測定方法。
【請求項6】
請求項5記載のリング湾曲度測定方法において、
前記湾曲度算出手順では、前記切り採られたもののそれぞれについて求めた前記うねり成分に基づいて、前記測定点のそれぞれについて前記複数個のうねり成分値を求めて、これらうねり成分値のうち最頻値を求め、当該最頻値を前記各測定点での前記金属リングの湾曲度とすることを特徴とするリング湾曲度測定方法。
【請求項7】
無端帯状の金属リングの湾曲度を測定するリング湾曲度測定装置であって、
前記金属リングが掛け渡される一対の支持ローラと、
前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲の一部を直線状にクランプするリング固定手段と、
前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲の変位量を測定する測定手段と、
前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲のうち、前記リング固定手段により直線状にクランプされた部分を測定対象区間とし、当該測定対象区間を前記金属リングの延在方向に沿って前記測定手段を移動させる移動手段と、
前記一対の支持ローラ、前記リング固定手段、前記測定手段、および前記移動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲を複数に分割して所定間隔おきに複数の測定点を設け、前記リング固定手段で前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲の一部を直線状にクランプする保持手順と、
前記金属リングを前記支持ローラに掛け渡した後に、前記金属リングの直線状にクランプした部分を測定対象区間とし、当該測定対象区間に含まれる測定点のそれぞれでの変位量を測定する測定手順と、
前記一対の支持ローラを回転させて、前記金属リングを前記測定対象区間の長さだけ移動させる移動手順と、
前記保持手順、前記測定手順、および前記移動手順を、前記金属リングの周範囲を複数周するまで繰り返す繰り返し手順と、
前記繰り返し手順にて前記金属リングの周範囲を複数周するまで繰り返しつつ、前記複数の測定点のそれぞれでの複数周分の変位量を仮想空間上に記録する変位量記録手順と、
前記仮想空間上で、測定点を1つずつずらしながら、当該測定点から前記金属リングの周範囲を1周して当該測定点に至るまでの、前記金属リングの1周分に亘る前記測定点のそれぞれでの変位量を、複数個切り採る切り採り手順と、
前記切り採られた金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれについて測定された前記複数の変位量に基づいて、前記金属リングの湾曲度を算出する湾曲度算出手順と、を行うことを特徴とするリング湾曲度測定装置。
【請求項1】
金属リングの一側端縁または周面の周範囲を複数に分割して所定間隔おきに複数の測定点を設け、前記金属リングを回動自在な一対の支持ローラに掛け渡し、前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲の一部を直線状にクランプする保持手順を含む、無端帯状の金属リングの湾曲度を測定するリング湾曲度測定方法であって、
前記金属リングを前記支持ローラに掛け渡した後に、前記金属リングの直線状にクランプした部分を測定対象区間とし、当該測定対象区間に含まれる測定点のそれぞれでの変位量を測定する測定手順と、
前記一対の支持ローラを回転させて、前記金属リングを前記測定対象区間の長さだけ移動させる移動手順と、
前記保持手順、前記測定手順、および前記移動手順を、前記金属リングの周範囲を複数周するまで繰り返す繰り返し手順と、
前記繰り返し手順にて前記金属リングの周範囲を複数周するまで繰り返しつつ、前記複数の測定点のそれぞれでの複数周分の変位量を仮想空間上に記録する変位量記録手順と、
前記仮想空間上で、測定点を1つずつずらしながら、当該測定点から前記金属リングの周範囲を1周して当該測定点に至るまでの、前記金属リングの1周分に亘る前記測定点のそれぞれでの変位量を、複数個切り採る切り採り手順と、
前記切り採られた金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれについて測定された前記複数の変位量に基づいて、前記金属リングの湾曲度を算出する湾曲度算出手順と、を有することを特徴とするリング湾曲度測定方法。
【請求項2】
請求項1記載のリング湾曲度測定方法において、
変位量記録手順では、前記繰り返し手順にて前記金属リングの周範囲を少なくとも2周するまで繰り返しつつ、前記複数の測定点のそれぞれでの複数周分の変位量を仮想空間上に記録することを特徴とするリング湾曲度測定方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のリング湾曲度測定方法において、
前記湾曲度算出手順では、前記切り採られたもののそれぞれについて、前記金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれの変位量を近似する所定次数以上の近似曲線を求めることを特徴とするリング湾曲度測定方法。
【請求項4】
請求項3記載のリング湾曲度測定方法において、
前記湾曲度算出手順では、前記切り採られたもののそれぞれについて、3次以上のルジャンドル関数を用いて前記近似曲線を求めることを特徴とするリング湾曲度測定方法。
【請求項5】
請求項4記載のリング湾曲度測定方法において、
前記湾曲度算出手順では、前記切り採られたもののそれぞれについて、前記近似曲線と、当該切り採られたものに含まれる測定点のそれぞれの変位量と、の差分に基づいて、前記金属リングの湾曲度として、前記ルジャンドル関数の次数に等しい次数のうねり成分を求めることを特徴とするリング湾曲度測定方法。
【請求項6】
請求項5記載のリング湾曲度測定方法において、
前記湾曲度算出手順では、前記切り採られたもののそれぞれについて求めた前記うねり成分に基づいて、前記測定点のそれぞれについて前記複数個のうねり成分値を求めて、これらうねり成分値のうち最頻値を求め、当該最頻値を前記各測定点での前記金属リングの湾曲度とすることを特徴とするリング湾曲度測定方法。
【請求項7】
無端帯状の金属リングの湾曲度を測定するリング湾曲度測定装置であって、
前記金属リングが掛け渡される一対の支持ローラと、
前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲の一部を直線状にクランプするリング固定手段と、
前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲の変位量を測定する測定手段と、
前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲のうち、前記リング固定手段により直線状にクランプされた部分を測定対象区間とし、当該測定対象区間を前記金属リングの延在方向に沿って前記測定手段を移動させる移動手段と、
前記一対の支持ローラ、前記リング固定手段、前記測定手段、および前記移動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲を複数に分割して所定間隔おきに複数の測定点を設け、前記リング固定手段で前記金属リングの一側端縁または周面の周範囲の一部を直線状にクランプする保持手順と、
前記金属リングを前記支持ローラに掛け渡した後に、前記金属リングの直線状にクランプした部分を測定対象区間とし、当該測定対象区間に含まれる測定点のそれぞれでの変位量を測定する測定手順と、
前記一対の支持ローラを回転させて、前記金属リングを前記測定対象区間の長さだけ移動させる移動手順と、
前記保持手順、前記測定手順、および前記移動手順を、前記金属リングの周範囲を複数周するまで繰り返す繰り返し手順と、
前記繰り返し手順にて前記金属リングの周範囲を複数周するまで繰り返しつつ、前記複数の測定点のそれぞれでの複数周分の変位量を仮想空間上に記録する変位量記録手順と、
前記仮想空間上で、測定点を1つずつずらしながら、当該測定点から前記金属リングの周範囲を1周して当該測定点に至るまでの、前記金属リングの1周分に亘る前記測定点のそれぞれでの変位量を、複数個切り採る切り採り手順と、
前記切り採られた金属リングの1周分に亘る測定点のそれぞれについて測定された前記複数の変位量に基づいて、前記金属リングの湾曲度を算出する湾曲度算出手順と、を行うことを特徴とするリング湾曲度測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−268034(P2008−268034A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112355(P2007−112355)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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