説明

金属性医薬品放出医療用デバイスおよびその作成方法

金属製膜または擬似金属製膜で製作された図4Aに示されるような埋込み型医薬品放出医療用デバイス(10)が開示される。膜を通過する複数の微細孔(20)をファブリック様の品質をデバイスに付与するパターンで有する生体適合性材料で作成される金属製膜または擬似金属製膜により、医療用デバイスの幾何学的変形が可能になる。埋込み型医療用デバイスは、金属製材料および/または擬似金属製材料を単層構造または多層構造に真空蒸着することによって製作されることが好ましく、複数の微細孔は、蒸着された膜のセクションを選択的に除去することによって、蒸着中または蒸着後に形成される。埋込み型医療用デバイスは、管腔内移植片または手術移植片として使用されるのに適切であり、たとえば、血管移植片、ステント移植片、皮膚移植片、シャント、骨移植片、手術用パッチ、非血管導管、弁リーフレット、フィルタ、閉塞メンブレン、人工括約筋、腱、および靭帯として使用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年11月17日出願の同時係属米国特許出願第10/258087号明細書の一部係属であり、これは、2000年11月17日出願の同時係属米国特許出願第09/716146号明細書の一部係属である。本出願はまた、2002年4月29日出願の以前の同時係属でかつ同一出願人による米国特許出願第10/135316号明細書、および2002年4月29日出願の米国特許出願第10/135626号明細書にも関し、これらは両方とも、それぞれ参照によって本明細書に組み込まれている,2001年8月7日出願の米国仮特許出願第60/310617号明細書、および2002年8月8日発行のPCT国際出願国際公開第WO02060506A1号パンフレットに対応する2002年10月17日出願の同時係属でかつ同一出願人による米国特許出願第10/258087号明細書に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般的には、薬理活性剤を放出することができる埋込み型金属性医療用デバイスに関する。より具体的には、本発明は、埋込み型医薬品放出医療用デバイスに関し、たとえば、手術用移植片および管腔内血管移植片、ステント、ステント移植片、被覆ステント、皮膚移植片、シャント、骨移植片、手術用パッチ、非血管導管、弁リーフレット、フィルタ、閉塞メンブレン、括約筋、人工腱および靭帯、血管栓子、整形外科用インプラントおよび歯科用インプラントがある。より具体的には、本発明は、膜を通過する複数の微細孔を有し、かつ膜の内部において画定され、微細孔の隣接対間に配置された複数の医薬品放出ポケットを有する生体適合性材料の金属製膜または擬似金属製膜で作成された埋込み型医療用移植片に関する。複数の微細孔は、コンプライアンスおよびファブリック様品質の両方を生体適合性材料の金属製膜または擬似金属製膜に付与し、かつ、たとえば管状膜の周方向または縦方向の膨張を可能にするように膜が幾何学的に変形するのを可能にする。
【0003】
本出願の目的では、生体適合性材料の金属製膜および擬似金属製膜の両方とも、「金属膜」または「金属性膜」とまとめて言及される。本発明の金属膜は、従来の鍛錬金属処理技法によって製作されることが可能であり、または、物理蒸着もしくは化学蒸着などのナノ製作技法によって作成されることが可能である。
【0004】
本出願の目的では、単数または複数で使用されるときの「微細孔」または「微細開口」という用語は、サブミリメートルからナノメートルの大きさの開口において開表面積を有する開口を意味することを意図する。
【0005】
金属膜は、ほぼ管状の幾何学的形状を有することが可能であり、ほぼ平面の幾何学的形状を有することが可能であり、または複雑な幾何学的形状に形成することが可能である。しかし、当業者なら、金属膜の特定の幾何学的形状に関係なく、金属膜は、一般に、これ以後第1金属膜表面および第2金属膜表面と呼ばれる2つの対向表面を有することを理解するであろう。
【0006】
医薬品放出ポケットは、金属膜の内部に完全に封入されるが、ポリマーマトリックスによって結合または包含されずに、拡散、ポンピング、または他の能動的手段もしくは受動的手段によって開口を経て医薬品を放出するのを可能にするのに十分なサイズのポケットにおける少なくとも1つの開口は除かれる。医薬品放出ポケットは、金属膜によって全側面において境界が画定され、かつほぼピロー室状またはボックス室状の幾何学的形状を有し、少なくとも1つの開口は、金属膜の第1表面および第2表面のどちらかまたは両方において金属膜を通過する。
【0007】
医薬品放出ポケットの境界として作用することに加えて、複数の微細孔は、たとえば、膜の幾何学的変形を可能にすること、ファブリック様の品質を膜に付与すること、および柔軟性を膜に付与することを含めて、複数の目的を果たすことが可能である。「ファブリック様」という用語は、天然または合成の織りファブリックについて見られるのと同様の方式でしなやかおよび/または曲げやすいという品質を意味することを意図する。
【0008】
本発明の埋込み型移植片は、生体適合性金属または生体適合性擬似金属で作成された自己支持膜で完全に製作される。金属膜は、単層金属膜または複数層膜とすることが可能である。「金属膜」、「薄金属性膜」、および「金属薄膜」という用語は、本出願では、0μmより厚く、かつ約125μm未満の厚さを有する生体適合性金属または生体適合性擬似金属で製作された単層膜または複数層膜を指すために、同義語として使用される。これまで埋込み型医療用デバイスの分野では、その要素の1つとして、被覆ステントまたはステント移植片など、完全に自己支持金属材料または擬似金属材料の1つの移植片を備える埋込み型医療用デバイスを製作することは未知であった。本明細書において使用される際、「移植片」という用語は、2つの表面間の距離が移植片の厚さである前記表面によって範囲が定められた材料を本質的に備え、かつ一体的な寸法強度を示し、さらに移植片の厚さを通過する微細孔を有する任意のタイプのデバイスまたはデバイスの一部を示すことを意図する。本発明の移植片は、平面シート、トロイド、および特定の応用分野が保証することができる他の形状で形成されることが可能である。しかし、例示のためにのみ、本出願は、管状の移植片に言及する。本出願の目的では、「擬似金属」および「擬似金属製」という用語は、生体適合性金属とほぼ同じ生物学的応答および材料特徴を示す生体適合性材料を意味することを意図する。擬似金属製材料の例には、たとえば、ポリマー、複合材料、およびセラミックがある。複合材料は、セラミック、金属、炭素、またはポリマーから作成された様々なファイバのいずれかで強化されたマトリックス材料からなる。
【0009】
身体内に埋め込まれるとき、金属は、一般に、市販のポリマー移植片を製作するために使用されるポリマーによって示されるものより優れた生体適合性を有すると見なされる。人工装具材料が埋め込まれるとき、細胞表面上のインテグリン受容体が人工装具表面と相互作用することが判明している。インテグリン受容体は、生体内である配位子に特有である。特定のタンパク質が人工装具の表面において吸着され、配位子が暴露される場合、人工装具表面への細胞の結合が、インテグリン配位子ドッキングによって生じる可能性がある。また、タンパク質が、ポリマーに結合する場合より永続的な方式で金属に結合し、それにより、より安定な接着表面を提供することも観測されている。ほとんどの医療用金属および合金の表面に結合したタンパク質の立体配座は、より多数の配位子を暴露させ、かつ白血球と比較して、表面インテグリンクラスタを有する内皮細胞を優先的に金属または合金表面に引きつけるようである。最後に、金属および金属合金は、ポリマーと比較して金属の劣化に対して優れた耐性を示し、それにより、より優れた長期的な構造一体性および安定な境界条件を提供する。
【0010】
相対的により優れている接着表面プロファイルのために、金属はまた、短期の血小板活性および/または血栓形成性の影響も受けやすい。これらの有害な特性は、今日では薬理活性血栓形成防止剤を定常的に使用して投与することによって相殺することが可能である。表面の血栓形成性は、通常、初期暴露後1〜3週間で消滅する。血栓形成防止でのカバレージは、冠状ステンティングのこの時間期間中に定常的に提供される。筋骨格および歯科などの血管以外の応用分野では、金属はまた、同様の分子考慮事項のためにポリマーより優れた組織適合性をも有する。すべてのポリマーが金属より劣るということを実証するのに最適な文献は、(たとえば、非特許文献1)である。
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,897,911号明細書
【特許文献2】米国特許第5,725,573号明細書
【特許文献3】米国特許第5,955,588号明細書
【特許文献4】米国特許第5,649,951号明細書
【特許文献5】米国特許第5,387,247号明細書
【特許文献6】米国特許第5,607,463号明細書
【特許文献7】米国特許第5,690,670号明細書
【特許文献8】米国特許第5,891,507号明細書
【特許文献9】米国特許第5,782,908号明細書
【特許文献10】米国特許第5,932,299号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開2003/0170287号明細書、2003年9月11日出願
【特許文献12】米国特許出願第60/414209号明細書、2002年9月26日出願
【特許文献13】米国特許出願第10/672695号明細書、2003年9月26日出願
【非特許文献1】van der Giessen, WJ.et al. Marked inflammatory sequelae to implantation of biodegradable and non-biodegradable polymers in porcine coronary arteries、Circulation, 1996:94(7): 1690-7
【非特許文献2】Davies, P.F., Robotewskyi A., Griem M.L. Endothelial cell adhesion in real time., J. Clin. Invest. 1993; 91:2640-2652, Davies, P.F., Robotewski, A., Griem, M.L., Qualitiative studies of endothelical cell adhesion, J.Clin. Invest. 1994; 93:2031-2038
【非特許文献3】H. Holleck, V. Schier: Multilayer PVD coatings for wear protection, Sufface and Coatings Technology, Vol. 76-77 (1995) pp. 328-336
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
通常、内皮細胞(EC)は泳動して、合流が達成されるまで裸出域を覆うように増殖する。増殖より量的に重要な泳動は、ほぼ25μm/hrの率において、または通常は10μmであるECの直径の2.5倍における通常の血流量下において進行する。ECは、細部メンブレンインテグリン受容体のクラスタ、具体的には病巣接触点に添付された細胞内フィラメントの複雑なシステムによって調整される細胞メンブレンの回転運動によって泳動する。病巣接触点部位内のインテグリンは、複雑なシグナリング機構によって表され、基板接着分子の特定のアミノ酸配列に最終的に結合する。ECは、インテグリンクラスタによって表される細胞表面のほぼ16〜22%を有する(たとえば、非特許文献2参照)。これは、30分で50%を超えるリモデリングを示唆する動的プロセスである。病巣接着接触はサイズおよび分布が変化するが、その80%は6μm2未満と測定され、その大部分は約1μm2であり、流れの方向において伸張し、かつ細胞の前縁において集中する傾向がある。添付部位に対する特定添付受容体の応答を決定する認識およびシグナリングのプロセスの理解は不完全であるが、添付部位の利用可能性は、添付および泳動に有利に影響を与える。ポリマーなど、医療用移植片として一般に使用される材料は、ECで覆われず、したがって動脈に配置された後に治癒しないことが既知である。したがって、本発明の目的は、より優れた治癒応答を有し、かつECカバレージにより快適であり、さらに完全に治癒することができる金属製膜材料でポリマーインプラント材料を置換することである。さらに、血流と接触する本発明の金属性膜材料の不均一性は、デバイス形成材料の真空蒸着中に使用される処理パラメータに対して制御を及ぼすことによって制御されることが好ましい。
【0013】
ステントをポリマー材料で覆うこと(たとえば、特許文献1参照)、ダイアモンド形の炭素コーティングをステントの上に付与すること(たとえば、特許文献2参照)、疎水性部分をヘパリン分子に共有結合すること(たとえば、特許文献3参照)、ジルコニウム酸化物またはジルコニウム窒化物を黒くするために青の層でステントをコーティングすること(たとえば、特許文献4参照)、ステントを乱層炭素の層でコーティングすること(たとえば、特許文献5参照)、ステントの組織接触表面を群VB金属の薄層でコーティングすること(たとえば、特許文献6参照)、チタンまたはTi−Nb−Zr合金などのチタン合金の多孔性コーティングをステントの表面上に付与すること(たとえば、特許文献7参照米国)、超音波条件下において、ステントをヘパリン、内皮導出成長因子、血管成長因子、シリコン、ポリウレタン、またはポリテトラフルオロエチレンなどの合成活性剤もしくは生物活性剤または合成不活性剤もしくは生物非活性剤でコーティングすること(たとえば、特許文献8参照)、ビニル機能を有するシラン化合物でステントをコーティングし、次いでシラン化合物のビニル基と重合することによって移植片ポリマーを形成すること(たとえば、特許文献9参照)、モノマー、オリゴマー、またはポリマーの特性をステントに付与するために、赤外線放射、マイクロ波放射、または高電圧重合を使用してモノマー、オリゴマー、またはポリマーをステントの表面上に移植すること(たとえば、特許文献10参照)を含めて、ステントなどの埋込み医療用デバイスの内皮化を推進する多くの試行が行われてきた。しかし、すべてのこれらの手法は、ポリマー移植片の内皮化の欠如には対処していない。
【0014】
したがって、材料の機械的特性、物理的特性、および化学的特性を制御するような方式で製作された本発明の金属製材料および/または擬似金属製材料を製作することが望ましい。本発明の金属デバイスは、ステンレススチールまたはニチノールハイポチューブなど、既存の従来の鍛錬金属性材料で製作することが可能であり、あるいは、物理蒸着(phisical vapor deposition)または化学蒸着(chemical vapor deposition)など、真空蒸着(vacuum vapor deposition)技法によって製作することが可能である。本発明によれば、真空蒸着によって本発明の埋込み型デバイスを製作することが好ましい。真空蒸着により、結果として形成されるデバイスの多くの材料の特徴および特性に対するより優れた制御が可能になる。たとえば、真空蒸着により、粒状物のサイズ、粒状物の相、粒状物の材料組成、バルクな材料組成、表面のトポグラフィ、形状記憶合金の場合の遷移温度などの機械的特性に対する制御が可能になる。さらに、真空蒸着プロセスにより、埋込みデバイスの材料特性、機械的特性、または生物学的特性に悪影響を与える大量の汚染物質を導入せずに、より優れた材料純度を有するデバイスを創出することが可能になる。真空蒸着技法はまた、従来の冷間加工技法による製造で可能であるより複雑なデバイスを製作するのに役立つ。たとえば、多層構造、複雑な幾何学的構成、厚さまたは表面の一様性などの材料の公差に対する極度に微細な制御は、真空蒸着処理のすべての利点である。
【0015】
真空蒸着技法では、材料は、たとえば平面、管状など、正に所望の幾何学的形状で形成される。真空蒸着プロセスの共通の原理は、既知のペレットまたは厚いフォイルなど、最小限に処理された形態で材料を原材料として取り入れ、それらを霧化(atomization)することである。霧化は、たとえば、物理蒸着の場合のように熱を使用して、またはスパッタ蒸着の場合のように衝突プロセスの効果を使用して実施することが可能である。蒸着のいくつかの形態では、通常は1つまたは複数の原子からなる微粒子を創出するレーザアブレーションなどのプロセスが、霧化に代わることが可能である。粒子あたりの原子の数は、数千以上とすることが可能である。次いで、原材料の原子または粒子は、所望の物体を正に形成するように基板またはマンドレルの上に蒸着される。他の蒸着方法では、真空室に導入された周囲気体、すなわち気体源と付着原子および/または粒子との間の化学反応が、蒸着プロセスの一部である。蒸着材料は、化学蒸着の場合においてなど、固体源と気体源との反応により形成される化合物種を含む。ほとんどの場合、蒸着材料は、次いで、所望の産物を形成するために、一部または完全に基板から除去される。
【0016】
真空蒸着処理の第1の利点は、金属製膜および/または擬似金属製膜の真空蒸着により、緊密なプロセス制御が可能になり、かつ流体接触表面に沿って規則的で一様な原子および分子の分布パターンを有する膜を付着させることが可能であることである。真空蒸着処理において使用される異なるプロセスパラメータは、制御された材料特性、原子および分子の構成、および制御された表面の不均一性を有する金属製膜および/または擬似金属製膜を製作達成するように制御することが可能である。結果として得られる付着膜の特性に対して制御を及ぼすことにおいて制御することが可能であるプロセスパラメータには、たとえば、対象物の組成、形状、および構成、対象物および/または基板の温度、蒸着率、マグネトロンの形状および構成、磁場の形状および強度、印加電場の強度、蒸着中の気体の分圧、室の圧力、基板の組成および/またはトポグラフィ、あるいは真空室の構成がある。デバイス形成膜の真空蒸着は、表面の組成の顕著な変化を回避して、予測可能な酸化および有機吸着パターンを創出し、水、電解質、タンパク質、および細胞との予測可能な相互作用を有する。具体的には、EC泳動は、阻害されない泳動および添付を促進するために、天然または埋込みの細胞添付部位として作用する結合ドメインの一様な分布によって支持される。
【0017】
第2に、これ以後層と呼ばれる単一の金属または金属合金から作成される材料およびデバイスに加えて、本発明の移植片は、生体適合性材料の層、または重ねて自己支持多層構造に形成された生体適合性材料の複数の層からなることが可能であるが、その理由は、多層構造は、一般に、シート材料の機械的強度を増大させる、または超弾性、形状記憶、放射線不透過性、耐腐食性などの特別な特性を有する層を含むことによって特別な品質を提供することが既知であるからである。真空蒸着技法の特別な利点は、層状材料を付着させることが可能であり、したがって、例外的な品質を有する膜を作成することが可能であることである(たとえば、非特許文献3参照)。超構造または多層などの層状材料は、材料のある化学的特性、電子的特性、または光学的特性をコーティングとして利用するために一般に付着される。一般的な例は、光学レンズの上の反射防止コーティングである。多層はまた、薄膜の機械的特性、具体的には硬度および靭性を増大させるために、薄膜製作の分野において使用される。
【0018】
第3に、本発明の移植片の可能な構成および応用分野の設計可能性は、ナノ製作方法を使用することによって大きく向上する。真空蒸着は、従来の鍛錬製作技法を使用することによっては高い費用効果で達成することができない、またはいくつかの場合には全く達成することができない潜在的に複雑な3次元の幾何学的形状および構造を有するほぼ一様な薄い材料の製作に役立つ付加技法である。さらに、非限定的に化学エッチングおよびレーザエッチングまたは放電機械加工(EDM)を含む、フォトリソグラフィ、エッチングなどの減算プロセスが、既存の膜から材料を選択的に除去して、膜において10-8から10-10などの非常に小さい規模の特徴を創出するために使用されることが可能である。
【0019】
反対に、従来の鍛錬金属製作技法は、精錬、熱間加工、冷間加工、熱処置、高温アニーリング、沈殿アニーリング、研削、アブレーション、湿潤エッチング、乾燥エッチング、切断、および溶接を必要とする可能性がある。これらの処理ステップのすべては、汚染、材料特性の低下、最終的な達成可能な構成、寸法、および公差、生体適合性、ならびにコストを含めて、欠点を有する。たとえば、従来の鍛錬プロセスは、約20mmの直径より大きい直径を有する管の製作には適しておらず、またそのようなプロセスは、μm以下の公差を有する最低で約5μmまでの壁の厚さを有する材料の製作にも適していない。
【0020】
本発明の金属または擬似金属の医薬品放出移植片は、本発明について考慮される最適モードにより従来通りに製作された鍛錬材料で製作することが可能であるが、本発明の医薬品放出移植片は、真空蒸着技法によって製作されることが好ましい。本発明の医薬品放出移植片の先駆物質材料として金属膜および/または擬似金属製膜を真空蒸着することによって、従来通りに作成された移植片形成材料で可能であるものより厳密に、結果として得られる膜材料および移植片の材料、生体適合性、および機械的特性を制御することが可能である。本発明の自己支持移植片は、単独で使用することが可能である。すなわち、埋込み型デバイス全体は、単一の移植片で作成することが可能であり、または、移植片が他の移植片と関連して、もしくは骨格、ステント、および他のデバイスなどの他の構造要素と関連して使用される場合、構造の一部とすることが可能である。「関連して」という用語は、溶接、融合、または他の接合方法によって作成されるもの、ならびに部品のある領域を移植片に形成し、かつ部品のある他の領域を他の部材またはデバイスの一部に形成することによって材料の同じ部品から作成されるものなど、実際の接続を意味することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、約1mμから約75mμの間の壁の厚さを有する自己支持移植片部材が提供され、複数の微細孔が移植片の壁の厚さを通過し、複数の封入ポケットが微細孔の隣接対間に配置され、移植片の壁の厚さの内部に形成され、または移植片の表面上に形成され、各封入ポケット内の封入室と封入ポケットの外部との間を連絡する複数の医薬品放出開口を有する。移植片部材は、シート、管、またはリングを含めて、事実上あらゆる幾何学的形状の構成を想定することが可能であるが、ほぼ管状の構成として提供されることが好ましい。複数の微細孔は、幾何学的コンプライアンスを移植片に付与し、幾何学的膨張性(distendability)を移植片に付与し、かつ/または通常の生理学的条件下において移植片の壁を通る流体の流れを防止しながら経壁内皮化を促進するなど、移植片を通る体液または生物学的物質の通過を限定もしくは許可するように作用する。複数の微細孔はまた、血管移植片の場合の縦方向柔軟性について必要にされるものなど、しなやかさおよび/または弾性、可塑性、超弾性のコンプライアンスを移植片に付与することによって、ファブリック様の品質を移植片に付与する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、医薬品放出ポケットは、微細孔の隣接対の中間に配置され、かつ完全に移植片材料の壁の厚さで存在し、さらに移植片材料によって完全に境界を画定され、少なくとも1つの開口が、医薬品放出ポケット内の内部室と移植片の外部との間を連絡する。
【0023】
本発明の代替実施形態によれば、医薬品放出ポケットは、移植片の第1表面または第2表面の上に配置され、医薬品放出ポケットは、移植片材料によって完全にではなく少なくとも1つの表面上において境界を画定され、少なくとも1つの開口が、医薬品放出ポケットの内の室と移植片の外部との間を連絡する。
【0024】
第1実施形態では、移植片は、力を加える際、微細孔が、手術用パッチ移植片などの平面移植片の場合の長さ、または血管移植片などの管状移植片の場合の直径など、移植片の1つまたは複数の軸の永続的な伸張を付与するように、幾何学的に変形するように可塑性変形可能な材料からなってよい。第2実施形態では、移植片は、弾性または超弾性の材料で製作することが可能である。弾性および/または超弾性の材料により、微細孔は、移植片の1つまたは複数の軸の回復可能な変化を見込む方式で、力が加えられる際に幾何学的に変形することが可能になる。
【0025】
加えられた力はまた、埋込み型材料の医薬品放出室と連絡する埋込み型材料の開口を変形させ、それにより、埋込み型材料から医薬品を放出させるために使用することも可能である。たとえば、カテーテルの上に取り付けられた風船が、埋込み型材料に加えられる力の源として使用されることが可能である。
【0026】
医薬品放出ポケットの位置および構造は、複数の微細孔が幾何学的に変形することにより加えられた力が医薬品放出ポケットに伝達されるのを可能にするように制御することができ、それにより、ポンピング様の力を加えて医薬品放出ポケット内の薬剤の計量投与量を放出するように作用する。代替として、ポケットは、医薬品放出移植片の幾何学的変形中に薬剤の放出を防止するために、複数の微細孔の幾何学的変形の結果であるひずみから隔離されることが可能である。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、ほぼ一様なカバレージ、およびデバイスのすべての軸の回りでの放出を提供するように、デバイスの周方向軸および縦軸の周りに均等に分布して医薬品放出ポケットを配置することが望ましい。しかし、本発明の代替実施形態によれば、医薬品放出ポケットは、デバイスの異なる縦方向または周方向の領域がより高いまたはより低い医薬品放出ポケットの密度および分布を有するように配置することが可能である。デバイスの軸に沿った位置に対して医薬品放出ポケットの位置、密度、サイズ、および分布を変化させることによって、医薬品投与量は、医薬品放出ポケットの位置の関数として制御することが可能である。
【0028】
現在のポリマーコーティング医薬品放出ステントでは、医薬品は、ポリマーの周囲に、かつデバイスの長さに沿って、ほぼ一様に放出される。しかし、医薬品が放出されるのが可能であるポリマー表面積がわずかであるデバイスの近位端部および遠位端部では、放出された医薬品の濃度は著しく低減する。これに対して、本発明では、医薬品放出ポケットの位置は、指向的に医薬品を放出するように、すなわち、管腔側において、反管腔側において(abluminally)、デバイスの縦方向または周方向軸に沿った選択位置において、あるいはデバイスの近位端部および遠位端部のどちらかまたは両方から医薬品を放出するように、デバイスの設計および製作中に選択することが可能である。
【0029】
本発明の第1実施形態および第2実施形態のそれぞれにおいて、移植片は、膜の厚さ、材料の特性、および複数の微細孔の幾何学的形状を制御することによって、ファブリック様の品質を有するような方式で製作することが可能である。さらに、血管移植片の管腔内送達のためなど、最小浸襲性送達が必要とされるような場合、第1実施形態および第2実施形態は、それぞれ風船の膨張および自己膨張、または両方の組合せを使用して送達することを見込む。最小浸襲性送達はまた、血管形成風船がしわになる、溝が作られる、または折りたたまれるのと同様に、送達のために移植片を折りたたむことによって達成することも可能である。移植片は、風船を使用することなどによる補助によって、または移植片材料の可塑的、弾性的、もしくは超弾性的な特性によって、またはその組合せによって、生体内でデバイスを広げることによって送達することが可能である。複数の微細孔は、径方向膨張正圧などの弾性的または可塑的な変形によって、生体内で医薬品放出移植片部材のさらなる寸法拡大を見込むような方式でパターニングすることが可能である。
【0030】
いくつかの応用分野では、複数の微細孔のそれぞれのサイズは、流体の流れが通ることを可能にせずに、細胞が各開口を通って泳動することを可能にするようなものであることが好ましい。このようにして、たとえば、血液は、複数の微細孔を通って流れることはできないが(その変形状態または無変形状態において)、様々な細胞またはタンパク質は、生体内での移植片の治癒を促進するために、複数の微細孔を自由に通過することが可能である。他の応用分野では、複数の変形または無変形の微細孔を通る中程度の量の流体の流れが許容可能であり得る。たとえば、管腔内伏在静脈移植片が、経壁内皮化を可能にし、一方また血栓などの生物学的破片が移植片の壁の厚さを通過することを排除して、有害物質が循環に入るのを有効に排除する2重機能を果たす微細孔を有して製作されることが可能である。この例では、変形状態または無変形状態の複数の微細孔のそれぞれは、数百ミクロンを超えることが可能である。
【0031】
当業者なら、埋込み型移植片のポアのサイズと膨張または変形の全体的な率との間に直接的な関係が存在することを理解するであろう。したがって一般に、ポアのサイズは、移植片の膨張または変形の有効な達成可能な程度を向上させるために、増大しなければならないことが理解される。
【0032】
大きな変形および小さいポアサイズが両方とも必要である応用分野では、本発明の移植片の実施形態の他の態様によれば、管状構成のための反対方向に同心状の移植片など、2つ以上の移植片の部材が使用されることが考慮される。2つ以上の移植片部材は、それを通過する複数の微細孔のパターンを有し、複数のパターニングされた微細孔は、同心状に係合した第1移植片部材および第2移植片部材の壁を通る蛇行性細胞泳動経路、ならびにより小さい有効ポアサイズを創出するためなど、互いにずれて配置される。2つ以上の移植片部材は、それぞれ、医薬品放出移植片、または医薬品放出移植片と非医薬品放出移植片の組合せとすることが可能である。たとえば、管腔移植片のみが、薬理活性剤を血流の中に放出するように医薬品放出性であることが可能であり、一方、同心状に配置された非放出移植片が反管腔側移植片であることが可能である。代替として、反管腔側移植片が医薬品を放出し、管腔移植片が非放出性であるように、管腔移植片と反管腔側移植片の相対位置を交換することが可能である。
【0033】
生体内での第1移植片部材および第2移植片部材を経た細胞泳動ならびに第1移植片部材および第2移植片部材治癒を容易にするために、第1移植片部材および第2移植片部材において複数の微細孔間を連絡する追加の細胞泳動経路を提供することが好ましい可能性がある。これらの追加の細胞泳動経路は、必要であれば、1)スペーサとして作用し、かつ第1移植片部材および第2移植片部材において複数の微細孔間の細胞泳動および細胞連絡を可能にする環状開口を第1移植片部材と第2移植片部材との間に維持するように作用する、第2移植片の管腔側表面または第1移植片の反管腔側表面、あるいは両表面の上に形成された複数の突出として、2)第1移植片部材および第2移植片部材の縦軸に対して無作為、径方向、らせん方向、または縦方向とすることが可能である複数の微細溝であって、溝に沿った細胞泳動および伝播を可能にするのに十分なサイズであり、第1移植片部材および第2移植片部材において複数の微細孔間の細胞泳動導管として作用する複数の微細溝として、または3)微細孔が変形時に移植片材料の平面外運動を付与するように設計され、それにより、移植片の対面表面を当初画定する平面間に十分に画定された空間を維持する場合、付与することが可能である。
【0034】
医薬品放出移植片部材または非放出移植片部材のそれぞれは、単一層膜として形成されることが可能であり、あるいは、互いの上に形成された複数の膜層から形成されることが可能である。生体適合性金属および/または擬似金属の各層を形成するために使用される特定の材料は、生体適合性、耐腐食疲労性、および機械的特性、すなわち張力強度、歩留まり強度について選択される。金属には、以下のチタン、バナジウム、アルミニウム、ニッケル、タンタル、ジルコニウム、クロム、銀、金、シリコン、マグネシウム、ニオブ、スカンジウム、白金、コバルト、パラジウム、マンガン、モリブデン、ならびにジルコニウム−チタン−タンタル合金、ニチノール、およびステンレススチールなどのその合金があるが、これに限定されるものではない。さらに、移植片を形成するために使用される各材料層は、タンタル、金、または放射性同位体でドープすることによって、放射線不透過性または放射能などの材料の特性を向上させるために、他の材料でドープすることが可能である。代替として、擬似金属製材料は、ポリマー、炭素ファイバ、またはセラミックを含むことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
上記を背景として、ここで好ましい実施形態を参照し、かつ付随する図を参照して本発明を説明する。上記で示したように、本発明の微孔金属性埋込み型デバイスは、たとえば平面シート、管、トロイド、または他の幾何学的構成を含めて、多数の幾何学的構成を想定することが可能である。しかし、言及を容易にするために、添付の図および以下の本発明の説明は、管状の埋込み型移植片部材に言及する。しかし、当業者なら、これは単に例示的な幾何学的構成であり、本発明の範囲を管状部材に限定する、または移植片部材への適用に限定されることを意図するものではないことを理解するであろう。
【0036】
図1〜図2を特に参照すると、本発明の埋込み型医療用デバイス10は、移植片として示されている。デバイス10は、本明細書では、本発明の埋込み型医療用デバイスの非限定的な例としてのみ説明され、本発明の埋込み型医療用デバイスは、他の幾何学的形状を想定することが可能であり、かつ他の応用分野または示唆について使用されることが可能であることが理解されるであろう。デバイス10は、一般に、コヒーレントな金属材料または擬似金属製材料を備え、かつ第1表面14および第2表面16、ならびに第1表面14と第2表面16の間の厚さ18を有する本体部材12からなる。複数の微細孔20が提供され、本体部材12の第1表面14、第2表面16、または厚さ18の少なくとも1つを通過し、本体部材12の孔間領域22が、微細孔20の隣接対間に存在する。複数の微細孔20は、それぞれ、外部から加えられた負荷が加えられるもしくは解放される状態において、または形状記憶もしくは超弾性変化などの材料の相変化の際に、幾何学的形状の変化を受けやすい幾何学的構成を有することが可能である。代替として、複数の微細孔20は、ファブリック様の品質およびコンプライアンスをデバイス10の材料に付与するパターンおよび幾何学的構成を有することが可能である。複数の医薬品放出室15が、微細孔20の隣接対の中間の孔間領域22において提供され、医薬品放出室15と連絡する流体の流れにおいて少なくとも1つの微細孔20を経て放出される薬理活性剤24を保持する。
【0037】
無変形状態にある複数の微細孔20のそれぞれは、約2mm2未満の開表面積を有することが好ましく、無変形状態の移植片の全開表面積は、0.001から99%の間にある。複数の微細孔の開表面積および移植片の開表面積は、複数の微細孔20が変形する際にかなり変化する可能性がある。変形状態および無変形状態にある微細孔20のサイズ、および変形状態および無変形状態にある本体部材12の全開表面積は、移植片応用分野に基づいて以下の非排他的因子を考慮して選択することが可能である。すなわち、1)デバイス10の望ましいコンプライアンス、2)デバイス10の所望の強度、3)デバイス10の所望の剛性、4)変形時の微細孔20の幾何学的拡大の所望の程度、5)血管移植片を有するようないくつかの場合、所望の送達プロファイルおよび送達後プロファイル、ならびに6)医薬品放出ポケットから薬理活性剤を送達するための医薬品放出プロファイルである。
【0038】
本発明の好ましい実施形態によれば、複数の微細孔20は、デバイス10の変形を可能にするが、デバイス10の変形を必要とはしない本体部材の領域を画定するような方式でパターニングされる。厚さ18は、0.1μmと75μmの間、好ましくは1μmと50μmの間である。これらの厚さの範囲内で製作されるとき、デバイス10は、従来の非金属性埋込み型移植片の壁の厚さおよび従来の金属管腔内ステントの壁の厚さより薄い厚さ18を有する。
【0039】
複数の微細孔20は、本体部材12の縦軸および周方向軸の両方において微細孔20の規則アレイを形成する規則アレイにおいてパターニングされる。言及のために、微細孔20のパターンは、これ以後、管状部材では管状部材の縦軸または周方向軸に対応する平面X−Y軸に関して説明される。当業者なら、管状部材に適用されるときのX軸またはY軸の言及は、「X軸」という用語が管状部材の縦軸または周方向に対応することが可能であり、「Y軸」という用語が管状部材の対応する周方向または縦軸を指すことが可能であるように使用されできることを理解するであろう。
【0040】
当業者なら、個々の異なる幾何学的パターンは、特定のデバイスの関連する意図した用途、機能、または機械的要件を有することが可能であることを理解するであろう。したがって、本発明のデバイス10の特定の意図した用途は、複数の微細孔20の特定の幾何学的パターンを選択する際の考慮事項である。たとえば、本発明のデバイス10が独立式埋込み型管腔内血管移植片として使用されることを意図する場合、大きな周方向膨張率および縦方向の柔軟性が望ましい可能性がある。したがって、これらの特性を提供する複数の微細孔20の特定の幾何学的形状が選択される。複数の微細孔20はまた、本発明のデバイス10の材料特性にも影響を与える。たとえば、各微細孔20の幾何学的形状は、各微細孔20が応力ひずみ緩和能力を示すように変化させることが可能であり、または、微細孔20は、微細孔20の幾何学的変形が可塑的、弾性的、または超弾性的な変形であっても、制御することが可能である。したがって、個々の微細孔20の幾何学的形状、デバイス10のX−Y軸に対する微細孔20の配向、および微細孔20のパターンのどれも、デバイス10の機械的特性および材料特性を直接付与する、それらに影響を与える、またはそれらを制御するように選択することが可能である。
【0041】
複数の医薬品放出室15は、本体部材12の厚さ18の内部に完全に位置することが可能であり、本体部材12の厚さ18に完全に位置せず、かつ本体部材12の第1表面14もしくは第2表面またはその両方に近接してあることが可能であり、あるいは、第1表面14および第2表面16の少なくとも一方にあり、かつ第1表面14と第2表面16との間に封入される凹みによって画定されることが可能である。当業者なら、第1表面14および第2表面16は、単一部材の対向表面とすることが可能であり、または、図5の透視線37によって示されるように互いに隣接して配置された複数の部材の表面とすることが可能であることを理解するであろう。
【0042】
適切な薬理活性剤には、パクリタキセル、タキソール、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、(たとえば、特許文献11参照)、シロリムス、ラパミューン、タクロリムス、デキサメタゾン、エベロリムス、ABT−578(mTOR細胞周期調節タンパク質を阻害するラパマイシン類事物)、およびVEG−Fなどの成長因子があるが、これに限定されるものではない。薬理活性剤は、薬理的に許容可能なキャリアを使用することによって複数の医薬品放出室15に装填することが可能である。本明細書において使用される「薬理活性剤」という用語は、「医薬品」と同義語として使用される。
【0043】
薬理活性剤は、いくつかの方式で、および任意の生体適合性材料を使用して、デバイス10に組み込む、または添付することが可能である。薬理活性剤は、ポリマーまたはポリマーマトリックスなどに組み込んで、デバイスの上に噴霧することが可能である。薬理活性剤とポリマー材料の混合物が、溶媒または溶媒の混合物で準備され、浸漬コーティング、ブラシコーティング、および/または浸漬/スピンコーティングによってやはりデバイス10に加えることが可能であり、溶媒の成分は、捕捉された医薬品を有する膜を残すように蒸発することが可能である。医薬品が微細孔、ストラット、またはチャネルから送達されるステントの場合、ポリマーの溶液が、医薬品の放出を制御するために、外部層として付加的に追加されることが可能である。代替として、活性剤は、微細孔、ストラット、チャネル、または内部室において備えることが可能であり、活性補助剤は、外部層に組み込まれることが可能であり、逆もまた同じである。また、活性剤は、ステントの内部層において添付することが可能であり、活性補助剤は外部層において添付することも可能であり、逆もまた同じである。医薬品はまた、化学誘導を含めて、エステル、アミド、または無水物など、共有結合によってステントの表面に添付することも可能である。医薬品はまた、ナノ多孔性セラミックコーティングなど、生体適合性多孔性セラミックコーティングに組み込むことも可能である。本発明の医療用デバイスは、活性剤の放出と同時に、または活性剤の放出後、活性補助剤を放出するように構成される。
【0044】
ポリマー材料の例には、親水性、疎水性、または生体適合性の生分解性材料があり、たとえば、ポリカルボン酸;セルロースポリマー;スターチ、コラーゲン;ヒアルロン酸;ゼラチン;ポリラクチドなどのラクトンベースのポリエステルまたはコポリエステル;ポリグリコリド;ポリラクチド−グリコリド;ポリカプロラクトン;ポリカプロラクトン−グリコリド;ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリ(ヒドロキシバレレート);ポリヒドロキシ(ブチレート−コ−バレレート);ポリグリコリド−コ−トリメチレンカルボネート;ポリ(ジアキサノン);ポリオルソエステル;ポリアンヒドリド;ポリアミノ酸;ポリサッカライド;ポリホスホエーテル;ポリホスホエステル−ウレタン;ポリシアノアクリレート;ポリホスファゼン;PEO−PLLA、フィブリンなどのポリ(エーテル−エステル)コポリマー;フィブリノーゲン;またはその混合物;およびポリウレタンなどの生体適合性非劣化材料;ポリオレフィン;ポリエステル;ポリアミド;ポリカプロラクタン;ポリイミド;ポリ塩化ビニル;ポリビニルメチルエーテル;ビニルアルコール/エチレンコポリマーなどのポリビニルアルコールまたはビニルアルコール/オレフィンコポリマー;ポリアクリロニトリル;スチレンアクリロニトリルコポリマー、エチレンメチルメタクリレートコポリマーなどのオレフィンを有するビニルモノマーのポリスチレンコポリマー;ポリジメチルシクロヘキサン;ポリ(エチレン−ビニルアセテート);ポリブチルメタクリレート、ポリ(ヒドロキシエチルメチルメタクリレート)などのアクリレートベースのポリマーまたはコポリマー;ポリビニルピロリジノン;ポリテトラフルオエチレンなどのフッ化ポリマー;酢酸セルロース、窒化セルロース、またはプロピオン酸セルロースなどのセルロースエステル;あるいはその混合物である。
【0045】
ポリマーマトリックスが使用されるとき、これは、たとえば、エチレン−コ−ビニルアセテートおよびポリブチルメタクリレートなど、医薬品が組み込まれるベース層、および医薬品が存在せず、かつ医薬品の拡散制御として作用するポリブチルメタクリレートなどのトップコートの2層を備えることが可能である。代替として、活性剤は、ベース層に備えることが可能であり、活性補助剤は、外部層に組み込まれることが可能であり、逆もまた同じである。
【0046】
複数の医薬品放出室15および関連する複数の微細孔20は、デバイス10からのほぼ一様な医薬品送達プロファイルを達成するために、同様に寸法決めし、かつデバイス10の縦軸および周方向軸の両方沿ってほぼ一様に配置することが可能である。代替として、医薬品放出室15および関連する複数の微細孔20は、異なる投与量対位置の関係または投与量対時間の関係を提供するように、デバイス10の周方向軸および縦軸について異なるようにサイズ決めおよび配置することが可能である。さらに、複数の微細孔20の少なくともいくつかは、デバイスの外周からおよび/またはデバイス10の内周から医薬品を放出するために、デバイスの管腔表面および反管腔側表面のどちらかまたは両方の上に配置することが可能である。時間にわたる医薬品の濃度の放出は、医薬品を異なる放出率を可能にする異なる寸法決の微細孔20を提供することによって調節することが可能であり、延長時間にわたって所望の濃度プラトーを達成するように制御することが可能である。
【0047】
さらに、従来のポリマーコーティング医薬品放出ステントは、コーティングの周囲軸全体の周りに医薬品を放出する放出プロファイルを有し、デバイスの近位端部および遠位端部から著しく濃度が降下する。この濃度降下は、しばしば、「キャンディラッパ効果」として当技術分野において既知の端部再狭窄に関連する。医薬品放出室15および関連する微細孔20の位置決めについて多様なばらつきを可能にすることによって、医薬品放出の指向的な配向、位置、および濃度を本発明のデバイス10において制御することが可能になる。
【0048】
図1〜図2の複数の微細孔20の例示的で非限定的な幾何学的パターンが、図4Aに示されている。図4Aおよび4Bは、図4Aにおいて指向性矢印LおよびCによってそれぞれ示される縦軸Lおよび周方向軸Cを有する埋込み型医薬品放出デバイス30を示す。図4Bは、図4Aに示されたデバイス30の周方向軸Cに沿ってとられた横方向断面図である。デバイス30の縦軸Lに平行な共通の配向を有する複数の第1の細長い微細孔32が提供され、デバイス30の厚さならびにその第1表面および/または第2表面31を通過する。第1の細長い微細孔32の周方向に隣接する対が縦方向にずれ、それにより、各細長い微細孔32の末端は、隣接する第1の細長い微細孔32の中間領域に周方向に隣接して位置する。
【0049】
複数の第2の細長い微細孔34が提供され、デバイス30の周方向軸Cに平行な共通の配向を有し、かつデバイス30の厚さおよびその第1表面または第2表面31を通過する。単一の第2の細長い微細孔34が、第1の細長い微細孔32の隣接対の中間に位置し、第2の細長い微細孔32の各末端は、周方向に隣接する第1の細長い微細孔32の中間領域の近傍に位置する。
【0050】
第1および第2の全体的に細長い微細孔32、34のそれぞれは、各細長い微細孔32、34の各対向端部の上に末端フィレット35を有することが好ましい。末端フィレット35は、隣接スロット32と34の間の中間領域22を通るひずみの分布を補助するひずみ軽減機能を果たす。
【0051】
当業者なら、微細孔20のそれぞれは、広範な幾何学的構成、寸法、および表面積のいずれかを有することが可能であり、かつ図4Aおよび4Bの例示的な構成の細長いスロット構成が例示のためのみであることを理解するであろう。代替の微細孔20の幾何学的形状が開示されており(たとえば、特許文献12、いずれも2002年9月26日に出願された米国特許出願第10/135316号明細書および第10/135626号明細書、特許文献13参照)、いずれも「Implantable Graft and Methods of Making Same」という名称であり、いずれも本出願と共に同一出願人によるものであり、いずれも広範な適切な微細孔20の幾何学的形状を示すために参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0052】
複数の医薬品放出室36を提供することが、本発明にとって特に重要である。本発明の一実施形態によれば、図4Aおよび図5に示されるように、複数の医薬品放出室36は、デバイス30の厚さの完全に内部、デバイス30の第1表面31および第2表面33の中間に位置することが可能である。代替として、図3および図6に示されるように、医薬品放出室36は、デバイス10の第1表面21または第2表面22に隣接して位置し、かつ医薬品放出室36の封入キャップとして作用するデバイス材料46の第2層によって境界を画定されることが可能である。複数の開口20は、医薬品放出室36から医薬品を放出するのを可能にするように、デバイス材料46の第2層を通過して、医薬品放出室36と連絡することが好ましい。最後に、図7に示される第3実施形態によれば、医薬品放出室は、デバイス材料52の第1層において凹み56として形成されることが可能であり、次いで、凹み56は、少なくとも1つの開口58が凹み56の1つに位置的に対応するようにパターニングされた通過する複数の開口58を有するデバイス材料54の第2層によって覆われる。
【0053】
したがって、本発明の一実施形態は、生体適合性であり、折りたたむおよび広げることによって、または可塑性、弾性、もしくは超弾性の変形力を加えることによって幾何学的に変更可能であり、適切に小さい送達プロファイルで管腔内送達することができる新しい金属製および/または擬似金属製埋込み型移植片を提供する。本発明の移植片を製作するのに適切な金属材料は、生体適合性、機械的特性、すなわち張力強度、歩留まり強度、および製作の容易さについて選択される。本発明の移植片材料の曲げやすい性質は、適切な設計のマンドレルまたは固定具の上にわたって本発明の移植片を変形させることによって、移植片を複雑な形状に形成するために使用することが可能である。可塑的な変形および形状セッティング熱処置は、本発明の埋込み型部材10が所望の構造を保持することを保証するために使用することが可能である。
【0054】
本発明の移植片を作成する第1の好ましい方法によれば、医薬品放出デバイスは、複数の微細孔が中に形成される少なくとも2つの真空蒸着された金属製膜および/または擬似金属製膜で製作される。少なくとも2つの膜は、2つの膜の間の境界領域に内部室のパターンを形成するような方式で連合される。次いで、複数の放出開口が、少なくとも2つの膜の1つまたは両方を経て、かつ内部室のパターンと連絡して形成される。最後に、薬理活性剤が、放出開口を経て装填される。
【0055】
本発明のデバイスを作成する第2の好ましい方法によれば、デバイス形成材料の第1層が真空蒸着され、次いで、犠牲材料のパターンがデバイス形成材料の第1層の表面上に付与され、次いで、デバイス形成材料の第2層が、第1層および犠牲材料の上に真空蒸着される。複数の微細孔が、犠牲材料が存在する領域間においてデバイス形成材料の第1層および第2層を経て形成される。次いで、複数の放出開口が、デバイス形成材料の第1層および第2層の少なくとも一方を経て、かつ犠牲材料の領域と連絡して形成される。次いで、犠牲材料は、放出開口を経て犠牲材料に特有の化学エッチングなどによって除去される。次いで、薬理活性剤が放出開口を経て装填される。
【0056】
本発明の発明的医薬品放出デバイスを作成する方法50が、図8に示されている。従来通り製作されたまたは真空蒸着された生体適合性の金属材料または擬似金属製材料の第1材料ブランクが、ステップ52において提供される。犠牲材料が、デバイスの医薬品放出ポケットを形成するために使用される場合、犠牲材料は、ステップ56において第1材料ブランク上の医薬品放出ポケットの位置に対応するパターンで付着され、次いで、第2材料ブランクが、ステップ56において提供され、ステップ58において、ステップ52からの第1材料ブランクに連合される。材料のパターンを他の材料表面上に付着させる方法は、半導体処理の分野では周知であり、たとえば、フォトリソグラフィによって達成することが可能である。医薬品放出ポケットが、ステップ56において犠牲材料を使用することによって形成されない場合、ステップ52からの第1材料ブランクおよびステップ56からの第2材料ブランクは、介入犠牲材料を有さずにステップ58において連合される。連合ステップ58は、2つの方式の少なくとも一方で達成することが可能である。第1に、ステップ52からの第1材料ブランクは、第1材料ブランクと第2材料ブランクを並置して、医薬品放出室36の境界を画定する溶接のパターン37を孔内領域22において創出することによって、ステップからの第2材料ブランクに連合することが可能である(たとえば、図4Bおよび図5参照)。溶接のパターン37は、スポット溶接、レーザ溶接、超音波溶接、化学的接着、または2つの同様または異なる生体適合性の金属または擬似金属を接合するそのような他の適切な方法によって形成することが可能である。
【0057】
ステップ52からの第1材料ブランクをステップ54からの第2材料ブランクと連合する第2の方法は、第2材料ブランクを第1材料ブランクの上に真空蒸着するものである。この第2の方法では、ステップ56からの犠牲材料のパターンを使用することが望ましいが、その理由は、第2材料ブランクが第1材料ブランクのトポグラフィに従い、かつ、後に第1材料ブランクおよび第2材料ブランクの一部を除去せずに、第1材料ブランクおよび第2材料ブランクの付着層間に医薬品放出室を創出することは、現在既知の製作技法の下では技術的に実現不可能であるからである。このようにして、ステップ54からの第2材料ブランクは、ステップ52からの第1材料ブランクの上に、かつステップ56からの犠牲材料の上にわたって形成され、第1材料ブランクおよび犠牲材料のトポグラフィに従う。
【0058】
既存の第1材料ブランクと第2材料ブランクを接合し、溶接接合部によって医薬品放出室の境界を画定する第1方法の下では、医薬品放出室と連絡する複数の開口が、第1材料ブランクと第2材料ブランクが連合された後、ステップ60において形成されることが可能であり、または、ステップ60とそれぞれステップ52および54との間の2重頭矢印によって示されるように材料を接合する前にステップ60において形成されることが可能である。ステップ54において第1材料ブランクおよび犠牲材料の上に第2材料を真空蒸着させる第2の方法の下では、ステップ60、すなわち医薬品放出室と連絡する複数の開口の形成は、第1材料ブランクおよび第2材料ブランクがステップ58において実施された後に行われることが必要であり、それにより、第1材料ブランクおよび第2材料ブランクのどちらかまたは両方の付着、ならびに犠牲材料の付着は、複数の開口を閉塞するまたは塞がずに行うことが可能である。
【0059】
複数の内部室が、第1材料ブランクおよび第2材料ブランクが互いに溶接される連合ステップ58の一体的結果として、または、ステップ60において形成された複数の開口を経て犠牲材料を除去する結果として、ステップ62において創出される。最後に、薬理活性剤が、本発明の医薬品放出室を作成する最終ステップとして、ステップ64において医薬品放出室の中に装填されることが可能である。
【0060】
第1材料ブランクおよび第2材料ブランクのどちらかまたは両方における複数の微細孔は、材料が連合される前または後に形成することが可能である。真空蒸着プロセスが方法の実施において使用される場合、当業者なら、第1第2材料ブランクおよび第2材料ブランクがステップ58において連合された後に複数の微細孔を形成することがより良好であることに気づくであろう。第1材料ブランクおよび第2材料ブランクが溶接によって連合される場合、当業者なら、第1材料ブランクと第2材料ブランクを連合する前に複数の微細孔を形成することがより望ましいことに気づくであろう。
【0061】
複数の微細孔は、複数の微細孔を画定する領域のみを暴露させるように、材料ブランクをマスクすることによって形成することが可能である。次いで、暴露領域は、エッチング剤が先駆物質ブランクの材料に基づいて選択される湿潤または乾燥化学エッチング処理など、エッチングによって、またはレーザアブレーションもしくはEDMなどの機械加工によって除去される。代替として、真空蒸着技法を使用するとき、複数の微細孔に対応するパターンマスクが、対象物と源との間に挿入され、金属または擬似金属が、パターニングされた微細孔を形成するように、パターンマスクを経て付着されることが可能である。さらに、真空蒸着を使用するとき、複数の膜層が、複数の微細孔を形成する前に、または複数の微細孔を形成するのと同時に、膜の多層膜構造を形成するように付着されることが可能である。代替として、材料ブランクの複数の層が使用され、溶接によって連合されることが可能である。しかし、当業者なら、デバイスのプロファイルの問題は、従来の頻真空蒸着生産方法を使用して約0.1μmから約15μmの間の大きさの超薄材料ブランクを作成するのが困難であるために非真空蒸着材料ブランクが採用される方法を使用することに付随する可能性が高いことを理解するであろう。
【0062】
したがって、本発明は、生体適合性でコンプライアントであり、折りたたむおよび広げることによって、あるいは可塑的、弾性的、または超弾性的な変形力を加えることによって幾何学的に変化可能であり、いくつかの場合は適切に小さい送達プロファイルおよび適切に低い送達後プロファイルを有して管腔内送達することができる広範な医薬品送達デバイスを形成する新しい金属製および/または擬似金属製の埋込み型医薬品放出材料を提供する。本発明の移植片を製作するのに適切な金属材料は、生体適合性、機械特性、つまり張力強度、歩留まり強度および真空蒸着が展開される場合は付着の容易さについて選択され、以下のチタン、バナジウム、アルミニウム、ニッケル、タンタル、ジルコニウム、クロム、銀、金、シリコン、マグネシウム、ニオブ、スカンジウム、白金、コバルト、パラジウム、マンガン、モリブデン、およびジルコニウム−チタン−タンタル合金、ニチノール、クロム−コバルト合金、およびステンレススチールなどのその合金があるが、これに限定されるものではない。本発明について潜在的に有用な擬似金属製材料の例には、たとえば、複合材料およびセラミックがある。
【0063】
本発明はまた、金属または擬似金属材料ブランクを真空蒸着することと、エッチング、EDM、アブレーション、または他の同様の方法など、付着材料のセクションを除去することによって、あるいは蒸着処理中に対象物と源との間において微細孔に対応するパターンマスクを挿入することによって、微細孔を形成することとによって本発明の医薬品送達材料を作成する方法も提供する。代替として、鍛錬ハイポチューブまたはシートなど、従来の非真空蒸着方法によって製造された既存の金属材料ブランクおよび/または擬似金属製材料ブランクを得ることが可能であり、微細孔は、エッチング、EDM、アブレーション、または他の同様の方法などによって、膜のセクションを除去することによって既存の金属膜および/または擬似金属製膜において形成されることが可能である。本発明の医薬品放出材料を形成するために多層膜構造を使用する利点は、離散層において異なる機能を付与することが可能であることである。たとえば、タンタルなどの放射線不透過性材料が、構造の1つの層を形成することが可能であり、一方、他の層は、所望の機械的特性および構造特性を有する移植片を提供するように選択される。
【0064】
真空蒸着されたニチノール管からデバイスが製作される本発明の微孔性金属性埋込み型医薬品放出デバイスを製作する好ましい実施形態によれば、円筒脱酸素化銅基板が提供される。基板は、基板の上の金属付着に適応するほぼ一様な表面トポグラフィを提供するように機械加工、および/または電解研磨される。円筒中空カソードマグネトロンスパッタリングデバイスが使用され、カソードは外面上にあり、基板はカソードの縦軸に沿って配置された。約50−50%のニッケル対チタンの原子率を有し、かつニッケルまたはチタンのワイヤを対象物にスポット溶接することによって調節することができるニッケル−チタン合金からなるニッケルチタン合金円筒対象物、またはニッケル円筒の内表面にスポット溶接された複数のチタンストリップを有するニッケル円筒、またはチタン円筒の内表面にスポット溶接された複数のニッケルストリップを有するチタン円筒が提供される。スパッタ付着の分野では、対象物とカソード内の冷却ジャケットとの間に熱接触を維持することによって蒸着室内において対象物を冷却することが既知である。本発明によれば、カソード内において対象物を冷却ジャケットから熱隔離し、一方電気接触を対象物に提供することによって、熱冷却を低減することが有用であることが判明している。対象物を冷却ジャケットから隔離することによって、対象物は、反応室内において高温になることが可能になる。円筒対象物をカソードの冷却ジャケットから熱隔離する2つの方法が使用された。第1に、0.0381mmの直径を有する複数のワイヤが、対象物とカソード冷却ジャケットとの間に等価な間隔を提供するために、対象物の外周にスポット溶接された。第2に、管状セラミック隔離スリーブが、対象物の外周とカソード冷却ジャケットの間に挿入された。さらに、Ni−Tiスパッタリング歩留まりは対象物の温度に依存することがあるので、対象物が一様に高温になることを可能にする方法が好ましい。
【0065】
蒸着室は、約2〜5×10-7Torr以下の圧力に排気され、基板の事前洗浄が、真空下において行われる。蒸着中、基板の温度は、摂氏300度と摂氏700度の範囲内に維持されることが好ましい。0ボルト−1000ボルトの間、好ましくは−50ボルトと−150ボルトの間の負のバイアス電圧を基板に印加することが好ましく、これは、エネルギー種を基板の表面に到達させるのに十分である。蒸着中、気体の圧力は、0.1トールと40mトールの間に維持されるが、1mTorrと20mTorrの間であることが好ましい。スパッタリングは、アルゴン大気が存在する状態で行われることが好ましい。アルゴン気体は、高純度でなければならず、特別なポンプが、酸素の分圧を下げるために使用されることが可能である。蒸着時間は、蒸着された管状膜の所望の厚さに応じて変化する。
【0066】
第1材料の蒸着後、銅犠牲層が、第1材料の上に真空蒸着された。犠牲材料の所望のパターンに対応するフォトリソグラフィマスクが、銅犠牲層および硝酸に浸漬されたアセンブリ全体の上に加えられた。硝酸は、銅犠牲層の望ましくない層を特定的にエッチングして、医薬品放出室に対応する所望の犠牲領域のみを残す。化学エッチング、フォトエッチング、レーザエッチングなどのアブレーション技法、または電気放電機械加工(EDM)などの機械加工技法の他のモードが、犠牲材料の望ましくない領域を除去するために使用されることが可能である。
【0067】
ニッケル−チタンの第2層が、以上の手順に続いて、第1材料ブランクおよび犠牲銅の上に真空蒸着された。第2ニッケル−チタン層の蒸着後、複数の開口が、ニッケル−チタンの第2層を経て犠牲層の中にレーザ切断され、次いで、アセンブリ全体は、複数の開口を経て銅犠牲材料をエッチングするのに十分な時間期間、硝酸に浸漬され、ニッケル−チタン合金の第1層と第2層の間に複数の医薬品放出室を残した。
【0068】
本発明によれば、銅または6価クロムなど、非生体適合性犠牲金属を使用するとき、たとえば第1材料と犠牲材料の間、したがってパターニングされた犠牲材料と犠牲材料の上に蒸着された材料の第2層との間に拡散障壁を含むことが望ましいことが判明した。銅などのある金属は、真空蒸着条件下において、第1材料ブランクおよび第2材料ブランクの表面の中に拡散する傾向があることが判明した。非生体適合性金属の存在は望ましくないので、犠牲材料と共に除去可能である拡散障壁を挿入することは、最終デバイスにおける金属拡散および望ましくない金属の存在を防止するように作用する。適切な拡散障壁は、たとえば、チタン窒化物、シリコン酸化物、TiSiN、または自体は生体適合性であり、かつ除去を必要としないタンタルを含むことが可能である。
【0069】
蒸着後、複数の微細孔が、化学もしくはフォトエッチングなどのエッチング、エキシマレーザまたはEDMなどによるアブレーションによって、蒸着膜の領域を除去することによって管において形成される。複数の微細孔が形成された後、形成された微孔性膜は、銅基板を溶解させて除去するのに十分な時間期間、基板および膜を硝酸バスに暴露することによって銅基板から除去される。
【0070】
本発明は、好ましい実施形態に関して説明されたが、当業者なら、材料、寸法、幾何学的形状、および製作方法の変更が当技術分野において既知、または既知となり得るものであり、添付特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲内にとどまることを理解および認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の医薬品放出移植片の透視図である。
【図2】図1の線2−2に沿って取られた断片的断面図である。
【図3】移植片における室および開口のパターンを示す本発明の医薬品放出移植片の実施形態の断片的平面図である。
【図4A】移植片における室および開口のパターンを示す本発明の医薬品放出移植片の代替実施形態の断片的平面図である。
【図4B】図4Aの線4B−4Bに沿って取られた断面図である。
【図5】図4Aの線5−5に沿って取られた断片的断面図である。
【図6】図3の線6−6に沿って取られた断片的断面図である。
【図7】本発明の代替実施形態の断片的断面図である。
【図8】本発明の埋込み型医薬品放出医療用デバイスを作成する方法を示すプロセス流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.金属製材料および擬似金属製材料からなる群から選択された材料を含み、かつ第1表面、第2表面、および前記第1表面と前記第2表面の中間の厚さを有する本体部材と、
b.前記本体部材の前記厚さ内部に完全に配置された複数の封入室と、
c.前記第1表面および前記第2表面の少なくとも一方を通過し、かつ前記複数の封入室の1つと連絡する少なくとも1つの開口と、
d.前記複数の封入室の内部に配置され、かつ前記少なくとも1つの開口を経て放出可能である少なくとも1つの薬理活性剤とを備えることを特徴とする医薬品放出医療用デバイス。
【請求項2】
前記本体部材が、薄い金属性膜をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項3】
前記本体部材の前記材料が、チタン、バナジウム、アルミニウム、ニッケル、タンタル、ジルコニウム、クロム、銀、金、シリコン、マグネシウム、ニオブ、スカンジウム、白金、コバルト、パラジウム、マンガン、モリブデン、ならびにその合金、コバルトクロム合金、ステンレススチール、およびニッケルチタン合金からなる群から選択された金属製材料で作成されることを特徴とする請求項1に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項4】
複数の開口の前記少なくとも1つの開口を覆う生体適合性ポリマーをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項5】
前記本体部材の近位端部および遠位端部から前記少なくとも1つの薬理活性剤を指向的に放出するために、前記本体部材においてパターニングされた複数の開口をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項6】
前記複数の開口が、前記本体部材の縦軸および周方向軸の少なくとも一方に沿って異なる医薬品放出を提供するように、前記複数の開口がデバイスの縦軸および周方向軸の前記少なくとも一方の周りに配置されることを特徴とする請求項1に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項7】
前記複数の開口が、異なる医薬品放出率を提供するのに十分な異なる開口サイズを有することを特徴とする請求項6に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項8】
前記本体部材が管状部材をさらに備え、前記第1表面が前記管状部材の管腔表面をさらに備え、前記第2表面が前記管状部材の反管腔側表面をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項9】
複数の開口の前記少なくとも1つの開口が、前記管状部材の前記管腔表面および前記反管腔側表面の少なくとも一方を通過することを特徴とする請求項8に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項10】
前記複数の封入室が、前記管状部材の周方向軸および縦軸の周りにほぼ一様に分布することを特徴とする請求項1に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項11】
前記少なくとも1つの開口が、前記管状部材の前記反管腔側表面および前記管腔表面の少なくとも一方と連絡することを特徴とする請求項10に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項12】
前記少なくとも1つの薬理活性剤のポリマーキャリアをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの開口を少なくとも部分的に閉塞するポリマー材料をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項14】
ステント、被覆ステント、血管移植片、心臓血管パッチ、柔軟組織パッチ、手術用メンブレン、血管栓子、塞栓保護デバイス、心臓弁、静脈弁、血管形成風船、整形外科インプラント、歯科用インプラント、プラスチック再構築インプラント、陰茎インプラント、子宮内デバイス、および皮下インプラントからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項15】
前記本体部材が、前記第1表面を形成する第1層および前記第2表面を形成する第2層の少なくとも2つの材料層をさらに備え、前記少なくとも2つの材料層が、間隔をおいて互いに連合され、前記複数の封入室が、前記少なくとも2つの材料層の前記連合領域間に形成されることを特徴とする請求項1に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項16】
前記複数の封入室が、材料の第1層の凹みおよび前記第1材料層の上に連合された材料の第2層によって、その少なくとも横方向面、および各封入室の上部面または下部面の一方について画定され、それにより、前記複数の封入室のそれぞれを封入することを特徴とする請求項15に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項17】
a.本体部材の第1表面を形成する第1層および第2表面を形成する第2層の少なくとも2つの材料層を備える本体部材であって、前記少なくとも2つの材料層が、前記本体部材の厚さの内部に完全に配置される複数の封入室を形成するように、間隔をおいて互いに連合される当該本体部材と、
b.前記第1表面および前記第2表面の少なくとも一方を通過し、かつ前記複数の封入室の少なくとも1つと連絡する少なくとも1つの開口と、
c.前記複数の封入室の内部に配置され、前記少なくとも1つの開口を経て放出可能である少なくとも1つの薬理活性剤とを備えることを特徴とする医薬品放出医療用デバイス。
【請求項18】
前記少なくとも2つの材料層が、生体適合性金属および生体適合性擬似金属からなる群から選択された材料から本質的になることを特徴とする請求項17に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項19】
前記生体適合性金属が、チタン、バナジウム、アルミニウム、ニッケル、タンタル、ジルコニウム、クロム、銀、金、シリコン、マグネシウム、ニオブ、スカンジウム、白金、コバルト、パラジウム、マンガン、モリブデン、ならびにその合金、コバルトクロム合金、ステンレススチール、およびニッケルチタン合金からなる群から選択された金属製材料をさらに備えることを特徴とする請求項18に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項20】
前記本体部材の前記第1および第2表面の少なくとも一方を覆うポリマー材料をさらに備えることを特徴とする請求項17に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項21】
前記薬理活性剤と共に前記複数の封入室の少なくともいくつかの内部に配置されたポリマー材料をさらに備えることを特徴とする請求項17に記載の医薬品放出医療用デバイス。
【請求項22】
医薬品放出デバイスを作成する方法であって、
a.生体適合性材料の第1層および第2層を提供するステップと、
b.前記第1層と前記第2層の中間に複数の内部室を画定するように前記第1層と前記第2層を連合するステップと、
c.前記第1層および前記第2層の少なくとも一方を通過し、かつ前記複数の内部室の少なくとも1つと連絡する少なくとも1つの開口を提供するステップと、
d.前記少なくとも1つの開口を経て溶出可能であるように十分な形態で複数の内部室の少なくとも1つの中に少なくとも1つの薬理活性剤を装填するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
ステップ(a)は、真空蒸着プロセスによって生体適合性材料の前記第1層および前記第2層を形成するステップをさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
生体適合性材料の前記第1層および前記第2層が、チタン、バナジウム、アルミニウム、ニッケル、タンタル、ジルコニウム、クロム、銀、金、シリコン、マグネシウム、ニオブ、スカンジウム、白金、コバルト、パラジウム、マンガン、モリブデン、ならびにその合金、コバルトクロム合金、ステンレススチール、およびニッケルチタン合金、セラミック、生体適合性ポリマー、および炭素ファイバマトリックスからなる群から選択された金属または擬似金属であることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の内部室が、真空蒸着材料の前記第1層において部分的に画定され、真空蒸着材料の前記第2層が、真空蒸着材料の前記第1層の上に連合されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
生体適合性材料の前記第1層と前記第2層の間に犠牲材料を提供するステップをさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項27】
生体適合性材料の前記第2層を上に蒸着させる前に、真空蒸着された犠牲材料をパターニングするステップをさらに含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
生体適合性材料の前記第1層の間に拡散障壁を加え、生体適合性材料の前記第2層を上に蒸着させる前に前記犠牲材料をパターニングするステップをさらに含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記犠牲材料と生体適合性材料の前記第2層との間に拡散障壁を加えるステップをさらに含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1層および前記第2層の少なくとも一方を通過し、かつ生体適合性材料の前記複数の内部室の少なくとも1つと連絡する前記少なくとも1つの開口を経て前記犠牲材料を除去するステップをさらに含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記第1層および前記第2層の少なくとも一方を通過し、かつ前記複数の内部室の少なくとも1つと連絡する前記少なくとも1つの開口を経て前記犠牲材料を除去するステップをさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記第1層および前記第2層の少なくとも一方を通過し、かつ前記複数の内部室の少なくとも1つと連絡する前記少なくとも1つの開口を経て前記拡散障壁を除去するステップをさらに含むことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記拡散障壁を除去する前記ステップが、前記拡散障壁をエッチングすることをさらに含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−508054(P2008−508054A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−523829(P2007−523829)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/026875
【国際公開番号】WO2006/015161
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(504006054)アドヴァンスド バイオ プロスセティック サーフェシーズ リミテッド (11)
【Fターム(参考)】