説明

金属薄膜電極及びその製造方法

【課題】本発明は、金属薄膜電極及びその製造方法に関する。
【解決手段】本発明の一実施例による金属薄膜電極の製造方法は、基材上に金属粉末、有機バインダ及び有機溶媒を含む金属ペーストを塗布して金属薄膜を形成する段階と、金属薄膜を有機酸と水系液の比が10:90〜90:10の雰囲気で還元焼成する段階と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属薄膜電極及びその製造方法に関し、より具体的には、低い焼成温度で製造することができ、低抵抗値を有する金属薄膜電極及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気電子工業分野で用いられる配線の形成方法として、金属ペーストを利用する導電性コーティング膜の形成方法が提案されている。この場合、金属ペーストをインクジェット方式によって基材に塗布し、乾燥した後焼成することにより金属薄膜電極を形成する。
【0003】
従来は、低抵抗値を有する金属薄膜電極を形成するためには、200℃以上の高温焼成が必要であった。しかし、200℃以上の高温焼成工程を経る場合、熱的ストレスによって金属薄膜電極の形状が崩れるなどの多くの問題点が発生した。
【0004】
上記問題点を解決するために低温焼成を適用したが、低温焼成の場合、金属薄膜電極の抵抗値を低めるためには金属薄膜電極の金属密度を高めなければならず、これにより塗布回数または成膜回数が多くなるという問題点があった。
【0005】
また、塗布回数を少なくし且つ金属密度を高めて金属薄膜電極の抵抗値を低めるために、高濃度の金属ペーストで金属薄膜電極を形成する場合、金属ペーストが不安定になるため2次凝集を起こし、金属粒子が沈降するという問題点が発生した。
【0006】
特に、金属薄膜電極を形成するために銅ペーストを用いる場合、低温の熱処理過程で酸素と接すると酸化されてしまうという問題が発生した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、低温焼成工程を通じて低抵抗値を有する金属薄膜電極を製造する方法、特に安価の銅を用いて低抵抗値を有する金属薄膜電極を製造する方法及びその方法によって製造された金属薄膜電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例による金属薄膜電極の製造方法は、基材上に金属粉末、有機バインダ及び有機溶媒を含む金属ペーストを塗布して金属薄膜を形成する段階と、金属薄膜を有機酸と水系液の比が10:90〜90:10の雰囲気で還元焼成する段階と、を含む。
【0009】
上記金属粉末は、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Ta、In、Sn、Zn、Cr、Fe及びCoからなる群から選択される一つ以上であることができる。
【0010】
上記金属粉末はナノサイズの銅粉末であることができる。
【0011】
上記金属ペーストは銅粉末を含む銅ペーストであり、銅粉末の含量は上記銅ペースト100重量部に対して10〜90重量部であることができる。
【0012】
上記金属薄膜は、有機酸と水系液の比が50:50〜80:20の雰囲気で還元焼成されることができる。
【0013】
上記金属薄膜は、有機酸と水系液の比が60:40〜70:30の雰囲気で還元焼成されることができる。
【0014】
上記水系液は、水、アルコール、アルデヒド、エーテル、エステル及びグリセロールからなる群から選択される一つ以上であることができる。
【0015】
上記有機酸は蟻酸または酢酸であることができる。
【0016】
上記還元焼成は200℃以下の温度で行われることができる。
【0017】
上記基材は、ガラス、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephtalate、PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene Naphthalate、PEN)フィルム、ポリカーボネート及び薄膜トランジスタ(TFT)で構成された群から選択される何れか一つであることができる。
【0018】
本発明の他の実施例による金属薄膜電極は、基材上に金属粉末、有機バインダ及び有機溶媒を含む金属ペーストを塗布して金属薄膜を形成し、金属薄膜は有機酸と水系液の比が10:90〜90:10の雰囲気で還元焼成されて形成されることができる。
【0019】
上記金属粉末は、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Ta、In、Sn、Zn、Cr、Fe及びCoからなる群から選択される一つ以上であることができる。
【0020】
上記金属粉末はナノサイズの銅粉末であることができる。
【0021】
上記金属ペーストは銅粉末を含む銅ペーストであり、銅粉末の含量は銅ペースト100重量部に対して10〜90重量部であることができる。
【0022】
上記基材は、ガラス、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephtalate、PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene Naphthalate、PEN)フィルム、ポリカーボネート及び薄膜トランジスタ(TFT)で構成された群から選択される何れか一つであることができる。
【0023】
上記還元焼成前の金属薄膜電極の面積に対する還元焼成後の金属薄膜電極の面積の比は1:0.9〜1:1であることができる。
【0024】
還元焼成後、抵抗が20mΩ・m以下であることができる。
【0025】
還元焼成後、抵抗が10mΩ・m以下であることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一実施例によると、低温焼成工程を通じて低抵抗値を有する金属薄膜電極を製造することができる。
【0027】
特に、安価の銅ペーストを塗布して形成された金属薄膜を低温焼成することで低抵抗値を有する金属薄膜電極を製造することができ、これにより、製造コストを低減し、信頼性の高い電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例による金属薄膜電極の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の一実施例において、水系液の含量による金属薄膜電極の抵抗値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付された図面を参照して、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができるように、好ましい実施例を詳細に説明する。但し、本発明の好ましい実施例を詳細に説明するにあたり、係わる公知技術または構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0030】
また、類似の機能及び作用をする部分に対しては図面全体にわたって同一の符号を用いる。
【0031】
尚、明細書の全体において、ある構成要素を「含む」ということは、特別に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くのでなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0032】
図1は本発明の一実施例による金属薄膜電極の製造方法を示すフローチャートであり、図2は本発明の一実施例において、水系液の含量による金属薄膜電極の抵抗値を示すグラフである。
【0033】
以下、図1及び図2を参照して、本発明の一実施例による金属薄膜電極の製造方法及びその方法によって製造された金属薄膜電極について説明する。
【0034】
図1を参照すると、本発明の一実施例による金属薄膜電極の製造方法は、金属粉末と分散液を含む金属ペーストを基材上に塗布して金属薄膜を形成する段階(S10)と、金属薄膜を有機酸と水系液の比が10:90〜90:10の雰囲気で還元焼成する段階(S20)と、を含む。
【0035】
金属薄膜電極を製造するために、金属粉末、有機バインダ及び有機溶媒を含む金属ペーストを基材上に塗布して金属薄膜を形成する(S10)。
【0036】
金属粉末は電気伝導性を与えるためのものであり、低抵抗値を有することが好ましい。これに制限されるものではないが、金属粉末として、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Ta、In、Sn、Zn、Cr、Fe及びCoからなる群から選択された一つ以上が用いられることができる。
【0037】
本発明の一実施例によると、上記金属粉末として銅(Cu)粒子を用いることができ、銅粒子を用いる場合、他の金属に比べて安価であるため、製造コストを低減することができる。
【0038】
また、本発明の一実施例によると、ナノサイズの金属粉末を用いることができ、これにより粒子の焼成温度を低めることができる。即ち、ナノサイズの金属粉末を含む金属ペーストを用いることにより、低温焼成がなされることができる。
【0039】
本発明の一実施例によると、上記金属ペースト100重量部に対して10〜90重量部の金属粉末を含み、特に、上記金属ペーストは銅粉末を含む銅ペーストであることができる。即ち、上記銅ペースト100重量部に対して10〜90重量部の銅粉末を含むことができる。
【0040】
これは、金属粉末の含量が10重量部未満の場合は金属薄膜電極での金属密度が低くなるため抵抗値が増加するようになり、90重量部を超過する場合は金属ペーストの内部に含まれた金属粉末の間で2次凝集が起こり、金属粒子の沈降が発生する可能性があるためである。
【0041】
本発明の一実施例によると、金属ペーストに含まれる金属粉末の含量を高めることができるため、低温焼成時に金属ペーストの塗布回数及び成膜回数を増加させなくても、金属密度が高い金属薄膜電極を製造することができる。
【0042】
有機バインダは金属ペースト内部での金属粉末の分散性を向上させるためのものであり、これに制限されるものではないが、エチルセルロースなどを用いることができる。
【0043】
有機溶媒は金属ペーストが分散される分散溶媒であり、これに制限されるものではないが、テルピネオールなどが用いられることができる。
【0044】
基材は、金属粉末を塗布、乾燥及び焼成して成膜化するための材料であり、ガラス、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephtalate、PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene Naphthalate、PEN)フィルム、ポリカーボネートなどが用いられることができる。また、薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)のような基板に対して適用されることができる。
【0045】
本発明の一実施例によると、基材上に金属粉末、有機バインダ及び有機溶媒を含む金属ペーストを塗布することにより金属薄膜を形成する。
【0046】
そして、金属薄膜を形成した後、金属薄膜を有機酸と水系液を含む雰囲気で還元焼成する。
【0047】
金属粉末の場合、高温の熱処理過程で酸素と接すると酸化されやすい性質がある。特に、銅の場合、反応性が非常に大きく、酸素と接すると酸化されやすいため、反応性が低いAu、Ptのような貴金属類を用いることが好ましい。
【0048】
本発明の一実施例によると、金属粉末の酸化を防止するために金属薄膜を有機酸と水系液を含む還元雰囲気で焼成する。
【0049】
即ち、従来は金属粉末の反応性を低めるために窒素雰囲気で焼成したが、この場合、金属ペーストの製造時に酸化された金属粉末が還元されていないまま焼成がなされる可能性があった。
【0050】
従って、本発明の一実施例によると、金属粉末の酸化を防止し、酸化された金属粉末を還元させるために、金属薄膜を還元雰囲気で焼成することができる。
【0051】
本発明の一実施例によると、金属薄膜を有機酸と水系液を含む雰囲気で還元焼成することにより、金属粉末を取り囲んだ有機物を除去し、還元反応が適切に起こるように誘導する。
【0052】
金属薄膜を水素や有機酸を含む雰囲気で還元焼成する場合、還元焼成はなされるが、水素や有機酸が薄膜電極の表面をエッチング(etching)するため面抵抗が減少し、電極形状を崩して内部有機物が過度に分解され、基材との接着力が減少するという問題点があった。
【0053】
しかし、本発明の一実施例によると、金属薄膜を有機酸と水系液を含む雰囲気で還元焼成し、特に適切な量の水系液を含むため、還元焼成がなされながらも薄膜電極の表面をエッチングする現象が発生しない。
【0054】
従って、本発明の一実施例によると、電極の面抵抗及び形状を維持することができ、基材との接着力を維持しながら金属薄膜電極を形成することができる。
【0055】
水系液は、還元雰囲気での金属薄膜のエッチング現象を防止するためのものであり、これに制限されるものではないが、水、アルコール、アルデヒド、エーテル、エステル及びグリセロールからなる群から選択された一つ以上が用いられることができる。
【0056】
有機酸は、金属薄膜に含まれた金属粉末を取り囲んだ有機物を除去し、金属ペーストの製造過程で酸化された金属粉末の還元反応が適切に起こるように誘導する。
【0057】
上記有機酸としては、これに制限されるものではないが、蟻酸または酢酸が用いられることができる。
【0058】
特に、本発明の一実施例によると、上記金属薄膜は有機酸と水系液の比が10:90〜90:10の雰囲気で還元焼成されることができる。
【0059】
これは、水系液の含量が90wt%を超過する場合は相対的に有機酸の含量が少なくなるため金属薄膜の還元焼成が起こらない可能性があり、10wt%未満の場合は金属薄膜のエッチング現象が発生して基材との接着性が低下するためである。
【0060】
本発明の好ましい実施例によると、上記金属薄膜は有機酸と水系液の比が50:50〜80:20の雰囲気で還元焼成されることができる。
【0061】
水系液の含量が20〜50wt%の場合、金属薄膜の還元作用を最適化することができ、これにより、低抵抗値を維持しながら金属薄膜が過度にエッチングされ、その形状が変形することを防止することができる。
【0062】
本発明の一実施例によると、上記水系液の含量が20〜50wt%の場合、その抵抗値は20mΩ・m以下になることができ、それによる還元焼成前の金属薄膜電極の面積に対する還元焼成後の金属薄膜電極の面積の比は1:0.9〜1:1になることができる。
【0063】
さらに好ましくは、上記金属薄膜は有機酸と水系液の比が60:40〜70:30の雰囲気で還元焼成されることができる。
【0064】
上記水系液の含量が30〜40wt%の場合、金属薄膜の還元作用を最適化することができ、これにより金属薄膜電極の抵抗値を最小にすることができる。
【0065】
本発明の一実施例によると、上記水系液の含量が30〜40wt%の場合、その抵抗値は10mΩ・m以下になることができ、それによる還元焼成前の金属薄膜の面積に対する還元焼成後の金属薄膜電極の面積の比は1:1になることができる。
【0066】
水系液の含量を最適化することにより、金属薄膜電極の面積を損傷することなく金属薄膜電極の内部に含まれた金属粉末を全て還元させ、その抵抗値を低めることができる。
【0067】
本発明の一実施例によると、水系液と有機酸を含む雰囲気で金属薄膜を焼成する場合、低温で焼成がなされることができる。
【0068】
還元雰囲気を形成するにおいて、有機酸が含まれることにより有機物の分解温度が一般大気中の分解温度より低くなることができる。
【0069】
また、本発明の一実施例によると、ナノサイズの金属粉末を含むことにより低温で焼成がなされることができる。
【0070】
金属ペーストに含まれた金属粉末粒子のサイズが小さくなるほど、焼成温度が低くなることができる。サイズが小さい粒子を含む金属ペーストを用いると、粒子間に緻密性が与えられるため、低い温度でも焼成がなされることができる。一例として、上記金属粉末の粒径は1nm〜1,000nmのサイズを有することができる。
【0071】
従って、本発明の一実施例によると、金属ペーストにナノサイズの金属粉末が含まれることにより、金属ペーストの金属密度が高くても200℃以下の低温で焼成がなされることができる。
【0072】
上記焼成温度は基材の種類に応じて多様に選択されることができるが、本発明の一実施例によると、上記金属薄膜の還元焼成温度は200℃以下であることが好ましい。
【0073】
上記金属薄膜の還元焼成温度が200℃を超過する場合は、基材と金属薄膜が過度に焼成されて、金属薄膜が酸化されたり基材に熱的ストレスが加えられる可能性があるためである。
【0074】
本発明の一実施例による金属薄膜電極の製造方法によると、200℃以下でも低抵抗値を有する金属薄膜電極を製造することができ、これにより、電子部品に加えられる熱的ストレスを最小化しながらも低抵抗値を維持することができる信頼度の高い金属薄膜電極を製造することができる。
【0075】
以下、本発明の一実施例による金属薄膜電極について説明する。
【0076】
本発明の一実施例による金属薄膜電極は、金属粉末を含む金属ペーストが基材上に塗布された金属薄膜を含む。そして、上記金属薄膜は有機酸と水系液の比が10:90〜90:10の雰囲気で還元焼成されて製造されることを特徴とする。
【0077】
基材は、金属粉末を塗布、乾燥及び焼成して成膜化するための材料であり、ガラス、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene Terephtalate、PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene Naphthalate、PEN)フィルム、ポリカーボネートなどが用いられることができる。また、薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)のような基板に対して適用されることができる。
【0078】
金属粉末は電気伝導性を与えるためのものであり、低抵抗値を有することが好ましい。これに制限されるものではないが、金属粉末として、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Ta、In、Sn、Zn、Cr、Fe及びCoからなる群から選択された一つ以上が用いられることができる。
【0079】
特に、銅粉末は過度な反応性によって酸化されやすい特性を有するため従来は用いることが困難であった。
【0080】
しかし、本発明の一実施例によると、酸化されやすい特性を有する銅粉末を用いても最適化された還元焼成過程によって銅粉末を還元させることができ、これにより、低抵抗値を有する金属薄膜電極を製造することができる。
【0081】
また、上記金属粉末として安価の銅(Cu)粉末を用いることにより、製造コストを低減することができる。
【0082】
また、本発明の一実施例によると、ナノサイズの金属粉末を用いることができ、これにより粉末の焼成温度を低めることができる。一例として、上記金属粉末の粒径は1nm〜1,000nmのサイズを有することができる。
【0083】
ナノサイズの金属粉末を含む金属ペーストを用いることにより、低温で焼成がなされることができる。
【0084】
本発明の一実施例によると、上記金属粉末は銅粉末であり、銅ペースト100重量部に対して10〜90重量部の銅粉末を含むことができる。
【0085】
これは、銅粉末の含量が10重量部未満の場合は金属薄膜電極での金属密度が低くなるため抵抗値が増加するようになり、90重量部を超過する場合は銅ペーストの内部に含まれた金属粉末の間で2次凝集が起こり、金属粒子の沈降が発生する可能性があるためである。
【0086】
本発明の一実施例によると、金属ペーストに含まれた金属粉末の含量を高めることができるため、金属薄膜電極の内部の金属密度を高めることができ、これにより低抵抗値を有する金属薄膜電極を製造することができる。
【0087】
上記金属粉末は金属ペースト状に製造され、これに制限されるものではないが、上記のような基材上にインクジェット印刷のような印刷方式によって塗布されることにより金属薄膜が形成されることができる。
【0088】
上記金属薄膜は、有機酸と水系液の比が10:90〜90:10の雰囲気で還元焼成されて製造されることができる。
【0089】
上記金属薄膜は有機酸と水系液を含む雰囲気で還元焼成されて製造されることができる。
【0090】
有機酸は、金属薄膜に含まれた金属粉末を取り囲んだ有機物を除去し、金属ペーストの製造過程で酸化された金属粉末の還元反応が適切に起こるように誘導する。
【0091】
本発明の一実施例によると、金属薄膜は有機酸を含む雰囲気で焼成されるため、金属ペーストの製造過程で酸化された金属粉末が焼成過程で還元されることができ、これにより低抵抗値を有する金属薄膜電極を製造することができる。
【0092】
上記有機酸としては、これに制限されるものではないが、蟻酸または酢酸が用いられることができる。
【0093】
上記水系液は還元雰囲気での金属薄膜のエッチング現象を防止するためのものであり、本発明の一実施例によると、水系液を含む雰囲気で焼成されることにより、金属薄膜が過度にエッチングされて金属薄膜の外形が崩壊または変形することを防止することができる。
【0094】
特に、有機酸のみを含む雰囲気で焼成される場合、金属薄膜が過度にエッチングされるため、金属薄膜と基材との接着力が低下するという問題点がある。
【0095】
しかし、本発明の一実施例によると、有機酸と水系液を含む雰囲気で焼成がなされるため、金属薄膜が過度にエッチングされることを防止することができ、これにより金属薄膜の焼成前と焼成後の面積または形状が殆ど同一であることができる。
【0096】
従って、本発明の一実施例によると、電極の面抵抗及び形状を維持し、基材との接着力を維持することができる金属薄膜電極を製造することができる。
【0097】
これに制限されるものではないが、上記水系液として、水、アルコール、アルデヒド、エーテル、エステル及びグリセロールからなる群から選択された一つ以上が用いられることができる。
【0098】
特に、本発明の一実施例によると、上記金属薄膜は有機酸と水系液の比が10:90〜90:10の雰囲気で還元焼成されることができる。
【0099】
これは、水系液の含量が90wt%を超過する場合は相対的に有機酸の含量が少なくなるため金属薄膜の還元焼成が起こらない可能性があり、10wt%未満の場合は金属薄膜のエッチング現象が発生し、基材との接着性が低下するためである。
【0100】
本発明の好ましい実施例によると、上記金属薄膜は有機酸と水系液の比が50:50〜80:20の雰囲気で還元焼成されることができる。
【0101】
水系液の含量が20〜50wt%の場合、金属薄膜の還元作用を最適化することができ、これにより低抵抗値を維持しながら金属薄膜が過度にエッチングされ、その形状が変形することを防止することができる。
【0102】
特に、上記水系液の含量が20〜50wt%の場合、その抵抗値が20mΩ・m以下になることができ、それによる還元焼成前の金属薄膜電極の面積に対する還元焼成後の金属薄膜電極の面積の比が1:0.9〜1:1になることができる。
【0103】
さらに好ましくは、上記金属薄膜は有機酸と水系液の比が60:40〜70:30の雰囲気で還元焼成されることができる。
【0104】
上記水系液の含量が30〜40wt%の場合、金属薄膜の還元作用を最適化することができ、これにより金属薄膜電極の抵抗値を最小にすることができる。
【0105】
これにより、上記水系液の含量が30〜40wt%の場合、その抵抗値が10mΩ・m以下になることができ、それによる還元焼成前の金属薄膜の面積に対する還元焼成後の金属薄膜電極の面積の比が1:1になることができる。
【0106】
水系液の含量を最適化することにより、金属薄膜電極の面積を損傷することなく金属薄膜電極の内部に含まれた金属粉末を全て還元させ、その抵抗値を低めることができる。
【0107】
<実施例1>
下記表1は本発明の一実施例において、水系液と有機酸の含量による金属薄膜電極の還元有無及び電極の変形有無を示すものである。
【0108】
ナノサイズの銅粉末を含む銅ペーストを製造し、水系液と有機酸の含量を異ならせて金属薄膜電極を還元焼成した。
【0109】
【表1】

【0110】
上記表1を参照すると、水系液の含量が100wt%で有機酸を含まない場合、有機酸が存在しないため還元焼成が起こらなかった。これにより、銅薄膜電極は酸化された状態で焼成され、暗い色を帯びることが確認できる。
【0111】
有機酸の含量が100wt%で水系液を含まない場合、水系液が存在しないため過度にエッチングされ、これにより焼成前と比較して焼成後に銅薄膜電極の面積が減少することが確認できる。
【0112】
即ち、有機酸のみが含まれる場合、銅薄膜電極の外形が変形され、基材との接着性が低下することが確認できる。
【0113】
本発明の一実施例によって金属薄膜を有機酸と水系液の比が10:90〜90:10の雰囲気で還元焼成する場合、有機酸を含むことにより銅薄膜電極の還元焼成がなされることができ、水系液を含むことにより還元焼成時に過度にエッチングされることを防止することができる。
【0114】
銅薄膜電極が還元焼成されて明るい色を帯び、焼成前の銅薄膜電極の面積と焼成後の銅薄膜電極の面積に殆ど変化がないことが確認できる。
【0115】
図2は本発明の一実施例において、水系液と有機酸の含量による金属薄膜電極の抵抗値を示すグラフである。
【0116】
本発明の一実施例によって上記金属薄膜を有機酸と水系液の比が50:50〜80:20の雰囲気で還元焼成する場合、金属薄膜電極の抵抗が20mΩ・m以下になることが確認できる。
【0117】
そして、図2及び上記表1を参照すると、水系液の含量が20〜50wt%の場合、還元焼成前の金属薄膜電極の面積と還元焼成後の金属薄膜電極の面積が殆ど同一であることが確認できる。そして、上記面積比は1:0.9〜1:1であることが確認できる。
【0118】
また、本発明の一実施例によって上記金属薄膜を有機酸と水系液の比が60:40〜70:30の雰囲気で還元焼成する場合、金属薄膜電極の抵抗が10mΩ・m以下になることが確認できる。
【0119】
特に、70wt%の有機酸と30wt%の水系液を含む場合、金属薄膜電極の抵抗は7mΩ・mになり、60wt%の有機酸と40wt%の水系液を含む場合、最小5.6mΩ・mになることが確認できる。
【0120】
そして、図2と上記表1を参照すると、水系液の含量が20〜50wt%の場合、還元焼成前の金属薄膜電極の面積と還元焼成後の金属薄膜電極の面積が殆ど同一であることが確認できる。そして、上記面積比は1:1であることが確認できる。
【0121】
本発明の一実施例によると、有機酸と水系液を含む雰囲気で還元焼成がなされることにより、金属粉末を還元させ、低抵抗値を具現しながらもその形状を維持することができる金属薄膜電極を製造することができる。
【0122】
特に、安価の銅のような反応性が高い金属を用いて還元焼成工程を通じて低抵抗値を有する金属薄膜電極を製造することができ、製造コストが減少するようになる。
【0123】
そして、金属薄膜電極と基材との接着性を向上させ、金属薄膜電極の外形の変形を防止し、信頼性の高い配線または金属薄膜電極を有する電子部品を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に金属粉末、有機バインダ及び有機溶媒を含む金属ペーストを塗布して金属薄膜を形成する段階と、
前記金属薄膜を有機酸と水系液の比が10:90〜90:10の雰囲気で還元焼成する段階と、
を含む金属薄膜電極の製造方法。
【請求項2】
前記金属粉末は、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Ta、In、Sn、Zn、Cr、Fe及びCoからなる群から選択される一つ以上である請求項1に記載の金属薄膜電極の製造方法。
【請求項3】
前記金属粉末はナノサイズの銅粉末である請求項1に記載の金属薄膜電極の製造方法。
【請求項4】
前記金属ペーストは銅粉末を含む銅ペーストであり、
前記銅粉末の含量は前記銅ペースト100重量部に対して10〜90重量部である請求項1に記載の金属薄膜電極の製造方法。
【請求項5】
前記金属薄膜は、有機酸と水系液の比が50:50〜80:20の雰囲気で還元焼成されることを特徴とする請求項1に記載の金属薄膜電極の製造方法。
【請求項6】
前記金属薄膜は、有機酸と水系液の比が60:40〜70:30の雰囲気で還元焼成されることを特徴とする請求項1に記載の金属薄膜電極の製造方法。
【請求項7】
前記水系液は、水、アルコール、アルデヒド、エーテル、エステル及びグリセロールからなる群から選択される一つ以上である請求項1に記載の金属薄膜電極の製造方法。
【請求項8】
前記有機酸は蟻酸または酢酸である請求項1に記載の金属薄膜電極の製造方法。
【請求項9】
前記還元焼成は200℃以下の温度で行われる請求項1に記載の金属薄膜電極の製造方法。
【請求項10】
前記基材は、ガラス、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネート及び薄膜トランジスタで構成された群から選択される何れか一つである請求項1に記載の金属薄膜電極の製造方法。
【請求項11】
基材上に金属粉末、有機バインダ及び有機溶媒を含む金属ペーストを塗布して金属薄膜を形成し、
前記金属薄膜は有機酸と水系液の比が10:90〜90:10の雰囲気で還元焼成されて形成される金属薄膜電極。
【請求項12】
前記金属粉末は、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Ta、In、Sn、Zn、Cr、Fe及びCoからなる群から選択される一つ以上である請求項11に記載の金属薄膜電極。
【請求項13】
前記金属粉末はナノサイズの銅粉末である請求項11に記載の金属薄膜電極。
【請求項14】
前記金属ペーストは銅粉末を含む銅ペーストであり、
前記銅粉末の含量は銅ペースト100重量部に対して10〜90重量部である請求項11に記載の金属薄膜電極。
【請求項15】
前記基材は、ガラス、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネート及び薄膜トランジスタで構成された群から選択される何れか一つである請求項11に記載の金属薄膜電極。
【請求項16】
前記還元焼成前の金属薄膜電極の面積に対する還元焼成後の金属薄膜電極の面積の比は1:0.9〜1:1である請求項11に記載の金属薄膜電極。
【請求項17】
前記還元焼成後、抵抗が20mΩ・m以下である請求項11に記載の金属薄膜電極。
【請求項18】
前記還元焼成後、抵抗が10mΩ・m以下である請求項11に記載の金属薄膜電極。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−142552(P2012−142552A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187003(P2011−187003)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】