金属部品の補修方法及び補修された金属部品
【課題】冷却孔近傍の肉盛溶接補修を行う場合でも、溶接割れを低減可能な金属部品の補修方法及び補修された金属部品を提供する。
【解決手段】高温に曝されると共に冷却のための冷却孔15を有する動翼11において、冷却孔15に近接して発生した亀裂と共に冷却孔15の一部を表面側から開先加工し、開先加工後、共金系材料のワイヤ22を用いて、冷却孔15を孔埋め加工し、孔埋め加工した部分をスムージング加工し、開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行って、肉盛部25を形成し、ワイヤ22及び肉盛部25に当初の冷却孔15を再加工して、動翼11を肉盛溶接により補修する。
【解決手段】高温に曝されると共に冷却のための冷却孔15を有する動翼11において、冷却孔15に近接して発生した亀裂と共に冷却孔15の一部を表面側から開先加工し、開先加工後、共金系材料のワイヤ22を用いて、冷却孔15を孔埋め加工し、孔埋め加工した部分をスムージング加工し、開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行って、肉盛部25を形成し、ワイヤ22及び肉盛部25に当初の冷却孔15を再加工して、動翼11を肉盛溶接により補修する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン、ジェットエンジン等において、高温に曝される金属部品の補修方法及び補修された金属部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン、ジェットエンジン等には、1000℃以上の高温に曝される金属部品(高温部品)が存在する。例えば、図1に示すガスタービンの動翼11は、そのような金属部品の1つであり、長期の運転後には、翼本体12の翼頂部12a、翼面12bやプラットホーム部13に亀裂Cが発生していることがある。このような亀裂Cは、グラインダ、放電加工等で亀裂部周辺を除去した後、拡散ろう付、肉盛溶接等で補修されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−305492号公報
【特許文献2】特開2003−206748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
翼頂部12a、翼面12bやプラットホーム部13には、冷却用の空気を流すため、複数の冷却孔15、16が設けられている。翼頂部12a、翼面12bやプラットホーム部13に亀裂Cが発生し、冷却孔15、16の近傍が補修部位となるとき、ろう材で補修を行った場合には、ろう材が冷却孔15、16から流出してしまったり、冷却孔15、16を塞いでしまったりするおそれがある。このため、特許文献1、2においては、補修開先内に埋め込み材(パイプ、ダミーピン等)を入れて、ろう材の流出防止、孔形成を行っている。
【0005】
ろう付で補修を行う場合、補修部位の高強度化が図れない等の問題がある。そこで、補修部位の高強度化のために、肉盛溶接補修(TIG(Tungsten Inert Gas)肉盛溶接、プラズマ肉盛溶接、レーザ粉体肉盛溶接等)を行うことがある。しかしながら、肉盛溶接補修の場合、肉盛が厚くなると、溶接割れを起こす可能性が高い。特に、冷却孔15、16が補修部位にある場合には、冷却孔15、16を基点に溶接割れ(高温割れ)が発生しやすい。そのため、従来は、冷却孔15、16を避けて、補修を行っており、又、プラットホーム部13では、冷却孔16まで到達する亀裂Cがある場合には、補修そのものを断念していた。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、冷却孔近傍の肉盛溶接補修を行う場合でも、溶接割れを低減可能な金属部品の補修方法及び補修された金属部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の発明に係る金属部品の補修方法は、
高温に曝されると共に冷却のための冷却孔を有する金属部品において、前記冷却孔の周りに発生した亀裂を補修する金属部品の補修方法であって、
前記亀裂と共に前記冷却孔の一部を当該金属部品の表面側から開先加工し、
開先加工後、共金系材料を用いて、前記冷却孔を孔埋め加工し、
孔埋め加工した部分をスムージング加工し、
開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行い、
孔埋め加工した部分及び肉盛溶接した部分に、当初の冷却孔を再加工して、当該金属部品を肉盛溶接により補修することを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第2の発明に係る金属部品の補修方法は、
上記第1の発明に記載の金属部品の補修方法において、
前記孔埋め加工は、
前記冷却孔に共金系材料からなるワイヤを挿入すると共に、共金系材料を用いて、前記冷却孔の周囲と前記ワイヤとを溶接するか、
又は、
前記冷却孔自身を当該金属部品の表面側から開先加工し、当該開先加工部分を、共金系材料を用いて、肉盛溶接するか、
いずれか一方であることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第3の発明に係る金属部品の補修方法は、
高温に曝されると共に冷却のための冷却孔を有する金属部品において、前記冷却孔の周りに発生した亀裂を補修する金属部品の補修方法であって、
前記冷却孔に共金系材料からなるワイヤを挿入し、
前記亀裂と共に前記冷却孔の一部及び前記ワイヤの一部を当該金属部品の表面側から開先加工し、
開先加工後、共金系材料を用いて、前記冷却孔の周囲と前記ワイヤとを溶接し、
溶接した部分をスムージング加工し、
開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行い、
前記ワイヤを挿入した部分及び肉盛溶接した部分に、当初の冷却孔を再加工して、当該金属部品を肉盛溶接により補修することを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第4の発明に係る補修された金属部品は、
高温に曝されると共に冷却のための冷却孔を有する金属部品であって、
前記冷却孔の周りに発生した亀裂と共に前記冷却孔の一部を当該金属部品の表面側から開先加工し、
開先加工後、共金系材料を用いて、前記冷却孔を孔埋め加工し、
孔埋め加工した部分をスムージング加工し、
開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行い、
孔埋め加工した部分及び肉盛溶接した部分に、当初の冷却孔を再加工することによって、
肉盛溶接により補修された補修部位を具備することを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第5の発明に係る補修された金属部品は、
上記第4の発明に記載の補修された金属部品において、
前記孔埋め加工は、
前記冷却孔に共金系材料からなるワイヤを挿入すると共に、共金系材料を用いて、前記冷却孔の周囲と前記ワイヤとを溶接するか、
又は、
前記冷却孔自身を当該金属部品の表面側から開先加工し、当該開先加工部分を、共金系材料を用いて、肉盛溶接するか、
いずれか一方であることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第6の発明に係る補修された金属部品は、
高温に曝されると共に冷却のための冷却孔を有する金属部品であって、
前記冷却孔に共金系材料からなるワイヤを挿入し、
前記冷却孔の周りに発生した亀裂と共に前記冷却孔の一部及び前記ワイヤの一部を当該金属部品の表面側から開先加工し、
開先加工後、共金系材料を用いて、前記冷却孔の周囲と前記ワイヤとを溶接し、
溶接した部分をスムージング加工し、
開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行い、
前記ワイヤを挿入した部分及び肉盛溶接した部分に、当初の冷却孔を再加工することによって、
肉盛溶接により補修された補修部位を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高温に曝される金属部品の冷却孔近傍の肉盛溶接補修を行う場合でも、溶接割れを低減して、肉盛溶接補修を行うことができ、補修部位の高強度化を図ることが可能となる。つまり、金属部品に対して、許容欠陥を超える亀裂が無く、品質の高い肉盛溶接補修方法を提供することになり、又、許容欠陥を超える亀裂が無く、品質の高い肉盛溶接補修した金属部品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ガスタービンの動翼に発生する亀裂を説明する図である。
【図2】図1に示した動翼のA1−A1線矢視断面図である。
【図3】図1に示した動翼の翼頂部を拡大した図である。
【図4】図3に示した動翼の翼頂部のA2−A2線矢視断面図である。
【図5】図4に示した動翼の翼頂部に対する開先加工を説明する図である。
【図6】図5に示した動翼の翼頂部に対する孔埋め加工を説明する図である。
【図7】図6に示した動翼の翼頂部に対するスムージング加工を説明する図である。
【図8】図7に示した動翼の翼頂部に対する本肉盛溶接加工を説明する図である。
【図9】図8に示した動翼の翼頂部に対する冷却孔再加工を説明する図である。
【図10】図1に示した動翼のプラットホーム部を抜き出した図である。
【図11】図10に示した動翼のプラットホーム部のB−B線矢視断面図である。
【図12】図11に示した動翼のプラットホーム部に対する開先加工を説明する図である。
【図13】図12に示した動翼のプラットホーム部に対する孔埋め加工を説明する図である。
【図14】図13に示した動翼のプラットホーム部に対するスムージング加工を説明する図である。
【図15】図14に示した動翼のプラットホーム部に対する本肉盛溶接加工を説明する図である。
【図16】図15に示した動翼のプラットホーム部に対する冷却孔再加工を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る金属部品の補修方法及び補修された金属部品の実施形態について、そのいくつかを図1〜図16を参照して説明する。なお、以下の実施例においては、ガスタービンの動翼を例にとって説明を行うが、本発明は、他の金属部品、例えば、ガスタービンの静翼、ジェットエンジンの部品等にも適用可能である。
【0016】
(実施例1)
まず、図1、図2を参照して、ガスタービンの動翼を簡単に説明する。動翼11は、図1に示すように、タービンロータ(図示省略)の外周方向に延設される翼本体12と、翼本体12の内周側の基部に設けられたプラットホーム部13と、プラットホーム部13の内周側に設けられた固定部14とを一体化したものである。このような動翼11は、1000℃以上の高温に曝されるため、ニッケル基超合金、コバルト基超合金等の金属が用いられている。又、翼本体12は、図2に示すように、中空部17を有する中空構造となっており、翼本体12を空冷するために、中空部17から翼本体12の表面側へ貫通する複数の冷却孔15が設けられている。又、プラットホーム部13にも空冷のための冷却孔16が複数設けられている。
【0017】
そして、本実施例では、図1及び図3に示すように、翼頂部12aに発生した亀裂Cを対象としている。本実施例の場合、亀裂Cを含む領域が補修部位21となるが、亀裂Cの周りに冷却孔15がある場合、つまり、補修部位21に冷却孔15が含まれるとき、補修部位21の肉盛溶接を行った場合には、前述したように、冷却孔15を基点に、溶接割れが発生しやすかった。
【0018】
そのため、本実施例では、溶接割れを低減するため、まず、冷却孔15の孔埋めを行った後に肉盛溶接層を形成し、その後、孔埋め部分及び肉盛部分に冷却孔15を再加工することにより、補修を行っている。この補修方法の具体的な手順を、図4〜図9を参照して説明する。
【0019】
(1)補修部位の開先加工
最初に、亀裂C及び近傍の冷却孔15の一部を含む補修部位21の開先加工を行う。この開先加工は、例えば、グラインダ、放電加工、機械加工が望ましく、これにより、動翼11の表面側から整形加工している(図4、図5参照)。なお、後述するように、冷却孔15にワイヤ22を挿入する場合には、先にワイヤ22を挿入し、その後、補修部位21の開先加工を行うことにより、挿入したワイヤ22も同時に開先加工してよい。
【0020】
(2)冷却孔の孔埋め施工
次に、冷却孔15に対して孔埋め施工を行う。具体的には、以下の(2a)〜(2d)の方法が適用可能である。
【0021】
(2a)ワイヤ挿入+溶接
冷却孔15にワイヤ22を挿入し、TIG溶接、レーザ溶接、ろう付等を用いて、挿入したワイヤ22と冷却孔15の周囲とを溶接材23により溶接することにより、孔埋め施工を行う(図6参照)。このとき、挿入したワイヤ22と冷却孔15の周囲とは、少なくとも、開先加工側(図6中では外側)において溶接を行うが、ワイヤ22を支持するため、開先加工側の反対側(図6中では中空部17側)で溶接してもよい。
【0022】
(2b)肉盛溶接
冷却孔15に対して、TIG肉盛溶接、レーザ粉体肉盛溶接、ろう付等を行うことにより、孔埋め施工を行う。
【0023】
(2c)冷却孔自体の開先加工+肉盛溶接
冷却孔15が細い場合には、冷却孔15自体の開先加工を先に行い、その後、TIG肉盛溶接、レーザ粉体肉盛溶接、ろう付等を行うことにより、孔埋め施工を行う。
【0024】
(2d)その他
冷却孔15に対して、粉末挿入、溶射、機械的なかしめ等を行うことにより、孔埋め施工を行う。
【0025】
孔埋め施工方法しては、上記(2a)〜(2d)の方法が適用可能であるが、動翼11のような金属部品は、狭隘部位(冷却孔15)での溶接割れ及び融合不良が懸念されるため、低入熱手法であったり、冷却孔15の開先加工を行ったりする(2a)又は(2c)の方法が望ましい。特に、[ワイヤ挿入+TIG溶接]又は[冷却孔自体の開先加工+TIG肉盛溶接]の場合は、予め、冷却孔15の長手方向に沿って奥の方まで孔埋めしているため、本肉盛溶接時における冷却孔15の影響を最小限にでき、より効果的に、肉盛補修溶接の安定化、溶接割れを防止することができる。
【0026】
又、いずれの孔埋め施工の場合であっても、溶接割れの発生を抑制するために、ワイヤ22、溶接材23等の孔埋め材料の材質は、動翼11を構成する母材より柔らかい材料がよく、共金系材料(Ni基合金、Co基合金)で、Ti、Alの少ない溶接割れの発生しにくい材料(例えば、インコネル625)が望ましい。
【0027】
(3)孔埋め部のスムージング
次の手順で行う本肉盛溶接を安定させるため、グラインダ等を用いて、孔埋め部24の余肉のスムージングを行う(図7参照)。
【0028】
(4)開先部の本肉盛溶接
補修部位21を、TIG肉盛溶接、レーザ粉体肉盛溶接等を用いて、本肉盛溶接を行い、肉盛部25を形成する(図8参照)。このとき、補修部位21を高温で予熱して、TIG肉盛溶接、レーザ粉体肉盛溶接等を行ってもよい。従来、冷却孔15を埋めていない場合には、冷却孔15の存在により、肉盛が不安定となり、肉盛り部分が割れるおそれがあるが、冷却孔15を孔埋めした本実施例の場合、肉盛が安定化し、肉盛部の割れ防止が可能となる。なお、肉盛部分の材料としては、インコネル738LCをベースとした材料を用いている。
【0029】
(5)冷却孔の再加工
放電加工、機械加工等を用いて、補修部位21に冷却孔15を再加工する(図9参照)。これにより、冷却孔15を埋めた材料(ワイヤ22、一部の肉盛部25)は、再加工によって取り除かれることになる。
【0030】
上述した手順により、動翼11の翼頂部12aの冷却孔15近傍の肉盛溶接補修を行う場合でも、溶接割れを低減して、肉盛溶接補修を行うことができ、補修部位の高強度化を図ることが可能となる。つまり、金属部品に対して、許容欠陥を超える亀裂が無く、品質の高い肉盛溶接補修方法を提供することになり、又、許容欠陥を超える亀裂が無く、品質の高い肉盛溶接補修した金属部品を提供することが可能となる。
【0031】
(実施例2)
本実施例では、図1及び図10に示すように、プラットホーム部13に発生した亀裂Cを対象としている。本実施例の場合、亀裂Cを含む領域が補修部位31となるが、冷却孔16まで到達する亀裂Cが発生したとき、つまり、補修部位31に冷却孔16が含まれるとき、従来は補修自体を断念していた。又、補修部位31の肉盛溶接を行った場合には、前述したように、冷却孔16を基点に、溶接割れが発生しやすかった。
【0032】
そのため、本実施例でも、溶接割れを低減するため、まず、冷却孔16の孔埋めを行った後に肉盛溶接層を形成し、その後、孔埋め部分及び肉盛部分に冷却孔16を再加工することにより、補修を行っている。この補修方法の具体的な手順を、図11〜図16を参照して説明する。
【0033】
(1)補修部位の開先加工
最初に、亀裂C及び近傍の冷却孔16の一部を含む補修部位31の開先加工を行うが、本実施例の場合、先にワイヤ32を冷却孔16に挿入し、その後、補修部位31の開先加工を行うことにより、挿入したワイヤ32の一部も同時に開先加工している(図11、図12参照)。この開先加工は、例えば、グラインダ、放電加工、機械加工が望ましく、これにより、動翼11の表面側から整形加工している。放電加工の場合、補修部位31と併せて、挿入したワイヤ32も精度良く、加工可能となる。
【0034】
(2)冷却孔の孔埋め施工
次に、開先加工面の孔埋めを行う。具体的には、開先加工面において、TIG溶接、レーザ溶接、ろう付等を用いて、挿入したワイヤ32と冷却孔16の周囲とを溶接材33により溶接することにより、孔埋め施工を行う(図13参照)。
【0035】
動翼11のような金属部品は、狭隘部位(冷却孔16)での溶接割れ及び融合不良が懸念されるため、孔埋め施工方法しては、低入熱手法である[ワイヤ挿入+TIG溶接]が望ましい。この場合、予め、冷却孔16の長手方向に沿って奥の方まで孔埋めしているため、本肉盛溶接時における冷却孔16の影響を最小限にでき、より効果的に、肉盛補修溶接の安定化、溶接割れを防止することができる。
【0036】
又、溶接割れの発生を抑制するために、ワイヤ32、溶接材33等の孔埋め材料の材質は、動翼11を構成する母材より柔らかい材料がよく、共金系材料(Ni基合金、Co基合金)で、Ti、Alの少ない溶接割れの発生しにくい材料(例えば、インコネル625)が望ましい。
【0037】
(3)孔埋め部のスムージング
次の手順で行う本肉盛溶接を安定させるため、グラインダ等を用いて、孔埋め部34の余肉のスムージングを行う(図14参照)。
【0038】
(4)開先部の本肉盛溶接
補修部位31を、TIG肉盛溶接、レーザ粉体肉盛溶接等を用いて、本肉盛溶接を行い、肉盛部35を形成する(図15参照)。このとき、補修部位31を高温で予熱して、TIG肉盛溶接、レーザ粉体肉盛溶接等を行ってもよい。従来、冷却孔16を埋めていない場合、冷却孔16の存在により、肉盛が不安定となり、肉盛り部分が割れるおそれがあるが、冷却孔16を孔埋めした本実施例の場合、肉盛が安定化し、肉盛部の割れ防止が可能となる。なお、肉盛部分の材料としては、インコネル738LCをベースとした材料を用いている。
【0039】
(5)冷却孔の再加工
放電加工、機械加工等を用いて、補修部位31に冷却孔16を再加工する(図16参照)。これにより、冷却孔16を埋めた材料(ワイヤ32、一部の肉盛部35)は、再加工によって取り除かれることになる。
【0040】
上述した手順により、動翼11のプラットホーム部13の冷却孔16近傍の肉盛溶接補修を行う場合でも、溶接割れを低減して、肉盛溶接補修を行うことができ、補修部位の高強度化を図ることが可能となる。つまり、金属部品に対して、許容欠陥を超える亀裂が無く、品質の高い肉盛溶接補修方法を提供することになり、又、許容欠陥を超える亀裂が無く、品質の高い肉盛溶接補修した金属部品を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、高温に曝されると共に冷却孔を有する金属部品、例えば、ガスタービンの動翼、静翼を溶接補修する際に好適なものである。
【符号の説明】
【0042】
11 動翼
12 翼本体
12a 翼頂部
12b 翼面
13 プラットホーム部
15、16 冷却孔
21、31 補修部位
22、32 ワイヤ
25、35 肉盛部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン、ジェットエンジン等において、高温に曝される金属部品の補修方法及び補修された金属部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン、ジェットエンジン等には、1000℃以上の高温に曝される金属部品(高温部品)が存在する。例えば、図1に示すガスタービンの動翼11は、そのような金属部品の1つであり、長期の運転後には、翼本体12の翼頂部12a、翼面12bやプラットホーム部13に亀裂Cが発生していることがある。このような亀裂Cは、グラインダ、放電加工等で亀裂部周辺を除去した後、拡散ろう付、肉盛溶接等で補修されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−305492号公報
【特許文献2】特開2003−206748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
翼頂部12a、翼面12bやプラットホーム部13には、冷却用の空気を流すため、複数の冷却孔15、16が設けられている。翼頂部12a、翼面12bやプラットホーム部13に亀裂Cが発生し、冷却孔15、16の近傍が補修部位となるとき、ろう材で補修を行った場合には、ろう材が冷却孔15、16から流出してしまったり、冷却孔15、16を塞いでしまったりするおそれがある。このため、特許文献1、2においては、補修開先内に埋め込み材(パイプ、ダミーピン等)を入れて、ろう材の流出防止、孔形成を行っている。
【0005】
ろう付で補修を行う場合、補修部位の高強度化が図れない等の問題がある。そこで、補修部位の高強度化のために、肉盛溶接補修(TIG(Tungsten Inert Gas)肉盛溶接、プラズマ肉盛溶接、レーザ粉体肉盛溶接等)を行うことがある。しかしながら、肉盛溶接補修の場合、肉盛が厚くなると、溶接割れを起こす可能性が高い。特に、冷却孔15、16が補修部位にある場合には、冷却孔15、16を基点に溶接割れ(高温割れ)が発生しやすい。そのため、従来は、冷却孔15、16を避けて、補修を行っており、又、プラットホーム部13では、冷却孔16まで到達する亀裂Cがある場合には、補修そのものを断念していた。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、冷却孔近傍の肉盛溶接補修を行う場合でも、溶接割れを低減可能な金属部品の補修方法及び補修された金属部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の発明に係る金属部品の補修方法は、
高温に曝されると共に冷却のための冷却孔を有する金属部品において、前記冷却孔の周りに発生した亀裂を補修する金属部品の補修方法であって、
前記亀裂と共に前記冷却孔の一部を当該金属部品の表面側から開先加工し、
開先加工後、共金系材料を用いて、前記冷却孔を孔埋め加工し、
孔埋め加工した部分をスムージング加工し、
開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行い、
孔埋め加工した部分及び肉盛溶接した部分に、当初の冷却孔を再加工して、当該金属部品を肉盛溶接により補修することを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第2の発明に係る金属部品の補修方法は、
上記第1の発明に記載の金属部品の補修方法において、
前記孔埋め加工は、
前記冷却孔に共金系材料からなるワイヤを挿入すると共に、共金系材料を用いて、前記冷却孔の周囲と前記ワイヤとを溶接するか、
又は、
前記冷却孔自身を当該金属部品の表面側から開先加工し、当該開先加工部分を、共金系材料を用いて、肉盛溶接するか、
いずれか一方であることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第3の発明に係る金属部品の補修方法は、
高温に曝されると共に冷却のための冷却孔を有する金属部品において、前記冷却孔の周りに発生した亀裂を補修する金属部品の補修方法であって、
前記冷却孔に共金系材料からなるワイヤを挿入し、
前記亀裂と共に前記冷却孔の一部及び前記ワイヤの一部を当該金属部品の表面側から開先加工し、
開先加工後、共金系材料を用いて、前記冷却孔の周囲と前記ワイヤとを溶接し、
溶接した部分をスムージング加工し、
開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行い、
前記ワイヤを挿入した部分及び肉盛溶接した部分に、当初の冷却孔を再加工して、当該金属部品を肉盛溶接により補修することを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第4の発明に係る補修された金属部品は、
高温に曝されると共に冷却のための冷却孔を有する金属部品であって、
前記冷却孔の周りに発生した亀裂と共に前記冷却孔の一部を当該金属部品の表面側から開先加工し、
開先加工後、共金系材料を用いて、前記冷却孔を孔埋め加工し、
孔埋め加工した部分をスムージング加工し、
開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行い、
孔埋め加工した部分及び肉盛溶接した部分に、当初の冷却孔を再加工することによって、
肉盛溶接により補修された補修部位を具備することを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第5の発明に係る補修された金属部品は、
上記第4の発明に記載の補修された金属部品において、
前記孔埋め加工は、
前記冷却孔に共金系材料からなるワイヤを挿入すると共に、共金系材料を用いて、前記冷却孔の周囲と前記ワイヤとを溶接するか、
又は、
前記冷却孔自身を当該金属部品の表面側から開先加工し、当該開先加工部分を、共金系材料を用いて、肉盛溶接するか、
いずれか一方であることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第6の発明に係る補修された金属部品は、
高温に曝されると共に冷却のための冷却孔を有する金属部品であって、
前記冷却孔に共金系材料からなるワイヤを挿入し、
前記冷却孔の周りに発生した亀裂と共に前記冷却孔の一部及び前記ワイヤの一部を当該金属部品の表面側から開先加工し、
開先加工後、共金系材料を用いて、前記冷却孔の周囲と前記ワイヤとを溶接し、
溶接した部分をスムージング加工し、
開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行い、
前記ワイヤを挿入した部分及び肉盛溶接した部分に、当初の冷却孔を再加工することによって、
肉盛溶接により補修された補修部位を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高温に曝される金属部品の冷却孔近傍の肉盛溶接補修を行う場合でも、溶接割れを低減して、肉盛溶接補修を行うことができ、補修部位の高強度化を図ることが可能となる。つまり、金属部品に対して、許容欠陥を超える亀裂が無く、品質の高い肉盛溶接補修方法を提供することになり、又、許容欠陥を超える亀裂が無く、品質の高い肉盛溶接補修した金属部品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ガスタービンの動翼に発生する亀裂を説明する図である。
【図2】図1に示した動翼のA1−A1線矢視断面図である。
【図3】図1に示した動翼の翼頂部を拡大した図である。
【図4】図3に示した動翼の翼頂部のA2−A2線矢視断面図である。
【図5】図4に示した動翼の翼頂部に対する開先加工を説明する図である。
【図6】図5に示した動翼の翼頂部に対する孔埋め加工を説明する図である。
【図7】図6に示した動翼の翼頂部に対するスムージング加工を説明する図である。
【図8】図7に示した動翼の翼頂部に対する本肉盛溶接加工を説明する図である。
【図9】図8に示した動翼の翼頂部に対する冷却孔再加工を説明する図である。
【図10】図1に示した動翼のプラットホーム部を抜き出した図である。
【図11】図10に示した動翼のプラットホーム部のB−B線矢視断面図である。
【図12】図11に示した動翼のプラットホーム部に対する開先加工を説明する図である。
【図13】図12に示した動翼のプラットホーム部に対する孔埋め加工を説明する図である。
【図14】図13に示した動翼のプラットホーム部に対するスムージング加工を説明する図である。
【図15】図14に示した動翼のプラットホーム部に対する本肉盛溶接加工を説明する図である。
【図16】図15に示した動翼のプラットホーム部に対する冷却孔再加工を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る金属部品の補修方法及び補修された金属部品の実施形態について、そのいくつかを図1〜図16を参照して説明する。なお、以下の実施例においては、ガスタービンの動翼を例にとって説明を行うが、本発明は、他の金属部品、例えば、ガスタービンの静翼、ジェットエンジンの部品等にも適用可能である。
【0016】
(実施例1)
まず、図1、図2を参照して、ガスタービンの動翼を簡単に説明する。動翼11は、図1に示すように、タービンロータ(図示省略)の外周方向に延設される翼本体12と、翼本体12の内周側の基部に設けられたプラットホーム部13と、プラットホーム部13の内周側に設けられた固定部14とを一体化したものである。このような動翼11は、1000℃以上の高温に曝されるため、ニッケル基超合金、コバルト基超合金等の金属が用いられている。又、翼本体12は、図2に示すように、中空部17を有する中空構造となっており、翼本体12を空冷するために、中空部17から翼本体12の表面側へ貫通する複数の冷却孔15が設けられている。又、プラットホーム部13にも空冷のための冷却孔16が複数設けられている。
【0017】
そして、本実施例では、図1及び図3に示すように、翼頂部12aに発生した亀裂Cを対象としている。本実施例の場合、亀裂Cを含む領域が補修部位21となるが、亀裂Cの周りに冷却孔15がある場合、つまり、補修部位21に冷却孔15が含まれるとき、補修部位21の肉盛溶接を行った場合には、前述したように、冷却孔15を基点に、溶接割れが発生しやすかった。
【0018】
そのため、本実施例では、溶接割れを低減するため、まず、冷却孔15の孔埋めを行った後に肉盛溶接層を形成し、その後、孔埋め部分及び肉盛部分に冷却孔15を再加工することにより、補修を行っている。この補修方法の具体的な手順を、図4〜図9を参照して説明する。
【0019】
(1)補修部位の開先加工
最初に、亀裂C及び近傍の冷却孔15の一部を含む補修部位21の開先加工を行う。この開先加工は、例えば、グラインダ、放電加工、機械加工が望ましく、これにより、動翼11の表面側から整形加工している(図4、図5参照)。なお、後述するように、冷却孔15にワイヤ22を挿入する場合には、先にワイヤ22を挿入し、その後、補修部位21の開先加工を行うことにより、挿入したワイヤ22も同時に開先加工してよい。
【0020】
(2)冷却孔の孔埋め施工
次に、冷却孔15に対して孔埋め施工を行う。具体的には、以下の(2a)〜(2d)の方法が適用可能である。
【0021】
(2a)ワイヤ挿入+溶接
冷却孔15にワイヤ22を挿入し、TIG溶接、レーザ溶接、ろう付等を用いて、挿入したワイヤ22と冷却孔15の周囲とを溶接材23により溶接することにより、孔埋め施工を行う(図6参照)。このとき、挿入したワイヤ22と冷却孔15の周囲とは、少なくとも、開先加工側(図6中では外側)において溶接を行うが、ワイヤ22を支持するため、開先加工側の反対側(図6中では中空部17側)で溶接してもよい。
【0022】
(2b)肉盛溶接
冷却孔15に対して、TIG肉盛溶接、レーザ粉体肉盛溶接、ろう付等を行うことにより、孔埋め施工を行う。
【0023】
(2c)冷却孔自体の開先加工+肉盛溶接
冷却孔15が細い場合には、冷却孔15自体の開先加工を先に行い、その後、TIG肉盛溶接、レーザ粉体肉盛溶接、ろう付等を行うことにより、孔埋め施工を行う。
【0024】
(2d)その他
冷却孔15に対して、粉末挿入、溶射、機械的なかしめ等を行うことにより、孔埋め施工を行う。
【0025】
孔埋め施工方法しては、上記(2a)〜(2d)の方法が適用可能であるが、動翼11のような金属部品は、狭隘部位(冷却孔15)での溶接割れ及び融合不良が懸念されるため、低入熱手法であったり、冷却孔15の開先加工を行ったりする(2a)又は(2c)の方法が望ましい。特に、[ワイヤ挿入+TIG溶接]又は[冷却孔自体の開先加工+TIG肉盛溶接]の場合は、予め、冷却孔15の長手方向に沿って奥の方まで孔埋めしているため、本肉盛溶接時における冷却孔15の影響を最小限にでき、より効果的に、肉盛補修溶接の安定化、溶接割れを防止することができる。
【0026】
又、いずれの孔埋め施工の場合であっても、溶接割れの発生を抑制するために、ワイヤ22、溶接材23等の孔埋め材料の材質は、動翼11を構成する母材より柔らかい材料がよく、共金系材料(Ni基合金、Co基合金)で、Ti、Alの少ない溶接割れの発生しにくい材料(例えば、インコネル625)が望ましい。
【0027】
(3)孔埋め部のスムージング
次の手順で行う本肉盛溶接を安定させるため、グラインダ等を用いて、孔埋め部24の余肉のスムージングを行う(図7参照)。
【0028】
(4)開先部の本肉盛溶接
補修部位21を、TIG肉盛溶接、レーザ粉体肉盛溶接等を用いて、本肉盛溶接を行い、肉盛部25を形成する(図8参照)。このとき、補修部位21を高温で予熱して、TIG肉盛溶接、レーザ粉体肉盛溶接等を行ってもよい。従来、冷却孔15を埋めていない場合には、冷却孔15の存在により、肉盛が不安定となり、肉盛り部分が割れるおそれがあるが、冷却孔15を孔埋めした本実施例の場合、肉盛が安定化し、肉盛部の割れ防止が可能となる。なお、肉盛部分の材料としては、インコネル738LCをベースとした材料を用いている。
【0029】
(5)冷却孔の再加工
放電加工、機械加工等を用いて、補修部位21に冷却孔15を再加工する(図9参照)。これにより、冷却孔15を埋めた材料(ワイヤ22、一部の肉盛部25)は、再加工によって取り除かれることになる。
【0030】
上述した手順により、動翼11の翼頂部12aの冷却孔15近傍の肉盛溶接補修を行う場合でも、溶接割れを低減して、肉盛溶接補修を行うことができ、補修部位の高強度化を図ることが可能となる。つまり、金属部品に対して、許容欠陥を超える亀裂が無く、品質の高い肉盛溶接補修方法を提供することになり、又、許容欠陥を超える亀裂が無く、品質の高い肉盛溶接補修した金属部品を提供することが可能となる。
【0031】
(実施例2)
本実施例では、図1及び図10に示すように、プラットホーム部13に発生した亀裂Cを対象としている。本実施例の場合、亀裂Cを含む領域が補修部位31となるが、冷却孔16まで到達する亀裂Cが発生したとき、つまり、補修部位31に冷却孔16が含まれるとき、従来は補修自体を断念していた。又、補修部位31の肉盛溶接を行った場合には、前述したように、冷却孔16を基点に、溶接割れが発生しやすかった。
【0032】
そのため、本実施例でも、溶接割れを低減するため、まず、冷却孔16の孔埋めを行った後に肉盛溶接層を形成し、その後、孔埋め部分及び肉盛部分に冷却孔16を再加工することにより、補修を行っている。この補修方法の具体的な手順を、図11〜図16を参照して説明する。
【0033】
(1)補修部位の開先加工
最初に、亀裂C及び近傍の冷却孔16の一部を含む補修部位31の開先加工を行うが、本実施例の場合、先にワイヤ32を冷却孔16に挿入し、その後、補修部位31の開先加工を行うことにより、挿入したワイヤ32の一部も同時に開先加工している(図11、図12参照)。この開先加工は、例えば、グラインダ、放電加工、機械加工が望ましく、これにより、動翼11の表面側から整形加工している。放電加工の場合、補修部位31と併せて、挿入したワイヤ32も精度良く、加工可能となる。
【0034】
(2)冷却孔の孔埋め施工
次に、開先加工面の孔埋めを行う。具体的には、開先加工面において、TIG溶接、レーザ溶接、ろう付等を用いて、挿入したワイヤ32と冷却孔16の周囲とを溶接材33により溶接することにより、孔埋め施工を行う(図13参照)。
【0035】
動翼11のような金属部品は、狭隘部位(冷却孔16)での溶接割れ及び融合不良が懸念されるため、孔埋め施工方法しては、低入熱手法である[ワイヤ挿入+TIG溶接]が望ましい。この場合、予め、冷却孔16の長手方向に沿って奥の方まで孔埋めしているため、本肉盛溶接時における冷却孔16の影響を最小限にでき、より効果的に、肉盛補修溶接の安定化、溶接割れを防止することができる。
【0036】
又、溶接割れの発生を抑制するために、ワイヤ32、溶接材33等の孔埋め材料の材質は、動翼11を構成する母材より柔らかい材料がよく、共金系材料(Ni基合金、Co基合金)で、Ti、Alの少ない溶接割れの発生しにくい材料(例えば、インコネル625)が望ましい。
【0037】
(3)孔埋め部のスムージング
次の手順で行う本肉盛溶接を安定させるため、グラインダ等を用いて、孔埋め部34の余肉のスムージングを行う(図14参照)。
【0038】
(4)開先部の本肉盛溶接
補修部位31を、TIG肉盛溶接、レーザ粉体肉盛溶接等を用いて、本肉盛溶接を行い、肉盛部35を形成する(図15参照)。このとき、補修部位31を高温で予熱して、TIG肉盛溶接、レーザ粉体肉盛溶接等を行ってもよい。従来、冷却孔16を埋めていない場合、冷却孔16の存在により、肉盛が不安定となり、肉盛り部分が割れるおそれがあるが、冷却孔16を孔埋めした本実施例の場合、肉盛が安定化し、肉盛部の割れ防止が可能となる。なお、肉盛部分の材料としては、インコネル738LCをベースとした材料を用いている。
【0039】
(5)冷却孔の再加工
放電加工、機械加工等を用いて、補修部位31に冷却孔16を再加工する(図16参照)。これにより、冷却孔16を埋めた材料(ワイヤ32、一部の肉盛部35)は、再加工によって取り除かれることになる。
【0040】
上述した手順により、動翼11のプラットホーム部13の冷却孔16近傍の肉盛溶接補修を行う場合でも、溶接割れを低減して、肉盛溶接補修を行うことができ、補修部位の高強度化を図ることが可能となる。つまり、金属部品に対して、許容欠陥を超える亀裂が無く、品質の高い肉盛溶接補修方法を提供することになり、又、許容欠陥を超える亀裂が無く、品質の高い肉盛溶接補修した金属部品を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、高温に曝されると共に冷却孔を有する金属部品、例えば、ガスタービンの動翼、静翼を溶接補修する際に好適なものである。
【符号の説明】
【0042】
11 動翼
12 翼本体
12a 翼頂部
12b 翼面
13 プラットホーム部
15、16 冷却孔
21、31 補修部位
22、32 ワイヤ
25、35 肉盛部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温に曝されると共に冷却のための冷却孔を有する金属部品において、前記冷却孔の周りに発生した亀裂を補修する金属部品の補修方法であって、
前記亀裂と共に前記冷却孔の一部を当該金属部品の表面側から開先加工し、
開先加工後、共金系材料を用いて、前記冷却孔を孔埋め加工し、
孔埋め加工した部分をスムージング加工し、
開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行い、
孔埋め加工した部分及び肉盛溶接した部分に、当初の冷却孔を再加工して、当該金属部品を肉盛溶接により補修することを特徴とする金属部品の補修方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属部品の補修方法において、
前記孔埋め加工は、
前記冷却孔に共金系材料からなるワイヤを挿入すると共に、共金系材料を用いて、前記冷却孔の周囲と前記ワイヤとを溶接するか、
又は、
前記冷却孔自身を当該金属部品の表面側から開先加工し、当該開先加工部分を、共金系材料を用いて、肉盛溶接するか、
いずれか一方であることを特徴とする金属部品の補修方法。
【請求項3】
高温に曝されると共に冷却のための冷却孔を有する金属部品において、前記冷却孔の周りに発生した亀裂を補修する金属部品の補修方法であって、
前記冷却孔に共金系材料からなるワイヤを挿入し、
前記亀裂と共に前記冷却孔の一部及び前記ワイヤの一部を当該金属部品の表面側から開先加工し、
開先加工後、共金系材料を用いて、前記冷却孔の周囲と前記ワイヤとを溶接し、
溶接した部分をスムージング加工し、
開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行い、
前記ワイヤを挿入した部分及び肉盛溶接した部分に、当初の冷却孔を再加工して、当該金属部品を肉盛溶接により補修することを特徴とする金属部品の補修方法。
【請求項4】
高温に曝されると共に冷却のための冷却孔を有する金属部品であって、
前記冷却孔の周りに発生した亀裂と共に前記冷却孔の一部を当該金属部品の表面側から開先加工し、
開先加工後、共金系材料を用いて、前記冷却孔を孔埋め加工し、
孔埋め加工した部分をスムージング加工し、
開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行い、
孔埋め加工した部分及び肉盛溶接した部分に、当初の冷却孔を再加工することによって、
肉盛溶接により補修された補修部位を具備することを特徴とする補修された金属部品。
【請求項5】
請求項4に記載の補修された金属部品において、
前記孔埋め加工は、
前記冷却孔に共金系材料からなるワイヤを挿入すると共に、共金系材料を用いて、前記冷却孔の周囲と前記ワイヤとを溶接するか、
又は、
前記冷却孔自身を当該金属部品の表面側から開先加工し、当該開先加工部分を、共金系材料を用いて、肉盛溶接するか、
いずれか一方であることを特徴とする補修された金属部品。
【請求項6】
高温に曝されると共に冷却のための冷却孔を有する金属部品であって、
前記冷却孔に共金系材料からなるワイヤを挿入し、
前記冷却孔の周りに発生した亀裂と共に前記冷却孔の一部及び前記ワイヤの一部を当該金属部品の表面側から開先加工し、
開先加工後、共金系材料を用いて、前記冷却孔の周囲と前記ワイヤとを溶接し、
溶接した部分をスムージング加工し、
開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行い、
前記ワイヤを挿入した部分及び肉盛溶接した部分に、当初の冷却孔を再加工することによって、
肉盛溶接により補修された補修部位を具備することを特徴とする補修された金属部品。
【請求項1】
高温に曝されると共に冷却のための冷却孔を有する金属部品において、前記冷却孔の周りに発生した亀裂を補修する金属部品の補修方法であって、
前記亀裂と共に前記冷却孔の一部を当該金属部品の表面側から開先加工し、
開先加工後、共金系材料を用いて、前記冷却孔を孔埋め加工し、
孔埋め加工した部分をスムージング加工し、
開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行い、
孔埋め加工した部分及び肉盛溶接した部分に、当初の冷却孔を再加工して、当該金属部品を肉盛溶接により補修することを特徴とする金属部品の補修方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属部品の補修方法において、
前記孔埋め加工は、
前記冷却孔に共金系材料からなるワイヤを挿入すると共に、共金系材料を用いて、前記冷却孔の周囲と前記ワイヤとを溶接するか、
又は、
前記冷却孔自身を当該金属部品の表面側から開先加工し、当該開先加工部分を、共金系材料を用いて、肉盛溶接するか、
いずれか一方であることを特徴とする金属部品の補修方法。
【請求項3】
高温に曝されると共に冷却のための冷却孔を有する金属部品において、前記冷却孔の周りに発生した亀裂を補修する金属部品の補修方法であって、
前記冷却孔に共金系材料からなるワイヤを挿入し、
前記亀裂と共に前記冷却孔の一部及び前記ワイヤの一部を当該金属部品の表面側から開先加工し、
開先加工後、共金系材料を用いて、前記冷却孔の周囲と前記ワイヤとを溶接し、
溶接した部分をスムージング加工し、
開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行い、
前記ワイヤを挿入した部分及び肉盛溶接した部分に、当初の冷却孔を再加工して、当該金属部品を肉盛溶接により補修することを特徴とする金属部品の補修方法。
【請求項4】
高温に曝されると共に冷却のための冷却孔を有する金属部品であって、
前記冷却孔の周りに発生した亀裂と共に前記冷却孔の一部を当該金属部品の表面側から開先加工し、
開先加工後、共金系材料を用いて、前記冷却孔を孔埋め加工し、
孔埋め加工した部分をスムージング加工し、
開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行い、
孔埋め加工した部分及び肉盛溶接した部分に、当初の冷却孔を再加工することによって、
肉盛溶接により補修された補修部位を具備することを特徴とする補修された金属部品。
【請求項5】
請求項4に記載の補修された金属部品において、
前記孔埋め加工は、
前記冷却孔に共金系材料からなるワイヤを挿入すると共に、共金系材料を用いて、前記冷却孔の周囲と前記ワイヤとを溶接するか、
又は、
前記冷却孔自身を当該金属部品の表面側から開先加工し、当該開先加工部分を、共金系材料を用いて、肉盛溶接するか、
いずれか一方であることを特徴とする補修された金属部品。
【請求項6】
高温に曝されると共に冷却のための冷却孔を有する金属部品であって、
前記冷却孔に共金系材料からなるワイヤを挿入し、
前記冷却孔の周りに発生した亀裂と共に前記冷却孔の一部及び前記ワイヤの一部を当該金属部品の表面側から開先加工し、
開先加工後、共金系材料を用いて、前記冷却孔の周囲と前記ワイヤとを溶接し、
溶接した部分をスムージング加工し、
開先加工した部分及びスムージング加工した部分に肉盛溶接を行い、
前記ワイヤを挿入した部分及び肉盛溶接した部分に、当初の冷却孔を再加工することによって、
肉盛溶接により補修された補修部位を具備することを特徴とする補修された金属部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−20308(P2012−20308A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159339(P2010−159339)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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