説明

金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物およびその製造方法

【課題】各種機能を有し、耐熱性および耐湿熱性に優れたシリコーン材料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】有機溶媒中、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の存在下で、金属酸化物微粒子と、下記平均組成式(1)R1aSiOb(OR2c (1)(式中、R1は水素原子またはオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基であり、R1が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、R2は水素原子またはアルキル基であり、R2が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、aは0を超えて2未満、bは0を超えて2未満、cは0を超えて4未満、かつa+b×2+c=4である)で表される多官能ポリシロキサンとを混合した金属酸化物微粒子分散体と、ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーンとを混合したポリシロキサン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物微粒子とポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーンとを含有し、金属酸化物微粒子が高分散したポリシロキサン組成物および金属酸化物微粒子含有シリコーン材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、耐久性に優れるシロキサン材料に各種機能を付与する手段として、シロキサン骨格を有するバインダー(以下、「シロキサン系バインダー」ともいう)と各種金属酸化物との複合化が検討されている。このシロキサン系バインダーの1つとして、シリコーンが知られている。このシリコーンは通常200℃以上の高温下でない限り劣化せず、耐熱性、耐紫外線性に優れたシロキサン系バインダーとして有用であり、さらに柔軟性にも優れている点で様々な用途に使用される。ところが、シリコーンに各種機能を付与するために金属酸化物微粒子を配合した場合、金属酸化物微粒子含有シリコーン材料は耐熱性、耐湿熱性に劣るという問題があった。
【0003】
また、シリコーンと金属酸化物とを複合化する場合、これらは分散液の形態で調製されることが多い。ところが、シリコーンは水に溶け難いため、分散媒として有機溶剤を使用する必要があり、一方、金属酸化物微粒子は有機溶媒中で凝集しやすいため、水媒体中に分散させることが多い。このため、有機溶媒中に金属酸化物微粒子を微分散させるには、炭素数6以上の有機基を有するリン酸、スルホン酸またはカルボン酸(特許文献1参照)、オキシアルキレン基を有する有機化合物、オキシアルキレン基を有するリン酸等のエステル(特許文献2参照)、あるいはオキシアルキレン基を有するシラン化合物(特許文献3参照)を用いる必要があった。
【0004】
しかしながら、これらの化合物を使用して金属酸化物微粒子を有機溶媒中に微分散させる方法で、金属酸化物微粒子とシリコーンとを複合化させた場合、分散液の分散性は良好であるが、溶媒を除去して金属酸化物微粒子を含有するシリコーン材料を形成すると、このシリコーン材料には、炭素数6以上の有機基を有するリン酸等やオキシアルキレン基を有する化合物が残存するが、これらの化合物とシリコーンとの相溶性が悪いため、相分離したり、これらの化合物が紫外線照射下や150℃以上の高温下等の過酷な環境下では変色(黄変)したり、クラック発生等の不具合が生じることがあった。
【特許文献1】特開2004−283822号公報
【特許文献2】特開2005−185924号公報
【特許文献3】特開2004−99879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、各種機能を有し、耐熱性および耐湿熱性に優れたシリコーン材料、ならびにこのようなシリコーン材料が得られ、金属酸化物微粒子が高度に分散したポリシロキサン組成物およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーンと金属酸化物微粒子とを配合したシリコーン材料を多湿下で保持すると、シリコーンが分解されてシリコーン材料の劣化が起こることを見出した。この分解機構の詳細は明らかではないが、シリコーンの加水分解劣化であると推測された。また、金
属酸化物微粒子の一次粒子径が小さいほどシリコーンの加水分解劣化が起こりやすいことを見出した。そこで、金属酸化物微粒子をシランモノマー等のシランカップリング剤で表面処理したが、シリコーンの加水分解劣化を十分に抑制することはできなかった。
【0007】
本発明者は、予め金属酸化物微粒子を有機溶媒中で多官能ポリシロキサンにより処理し、得られた金属酸化物微粒子分散体とポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーンとを混合することによって、シリコーンの分解劣化を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物は、有機溶媒中、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の存在下で、金属酸化物微粒子と、下記平均組成式(1)
1aSiOb(OR2c (1)
(式中、R1は水素原子またはオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基であり、
1が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、R2は水素原子またはアルキル基であり、R2が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていて
もよく、aは0を超えて2未満、bは0を超えて2未満、cは0を超えて4未満、かつa+b×2+c=4である)
で表される多官能ポリシロキサンとを混合して、前記金属酸化物微粒子を有機溶媒中に分散させることにより得られる金属酸化物微粒子分散体と、
ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーンとを混合してなることを特徴とする。
【0009】
前記金属酸化物微粒子分散体の水含有率は5重量%以下であることが好ましい。
前記金属酸化物微粒子と前記多官能ポリシロキサンとを塩基性化合物の存在下で混合することが好ましい。
【0010】
前記塩基性化合物は有機アミン化合物であることが好ましい。
前記多官能ポリシロキサンの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値で1,000〜100,000の範囲にあることが好ましい。
【0011】
前記金属酸化物微粒子と前記多官能ポリシロキサンとをビーズミルにより混合することが好ましい。
前記金属酸化物微粒子100重量部に対して、前記多官能ポリシロキサンを完全加水分解縮合物換算で1〜1000重量部混合することが好ましい。
【0012】
本発明に係る金属酸化物微粒子含有シリコーン材料は上記金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物から得られる。
本発明に係るLED封止材は、上記金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物から得られ、前記金属酸化物微粒子が蛍光体である。
【0013】
本発明に係る金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物の製造方法は、有機溶媒中、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の存在下で、金属酸化物微粒子と、下記平均組成式(1)
1aSiOb(OR2c (1)
(式中、R1は水素原子またはオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基であり、
1が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、R2は水素原子またはアルキル基であり、R2が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていて
もよく、aは0を超えて2未満、bは0を超えて2未満、cは0を超えて4未満、かつa+b×2+c=4である)
で表される多官能ポリシロキサンとを混合して、前記金属酸化物微粒子を有機溶媒中に分散させて金属酸化物微粒子分散体を調製した後、
該金属酸化物微粒子分散体とポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーンとを混合することを特徴とする。
【0014】
前記金属酸化物微粒子と前記多官能ポリシロキサンとを塩基性化合物の存在下で混合することが好ましく、前記金属酸化物微粒子と前記多官能ポリシロキサンとをビーズミルにより混合することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、炭素数6以上の有機基を有するリン酸等やオキシアルキレン基を有する化合物を使用せずに、ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーンを含有する有機溶媒に金属酸化物微粒子が高度に分散した組成物が得られる。この組成物は分散安定性に優れているとともに、金属酸化物微粒子とポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーンとを含有する機能性シリコーン材料を形成できる。このシリコーン材料は耐熱性および耐湿熱性に優れている。また、このシリコーン材料は、実質的に上記化合物を含まないため、過酷な環境下で変色(黄変)やクラック発生等の不具合が生じない。特に、金属酸化物微粒子として高屈折性の金属酸化物微粒子を用いた機能性シリコーン材料は、発光素子として青色LED素子や紫外線LED素子を用いたLED素子の封止材として用いることができ、特に高輝度のLED素子の封止材に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物は、炭素数6以上の有機基を有するリン酸等やオキシアルキレン基を有する化合物を使用せずに、多官能ポリシロキサンを含有する有機溶媒中に金属酸化物微粒子が高度に分散した金属酸化物微粒子分散体と、ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーンとを混合することによって得ることができる。
【0017】
〔金属酸化物微粒子分散体〕
本発明に用いられる金属酸化物微粒子分散体は、金属酸化物微粒子と、水酸基および/またはアルコキシ基を有する多官能ポリシロキサン(以下、単に「多官能ポリシロキサン」という)とを、炭素数6以上の有機基を有するリン酸等やオキシアルキレン基を有する化合物を使用せずに、有機溶媒中、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の存在下で混合して分散処理を施すことにより得ることができる。この微粒子分散体は、金属酸化物微粒子が、体積平均分散粒径が300nm以下の高分散で分散した分散体である。
【0018】
また、上記金属酸化物微粒子分散体は、実質的に水分を含まないことが好ましく、具体的には、水分含有率が5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、1重量%以下が特に好ましい。
【0019】
(金属酸化物微粒子)
本発明に用いられる金属酸化物微粒子は、金属元素の酸化物微粒子であればその種類は特に限定されないが、たとえば、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化プラセオジウム、酸化ネオジウム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビニウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム、酸化カルシウム、酸化ガリウム、酸化リチウム、酸化ストロンチ
ウム、酸化タングステン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、およびこれらの複合体、ならびにインジウム−スズ複合酸化物などの上記金属2種以上の複合体の酸化物などの金属酸化物微粒子が挙げられる。
【0020】
本発明において、金属酸化物微粒子は、1種単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。金属酸化物微粒子は、付与する機能に応じて適宜選択することができるが、たとえば、高屈折性を付与する場合にはTiO2微粒子やZrO2微粒子が好ましい。
【0021】
このような酸化物微粒子は、溶媒に分散されていない粉体の状態で添加しても、イソプロピルアルコールなどの極性溶媒中やトルエンなどの非極性溶媒中に分散した分散体の状態で添加してもよい。添加前の酸化物微粒子は、凝集して二次粒子を形成していてもよい。本発明では、ポリシロキサンの溶解性を考慮して適切な有機溶媒を適宜選択できる点で、粉体を使用することが好ましい。また、本発明の製造方法は、粉体の状態で添加する場合に、特に有効である。
【0022】
(多官能ポリシロキサン)
上記多官能ポリシロキサンは、下記平均組成式(1)
1aSiOb(OR2c (1)
で表される、水酸基および/またはアルコキシ基を有する多官能ポリシロキサンであり、3次元架橋構造を有することが好ましい。
【0023】
式(1)中、R1は水素原子またはオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基で
あり、R1が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、R2は水素原子またはアルキル基であり、R2が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっ
ていてもよい。aは0を超えて2未満、bは0を超えて2未満、cは0を超えて4未満、かつa+b×2+c=4である。R1、R2がそれぞれ複数存在する場合には、aは、水素原子とオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基との合計のケイ素原子に対する割合、cは、水酸基とアルコキシ基との合計のケイ素原子に対する割合を表す。
【0024】
上記多官能ポリシロキサンの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値で、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは1,000〜80,000、特に好ましくは1,500〜70,000である。上記範囲の重量平均分子量を有するポリシロキサンを使用すると、金属酸化物微粒子の表面が上記多官能ポリシロキサンで十分に保護され、シリコーンの加水分解劣化を抑制することができる。
【0025】
上記1価の炭化水素基は、オキシアルキレン基を有しなければ特に限定されないが、置換または無置換の1価の炭化水素基が挙げられる。上記1価の無置換炭化水素基としては、炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。また、上記1価の置換炭化水素基としては、炭素数1〜8の置換アルキル基が挙げられる。上記置換アルキル基の置換基としては、ハロゲン、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、グリシジル基、グリシドキシ基、ウレイド基などが挙げられる。
【0026】
また、上記R2で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イ
ソプロピル基、ブチル基などが挙げられる。これらのアルキル基のうち、メチル基、エチル基が好ましい。
【0027】
この多官能ポリシロキサンは、たとえば、上記平均組成式を満たすように、多官能のア
ルコキシシランまたは多官能クロロシランを適宜組み合わせて加水分解・縮合させることによって製造できる。ただし、テトラアルコキシシラン類のみでの加水分解・縮合、およびジアルコキシシラン類のみでの加水分解・縮合は除く。
【0028】
上記多官能のアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン類;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン類が挙げられる。これらのアルコキシシラン類は1種単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0029】
また、多官能のアルコキシシランに加えて、1官能のアルコキシシランを併用することもできる。1官能のアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシランなどが挙げられる。これらの1官能のアルコキシシランは、使用するアルコキシシラン全量に対して、10重量%以下、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下で使用することが望ましい。
【0030】
また、アルコキシ基含有ポリシロキサンとして、信越シリコーン社製のX40−9220、X40−9225(以上、商品名)、GE東芝シリコーン社製のXR31−B1410、XR31−B0270、XR31−B2733(以上、商品名)などの市販のシロキサンポリマーを用いることもできる。
【0031】
本発明の金属酸化物微粒子分散体は、上記金属酸化物微粒子100重量部に対して、上記多官能ポリシロキサンを完全加水分解縮合物換算で、好ましくは1〜1000重量部、
より好ましくは5〜900重量部、特により好ましくは10〜800重量部含有することが望ましい。
【0032】
(有機溶媒)
上記有機溶媒としては、たとえば、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などを挙げることができる。上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、i−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレンモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコールなどを挙げることができる。また、芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、エーテル類としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられ、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられ、エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ノルマルプロピル、乳酸イソプロピル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの有機溶媒のうち、アルコール以外の有機溶媒、たとえば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが好ましい。また、これらの有機溶媒は、予め脱水処理を施して、水分を除去した状態で使用することが好ましい。
【0033】
上記有機溶媒の使用量は、金属酸化物微粒子を均一に分散できる量であれば特に制限されないが、得られる金属酸化物微粒子分散体の固形分濃度が、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは7〜70重量%、特に好ましくは10〜60重量%となる量である。
【0034】
(塩基性化合物)
上記塩基性化合物としては、アンモニア(アンモニア水溶液を含む)、有機アミン化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属のアルコキシドが挙げられる。これらのうち、アンモニアおよび有機アミン化合物が好ましい。
【0035】
有機アミンとしては、アルキルアミン、アルコキシアミン、アルカノールアミン、アリールアミンなどが挙げられる。
アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどの炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルアミンなどが挙げられる。
【0036】
アルコキシアミンとしては、メトキシメチルアミン、メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、メトキシブチルアミン、エトキシメチルアミン、エトキシエチルアミン、エトキシプロピルアミン、エトキシブチルアミン、プロポキシメチルアミン、プロポキシエチルアミン、プロポキシプロピルアミン、プロポキシブチルアミン、ブトキシメチルアミン、ブトキシエチルアミン、ブトキシプロピルアミン、ブトキシブチルアミンなどの炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシアミンなどが挙げられる。
【0037】
アルカノールアミンとしては、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールア
ミン、ブタノールアミン、N−メチルメタノールアミン、N−エチルメタノールアミン、N−プロピルメタノールアミン、N−ブチルメタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−エチルプロパノールアミン、N−プロピルプロパノールアミン、N−ブチルプロパノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N−プロピルブタノールアミン、N−ブチルブタノールアミン、N,N−ジメチルメタノールアミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジプロピルメタノールアミン、N,N−ジブチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジエチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルプロパノールアミン、N,N−ジブチルプロパノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N,N−ジエチルブタノールアミン、N,N−ジプロピルブタノールアミン、N,N−ジブチルブタノールアミン、N−メチルジメタノールアミン、N−エチルジメタノールアミン、N−プロピルジメタノールアミン、N−ブチルジメタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−エチルジプロパノールアミン、N−プロピルジプロパノールアミン、N−ブチルジプロパノールアミン、N−メチルジブタノールアミン、N−エチルジブタノールアミン、N−プロピルジブタノールアミン、N−ブチルジブタノールアミン、N−(アミノメチル)メタノールアミン、N−(アミノメチル)エタノールアミン、N−(アミノメチル)プロパノールアミン、N−(アミノメチル)ブタノールアミン、N−(アミノエチル)メタノールアミン、N−(アミノエチル)エタノールアミン、N−(アミノエチル)プロパノールアミン、N−(アミノエチル)ブタノールアミン、N−(アミノプロピル)メタノールアミン、N−(アミノプロピル)エタノールアミン、N−(アミノプロピル)プロパノールアミン、N−(アミノプロピル)ブタノールアミン、N−(アミノブチル)メタノールアミン、N−(アミノブチル)エタノールアミン、N−(アミノブチル)プロパノールアミン、N−(アミノブチル)ブタノールアミンなどの炭素数1〜4のアルキル基を有するアルカノールアミンが挙げられる。
【0038】
アリールアミンとしてはアニリン、N−メチルアニリンなどが挙げられる。
さらに、上記以外の有機アミンとして、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイドなどのテトラアルキルアンモニウムハイドロキサイド;テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラプロピルエチレンジアミン、テトラブチルエチレンジアミンなどのテトラアルキルエチレンジアミン;メチルアミノメチルアミン、メチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルアミノブチルアミン、エチルアミノメチルアミン、エチルアミノエチルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノブチルアミン、プロピルアミノメチルアミン、プロピルアミノエチルアミン、プロピルアミノプロピルアミン、プロピルアミノブチルアミン、ブチルアミノメチルアミン、ブチルアミノエチルアミン、ブチルアミノプロピルアミン、ブチルアミノブチルアミンなどのアルキルアミノアルキルアミン;ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モルホリン、メチルモルホリン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセンなども挙げられる。
【0039】
このような塩基性化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、ピリジンが特に好ましい。
【0040】
(酸性化合物)
上記酸性化合物としては、有機酸および無機酸が挙げられる。有機酸としては、たとえば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、ミキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、メタンスルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。上記無機酸としては、たとえば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸などが挙げられる。
【0041】
このような酸性化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、マレイン酸、無水マレイン酸、メタンスルホン酸、酢酸が特に好ましい。
(金属キレート化合物)
上記金属キレート化合物としては、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物(以下、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物をまとめて、「有機金属化合物類」という)が挙げられる。
【0042】
上記有機金属化合物類としては、たとえば、下記式(a)
M(OR7r(R8COCHCOR9s (a)
(式中、Mは、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムからなる群からを選択される少なくとも1種の金属原子を表し、R7およびR8は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などの炭素数1〜6個の1価の炭化水素基を表し、R9は、前記炭素数1〜6個の1価の炭化水素基、または、
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基などの炭素数1〜16個のアルコキシル基を表し、rおよびsは、それぞれ独立に0〜4の整数であって、(r+s)=(Mの原子価)の関係を満たす)
で表される化合物(以下、「有機金属化合物(a)」という)、
1つのスズ原子に炭素数1〜10個のアルキル基が1〜2個結合した4価のスズの有機金属化合物(以下、「有機スズ化合物」という)、あるいは、
これらの部分加水分解物などが挙げられる。
【0043】
有機金属化合物(a)として、たとえば、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物;
テトラ−i−プロポキシチタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどの有機チタン化合物;
トリ−i−プロポキシアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどの有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0044】
有機スズ化合物として、たとえば、
【0045】
【化1】

【0046】
【化2】

【0047】
【化3】

【0048】
【化4】

【0049】
などのクロライド型有機スズ化合物;
(C492SnO、(C8172SnOなどの有機スズオキサイドや、これらの有機ス
ズオキサイドとシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物;
などが挙げられる。
【0050】
このような金属キレート化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、あるいはこれらの部分加水分解物が好ましい。
【0051】
塩基性化合物、酸性化合物および金属キレート化合物のうち、塩基性化合物および酸性化合物が好ましく、塩基性化合物がより好ましく、有機アミン化合物がさらに好ましく、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、ピリジンが特に好ましい。
【0052】
上記塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物は、本発明の金属酸化物微粒子分散体に、上記金属酸化物微粒子100重量部に対して、通常0.001〜20重量部、好ましくは0.005〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは0.01〜0.5重量部含有されていることが望ましい。
【0053】
(金属酸化物微粒子分散体の調製方法)
上記金属酸化物微粒子分散体は、有機溶媒に金属酸化物微粒子と多官能ポリシロキサンと、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物とを添加し、これらを十分に混合して金属酸化物微粒子を有機溶媒中に分散させることにより調製することができる。このとき、ボールミル、サンドミル(ビーズミル,ハイシェアビーズミル)、ホジナイザー、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、プロペラミキサー、ハイシェアミキサー、ペイントシェーカーなどの公知の分散機を用いることが好ましく、特に高分散の微粒子分散体ボールミル、サンドミル(ビーズミル,ハイシェアビーズミル)が好適に使用される。上記のように、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の存在下で金属酸化物微粒子と多官能ポリシロキサンとを混合すると、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の触媒作用により金属酸化物微粒子の表面で多官能ポリシロキサンの縮合反応が進行し、金属酸化物微粒子の表面が疎水性となり、有機溶媒中に微分散しやすくなると推測される。
【0054】
このようにして調製された金属酸化物微粒子分散体は、金属酸化物微粒子の体積平均分散粒径が、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下である。
〔シリコーン〕
本発明に用いられるシリコーンは、ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーンであれば特に限定されない。例えば、側鎖、あるいは末端に、水素、アミノ基、カルボキシ基、カルビノール基、ビニル基、メタクリル基、メルカプト基等の官能基を有していてもよい。
【0055】
上記シリコーンとしては、ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業(株)製のKF96、KF96SP)、メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学工業(株)製のKF50)、メチルハイドロジェンシリコーンオイル(信越化学工業(株)製のKF99)、カルボキシル変性の反応性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製のX−22−162C、X−22−3710)、カルビノール変性の反応性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製のX−22−160AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003)、メタクリル変性の反応性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製のX−22−164A、X−22
−164C)、メルカプト変性の反応性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製のX−22−167B、KF−2001、KF−2004)、アミノ変性の反応性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製のX−22−161A)、白金触媒で硬化するSi−Hを有す
るポリジメチルシロキサンと炭素炭素二重結合を有するポリジメチルシロキサンの混合物からなるシリコーン封止材等が挙げられる。
【0056】
<金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物およびその用途>
本発明に係る金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物は、上記金属酸化物微粒子分散体とポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーンとを混合することによって得ることができる。この組成物は、金属酸化物微粒子が均一に分散し、金属酸化物微粒子の体積平均分散粒径が、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。
【0057】
この組成物は、金属酸化物微粒子とポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーンとを含有するが、金属酸化物微粒子の表面が上記多官能ポリシロキサンで保護されているため、シリコーンが加水分解劣化されず、この組成物から、たとえば、乾燥等により溶媒を除去して形成される金属酸化物微粒子含有シリコーン材料は、耐熱性、耐湿熱性に優れている。
【0058】
さらに、上記組成物中では、金属酸化物微粒子が、炭素数6以上の有機基を有するリン酸等やオキシアルキレン基を有する化合物を使用せずに、高度に分散されているため、過酷な環境下に曝しても劣化せず、耐久性に優れた金属酸化物微粒子含有シリコーン材料を形成できる。また、このシリコーン材料には、架橋構造に炭素−炭素結合が存在せず、耐紫外線性にも優れている。たとえば、上記シリコーン材料は、5000mW/m2、20
0時間の紫外線照射によっても黄変(黄色化)しない。
【0059】
また、本発明の金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物は、さらに蛍光体を含有することができ、このポリシロキサン組成物から得られる金属酸化物微粒子含有シリコーン材料はLED封止材として使用できる。
【0060】
金属酸化物微粒子分散体とポリジメチルシロキサンとの混合方法は、特に制限されず、従来公知の混合方法、たとえば、攪拌機を用いて攪拌してもよい。
金属酸化物微粒子分散体の配合量は、ポリジメチルシロキサン100重量部に対して、金属酸化物微粒子換算で0.1〜1000重量部が好ましく、1〜500重量部がより好ましく、5〜300重量部が特に好ましい。金属酸化物微粒子とポリジメチルシロキサンとの混合比が上記範囲にあると、ポリジメチルシロキサンに各種機能を付与することがで
きるとともに、ポリジメチルシロキサンの分解劣化を抑制することができる。
【0061】
また、本発明の金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物は、金属酸化物微粒子含有シリコーン材料の収縮−膨張を緩和するためにガラス繊維を含有していてもよい。ガラス繊維を含有する組成物を使用すると厚膜の機能性シリコーン材料を形成することができる。
【0062】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特記しない限り、「重量部」および「重量%」を示す。また、実施例および比較例における各種測定は、下記の方法により行なった。
【0063】
〔GPC測定〕
シロキサンの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより下記条件で測定したポリスチレン換算値として示した。
装置:HLC−8120C(東ソー(株)製)
カラム:TSK−gel MultiporeHXL−M(東ソー社製)
溶離液:THF、流量0.5mL/min、負荷量5.0%、100μL
〔耐熱性〕
シリコーン材料を150℃で150時間保管し、保管前後のシリコーン材料の重量を測定し、下記式により重量保持率を算出した。
【0064】
重量保持率(%)=保管後のシリコーン材料重量/保管前のシリコーン材料重量×100
〔耐湿熱性〕
シリコーン材料を温度85℃、湿度85%RHで150時間保管し、保管前後のシリコーン材料の重量を測定し、下記式により重量保持率を算出した。
【0065】
重量保持率(%)=保管後のシリコーン材料重量/保管前のシリコーン材料重量×100
[調製例1]
粉体状のルチル型酸化チタン微粒子(一次平均粒径:30nm)100重量部と、多官能ポリシロキサンとしてMw=1,000のアルコキシ末端のメチル系シリコーンオリゴマー(信越化学工業(株)製、商品名:X40−9220)20重量部と、トリエチルアミン0.1重量部と、メチルエチルケトン480重量部とを容器に入れ、この混合物に0.1mm径のジルコニアビーズ2000重量部を添加して、ビーズミルを用いて1500rpmで1時間攪拌して微粒子を分散させ、固形分濃度20重量%の金属酸化物微粒子分散体(I)を得た。
【0066】
[調製例2]
ルチル型酸化チタン微粒子の代わりに粉体状の酸化亜鉛微粒子(一次平均粒径:20nm)100重量部を使用した以外は、調製例1と同様にして固形分濃度20重量%の金属酸化物微粒子分散体(II)を調製した。
【0067】
[調製例3]
ルチル型酸化チタン微粒子の代わりに粉体状の酸化ジルコニウム微粒子(一次平均粒径:20nm)100重量部を使用した以外は、調製例1と同様にして固形分濃度20重量%の金属酸化物微粒子分散体(III)を調製した。
【0068】
[調製例4]
多官能ポリシロキサンとしてシリコーンオリゴマー(X40−9220)の代わりにMw=10,000のアルコキシ末端のシリコーンポリマー(GE東芝シリコーン(株)製、商品名:XR31−B0270)20重量部を使用した以外は、調製例3と同様にして固形分濃度20重量%の金属酸化物微粒子分散体(IV)を調製した。
【0069】
[調製例5]
トリエチルアミンの代わりにメタンスルホン酸0.1重量部を使用した以外は、調製例1と同様にして固形分濃度20重量%の金属酸化物微粒子分散体(V)を調製した。
【0070】
[調製例6]
多官能ポリシロキサンの代わりに多官能シランモノマーとしてメチルトリメトキシシラン20重量部を使用した以外は、調製例1と同様にして固形分濃度20重量%の金属酸化物微粒子分散体(i)を調製した。
【0071】
[調製例7]
粉体状のルチル型酸化チタン微粒子(一次平均粒径:30nm)100重量部と、多官能ポリシロキサンとしてMw=1,000のアルコキシ末端のメチル系シリコーンオリゴマー(信越化学工業(株)製、商品名:X40−9220)100重量部と、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル(楠本化成(株)製、商品名:PLADD ED151)9重量部と、アセチルアセトン5重量部と、メチルエチルケトン700重量部とを容器に入れ、この混合物に0.1mm径のジルコニアビーズ2000重量部を添加して、ビーズミルを用いて1500rpmで1時間攪拌して微粒子を分散させ、固形分濃度20重量%の金属酸化物微粒子分散体(ii)を得た。
【0072】
[参考調製例1]
トリエチルアミンを使用しなかった以外は調製例1と同様にして粉体状のルチル型酸化チタン微粒子をメチルエチルケトンに分散させたが、酸化チタン微粒子が沈降した。
【0073】
[参考調製例2]
多官能ポリシロキサンを使用しなかった以外は調製例1と同様にして粉体状のルチル型酸化チタン微粒子をメチルエチルケトンに分散させたが、酸化チタン微粒子が沈降した。
【0074】
[参考調製例3]
多官能ポリシロキサンの代わりに、Si−OR結合(Rはアルキル基)やSi−OH結合を含有せず、両末端にメタクリル構造を有するポリジメチルシロキサン(信越化学工業(株)製、商品名:X−22−164B)使用した以外は、調製例1と同様にして粉体状のルチル型酸化チタン微粒子をメチルエチルケトンに分散させたが、酸化チタン微粒子が沈降した。
【0075】
[参考調製例4]
予め水にアナターゼ型酸化チタン微粒子を分散させた酸化チタン微粒子水分散体(石原産業(株)製「STS−01」、TiO2濃度30重量%、酸化チタン微粒子の体積平均
分散粒径:60nm、有機系分散剤:0重量%)300重量部を容器に入れ、これに、Mw=10,000のアルコキシ末端のシリコーンポリマー(GE東芝シリコーン(株)製、商品名:XR31−B0270)100重量部と、メチルエチルケトン500重量部とを添加し、さらに、この混合物に0.1mm径のジルコニアビーズ2000重量部を添加して、ビーズミルを用いて1500rpmで1時間攪拌して微粒子を分散させたが、酸化チタン微粒子が沈降した。
【0076】
[参考調製例5]
酸化チタン微粒子水分散体(石原産業(株)製「STS−01」)300重量部を容器に入れ、これに、4官能シラン化合物単独の縮合物(コルコート(株)製、商品名:エチルシリケート48)200重量部、メチルエチルケトン500重量部とを添加し、さらに、この混合物に0.1mm径のジルコニアビーズ2000重量部を添加して、ビーズミルを用いて1500rpmで1時間攪拌して微粒子を分散させたが、酸化チタン微粒子が沈降した。
【0077】
[調製例8]
メチルエチルケトンをイソプロピルアルコール500重量部に変更した以外は、参考調製例5と同様にして酸化チタン微粒子を分散させ、金属酸化物微粒子分散体(iii)を調
製した。
【0078】
【表1】

【0079】
[実施例1]
ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(GE東芝シリコーン(株)製、商品名:XF−3905)100重量部に、上記金属酸化物微粒子分散体(I)500重量部(固形分換算で100重量部、金属酸化物微粒子換算で83.3重量部)を添加し、十分に攪拌して金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物を調製した後、アルミ皿に所定量(約2gで下四桁まで秤量)を秤量し、100℃で30分、200℃で1時間乾燥させ、金属酸化物微粒子含有シリコーン材料(1)を作製した。このシリコーン材料の耐熱性試験後および耐湿熱性試験後の重量保持率を測定した。結果を表2に示す。
【0080】
[実施例2〜5]
金属酸化物微粒子分散体(I)の代わりに、それぞれ金属酸化物微粒子分散体(II)〜(V)を500重量部(固形分換算で100重量部、金属酸化物微粒子換算で83.3重量部)添加した以外は、実施例1と同様にして金属酸化物微粒子含有シリコーン材料(2)〜(5)を作製した。これらのシリコーン材料の耐熱性試験後および耐湿熱性試験後の重量保持率を測定した。結果を表2に示す。
【0081】
[実施例6]
上記金属酸化物微粒子分散体(IV)の添加量を1500重量部(固形分換算で300
重量部、金属酸化物微粒子換算で250重量部)に変更した以外は実施例4と同様にして金属酸化物微粒子含有シリコーン材料(6)を作製した。このシリコーン材料の耐熱性試験後および耐湿熱性試験後の重量保持率を測定した。結果を表2に示す。
【0082】
[比較例1]
ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(GE東芝シリコーン(株)製、商品名:XF−3905)100重量部と粉体状のルチル型酸化チタン微粒子(一次平均粒径:30nm)83.3重量部とメチルエチルケトン416.7重量部とを容器に入れ、十分に攪拌して金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物を調製した後、アルミ皿に所定量(約2gで下四桁まで秤量)を秤量し、100℃で30分、200℃で1時間乾燥させ、金属酸化物微粒子含有シリコーン材料(C1)を作製した。このシリコーン材料の耐熱性試験後および耐湿熱性試験後の重量保持率を測定した。結果を表2に示す。
【0083】
[比較例2]
ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(GE東芝シリコーン(株)製、商品名:XF−3905)100重量部と、粉体状のルチル型酸化チタン微粒子(一次平均粒径:30nm)83.3重量部と、多官能ポリシロキサンとしてMw=1,000のアルコキシ末端のメチル系シリコーンオリゴマー(信越化学工業(株)製、商品名:X40−9220)16.7重量部と、トリエチルアミン0.1重量部と、メチルエチルケトン416.7重量部とを容器に入れ、十分に攪拌して金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物を調製した後、アルミ皿に所定量(約2gで下四桁まで秤量)を秤量し、100℃で30分、200℃で1時間乾燥硬化させ、金属酸化物微粒子含有シリコーン材料(C2)を作製した。このシリコーン材料の耐熱性試験後および耐湿熱性試験後の重量保持率を測定した。結果を表2に示す。
【0084】
[比較例3〜4]
金属酸化物微粒子分散体(1)の代わりに、金属酸化物微粒子分散体(i)または(ii)を500重量部(固形分換算で100重量部、金属酸化物微粒子換算で83.3重量部)添加した以外は、実施例1と同様にして金属酸化物微粒子含有シリコーン材料(C3)または(C4)を作製した。これらのシリコーン材料の耐熱性試験後および耐湿熱性試験後の重量保持率を測定した。結果を表2に示す。シリコーン材料(C4)は、200℃乾燥直後に黄色に着色し、150℃保管時にさらに黄色の度合いが増した。
【0085】
[比較例5]
金属酸化物微粒子分散体(1)の代わりに、金属酸化物微粒子分散体(iii)を500
重量部(固形分換算で100重量部、金属酸化物微粒子換算で83.3重量部)添加した以外は、実施例1と同様にして金属酸化物微粒子含有シリコーン材料を作製したが、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンが不溶化し、析出・分離沈降した。
【0086】
[参考例1]
ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(GE東芝シリコーン(株)製、商品名:XF−3905)100重量部とメチルエチルケトン416.7重量部とを容器に入れ、十分に攪拌してポリシロキサン組成物を調製した後、アルミ皿に所定量(約2gで下四桁まで秤量)を秤量し、、100℃で30分、200℃で1時間乾燥硬化させ、シリコーン材料(R1)を作製した。このシリコーン材料の耐熱性試験後および耐湿熱性試験後の重量保持率を測定した。結果を表2に示す。
【0087】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の存在下で、金属酸化物微粒子と、下記平均組成式(1)
1aSiOb(OR2c (1)
(式中、R1は水素原子またはオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基であり、
1が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、R2は水素原子またはアルキル基であり、R2が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていて
もよく、aは0を超えて2未満、bは0を超えて2未満、cは0を超えて4未満、かつa+b×2+c=4である)
で表される多官能ポリシロキサンとを混合して、前記金属酸化物微粒子を有機溶媒中に分散させることにより得られる金属酸化物微粒子分散体と、
ポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーンとを混合してなることを特徴とする金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物。
【請求項2】
前記金属酸化物微粒子分散体の水含有率が5重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物。
【請求項3】
前記金属酸化物微粒子と前記多官能ポリシロキサンとを塩基性化合物の存在下で混合することを特徴とする請求項1または2に記載の金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物。
【請求項4】
前記塩基性化合物が有機アミン化合物であることを特徴とする請求項3に記載の金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物。
【請求項5】
前記多官能ポリシロキサンの重量平均分子量が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値で1,000〜100,000の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物。
【請求項6】
前記金属酸化物微粒子と前記多官能ポリシロキサンとをビーズミルにより混合することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物。
【請求項7】
前記金属酸化物微粒子100重量部に対して、前記多官能ポリシロキサンを完全加水分解縮合物換算で1〜1000重量部混合することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物から得られる金属酸化物微粒子含有シリコーン材料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物から得られ、前記金属酸化物微粒子が蛍光体であることを特徴とするLED封止材。
【請求項10】
有機溶媒中、塩基性化合物、酸性化合物または金属キレート化合物の存在下で、金属酸化物微粒子と、下記平均組成式(1)
1aSiOb(OR2c (1)
(式中、R1は水素原子またはオキシアルキレン基を有しない1価の炭化水素基であり、
1が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、R2は水素原子またはアルキル基であり、R2が複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていて
もよく、aは0を超えて2未満、bは0を超えて2未満、cは0を超えて4未満、かつa+b×2+c=4である)
で表される多官能ポリシロキサンとを混合して、前記金属酸化物微粒子を有機溶媒中に分散させて金属酸化物微粒子分散体を調製した後、
該金属酸化物微粒子分散体とポリジメチルシロキサン構造を有するシリコーンとを混合することを特徴とする金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物の製造方法。
【請求項11】
前記金属酸化物微粒子と前記多官能ポリシロキサンとを塩基性化合物の存在下で混合することを特徴とする請求項10に記載の金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物の製造方法。
【請求項12】
前記金属酸化物微粒子と前記多官能ポリシロキサンとをビーズミルにより混合することを特徴とする請求項10または11に記載の金属酸化物微粒子含有ポリシロキサン組成物の製造方法。

【公開番号】特開2007−270054(P2007−270054A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100011(P2006−100011)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】