鉛フリーはんだ合金及びその製造方法
【課題】 耐酸性及び軟性に優れた 鉛フリーはんだ合金、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 Sn−Zn系 鉛フリーはんだ合金に、Agを1〜5重量%添加させ、Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率を5〜20体積%に形成することで、前記 鉛フリーはんだ合金の軟性だけではなく前記合金の耐酸性を大幅に改善させる。
【解決手段】 Sn−Zn系 鉛フリーはんだ合金に、Agを1〜5重量%添加させ、Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率を5〜20体積%に形成することで、前記 鉛フリーはんだ合金の軟性だけではなく前記合金の耐酸性を大幅に改善させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は 鉛フリーはんだ合金及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の半導体パッケージは、プリント基板への実装手段としてリードフレームを使って来た。このような既存の半導体パッケージは、チップを封止しているパッケージ胴体の外側にリードフレームのリードが伸びた構造を持ち、前記リードを基板上にソルダリングすることで実装がなされる。
【0003】
ところで、表面実装技術によって実装される既存の半導体パッケージは広い実装面積を必要とする。すなわち、既存の半導体パッケージは、その自体の大きさに相当する面積の外にパッケージ胴体の外側に伸びたリードフレームの前記リードの長さだけの追加面積を実装面積として要求するため、パッケージのサイズ減少によって実装面積を減らしても実装面積の減少に限界を持つことになる。よって、半導体産業において技術開発の主な趨勢の一つは半導体素子のサイズを縮小することである。
【0004】
半導体パッケージの分野においても、小型コンピュータ及び携帯用電子機器などの需要急増によって小型のサイズを持ちながらも多数のピン(pin)を具現することができるファインピッチボールグリッドアレイ(Fine pitch Ball Grid Array:FBGA)パッケージまたはチップスケールパッケージ(Chip Scale Package:CSP)などの半導体パッケージが開発されている。この際、このような半導体パッケージはソルダーボールを介して各基板の間に電気的な連結がなされる。
【0005】
一方、従来電子機器に内蔵される電子回路基板において、基板と電子部品を接合するためにスズ−鉛系ソルダー材料、特に63重量%のスズ(Sn)−37重量%の鉛(37Pb)など低融点(m.p.183℃)を持つ材料が一般的に使われて来たが、近年にはスズ−鉛系ソルダー材料に含まれる鉛が不適切な廃棄物処理によって環境汚染をもたらす可能性が高い関係で、鉛を含まない、いわゆる 鉛フリーはんだ(lead free solder)材料の開発が活発に進んでいる。
【0006】
このような 鉛フリーはんだ材料として有望なものの一つがSn−Ag−Cuソルダー材料である。標準ソルダーSn−Ag−Cu合金の融点(216〜225℃)は既存のSn−37Pb共晶合金(eutectic alloy)の融点(183℃)に比べて約30℃以上高くなるとともに各種の部品及び基板の耐熱性の向上を要求して来た。
【0007】
したがって、既存に使われて来た部品及び基板の耐熱性向上のために、工程変更(process change)が不可避になった。このような工程変更の問題点を解決するために、既存のSn−37Pb共晶合金に似ている低融点の高信頼性ソルダー材料の確保のための多くの研究が進んで来た。
【0008】
その中でも、Sn−9Zn共晶合金は、融点(199℃)が既存のSn−37Pb共晶合金と同等な融点を持つので、製造工程の変更なしに適用可能であるという利点を持っている。また、Sn−9Zn合金系は高い強度及びクリープ特性及び耐熱疲労性に優れて経済的である。しかし、酸素との反応性が高く、基板との湿潤性(wettability)が不良であるため、使用が制限されて来た。現在には雰囲気制御(真空(vacuum)、ガスパージング(gas purging)、酸素分圧(partial oxygen pressure)など)及びフラックス(flux)の開発で酸化を抑制することができる代案が提示されている。
【0009】
したがって、Sn−9Zn共晶合金の湿潤性及び界面信頼性を改善するために、第3元素(Ag、Al、Bi、In、Gaなど)の添加などによる研究開発が活発に進んでいる。特に、湿潤性の向上及び低融点を実現するために、Biの添加に対する研究が多く進んで来た。Sn−9Zn共晶合金へのBiの添加は合金の低融点実現は可能であるが、同じ高温及び高湿の下(85℃/85%RH)でSn−9Zn共晶合金に比べて酸化進行率が加速化することが報告されている。
【0010】
一方、Sn−Zn−Ag共晶合金においては、特許文献1及び2にAgをそれぞれ0.1〜3.5重量%及び0.01〜2重量%含む共晶合金について開示しているが、これは前記合金の引張強度のような機械的特性及び耐食性向上のために添加されたもので、依然としてかかる合金は耐酸性が落ちる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】日本国特開平9−94687号公報
【特許文献2】大韓民国登録特許第10−690245号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それで、本発明は、既存のSn−Zn合金に最適の第3元素の添加及び最適組成によって酸化しやすいZn金属をAgと先に合金化させた後、Snと混合させることで、ソルダーの耐酸性及び軟性を強化することができ、本発明はこれに基づいて完成された。
【0013】
したがって、本発明の一目的は、耐酸性及び軟性に優れた 鉛フリーはんだ合金を提供することにある。
本発明の他の目的は、耐酸性及び軟性に優れた 鉛フリーはんだ合金を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明による 鉛フリーはんだ合金は、1.0〜5.0重量%のAg、7〜10重量%のZn、及び残りのSnでなる合金であって、Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が10〜20体積%であることを特徴とする。
【0015】
本発明による 鉛フリーはんだ合金において、前記Agの含量が4〜5重量%であることができる。
【0016】
本発明による 鉛フリーはんだ合金において、前記 鉛フリーはんだ合金がソルダープリフォーム(preform)の製造に適用されることができる。
【0017】
本発明による 鉛フリーはんだ合金において、前記ソルダープリフォームが、ソルダーペースト、ソルダーボール、ソルダーバー、ソルダーワイヤ、ソルダーバンプ、ソルダー薄板、ソルダー粉末、ソルダーペレット、ソルダー粒子(granule)、ソルダーリボン、ソルダーワッシャ(washer)、ソルダーリング及びソルダーディスクよりなる群から選ばれることができる。
【0018】
本発明による 鉛フリーはんだ合金において、前記Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が16〜20体積%であることができる。
【0019】
前記目的を達成するために、本発明による 鉛フリーはんだ合金の製造方法は、1.0〜5.0重量%のAgと7〜10重量%のZnを溶融させて合金ボールを形成させる段階;残りのSnを溶融させて溶融Snを提供する段階;及び前記溶融されたSnにAg−Znの合金ボールを添加して溶融させてソルダー合金を形成させる段階;を含み、ここで、前記ソルダー合金において、Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が5〜20体積%であることを特徴とする。
【0020】
本発明による 鉛フリーはんだ合金の製造方法において、前記Agの含量が4〜5重量%であることができる。
【0021】
本発明による 鉛フリーはんだ合金の製造方法において、前記 鉛フリーはんだ合金がソルダープリフォーム(preform)の製造に適用されることができる。
本発明による 鉛フリーはんだ合金の製造方法において、前記ソルダープリフォームがソルダーペースト、ソルダーボール、ソルダーバー、ソルダーワイヤ、ソルダーバンプ、ソルダー薄板、ソルダー粉末、ソルダーペレット、ソルダー粒子(granule)、ソルダーリボン、ソルダーワッシャ(washer)、ソルダーリング及びソルダーディスクよりなる群から選ばれることができる。
【0022】
本発明による 鉛フリーはんだ合金の製造方法において、前記合金ボールの直径が1〜20μmであることができる。
【0023】
本発明による 鉛フリーはんだ合金の製造方法において、前記合金ボールはアトマイジングによって形成されることができる。
【0024】
本発明による 鉛フリーはんだ合金の製造方法において、前記ソルダー合金において、前記Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が16〜20体積%であることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、Sn−Zn系 鉛フリーはんだ合金に、Agを1〜5重量%で添加させながらAg−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率を10〜20体積%に形成することで、前記 鉛フリーはんだ合金の機械的強度、例えば引張強度、軟性などを向上させるとともに前記合金の耐酸性を大幅に改善させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】Sn及びZnの組成比による一般的なSn−Zn相のダイアグラムである。
【図2】一般的なSn−9Znソルダー合金の微細構造を示す走査電子燎微鏡(Scanning electron microscope)写真である。
【図3】従来のソルダー合金を85℃/85%RHで1000時間露出させた後、前記合金の微細構造の変化を示す走査電子燎微鏡写真で、(a)はSn−9Znソルダー合金であり、(b)はSn−8Zn−3Biソルダー合金である。
【図4】本発明の一実施例よってSn−ZnソルダーにAgの添加によるZnの酸化調節概念を概略的に示す図面で、(a)は通常のSn−Znソルダー合金で、(b)は本発明によってAgが添加されたSn−Znソルダー合金である。
【図5】本発明の一実施例によってAg−Zn合金を形成させた後、前記合金をSnと混合させたソルダー合金のXRD(X−ray diffraction)分析グラフである。
【図6a】本発明の一実施例によるSn−Zn−Agソルダー合金において、Agの含量変化によるAg−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の変化を示す走査電子燎微鏡写真で、(a)はSn−9Zn−1Agソルダー合金、(b)はSn−9Zn−2Agソルダー合金である。
【図6b】本発明の一実施例によるSn−Zn−Agソルダー合金において、Agの含量変化によるAg−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の変化を示す走査電子燎微鏡写真で、(c)はSn−9Zn−4Agソルダー合金、(d)はSn−9Zn−5Agソルダー合金である。
【図7a】本発明の一実施例によるSn−9Zn−xAgソルダー合金と従来のSn−9Znソルダー合金及びSn−8Zn−3Biソルダー合金の機械的特性を示すグラフである。
【図7b】本発明の一実施例によるSn−9Zn−xAgソルダー合金と従来のSn−9Znソルダー合金及びSn−8Zn−3Biソルダー合金の機械的特性を示すグラフである。
【図8a】本発明の一実施例によるSn−9Zn−xAgソルダー合金において、Agの含量変化による耐酸性変化を示す前記合金の断面の走査電子燎微鏡写真で、(a)はSn−9Zn−1Agソルダー合金、(b)はSn−9Zn−2Agソルダー合金である。
【図8b】本発明の一実施例によるSn−9Zn−xAgソルダー合金において、Agの含量変化による耐酸性変化を示す前記合金の断面の走査電子燎微鏡写真で、(c)はSn−9Zn−4Agソルダー合金、(d)はSn−9Zn−5Agソルダー合金である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の詳細な説明に先立ち、本明細書及び請求範囲に使用された用語や単語は通常的で辞書的な意味に解釈されてはいけなく、発明者がその自分の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則にしたがって本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されなければならない。よって、本明細書に記載された実施例の構成は本発明の好適な一例に過ぎないもので、本発明の技術的思想を全部表すものではないので、本出願の時点でこれらを取り替えることができる多様な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0028】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を持った者が本発明を容易に実施することができるように、添付図面に基づいて本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
【0029】
前述したように、これまでSn−Zn共晶合金に第3元素を添加してパッドとの湿潤性及び界面信頼性向上のための多くの先行研究を行っているが、耐酸性改善のための研究は非常に少ない。このために、本発明においては、既存のSn−Zn合金に第3元素としてAgを選択し、これを酸化しやすいZn金属と先に合金化させた後、Snと混合させることでソルダー合金の耐酸性を強化した。一方、本発明に使用された合金の組成に関する用語の表現方式において、その代表的な例を挙げて説明すれば、“Sn−9Zn”において9Znは9重量%のZnを意味し、よって、残りの成分はSn、つまり91重量%のSnを意味する。以下、合金の組成に対して同一表現方式で記述する。
【0030】
図1はSn及びZnの組成比による一般的なSn−Zn相のダイアグラム、図2は一般的なSn−9Znソルダー合金の微細構造を示す走査電子燎微鏡写真である。図1を参照すれば、SnにZnを添加することにより、Sn−Zn合金の溶融温度が低くなることが分かる。特に、Znを約7〜10重量%の範囲で添加する場合、現在業界で使っている汎用の融点範囲(約206〜224℃)内の約199〜220℃の溶融温度範囲を維持することができる。よって、本発明においては、さらに他の金属成分であるAgが融点を上昇させるために、前記Znの使用量は7〜10重量%の範囲で使用する。
【0031】
一方、図2を参照すれば、Sn−9Znソルダー合金は、合金後にも基地金属のSnに針状構造のZnが互いに独立して分散された形態で存在するため、酸素との反応性が高いZnが酸素と容易に反応して耐酸性が落ちるものである。このような従来のソルダー合金に対する耐酸性測定のために、Sn−9Znソルダー合金及びSn−8Zn−3Biソルダー合金を85℃/85%RHで1000時間露出させた後、その結果を図3に示した。図3を参照すれば、(a)Sn−9Znのソルダー合金、及び(b)Sn−8Zn−3Biのソルダー合金の両方でZnOが多量生成されることを確認することができる。
【0032】
本発明によれば、第3の金属原素としてAgを添加することで、Znの合金化によって耐酸化性を向上させることができた。一般に、ソルダー合金の製造方法は、種々の金属組成を同時に溶融してよく混合させる方法を使うが、本発明では基地金属(Base metal)であるSnにAg−Zn合金を混合させることを特徴とする。
【0033】
従来のソルダー合金であるSnPb、及びSn−3Ag−0.5CなどにAg金属を添加すれば、Sn基地金属の合金相を形成するが、本発明では、Sn−Znソルダーにおいて酸化力の高いZn金属をAgと優先的に溶融させてZn金属を合金化させる。すなわち、低価のSn−9Zn共晶合金において、Znに1〜5重量%のAg金属を添加して一緒に溶融させることで、酸化しやすいZn金属を先に合金化させ、Snと混合させることで、酸化を抑制することができた。
【0034】
本発明において、Agの使用量は1.0〜5.0重量%の範囲であるが、1重量%未満であれば耐酸性及び軟性などの向上のような添加効果がほとんどなく、5.0重量%を超えれば合金の溶融点が上昇する欠点がある。同時に、前記Agの含量は現在業界で使っている汎用の範囲である約206〜224℃を満足させながら軟性及び耐酸性を最大限高めることができる範囲は4〜5重量%である。
【0035】
ただ、本発明では、Zn及びAgを単にSnに添加して溶融させるものではなく、Zn及びAgを先に合金させ、これを合金ボール状に形成して使用する。前記合金ボールの直径は1〜20μmが好ましく、1μm未満であればボールが凝集する傾向があり、20μmを超えれば合金の軟性が低くなる傾向がある。このように形成されたZn−Ag合金ボールを溶融されたSnに添加して一緒に溶融させれば、前記ソルダー合金において、前記Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が10〜20体積%、好ましくは16〜20体積%である 鉛フリーはんだ合金を得ることができる。前記分率が10体積%未満であれば合金の耐酸性向上が低下し、20体積%を超えれば耐酸性は向上するが、合金の溶融温度が上昇する傾向がある。
【0036】
図4は本発明の一実施例よってSn−Znソルダーに対するAgの添加によるZnの酸化調節の概念を概略的に示す図、(a)は通常のSn−Znソルダー合金、(b)は本発明によってAgが添加されたSn−Znソルダー合金である。図4の(b)場合において、針状構造のZnがAgと結合して基地金属のSnによく分散されているものである。
【0037】
本発明によれば、前記合金ボールは当業者によく知られたアトマイジングによって形成できる。本発明で説明するアトマイジングとは、溶融合金をポット(pot)に入れた後、水または水が混合された高圧ガスが噴霧される領域に前記合金を流すことで、前記合金が前記水またはガスの運動エネルギーを受けて幾多の微細液滴に分割されるようにし、前記分割された微細液滴が表面エネルギーによって球形になったものを水または空気で冷却させて固相の球形ボールを得る工程を言う。
【0038】
本発明の好適な一実施例によれば、金属原材料を合金ボールに形成するために、まず原材料を準備した後、準備した原材料を高周波誘導炉で溶融させる。周知のように、高周波誘導炉は高周波電気炉ともいうもので、被加熱物を溶解室に入れ、溶解室に巻き付けられたコイルに流れる高周波電流の誘導によって被加熱物に電流が流れるようにして被加熱物を溶解させる装置である。
【0039】
その後、高周波誘導炉を通過した材料を水アトマイジング装置で粉末に形成する。この際、噴射器から噴射される水の圧力は100〜200MPaの圧力を有することが好ましく、特に150MPaの圧力を有することが好ましい。水アトマイジング器を通過した材料は乾燥器で乾燥させ、乾燥された材料をメッシュ方式の分離器で分離する。これにより金属粉末がサイズ別に分類される。
【0040】
一方、本発明の 鉛フリーはんだ合金はソルダープリフォーム(preform)の製造に適用でき、前記ソルダープリフォームはソルダーペースト、ソルダーボール、ソルダーバー、ソルダーワイヤ、ソルダーバンプ、ソルダー薄板、ソルダー粉末、ソルダーペレット、ソルダー粒子(granule)、ソルダーリボン、ソルダーワッシャ(washer)、ソルダーリングまたはソルダーディスクのようなものがあるが、これらに制限されない。
このように、本発明は、Sn−Zn−Ag合金においてAg−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率を10〜20体積%に形成することが重要である。これは前記原料金属を単純に混合しては得ることができなく、先にAg−Zn合金ボールを形成し、これをSnと溶融混合することで得ることができる。このように製造された本発明の 鉛フリーはんだ合金は軟性及び耐酸性が大幅に改善される効果がある。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、下記例に本発明の範疇が限定されるものではない。
【0041】
[実施例1]
まず、9Zn−1〜5Agソルダー合金ボールを製造した。黒鉛原子炉にZn、Agをそれぞれの含量で混合した後、Arガスを注入しながら約700℃の温度で30分間溶融させた。誘導炉の電力とガス圧力の条件はそれぞれ9kW、500Torrにした。このように得た溶融合金をアトマイジング器で噴射して微細直径のボール状の金属粉末を得、これを篩(sieve)で漉すことで、前記合金ボールの直径が1〜20μmの範囲にある合金ボールを得た。
【0042】
これとは別に、Snを黒鉛原子炉に入れた後、Arガスを注入しながら約420℃の温度で30分間溶融させることで溶融Snを得た。この時の誘導炉の電力とガス圧力の条件はそれぞれ9kW、500Torrにした。Snの含量は100重量%からAg及びZn含量の和を差し引いた残量を意味する。
【0043】
一方、黒鉛原子炉に前記得たSnとZn−Ag合金ボールを入れた後、Arガスを注入しながら約300℃の温度で30分間溶融させた。この時の誘導炉の電力とガス圧力の条件はそれぞれ9kW、500Torrにした。
【0044】
このように得たソルダー合金に対し、Agの添加によるZnの合金化変化を調べるためにXRD分析を実施し、その結果を図5に示した。その結果、AgとZnを先に反応させてAg−Zn合金を形成させることで、Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)、エプシロン(ε)相が約10%生成されることを確認した。
【0045】
前述したように、Ag添加量が増加するにつれて合金の融点は次第に上昇させる効果があるが、Agを5重量%まで添加しても本発明による合金の融点範囲は現在業界で使っている汎用の範囲を持っている(206〜224℃)。これを下記の表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
また、本発明の合金の組職学的特性を調べるために、SEM写真を観察し、その結果を図6に示した。図6を参照すれば、9ZnにAgの添加量が増加するにつれてZn元素がAgと反応する量が増えることを確認した。反対に、耐酸化性を阻害することができる全体Zn相は次第に減少する傾向を示し、図6bの(d)のSn−9Zn−5Ag組成ではZn相はほとんど観察されなかった。全体的にAg−Zn合金相(γ、ε)の分率は10〜20体積%を有することが確認された。
【0048】
図7は本発明のSn−9Zn−xAgソルダー合金と従来のSn−9Znソルダー合金及びSn−8Zn−3Biソルダー合金の機械的特性を示すグラフである。図7aから分かるように、最大引張強度はAg含有量が増加するにつれて増加する傾向を示し、4wt%からはSn−9Znと同等な最大引張強度値を示している。一方、図7bから分かるように、軟性の面ではAg添加が増加するにつれて軟性が増加する傾向を示している。
【0049】
同時に、前記実施例1の合金に対する耐酸性の特性を調べるために、高温及び高湿テスト(85℃/85%RHで1000時間)を遂行した結果、全般的にSn−9Znに比べて優れた耐酸化特性を示す。図8aの(a)のSn−9Zn−2Ag組成の場合、少しの内部酸化が発生したが、残り合金組成では内部浸透酸化は発生しなかった。
【0050】
このように、本発明による 鉛フリーはんだ合金は全体的に現在使われているリフロープロファイル(reflow profile)に対応可能な範囲の融点を有し、Sn−9Zn合金に比べ、同等あるいはそれよりすぐれた強度及び軟性の特性を示し、Sn−9Zn合金に比べてすぐれた耐酸化性特性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、既存のSn−Zn合金に最適の第3元素の添加及び最適組成によって酸化しやすいZn金属をAgと先に合金化させた後、Snと混合させることで、ソルダーの耐酸性及び軟性を強化する 鉛フリーはんだ合金及びその製造方法に適用可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は 鉛フリーはんだ合金及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の半導体パッケージは、プリント基板への実装手段としてリードフレームを使って来た。このような既存の半導体パッケージは、チップを封止しているパッケージ胴体の外側にリードフレームのリードが伸びた構造を持ち、前記リードを基板上にソルダリングすることで実装がなされる。
【0003】
ところで、表面実装技術によって実装される既存の半導体パッケージは広い実装面積を必要とする。すなわち、既存の半導体パッケージは、その自体の大きさに相当する面積の外にパッケージ胴体の外側に伸びたリードフレームの前記リードの長さだけの追加面積を実装面積として要求するため、パッケージのサイズ減少によって実装面積を減らしても実装面積の減少に限界を持つことになる。よって、半導体産業において技術開発の主な趨勢の一つは半導体素子のサイズを縮小することである。
【0004】
半導体パッケージの分野においても、小型コンピュータ及び携帯用電子機器などの需要急増によって小型のサイズを持ちながらも多数のピン(pin)を具現することができるファインピッチボールグリッドアレイ(Fine pitch Ball Grid Array:FBGA)パッケージまたはチップスケールパッケージ(Chip Scale Package:CSP)などの半導体パッケージが開発されている。この際、このような半導体パッケージはソルダーボールを介して各基板の間に電気的な連結がなされる。
【0005】
一方、従来電子機器に内蔵される電子回路基板において、基板と電子部品を接合するためにスズ−鉛系ソルダー材料、特に63重量%のスズ(Sn)−37重量%の鉛(37Pb)など低融点(m.p.183℃)を持つ材料が一般的に使われて来たが、近年にはスズ−鉛系ソルダー材料に含まれる鉛が不適切な廃棄物処理によって環境汚染をもたらす可能性が高い関係で、鉛を含まない、いわゆる 鉛フリーはんだ(lead free solder)材料の開発が活発に進んでいる。
【0006】
このような 鉛フリーはんだ材料として有望なものの一つがSn−Ag−Cuソルダー材料である。標準ソルダーSn−Ag−Cu合金の融点(216〜225℃)は既存のSn−37Pb共晶合金(eutectic alloy)の融点(183℃)に比べて約30℃以上高くなるとともに各種の部品及び基板の耐熱性の向上を要求して来た。
【0007】
したがって、既存に使われて来た部品及び基板の耐熱性向上のために、工程変更(process change)が不可避になった。このような工程変更の問題点を解決するために、既存のSn−37Pb共晶合金に似ている低融点の高信頼性ソルダー材料の確保のための多くの研究が進んで来た。
【0008】
その中でも、Sn−9Zn共晶合金は、融点(199℃)が既存のSn−37Pb共晶合金と同等な融点を持つので、製造工程の変更なしに適用可能であるという利点を持っている。また、Sn−9Zn合金系は高い強度及びクリープ特性及び耐熱疲労性に優れて経済的である。しかし、酸素との反応性が高く、基板との湿潤性(wettability)が不良であるため、使用が制限されて来た。現在には雰囲気制御(真空(vacuum)、ガスパージング(gas purging)、酸素分圧(partial oxygen pressure)など)及びフラックス(flux)の開発で酸化を抑制することができる代案が提示されている。
【0009】
したがって、Sn−9Zn共晶合金の湿潤性及び界面信頼性を改善するために、第3元素(Ag、Al、Bi、In、Gaなど)の添加などによる研究開発が活発に進んでいる。特に、湿潤性の向上及び低融点を実現するために、Biの添加に対する研究が多く進んで来た。Sn−9Zn共晶合金へのBiの添加は合金の低融点実現は可能であるが、同じ高温及び高湿の下(85℃/85%RH)でSn−9Zn共晶合金に比べて酸化進行率が加速化することが報告されている。
【0010】
一方、Sn−Zn−Ag共晶合金においては、特許文献1及び2にAgをそれぞれ0.1〜3.5重量%及び0.01〜2重量%含む共晶合金について開示しているが、これは前記合金の引張強度のような機械的特性及び耐食性向上のために添加されたもので、依然としてかかる合金は耐酸性が落ちる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】日本国特開平9−94687号公報
【特許文献2】大韓民国登録特許第10−690245号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それで、本発明は、既存のSn−Zn合金に最適の第3元素の添加及び最適組成によって酸化しやすいZn金属をAgと先に合金化させた後、Snと混合させることで、ソルダーの耐酸性及び軟性を強化することができ、本発明はこれに基づいて完成された。
【0013】
したがって、本発明の一目的は、耐酸性及び軟性に優れた 鉛フリーはんだ合金を提供することにある。
本発明の他の目的は、耐酸性及び軟性に優れた 鉛フリーはんだ合金を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明による 鉛フリーはんだ合金は、1.0〜5.0重量%のAg、7〜10重量%のZn、及び残りのSnでなる合金であって、Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が10〜20体積%であることを特徴とする。
【0015】
本発明による 鉛フリーはんだ合金において、前記Agの含量が4〜5重量%であることができる。
【0016】
本発明による 鉛フリーはんだ合金において、前記 鉛フリーはんだ合金がソルダープリフォーム(preform)の製造に適用されることができる。
【0017】
本発明による 鉛フリーはんだ合金において、前記ソルダープリフォームが、ソルダーペースト、ソルダーボール、ソルダーバー、ソルダーワイヤ、ソルダーバンプ、ソルダー薄板、ソルダー粉末、ソルダーペレット、ソルダー粒子(granule)、ソルダーリボン、ソルダーワッシャ(washer)、ソルダーリング及びソルダーディスクよりなる群から選ばれることができる。
【0018】
本発明による 鉛フリーはんだ合金において、前記Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が16〜20体積%であることができる。
【0019】
前記目的を達成するために、本発明による 鉛フリーはんだ合金の製造方法は、1.0〜5.0重量%のAgと7〜10重量%のZnを溶融させて合金ボールを形成させる段階;残りのSnを溶融させて溶融Snを提供する段階;及び前記溶融されたSnにAg−Znの合金ボールを添加して溶融させてソルダー合金を形成させる段階;を含み、ここで、前記ソルダー合金において、Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が5〜20体積%であることを特徴とする。
【0020】
本発明による 鉛フリーはんだ合金の製造方法において、前記Agの含量が4〜5重量%であることができる。
【0021】
本発明による 鉛フリーはんだ合金の製造方法において、前記 鉛フリーはんだ合金がソルダープリフォーム(preform)の製造に適用されることができる。
本発明による 鉛フリーはんだ合金の製造方法において、前記ソルダープリフォームがソルダーペースト、ソルダーボール、ソルダーバー、ソルダーワイヤ、ソルダーバンプ、ソルダー薄板、ソルダー粉末、ソルダーペレット、ソルダー粒子(granule)、ソルダーリボン、ソルダーワッシャ(washer)、ソルダーリング及びソルダーディスクよりなる群から選ばれることができる。
【0022】
本発明による 鉛フリーはんだ合金の製造方法において、前記合金ボールの直径が1〜20μmであることができる。
【0023】
本発明による 鉛フリーはんだ合金の製造方法において、前記合金ボールはアトマイジングによって形成されることができる。
【0024】
本発明による 鉛フリーはんだ合金の製造方法において、前記ソルダー合金において、前記Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が16〜20体積%であることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、Sn−Zn系 鉛フリーはんだ合金に、Agを1〜5重量%で添加させながらAg−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率を10〜20体積%に形成することで、前記 鉛フリーはんだ合金の機械的強度、例えば引張強度、軟性などを向上させるとともに前記合金の耐酸性を大幅に改善させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】Sn及びZnの組成比による一般的なSn−Zn相のダイアグラムである。
【図2】一般的なSn−9Znソルダー合金の微細構造を示す走査電子燎微鏡(Scanning electron microscope)写真である。
【図3】従来のソルダー合金を85℃/85%RHで1000時間露出させた後、前記合金の微細構造の変化を示す走査電子燎微鏡写真で、(a)はSn−9Znソルダー合金であり、(b)はSn−8Zn−3Biソルダー合金である。
【図4】本発明の一実施例よってSn−ZnソルダーにAgの添加によるZnの酸化調節概念を概略的に示す図面で、(a)は通常のSn−Znソルダー合金で、(b)は本発明によってAgが添加されたSn−Znソルダー合金である。
【図5】本発明の一実施例によってAg−Zn合金を形成させた後、前記合金をSnと混合させたソルダー合金のXRD(X−ray diffraction)分析グラフである。
【図6a】本発明の一実施例によるSn−Zn−Agソルダー合金において、Agの含量変化によるAg−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の変化を示す走査電子燎微鏡写真で、(a)はSn−9Zn−1Agソルダー合金、(b)はSn−9Zn−2Agソルダー合金である。
【図6b】本発明の一実施例によるSn−Zn−Agソルダー合金において、Agの含量変化によるAg−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の変化を示す走査電子燎微鏡写真で、(c)はSn−9Zn−4Agソルダー合金、(d)はSn−9Zn−5Agソルダー合金である。
【図7a】本発明の一実施例によるSn−9Zn−xAgソルダー合金と従来のSn−9Znソルダー合金及びSn−8Zn−3Biソルダー合金の機械的特性を示すグラフである。
【図7b】本発明の一実施例によるSn−9Zn−xAgソルダー合金と従来のSn−9Znソルダー合金及びSn−8Zn−3Biソルダー合金の機械的特性を示すグラフである。
【図8a】本発明の一実施例によるSn−9Zn−xAgソルダー合金において、Agの含量変化による耐酸性変化を示す前記合金の断面の走査電子燎微鏡写真で、(a)はSn−9Zn−1Agソルダー合金、(b)はSn−9Zn−2Agソルダー合金である。
【図8b】本発明の一実施例によるSn−9Zn−xAgソルダー合金において、Agの含量変化による耐酸性変化を示す前記合金の断面の走査電子燎微鏡写真で、(c)はSn−9Zn−4Agソルダー合金、(d)はSn−9Zn−5Agソルダー合金である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の詳細な説明に先立ち、本明細書及び請求範囲に使用された用語や単語は通常的で辞書的な意味に解釈されてはいけなく、発明者がその自分の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則にしたがって本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されなければならない。よって、本明細書に記載された実施例の構成は本発明の好適な一例に過ぎないもので、本発明の技術的思想を全部表すものではないので、本出願の時点でこれらを取り替えることができる多様な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0028】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を持った者が本発明を容易に実施することができるように、添付図面に基づいて本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
【0029】
前述したように、これまでSn−Zn共晶合金に第3元素を添加してパッドとの湿潤性及び界面信頼性向上のための多くの先行研究を行っているが、耐酸性改善のための研究は非常に少ない。このために、本発明においては、既存のSn−Zn合金に第3元素としてAgを選択し、これを酸化しやすいZn金属と先に合金化させた後、Snと混合させることでソルダー合金の耐酸性を強化した。一方、本発明に使用された合金の組成に関する用語の表現方式において、その代表的な例を挙げて説明すれば、“Sn−9Zn”において9Znは9重量%のZnを意味し、よって、残りの成分はSn、つまり91重量%のSnを意味する。以下、合金の組成に対して同一表現方式で記述する。
【0030】
図1はSn及びZnの組成比による一般的なSn−Zn相のダイアグラム、図2は一般的なSn−9Znソルダー合金の微細構造を示す走査電子燎微鏡写真である。図1を参照すれば、SnにZnを添加することにより、Sn−Zn合金の溶融温度が低くなることが分かる。特に、Znを約7〜10重量%の範囲で添加する場合、現在業界で使っている汎用の融点範囲(約206〜224℃)内の約199〜220℃の溶融温度範囲を維持することができる。よって、本発明においては、さらに他の金属成分であるAgが融点を上昇させるために、前記Znの使用量は7〜10重量%の範囲で使用する。
【0031】
一方、図2を参照すれば、Sn−9Znソルダー合金は、合金後にも基地金属のSnに針状構造のZnが互いに独立して分散された形態で存在するため、酸素との反応性が高いZnが酸素と容易に反応して耐酸性が落ちるものである。このような従来のソルダー合金に対する耐酸性測定のために、Sn−9Znソルダー合金及びSn−8Zn−3Biソルダー合金を85℃/85%RHで1000時間露出させた後、その結果を図3に示した。図3を参照すれば、(a)Sn−9Znのソルダー合金、及び(b)Sn−8Zn−3Biのソルダー合金の両方でZnOが多量生成されることを確認することができる。
【0032】
本発明によれば、第3の金属原素としてAgを添加することで、Znの合金化によって耐酸化性を向上させることができた。一般に、ソルダー合金の製造方法は、種々の金属組成を同時に溶融してよく混合させる方法を使うが、本発明では基地金属(Base metal)であるSnにAg−Zn合金を混合させることを特徴とする。
【0033】
従来のソルダー合金であるSnPb、及びSn−3Ag−0.5CなどにAg金属を添加すれば、Sn基地金属の合金相を形成するが、本発明では、Sn−Znソルダーにおいて酸化力の高いZn金属をAgと優先的に溶融させてZn金属を合金化させる。すなわち、低価のSn−9Zn共晶合金において、Znに1〜5重量%のAg金属を添加して一緒に溶融させることで、酸化しやすいZn金属を先に合金化させ、Snと混合させることで、酸化を抑制することができた。
【0034】
本発明において、Agの使用量は1.0〜5.0重量%の範囲であるが、1重量%未満であれば耐酸性及び軟性などの向上のような添加効果がほとんどなく、5.0重量%を超えれば合金の溶融点が上昇する欠点がある。同時に、前記Agの含量は現在業界で使っている汎用の範囲である約206〜224℃を満足させながら軟性及び耐酸性を最大限高めることができる範囲は4〜5重量%である。
【0035】
ただ、本発明では、Zn及びAgを単にSnに添加して溶融させるものではなく、Zn及びAgを先に合金させ、これを合金ボール状に形成して使用する。前記合金ボールの直径は1〜20μmが好ましく、1μm未満であればボールが凝集する傾向があり、20μmを超えれば合金の軟性が低くなる傾向がある。このように形成されたZn−Ag合金ボールを溶融されたSnに添加して一緒に溶融させれば、前記ソルダー合金において、前記Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が10〜20体積%、好ましくは16〜20体積%である 鉛フリーはんだ合金を得ることができる。前記分率が10体積%未満であれば合金の耐酸性向上が低下し、20体積%を超えれば耐酸性は向上するが、合金の溶融温度が上昇する傾向がある。
【0036】
図4は本発明の一実施例よってSn−Znソルダーに対するAgの添加によるZnの酸化調節の概念を概略的に示す図、(a)は通常のSn−Znソルダー合金、(b)は本発明によってAgが添加されたSn−Znソルダー合金である。図4の(b)場合において、針状構造のZnがAgと結合して基地金属のSnによく分散されているものである。
【0037】
本発明によれば、前記合金ボールは当業者によく知られたアトマイジングによって形成できる。本発明で説明するアトマイジングとは、溶融合金をポット(pot)に入れた後、水または水が混合された高圧ガスが噴霧される領域に前記合金を流すことで、前記合金が前記水またはガスの運動エネルギーを受けて幾多の微細液滴に分割されるようにし、前記分割された微細液滴が表面エネルギーによって球形になったものを水または空気で冷却させて固相の球形ボールを得る工程を言う。
【0038】
本発明の好適な一実施例によれば、金属原材料を合金ボールに形成するために、まず原材料を準備した後、準備した原材料を高周波誘導炉で溶融させる。周知のように、高周波誘導炉は高周波電気炉ともいうもので、被加熱物を溶解室に入れ、溶解室に巻き付けられたコイルに流れる高周波電流の誘導によって被加熱物に電流が流れるようにして被加熱物を溶解させる装置である。
【0039】
その後、高周波誘導炉を通過した材料を水アトマイジング装置で粉末に形成する。この際、噴射器から噴射される水の圧力は100〜200MPaの圧力を有することが好ましく、特に150MPaの圧力を有することが好ましい。水アトマイジング器を通過した材料は乾燥器で乾燥させ、乾燥された材料をメッシュ方式の分離器で分離する。これにより金属粉末がサイズ別に分類される。
【0040】
一方、本発明の 鉛フリーはんだ合金はソルダープリフォーム(preform)の製造に適用でき、前記ソルダープリフォームはソルダーペースト、ソルダーボール、ソルダーバー、ソルダーワイヤ、ソルダーバンプ、ソルダー薄板、ソルダー粉末、ソルダーペレット、ソルダー粒子(granule)、ソルダーリボン、ソルダーワッシャ(washer)、ソルダーリングまたはソルダーディスクのようなものがあるが、これらに制限されない。
このように、本発明は、Sn−Zn−Ag合金においてAg−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率を10〜20体積%に形成することが重要である。これは前記原料金属を単純に混合しては得ることができなく、先にAg−Zn合金ボールを形成し、これをSnと溶融混合することで得ることができる。このように製造された本発明の 鉛フリーはんだ合金は軟性及び耐酸性が大幅に改善される効果がある。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、下記例に本発明の範疇が限定されるものではない。
【0041】
[実施例1]
まず、9Zn−1〜5Agソルダー合金ボールを製造した。黒鉛原子炉にZn、Agをそれぞれの含量で混合した後、Arガスを注入しながら約700℃の温度で30分間溶融させた。誘導炉の電力とガス圧力の条件はそれぞれ9kW、500Torrにした。このように得た溶融合金をアトマイジング器で噴射して微細直径のボール状の金属粉末を得、これを篩(sieve)で漉すことで、前記合金ボールの直径が1〜20μmの範囲にある合金ボールを得た。
【0042】
これとは別に、Snを黒鉛原子炉に入れた後、Arガスを注入しながら約420℃の温度で30分間溶融させることで溶融Snを得た。この時の誘導炉の電力とガス圧力の条件はそれぞれ9kW、500Torrにした。Snの含量は100重量%からAg及びZn含量の和を差し引いた残量を意味する。
【0043】
一方、黒鉛原子炉に前記得たSnとZn−Ag合金ボールを入れた後、Arガスを注入しながら約300℃の温度で30分間溶融させた。この時の誘導炉の電力とガス圧力の条件はそれぞれ9kW、500Torrにした。
【0044】
このように得たソルダー合金に対し、Agの添加によるZnの合金化変化を調べるためにXRD分析を実施し、その結果を図5に示した。その結果、AgとZnを先に反応させてAg−Zn合金を形成させることで、Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)、エプシロン(ε)相が約10%生成されることを確認した。
【0045】
前述したように、Ag添加量が増加するにつれて合金の融点は次第に上昇させる効果があるが、Agを5重量%まで添加しても本発明による合金の融点範囲は現在業界で使っている汎用の範囲を持っている(206〜224℃)。これを下記の表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
また、本発明の合金の組職学的特性を調べるために、SEM写真を観察し、その結果を図6に示した。図6を参照すれば、9ZnにAgの添加量が増加するにつれてZn元素がAgと反応する量が増えることを確認した。反対に、耐酸化性を阻害することができる全体Zn相は次第に減少する傾向を示し、図6bの(d)のSn−9Zn−5Ag組成ではZn相はほとんど観察されなかった。全体的にAg−Zn合金相(γ、ε)の分率は10〜20体積%を有することが確認された。
【0048】
図7は本発明のSn−9Zn−xAgソルダー合金と従来のSn−9Znソルダー合金及びSn−8Zn−3Biソルダー合金の機械的特性を示すグラフである。図7aから分かるように、最大引張強度はAg含有量が増加するにつれて増加する傾向を示し、4wt%からはSn−9Znと同等な最大引張強度値を示している。一方、図7bから分かるように、軟性の面ではAg添加が増加するにつれて軟性が増加する傾向を示している。
【0049】
同時に、前記実施例1の合金に対する耐酸性の特性を調べるために、高温及び高湿テスト(85℃/85%RHで1000時間)を遂行した結果、全般的にSn−9Znに比べて優れた耐酸化特性を示す。図8aの(a)のSn−9Zn−2Ag組成の場合、少しの内部酸化が発生したが、残り合金組成では内部浸透酸化は発生しなかった。
【0050】
このように、本発明による 鉛フリーはんだ合金は全体的に現在使われているリフロープロファイル(reflow profile)に対応可能な範囲の融点を有し、Sn−9Zn合金に比べ、同等あるいはそれよりすぐれた強度及び軟性の特性を示し、Sn−9Zn合金に比べてすぐれた耐酸化性特性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、既存のSn−Zn合金に最適の第3元素の添加及び最適組成によって酸化しやすいZn金属をAgと先に合金化させた後、Snと混合させることで、ソルダーの耐酸性及び軟性を強化する 鉛フリーはんだ合金及びその製造方法に適用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.0〜5.0重量%のAg、7〜10重量%のZn、及び残りのSnでなる合金であって、Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が10〜20体積%であることを特徴とする、鉛フリーはんだ合金。
【請求項2】
前記Agの含量が4〜5重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項3】
前記 鉛フリーはんだ合金がソルダープリフォーム(preform)の製造に適用されることを特徴とする、請求項1に記載の 鉛フリーはんだ合金。
【請求項4】
前記ソルダープリフォームが、ソルダーペースト、ソルダーボール、ソルダーバー、ソルダーワイヤ、ソルダーバンプ、ソルダー薄板、ソルダー粉末、ソルダーペレット、ソルダー粒子(granule)、ソルダーリボン、ソルダーワッシャ(washer)、ソルダーリング及びソルダーディスクよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項3に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項5】
前記Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が16〜20体積%であることを特徴とする、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項6】
1.0〜5.0重量%のAgと7〜10重量%のZnを溶融させて合金ボールを形成させる段階;
残りのSnを溶融させて溶融Snを提供する段階;及び
前記溶融されたSnにAg−Znの合金ボールを添加して溶融させてソルダー合金を形成させる段階;を含み、
ここで、前記ソルダー合金において、Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が5〜20体積%であることを特徴とする、鉛フリーはんだ合金の製造方法。
【請求項7】
前記Agの含量が4〜5重量%であることを特徴とする、請求項6に記載の鉛フリーはんだ合金の製造方法。
【請求項8】
前記 鉛フリーはんだ合金がソルダープリフォーム(preform)の製造に適用されることを特徴とする、請求項6に記載の鉛フリーはんだ合金の製造方法。
【請求項9】
前記ソルダープリフォームがソルダーペースト、ソルダーボール、ソルダーバー、ソルダーワイヤ、ソルダーバンプ、ソルダー薄板、ソルダー粉末、ソルダーペレット、ソルダー粒子(granule)、ソルダーリボン、ソルダーワッシャ(washer)、ソルダーリング及びソルダーディスクよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項8に記載の鉛フリーはんだ合金の製造方法。
【請求項10】
前記合金ボールの直径が1〜20μmであることを特徴とする、請求項6に記載の鉛フリーはんだ合金の製造方法。
【請求項11】
前記合金ボールはアトマイジングによって形成されることを特徴とする、請求項6に記載の鉛フリーはんだ合金の製造方法。
【請求項12】
前記ソルダー合金において、前記Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が16〜20体積%であることを特徴とする、請求項6に記載の鉛フリーはんだ合金の製造方法。
【請求項1】
1.0〜5.0重量%のAg、7〜10重量%のZn、及び残りのSnでなる合金であって、Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が10〜20体積%であることを特徴とする、鉛フリーはんだ合金。
【請求項2】
前記Agの含量が4〜5重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項3】
前記 鉛フリーはんだ合金がソルダープリフォーム(preform)の製造に適用されることを特徴とする、請求項1に記載の 鉛フリーはんだ合金。
【請求項4】
前記ソルダープリフォームが、ソルダーペースト、ソルダーボール、ソルダーバー、ソルダーワイヤ、ソルダーバンプ、ソルダー薄板、ソルダー粉末、ソルダーペレット、ソルダー粒子(granule)、ソルダーリボン、ソルダーワッシャ(washer)、ソルダーリング及びソルダーディスクよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項3に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項5】
前記Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が16〜20体積%であることを特徴とする、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項6】
1.0〜5.0重量%のAgと7〜10重量%のZnを溶融させて合金ボールを形成させる段階;
残りのSnを溶融させて溶融Snを提供する段階;及び
前記溶融されたSnにAg−Znの合金ボールを添加して溶融させてソルダー合金を形成させる段階;を含み、
ここで、前記ソルダー合金において、Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が5〜20体積%であることを特徴とする、鉛フリーはんだ合金の製造方法。
【請求項7】
前記Agの含量が4〜5重量%であることを特徴とする、請求項6に記載の鉛フリーはんだ合金の製造方法。
【請求項8】
前記 鉛フリーはんだ合金がソルダープリフォーム(preform)の製造に適用されることを特徴とする、請求項6に記載の鉛フリーはんだ合金の製造方法。
【請求項9】
前記ソルダープリフォームがソルダーペースト、ソルダーボール、ソルダーバー、ソルダーワイヤ、ソルダーバンプ、ソルダー薄板、ソルダー粉末、ソルダーペレット、ソルダー粒子(granule)、ソルダーリボン、ソルダーワッシャ(washer)、ソルダーリング及びソルダーディスクよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項8に記載の鉛フリーはんだ合金の製造方法。
【請求項10】
前記合金ボールの直径が1〜20μmであることを特徴とする、請求項6に記載の鉛フリーはんだ合金の製造方法。
【請求項11】
前記合金ボールはアトマイジングによって形成されることを特徴とする、請求項6に記載の鉛フリーはんだ合金の製造方法。
【請求項12】
前記ソルダー合金において、前記Ag−Zn合金相であるガンマ(γ)及びエプシロン(ε)相の分率が16〜20体積%であることを特徴とする、請求項6に記載の鉛フリーはんだ合金の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【公開番号】特開2013−107132(P2013−107132A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−22863(P2012−22863)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】
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