説明

銅張り積層フィルム及びその製造方法

【課題】接着強度が強く、反り、カールが少なく、耐マイグレーション特性の良い銅張り積層フィルム、及び、該銅張り積層フィルムを簡単かつ経済的、安定的に製造するための製造方法を提供する。
【解決手段】線熱膨張係数が10〜25ppm/℃、厚さが1〜100μmの有機溶剤可溶性のポリイミド層と厚さが1〜250μmの銅箔が接着剤を介さずに積層された銅張り積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器、部品の小型化、軽量化を担うフレキシブルプリント配線基板に用いられる銅張り積層フィルムに関する。更に詳しくは、半導体パッケージングにおけるTAB、COF、PGA等で利用されるフレキシブルプリント配線基板用の銅張り積層フィルムに関する。なお更に詳しくは、銅箔、好ましくは銅箔に特定組成のポリイミドフィルムを直接塗布し製膜して得られる銅張り積層フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリイミドフィルムに銅箔、アルミニウム箔等の銅箔を接着剤で貼り合わせた、いわゆる3層タイプフレキシブルプリント配線基板に用いられる銅張り積層フィルムが知られている。このものは使用する接着剤に起因すると考えられる次のような問題点がある。まずフィルムより熱的劣性能による寸法精度低下、不純物イオン汚染による電気特性が低下する欠点があり、高密度配線には限界がある。また接着層の厚さ分や、両面用のスルホール穴あけ等の加工性が低下する欠点もある。よって、小型、軽量化対応に極めて不都合な点が多いといえる。
【0003】
一方、ポリイミドフィルム上に接着剤を用いず、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、銅めっき等の方法で金属層を形成させた、いわゆる薄膜タイプの接着剤を使わない2層フレキシブルプリント配線基板用の銅張り積層フィルムが提案されている(特許文献1〜6参照)。
【特許文献1】特開平4−329690号公報
【特許文献2】特開平6−29634号公報
【特許文献3】特開平4−290742号公報
【特許文献4】特開昭62−293689号公報
【特許文献5】特開平8−330728号公報
【特許文献6】特開2002−252257号公報
【0004】
かかる方法においては、接着剤を介することなく耐熱フィルムに銅箔を形成できるが、真空装置を使用する必要があり、大きな設備投資が必要であり、ひいては銅張り積層フィルムの価格も大変に高価な物となっていた。また、特性上も、銅箔と基材フィルムの接着性が低く、あるいは、主金属(銅)を接着させるための下地金属に環境上好ましくないクロムや、あるいはエッチングで足残りの原因となり易い耐食性金属、耐食性合金などを使用しなければならない、等の問題点があった(特許文献7〜12参照)。
【0005】
かかる問題点を解決するために、銅箔に耐熱フィルムを直接塗布乾燥することにより銅張り積層フィルムを得る方法が提案されている(例えば、特許文献7参照)。特許文献7においては、ピロメリット酸等のテトラカルボン酸と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの芳香族ジアミンとの重合により得られたポリアミド酸溶液を銅箔に直接塗布し乾燥後、加熱して脱水閉環反応を行いポリイミド化することにより接着剤無しにて銅箔とポリイミドフィルムの積層体を作製する方法が開示されている。
【特許文献7】米国特許第3179634号公報
【0006】
この上記方法では、脱水閉環反応により塗布膜が収縮するため、積層板のカール、皺、縮れ等が生じ実用に耐える物は出来ないことを理由として、脱水閉環反応を、反りとは逆の方向、すなわち銅箔面側を内側に向けて円柱状に巻いた状態で行う改善方法が開示されている(特許文献8参照)。
【特許文献8】特開昭63−161023号公報
【0007】
上記方法では、銅箔裏面とポリアミド酸塗膜裏面とが接触しているために、両者の癒着が生じる。かかる問題を解消するためにポリアミド酸を塗布・乾燥した銅箔と表面粗さ0.5μm以上のシート状物、具体的には不織布やステンレス鋼製の金網とを伴巻にすることが提案されている(特許文献9参照)。
伴巻スペーサを用いる方法ではスペーサの表面形状がポリイミドフィルムに転写されてしまい、製品の品位が低下する問題が生じると、指摘されている(特許文献10参照)。かかる問題点を解決するために当該特許提案では、フレキシブル銅張り積層基板をエッチングすることにより、特殊な形状のスペーサを提案している。かかるスペーサは目的とする金属化ポリイミドフィルムそのものから作製されているわけである。イミド化処理は、銅箔およびポリイミド自体の劣化が始まる高温で行われるため処理時間は必要最低限度に抑えられている。スペーサは、かかる過酷な条件に繰り返し曝される訳であり、その寿命は極めて短いものである
【特許文献9】特開平4−84488号公報
【特許文献10】特開平8−224797号公報
【0008】
一方、厚さ20μm以上の厚さを有するテープを供巻きすることにより、銅箔とポリイミドフィルムの積層体が得られることが例示されている(特許文献11参照)。実際に例示されている素材は紙テープである。かかる提案は、比較的低い温度域にて熱処理がなされる素材に対しては有効である。紙の素材であるセルロースは、比較的耐熱性の高い素材ではあるが、一部のポリイミドに必要な350℃超、望ましくは400℃超という高温においては分解し、黒鉛化した状態でポリイミド層に固着し、製品の品位が下がるという問題を残している。
【特許文献11】特開平5−50547号公報
【0009】
また、上記の積層板のカール、皺、縮れ等の改善方法として、硬化収縮率が4.0%以下で、硬化物の線熱膨張係数30ppm/℃以下であり、ラダー化率が50〜60%以下となるポリアミック酸を銅箔に直接塗布し、加熱して硬化させる方法が開示されている(特許文献12参照)。該特許文献12の実施例においては、ポリアミック酸と銅箔との積層体の硬化反応は、枚様サンプルについて実施されており、ロール状での連続硬化法に関しては言及されていない。また、線熱膨張係数は17〜116ppm/℃のポリイミドで実施されている。該方法は実施例で記載されている枚様サンプルでは改善効果があるが、ロール状での連続硬化法で実施した場合は、カール、皺、縮れ等の改善効果が不十分であり更なる改善が嘱望されていた。
【特許文献12】特開昭62−212140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、銅箔と基材との接着性に優れ、反りや捻じれ、縮れが無く、かつ絶縁信頼性、耐マイグレーション性に優れ、更に高信頼のCOF、TAB、FPCなどの基材として、デバイスとの良好な接続信頼性を実現する銅張り積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、かかる状況に鑑み、銅箔と基材との接着性に優れ、反りや捻じれ、縮れが無く、かつ絶縁信頼性、耐マイグレーション性に優れ、更に高信頼のCOF、TAB、FPCなどの基材として、デバイスとの良好な接続信頼性を実現する銅張り積層フィルムを実現することを目的として研究を続けた結果、特定のポリイミドを銅箔に塗布し、所定の方法にて処理することにより、前記目的が達成し得ることを知見した。
すなわち本発明は、以下の構成からなるものである。
1.線熱膨張係数が10〜25ppm/℃、厚さが1〜100μmの有機溶剤可溶性のポリイミド層と厚さが1〜250μmの銅箔が接着剤を介さずに積層されたことを特徴とする銅張り積層フィルム。
2.ポリイミド層の5%重量減少温度が500℃以上、ガラス転移点が270℃以上である前記1の銅張り積層フィルム。
3.ポリイミド層が一般式(化1)および/又は(化2)(式中、R1はフェニル、3−ビフェニル、4−ビフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルのいずれかの基を示す。Azは2価の芳香族有機基を示す。)で表される繰り返し単位から成るポリイミドで構成されている前記1又は2いずれかの銅張り積層フィルム。
4.(化1)および(化2)の式中のAzがベンズアゾール構造を有する2価の有機基である前記3の銅張り積層フィルム。
5.(化1)および(化2)の式中のAzがベンズオキサゾール構造を有する2価の有機基である前記3の銅張り積層フィルム。
6.ポリイミドの溶液を銅箔に塗布し、300℃以下の温度で熱処理を行うことを特徴とする前記1〜5いずれかの銅張り積層フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明に用いられる特定組成のポリイミドフィルムは、誘電特性、電気絶縁特性、寸法安定性に優れ、また、引張弾性率が高く銅箔表面への投錨効果が効果的に発現する。また線熱膨張係数が銅箔に極めて近いために、銅張り積層フィルムおよび得られる製品の反りや歪みが小さく、良好な接続信頼性を実現することができる。さらには、本発明に用いられる特定組成のポリイミドは有機溶剤に可溶であり溶剤を揮発させるのみでポリイミドフィルムを得ることが出来るため、従来よりも低温プロセスで銅張り積層フィルムを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明におけるポリイミドは有機溶剤に可溶であることが必須である。有機溶剤に不溶であると、ポリイミドの前駆体を用いて脱水閉環反応を経てポリイミド層を形成する必要があり、この場合、350℃以上の高温プロセスを要するため、半導体装置の熱劣化を招く恐れがある。なお、ここで有機溶剤に可溶であるとは、公知の有機溶媒から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤にポリイミドが1質量%以上溶けるということを指している。公知の有機溶媒に関しては、その種類が特に限定されるものではないが、好ましい例として沸点が350℃以下のものが挙げられ、より好ましい例として沸点300℃以下のものが挙げられ、なおさらに好ましい例として沸点250℃以下のものが挙げられる。具体例としては、p−クロロフェノールやm−クレゾールなどのフェノール系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒などが挙げられる。
【0014】
本発明におけるポリイミド層としては、線熱膨張係数が10〜25ppm/℃の有機溶剤可溶性のポリイミドであれば特に限定されるものではないが、所定の特性を発現させるためには、下記式(化1)および/又は(化2)(式中、Rはフェニル、3−ビフェニル、4−ビフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルのいずれかの基を示す。Azは2価の芳香族有機基を示す。)で表される繰り返し単位から成るポリイミドであることが好ましく、なかでも式中のAzがベンズアゾールが好ましく、ベンズオキサゾールであることが特に好ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
【化2】

本発明におけるポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸無水物類(酸、酸無水物、ポリイミド結合性誘導体などをいう、以下においても同様に記載する)と芳香族ジアミン類(ジアミン、ポリイミド結合性誘導体などをいう、以下においても同様に記載する)とから反応させて得られることが好ましい。
【0017】
芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、下記式(化3)または(化4)で表される芳香族テトラカルボン酸無水物を使用することが好ましく、これらの使用量は全カルボン酸の70モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましい。これらの化3、化4に限定されことなく、(化3)または(化4)以外の芳香族テトラカルボン酸類を30モル%未満、好ましくは15モル%未満で使用することができる。これらの(化3)または(化4)以外の芳香族テトラカルボン酸としては、例えば、無水ピロメリット酸、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2’−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0018】
【化3】

(式中、Rはフェニル、3−ビフェニル、4−ビフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルのいずれかの基を示す。Azは2価の芳香族有機基を示す。)
【0019】
【化4】

(式中、Rはフェニル、3−ビフェニル、4−ビフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルのいずれかの基を示す。Azは2価の芳香族有機基を示す。)
【0020】
芳香族ジアミン類とてしては、ベンズアゾール構造を有する芳香族ジアミン類を使用することが好ましい。ベンズアゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、例えば、下記式(化5)〜(化12)(式中、Xは酸素原子、硫黄原子又はNR(式中、Rは水素原子又はフェニル基を示す)を示し、R、R、Rは、それぞれ独立して、単環又は複数の環から構成される芳香族環基又は複素環基を表し、R、Rはそれぞれ独立して、単環又は複数の環から構成される芳香族環基、複素環基又は脂肪族環基を示す。)で表される構造を有するジアミンが挙げられる。これらの中でもベンズオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を使用することが好ましく、その中でも(化13)〜(化26)で表される構造を有するジアミン類を使用することが特に好ましい。これらのベンズアゾール構造を有する芳香族ジアミン類およびまたはベンズオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類の全ジアミンにおける使用量は70モル%以上が好ましく、85モル%以上がさらに好ましい。
【0021】
【化5】

【0022】
【化6】

【0023】
【化7】

【0024】
【化8】

【0025】
【化9】

【0026】
【化10】

【0027】
【化11】

【0028】
【化12】

【0029】
【化13】

【0030】
【化14】

【0031】
【化15】

【0032】
【化16】

【0033】
【化17】

【0034】
【化18】

【0035】
【化19】

【0036】
【化20】

【0037】
【化21】

【0038】
【化22】

【0039】
【化23】

【0040】
【化24】

【0041】
【化25】

【0042】
【化26】

ベンゾオキサゾール構造またはベンズオキサゾール構造を有しないジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0043】
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、
【0044】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、
【0045】
1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、
【0046】
4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、
【0047】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル及び上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。これらのジアミンは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明のポリイミド樹脂を合成する際のモノマー混合比(モル比)は、酸無水物/ジアミンの表記方法で、好ましくは0.800〜1.200/1.200〜0.800、より好ましくは0.900〜1.100/1.100〜0.900、更に好ましくは0.950〜1.150/1.150〜0.950である。
また、本発明の分子末端封鎖のためにジカルボン酸無水物、トリカルボン酸無水物、アニリン誘導体などの末端封止剤を用いることが出来る。本発明で好ましく用いられるのは、無水フタル酸、無水マレイン酸、エチニルアニリンであり、無水マレイン酸の使用がより好ましい。末端封止剤の使用量は、モノマー成分1モル当たり0.001〜1.0モル比である。
【0049】
本発明のポリイミド樹脂を合成する際に使用する有機溶剤としては、原料モノマー及び中間生成物であるポリアミド酸、生成物であるポリイミド樹脂のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン,N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられ、これらの溶媒は,単独あるいは混合して使用することができる。極性有機溶媒の使用量は、仕込みモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、通常は1〜50質量%であり好ましくは5〜30質量%の固形分を含むものであればよい。
【0050】
重合反応は、有機溶媒中で撹拌及び/又は混合しながら、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して進めた後、さらに100〜300℃の温度範囲で10分から30時間連続して進められるが、必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両反応体の添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。
本発明では閉環触媒を用いても良い。本発明で使用される閉環触媒の具体例としては、安息香酸、o−安息香酸、m−安息香酸、p−安息香酸などの芳香族カルボン酸、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどの複素環式第3級アミンなどが挙げられるが、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンを使用することが好ましい。閉環触媒の含有量は、閉環触媒の含有量(モル)/前駆体であるポリアミド酸中のカルボキシル基の含有量(モル)が0.01〜10.00となる範囲が好ましい。
【0051】
本発明では脱水剤を用いても良い。例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの脂肪族カルボン酸無水物、及び無水安息香酸などの芳香族カルボン酸無水物などが挙げられるが、効率よく脱水できるものであれば、特にこれらに限定されない。脱水剤の含有量は、脱水剤の含有量(モル)/前駆体であるポリアミド酸中のカルボキシル基の含有量(モル)が0.01〜10.00となる範囲が好ましい。
本発明では、水を共沸させるために共溶媒を用いても良い。例えば、トルエン、キシレン等が挙げられるが、効率よく水を共沸させることができるものであればこれらに限定されない。
【0052】
本発明では更に、ポリイミド樹脂の性能向上を目的として、添加物を加えても良い。これら、添加物は、その目的によって様々であり、特に限定されるものではない。
また、添加方法、添加時期においても特に限定されるものではない。添加物の例としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、等の金属酸化物、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、ピロリン酸カルシウム等のリン酸塩など、有機、無機の公知のフィラーが挙げられる。
【0053】
本発明では、反応によって得られたポリイミド樹脂を適当な貧溶媒を用いて反応溶液から再沈殿させても良い。貧溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、水などが挙げられるが、効率よく再沈殿させることができるものであれば、特にこれらに限定されない。また、再沈殿した後の残存反応溶媒を除去する溶媒についても特に限定されないが、再沈殿させた際に用いた溶媒を使用することが好ましい。
【0054】
本発明では、反応溶液をそのままポリイミド樹脂溶液として利用しても良いし、反応溶液から上記手法で再沈殿させたポリイミド樹脂を再び溶媒に溶解させてポリイミド樹脂溶液を得てもよい。後者の場合、ポリイミド樹脂を効率よく溶解させるものであれば、特に限定されるものではないが、例として、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン,N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等の有機溶剤が挙げられる。
【0055】
本発明では、ポリイミド樹脂と有機溶媒を混合させる手段として、特に限定はしないが、例えば、通常の攪拌翼、高粘度用の攪拌翼を用いて混合攪拌する方法、多軸の押し出し機、あるいはスタティックミキサーなどを用いる方法、更には、ロールミルなどの高粘度用混合分散機を用いる方法を用いて混合攪拌することが挙げられる。
本発明で得られるポリイミド樹脂溶液中のポリイミド樹脂の組成としては、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%を含有することが挙げられる。この場合。その粘度はブルックフィールド粘度計による測定で0.1〜2000Pa・s、好ましくは1〜1000Pa・sのものが、安定した送液が可能であることから好ましい。
【0056】
以下、本発明における銅張り積層フィルムの好ましい製造製法について説明する。本発明では、ポリイミド樹脂溶液を銅箔上に塗布し、300℃以下の温度で熱処理することにより銅張り積層フィルムを得ることができる。
銅箔への塗布方法は特に限定されず、ドクターブレードなどで層厚を規制しながらコーティングする方法、グラビアロールを使う方法、スクリーン印刷を用いる方法など、多様な塗布方法を採用可能である。特に厚い膜を得る際に、無定型シリカなどを微量配合することは好ましい方法である。
本発明において、銅箔上に塗布されたポリイミド樹脂溶液から溶媒を除去するための熱処理装置としては、熱風炉、遠赤外炉、誘導加熱炉、連続マッフル炉等を用いることができる。さらにマイクロ波加熱装置、ミリ波加熱装置、高周波誘電加熱装置等の電磁波処理装置を用いることもできる。
本発明においては、銅箔上に塗布されたポリイミド樹脂溶液から溶媒を除去するための乾燥温度条件としては、300℃以下、好ましくは280℃以下、なお好ましくは250℃以下である。300℃以上の温度で乾燥させると、銅箔やポリイミドが熱劣化したり、銅張り積層フィルムの反りが大きくなってしまう。乾燥温度は低い方が良いが、低すぎると溶媒除去に時間がかかるため、概ね80℃以上で行った方が良い。
【0057】
本発明におけるポリイミド層の厚さは1〜100μmが好ましく、1μmに満たない場合は本来目的であるポリイミドの絶縁性に支障をきたす場合が多くなり、また100μmを超える場合には銅貼り積層フィルムを使用したフレキシブルプリント配線板などの小型、軽量化対応に極めて不都合となる。
本発明における銅箔の厚さは1〜250μmが好ましく、1μmに満たない場合は銅箔上へポリイミド樹脂溶液を均一に塗布することが困難となり、また250μmを超える場合には銅貼り積層フィルムを使用したフレキシブルプリント配線板などの小型、軽量化対応に極めて不都合となる。
【0058】
本発明では銅箔にポリイミド層を形成した銅張り積層フィルムを巻き取る際に、乾燥塗膜と、(隣接する)銅箔の間を好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上、更に好ましくは80μm以上、なお更に好ましくは150μm以上の空隙を設けて巻き取る。かかる空隙は、好ましくは適当なスペーサを供して巻きとることにより形成される。
かかる、スペーサは、通気性があり、20μm以上の厚さを有し、かつ300℃以上の耐熱性がある布帛状物であることが好ましい。本発明において用いられる布帛状物の素材は、乾燥または硬化温度より高い温度で収縮や軟化、溶融などによって変形しないものを選択すれば良いのであるが、基本的にはいかなる温度でも溶融しないものを選択するのが好ましい。このような素材としてはセルロース繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、金属繊維、金属細線等から作られる織布、不織布、あるいは耐熱素材からなる貫通孔を有する多孔質体などが挙げられる。かかる布帛状物には、少なくとも片面に粘着層を有していることが望ましい。なお布帛状物の厚さは20μm以上が必要であり、20μm未満では塗膜と被処理物の裏面との空隙が小さくなり、塗膜と被処理物の裏面とが接触して不良品が発生し易くなるので好ましくない。
【0059】
かかる布帛状物は、銅箔全面に配されても良いが、供巻きされる布帛状物をロールの両端にのみ配することが好ましい。
本発明では、巻き取る際に、銅箔が内側となるように巻き取ることが好ましい。巻取り面が逆になった場合、反り、カールの発生が生じる場合がある。
かかる300℃以下、好ましくは250℃以下の条件で熱処理されることにより線熱膨張係数が銅箔に近く、かつ引張弾性率が高い腰のある有機溶剤可溶性のポリイミド層が積層された電気特性、機械特性、柔軟性に優れる銅張り積層フィルムを得ることが出来る。
本発明の銅張り積層フィルムは、前記のとおり、銅箔が接着剤を介さずに積層された銅張り積層フィルムである。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における物性の評価方法は以下の通りである。
1.ポリイミドの還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローゼ型の粘度管により25℃で測定した。
【0061】
2.金属化ポリイミドフィルムの初期の導体接着性
90度剥離試験をJIS C5016準拠の方法にて行った。
3.初期の導体接着性
銅箔面にフォトレジスト:FR−200、シプレー社製を塗布・乾燥後にガラスフォトマスクで密着露光し、更に1.2重量%KOH水溶液にて現像した。次に、HClと過酸化水素を含む塩化第二銅のエッチングラインで、40℃、2kgf/cmのスプレー圧でエッチングし、幅2.00mm長さ180mmの長矩形テストパターンを作製し、長矩形が中央になるように余白を配した幅20mm、長さ200mmに試験片を切り抜き、JIS5016方法Aにより、90度剥離試験を行った。
4.加熱試験後の導体接着性
150℃のドライオーブン中に100時間放置した後、90度剥離試験をJIS C5016準拠の方法にて行った。
5.加圧加湿試験後の導体接着性
平山製作所製PCT試験機にて、121℃にて2気圧(飽和)条件下にて100時間処理した後、初期と同じ方法にて90度剥離試験を行った。
【0062】
6.金属化ポリイミドフィルムの耐マイグレーション性
40μmピッチの櫛形電極に、電圧(DC60V)を印可し、85℃・85%RHの恒温恒湿槽(FX412Pタイプ、エタック社製)の中に入れ電圧負荷状態のまま5分毎に絶縁抵抗値を測定記録し、線間の抵抗値が100Mオーム以下に達する時間を測定しマイグレーション評価とした。
なお、評価パターンは初期の導体接着強度項と同じ手法で形成した。
【0063】
7.フィルムの平面性
一辺10cmの正方形に切り取った銅張り積層フィルムを平らな定盤に銅箔が上になるように置き、定盤から4つの角までの高さを測定し4で除した値を「反り」の値とした。なお、銅箔面が凸にそっている場合には、億無機を逆にして同様に測定し、値を負の数として表示した。捻じれ、うねりについては目視にて判定した。
8.ポリイミド層厚さ
得られた銅張り積層フィルムの金属(銅)をエッチングにより除去し、マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1254D)を用いて測定した。
【0064】
9.ポリイミド層の線熱膨張係数(CTE)
得られた銅張り積層フィルムの金属(銅)をエッチングにより除去し、下記条件で伸縮率を測定し、30〜300℃までを15℃間隔で分割し、各分割範囲の伸縮率/温度の平均値より求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0065】
10.ポリイミド層の融点、ガラス転位温度
得られた銅張り積層フィルムの金属(銅)をエッチングにより除去し、下記条件でDSC測定し、融点(融解ピーク温度Tpm)とガラス転移点(Tmg)をJIS K 7121に準拠して下記測定条件で求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製DSC3100SA
パン ; アルミパン(非気密型)
試料重量 ; 4mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0066】
11.(5%重量減少温度)熱分解温度
得られた銅張り積層フィルムの金属(銅)をエッチングにより除去し 充分に乾燥した試料を下記条件でTGA測定(熱天秤測定)して、5%重量減をもって規定した。
装置名 ; MACサイエンス社製TG−DTA2000S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料重量 ; 10mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0067】
12.ポリイミド層の溶解性
得られた銅張り積層フィルムの金属(銅)をエッチングにより除去し、10倍量のm−クレゾールならびにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に導入し、室温で24時間攪拌することにより、目視で以下のようにその溶解性を評価した。
ポリイミド固体の原型が完全に無くなり、均一な溶液になった場合・・・○
ポリイミド固体の原型が残り、溶けきらなかった場合・・・×
【0068】
13.フロー半田耐熱性
得られた銅張り積層フィルムを50.8mm×50.8mmの正方形にカットし、280℃に加熱した錫−銅−銀系の鉛フリー半田槽に10秒間浸績し、剥離、フクレ等の有無を目視にて観察した。
14.加湿後の半田耐熱性
得られた銅張り積層フィルムを50.8mm×50.8mmの正方形にカットし、85℃85%RHの恒温恒湿槽に72時間放置後に、同様に280℃に加熱した錫−銅−銀系の鉛フリー半田槽に10秒間浸績し、剥離、フクレ等の有無を目視にて観察した。
15.手半田耐熱性
得られた銅張り積層フィルムを50.8mm×50.8mmの正方形にカットし、金属面側に直径2mm、長さ10mmの糸半田を置き、こて先を450℃に加熱した半田ごてを糸半田に当てて、30秒間保持し、その後、フィルム面側の状態を観察した。
【0069】
16.屈曲性(MIT)
JIS C 6471 に準拠し、次の条件で測定した。
測定機器:MIT耐揉疲労試験機(東洋精機製作所)
測定条件:静止荷重500g、屈曲速度175cpm、屈曲角度135度、
曲率2mm
使用パターン:回路幅:0.4mm、回路間隔0.2mm−3本、
回路幅0.15mm、回路間隔0.15mm−9本、
回路本数計12本、試料幅9mm、試料方向MD
17.屈曲性(IPC)
IPC−FC−233に準拠し、下記装置および条件で測定した。
測定機器:FPC高速屈曲試験機(信越エンジニアリング株式会社)
測定条件:ストローク20mm、屈曲速度1500cpm、
曲率4.0mmφ、カバーレイ面−内側
使用パターン:回路幅:0.5mm、回路間隔0.5mm回路本数8本、
試料幅12.5mm、試料方向MD
で測定した。
なお、カバーレイフィルムには、12.5μm厚さのポリイミドフィルムに15μmの接着剤層を有する市販品を用いた。
【0070】
(実施例1)

窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール100.00g、2,2’−ジフェニル−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物198.18g、イソキノリン5.00gを仕込んだ。次いで、m−クレゾール2700gを加えて完全に溶解させた後,25℃の反応温度で20時間攪拌すると、淡黄色のポリアミド酸溶液が得られた。その後、装置にディーンタークトラップを設置し、N気流下、200℃の温度で6時間撹拌した。空冷後、アセトン20Lで再沈殿を行い、得られた固形物をミキサーにて粉砕し、アセトン5L中25℃で撹拌洗浄を2回、アセトン5L中還流下で攪拌洗浄を6時間行った。乾燥を減圧下70℃で12時間行い、収量295.00gで淡黄色のポリイミド樹脂を得た。得られたポリイミド樹脂の還元粘度は2.0dl/gであった。 得られたポリイミド樹脂200gとN−メチル−2−ピロリドン1800gと混合し、80℃の温度で1時間攪拌することにより、ポリイミド樹脂溶液を得た。
続いて得られたポリイミド樹脂溶液をコンマコーターを用いて幅600mm、厚さが12μmの銅箔の片面に塗膜乾燥厚さが18μmとなるようにコーティングして250℃で60分間乾燥した後、塗膜面の両端に幅が9mm、厚さが150μm、片面に粘着層を有するガラス繊維不織布テープを貼りながら銅箔面が内側になるように、直径75mmのアルミニウム管に巻取り、反り、捻じれ、カールのない銅張り積層フィルムを得た。得られた銅張り積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0071】
(実施例2)
酸無水物として2,2’−ジフェノキシ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物212.30gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作により、対応する銅張り積層フィルムを得た。得られた銅張り積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0072】
(実施例3)
酸無水物として2,2’−ビス(4−ビフェニル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物265.70gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作により、対応する銅張り積層フィルムを得た。得られた銅張り積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0073】
(実施例4)
酸無水物として2,2’−ビス(1−ナフチル)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物242.60gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作により、対応する銅張り積層フィルムを得た。得られた銅張り積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0074】
(実施例5)
ジアミンとして6−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを100.00g用いたこと以外は実施例1と同様の操作により、対応する銅張り積層フィルムを得た。得られた銅張り積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
(実施例6)
ジアミンとして5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾールを100.00g用いたこと以外は実施例1と同様の操作により、対応する銅張り積層フィルムを得た。得られた銅張り積層フィルムの評価結果を表2に示す。
【0077】
(実施例7)
ジアミンとして5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾチアゾールを100.00g用いたこと以外は実施例1と同様の操作により、対応する銅張り積層フィルムを得た。得られた銅張り積層フィルムの評価結果を表2に示す。
【0078】
(比較例1)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、及び輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、198gの4,4’−ジフェニルエーテルを入れた。次いで、3800gのN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、217gの無水ピロメリット酸を加えて、25℃にて24時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液が得られた。この還元粘度(ηsp/C)は2.9dl/gであった。得られたポリアミド酸溶液をコンマコーターを用いて幅600mm、厚さが12μmの銅箔の片面に塗膜乾燥厚さが24μmとなるようにコーティングして250℃で60分間乾燥した後、塗膜面の両端に幅が9mm、厚さが150μm、片面に粘着層を有するガラス繊維不織布テープを貼りながら銅箔面が内側になるように、直径75mmのアルミニウム管に巻取り、反り、捻じれ、カールのない銅張り積層フィルムを得た。得られた銅張り積層フィルムの評価結果を表2に示す。
【0079】
(比較例2)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、及び輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、216gのパラフェニレンジアミンを入れた。次いで、7000gのN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、588gの3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を加えて、25℃にて24時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液が得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.2dl/gであった。得られたポリアミド酸溶液をコンマコーターを用いて幅600mm、厚さが12μmの銅箔の片面に塗膜乾燥厚さが24μmとなるようにコーティングして250℃で60分間乾燥した後、塗膜面の両端に幅が9mm、厚さが150μm、片面に粘着層を有するガラス繊維不織布テープを貼りながら銅箔面が内側になるように、直径75mmのアルミニウム管に巻取り、反り、捻じれ、カールのない銅張り積層フィルムを得た。得られた銅張り積層フィルムの評価結果を表2に示す。
【0080】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0081】
以上述べてきたように本発明の銅張り積層フィルムは優れた電気特性、機械的特性を有し、プリント配線板用材料として有用であり、また、本発明における製造方法によれば、かかる特性の銅張り積層フィルムを低温で安定して製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線熱膨張係数が10〜25ppm/℃、厚さが1〜100μmの有機溶剤可溶性のポリイミド層と厚さが1〜250μmの銅箔が接着剤を介さずに積層されたことを特徴とする銅張り積層フィルム。
【請求項2】
ポリイミド層の5%重量減少温度が500℃以上、ガラス転移点が270℃以上である請求項1記載の銅張り積層フィルム。
【請求項3】
ポリイミド層が下記の一般式(化1)および/又は(化2)(式中、Rはフェニル、3−ビフェニル、4−ビフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルのいずれかの基を示す。Azは2価の芳香族有機基を示す。)で表される繰り返し単位から成るポリイミドで構成されている請求項1〜2いずれかに記載の銅張り積層フィルム。
【化1】

【化2】

【請求項4】
(化1)および(化2)の式中のAzがベンズアゾール構造を有する2価の有機基である請求項3記載の銅張り積層フィルム。
【請求項5】
(化1)および(化2)の式中のAzがベンズオキサゾール構造を有する2価の有機基である請求項3記載の銅張り積層フィルム。
【請求項6】
ポリイミドの溶液を銅箔に塗布し、300℃以下の温度で熱処理を行うことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の銅張り積層フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2008−221505(P2008−221505A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59635(P2007−59635)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】