説明

鋼帯の連続焼鈍設備

【課題】 本発明は、鋼帯の洗浄能力及び清浄度を向上して、鋼帯の品質を高めるとともに、生産性を向上することのできる鋼帯の連続焼鈍設備を提供する。
【解決手段】 連続焼鈍設備の鋼帯3入側に気体溶存洗浄液生成装置4を設置し、次いで入側ルーパー5、連続焼鈍炉6、出側ルーパー7を連設した鋼帯の連続焼鈍設備である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼帯の連続焼鈍設備に関するものである。
【0002】
【従来の技術】金属帯の冷間圧延においては、一般に圧延油を用いて圧延することから圧延後の金属帯には、圧延油が付着している。このような冷間圧延後の金属帯は、加工性を向上するために引き続き熱処理(焼鈍)を施すが、この熱処理時に付着圧延油による汚れが発生する。そこで、冷間圧延後の金属帯を洗浄して脱脂した後、上記のごとき熱処理を施すものである。しかして、金属帯の洗浄方法としては、タンク内へ洗浄液を導入し、タンク内の洗浄液表面へ気体を圧入して高圧状態に保持して、洗浄液表面から気体を洗浄液へ混入するとともに、気体を洗浄液に溶存し、この気体溶存洗浄液を金属帯に噴射して洗浄することが特開平6−71233号公報、特開平8−253883号公報に開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のごとき、冷間圧延後の金属帯洗浄方法においては、洗浄液と気体の接触面積を大きくすることが困難であり、気体を効率よく洗浄液へ混入することができず、また、洗浄液の表面からの気体混入に限られ、洗浄液の気体溶存量が不十分になることがある。従って、気体溶存洗浄液の金属帯噴射による洗浄液中での微細気泡の生成が少なくなり、満足すべき洗浄効果が得られ難い。また、タンク内の洗浄液上部空間を高圧に保持することから、タンクを堅固にする必要があり、かつ、コンプレッサー等の給気系を付設することになり、設備コストが高価になる。しかもコンプレッサー等の運転によるランニングコストも上昇する等の課題がある。また、鋼帯の連続焼鈍設備においては、鋼帯の通板速度の向上にともないライン内に設置した洗浄装置の洗浄能力が低下することから通板速度を犠牲にすることになる等の課題もある。本発明は、このような課題を有利に解決するためなされたものであり、高効率で気体を洗浄液へ混入させ、しかも気体を洗浄液中へ確実かつ、十分に溶存させた洗浄液を金属帯へ噴射して、確実に洗浄することができ、かつ連続焼鈍設備に組み込み高速通板においても確実に洗浄することのできる鋼帯の連続焼鈍設備を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の特徴とするところは、連続焼鈍設備の鋼帯入側に気体溶存洗浄液生成装置を設置し、次いで入側ルーパー、連続焼鈍炉、出側ルーパーを連設したことを特徴とする鋼帯の連続焼鈍設備。及び連続焼鈍設備の鋼帯入側に気体溶存洗浄液生成装置を設置し、次いで入側ルーパー、連続焼鈍炉、出側ルーパー、調質圧延機、精整装置を連設したことを特徴とする鋼帯の連続焼鈍設備である。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明設備においては、例えば一般に設置されている鋼帯の連続焼鈍設備として、入側ルーパー、連続焼鈍炉(予熱帯、均熱帯、冷却帯からなる)、出側ルーパーからなる鋼帯の連続焼鈍設備の鋼帯入側の後述のごとき気体溶存洗浄液生成装置を設置する。上記のごとき構成の連続焼鈍設備においては、鋼帯の入側で鋼帯表裏面に気体溶存洗浄液を噴射して、確実に圧延油等の異物を除去した後、入側ルーパーを介して連続焼鈍炉へ導き焼鈍を施し、次いで出側ルーパーを介して巻き取りリールにコイル状に巻き取る。このような焼鈍済みの鋼帯コイルは、例えば後工程で調質圧延を施し鋼帯の形状を矯正した後、精整装置のサイドトリーマーで鋼帯巾方向の両端部を切断して所定寸法にするとともに塗油機で防錆油を塗布して簡易防錆処理を施すものである。
【0006】また、鋼帯の連続焼鈍設備として、入側ルーパー、連続焼鈍炉(予熱帯、均熱帯、冷却帯からなる)、出側ルーパー、調質圧延機、精整装置(サイドトリーマー、塗油機等からなる)からなる鋼帯の連続焼鈍設備の鋼帯入側の後述のごとき気体溶存洗浄液生成装置を設置する。このような構成の連続焼鈍設備においては、鋼帯の入側で鋼帯表裏面に気体溶存洗浄液を噴射して、確実に圧延油等の異物を除去した後、入側ルーパーを介して連続焼鈍炉へ導き焼鈍を施し、次いで出側ルーパーを介して調質圧延機へ通板し鋼帯の形状を矯正した後、精整装置のサイドトリーマーで鋼帯巾方向の両端部を切断して所定寸法にするとともに塗油機で防錆油を塗布して簡易防錆処理を施すものである。
【0007】次に、上記のごとく連続焼鈍設備の鋼帯入側に設置する気体溶存洗浄液生成装置の一例を挙げる。タンク入側の洗浄液供給管に気液混合器としてエゼクター等を設け、洗浄液をタンク内へ供給すると同時に気体として空気等を供給することによって、気体と洗浄液との接触面積を大幅に増加させることができ、洗浄液に気体を短時間で大量に混入させた気体混合洗浄液を生成してタンク内へ導入する。このようにタンク内へ気体混合洗浄液を導入することによって、タンク内で攪拌作用が発生し、気体混合洗浄液の混合気体が洗浄液中へ十分かつ、確実に溶存させることができる。
【0008】このようにして、タンク内で洗浄液中へ気体を溶存させるものであるが、溶存しなかった余剰気体は、気泡となって洗浄液中を浮上して洗浄液表面上部の空間へ移動するのでタンク外へ放散してもよいが、この余剰気体を回収して上記のごとき気液混合器へ供給し、不足分は新たな気体を供給(補給)して必要量を供給することによって、装置系内の気体圧を安定して保持することができるので有利である。
【0009】上記のごとく、気体溶存洗浄液を生成するに際して、タンク内の気体混合洗浄液の温度を30〜60℃に保持しつつ気体溶存洗浄液とすることによって、気体混合洗浄液中への気体溶存度を向上することができる。従って、気体溶存洗浄液を鋼帯表面に噴射すると、微細な気液含有洗浄液となって、鋼帯への衝突により強力な衝撃力が発生して、付着圧延油等の異物の除去作用を一層高めることができる。しかして、気体混合洗浄液の温度が30℃未満になると、圧延油の流動性が低下して、鋼板から前記のごとき異物を除去するのに好ましくない。また、60℃超になると気体溶存度が低下し好ましくない。気体溶存度を向上し高い洗浄効果を得るためより好適な温度としては、40〜50℃である。
【0010】このようにタンク内で気体溶存洗浄液とした後、例えばタンク出側の気体溶存洗浄液供給管からポンプを介してノズルへ高圧の気体溶存洗浄液を供給して、冷間圧延後の鋼帯へ噴射することによって、噴射した気体溶存洗浄液は、ノズルから噴出すると同時に急速に減圧させ、気体溶存洗浄液中の溶存気体が気化して微細な気泡が多数生成する。このように気体溶存洗浄液が微細気泡含有洗浄液となって、鋼帯へ噴射衝突することから衝突時の衝撃力とあいまって、衝突により多数の微細気泡が破裂する衝撃力によって鋼帯の付着圧延油等の異物を確実に洗浄除去することができるものである。
【0011】次に、本発明の実施例を挙げる。
実施例1図1において、冷間圧延後の鋼帯コイル1を入側巻き戻しリール2にセットして、鋼帯3を巻き戻しつつ鋼帯入側に設置した気体溶存洗浄液生成装置4へ導き、気体溶存洗浄液を鋼帯3表裏面へ噴射して洗浄し、入側ルーパー5を介して予熱帯、均熱帯及び冷却帯からなる連続焼鈍炉6で鋼帯3の焼鈍を施した後、出側ルーパー7を介して巻き取りリール8に鋼帯コイル1として巻き取る。気体溶存洗浄液生成装置4の上流に電清装置(図示せず)を設けることもできる。
【0012】実施例2図2において、冷間圧延後の鋼帯コイル1を入側巻き戻しリール2にセットして、鋼帯3を巻き戻しつつ鋼帯入側に設置した気体溶存洗浄液生成装置4へ導き、気体溶存洗浄液を鋼帯3表裏面へ噴射して洗浄し、入側ルーパー5を介して予熱帯、均熱帯及び冷却帯からなる連続焼鈍炉6で鋼帯3の焼鈍を施した後、調質圧延機9へ通板して焼鈍後の鋼帯3の形状を矯正し、次いでサイドトリーマー、塗油機からなる精整装置10へ導き、サイドトリーマーで鋼帯3巾方向の両端部を切断し所定巾にして、引き続き塗油機により防錆油を塗布し簡易防錆処理を施した後、巻き取りリール8の鋼帯コイル1として巻き取る。気体溶存洗浄液生成装置4の上流に電清装置(図示せず)を設けることもできる。
【0013】次に、上記のごとき気体溶存洗浄液生成装置の一例を挙げる。図3において、タンク11に洗浄液供給管12と気体溶存液供給管13と水蒸気供給管14を設け、該洗浄液供給管12に気液混合器15を設けるとともに、タンク11上部から余剰気体回収管16を気液混合器15へ接続して、上記余剰気体回収管16に気体供給管17を設ける。かくして洗浄液をポンプ18aを介して気液混合器15へ供給するとともに、気体供給管17から気液混合器15へ気体を供給して、洗浄液へ気体を混入し気体混合洗浄液を生成し、これをタンク11内へ導入する。このようにタンク11内へ導入した気体混合洗浄液19に水蒸気供給管14から水蒸気を供給して液温を30〜60℃に保持しつつ、タンク11内での攪拌作用の発生によって、気体混合洗浄液19中の気体を気体混合洗浄液19内へ溶存し気体溶存洗浄液とする。かくして、気体溶存洗浄液中の余剰気体は上部へ浮上して、余剰気体回収管16から気液混合器15へ供給するとともに、不足分は気体供給管17から気液混合器15へ供給する。このようにタンク11内で生成した気体溶存洗浄液は、気体溶存洗浄液供給管13からポンプ18bを介してノズル20へ供給し、鋼帯3の表裏面へ噴射して洗浄するものである。
【0014】
【実施例】次に、本発明による操業例を比較例とともに挙げる。
【表1】


【0015】
【表2】(表1のつづき)


【0016】注1:洗浄液は水、気体は空気。
注2:気体混合器は、エゼクターを使用。
注3:比較例は、連続焼鈍設備の鋼帯入側に気体溶存洗浄液生成装置はない。比較例1、2は、鋼帯入側に洗浄装置を有するが、気体溶存液の生成機能はない。比較例3の気体混合洗浄液の使用は、通常の電解洗浄装置を鋼帯入側に配置して洗浄した。
注4:タンク内上部空間気圧は、タンク内液表面とタンク天井(蓋)間の空間気圧。
注5:上記のごとく、タンク内へ連続的に供給するとともに、タンクから気体溶存洗浄液をノズルへ供給して鋼帯へ噴射洗浄した。
注6:鋼帯は、冷間圧延後の巾:800mm、板厚:0.2mmを洗浄し、引き続き連続焼鈍−調質圧延(ドライ圧延)−精整処理(鋼帯巾方向両端部を切断して所定寸法とした後、一般に用いられている防錆油を塗布した。)を連続的に施した。
注7:冷間圧延油は、鋼帯:カチオン系、油/水エマルジョンタイプの圧延油(一般に使用されているもの)。
注8:連続焼鈍は、一般に設置されている連続焼鈍炉で予熱帯、均熱帯及び冷却帯ともH2 ガス:5%、残りN2 ガスの還元性雰囲気中で鋼帯を焼鈍した。
注9:洗浄結果は、洗浄後の通板金属帯に白色紙を5秒間接触させ汚れ度合を目視判断した。◎:汚れなし、○:僅かに汚れ発生、△:薄黒汚れ発生(実用上差支えなし)、×:黒色汚れ発生。なお防錆油塗布後の鋼帯表面は目視で、比較例の鋼帯においては、洗浄不良部の残存と見られる部分的な色調ムラが発生した。
【0017】
【発明の効果】本発明方法によれば、鋼帯の洗浄による清浄度を向上することができ、金属帯の品質及び歩留りを高めることができる。また、十分かつ、確実に気体を溶存させた気体溶存洗浄液を低コストで製造することができる。更に、鋼帯の洗浄能力の向上により鋼帯の通板速度を高めることができ、生産性を向上することができる等の優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明設備の実施例を示す側面図である。
【図2】本発明設備の実施例を示す側面図である。
【図3】気体溶存洗浄液生成装置の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
4 気体溶存洗浄液生成装置
5 入側ルーパー
6 連続焼鈍炉
7 出側ルーパー
9 調質圧延機
10 精整装置
11 タンク
12 洗浄液供給管
13 気体溶存洗浄液供給管
14 水蒸気供給管
15 気液混合器
16 余剰気体回収管
17 気体供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 連続焼鈍設備の鋼帯入側に気体溶存洗浄液生成装置を設置し、次いで入側ルーパー、連続焼鈍炉、出側ルーパーを連設したことを特徴とする鋼帯の連続焼鈍設備。
【請求項2】 連続焼鈍設備の鋼帯入側に気体溶存洗浄液生成装置を設置し、次いで入側ルーパー、連続焼鈍炉、出側ルーパー、調質圧延機、精整装置を連設したことを特徴とする鋼帯の連続焼鈍設備。
【請求項3】 タンクに洗浄液供給管と気体溶存洗浄液供給管と水蒸気供給管を設け、該洗浄液供給管に気液混合器を設けるとともに、上記タンク上部から余剰気体回収管を気液混合器へ接続し、該余剰気体回収管に気体供給管を付設した気体溶存洗浄液生成装置を連続焼鈍設備の鋼帯入側に設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋼帯の連続焼鈍設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−64072(P2000−64072A)
【公開日】平成12年2月29日(2000.2.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−234092
【出願日】平成10年8月20日(1998.8.20)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】