説明

錫及び錫合金の無電解めっき法

本発明は、プリント回路板、IC基板、半導体ウェハなどの製造における最終仕上げとしての1μm以上の厚さを有する錫及び錫合金の無電解(浸漬)めっき法に関する。本方法は、錫めっきの間に完全に溶解する、銅接触パッドと無電解錫めっき層との間の銅の無電解めっきされた犠牲層を利用する。本方法は、厚い錫層の無電解めっきの間の接触パッドからの望ましくない銅の損失を補償する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
本発明は、プリント回路板、IC基板、半導体ウェハなどの製造における最終仕上げとしての錫及び錫合金の無電解めっき法に関する。
【0002】
発明の背景
錫表面は、最終仕上げとしてプリント回路板、IC基板、半導体ウェハ及び関連素子の製造に使用されており、即ち、その後の組立て段階のためのはんだ付け可能な又は接着可能な表面として働く。錫は最も基板の銅の造形上へ堆積されており、これを接触パッドと呼ぶ。本出願のために選択される方法は、最も一般的に適用される方法として浸漬めっきを伴う無電解めっき法による錫の堆積である。銅表面上への錫又は錫合金の浸漬めっき法は、交換反応、セメント合着又は置換めっきとも呼ばれ、以下の式(1)の通りである:
Sn2++2Cu→Sn+2Cu (1)
【0003】
反応(1)の結果は、錫の堆積の間に銅製の接触パッドから銅が溶解することである(The Electrodeposition of Tin and its Alloys, M. Jordan, E. G. Leuze Publishers, 第1版、1995年、第89-90頁)。
【0004】
浸漬錫めっきの間の銅の損失は、技術水準のプリント回路板(PCB)、例えば、HDI PCB(高密度接続)、IC基板及び錫で被覆されるべき非常に薄い又は狭い銅接触パッドを有し得る半導体ウェハの製造において許容できない欠点をもたらし得る。典型的なPCB、IC基板及び半導体ウェハの接触パッドの厚さ又は幅値は50μm、25μm、15μm又はそれ以下である。特に25μm未満の接触パッドの寸法の場合、浸漬錫めっきの間の銅の損失は、最小限にされ且つ制御されるべきである。そうでなければ、回路遮断及び基板への銅パッド付着の損失が生じ得る。
【0005】
銅製の接触パッド上に堆積した錫層は、リフロー及びはんだ付けプロセス並びにワイヤボンディングのためのはんだ付け可能な及び結合可能な表面として働く。前記用途のための錫層は典型的には1μm未満の厚さを有する。他方では、1μm以上の厚さ又はさらに5μmを上回る厚さを有する錫層が望ましい。このための1つの可能な適用は、連続的なはんだ付けプロセスのためのはんだ貯蔵所として働くことである。このような場合、薄い接触パッドの浸漬錫めっきの間の相当する銅の損失は、これ以上許容できない。
【0006】
接触パッドを構成する銅の量は、銅−錫金属間化合物(IMC)の形成のためにリフロー及びはんだ付けプロセスの間にさらに一層減少する。
【0007】
Hoeynckは、銅製の接触パッド上への無電解めっきによる薄い錫−鉛合金層の堆積法を記載している(M. Hoeynck, Galvanotechnik 83, 1992年、第2101-2110頁)。薄いはんだ付け可能な層の堆積の間の銅の損失は、錫−鉛合金のめっき前の銅の電気めっきによる接触パッドの厚さの増加によって補償される。
【0008】
全てのパッドが回路板の製造のこの段階では電気的に接触できないので、電気めっきのみによって、更に薄い銅の層を、これが要求される、即ち接触パッド上へ選択的に堆積させることはできない。PCB製造又はウェハの金属被覆のより早い段階での電気めっきによる更に薄い銅層の堆積は、連続的な銅のエッチング工程の達成可能なアスペクト比に関する制限のために実施可能ではない。
【0009】
文献US2008/0036079A1号は、段落[0005]〜[0007]の先行技術の節において、PCBの製造でのはんだ付け可能な接触パッドの積層法を開示している。本方法は、接着層、例えば、錫層を銅の接触パッド上に無電解めっきする工程を含む。この方法の欠点は、銅の拡散のために銅の接触パッドが減少し、且つ錫と銅との間の接触部位に空隙が形成されることである(本発明の比較例1を参照のこと)。
【0010】
文献US2008/0036079A1号は、段落[0025]〜[0030]において、PCBの製造でのはんだ付け可能な接触パッドの積層法について発明の特定の実施態様を開示している。この方法は、銅層を銅接触パッド上に無電解めっきし、その後、接着層、即ち錫層を浸漬めっきする工程を含む。無電解プロセスでめっきされた銅の層は、リフロー及びはんだ付け操作の間のIMC形成のリザーバとして働く。しかしながら、無電解めっきによって堆積された銅層が、接着層の浸漬めっきの間に完全に消費されることは前記方法の目的ではない。無電解銅層は、リフロー及びはんだ付けプロセスの間の銅−錫IMCの形成によって生じる接触パッドの銅損失を減少させなければならない。この方法は、電気めっき銅及び無電解めっき銅からなる界面をもたらし、これはリフロー又ははんだ付けプロセス後にクラックを形成しやすく、従って、はんだ継手信頼性を低下させる(本発明の比較例2を参照のこと)。
【0011】
本発明の課題
本発明の課題は、錫及び錫合金の層、特に1μm以上の厚さを有する層を、銅接触パッド上に浸漬めっきする方法であって、a)錫及び錫合金の堆積の間の接触パッドからの銅の溶解を最小限にしながら、b)はんだの信頼性を低下させる、電気めっき銅と無電解めっき銅の界面を形成しない、前記方法を提供することである。
【0012】
発明の要旨
この課題は、(i)銅接触パッドを有する表面、及び前記接触パッドの表面を曝露する開口部を有するはんだマスクの層を基板に提供する工程、(ii)銅の犠牲層を無電解めっきによって接触パッドに堆積させる工程及び(iii)錫又は錫合金を、工程(ii)で堆積された銅の犠牲層上に浸漬めっきによって堆積させる工程を含む、錫又は錫合金の無電解めっき法であって、前記銅の犠牲層が錫又は錫合金の浸漬めっきの間に完全に溶解することを特徴とする、前記無電解めっき法によって達成される。
【0013】
図面の簡単な説明
図1は、無電解めっきによって堆積された銅層が、錫又は錫合金の浸漬めっきの間に完全に溶解する、本発明の請求項1に記載の方法を示す。
101 基板
102 接触パッド
103 銅の犠牲層
104 錫又は錫合金の層
105 はんだマスク層
【0014】
発明の詳細な説明
本発明による錫及び錫合金の無電解めっき法は、
(i)接触パッド102及び前記パッド102の表面を曝露するはんだマスク層105を有する基板101を提供する工程、
(ii)無電解めっきによって銅の犠牲層103を接触パッド102上に堆積させる工程及び
(iii)錫又は錫合金層104を、浸漬めっきによって、工程(ii)で堆積された銅の犠牲層103上に堆積させる工程
を含み、その際、工程(ii)で堆積された銅の犠牲層103は、工程(iii)での錫又は錫合金層104の堆積の間に完全に溶解する。
【0015】
ここで図1aに関して、本発明の好ましい実施態様に従って、その表面上に接触領域の実施態様として接触パッド102を有する、非導電性基板101が提供される。非導電性基板101は回路板であってよく、これは有機材料又は繊維強化有機材料又は粒子強化有機材料、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド、ビスマレイミドトリアジン、シアネートエステル、ポリベンゾシクロブテン、又はそれらのガラス繊維複合材などで作られてよい。非導電性基板101は半導体基板であってもよい。
【0016】
前記接触パッド102は、典型的には、好ましく且つ本発明の実施例を通して使用される、銅などの金属材料から形成される。
【0017】
本発明によれば、前記接触パッド102は平坦な構造に制限されない。前記接触パッド102は、錫又は錫合金層104で被覆された通路又は溝の一部であってよい。通路及び溝は、好ましくは5〜250μmの深さ及び5〜200μmの幅を有する。
【0018】
接触パッド102の表面は、銅の無電解堆積の前に洗浄される。本発明の一実施態様では、酸及び湿潤剤を含む酸性の洗浄剤をこの目的に使用する。あるいは、又はその上、接触パッドの表面が銅である場合、これはマイクロエッチングプロセスにかけてよく、該プロセスは定義された微小な粗さの層102及び清浄な銅表面を提供する。マイクロエッチングは、基板101と、酸及び酸化剤を含む組成物、例えば、硫酸及び過酸化水素を含む組成物とを接触させることによって達成される。
【0019】
次の工程では、その後の無電解銅プロセスを確実に開始させるために、銅パッド表面を活性化させることが好ましい。良好な開始剤はパラジウムであり、パラジウムシードの形でほんの微量が必要であり、これは浸漬反応で堆積され得る。この目的のために使用されるパラジウム浸漬した浴が、銅パッド上で且つ周辺部分以外にパラジウムのみを堆積させることに注意すべきであり、これは銅パッド間の結合の形成及び、次の電気回路の短絡をもたらし得るからである。
【0020】
接触パッド102は、はんだマスク層105が接触パッド102の表面を曝露されたままにするので、工程(ii)において銅の犠牲層103で選択的に被覆される(図1b)。銅の犠牲層103は、当該技術分野で公知の手順で無電解の銅電解質から堆積される。
【0021】
無電解銅めっき電解質は、銅イオンの源、pH調節剤、錯化剤、例えば、EDTA、アルカノールアミン又は酒石酸塩、促進剤、安定化添加剤及び還元剤を含む。ほとんどの場合、ホルムアルデヒドを還元剤として使用し、他の通常の還元剤は次亜燐酸塩、ジメチルアミンボレート及びホウ化水素である。無電解銅めっき電解質の典型的な安定化添加剤は、メルカプトベンゾチアゾールなどの化合物、チオ尿素、種々の他の硫黄化合物、シアニド及び/又はフェロシアニド及び/又はコバルトシアニド塩、ポリエチレングリコール誘導体、複素環式窒素化合物、メチルブチノール、及びプロピオニトリルである。堆積速度は、めっき浴温度及びめっき時間などのパラメータによって調節できる。
【0022】
銅の犠牲層103の厚さは、所望の厚さの錫又は錫合金104の後浸漬めっき層に関して調整され、即ち、銅の犠牲層103の全部が錫又は錫合金104の浸漬めっきの間に溶解するように調整される。本発明者らは、約0.8μmの銅の犠牲層103が、1μmの錫又は錫合金層が堆積する場合に溶解することを見出した。例えば、5μmの錫が堆積されるべき場合、銅の犠牲層103の完全な消費を保証をするために、4μmの銅が堆積されることが求められる。約0.8μmは0.7〜0.9μmの範囲としてここで規定される。
【0023】
約0.8の堆積因子が、錫又は錫合金層104の堆積のために得られる。ここで定義される堆積因子は、錫又は錫合金の堆積の間に溶解する銅の犠牲層103の厚さと、銅の犠牲層103の全てが消費されるまでの錫又は錫合金層104の厚さとの比である。約0.8は、0.7〜0.9の範囲の堆積因子としてここで規定される。
【0024】
錫又は錫合金層104と銅の犠牲層103との厚さ比は、0.8以下、好ましくは0.3〜0.8の範囲、更に好ましくは0.4〜0.75、最も好ましくは0.5〜0.7である。ここで定義される厚さ比は、工程(ii)の堆積直後の銅の犠牲層103の厚さと、工程(iii)で堆積される錫又は錫合金層104の厚さとの比である。従って、0.8の厚さ比は、銅の犠牲層103の完全な消費に相当する。0.8未満の厚さ比は、銅の犠牲層103全体の消費をもたらし、更に接触パッド102の部分的な消費をもたらす。これは、接触パッド102からの銅と、錫又は錫合金層104との間の接着が改善されるため好ましい。しかしながら、0.3より小さい厚さ比は、接触パッド102の望ましくない高度の消費をもたらし、従って望ましくない。
【0025】
約0.8の堆積因子及び0.3〜0.8の範囲である錫又は錫合金層104と銅の犠牲層103との厚さ比を考慮すると、0.8の厚さ比は、錫又は錫合金層104の堆積の間の銅の犠牲層103の完全な溶解をもたらす。約0.8の堆積因子並びに本発明による銅の犠牲層103と錫又は錫合金層104との厚さ比の間の関係は、表1に更に説明されている。他方では、0.3の厚さ因子及び0.8の深さ因子は、接触パッド102の部分的な溶解をもたらす。
【表1】

【0026】
本発明の好ましい実施態様において、銅の犠牲層103は、浸漬めっきした錫又は錫合金層104によって完全に溶解する。
【0027】
本発明の別の実施態様では、めっきした錫層104の厚さの50%以下の銅の接触パッド102の銅の一部も、浸漬めっきの間に溶解する。めっきした錫層104の厚さの50%の厚さが、接触パッド102の溶解されるべき銅の厚さの最大量であるが、更に好ましくは40%以下、更に一層25%以下、最も好ましくは10%以下である。このような接触パッドからの銅の溶解は、その後に形成される錫又は錫合金層の、接触パッド102の銅層への付着を増大させるので有利である。
【0028】
本発明の一実施態様において、銅の犠牲層103は、酸性の洗浄剤で処理され、任意に、銅接触パッド表面について記載されるように表面のマイクロエッチングのための組成物で処理される。
【0029】
本発明の別の実施態様では、銅の犠牲層103の表面は、銅の無電解堆積後に水でのみ洗い流される。
【0030】
次に、基板を、錫又は錫合金の堆積のために浸漬めっき電解質と接触させる。
【0031】
浸漬めっきのための無電解錫及び錫合金めっき電解質は当該技術分野で公知である。好ましい電解質は、錫(II)メタンスルホネートなどのSn2+イオン源、硫酸又はメタンスルホン酸などの酸、銅イオンの錯化剤、例えば、チオ尿素又はチオ尿素誘導体、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、尿素、クエン酸及びそれらの混合物を含む。任意に、めっき浴は、錫ではない少なくとも1つの更なる金属イオンのために、少なくとも1つの更なる源を更に含む。錫合金を形成するために錫で共堆積されるべき典型的な更なる金属は、銀、金、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマス、銅及びそれらの混合物である。好ましい錫合金は、錫−銀、錫−銀−銅及び錫−銅合金である。めっき速度は、例えば、めっき浴温度及びめっき時間を調整することによって制御できる。めっき浴は、50℃〜98℃の温度範囲、更に好ましくは70℃〜95℃の温度範囲で操作される。めっき時間は、5分〜120分、更に好ましくは15分〜60分の範囲である。典型的な錫堆積プロセスは、窒素又は別の不活性ガスを錫浴を通して泡立たせながら、95℃の温度で30分間行わる。
【0032】
この加工品は現状の浸漬ラインで処理できる。プリント回路板の処理のために、スプレー又はフローノズルなどの適切なノズルを通して処理溶液と接触させる間に、プリント回路板が水平な運搬経路上のラインを通して運ばれる、運搬ラインと呼ばれるものを利用することが特に有利であることが見出された。この目的の場合、プリント回路基板は好ましくは水平又は垂直に配置してよい。
【0033】
錫又は錫合金の堆積後に、錫又は錫合金表面から銅イオンを除去するために、チオ尿素又は別の強力な銅イオンの錯体形成性剤を含有する溶液中で、板を洗い流すことが有利である。
【0034】
錫又は錫合金めっきプロセスの寿命は、本願明細書に援用されているUS5,211,831号に開示された選択的結晶化プロセスを用いて、チオ尿素によって錯化された銅イオンの連続的な除去によって更に高めることができる。
【0035】
操作の間に浸漬めっき浴中で濃縮される四価の第二スズイオンは、二価の第一スズイオンに連続的に還元することができ、これは本願明細書に援用されているEP1427869B1号に開示されている。
【0036】
本発明の更に別の実施態様において、錫又は錫合金表面は、前記表面上での酸化物生成を抑制する1種以上の無機又は有機リン酸又はその塩を含む後処理組成物と接触している。かかる組成物は、本願明細書に援用されるEP1716949B1号に開示されている。前記後処理は「黄変」を抑制し、即ち、めっきされた基板の貯蔵の間の錫又は錫合金表面の酸化を抑制する。
【0037】
従来技術から公知のプロセスに対して、本発明の利点は以下の通りである:
【0038】
本発明のプロセスは、式(1)による前記接触パッドからの銅の溶解のために銅の接触パッドを損傷させずに、50μm以下、更に好ましくは25μm以下、更に一層好ましくは15μm以下の厚さを有する銅の接触パッド上への錫又は錫合金の浸漬めっきを可能にする。本発明は、薄い錫及び錫合金層の堆積を浸漬めっきによって更に可能にする。薄い錫及び錫合金層は、1μm以上で且つ20μmまでの厚さ、更に好ましくは1.5μmから10μmまでの厚さを有する。かかる薄い錫及び錫合金コーティングははんだ貯蔵所として使用してよい。1μm以下の厚さを有する薄い錫層は、はんだ付け可能な及び結合可能な表面としてのみ適しているが、その上、はんだ貯蔵所を提供しない。
【0039】
本発明によれば、銅製の接触パッド上に1μm以上の厚さを有する錫又は錫合金の浸漬めっき層を有する基板は、接触パッドからの銅の損失が浸漬めっきした錫又は錫合金層の厚さの50%未満であり、即ち、錫の浸漬めっき層が3μmの厚さを有する場合、接触パッドからの銅の損失は、銅製の接触パッド上の無電解めっき銅の犠牲層のために1.5μm以下である。
【0040】
銅の犠牲層103の上に堆積された錫又は錫合金層104の表面粗さは、接触パッドを構成する電気めっき銅層上に直接堆積された錫又は錫合金層の粗さよりも再現可能に低い。これは当業者が反対を予想するため驚くことである(J. G. Allen, C. Granzulea, T.B. Ring, "Solderability Evaluation of Immersion Tin-Coated 3-Dimensional Molded Circuit Boards", Proceedings of the 3rd International SAMPE Electronics Conference, 1989年6月20〜22日, 第1099〜1110頁)。低い表面粗さを有する錫又は錫合金表面は、連続的なはんだ付け又は結合手順にとって好ましい。
【0041】
本発明によって製造された基板の貯蔵の間のウィスカの形成のし易さは、従来技術から公知の方法によって製造された浸漬錫又は錫合金めっき基板と比較して低下する。
【0042】
更に、本発明による方法によって生じる更に平滑な錫又は錫合金表面のために、前記錫又は錫合金表面の浸食も、当該技術分野で知られた浸漬めっきプロセスによって得られる粗い表面形態と比較して低下する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、無電解めっきによって堆積された銅層が、錫又は錫合金の浸漬めっきの間に完全に溶解する、本発明の方法を示す。
【0044】
実施例
本発明をここで、以下の限定されない実施例を参照して例証する。
【0045】
種々の大きさの銅接触パッドを有する基板を全ての実施例にわたって使用した。接触パッドのサイズは、非常に小さい(30μmまでの幅を有する150μm長さのストリップ)から大きい(約600μmの直径を有する円形の接触パッド)までの範囲であった。あるいは、堆積は構造化されていない銅表面を有する基板で行われた。
【0046】
錫(II)メタンスルホネート、メタンスルホン酸及びチオ尿素を含む浸漬めっき浴を、全ての実施例にわたって使用した。
【0047】
銅製の接触パッドの表面を、最初に酸性の洗浄剤で洗浄し(Pro Select H、Atotech Deutschland GmbHの製品)且つMicroEtch H(Atotech Deutschland GmbHの製品)でエッチングした。
【0048】
比較例1の場合、錫層104(図1c)を浸漬めっき浴から銅接触パッド102(図1a)の上に直接堆積させるのに対して、比較例2及び実施例1では、追加の銅層103(図1b)を接触パッド上に無電解めっき浴から堆積させた後に錫層を浸漬めっきした(Printoganth(登録商標)P Plus、Atotech Deutschland GmbHの製品)。接触パッドを、銅の無電解堆積の前にパラジウムイオンを含む組成物で活性化した(Activator 1000、Atotech Deutschland GmbHからの製品)。
【0049】
試験方法:
層厚さの測定
無電解めっきによって堆積された錫及び銅層の厚さを、市販のX線けい光(XRF)ツールを使用して監視した。更に、回路基板試料を断面し且つ上記層の厚さを、光学顕微鏡を用いて調査した。
【0050】
はんだ継手信頼性
はんだ継手の信頼性を、ハンダボール(450μmの直径を有するIndium SAC305ボール)を、錫表面及び400μmの直径及び印刷フラックス(Alpha WS9160−M7)を有する接触パッドの上に配置することによって試験した。試験片を、典型的な鉛のないはんだ形材において窒素雰囲気下でリフローした。次いではんだ継ぎ手信頼性を、熟成の前及び後にソルダパンプをせん断分離することによって決定した。得られる平均的な剪断力をグラムで示す。
【0051】
はんだ継ぎ手信頼性試験から得られる失敗の形態の定義は以下に記載した通りである:
破損モード1 → 5%未満のはんだ継手界面での破損、最も望ましい。
破損モード2 → 5〜25%のはんだ継手界面での破損、やや望ましい。
【0052】
比較例1
基板の接触パッドを、洗浄及びエッチング後に浸漬錫めっきした。
【0053】
錫層の厚さは4.94μmであった。接触パッドからの銅の損失は3.8μmであり、即ち、めっきした錫層の厚さに対して77%であった。
【0054】
比較例2
接触パッドの表面を洗浄及びエッチングした後、銅の層を無電解めっき浴から堆積させ、その後、無電解めっきした銅表面の活性化及び錫の浸漬めっきを行った。
【0055】
無電解めっき浴から堆積された銅層の厚さは2.71μmであり、錫層の厚さは3.46μmであった。約0.65μmの無電解めっきした銅層は錫の堆積後に残った。
【0056】
平均剪断力は690gであり、見出された破損モードは、5%の損失モード1及び95%の損失モード2であった。
【0057】
実施例1
接触パッドの表面を洗浄及びエッチングした後、銅の層を無電解めっき浴から堆積させ、その後、無電解めっきした銅表面の活性化及び錫の浸漬めっきを行った。
【0058】
無電解めっき浴から堆積された銅層の厚さは1.21μmであり、錫層の厚さは3.9μmであった。接触パッドからの銅の損失は1.36μmであり、即ち、めっきした錫層の厚さに対して35%であった。
【0059】
平均剪断力は755gであり、見出された破損モードは、55%の損失モード1及び45%の損失モード2であった。
【図1a】

【図1b】

【図1c】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)接触パッドを有する基板及び前記接触パッドを曝露するはんだマスク層を提供する工程、
(ii)銅の犠牲層を、無電解めっき法によって接触パッドの上に堆積させる工程及び
(iii)錫又は錫合金を、無電解めっき法によって、工程(ii)で堆積された銅の犠牲層の上に堆積させる工程
を含む、錫及び錫合金の無電解めっき法であって、
厚さ比が0.8以下であり且つ
ここで規定される厚さ比が、工程(ii)での堆積直後の銅の犠牲層の厚さと、工程(iii)で堆積された錫又は錫合金層の厚さとの比である、前記無電解めっき法。
【請求項2】
厚さ比が0.3〜0.8の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
厚さ比が0.4〜0.75の範囲である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
厚さ比が0.5〜0.7の範囲である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
錫又は錫合金層が浸漬めっきによって堆積される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
錫又は錫合金層の厚さが1μm〜10μmの範囲である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
銅の犠牲層が完全に溶解し、さらに工程(iii)において錫めっき層厚さの50%以下の銅接触パッドの一部が溶解する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
錫合金がSn−Ag、Sn−Ag−Cu、Sn−Cu、及びSn−Ni合金からなる群から選択される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
錫めっき組成物が
Sn2+イオンの源、
酸、
有機硫黄化合物、及び
任意に少なくとも1つの更なる金属の源
を含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
錫又は錫合金層が工程(iii)の後に、無機リン酸、有機リン酸、無機リン酸の塩及び有機リン酸の塩からなる群から選択されるリン化合物を含む組成物で処理される、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
接触パッドからの銅の損失が浸漬めっきした錫又は錫合金層の厚さの50%未満である、銅製の接触パッド上に錫又は錫合金の浸漬めっき層を有する基板。

【公表番号】特表2013−502512(P2013−502512A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525940(P2012−525940)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005330
【国際公開番号】WO2011/023411
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(300081877)アトテツク・ドイチユラント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (13)
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH
【住所又は居所原語表記】Erasmusstrasse 20, D−10553 Berlin, Germany
【Fターム(参考)】