説明

鍵及び施錠装置

【課題】鍵としての形状になんら変更を加えることなく暗闇でも鍵穴を容易に見つける。
【解決手段】鍵本体11の片面11aのみに0.2〜0.5mm程度と非常に薄い有機ELシート15が貼着されている。把手部13を右手で保持し、右手の親指で押圧スイッチ16を押圧すると、有機ELシート15が発光する。鍵10をシリンダ19に近づけると、シリンダ19の鍵穴19a辺りが照らされるとともに、鍵穴19aの左脇に配置されている反射シール20が光る。これを目印にして、鍵穴19aを目視で確認することができる。片面11aが把手部13を把持している人の左手側に向いているので、このまま挿入部12の先端を、反射シール20の右脇に位置する鍵穴19aに挿入すれば、挿入部12は、正しい向きで鍵穴19aに挿入される。挿入部12を鍵穴19aの奥まで挿入した後、把手部13を所定の方向へ回動させれば、施錠装置18は解錠する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋や自動車,金庫等の扉に設置されて使用される鍵及び施錠装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家屋や自動車,金庫等の扉には、これを施解錠して特定の人間のみが扉の開閉を行なえるようにする施錠装置が設置されている。従来、このような施錠装置が種々提案され市販されている。例えば、特許文献1には、受光素子,発光素子からなる通信手段とマイコンとメモリカードを備えた鍵を、錠前の鍵穴に差し込むと、鍵が錠前側と通信し、錠前側のメモリに記憶されている錠前コードと、鍵側のメモリカードに記憶されている錠前コードとを照合し、これらが一致している場合に解錠を許可する施錠装置が記載されている。
【特許文献1】特開2005−016064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、例えば、夜遅くに帰宅したが、街灯が点いていない場合など、暗闇で鍵穴を目視できず、手さぐりで鍵穴を見つけなければならないという問題がある。これを解決するには、鍵に小型のランプを設けることも考えられるが、鍵の厚みが増すため、鍵としての形状に変更を加える必要が生じる。上記特許文献1記載の鍵には、発光素子が挿入部に設けられているので、これを手動で発光させることも考えられるが、上記特許文献1記載の鍵は、光通信によって施錠または解錠を許可する特殊な鍵であり、一般に普及している例えばシリンダタンブラタイプの鍵に適用することはできない。
【0004】
また、さらに、暗闇でやっと鍵穴を見つけたと思って、鍵を差し込もうとすると、鍵穴に対する鍵面の向きが左右逆向きで差し込めず、イライラさせられるという問題もある。また、外出先で施錠したかどうか心配になることがあるが、確かめる術がないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、鍵としての形状になんら変更を加えることなく暗闇でも鍵穴を容易に見つけることができる、暗闇でも鍵穴に鍵を差す向きを特定することができる、施錠をしたか否かが外出先でも確認することができる等、便利な機能を有する鍵及び施錠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鍵は、錠前の施解錠に用いられ、前記錠前の鍵穴に挿入される挿入部と、把持される把手部とからなる鍵本体と、前記挿入部及び/又は前記把手部の表面に設けられ、平面状をした発光体と、前記鍵本体に設けられ、前記発光体を駆動して発光させる発光駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
前記発光駆動手段は、前記錠前との接近により発生する電磁誘導により前記発光体に電力を供給する電力供給部であることが好ましい。前記発光駆動手段は、前記発光体に電力を供給する電池と、この電池から前記発光体に電力を供給する際にオンされるスイッチ部とからなることが好ましい。前記発光体は、前記挿入部及び/又は前記把手部の片面に設けられていることが好ましい。前記発光体は、シート状をした有機EL又は無機ELであることが好ましい。
【0008】
本願発明の施錠装置は、上記鍵と、前記発光体が設けられた前記鍵本体の片面と同じ側の前記鍵穴近傍の面に、印を付した錠前とを備えたことを特徴とする。前記印は、前記発光体からの光を反射して光る反射素材からなることが好ましい。前記反射素材は、前記発光体の発光色と同様の色で光ることが好ましい。
【0009】
また、本願発明の施錠装置は、鍵穴を有する錠前本体と、この錠前本体に設けられ、施解錠の情報を記憶する錠前側記憶部と、前記施解錠の情報を送信する送信部と、前記錠前側記憶部と送信部を制御する錠前側制御部とを備えた錠前と、前記錠前の施解錠に用いられ、前記錠前の鍵穴に挿入される挿入部と把持される把手部とからなる鍵本体と、前記挿入部及び/又は前記把手部の表面に設けられ、平面状をした発光体と、前記鍵本体に内蔵され、前記前記施解錠の情報を受信する受信部と、この受信部に接続され、前記施解錠の情報を記憶する鍵側記憶部と、前記鍵本体に内蔵され、前記施解錠の情報に基づいて前記発光体の発光の仕方を制御する鍵側制御部と、前記鍵本体に内蔵され、少なくとも前記発光体及び前記鍵側制御部に電力を供給する電池と、前記把手部に設けられ、前記発光体を駆動する際にオンされるスイッチ部とを備えた鍵とからなることを特徴とする。
【0010】
前記発光体は複数のセグメントに分けられ、これらの各セグメントの発光が所定の発光パターンを形成するように前記鍵側制御部によって制御されるとともに、前記各セグメントの発光をそれぞれ受光する複数個の受光部を前記錠前本体に設け、前記錠前側制御部は、前記各受光部からの出力に基づいて前記発光パターンを読み取り、これが前記錠前側記憶部に予め記憶されている発光パターンと一致するか否かの判定を行なうとともに、一致していない場合には、解錠を不許可とすることが好ましい。前記発光体は、シート状をした有機ELであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、錠前の鍵穴に挿入する挿入部及び/又は把手部に、平面状をした発光体を設け、この発光体を発光させるようにしたので、暗闇でも鍵穴を容易に見つけることができる。また、平面状をした発光体を用いたから、鍵としての形状になんら変更を加える必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の第1実施形態の鍵10を示す図1において、鍵10の鍵本体11は、鍵穴に挿入される縁形状が凹凸状をした挿入部12と、手で把持される把持部13とからなり、例えばシリンダタンブラタイプの施錠装置に用いられる。挿入部12と、挿入部12側の把持部13の一部である前部13aとは、一体に金属成形されている。また、把持部13の残りの後部13bは、樹脂成形されている。把持部13の前部13aと後部13bとは、不用意に外れることがないように一体的に固定されている。なお、後部13bの端部には、リングや鎖等を取り付ける孔13cが形成されている。
【0013】
シリンダタンブラタイプの施錠装置は、周知のように、鍵の挿入部の縁形状が凹凸状になっており、挿入部をシリンダ(錠前)の鍵穴に差し込むと、シリンダの内部に設けられた長さが異なる複数個の下ピン(図示せず)が挿入部の縁にそれぞれ当接し、挿入部の縁形状がシリンダに対応していれば、上ピン(図示せず)と下ピンの区切りが一直線状になるから、把手部を把持して鍵を軸周りに回すことができるようになり、解錠できる仕組みになっている。
【0014】
同図(A)に示すように、鍵本体11の一方の片面11aには、挿入部12の軸線に沿った中央部と、把持部13の前部13aとに、一繋がりに1枚のシート状をした有機EL(Organic Electro-Luminescence)である有機ELシート15(平面状をした発光体)が貼着されている。この有機ELシート15は、挿入部12の中央部に貼着される細長部15aと、把持部13の前部13aに貼着される矩形状部15bとからなる。
【0015】
有機ELシートは、周知のように、蛍光素子からなる発光層を透明導電膜を用いた陽極とアルミや銀・マグネシウム合金等の金属薄膜を用いた陰極とで挟んだ構造をしており、陽極と陰極に電圧をかけると、発光層が発光する。
【0016】
有機ELシート15は、0.2〜0.5mm程度と非常に薄いため、鍵本体11の鍵としての形状をなんら変更する必要がない。鍵本体11の片面11aは、有機ELシート15が貼着された後、この上から薄い透明な保護シートまたは透明樹脂で被覆される。他方の片面11bには、同図(B)に示すように、有機ELシート15は貼着されない。
【0017】
有機ELシート15は、把持部13の後部13bに設けられた押圧スイッチ16(スイッチ部)を押圧している間のみ、発光される。押圧スイッチ16は、その可動部が後部13bと一体的に樹脂成形され、把持部13の面よりもやや凸状に膨らんだ形状をしている。このため、後部13bの樹脂は、少なくとも押圧スイッチ16の可動部に対応する部分が押圧可能な硬さに成形され、この部分が押圧されている間のみ、押圧スイッチ16がオンになる。また、押圧スイッチ16は、有機ELシート15と同様に、片面11aのみに設けられているから、例えば押圧スイッチ16を右手の親指で押圧するように把持部13を右手で把持すると、有機ELシート15及び押圧スイッチ16は左手側を向くことになる。
【0018】
鍵10の電気的構成は、図2に示すように、有機ELシート15,押圧スイッチ16,及び電池17からなる。電池17としては、薄型のボタン電池等が使用され、後部13b内に設けられている。押圧スイッチ16及び電池17は、本発明に係る発光駆動手段を構成する。押圧スイッチ16が押圧され、オンされると、電池17から有機ELシート15に電力が供給され、有機ELシート15が発光される。
【0019】
鍵10と一対に施錠装置18を構成するシリンダ19は、図3に示すように、その鍵穴19aの左脇に、半月状の反射シール20が貼着されている。この反射シール20は、暗闇や暗がりで有機ELシート15からの光によって照らされると、有機ELシート15の発光色(例えば青色)と同じ色で光る。また、反射シール20が光って見える向き(有機ELシート15が反射シール20側に向いている向き)で、かつ反射シール20の右脇に挿入部12を差し込むようにすると、挿入部12が正常に鍵穴19aに挿入される。なお、シリンダ19は、図示していないドアに組み込まれている。
【0020】
このように構成された鍵10及び施錠装置18の作用について説明する。例えば、夜にも関わらず街灯が点いていない自宅前に到着した場合、ポケット等から鍵10を取り出し、シリンダ19の鍵穴19aに鍵10の挿入部12を差し込もうとするが、暗闇で鍵穴19aを目視することができない。
【0021】
そこで、手さぐりで、押圧スイッチ16が右手の親指に触れるように把手部13を右手で保持し、右手の親指で押圧スイッチ16を押圧する。これにより、有機ELシート15が発光するから、これを懐中電灯代わりにして、シリンダ19の鍵穴19aがあると思しきところへ鍵10を近づける。有機ELシート15から発光する光によって、シリンダ19の鍵穴19a辺りが照らされるとともに、鍵穴19aの左脇に配置されている反射シール20が光る。これにより、反射シール20を目印にして、鍵穴19aを目視で確認することができる。
【0022】
右手の親指で押圧スイッチ16を押圧しながら把手部13を右手で把持しているので、片面11aが把手部13を把持している人の左手側に向いている。このまま挿入部12の先端を、反射シール20を目印にして、鍵穴19aに挿入すれば、挿入部12は、正しい向きで鍵穴19aに挿入される。挿入部12を鍵穴19aの奥まで挿入した後、把手部13を所定の方向へ回動させれば、施錠装置18は解錠する。
【0023】
次に、本発明の第2実施形態について図4,図5を参照して説明する。なお、第1実施形態と同じ部材には、同じ符号を付し、説明を省略する。鍵25は、図4(A)に示すように、第1実施形態の有機ELシート15の代わりに、ドット毎に光らせることができるドットマトリクス型の有機ELシート26を用いている。また、挿入部12の先端面には、電極29が設けられている。
【0024】
有機ELシート26の各ドットは、未発光状態では白色をしており、発光状態では青色に発光する。これにより、矩形状部26bに、施錠したことを示す○印27、または解錠したことを示す×印28(同図(B))のいずれか一方を択一的に表示する。この表示の仕方は、例えば、○印27又は×印28の部分を残して、他の全ての部分を発光させる。この結果、○印27又は×印28を除いて、細長部26aを含む他の部分は青色に発光するから、○印27又は×印28が白く浮き出たように表示される。
【0025】
鍵25の電気的構成は、図5に示すように、押圧スイッチ16,電池17,有機ELシート26,電極29,制御部30(鍵側制御部),EEPROM等からなる不揮発性のメモリ31(鍵側記憶部),及び通信部32からなる。制御部30は、有機ELシート26,メモリ31,及び通信部32を制御する。電極29は通信部32に接続されている。
【0026】
鍵25と一対に用いられ、施錠装置34を構成するシリンダ35には、制御部36(錠前側制御部),EEPROM等からなる不揮発性のメモリ37(錠前側記憶部),通信部38,及び通信部38に接続された電極39からなる。この電極39は、シリンダ35に設けられた鍵穴の奥に設けられ、鍵穴に挿入された挿入部12の電極29と接触することにより、鍵25の通信部32とシリンダ35の通信部38とは接続されて通信可能になる。
【0027】
鍵25が、シリンダ35の鍵穴に挿入され、施錠する方向に回動されると、制御部36は、メモリ37に施錠情報を記憶する。これと同時に、鍵25の制御部30は、通信部38,32を介して施錠情報を取り込み、メモリ31に記憶する。鍵25が鍵穴から引き抜かれた後も、メモリ31に記憶された施錠情報は保持される。
【0028】
外出先等で玄関の鍵を閉めたかどうか不安になった場合、押圧スイッチ16を押圧すると、矩形状部26bに○印27が表示されるから、施錠されていることを確認することができる。同様に、メモリ31に解錠情報が記憶されている場合には、押圧スイッチ16を押圧することにより、矩形状部26bに×印28が表示される。
【0029】
次に、本発明の第3実施形態について図6,図7を参照して説明する。第3実施形態は、第2実施形態にセキュリティ機能を付加したものである。なお、第2実施形態と同じ部材には、同じ符号を付し、説明を省略する。鍵40に用いられる有機ELシート42は、図6に示すように、細長部を三分割した長方形部42a〜42cと、短い細長部を有する矩形状部42dとの4セグメントに分割されている。また、矩形状部42dは、有機ELシート26と同様に、ドットマトリクス型となっており、第2実施形態と同様に、○印27又は×印28が表示される。
【0030】
鍵40、及び鍵40と一対に用いられ、施錠装置44を構成するシリンダ45の電気的構成を示す図7において、シリンダ45の鍵穴45a(図6参照)には、鍵40の挿入部12が挿入された状態で、長方形部42a〜42c,矩形状部42dに対応する各位置に、受光素子47a〜47dが配置されている。また、シリンダ45の制御部48(錠前側制御部)には、鍵穴45aに挿入された鍵40の回動を阻止して解錠を不許可とするロック機構49が接続されている。
【0031】
挿入部12が鍵穴45aの奥まで挿入されると、挿入部12の先端面に設けられた電極29が、鍵穴45aの奥に設けられた電極39に接触し、通信部32,38同士が通信可能状態になると同時に、長方形部42a〜42c,矩形状部42dの各発光制御が、メモリ31に予め記憶されている発光パターンのデータに従って、鍵40の制御部50(鍵側制御部)により開始される。
【0032】
長方形部42a〜42c,矩形状部42dの各発光による発光パターンは、例えば、図6(A)〜(C)に示すように、発光状態を「1」,消灯状態を「0」とすると、「1001」(同図(A)),「0101」(同図(B)),「0001」(同図(C))の3種類が設けられ、これらを例えば0.1秒毎に「1001」→「0101」→「0001」と順次に切り換えて1サイクルとし、これが例えば3回繰り返される。
【0033】
受光素子47a〜47dは、長方形部42a〜42c,矩形状部42dの各発光を受光し、各出力をシリンダ45の制御部48に入力する。制御部48は、受光素子47a〜47dからの各出力に基づいて、長方形部42a〜42c,矩形状部42dの各発光による1サイクル分の発光パターンを読み取り、これと、予めメモリ37に記憶されている発光パターンとを比較する。
【0034】
受光素子47a〜47dからの各出力に基づく発光パターンと、予めメモリ37に記憶されている発光パターンとが一致した場合には、制御部48は、ロック機構49に指令を出して鍵40の回動を許容するが、一致しない場合には、鍵40の回動を阻止する。これにより、施錠装置44の安全性が確保される。
【0035】
また、挿入部12を鍵穴45aの奥まで挿入する以前の電極29,39が互いに接触していない状態で押圧スイッチ16を押圧した場合は、有機ELシート42の長方形部42a〜42c,矩形状部42dの全部が一斉に連続発光し、第1,第2実施形態と同様に、上述したような暗闇で鍵穴を確認したい場合などに、懐中電灯代わりに用いることができる。
【0036】
次に、本発明の第4実施形態について図8を参照して説明する。第4実施形態の施錠装置55は、第1実施形態と同様の形状をしたシリンダ56と鍵57から構成される。なお、第1実施形態と同じ部材には、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0037】
シリンダ56には、その表面又は表面近傍に、給電側コイル58が設けられている。また、鍵57には、その挿入部の先端部又は把手部に、受電側コイル59(電力供給部)が設けられている。給電側コイル58には、これに交流電流を供給する交流電源60が接続されている。給電側コイル58に受電側コイル59を接近させると、電磁誘導により受電側コイル59に交流電流が誘起される。この交流電流は、整流器61により直流電流に変換されてから有機ELシート15に供給され、有機ELシート15が自動発光する。このため、鍵57には、第1実施形態における電池17や押圧スイッチ16は不要である。なお、有機ELシートの代わりに、交流駆動型の無機ELシートを用いれば、整流器61を省略することができる。
【0038】
このように構成された鍵57の挿入部の先端又は把手部をシリンダ56に近づけると、鍵57の表面に貼着された有機ELシート15が自動発光するから、押圧スイッチ等を押圧操作する手間も無く、暗闇でもシリンダ56の鍵穴を容易に見つけることができる。
【0039】
本実施形態では、シリンダに給電側コイル、鍵に受電側コイルをそれぞれ設け、これらを近接することにより、電磁誘導により受電側コイルに交流電流が誘起されるようにすることにより、鍵の電池やスイッチを不要としたが、本発明はこれに限定されることなく、例えば「フェリカ(FeliCa)」(登録商標)の方式によるリーダライタをシリンダに、フェリカチップ(電力供給部)を鍵に、それぞれ設けるようにしてもよい。この場合には、シリンダと鍵との距離を、例えば10cm程度とかなり離しても作動するため、フェリカチップの配置の自由度が増すとともに、施解錠の情報などもシリンダと鍵との間で遣り取りできる。
【0040】
以上説明した実施形態では、鍵本体の片面のみに有機ELシートを貼着したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば挿入部の先端面まで有機ELシートを貼着するようにしてもよい。こうすると、鍵穴がより明瞭に照らし出される。また、鍵本体の両面に有機ELシートを貼着してもよい。この場合、例えば、有機ELシートの発光色を各面で異なる色とすることにより、鍵面の向きを特定することができる。
【0041】
また、有機ELシートの発光色を青色としたが、これに限定されないのは勿論で、例えば赤色としてもよい。また、施錠,解錠の別を○印,×印で表示したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば笑顔,泣き顔のイラストや「施錠」,「解錠」等の文言を表示するようにしてもよい。
【0042】
上記実施形態では、施錠装置の例としてシリンダタンブラタイプを挙げたが、本発明はこれに限定されることなく、例えば鍵の表面に深さや大きさの異なるくぼみ(ディンプル)を設けたディンプルキーを用いるタイプでもよい。このタイプでは、鍵穴に差し込む際の鍵面の向きは関係ないので、ディンプル部分を除く鍵本体の両面に有機ELシートを貼着してもよい。
【0043】
上記第3実施形態では、「1001」→「0101」→「0001」と変化させる発光パターンとしたが、本発明はこれに限定されることなく、例えば「1001」→「1101」→「0110」→「0101」としてもよい。また、発光パターンの照合を行なう場合に、発光パターンそのものに限らず、発光する時間間隔も照合の対象としてもよい。
【0044】
上記第3実施形態では、4セグメントによる発光パターンとしたが、本発明はこれに限定されることなく、例えば8セグメントや16セグメントによる発光パターンとしてもよい。このようにセグメントを増やすと、模倣されにくい複雑な発光パターンを設定することができ、よりセキュリティ性を向上させることができる。
【0045】
上記実施形態では、有機ELシートを発光させる際にオンされるスイッチとして、押圧スイッチを採用したが、本発明はこれに限定されることなく、例えばスライド式のスイッチでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態の鍵の片面ずつを示す平面図である。
【図2】第1実施形態の鍵の電気的構成を示す説明図である。
【図3】第1実施形態の鍵をシリンダの鍵穴に差し込む様子を示す説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態の鍵の片面を示す平面図である。
【図5】第2実施形態の鍵とシリンダの各電気的構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第3実施形態の鍵の片面とシリンダの断面を説明図である。
【図7】第3実施形態の鍵とシリンダの各電気的構成を示すブロック図である。
【図8】第4実施形態の鍵とシリンダの各電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0047】
10,25,40,57 鍵
11 鍵本体
11a,11b 片面
12 挿入部
13 把手部
15,26,42 有機ELシート
16 押圧スイッチ
17 電池
18,34,44,55 施錠装置
19,35,45,56 シリンダ
19a 鍵穴
20 反射シール
27 ○印
28 ×印
30,36 制御部
31,37 メモリ
58 給電側コイル
59 受電側コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠前の施解錠に用いられ、前記錠前の鍵穴に挿入される挿入部と、把持される把手部とからなる鍵本体と、
前記挿入部及び/又は前記把手部の表面に設けられ、平面状をした発光体と、
前記鍵本体に設けられ、前記発光体を駆動して発光させる発光駆動手段と
を備えたことを特徴とする鍵。
【請求項2】
前記発光駆動手段は、前記錠前との接近により発生する電磁誘導により前記発光体に電力を供給する電力供給部であることを特徴とする請求項1記載の鍵。
【請求項3】
前記発光駆動手段は、前記発光体に電力を供給する電池と、この電池から前記発光体に電力を供給する際にオンされるスイッチ部とからなることを特徴とする請求項1記載の鍵。
【請求項4】
前記発光体は、前記挿入部及び/又は前記把手部の片面に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の鍵。
【請求項5】
前記発光体は、シート状をした有機EL又は無機ELであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の鍵。
【請求項6】
前記請求項1ないし5いずれか1項記載の鍵と、
前記発光体が設けられた前記鍵本体の片面と同じ側の前記鍵穴近傍の面に、印を付した錠前と
を備えたことを特徴とする施錠装置。
【請求項7】
前記印は、前記発光体からの光を反射して光る反射素材からなることを特徴とする請求項6記載の施錠装置。
【請求項8】
前記反射素材は、前記発光体の発光色と同様の色で光ることを特徴とする請求項7記載の施錠装置。
【請求項9】
鍵穴を有する錠前本体と、この錠前本体に設けられ、施解錠の情報を記憶する錠前側記憶部と、前記施解錠の情報を送信する送信部と、前記錠前側記憶部と送信部を制御する錠前側制御部とを備えた錠前と、
前記錠前の施解錠に用いられ、前記錠前の鍵穴に挿入される挿入部と把持される把手部とからなる鍵本体と、前記挿入部及び/又は前記把手部の表面に設けられ、平面状をした発光体と、前記鍵本体に内蔵され、前記前記施解錠の情報を受信する受信部と、この受信部に接続され、前記施解錠の情報を記憶する鍵側記憶部と、前記鍵本体に内蔵され、前記施解錠の情報に基づいて前記発光体の発光の仕方を制御する鍵側制御部と、前記鍵本体に内蔵され、少なくとも前記発光体及び前記鍵側制御部に電力を供給する電池と、前記把手部に設けられ、前記発光体を駆動する際にオンされるスイッチ部とを備えた鍵と
からなることを特徴とする施錠装置。
【請求項10】
前記発光体は複数のセグメントに分けられ、これらの各セグメントの発光が所定の発光パターンを形成するように前記鍵側制御部によって制御されるとともに、
前記各セグメントの発光をそれぞれ受光する複数個の受光部を前記錠前本体に設け、前記錠前側制御部は、前記各受光部からの出力に基づいて前記発光パターンを読み取り、これが前記錠前側記憶部に予め記憶されている発光パターンと一致するか否かの判定を行なうとともに、一致していない場合には、解錠を不許可とすることを特徴とする請求項9項記載の施錠装置。
【請求項11】
前記発光体は、シート状をした有機ELであることを特徴とする請求項9または10記載の施錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−101093(P2010−101093A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274469(P2008−274469)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】