説明

長尺材曲げ加工用のロボットハンドおよび長尺材曲げ加工システム

【課題】吸着手段とグリッパとを備えたローディングが可能な長尺材用ロボットハンドの提供と、このロボットハンドを使用した長尺板材曲げ加工システムの提供。
【解決手段】1.ロボットハンド15に吸着手段31とワークの長手方向両端部を把持するグリッパ51とを設け、前記吸着手段をワークの前後方向に移動位置決め可能に設けたことを特徴とする長尺板材曲げ加工用ロボットハンド。2.板材折曲げ加工機へワークを供給するロボットと、掴み換え装置とを備えた長尺板材曲げ加工システムにおいて、前記ロボットハンドがロボットハンド15に吸着手段31とワークの長手方向両端部を把持するグリッパ51とを設け、吸着手段をワークの前後方向に移動位置決め可能に設けてなるこ長尺板材曲げ加工システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長尺材曲げ加工用のロボットハンドおよび長尺材曲げ加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的には、長尺材のサッシ曲げ加工は長尺の板材すなわち長尺材を曲げ加工機であるプレスブレーキを使用して製作される。
【0003】
図47(a)、図47(b)は、サッシ曲げ加工における途中工程を示したものであり、この例では、ワークWをバキュームパッド103で吸着保持して曲げ加工機の上金型101と下金型102の間へ供給する場合を示したものである。
【0004】
図47(a)に示した状態は、次の曲げ加工位置を上金型101と下金型102間に位置決めし、次いで、ワークWの上面まで上金型101を下降させてワークWの上面に上金型101が接触した位置(ピンチング位置)で停止させた状態である。
【0005】
図47(a)に示したワークWの断面形状の場合、曲げ加工位置の前後のバランスが悪く、図47(b)の如く、ワークWが反時計回りに回転してしまうため曲げ加工を継続することごできない。
【0006】
また、ワークWが図48に示すような断面形状の場合、ワークWの下側に曲げられたフランジ104にバキュームパッド103が干渉してワークWを確実に吸着保持できないことがある。
【0007】
一方、フランジ部分が小さいワークの場合、バキュームパッドによる吸着保持手段に代えて、そのフランジ部分をグリッパで把持する方法が用いられている。
【0008】
しかしながら、グリッパタイプの把持手段の採用により曲げ加工が可能な断面形状の範囲は拡大するが、積載された素材から素材を1枚取り出して板材加工機へ供給するローディングができない。
【0009】
そこで、積載された素材から素材を1枚取り出して板材加工機へ供給するワークのローディングが可能なバキュームパッド吸着手段とグリッパタイプの把持手段とを備えた板材把持装置が採用されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開平6−66982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の特許文献1には、中間台や反転器などを用いずに幅の狭い板材をプレスブレーキなどの曲げ加工機へ供給し、かつその曲げ加工機で加工された製品を取り出すための板材把持装置が記載されている。
【0012】
より詳細には、図49を参照するに、上記板材把持装置は関節形ロボットの第3アーム105の先端に左右反転機構106を装着し、この左右反転機構106により反転駆動される主軸107を有しており、この主軸107先端には角棒状のベース108が前記第3アーム105と平行な面内で回転可能に設けてある。
【0013】
そして、角棒状のベース108の前面側には、前記主軸の中心C4に関して左右対称となるようにそれぞれ、一対の吸着バー109、前縁挟みバー110、側縁挟みバー111が内側から左右方向の外側に向かって順に設けてある。
【0014】
前記吸着バー109は前記ベース108の後面側に設けたバキュームパッド駆動シリンダにより伸縮自在に設けてあり、吸着バー109の先端にはバキュームパッド114が首振り可能に設けてある。同様に前記前縁挟みバー110は駆動シリンダ115により伸縮自在に設けてあり、先端には前縁挟みチャック116が設けてある。
【0015】
さらに、前記側縁挟みバー111は駆動シリンダ117により伸縮自在に設けてあり、先端には一対の側縁挟みチャック118が互いに対向するように設けてある。この側縁挟みチャック118に板材を保持した状態で、板材を板材の長軸CK回りに回転させる駆動モータ119が設けてある。
【0016】
上記特許文献1記載の発明においては、原板ストックから板材を1枚吸着して持ち上げるまではバキュームパッド吸着機構114を利用し、その後、板材を前縁挟み機構116に持ち換えてからは、曲げ加工、ワークの反転、再加工および製品の取り出しまでを前縁挟み機構116に保持した状態で行うものであり、中間台や反転機へを使用しないことにより生産タクトを短縮したことを特徴とするものである。
【0017】
しかしながら、引用文献1に記載の板材把持装置に係る発明において、長尺材のサッシ曲げ加工を行う場合には種々の問題があり、実用的な長尺材のサッシ曲げ加工が可能な範囲が狭いという問題がある。
【0018】
すなわち、実用的な長尺材のサッシ曲げ製品においては、掴み代が少なくワークの掴み換えを行わないと側縁挟みチャック(グリッパ)が干渉して把持できないものが多い。
【0019】
同様に、曲げフランジ部の寸法が小さい長尺材のサッシ曲げでは、掴み換えを行わないと曲げ加工時に側縁挟みチャック(グリッパ)118と金型とが干渉して曲げ加工ができない。また、側縁挟みチャック(グリッパ)118は前後方向には進退可能だが板材の長手方向である左右方向には移動不能であるため、長手方向の寸法の相違する板材の曲げ加工ができないという問題がある。
【0020】
本発明は上述の如き問題を解決するためになされたものであり、本発明の課題は、掴み代が少ない長尺材でも長手方向の寸法が相違する長尺材でも把持可能でかつ、曲げ加工時にグリッパと金型とが干渉するのを回避可能なグリッパと、長尺材の一面を吸着保持可能な吸着手段とを備えた長尺材曲げ加工用ロボットハンドを提供することである。
【0021】
また、板材折曲げ加工機へ長尺板材からなるワークを供給または加工製品を搬出するロボットと、このロボットのロボットハンドが保持した長尺板材からなるワークを一時的に保持する長尺板材掴み換え装置と、ロボットハンド交換ステーションと、素材ステーションと、製品ステーションとを備えた長尺板材曲げ加工システムにおいて、前記ロボットハンドが、掴み代が少ない長尺材でも長手方向の寸法が相違する長尺材でも把持可能でかつ、曲げ加工時にグリッパと金型とが干渉するのを回避可能ななグリッパと、長尺材の一面を吸着保持可能な吸着手段とを備えてなる長尺板材曲げ加工システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述の課題を解決する手段として請求項1に記載の長尺板材曲げ加工用ロボットハンドは、ロボットのロボットハンド装着部に着脱交換自在のロボットハンドにして、該ロボットハンドに長尺板材からなるワークの一面を吸着保持自在の吸着手段を設けると共に、該吸着手段に吸着された前記ワークの長手方向両端部を把持可能でかつ互いに接近離反可能なグリッパとを設け、前記吸着手段を前記グリッパに把持された前記ワークの面上を前記長手方向に直交する前後方向に移動位置決め可能に設けたことを要旨とするものである。
【0023】
請求項2に記載の長尺板材曲げ加工用ロボットハンドは、請求項1に記載の長尺板材曲げ加工用ロボットハンドにおいて、前記吸着手段は前記長手方向に延伸するバキュームパッド保持体に複数個のバキュームパッドを適宜間隔で配列して設け、該バキュームパッド保持体を駆動シリンダにより前記前後方向に移動位置決め自在に設けてなり、前記グリッパは固定上部ジョーに対して開閉自在の可動下部ジョーを有し、前記固定上部ジョーの開閉方向の厚みを前記可動下部ジョーより薄く設けてなることを要旨とするものである。
【0024】
請求項3に記載の長尺板材曲げ加工システムは、板材折曲げ加工機へ長尺板材からなるワークを供給かつ前記板材折曲げ加工機で加工された製品を搬出するロボットと、このロボットのロボットハンドが保持した前記ワークを受領して一時的にそのワークを保持する掴み換え装置と、ロボットハンド交換ステーションと、前記ワークを載置する素材ステーションと、前記製品を載置する製品ステーションとを備えた長尺板材曲げ加工システムにおいて、前記ロボットハンドは前記ワークの一面を吸着保持自在の吸着手段を設けると共に、該吸着手段に吸着された前記ワークの長手方向両端部を把持可能でかつ互いに接近離反可能なグリッパとを設け、前記吸着手段を前記グリッパに把持された前記ワークの面上を前記長手方向に直交する前後方向に移動位置決め可能に設けてなることを要旨とするものである。
【0025】
請求項4に記載の長尺板材曲げ加工システムは、請求項3に記載の長尺板材曲げ加工システムにおいて、前記掴み換え装置を前記板材折曲げ加工機本体に設けたことを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本願発明の長尺板材曲げ加工用ロボットハンドによれば、掴み代が少ない長尺材からなるワークでも長手方向の寸法が相違する長尺材でも把持可能となる。また、グリッパの固定上部ジョーの開閉方向の厚みを可動下部ジョーより薄く設けたので、曲げ加工時にグリッパと金型とが干渉する領域をより小さくすることができる。
【0027】
また、ロボットハンドにグリッパと長尺材からなるワークの一面を吸着保持可能な吸着手段とを長尺板材の面上を長手方向に直交する前後方向に移動位置決め可能に設けたので、グリッパ単独では不可能な積載された板材の1枚取りによるローディングが可能となった。
【0028】
さらに、板材折曲げ加工機本体に設けた掴み換え装置をを使用すれば掴み換えの時間をより短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本願発明に係るロボットハンドを装着したロボットを使用した長尺板材曲げ加工システムの説明図。
【図2】本願発明に係るロボットハンドを装着したロボットの側面図(一部省略)。
【図3】本願発明に係るロボットハンドを上面から見た吸着手段の動作状態の説明図で、図3(a)は吸着手段の後退位置、図3(b)は前進位置を示す。
【図4】本願発明に係るロボットハンドを上面から見たグリッパの動作状態の説明図で、図4(a)は、左右のグリッパが接近した状態を、図4(b)は、離反した状態を示す。
【図5】図5(a)は、図3のB−B矢視断面図で吸着手段の後退位置、図5(b)は図3のC−C矢視断面図で吸着手段の前進位置を示す。
【図6】図5のD矢視図で、図6(a)はグリッパの閉状態、図6(b)は開状態を示す。
【図7】長尺材ワークの曲げ製品の例。
【図8】図7のD−D断面
【図9】図7の長尺材ワークの曲げ製品の展開図。
【図10】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図11】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図12】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図13】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図14】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図15】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図16】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図17】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図18】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図19】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図20】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図21】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図22】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図23】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図24】長尺材ワークの曲げ工程の説明図であり、図23(a)におけるE−E矢視図。
【図25】長尺材ワークの曲げ工程の説明図であり、図23(b)におけるF−F矢視図。
【図26】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図27】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図28】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図29】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図30】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図31】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図32】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図33】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図34】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図35】長尺材ワークの曲げ工程の説明図であり、図33のG−G矢視図。
【図36】長尺材ワークの曲げ工程の説明図であり、図34のH−H矢視図。
【図37】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図38】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図39】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図40】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図41】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図42】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図43】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図44】長尺材ワークの曲げ工程の説明図。
【図45】長尺板材用の掴み換え装置を板材折曲げ加工機であるプレスブレーキ本体に設けた例。
【図46】図46(a)はグリッパを使用して掴み換え装置にワークを把持させた状態、図46(b)はロボットハンドを垂直面内で180度回転させてワークを掴み換えた状態を示した図。
【図47】ワークWをバキュームパッド103で吸着保持して曲げ加工機へ供給する場合の説明図で、図47(a)はピンチング状態を、図47(b)はワークWが反時計回りに回転した状態を示した図。
【図48】ワークWの下側に曲げられたフランジ104にバキュームパッド103が干渉してワークWを吸着保持できない状態を示した図。
【図49】バキュームパッドとグリッパとを備えた従来のロボットハンドの例。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面によって説明する。
【0031】
図1は本発明に係る長尺板材曲げ加工システム1の構成を示したものであり、板材折曲げ加工機である例えばプレスブレーキ3の前側には、多関節形の産業用ロボット5が設けてある。このロボット5は、前記プレスブレーキ3に装着された曲げ金型(図示省略)の長手方向に平行な方向であるX軸方向に移動位置決め自在に設けてある。
【0032】
前記ロボット5の前側には曲げ加工に使用される長尺板材からなるワークWを積載した素材ステーション7と、プレスブレーキ3で加工された製品をPを載置する製品ステーション11とが設けてある。
【0033】
また、図1に示すように、前記プレスブレーキ3を前側から見て前記ロボット5の左側には、このロボット5の後述するロボットハンド15に保持された前記ワークWを受領して一時的に保持する掴み換え装置13が設けてある。
【0034】
また、前記プレスブレーキ3の右側には、複数種類のロボットハンド15(a〜f)を保持するハンド置き台17(a、b)からなるロボットハンド交換ステーション19が設けてあり、左側には前記プレスブレーキ3を含む長尺板材曲げ加工システム1を制御する制御装置21が設けてある。
【0035】
前記プレスブレーキ3の前側およびロボットハンド交換ステーション19の前方には、X軸方向に延伸した基台23が設けてあり、この基台23上にX軸に平行に設けた一対のX軸ガイドレール25に、前記ロボット5の下部に一体的に設けたX軸キャリッジベース27が移動自在に設けてある。
【0036】
前記X軸キャリッジベース27は、前記制御装置に制御されるX軸駆動モータ(図示省略)により、X軸方向に移動位置決め自在に設けてある。したがって、前記ロボット5はX軸方向に移動位置決め自在である。
【0037】
図1、図2を参照するに、前記ロボット5は、例えば6軸制御の多関節形の産業用ロボットであり、前記X軸キャリッジベース27上にZ軸方向に立設した主軸29を有し、この主軸29はZ軸を中心に約360度の範囲に回転位置決め自在である。
【0038】
前記主軸29の上部には、X軸に平行な水平な軸O1(図示省略)を中心に回動可能な第1アームJ1が設けてあり、この第1アームJ1の先端部に第2アームJ2が水平な軸O2(図示省略)を中心に回動可能に設けてある。
【0039】
第2アームJ2の先端部に第3アームJ3が同様に水平な軸O3を中心に回動可能に設けてある。また、第3アームJ3の先端部には第4アームJ4が水平な軸O4を中心に回動可能にかつ第3アームJ3の中心軸に対して回転可能に設けてある。前記第4アームJ4の先端部には、前記ロボットハンド15を自動的に着脱交換自在のロボットハンド装着部(例えば、特開平7−290389)が内蔵してある。
【0040】
図2〜図5は、本願発明に係るロボットハンド15の一実施例を示したものであり、図3、図4を参照するに、ロボットハンド15には前記ワークWの一面を吸着保持する後述のバキュームパッド37を昇降可能に設けた吸着手段31と、この吸着手段31に吸着されたワークWの長手方向(図3では左右方向)の両端部を把持可能でかつ互いに接近離反可能な左右一対のグリッパ51(l、r)とが設けてある。
【0041】
前記ロボットハンド15は平板状のハンド本体33を有し、このハンド本体33の前部には左右方向に延伸したバキュームパッド支持体35が設けてある。このバキュームパッド支持体35の前後方向(図3においては上下方向)の両側側面には、複数個のバキュームパッド37が左右方向に一列に適宜間隔を置いて設けてある。
【0042】
前記バキュームパッド支持体35の前部には、このバキュームパッド支持体35に直交する方向に左右一対のガイドバー39(a、b)が一体的に固定してある。このガイドバー39(a、b)は、前記ハンド本体33上面に設けたリニアモーションベアリングの如きガイド部材40(図5参照)に前記前後方向に移動自在にガイドされている。
【0043】
前記ハンド本体33には、前記バキュームパッド支持体35に直交する方向に作動する空圧または油圧で作動する一対のシリンダ41(a、b)が設けてあり、このシリンダ41(a、b)のピストンロッド43の先端部が前記バキュームパッド支持体35に連結してある。
【0044】
また、前記ハンド本体33の前部でかつ、前記バキュームパッド支持体35の少し下方位置には、左右方向に延伸したグリッパ支持体53が前記ハンド本体33に一体的に設けてある。
【0045】
前記グリッパ支持体53の前面には、左右方向に延伸する一対のガイドレール55が設けてある。このガイドレール55に前記グリッパ51を備えたグリッパーキャリッジ57に備えたガイド部材59が移動自在に係合してある。
【0046】
前記グリッパーキャリッジ57には、前後方向に若干延伸したガイド保持部材61が設けてあり、このガイド保持部材61に設けたガイドレール63に前記グリッパ51が前後方向に位置調節可能に装着してある。
【0047】
前記ハンド本体33の前面の中央寄りには、左方向に作動する空圧、油圧または電動等で作動するシリンダ65lと、右方向に作動するシリンダ65rとが設けてある。シリンダ65lのピストンロッド67は前記グリッパ51lのグリッパーキャリッジ57に連結してあり、シリンダ65rのピストンロッド67はグリッパ51rのグリッパーキャリッジ57に連結してある。
【0048】
上記構成において、図3(a、b)、図5(a、b)に示すように、前記シリンダ41(a、b)を同時作動させることにより、総括的に示す前記吸着手段31を図3(a)に示す後退位置から、図3(b)に示す前記ハンド本体33の前方の前進位置へ移動させることができる。
【0049】
また、図4(a)、図4(b)に示すように、シリンダ65lと右シリンダ65rとを同時作動させることにより、総括的に示す前記グリッパ51lと51rとを図4(a)に示す閉位置より、図4(b)に示す開位置へ移動させることができる。
【0050】
図6を参照するに、総括的に示す前記グリッパ51(l、r)は、固定上部ジョー71に対して開閉自在の可動下部ジョー69を有している。そして、前記可動下部ジョー69は駆動シリンダ73の上部に一体的に設けてある。前記固定上部ジョー71には、シリンダ本体73から突出したピストンロッド75が連結してある。
【0051】
前記駆動シリンダ73を作動させることにより、図6(a)、図6(b)に示すように固定上部ジョー71に対して可動下部ジョー69を昇降開閉させることができる。なお、固定上部ジョー71の開閉方向の厚みを前記可動下部ジョー69より薄く設けることにより、曲げ加工時において固定上部ジョー71と上部金型とが干渉する範囲が少なくなる。
【0052】
図1を再度参照するに、前記掴み換え装置13には前記ロボットハンド15に保持された前記ワークWを受領して一時的に保持可能なグリッパ77が設けてある。このグリッパ77には、後述の図24、図25に示すように、X軸方向に平行でかつ水平に延伸した回転軸79に開閉自在なワーククランプ81を適宜な間隔で設けてなるものである。
【0053】
また、前記回転軸79は、図示しない回転駆動手段により回転軸79の軸心を中心として時計方向または反時計方向に180度の範囲を回動可能に設けてあり、この前記回転軸79を180度回転させることにより、保持した前記ワークWを上下反転させることができる(図24、図25参照)。
【0054】
上記構成の長尺板材曲げ加工システム1において、前記ロボットハンド15を装着した前記ロボット5の吸着手段31により、素材ステーション7からワークWを取り出して前記プレスブレーキ3に装着された曲げ金型(図示省略)の間に位置決め供給することができる。
【0055】
曲げ加工製品の曲げ加工工程における曲げ位置に対応して、前記吸着手段31に代えて前記ワークWの長手方向の両端部を前記グリッパ51により把持させることができる。また、前記掴み換え装置13を使用してグリッパ51から前記吸着手段31への変更または吸着手段31からグリッパ51への変更ができる。
【0056】
さらに、前記掴み換え装置13を使用して、前記吸着手段31の吸着位置を前記バキュームパッド支持体35に直交する方向に作動するシリンダ41により前記ワークWの前後方向にずらして持ち替えることが可能である。
【0057】
図45は、長尺板材用掴み換え装置83を板材折曲げ加工機であるプレスブレーキ3本体の上部テーブル85の前面に設けた例であり、長尺板材用掴み換え装置83に前記ワークWを把持させた状態を示す。
【0058】
図46(a)は前記長尺板材用掴み換え装置83にロボットハンド15のグリッパ51を使用してワークWを把持させた状態であり、図46(b)はロボットハンド15を垂直面内で180度回転させてグリッパ51の左右を反転して前記ワークWを掴み換えしたた状態を示したものである。
【0059】
上記のように、プレスブレーキ3本体の上部テーブル85の前面に長尺板材用掴み換え装置83を設けた場合、前記ワークWは上部テーブル85に平行にクランプされる。また、長尺板材用掴み換え装置83の複数のクランプ87は下側に開口部がくるように設けてあるので、クランプ87にクランプされた前記ワークWの平面が垂直になるので、前記ワークWの垂直方向の撓みが小さくなる。
【0060】
前記長尺板材用掴み換え装置83は、前記ロボットハンド15の吸着手段31を使用して掴み換えを行うこともできる。また、長尺板材用掴み換え装置83は上部テーブル85の前面に設けてあるので、掴み換えの時間を短縮できる利点がある。
【0061】
以下に、上述の長尺板材曲げ加工システム1を使用して、例えば図7、図8に示すような曲げ製品Pの折曲げ加工を行う場合の手順について説明する。
【0062】
上記製品Pは、6個所の折曲げ部(1)〜(7)有しており、折曲げ加工もこの順番で折曲げるものとする。図9は製品Pの展開図WPであり、これがワークWとなる。このワークWの左右の長手方向の寸法は相違しており、右側端部の寸法がA、左側端部の寸法がBである(B<A)。
【0063】
先ず最初に、ロボットハンド15の吸着手段31でワークWの右側端部の長辺側を把持して、例えば、ワークWの表面側OSを上側にして、プレスブレーキ3に装着されたパンチPとダイDとの間に搬送し、ワークWの左端部をバックゲージ装置89の突当て部材91に当接させて折曲げ部(1)をパンチPとダイDの折曲げ中心にくるように位置決めし、ワークWの表面側OSにパンチPを当接(ピンチング)させてZ軸方向の基準位置を設定する([図10]〜[図12]参照)。
【0064】
次いで、吸着手段31からグリッパ51へ掴み換えを行う。この際グリッパ51の開閉方向の厚みが薄い固定上部ジョー71が前記ワークWの上側(表面側)に来るようにクランプして、折曲げ部(1)の折曲げ加工を行う([図13]〜[図14]参照)。
【0065】
このようにクランプすることにより、固定上部ジョー71とパンチPとが干渉することなく折曲げ部(1)の折曲げ加工を行うことができる。
【0066】
次いで、折曲げ部(2)の折曲げ加工を行うべく、グリッパ51の上下を反転させてワークWの裏側BSが上にくるように表裏を反転し、バックゲージ装置89で折曲げ部(2)を位置決めした後にピンチングして、再度グリッパ51の上下を反転させてクランプし直して折曲げ部(2)の折曲げ加工を行う([図15]〜[図17]参照)。
【0067】
次いで、折曲げ部(3)の折曲げ加工を行うべく、グリッパ51の上下を反転させてクランプし、ワークWの表側OSが上になるようにして、折曲げ部(3)を位置決めした後にピンチングして、その後、再度グリッパ51の上下を反転させた状態にして折曲げ部(3)の折曲げ加工を行う([図18]〜[図20]参照)。
【0068】
折曲げ部(4)と折曲げ部(5)の折曲げ加工は短辺側の曲げの為、グリッパ51から吸着手段31への掴み換えを行う必要がある([図21]〜[図22]参照)。
【0069】
図23〜図25を参照しながら、上述の折曲げ部(4)と折曲げ部(5)の折曲げ加工時のグリッパ51から吸着手段31への掴み換えについて説明する。
【0070】
前記掴み換え装置13のグリッパ77のワーククランプ81に、前記ロボットハンド15のグリッパ51に把持したワークWの折曲げ部(1)と折曲げ部(3)との間を把持させる([図23(a)]、[図24]参照)。
【0071】
次いで、グリッパ51を開放した後に、前記掴み換え装置13のグリッパ77のワーククランプ81を回転軸79を軸心に180度回転させてワークWの上下を反転させ、ワークWの表面側OSをロボットハンド15の吸着手段31で吸着保持する([図23(b)]、[図25]参照)。
【0072】
次に、短辺の折曲げ部(4)を曲げた後、ワークWを水平に180度回転させて折曲げ部(5)を曲げる([図26]〜[図29])参照)。
【0073】
次に、折曲げ部(6)を曲げるために、吸着手段31からグリッパ51への掴み換えを行う必要があるが、この掴み換えを行う前に前記掴み換え装置13のグリッパ77の掴み代91([図31]、[図32]参照)を確保するべく、前記掴み換え装置13のワーククランプ81にワークWの折曲げ部(1)と折曲げ部(3)との間をクランプさせる([図33]、[図35]参照)。
【0074】
次いで、ワーククランプ81にワークWの折曲げ部(1)と折曲げ部(3)との間をクランプした状態において、吸着手段31を矢印93のように上方へ移動させて、ワークWの下部に前記掴み換え装置13のグリッパ77の掴み代91を確保する([図32]参照)。
【0075】
次いで、吸着手段31での把持をロボットハンド15のグリッパ51に持ち換えるべく、前記グリッパ77の掴み代91部分を前記掴み換え装置13のグリッパ77のワーククランプ81にクランプさせると共に、ロボットハンド15を180度回転してワークWの裏側RSにグリッパ51の固定上部ジョー71がくるようにして折曲げ部(1)と折曲げ部(3)との間をクランプする([図37]〜[図40]参照)。
【0076】
次いで、ワークWの裏側RSを上にして折曲げ部(6)を金型上に位置決めし、折曲げ加工を行う([図41]、[図42]参照)
【0077】
折曲げ部(6)の曲げの後に続いて折曲げ部(7)を位置決めして最後の折曲げ部(7)を折り曲げる([図43]、[図44]参照)。
【符号の説明】
【0078】
1 長尺板材曲げ加工システム
3 プレスブレーキ
5 産業用ロボット
7 素材ステーション
11 製品ステーション
13 掴み換え装置
15 ロボットハンド
17(a、b) ハンド置き台
19 ロボットハンド交換ステーション
21 制御装置
23 基台
25 X軸ガイドレール
27 X軸キャリッジベース
29 主軸
30 ロボットハンド装着部
31 吸着手段
33 ハンド本体
35 バキュームパッド支持体
37 バキュームパッド
39(a、b) ガイドバー
40 ガイド部材
41(a、b) シリンダ
43 ピストンロッド
51(l、r) グリッパ
53 グリッパ支持体
55 ガイドレール
57 グリッパーキャリッジ
59 ガイド部材
61 ガイド保持部材
63 ガイドレール
65(l,r) シリンダ
67 ピストンロッド
69 可動下部ジョー
71 固定上部ジョー
73 シリンダ本体
75 ピストンロッド
77 グリッパ
79 回転軸
81 ワーククランプ
83 長尺板材用掴み換え装置
85 上部テーブル
87 クランプ
89 バックゲージ装置
91 突当て部材
J1 第1アーム
J2 第2アーム
J3 第3アーム
J4 第4アーム
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットのロボットハンド装着部に着脱交換自在のロボットハンドにして、該ロボットハンドに長尺板材からなるワークの一面を吸着保持自在の吸着手段を設けると共に、該吸着手段に吸着された前記ワークの長手方向両端部を把持可能でかつ互いに接近離反可能なグリッパとを設け、前記吸着手段を前記グリッパに把持された前記ワークの面上を前記長手方向に直交する前後方向に移動位置決め可能に設けたことを特徴とする長尺板材曲げ加工用ロボットハンド。
【請求項2】
請求項1に記載の長尺板材曲げ加工用ロボットハンドにおいて、前記吸着手段は前記長手方向に延伸するバキュームパッド保持体に複数個のバキュームパッドを適宜間隔で配列して設け、該バキュームパッド保持体を駆動シリンダにより前記前後方向に移動位置決め自在に設けてなり、前記グリッパは固定上部ジョーに対して開閉自在の可動下部ジョーを有し、前記固定上部ジョーの開閉方向の厚みを前記可動下部ジョーより薄く設けたことを特徴とする長尺板材曲げ加工用ロボットハンド。
【請求項3】
板材折曲げ加工機へ長尺板材からなるワークを供給かつ前記板材折曲げ加工機で加工された製品を搬出するロボットと、このロボットのロボットハンドが保持した前記ワークを受領して一時的にそのワークを保持する掴み換え装置と、ロボットハンド交換ステーションと、前記ワークを載置する素材ステーションと、前記製品を載置する製品ステーションとを備えた長尺板材曲げ加工システムにおいて、前記ロボットハンドは前記ワークの一面を吸着保持自在の吸着手段を設けると共に、該吸着手段に吸着された前記ワークの長手方向両端部を把持可能でかつ互いに接近離反可能なグリッパとを設け、前記吸着手段を前記グリッパに把持された前記ワークの面上を前記長手方向に直交する前後方向に移動位置決め可能に設けてなることを特徴とする長尺板材曲げ加工システム。
【請求項4】
請求項3に記載の長尺板材曲げ加工システムにおいて、前記掴み換え装置を前記板材折曲げ加工機本体に設けたことを特徴とする長尺板材曲げ加工システム。

【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2012−101317(P2012−101317A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251883(P2010−251883)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【Fターム(参考)】