説明

集積回路および印刷配線板のための可変インダクタ

【課題】集積回路および印刷配線板のための可変インダクタ。
【解決手段】1次コンダクタ、2次コンダクタ、及びスイッチを用いて集積回路上に可変インダクタを形成することが可能である。1次コンダクタはインダクタを実現しそして種々のパターン(例えば渦巻)に形成されることが可能である。2次コンダクタは1次コンダクタに近接して(例えば外側に)ループを形成する。スイッチは2次コンダクタに直列に結合し、ループを開きあるいは閉じる。インダクタのインダクタンスは、スイッチを用いてループを閉じそして開くことによって変えられる。電流源もまた2次コンダクタと直列に結合され、インダクタンスを増加しあるいは減少する何れかのために2次コンダクタ内の電流を制御するために使用されることが可能である。2個以上の別々なステップでインダクタンスを変化するために複数のループが形成されることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に回路、そしてより特定的には集積回路および印刷配線板のためのインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路(IC)プロセス技術に関する現代の発展とともに、無線通信、ネットワーキング、計算機その等の多数の応用に対する無線周波数集積回路(RFIC)を作成することが可能になっている。これらのRFICは、以前は大きい個別回路コンポーネントを使用して実現されていた種々のアナログ回路ブロックを含むことが可能である。RFIC上にアナログ回路ブロックを実現することによってより小さな寸法、より低いコスト、そして改善された信頼性等の種々の利点が実現されることが可能である。
【0003】
多くのアナログ回路ブロックは設計された機能を達成するためにコンデンサおよびインダクタ等のリアクティブコンポーネントを利用する。たとえば濾波器、共振器タンク、インピーダンス整合ネットワークその他は、必要とされる回路応答を得るためにコンデンサおよびインダクタの両者を含むかも知れない。電圧制御発振器(VCO)に対するタンク回路等のいくつかの応用に対してはリアクティブコンポーネントを定義された値の範囲に亙って変化することが必要となる。もしも調整用コンデンサが利用可能な場合は、そこで可変コンデンサ(また“バラクタ(varactor)”として参照される)が可変リアクティブコンポーネントとしてしばしば使用される。ある応用においては、容量の代わりにインダクタンスを調整することが必要でありあるいは望まれる。これらの応用に対しては、インダクタのバンク(それぞれはそれぞれのスイッチと直列に結合された)が、バンク内の特定のインダクタあるいはインダクタの組み合わせを切り替えることによって、異なったインダクタンス値を得るために慣習的に使用される。しかしながら、インダクタのバンクは大きな面積を占有し、そしてそれはより高いコストに変換される。さらに、直列に結合されたスイッチはインダクタの特性を劣化させることが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その結果当業界においては、集積回路上に作成されることが可能な可変インダクタに対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
集積回路あるいは印刷配線板(printed circuit board)上に便利に作成されることが可能な可変インダクタがこの中に記述されている。可変インダクタは良好なRF特性を有しており、そして濾波器、VCO、インピーダンス整合ネットワークその他等の種々の応用に対して使用されることが可能である。
【0006】
一つの実施例は、1次コンダクタ、2次コンダクタおよびスイッチを含む集積回路を与える。1次コンダクタはインダクタを実現し、そして種々のパターン(たとえば渦巻、ループその他)に形成されることが可能である。2次コンダクタは、1次コンダクタに近接して(たとえば外側に)ループを形成する。スイッチは2次コンダクタと直列に結合し、そしてループを開きあるいは閉じることが可能である。インダクタのインダクタンスはスイッチを用いてループを閉じることおよび開くことによって変化される。電流源もまた2次コンダクタおよびスイッチと直列に結合されることが可能である。この電流源はインダクタンスを増加しあるいは減少するいずれかのために、2次コンダクタ内の電流を制御するために使用されることが可能である。複数のループがまた、2個以上の別々のステップでインダクタンスを変化させるために形成されるかも知れない。
【0007】
本発明の種々の観点および実施例が以下にさらに詳細に記述される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の特徴および本質が、図面と関連させた場合に以下に示す詳細な記述からより明白になろう。図面において同様の参照符号は全体およびこの中を通じて同一のものと認定する。
【0009】
用語“典型的な”は、この中では“実例、例証、あるいは例解として役立つもの”を意味するために使用される。この中に“典型的な”として記述されたいかなる実施例あるいは設計も、他の実施例あるいは設計に勝って選定されたあるいは有利なものとして解釈される必要はない。
【0010】
図1は、無線通信に対して使用されることが可能な無線端末100に関するブロック線図を示す。送信経路においては、ディジタル信号処理装置(DSP)110は送信されるべきデータを処理し、そしてチップのストリームをトランシーバユニット120に与える。トランシーバユニット120の中で、1個あるいはそれ以上のDA変換器(DAC:digital-to-analog converters)122は、チップのストリームを1個あるいはそれ以上のアナログ信号に変換する。アナログ信号は濾波器124によって濾波され可変利得増幅器(VGA::variable gain amplifier)126によって増幅され、そしてRF信号を発生するためにミクサ128によってベースバンドから無線周波数(RF)に周波数アップコンバートされる。周波数アップコンバージョンは、VCO130からのアップコンバージョン局部発振器(LO)信号を使用して実行される。RF信号は濾波器132によって濾波され、電力増幅器(PA)136によって増幅され、デュプレクサ138を経て配送され、そしてアンテナ140から送信される。インピーダンス整合ネットワーク(Z-整合)134は、電力増幅器136の入力を濾波器132の出力に整合する。
【0011】
受信経路においては、変調された信号はアンテナ140によって受信され、デュプレクサ(D:duplexer)138を経て配送され、低雑音増幅器(LNA:low noise amplifier)144によって増幅され、濾波器146によって濾波され、そしてVCO150からのダウンコンバージョンLO信号を使用して,ミクサ148によってRFからベースバンドに周波数ダウンコンバートされる。インピーダンス整合ネットワーク142は、LNA144の入力をデュプレクサ138の出力に整合する。ダウンコンバートされた信号は、バッファ152によってバッファされ、濾波器154によって濾波され、そして1個あるいはそれ以上のサンプルのストリームを得るために1個あるいはそれ以上のAD変換器(ADC:analog-to-digital converter)156によってディジタイズされる。サンプルストリームは処理のためにディジタル信号処理装置110に与えられる。位相同期ループ(PLL:a phase locked loop)158は、ディジタル信号処理装置110から制御情報を受信し、そしてそれぞれ通常のアップコンバージョンおよびダウンコンバージョンLO信号を発生するためにVCO130および150に対する制御を与える。
【0012】
図1は、特定のトランシーバ設計を示す。典型的なトランシーバにおいては、送信されるべき信号の調整(conditioning)および受信された信号の調整は、当業界において知られるように1個あるいはそれ以上の増幅器、濾波器、ミクサその他の段階によって実行されることが可能である。インピーダンス整合ネットワークもまた、送信および受信信号経路を通して使用されるかも知れない(簡素化のために図1においては2個のインピーダンス整合ネットワーク134および142のみが示されている)。図1は、送信信号および受信信号を調整するために使用されることが可能ないくつかの回路ブロックのみを示している。
【0013】
無線端末100は、ディジタル部分およびアナログ部分を含むとして見ることが可能である。ディジタル部分(たとえばDSP110および多分DAC122およびADC156)は、1個あるいはそれ以上のディジタル集積回路上に実現されることが可能である。アナログ部分(たとえばトランシーバユニット120の残りの部分)は、1個あるいはそれ以上のRF集積回路(RFIC)上におよび/あるいは他の個別コンポーネントを用いて実現されることが可能である。
【0014】
図1に示されたようにトランシーバユニット120は、種々の機能に対する種々のアナログ回路ブロックを含む。各アナログ回路ブロックは、トランジスタ、抵抗器、インダクタ、コンデンサその他等の回路エレメントを使用して実現されることが可能である。トランジスタ、抵抗器、およびコンデンサは、容易にRFIC上に作成されることが可能である。インダクタもまた、より小さい寸法、より低いコスト、そしてより大きい信頼性等の種々の利点を得るために、もしも可能である場合はRFIC上に作成されるかも知れない。
【0015】
可変インダクタンスは濾波器124、132、146、および154、インピーダンス整合ネットワーク134および142、VCO130および150、電力増幅器136、LNA144その他等のいくつかのアナログ回路ブロックに対して必要とされるかも知れない。可変インダクタ(この中ではまた“バラクタ”としても参照される)は、可変インダクタンスを与えることが可能であり、そして以下に記述されるようにRFIC上に好都合に作成される。
【0016】
可変インダクタは、(1)インダクタのための1次コンダクタ、および(2)インダクタのインダクタンスを調整するための電流を搬送するために使用される2次コンダクタを使用し形成されることが可能である。1次コンダクタが2次コンダクタに近接して配置される場合は、1次コンダクタのインダクタンスは、磁場の相互作用によって調節される。もしも1次および2次コンダクタ内の電流が反対方向である場合は、そこで、1次コンダクタのインダクタンスは公称値(すなわちループがない場合のインダクタンス値)以下に減少される。逆に、もしも2個のコンダクタ内の電流が同方向である場合は、そこで、1次コンダクタのインダクタンスは公称値以上に増加される。
【0017】
可変インダクタは、いくつかの構成を使用して実現されることが可能である。“受動的” 構成においては、2次コンダクタ内の電流は1次コンダクタ内の電流に対して反対方向であり、そしてインダクタンスの減少のみが達成され得る。“能動的”構成においては、2次コンダクタ内の電流は電流源によって制御されることが可能であり、そしてインダクタンスの減少あるいは増加は、電流源を適切に制御することによって達成されることが可能である。
【0018】
図2Aおよび2Bは、受動的構成を使用して実現された可変インダクタ200の上面図を示す。可変インダクタ200は、1次コンダクタ212、2次コンダクタ222、およびスイッチ224を使用して形成される。
【0019】
1次コンダクタ212は、2ポートインダクタ(two-port inductor)210を実現し、そして図2Aに示された実施例に対しては渦巻パターンに形成される。1次コンダクタ212の幅、渦巻の巻数、そしてターン間の間隔はインダクタ210に対する必要とされる公称インダクタンス、および品質係数(Q)等の種々の要素によって決定されることが可能である。1次コンダクタ212は、(1)金属層上の低損失金属(たとえば銅)、(2)金属層の下の層上の低損失金属に比較して損失を有する金属(たとえばアルミニウム)、あるいは(3)若干の他の材料等の導電性材料の種々の形式を使用して作成されることが可能である。より高いQは、もしも低損失金属を使用して作成される場合は、インダクタ210に対して達成されることが可能である。より小さい寸法のインダクタ210は異なった設計規則(design rule)が適用されるために損失のある金属層の上に作成されることが可能である。
【0020】
2次コンダクタ222は1次コンダクタ212に対する渦巻と同心であることが可能なループ220を形成する。2次コンダクタ222は、スイッチ224と直列に結合され、そしてそれはループを開きあるいは閉じる何れかのために動作する。2次コンダクタ222は、1次コンダクタ212に対して使用された材料と同じあるいは異なるかも知れない導電性材料を使用して作成されることが可能である。たとえば、2次コンダクタ222は、回路コンポーネント間の相互接続に対して使用された、低損失金属、損失を有する金属、あるいは導電材料(たとえばアルミニウムあるいはアルミニウム合金)を使用して作成されることが可能である。スイッチ224は、ループ220上の任意の箇所に置かれることが可能である。
【0021】
図2Aは、スイッチ224が開かれている動作モードを示す。図2Aに示された例においては1次コンダクタ212内の電流(“1次”電流として参照される)は矢印によって示されたように時計方向に流れる。スイッチ224は開かれているために2次コンダクタ222内に電流が流れることは不可能である。したがって、インダクタ210に影響を与えるための仮想(image)電流は適用不可能である。可変コンダクタ200は、インダクタ210の公称インダクタンスを有する。
【0022】
図2Bは、スイッチ224が閉じられている動作モードを示す。1次コンダクタ212内の電流は矢印によって示されたようになお時計方向に流れる。スイッチ224は閉じられているために1次コンダクタ212内の電流によって発生される変化する磁場によって2次コンダクタ222内に仮想電流が誘起される。仮想電流は1次電流と反対方向に流れそして1次コンダクタ212に対して負の相互結合の原因となる。この負の相互結合は可変インダクタ200のインダクタンスを公称値以下に減少する。
【0023】
図3Aから3Cは、能動的構成を使用して実現した可変インダクタ300の上面図を示す。可変インダクタ300は、1次コンダクタ312、2次コンダクタ322、スイッチ324、および電流源326を使用して形成される。1次コンダクタ312は2ポートインダクタ310を実現する。1次コンダクタ312および2次コンダクタ322は、図2Aおよび2Bにおいて1次コンダクタ212および2次コンダクタ222それぞれに対して上に記述されたように作成されることが可能である。2次コンダクタ322、スイッチ324および電流源326は直列に結合し、そしてループ320を形成し、そして1次コンダクタ312に対する渦巻と同心であることが可能である。スイッチ324は、ループを開きあるいは閉じる何れかのために動作する。
【0024】
図3Aは、スイッチ324が開かれ、そして2次コンダクタ322内には電流が流れない動作モードを示す。
【0025】
図3Bは、スイッチ324が閉じられ、そして2次コンダクタ322内に1次電流と同方向に電流が流れる動作モードを示す。スイッチ324が閉じられると、2次コンダクタ322内に電流が流れることが可能である。電流の方向は、電流源326によって決定される。図3Bにおいて、1次コンダクタ312内の1次電流は矢印によって示されるように時計方向に流れ、そして2次コンダクタ322内の電流もまた時計方向に流れる。図3Bに示されたように、もしも1次コンダクタ312および2次コンダクタ322上の電流が同方向であれば、そこで電流は1次コンダクタ312に関する正の相互結合の原因となる。この正の相互結合は可変インダクタ300のインダクタンスを公称値よりもより高く増加する。
【0026】
図3Cは、スイッチ324が閉じられ、そして2次コンダクタ322内の電流は1次電流と反対方向に流れる動作モードを示す。図3Cにおいて1次コンダクタ312内の電流は、なお時計方向に流れる。しかしながら電流源326は2次コンダクタ322内の電流が反時計方向に流れるように強制する。電流はそこで、1次コンダクタ312に対する負の相互結合の原因となり、そしてそれはそこで可変インダクタ300のインダクタンスを公称値以下に減少する。
【0027】
電流源326は、当業界において知られるように種々の方法で実現されることが可能である。受動的および能動的構成の両者に対して、2次コンダクタ内の電流は、1次コンダクタ内の1次電流と同じ周波数で動作しなければならない。能動的構成に対しては、これは1次コンダクタ312を通して通過される信号の形式で(with a version)電流源326を制御することによって達成されることが可能である。電流源326に対する制御信号はたとえば、1次コンダクタに対する信号の一部を傍受する(tapping off)ことによって得られることが可能である。2次コンダクタ322内の電流の方向はそこで、電流源326に対する制御信号の極性を変更することによって制御されることが可能である。
【0028】
図4Aから4Dは、可変インダクタに対する2次コンダクタの4種類の異なった位置に対する断面図を示す。図4Aから4Dは図2Aおよび2Bに示した受動的構成および図3Aから3Cに示した能動的構成の両者に対して適用可能である。明確化のために、受動的構成は以下に記述される。断面図は図2AにおけるラインA−A’に沿っている。1次コンダクタ212がラインA−A’と交差する5回に対する渦巻の2−1/2ターンは、1次コンダクタ212が5本の線条(5個の陰影をつけられたボックスで示される)によって表される。2本の線条は左手側、そして3本の線条は右手側に対するものである。
【0029】
図4Aは、そこでは2次コンダクタ222は1次コンダクタ212に対する渦巻の最も外側のターンの外側に配置される第1の実施例を示す。この実施例はまた図2Aおよび2B、そして図3Aから3Cの中にも示されている。図4Bは、そこでは2次コンダクタ222は1次コンダクタ212に対する渦巻の最も内側のターン中に配置される第2の実施例を示す。図4Cは、そこでは2次コンダクタ222は1次コンダクタ212に対する渦巻の上部に配置される第3の実施例を示す。図4Dはそこでは2次コンダクタ222は1次コンダクタ212に対する渦巻の下部に配置される第4の実施例を示す。
【0030】
2次コンダクタ222に対するループは、図4Aから4Dに示したように1次コンダクタ212に対する渦巻と同心であることが可能である。2次コンダクタ222に対するループもまた、1次コンダクタ212に対する渦巻からオフセットがある(すなわち同心でない)ことが可能である。
【0031】
単純化のために、図2Aから4Dは、可変インダクタに対して使用されている2次コンダクタに関する1個のループを示す。ループはインダクタンスを不連続な量だけ調整するために閉じられることが可能である。複数のループがまた、2個以上のインダクタンス値を得るために複数の2次コンダクタを使用して形成されるかも知れない。たとえば、2次コンダクタの複数の同心ループは1次コンダクタに対する渦巻の外側に形成することが可能である。1次コンダクタにより近接したループは、インダクタンスのより大きい変化の原因となるであろうし、そして1次コンダクタからより離れたループは、インダクタンスのより小さい変化の原因となるであろう。1個あるいはそれ以上のループは任意の与えられた時刻に閉じられることが可能である。
【0032】
図5は、2個のループを有する可変インダクタ500の断面図を示す。この例においては、2次コンダクタ522は1次コンダクタ512に対する渦巻の外側に配置される第1のループ520を形成する。そしてそれはインダクタ510を実現する。3次コンダクタ532は第1のループ520の外側にある第2のループ530を形成する。2次コンダクタ522は、第1のループを開きあるいは閉じる第1のスイッチ524と直列に結合される。3次コンダクタ532は、第2のループを開きあるいは閉じる第2のスイッチ534と直列に結合される。一般的に、可変インダクタは、任意のループの数を含むことが可能であり、そしてループは1次コンダクタに近接して任意の位置に配置されることが可能である。
【0033】
図2Aから5は、そこでは1次コンダクタは渦巻パターンに形成され、そして2次コンダクタは1次コンダクタに対する渦巻と同心の方形のループに形成される特定の設計を示す。1次および2次コンダクタはまた、他のパターンに形成されるかも知れず、そしてこれは本発明の範囲内にある。たとえば、1次コンダクタは、ループバックパターン(すなわちアウトおよびバック(out-and-back))、伝送線(すなわち1本の真直ぐな線)、ジグザグパターン、(たとえば方形あるいは円形の)ループ、多角形等に形成されることが可能である。2次コンダクタもまた他のパターンに形成されるかも知れない。たとえば、2次コンダクタは、1次コンダクタのパターンを反映するかも知れない。この中で使用される場合に“ループ”は、任意の形状を有することが可能で、そしてコンダクタの2個の端部は互いに近接するようにコンダクタで形成される導電経路を参照する。ループは1回あるいはそれ以上の巻数を有することが可能である。コンダクタは、1個あるいはそれ以上の層上の1個あるいはそれ以上の部分で構成されることが可能である。コンダクタはまた、チップ上および/あるいは外部そして配線板(board)上/あるいは外部に実現されることが可能な1個あるいはそれ以上の導電材料の種類で構成されることが可能である。
【0034】
1次コンダクタによって形成されたインダクタは、2個あるいはそれ以上のポートを有することが可能である。4個あるいはそれ以上のポートを有するインダクタは、通常変圧器として参照される。2次コンダクタは、1次コンダクタによって形成された変圧器の周りにループを形成する。
【0035】
図6Aから6Cは、単一のループを有し,そして受動的構成に対する可変インダクタ600に対する等価回路模型に関する図式線図を示す。図6Aは、1次および2次を有する変圧器602を備えた可変インダクタ600に関するモデリングを示す。変圧器602の1次は抵抗器614と直列に結合されたインダクタ612でモデル化されている。変圧器602の1次側にある端子V1およびV2は、可変インダクタ600(図2Aをまた参照のこと)の端子V1およびV2それぞれに対応する。変圧器600の2次は、抵抗器626と直列に結合されたインダクタ622でモデル化されている。抵抗器614および626は、それぞれ1次および2次コンダクタの内部抵抗である。スイッチ624は2次に結合し、そして2次を開きあるいは閉じるのいずれかである。変圧器602の1次および2次は、結合係数kによって磁気的に結合される。インダクタ612および622の反対側のドットは、2個の側上の反対方向の電流に起因する1次および2次間の負の相互結合を示す。
【0036】
図6Bは変圧器602を使用した可変インダクタ600のTネットワーク630への置換(transposition)を示す。Tネットワーク630は、そのすべてが図6Bに示されるように結合されている、3個のインダクタ632、636、および638、そして理想変圧器640を含む。抵抗器614は、端子V1およびV2間の信号回路にある。スイッチ624および抵抗器626は、理想変圧器640の2次と直列に結合する。
【0037】
図6Cは、Tネットワーク630の等価回路650への簡易化を示す。変圧器640は理想的なものであり、1次および2次間の巻数比1:1を有するために(すなわち相互結合は1)、変圧器640はTネットワーク630から取り除かれることが可能である。スイッチ624および抵抗器626はそこで、図6Cに示されるように変圧器640の1次側上の回路エレメントに直列に結合されることが可能である。
【0038】
可変インダクタ600の端子V1およびV2間のインピーダンスは、
Z=(ω+ω+R)/(ω+R
−j(ω−ω−ωL)/(ω+R
式(1)
として表現されることが可能である。
【0039】
ここで、Lはインダクタのための1次コンダクタのインダクタンス、
はループのための2次コンダクタのインダクタンス、
は1次コンダクタの抵抗値、
は2次コンダクタの抵抗値、
Mは相互インダクタンス、そしてここで、M=k・(L1・L21/2、そして
ωはラジアン/秒の単位で与えられる周波数である。
【0040】
他のリアクティブ回路エレメント(たとえばインダクタ)もまた、異なった電気的特性を得るためにループに直列に形成されるかも知れない。
【0041】
ループを開きあるいは閉じるためのスイッチは、種々の方法で実現されることが可能である。可変インダクタを作成するために使用されるIC技術によって、スイッチはNチャネル金属酸化物半導体(N−MOS)トランジスタ、PチャネルMOS(P−MOS)トランジスタ、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)、砒化ガリウム(GaAs)トランジスタその他等を使用して実現することが可能である。
【0042】
図7は、N−MOSトランジスタ724を使用した可変インダクタ700におけるループに対するスイッチの実現を示す。トランジスタ724は、2次コンダクタのためのインダクタ722と結合するソース732、2次コンダクタのための抵抗器726と結合するドレイン736、およびループを開きあるいは閉じるための制御信号を受信するゲート734を有する。インダクタ722および抵抗器726は、ループのための2次コンダクタをモデルとし、そして図6Aにおけるインダクタ622および抵抗器626それぞれに対応する。
【0043】
図7はまた、N−MOSトランジスタ724に対する種々の寄生回路(parasitics)のモデリングを示す。ソース732およびドレイン736間の信号経路は、コンデンサCsdと並列に結合された抵抗器Rswを用いてモデル化される。ソース732、ゲート734、およびドレイン736間の回路グランドあるいは基板(B)に対する容量はそれぞれコンデンサCsb、gb、およびCdbを用いてモデル化される。ソース732およびゲート734間の容量はコンデンサCgsを用いてモデル化され、そしてゲート734およびドレイン736間の容量はコンデンサCgdを用いてモデル化される。
【0044】
図8は、変圧器802およびスイッチ824を有する可変インダクタ800のモデリングを示す。変圧器802は、1次および2次を有する。1次は、抵抗器814と直列に結合されたインダクタ812でモデル化され、そして2次は抵抗器826と直列に結合されたインダクタ822でモデル化される。スイッチ824は、変圧器802の2次と直列に結合され、そして図7に示された寄生回路エレメントを含む。図8に示したモデルは、スイッチの寄生回路たとえば直列インダクタンス、自己共振周波数(SRF:self resonant frequency)の可変インダクタの特性に対する影響を検討するために使用されることが可能である。可変インダクタの特性に対するスイッチの影響はスイッチに対してよい設計を使用することによって最小にされることが可能である。
【0045】
理想的には、2次コンダクタは無限に小さい幅を有するそして抵抗のない完全導体であるべきである。しかしながら、実際の実現においては、2次コンダクタはいくらかの抵抗を有するであろう。受動的および能動的構成の両者において、2次コンダクタは以下に記述するように可変インダクタの種々の電気的特性に影響する。
【0046】
第1に、2次コンダクタの配置は、可変インダクタのインダクタンスの変化の総量を決定する。もしも2次コンダクタが1次コンダクタにより近接して配置される場合は、そこで、1次および2次コンダクタ間により多い磁気結合が発生し、そしてインダクタンスは大きい量だけ変化されることが可能である。逆に、2次コンダクタを1次コンダクタからより離れて配置することによってインダクタンスのより小さい変化が得られる。2次コンダクタの1次コンダクタに対する相対的な位置(たとえば同心であるかあるいは段差がある)がまた、インダクタンスに影響することが可能である。
【0047】
第2に、2次コンダクタの幅は可変インダクタの特性に影響するかも知れない。2次コンダクタに対するより狭い幅は2次コンダクタの直列抵抗を増加し、そしてそれは以下に記述するように、可変インダクタの品質係数に影響することが可能である。より大きい幅は、直列DC抵抗を減少するがしかし近接効果(渦電流)を増加し、そしてそれは金属に近接する磁場を変化することを引き起こす。より高い渦電流は、他の損失のある結合効果を引き起こす。2次コンダクタの幅は、種々の効果のトレードオフに基づいて選択されることが可能である。
【0048】
第3に、2次コンダクタは、いくつかの方法で可変インダクタの品質係数(Q)に影響する。インダクタに対する品質係数は、
Q=ωL/R 式(2)
として表現することが可能である。
【0049】
ここで、Lはインダクタのインダクタンスであり、そして
Rはインダクタの抵抗値である。
【0050】
式(2)に示されるようにもしも可変インダクタのインダクタンスLが、2次コンダクタによって減少される場合は、そこで、すべての他のパラメータが同じであると仮定すると、品質係数Qは比例して減少される。2次コンダクタの直列抵抗もまた品質係数に影響する。この影響はインダクタ動作に関連した損失の大きい経路に起因する。
【0051】
図9Aから9Cは、図2Aに示されたように実現された典型的な可変インダクタンスに対する、直列インダクタンス(L)、直列抵抗(R)、および品質係数(Q)それぞれのプロットを示す。これらのプロットは、計算機シミュレーションによって得られる。可変インダクタは、2GHzにおいて5.5nH(ナノヘンリー)の公称インダクタンスを有する一次コンダクタおよび図2A、2B、および4Aに示されるように、1次コンダクタの外側に置かれた2次コンダクタを有している。シミュレーションは4種の異なった場合すなわち、(1)2次コンダクタが開かれた場合、そして(2)2次コンダクタが閉じられ、そして、0、1.1、および2.2オームの直列抵抗を有している場合に対して実行された。二次コンダクタは、すべての4個の場合に対して同じ位置に配置された。
【0052】
図9Aは、可変インダクタのインダクタンス対周波数を示す。可変インダクタは、約5.5nH(‘基準’の場合)の公称インダクタンスを有する。2次コンダクタが閉じられる場合は、インダクタンスは約4nHに低下する。2次コンダクタを1次コンダクタからより遠くに離すことによって、インダクタンスに関するより小さい変化が得られうる。
【0053】
図9Bは、可変インダクタの直列抵抗対周波数を示す。可変インダクタの実効的な直列抵抗は、2次コンダクタに対するより高い直列抵抗をもって増加する。可変インダクタの合計直列抵抗は、低い周波数においてRindに近接し、そして表皮および近接効果のために高い周波数においてはRind+Rloopよりも大きい。ここで、Rindは、DCにおける1次コンダクタの抵抗、そしてRloopはDCにおける2次コンダクタの抵抗である。この現象はより高いkの値(すなわちより強い磁気的結合)に対してより明白である。
【0054】
図9Cは、可変インダクタの品質係数対周波数を示す。プロットは可変インダクタの品質係数が、2次コンダクタが0オームの抵抗値を有する完全導体としてシミュレートされる場合であってさえも、減少することを示している。この場合に対する品質係数の減少は、閉じられたループを有する可変インダクタに対するより低いインダクタンスに主として帰することができる。品質係数におけるより小さい劣化は、もしもインダクタンスの変化がより小さい場合に生起する。品質係数はさらに2次コンダクタの直列抵抗が増加するに伴って減少する。
【0055】
この中に記述された可変インダクタは、インダクタンスの調整が有利であるような任意の回路ブロックに対して使用されることが可能である。たとえば、可変インダクタは、濾波器、タンク回路、インピーダンス整合ネットワークその他に対して使用されることが可能である。これらの回路ブロックはまた、図1に示したように、VCO、位相同期ループ(PLL)、増幅器、ミクサその他等のより大きい回路ブロックの部品であることが可能である。可変インダクタを使用した典型的なVCO設計は以下に記述される。
【0056】
図10は、可変インダクタ1002、可変コンデンサ(バラクタ(varactor))1004、およびVCO回路(circuitry)1006を使用したVCO1000に関する実施例を示す。可変インダクタ1002は、1次コンダクタ1012、2次コンダクタ1022、およびスイッチ1024を用いて形成される。1次コンダクタ1012は、3ポートインダクタ(three-port inductor)1010を実現し、そして2重渦巻パターンに形成される。高い品質係数を達成するために、1次コンダクタ1012は、1次コンダクタの2個の部分を相互接続するために使用される1個のアンダーパス1014を除き、低損失金属層(たとえば銅)上にほとんど完全に作成される。‘タップ’ピン1018はインダクタ1010の第3のポートを形成し、そして電源電圧を供給され、そしてそれは、1次コンダクタ1012に結合された回路コンポーネントによって使用される。
【0057】
2次コンダクタ1022は、1次コンダクタ1012の2重渦巻の外側に(そしてdの距離だけ離れて)形成される。低い抵抗を得るために2次コンダクタ1022はまた、低損失金属層の上にほとんど完全に作成される。2次コンダクタ1022は、スイッチ1024と直列に結合し、そして1次コンダクタ1012に対する2重渦巻と同心なループ1020を形成する。スイッチ1024は、ループを開きあるいは閉じる何れかの動作を行う。スイッチ1024は、ループ上の任意の位置に置くことが可能である。しかしながら、二次コンダクタ1022の2個の端部を相互接続するためにアンダーパスが必要とされるために、スイッチ1024は、図10に示されたように、アンダーレイヤ上のそして1次コンダクタ1012に対する2個の相互接続部1016aおよび1016b間に好都合に作成されることが可能である。
【0058】
バラクタ1004は、可変インダクタ1002と並列に結合する(すなわちバラクタ1004の2個の終端部は可変インダクタ1002に対する2個の相互接続(部)1016aおよび1016bに結合する)。VCO回路1006もまた相互接続部1016aおよび1016bにおいて可変インダクタ1002およびバラクタ1004に結合する。VCO回路1006は、たとえば増幅器、コンデンサ、遅延回路、バッファ、分割回路(divider circuit)等を含むかも知れない。
【0059】
図11は、VCO1000に対する等価回路1100の図式線図を示す。等価回路1100は、図10における可変インダクタ1002、可変コンデンサ1004、およびVCO回路1006それぞれに対応する、可変インダクタ1102、可変コンデンサ1104、およびVCO回路1106を含む。
【0060】
図10および11に示されたように、可変インダクタ1002、および可変コンデンサ1004はVCO1000に対する共振器タンクを形成する。共振器タンクのインダクタに対する公称インダクタンスおよびコンデンサに対する公称容量は典型的には共振器タンクの中心周波数に基づいて選択される。この中心周波数は順に共振器タンクが使用されるアナログ回路ブロックの周波数によって異なる。
【0061】
VCO1000は、可変インダクタ1002の2個の状態とともに2個の定義された周波数(たとえば3.8GHzおよび4.2GHz)の一つにおいて動作するように設計することが可能である。1次コンダクタ1012は、スイッチ1024が開かれそして可変インダクタ1002がより高いインダクタンス(たとえば約1.5nH)を有している場合は、VCO1000が2個の定義された周波数の低い方の値(たとえば3.8GHz)において動作するように設計されることが可能である。2次コンダクタ1022は、スイッチ1024が閉じられそして可変インダクタ1002がより低いインダクタンス(たとえば約1.24nH)を有している場合は2個の定義された周波数の高い方の値(たとえば4.2GHz)において動作するように設計されることが可能である。
【0062】
可変インダクタ1002は、VCO1000に対する2個の定義された周波数間を選択するために使用されることが可能である。バラクタ1004は、VCO1000の周波数を選択された周波数の近くに同調するために使用されることが可能である。たとえば、VCO1000は、VCOの周波数が選択された周波数に関係する参照(reference)周波数に同期されるように、バラクタ1004の容量を調整することが可能な位相同期ループの部分であることが可能である。VCO1000に対する必要とされる同調範囲は、たとえば、VCO1000に対する回路コンポーネントの許容差、参照信号に対する周波数範囲(その他)等の種々の要素によって異なる。
【0063】
VCO1000が可変インダクタ1002の2個の状態とともに(に伴って)2個の定義された周波数をカバーするように設計することによって、VCO1000は2個の周波数において動作する2個のVCOと等価であり、そして置き換えることが可能である。2個の定義された周波数は無線通信システムにおける2個の周波数帯に対するもの、2個の無線システムによって使用された2個の周波数その他であることが可能である。たとえば、VCO1000は、3.8および4.2GHzをカバーするように設計されることが可能であり、そしてそれらは、パーソナル通信システム(PCS)帯、および国際移動体電気通信−2000(IMT−2000)帯それぞれに対する周波数の2倍である。VCO1000は、複数のループを持った可変インダクタを実現することによって2個以上の周波数で動作するよう設計されることが可能である。
【0064】
可変インダクタの他の変形もまた実現されるかも知れず、そしてこれは本発明の範囲内にある。たとえば、コンデンサは、ループ内のスイッチと直列に結合され、そして可変インダクタのインピーダンスを変化させるために使用されることが可能である。
【0065】
図12Aから12Cは、直列コンデンサを有し単一のループを備えた可変インダクタ1200の等価回路模型の図式線図である。図12Aは、(1)抵抗器1214と直列に結合されたインダクタ1212から構成された1次、そして(2)抵抗器1226と直列に結合されたインダクタ1222から構成された2次を有する変圧器1202を備えた可変インダクタ1200の模型を示す。抵抗器1214および1216は、それぞれ1次および2次コンダクタの内部抵抗である。スイッチ1224およびコンデンサ1228は変圧器1202の2次を結合する。
【0066】
図12Bは変圧器1202を備えた可変インダクタを、3個のインダクタ1232、1236、および1238、そして理想変圧器を含む、そしてそれらのすべては図12Bに示されるように結合される、Tネットワーク1230への置換を示す。抵抗器1214は、変圧器1240の1次側における信号経路内にある。スイッチ1224、抵抗器1226、およびコンデンサ1228は変圧器1240の2次側に直列に結合する。
【0067】
図12Cは、Tネットワーク1230の等価回路1250への単純化を示す。理想変圧器1240は、等価回路1250内で取り除かれる。スイッチ1224、抵抗器1226、およびコンデンサ1228は、図12Cに示されるように、変圧器1240の1次側上の回路エレメントに直接に結合される。コンデンサ1228およびインダクタ1238は直列に結合するために、コンデンサ1228のリアクタンスはインダクタ1238のリアクタンスを相殺する。もしもコンデンサ1228のリアクタンスが十分に大きい場合は、そこで、インダクタ1238のリアクタンスは相殺されることが可能である。コンデンサ1228およびインダクタ1238の直列な組み合わせは、インダクタ1236と並列であるために、もしもコンデンサ1228のリアクタンスがインダクタンス1238のリアクタンスよりも大きい場合は、並列共振回路が形成される。可変インダクタ1200のインダクタンスは並列共振回路によって増加されるかも知れない。
【0068】
可変インダクタは、種々の回路応用において使用されるかも知れず、そして種々の利点を与えることが可能である。第1に、可変インダクタのインダクタンスは、直接に回路上への大量の寄生回路を結合することなしに変化されることが可能である。回路内あるいは外のインダクタを直列に結合されたスイッチを用いて切り替える従来の方法は、インダクタの品質係数を著しく劣化させることが可能な大量の寄生回路を持ち込むことが可能である。第2に、可変インダクタは、典型的に小さい空間の量で実現することが可能である。典型的には、回路コンポーネントは、インダクタの特性に影響することを避けるために、インダクタから僅かの距離離れて保持される。2次コンダクタはインダクタ周辺の何も置けない領域(keep-out area)に好都合に配置されることが可能である。もしもバラクタを用いて普通に行われるようにリアクティブな同調(reactive tuning)が達成されれば、そこでこのバラクタを作成するために、いくらかの余分の空間が割り当てられるために必要であろう。インダクティブ同調(inductive-tuning)を用いてこの余分の空間は一般的に割り当てられることを必要としない。第3に、より狭い許容差は、典型的にバラクタより可変インダクタに対して達成されることが可能である。これは、可変インダクタに対する温度およびICプロセス変動に関するインダクタンスの変動は、バラクタあるいはコンデンサに対する容量の変化よりも典型的にずっと小さいことによる。たとえば、温度およびプロセス変動に関するインダクタンスの変動は5%以下であることが可能であり、一方容量変動は30%以上であるかも知れない。
【0069】
可変インダクタはまた、インダクティブ同調を必要とする回路応用に対して有利に使用されることが可能である。たとえば、インピーダンス整合ネットワークは、適切なインピーダンス整合を達成するためにインダクティブ同調を必要とするかも知れず、そしてそれはコンデンサ同調(capacitance tuning)のみでは達成されることが不可能である。可変インダクタはまた、回路に対して必要とされる容量的同調(capacitive tuning)の量を減らすために使用されることが可能である。誘導的および容量的同調の組み合わせは、必要とされるリアクティブ同調を達成するために使用される。このことは、より小さいバラクタが作成されることを可能とし、そしてそれは、より小さい領域を占有し、そしてより大きいバラクタに勝る改善された特性を有する。
【0070】
図13は、集積回路上に可変インダクタを作成するためのプロセス1300を示す。インダクタに対する1次コンダクタは、集積回路の基板上に(たとえば低損失金属層上に)形成される(ステップ1310)。2次コンダクタは、1次コンダクタに近接してループ内に形成される(ステップ1312)。スイッチは2次コンダクタと直列に形成され、そしてインダクタのインダクタンスを変化させるためにループを開きあるいは閉じるために動作可能である(ステップ1314)。能動的実現に対しては、電流源が2次コンダクタおよびスイッチと直列に形成されることが可能である。他の回路コンポーネントもまた回路応用によって形成されることが可能である。たとえば、コンデンサが共振器タンクを形成するために1次コンダクタと並列に作成されることが可能である。
【0071】
集積回路内に可変インダクタを作成するためにこの中に記述された技術はまた、基板レベルに可変インダクタを形成するために使用されることが可能である。回路エレメント(たとえばインダクタ、伝送線、あるいはいくつかの他の回路エレメント)がプリント回路基板上に1次コンダクタとともに形成されるかも知れない。2次コンダクタもまた、回路基板上に、たとえば上に記述されたような方法で形成されるかも知れない。1次および2次コンダクタは回路基板上に線を用いて(with trace)形成されるかも知れない。2次コンダクタに対してスイッチはループを開きあるいは閉じる。そしてそれはそこで、1次コンダクタによって形成された回路エレメントの電気的特性(たとえばインダクタンス)を変化する。
【0072】
ここに記述された可変インダクタは、RFIC、特定用途向け集積回路(ASIC)、ディジタル信号処理装置(DSP)等の種々の形式のICに対して使用されることが可能である。可変インダクタはまた、相補型MOS(CMOS)、NMOS、BJT、バイポーラCMOS(BiCMOS)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、砒化ガリウム(GaAs)ほか等の種々のICプロセス技術を使用して作成されることが可能である。可変インダクタを有するICは、通信、ネットワーキング、計算機ほか等の種々のシステムおよび応用に対して使用されることが可能である。たとえば、これらのICは、符号分割多元接続(CDMA)システム、広帯域−CDMA(W−CDMA)システム、時分割多元接続(TDMA)システム、移動通信のためのグローバルシステム(GSM)システム、高度移動電話システム(AMPS:Advanced Mobile Phone System)システム、全地球測位システム(GPS)、多入力多出力(MIMO)システム、直交周波数分割多元接続(OFDMA)システム、無線ローカルエリアネットワーク等などの無線通信システム内で使用されることが可能である。
【0073】
開示された実施例に関する以上の記述は、当業界において熟練したいかなる人々も本発明を作成しあるいは使用することを可能とするために与えられる。これらの実施例に対する種々の変形が当業界において熟練した人々に対しては容易に明白であろうし、そしてこの中に定義された一般的な原理は、本発明の精神あるいは範囲から逸脱することなしに他の実施例に適用されることが可能である。したがって本発明はこの中に示された実施例に限定されることを意図したものではなく、しかしこの中に開示された原理および新規な特徴と矛盾のない最も広い範囲に一致されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、無線通信に対して使用される無線端末を示す。
【図2A】図2Aおよび2Bは、受動的構成の可変インダクタを示す。
【図2B】図2Aおよび2Bは、受動的構成の可変インダクタを示す。
【図3A】図3Aから3Cは、能動的構成の可変インダクタを示す。
【図3B】図3Aから3Cは、能動的構成の可変インダクタを示す。
【図3C】図3Aから3Cは、能動的構成の可変インダクタを示す。
【図4A】図4Aから4Dは、可変インダクタに対する2次コンダクタの4種の異なった配置を示す。
【図4B】図4Aから4Dは、可変インダクタに対する2次コンダクタの4種の異なった配置を示す。
【図4C】図4Aから4Dは、可変インダクタに対する2次コンダクタの4種の異なった配置を示す。
【図4D】図4Aから4Dは、可変インダクタに対する2次コンダクタの4種の異なった配置を示す。
【図5】図5は、2個のループを有する可変インダクタを示す。
【図6A】図6Aから6Cは、可変インダクタに対する等価回路を示す。
【図6B】図6Aから6Cは、可変インダクタに対する等価回路を示す。
【図6C】図6Aから6Cは、可変インダクタに対する等価回路を示す。
【図7】図7は、N−MOSトランジスタを使用してのスイッチの実現を示す。
【図8】図8は、変圧器を使用する可変インダクタの模型を示す。
【図9A】図9Aから9Cは、典型的な可変インダクタに対する直列インダクタンス、直列抵抗、および品質係数それぞれを示す。
【図9B】図9Aから9Cは、典型的な可変インダクタに対する直列インダクタンス、直列抵抗、および品質係数それぞれを示す。
【図9C】図9Aから9Cは、典型的な可変インダクタに対する直列インダクタンス、直列抵抗、および品質係数それぞれを示す。
【図10】図10は、可変インダクタを使用するVCOを示す。
【図11】図11は、図10のVCOに対する等価回路を示す。
【図12A】図12Aから12Cは、ループ内に直列コンデンサを有する可変インダクタ1200に対する等価回路を示す。
【図12B】図12Aから12Cは、ループ内に直列コンデンサを有する可変インダクタ1200に対する等価回路を示す。
【図12C】図12Aから12Cは、ループ内に直列コンデンサを有する可変インダクタ1200に対する等価回路を示す。そして
【図13】図13は、可変インダクタを作成するためのプロセスを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路(IC)であって、
インダクタのための1次コンダクタと、
1次コンダクタに近接してループを形成する2次コンダクタと、そして
2次コンダクタと直列に結合され、そしてループを開きあるいは閉じることが可能なスイッチとを含み、インダクタのインダクタンスはスイッチを使用してループを開きあるいは閉じることによって変化される、
集積回路。
【請求項2】
1次コンダクタは渦巻パターンに形成される請求項1記載の集積回路。
【請求項3】
さらに、2次コンダクタおよびスイッチと直列に結合された電流源とを含む請求項1記載の集積回路。
【請求項4】
電流源はインダクタのインダクタンスを減少するために2次コンダクタ内の直流が第1の方向に流れることが可能な請求項3記載の集積回路。
【請求項5】
電流源はインダクタのインダクタンスを増加するために2次コンダクタ内の直流が第2の方向に流れることが可能な請求項3記載の集積回路。
【請求項6】
2次コンダクタは1次コンダクタの外側に配置される請求項1記載の集積回路。
【請求項7】
2次コンダクタは1次コンダクタの内側に配置される請求項1記載の集積回路。
【請求項8】
2次コンダクタは1次コンダクタの上の層に配置される請求項1記載の集積回路。
【請求項9】
2次コンダクタは1次コンダクタの下の層に配置される請求項1記載の集積回路。
【請求項10】
さらに、1次コンダクタに近接して第2のループを形成する3次のコンダクタと、そして
3次のコンダクタと直列に結合されそして第2のループを開きあるいは閉じることが可能な第2のスイッチとを含む、
請求項1記載の集積回路。
【請求項11】
さらに、2次コンダクタおよびスイッチと直列に結合されたコンデンサを含む請求項1記載の集積回路。
【請求項12】
さらに、2次コンダクタおよびスイッチと直列に結合されたリアクティブ回路エレメントを含む請求項1記載の集積回路。
【請求項13】
1次コンダクタは低損失金属を使用して作成された請求項1記載の集積回路。
【請求項14】
2次コンダクタは低損失金属を使用して作成された請求項1記載の集積回路。
【請求項15】
スイッチは金属酸化物半導体(MOS)トランジスタを使用して実現された請求項1記載の集積回路。
【請求項16】
2次コンダクタは1次コンダクタからあらかじめ設定された距離だけ離れて置かれ、なお、あらかじめ設定された距離は、ループが開かれそして閉じられる場合のインダクタンスの個々の変化の量に基づいて選択される、
請求項1記載の集積回路。
【請求項17】
さらに、1次コンダクタの2個の端部に結合されたコンデンサを含み、ここでコンデンサおよびインダクタは共振器タンクを形成している請求項1記載の集積回路。
【請求項18】
インダクタは電圧制御発振器(VCO)の部分である請求項1記載の集積回路。
【請求項19】
インダクタは濾波器の部分である請求項1記載の集積回路。
【請求項20】
インダクタはインピーダンス整合ネットワークの部分である請求項1記載の集積回路。
【請求項21】
デバイスであって、
インダクタのための1次コンダクタと、
1次コンダクタに近接してループを形成する2次コンダクタと、そして
2次コンダクタに直列に結合され、そしてループを開きあるいは閉じることが可能なスイッチとを含み、ここでインダクタのインダクタンスはスイッチを用いて閉じそして開くことによって変化されている、
デバイス。
【請求項22】
さらに、1次コンダクタの2個の端部に結合されたコンデンサを含み、ここでコンデンサおよびインダクタは共振器タンクを形成している
請求項21記載のデバイス。
【請求項23】
集積回路(IC)であって、
インダクタのための1次コンダクタと、
1次コンダクタに近接してループを形成する2次コンダクタと、
2次コンダクタに直列に結合されそしてループを開きあるいは閉じることが可能なスイッチと、ここでインダクタのインダクタンスはスイッチを用いてループを閉じそして開くことによって変えられ、そして
1次コンダクタの2個の端部に結合されたコンデンサとを含み、
ここでコンデンサおよびインダクタは電圧制御発信器(VCO)に対する共振器タンクを形成しており、そしてここでVCOは閉じられているおよび開かれているループに対応する2個の周波数で動作可能である、
集積回路。
【請求項24】
コンデンサは可変コンデンサである請求項23記載の集積回路。
【請求項25】
集積回路(IC)を作成するための方法であって、
インダクタのための1次コンダクタを形成し、
1次コンダクタに近接してループ内に2次コンダクタを形成し、そして
2次コンダクタと直列にスイッチを形成することを含み、
ここでスイッチはインダクタのインダクタンスを変化するためにループを開きあるいは閉じることが可能である、
方法。
【請求項26】
さらに、電流源を2次コンダクタおよびスイッチと直列に形成することを含む請求項25記載の方法。
【請求項27】
さらに、2次コンダクタおよびスイッチと直列にコンデンサを形成することを含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
さらに、1次コンダクタに近接して第2のループの中に3次のコンダクタを形成し、そして
3次のコンダクタと直列な、そして第2のループを開きあるいは閉じることが可能な第2のスイッチを形成することを含む、
請求項25記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図12C】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2007−507106(P2007−507106A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528040(P2006−528040)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/029530
【国際公開番号】WO2005/034239
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】