説明

集電装置付きハイブリッド自動車及びその運行システム

【課題】集電装置付きハイブリッド自動車及びその運行システムに関し、車両全体の製造コストを抑制することができ、広く普及させることができるようにする。
【解決手段】駆動輪26を回転駆動する走行用エンジン20と、エンジン20の回転駆動力を駆動輪26に伝達する第1の駆動力伝達系と、からなる第1駆動系統と、架線2から電力を受ける集電装置30と、集電装置30によって受けた電力によって回転し駆動輪を回転駆動する走行用モータ32と、モータ32の回転駆動力を駆動輪36に伝達する第1の駆動力伝達系とは別の第2の駆動力伝達系と、からなる第2駆動系統と、第1駆動系統と第2駆動系統とを統合制御する統合制御手段40とを備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架線から電力を受ける集電装置を備えたハイブリッド自動車及びその運行システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への着目から、燃料消費量の抑制やCOをはじめとした排出ガスの抑制の上で有効である、いわゆる電気自動車やハイブリッド自動車の開発及び実用化が進められている。ただし、エンジン(内燃機関或いは原動機)を搭載せずにモータ(電動機)のみによって走行する電気自動車の場合、電気エネルギは車両に搭載するバッテリのみに頼ることになり、車両に搭載可能なバッテリ容量には限度があるため、車両の航続距離が制限されてしまう。そこで、現状では、車両の航続距離を確保できるエンジンとモータとを併用するハイブリッド自動車を主体に実用化が進められている。
【0003】
一方、電気エネルギを利用する鉄道車両(電車)は、架線から電力を受けて走行するため、航続距離は制限されないが、軌道を敷設する必要があり、また、これを管理しなくてはならないため、建設費用やメンテナンス費用が大きく、特定区間の大量輸送には向くが、任意区間をきめ細かく輸送するには向いていない。また、軌道上に障害物があれば、障害物の除去等の復帰作業中、長時間車両を停止しなくてはならない。
【0004】
これに対して、かつて、ある程度普及していた「トロリーバス」に代表される、架線から電力を受けて走行する自動車(以下、集電式電気自動車という)の場合、電車と違い軌道が必要ないため、建設費用やメンテナンス費用を抑制することができ、ある程度の障害物も避けることができる。しかし、架線が必要なため架線のない道路は走行することができず、一般の自動車のような自由度はないため、現状、我が国では普及していない。
【0005】
このような集電式電気自動車に関し、架線のない道路でも走行できるようにする技術として、特許文献1には、架線から電力を受けて作動する走行用モータ(駆動モータ)に加えて、駆動モータを駆動させる電力を発生させるため、又は、機械的動力を直接車両の駆動装置に供給するために、内燃機関を搭載した車両、つまり、集電式電気自動車にいわゆるハイブリッド技術を適用した車両が提案されている。この場合、内燃機関の出力は車両の駆動装置を構成するトランスミッションに入力される構成になっている。
【0006】
また、特許文献2には、鉄道車両及び自動車の双方に関し、架線から電力を受けて作動する走行用モータ(駆動モータ)に加えて、駆動モータを駆動させる電力を発生させるための走行用内燃機関(エンジン)を搭載した車両、つまり、集電式電気自動車にいわゆるシリーズ式ハイブリッド車の技術を適用した車両が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平6−510418号公報
【特許文献2】特開2004−312953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、集電式電気自動車に内燃機関を搭載し、いわゆるハイブリッド車として構成すれば、架線のない道路でも、バッテリ容量により航続距離を制限されることなく走行できる。しかも、軌道が不用な自動車として構成すれば、道路上部又は道路内に架線を設備するだけで、内燃機関から排出ガスを発生させることなくモータを用いた走行を行うことができるようになる。
【0009】
一方、集電式電気自動車には、トロリーポールやパンタグラフなどを備えた集電装置が必要であり大きなコスト増となる点や、この集電装置を保守管理する必要がある点や、架線を設備した道路を走行する頻度を稼げないとメリットがない点等を考慮すると、一般ドライバの運転する一般的な乗用車への適用には向いていない。
しかし、トラックやバスといった大型の商用車の場合には、架線を設備し易い高速道路などの幹線道路を長距離走行する場合が多く、集電装置を設置するためのコスト負担も、その利用頻度を高めることによって実質的に軽減することができる。また、旅客事業者や運送事業者が車両を保有するので、外部に露出する集電装置に対しても適正に保守管理することが可能である。したがって、集電装置付きハイブリッド自動車を普及させると言う点では、大型の商用車への適用が好適である。
【0010】
ただし、このような集電装置付きハイブリッド自動車を普及させるには、集電装置を追加するだけでなく、一般には車両自体を専用車両とせずに既存車両を利用する場合にも大幅な改造を要するのが一般的であり、製造コストがかかる。また、こうした集電装置付きハイブリッド車がある程度普及しないと量産効果による車両コストの抑制は図り難い。したがって、こうした集電装置付きハイブリッド自動車を普及させるには、車両全体の製造コストを如何に抑えるかが課題となる。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するために創案されたもので、車両全体の製造コストを抑制することができ、広く普及させることができるようにした、集電装置付きハイブリッド自動車及びその運行システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために、本発明の集電装置付きハイブリッド自動車は、駆動輪を回転駆動する走行用内燃機関と、該走行用内燃機関の回転駆動力を前記駆動輪に伝達する第1の駆動力伝達系と、からなる第1駆動系統と、架線から電力を受ける集電装置と、該集電装置によって受けた電力によって回転し前記駆動輪を回転駆動する走行用モータと、該走行用モータの回転駆動力を前記駆動輪に伝達する前記第1の駆動力伝達系とは別の第2の駆動力伝達系と、からなる第2駆動系統と、前記第1駆動系統と前記第2駆動系統とを統合制御する統合制御手段とを備えていることを特徴としている(請求項1)。
【0013】
前記駆動輪として、前記第1駆動系統によって駆動される第1の駆動輪と、前記第2駆動系統によって駆動される第2の駆動輪とは、別個の駆動輪であることが好ましい(請求項2)。
前記駆動輪として、前記第1駆動系統によって駆動される第1の駆動輪と、前記第2駆動系統によって駆動される第2の駆動輪とは、共通の駆動輪であって、前記第1の駆動力伝達系は前記共通駆動輪の終減速機の第1入力軸に接続され、前記第2の駆動力伝達系は前記共通駆動輪の終減速機の第2入力軸に接続されていてもよい(請求項3)。
【0014】
また、前記走行用内燃機関を制御する内燃機関制御手段と、前記集電装置を制御する集電制御手段と、前記走行用モータを制御するモータ制御手段と、を備え、前記統合制御手段は、前記内燃機関制御手段と前記集電制御手段と前記モータ制御手段とを統合制御することが好ましい(請求項4)。
この場合、車両の走行モードとして、少なくとも、前記走行用モータの回転駆動力のみにより前記車両を走行駆動するモータ走行モードと、前記走行用内燃機関の回転駆動力のみにより前記車両を走行駆動する内燃機関走行モードと、が備えられ、前記走行モードの何れかを選択する走行モード選択手段を備え、前記統合制御手段は、走行中に、前記走行モード選択手段により前記走行用内燃機関を使用する走行モードから前記モータ走行モードへと切り替えられると、前記走行用モータの作動回転数が予め設定された所定回転数以上になったことを条件に、作動していた前記走行用内燃機関を停止することが好ましい(請求項5)。
【0015】
また、前記車両の走行している道路の前方に前記架線が設備されているか否かを判定する架線判定手段を更に備え、前記統合制御手段は、前記走行用モータを使用する走行モードでの走行中に前記架線判定手段により前記道路の前方に前記架線が設備されていないと判定されたら、前記架線が設備されていない領域に進入する前に前記走行モード選択手段による走行モードの選択にかかわらず前記内燃機関走行モードへと自動で切り替えることが好ましい(請求項6)。
【0016】
この場合、前記集電装置は、前記架線から電力を受ける使用位置と、電力を受けない格納位置との間で可動に構成されると共に、前記集電装置が前記架線から電力を受けうる位置にあるか否かを判定する車両位置判定手段を更に備え、前記集電制御手段は、前記走行モード選択手段により前記走行用モータを使用する走行モードが選択されている際には、前記車両位置判定手段により前記集電装置が前記架線から電力を受けうる位置にあると判定されたら前記集電装置を前記使用位置に設定して集電を実施し、前記走行モード選択手段により前記内燃機関走行モードが選択されている際には、前記集電装置を前記格納位置に設定して集電を実施しないことが好ましい(請求項7)。
【0017】
また、前記架線から電力を受けない場合にも一時的に前記走行用モータに電力を供給して前記走行用モータを作動可能にする貯電装置(バッテリ)と、車両の制動エネルギを回収して電気エネルギとして前記貯電手段に貯留すると共に、前記架線から受けた電力のうち走行に使用しない余剰電気エネルギについても回収して前記貯電手段に貯留する電気エネルギ回収装置とを備えていることが好ましい(請求項8)。
【0018】
本発明の集電装置付きハイブリッド自動車の運行システムは、請求項1〜8の何れか1項に記載の集電装置付きハイブリッド自動車を運行するシステムであって、前記架線を装備した走行レーンを有する架線付き道路と、前記架線付き道路に接続する前記架線を装備しない架線なし接続道路と、前記架線付き道路及び前記架線なし接続道路の双方の道路側と、前記の何れかの道路を走行している前記集電装置付きハイブリッド自動車及びその他の前記架線を使用可能な自動車との間で通信を行う路車間通信手段と、前記路車間通信手段によって前記各自動車からの前記架線の使用要求情報を得て、これに基づいて前記架線への給電状態を制御する給電手段と、を備えていることを特徴としている(請求項9)。
【発明の効果】
【0019】
本発明の集電装置付きハイブリッド自動車(請求項1)によれば、走行用内燃機関の回転駆動力を駆動輪に伝達する第1の駆動力伝達系と、走行用モータの回転駆動力を駆動輪に伝達する第2の駆動力伝達系とが、別個に設けられているので、走行用内燃機関の回転駆動力のみによって駆動輪を回転駆動する一般的な自動車に対して、集電装置と走行用モータと第2の駆動力伝達系とからなる第2駆動系統を追加するだけで、一般的な自動車の第1駆動系統に対する変更をほとんど行うことなく、集電装置付きハイブリッド自動車を構成することができ、一般的な自動車の構造の多くを利用しながら低コストで製造することができる。
【0020】
また、駆動輪として、第1駆動系統によって駆動される第1の駆動輪と、第2駆動系統によって駆動される第2の駆動輪とを、別個の駆動輪として構成すれば、走行用内燃機関の回転駆動力のみによって第1の駆動輪を回転駆動する第1駆動系統を有する一般的な既存の自動車に対して、第2の駆動輪に対して第2駆動系統を追加装備するだけで、既存の自動車の第1駆動系統に対する変更を何ら行うことなく、集電装置付きハイブリッド自動車を構成することができ、一般的な自動車の構造の多くを利用しながら低コストで製造することができる(請求項2)。
【0021】
第1駆動系統によって駆動される第1の駆動輪と第2駆動系統によって駆動される第2の駆動輪とを共通の駆動輪とした場合も、第1の駆動力伝達系を共通駆動輪の終減速機の第1入力軸に接続し、第2の駆動力伝達系を共通駆動輪の終減速機の第2入力軸に接続すれば、既存の自動車の第1駆動系統に対する変更を殆ど行うことなく、集電装置付きハイブリッド自動車を構成することができ、一般的な自動車の構造の多くを利用しながら低コストで製造することができる(請求項3)。
【0022】
また、内燃機関制御手段によって走行用内燃機関を制御し、集電制御手段によって集電装置を制御し、モータ制御手段によって走行用モータを制御し、統合制御手段によって、内燃機関制御手段と集電制御手段とモータ制御手段とを統合制御するように構成すれば、走行用内燃機関及び走行用モータを必要に応じて適切に且つ円滑に使い分けることができるうえ、内燃機関制御手段には既存のコンピュータユニット或いは既存のコンピュータソフトウェアを流用することも可能になる(請求項4)。
【0023】
さらに、走行モード選択手段により、車両の走行モードとして、走行用モータのみによるモータ走行モードと、走行用内燃機関のみによる内燃機関走行モードと、のいずれかを選択できるようにし、走行中に、走行用内燃機関を使用する走行モードからモータ走行モードへと切り替えられると、統合制御手段は、走行用モータの作動回転数が予め設定された所定回転数以上になったことを条件に、作動していた走行用内燃機関を停止するように構成すれば、走行用内燃機関を停止する場合には、走行用モータの回転駆動力が確保され、車両への走行駆動力が途切れてしまうという不具合も招かない(請求項5)。
【0024】
また、走行用モータを使用する走行モードでの走行中に前方の道路が前記架線を設備されていないと判定されたら、統合制御手段が、架線を設備されていない領域に進入する前に走行モード選択手段による走行モードの選択にかかわらず内燃機関走行モードへと自動で切り替えることにより、走行用モータへの電力を確保できない場合には、走行用内燃機関の回転駆動力が確保され、車両への走行駆動力が途切れてしまうという不具合も招かない(請求項6)。
【0025】
また、集電装置を可動に構成し、走行モード選択時に、車両位置判定手段により集電装置が架線から電力を受けうる位置にあると判定されたら集電装置を使用位置に設定して集電を実施し、走行モード選択手段により内燃機関走行モードが選択されている際には、集電装置を前記格納位置に設定して集電を実施しないように、集電制御手段による制御を構成すれば、集電装置の必要時の作動と不要時の格納とを自動で適切に行うことができる(請求項7)。
【0026】
さらに、電気エネルギ回収装置によって、車両の制動エネルギを回収して電気エネルギとして貯電手段に貯留すると共に、架線から受けた電力のうち走行に使用しない余剰電気エネルギについても回収して貯電手段に貯留することにより、エネルギをより有効に利用することができる(請求項8)。
また、本発明の集電装置付きハイブリッド自動車の運行システム(請求項9)によれば、架線付き道路及び架線なし接続道路の双方の道路側と、これらの道路を走行している架線を使用可能な自動車との間での路車間通信手段によって、給電制御手段が、各自動車からの架線の使用要求情報を得て、これに基づいて架線への給電状態を制御するので、架線への給電を適切に行うことができ、架線を使用可能な自動車が架線からの電力を確実に得ながら走行することができる。集電装置付きハイブリッド自動車にあっては、架線付き道路では集電装置を作動させて架線からの電力を確実に利用しながらモータ走行し、内燃機関走行による排出ガスの発生や騒音等を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる集電装置付きハイブリッド自動車を示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる集電装置付きハイブリッド自動車の駆動系を示す構成図である。
【図3】本発明の第1,2実施形態にかかる集電装置付きハイブリッド自動車の運行システムを説明する模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる集電装置付きハイブリッド自動車の駆動系の制御を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる集電装置付きハイブリッド自動車の駆動系を示し、図5(a)はその全体構成図、図5(b)はその終減速機の構成を示すスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
〔第1実施形態〕
まず、図1〜図4を用いて本発明の第1実施形態を説明する。
図1は本実施形態にかかる集電装置付きハイブリッド自動車を示す側面図であり、図2はその駆動系を示す構成図である。
【0029】
図1,図2に示すように、本実施形態では、集電装置付きハイブリッド自動車を大型トラック(以下、単に「車両」とも言う)10に適用している。この大型トラック10は、後2軸に構成され、後2軸25,35のそれぞれの車輪26,36が駆動輪になっている。なお、後2軸及び後輪に関し、左右を区別する場合には、符号25,35,26,36に右側なら「R」を左側なら「L」を付す。
【0030】
車両10には、車室11の下方に、エンジン(走行用内燃機関)20及び前輪14が装備されている。車室11の後方に、荷室12が備えられ、荷室12の下方には、前側に後第1軸25及び後第1駆動輪26が、後側に後第2軸35及びに後第2駆動輪36が備えられている。後第1軸25は、エンジン20とクラッチ21,変速機22,プロペラシャフト23及び第1終減速機24を介して接続され、エンジン20からの駆動力が後第1軸25に装備された後第1駆動輪26に伝達されるようになっている。
【0031】
クラッチ21,変速機22,プロペラシャフト23及び第1終減速機24からエンジン20の回転駆動力を駆動輪26に伝達する第1の駆動力伝達系が構成され、この第1の駆動力伝達系にエンジン20を含めて第1駆動系統が構成される。
荷室12の下方の後第2軸35の後方には、電動モータ(走行用モータ、以下、単にモータとも言う)32が備えられ、後第2軸35はこのモータ32とプロペラシャフト33及び第2終減速機34を介して接続され、モータ32からの駆動力が後第2軸35に装備された後第2駆動輪36に伝達されるようになっている。
【0032】
プロペラシャフト33及び第2終減速機34からモータ32の回転駆動力を駆動輪36に伝達する第2の駆動力伝達系が構成され、この第2の駆動力伝達系に集電装置30及びモータ32を含めて第2駆動系統が構成される。
このモータ32に電力を供給するために、車両10の上部には、集電装置30の集電部としてパンタグラフ(又は、トロリーポール)31が備えられており、道路上方に配備された架線2からパンタグラフ31を通じて電力を受けてモータ32に供給するように構成される。架線2は、対を成す2本の架線2a,2bからなり、パンタグラフ31も対を成す2本のパンタグラフ31a,31bからなり、各パンタグラフ31a,31bが各架線2a,2bに接続される。
【0033】
ここでは、架線2に直流電流が供給されるものとしており、2本の架線2a,2bのうち一方が直流電流を供給される電力供給線となっていて、他方が帰電線となっている。なお、架線やパンタグラフの各2本を区別しない場合には符号2,31を用いる。なお、2本の架線2a,2bに、交流電流を供給するようにしてもよい。
集電装置30は、パンタグラフ31とこのパンタグラフ31を昇降駆動するアクチュエータ30Aとを備え、パンタグラフ31は、アクチュエータ30Aにより、図1に実線で示すように、架線2から電力を受ける使用位置と、図1に二点鎖線で示すように、電力を受けない格納位置との間で駆動されるよう構成されている。
【0034】
そして、エンジン20,クラッチ21及び変速機22を制御する内燃機関制御手段としてのENG−ECU(エンジン制御用電子制御ユニット)41と、モータ32を制御するモータ制御手段としてのM−ECU(モータ制御用電子制御ユニット)42と、集電装置30を制御する集電制御手段としてのR−ECU(集電制御用電子制御ユニット)43とが、備えられている。さらに、ENG−ECU41と、M−ECU42と、R−ECU43とを統合制御する統合制御手段としてのECU(電子制御ユニット)40とが、備えられている。
【0035】
エンジン20はディーゼルエンジンであって、ENG−ECU41によって出力要求に応じて燃料噴射量が電子制御される。クラッチ21は図示しないクラッチアクチュエータによって断接されるように構成され、変速機22は図示しないギアシフトアクチュエータによって使用する変速ギヤを選択する機械式自動変速機として構成され、変速要求に応じて、ENG−ECU41によって各アクチュエータが電子制御され、クラッチ21の断接及び変速ギヤの切り替えが行われる。
【0036】
モータ32は、ここでは交流三相モータが用いられ、M−ECU42によって出力要求に応じて回転状態を電子制御される。なお、モータ32は通常の力行作動の他に回生作動できるようになっており、M−ECU42には、車両の制動時に回生エネルギを電気エネルギとしてバッテリ(貯電手段)47に蓄えるようにモータ32を回生制御する機能(回生制御手段)46が備えられている。なお、バッテリ47に蓄えられた電力は、集電装置30による集電状況下でこの集電に支障が生じた場合等に緊急的にモータ32の作動に使用されるものとする。
【0037】
また、集電装置30は、充電制御回路44,インバータ45を介してモータ32に電力を供給できるようになっており、ここでは、モータ32に交流三相モータを用いているので、集電装置30によって集電した直流電流をインバータ45によって交流電流に変換してモータ32に供給する。充電制御回路44は、集電装置30によって集電した電力のうちモータ32に使用されない余剰電力をバッテリ47に蓄えるように制御する。なお、バッテリ47に蓄えられた電力もインバータ45によって交流電流に変換してモータ32に供給できるようになっている。
【0038】
なお、充電制御回路44とM−ECU42の回生制御手段46及びモータ32とから電気エネルギ回収装置が構成される。
統合制御手段としてのECU40は、送受信装置48を通じて受信した道路側からの情報やGPS情報等や、図示しないアクセルペダルやブレーキペダルからの出力要求(制動要求も含む)や、走行モードを選択する選択スイッチ(走行モード選択手段)50からの選択情報に基づいて、車両の走行モードを設定し、ENG−ECU41と、M−ECU42と、R−ECU43とを統合制御する。
【0039】
車両の走行モードとしては、モータ32の回転駆動力のみにより車両を走行駆動するモータ走行モード(トロリー運転モード又は集電運転モードとも言う)と、エンジン20の回転駆動力のみにより車両を走行駆動する内燃機関走行モードと、が備えられる。そして、選択スイッチ50は、ドライバがこれらの走行モードのいずれかを選択できると共に、ECU40により自動で走行モードを選択する自動選択モードも選択可能になっている。
【0040】
ECU40では、選択スイッチ50により自動選択モードが設定されたらECU40も走行モード選択手段として機能し、道路1に架線2が設備されて、車両10が架線2が設備された走行レーンを走行していて架線2からの集電が可能な状況下では、基本的にモータ走行モードを自動選択し、架線2からの集電が可能な状況下で特に出力が必要な場合には、併用走行モードを自動選択し、架線2からの集電が不可能な状況下では、内燃機関走行モードを自動選択する。なお、ECU40では、自動選択モードが選択されている場合、駆動力要求に応じて、モータ32の回転駆動力とエンジン20の回転駆動力とを併用して車両を走行駆動する併用走行モード(これも、トロリー運転モード又は集電運転モードに含まれる)を選択可能とする。
【0041】
架線2からの集電が可能な状況下であるか否かは、カメラ等の架線2の存在を検知するセンサ49をパンタグラフ31の近傍(ここでは、パンタグラフ31の直下)に装備してこの検知情報が得られると架線2からの集電が可能な状況下であると判定し、この検知情報が得られないと架線2からの集電が不可能な状況下であると判定することができる。ECU40には、パンタグラフ31が架線2から電力を受けうる位置にあるか否かを判定する車両位置判定手段としての機能が備えられている。
【0042】
また、ECU40には、ECU40に入力される道路側からの情報やGPS情報から、車両10の走行している前方の道路に架線2が設備されているか否かを判定する架線判定手段としての機能が備えられている。そして、ECU40は、モータ32を使用する走行モード(モータ走行モード又は併用走行モード)での走行中に架線判定手段により車両10が走行している道路の前方に架線2が設備されていないと判定されたら、この架線2が設備されていない領域に進入する前に選択スイッチ50による走行モードの選択にかかわらず内燃機関走行モードへと自動で切り替えるようになっている。
【0043】
なお、R−ECU(集電制御手段)43は、モータ32を使用する走行モードが選択されている際には、車両位置判定手段によりパンタグラフ31が架線2から電力を受けうる位置にあると判定されたらパンタグラフ31を使用位置に設定して集電を実施しモータ32の電力を供給し、その上でモータ32の回転数が予め設定された回転数に達したらエンジン20を停止するようECU40にエンジン停止信号を送り、ECU40がENG−ECU41を介してエンジン20を停止させる。逆に、モータ32の回転数が予め設定された回転数に達するまでは、エンジン20の作動を続行する。一方、モータ32を使用しない内燃機関走行モードが選択されている際には、エンジン20が停止状態であればエンジン20を始動し、パンタグラフ31を格納位置に設定して集電を実施しないようにアクチュエータ30aを制御する。
【0044】
ところで、本集電装置付きハイブリッド自動車に好適な運行システムとして、図3に示すような構成が考えられる。図3において、符号1Aは高速道路等の自動車専用道路であり、符号1Bは自動車専用道路1Aへの進入や退出をする接続路又は一般道である。自動車専用道路1Aの一部の走行レーンには、架線2を設備している。なお、符号3は架線2を支持する支柱である。このような各道路1A,1Bの路側には、走行する車両10と路車間通信を行うために、送受信装置4が適宜配置されており、送受信装置4は情報センタ5に接続されている。情報センタ5では、各送受信装置4を通じた各道路1A,1Bの車両10からの通信情報によって、架線2を設備した自動車専用道路1Aへの車両10の進入や退出情報を事前に収集し、給電制御装置(給電制御手段)6に架線の使用要求情報(電力要求情報)を送るようになっている。給電制御装置6は、この使用要求情報に基づいて各部の架線2への給電状態を制御するようになっている。
【0045】
本発明の第1実施形態にかかる集電装置付きハイブリッド自動車及びその運行システムは、上述のように構成されるので、集電装置付きハイブリッド自動車の運転は、例えば図4に示すように、モード切替を実施することができる。
まず、架線2のない道路1上を内燃機関走行モードにより走行しているものとする。
【0046】
ここで、選択スイッチ50により、モータ32を使用して走行するモード(トロリー運転モード又は集電運転モード)又は自動モードが選択されている条件下で、ECU40により、選択スイッチ50がモータ32を使用して走行するモード(トロリー運転モード又は集電運転モード)を選択可能であるか否かを判定する(ステップS1)。この判定は、車両位置判定手段により、自車両10が架線2からの集電が可能な状況下であること、及び、架線判定手段により車両10の前方(予め設定された一定範囲だけ前方)の道路が架線2を設備されていること、がいずれも判定されたら、選択可能であるとし、いずれかの判定が否であれば、選択不可能であるとする。
【0047】
トロリー運転モード(モータ走行モード)が選択可能であれば、パンタグラフ31を上昇させて使用位置にして(ステップS2)、走行用モータ32へパンタグラフ31で集電した電力を供給し(ステップS3)、走行用モータ32の回転数が予め設定された所定回転数以上になったか否かを判定し(ステップS4)、走行用モータ32の回転数が予め設定された所定回転数以上になったらモータ32による力行が可能になったものとして、エンジン20を停止して、トロリー運転(モータ走行)に移行する(ステップS5)。
【0048】
一方、このトロリー運転(モータ走行)中に、トロリー運転モード(モータ走行モード)が選択不可能となると判定されたら、停止していたエンジン20を始動し(ステップS6)、パンタグラフ31を下降させて格納位置にして(ステップS7)、走行用モータ32を停止して、エンジン運転(内燃機関走行)に移行する。
このようにして、本実施形態にかかる集電装置付きハイブリッド自動車によれば、後2軸の各駆動輪に対して、エンジン20の回転駆動力を駆動輪26に伝達する第1の駆動力伝達系と、モータ32の回転駆動力を駆動輪36に伝達する第2の駆動力伝達系とが、完全に別個に構成されているので、例えば、エンジン20の回転駆動力のみによって駆動輪26を回転駆動する一般的な自動車に対して、集電装置30と走行用モータ32等と第2の駆動力伝達系33,34とからなる第2駆動系統を追加するだけで、一般的な自動車の第1駆動系統に対する変更をほとんど行うことなく、集電装置付きハイブリッド自動車を構成することができる。
【0049】
したがって、一般的なエンジン駆動の自動車の構造の多くを利用しながら低コストで製造することができる。なお、一般的なエンジン駆動の自動車の場合、第1終減速機24と第2終減速機34との間にプロペラシャフトを設けて、エンジン20の回転駆動力を駆動輪36に伝達するように構成する場合もある。この場合の第1終減速機には、後述の第2実施形態の終減速機27が好適である。
【0050】
また、ECU40によって,ENG−ECU(内燃機関制御手段)41,M−ECU(モータ制御手段)42,R−ECU(集電制御手段)43を統合制御するので、エンジン20及び走行用モータ32を必要に応じて適切に且つ円滑に使い分けることができるうえ、ENG−ECU(内燃機関制御手段)41には既存のコンピュータユニット或いは既存のコンピュータソフトウェアを流用することも可能であり、コスト抑制効果がある。
【0051】
さらに、ECU40は、走行用モータ32の作動回転数が予め設定された所定回転数以上になったことを条件に、作動していたエンジン20を停止するので、エンジン20を停止する場合には、走行用モータ32の回転駆動力が確保され、車両10への走行駆動力が途切れてしまうという不具合も招かない。
また、走行用モータ32を使用する走行モードでの走行中に前方の道路1が架線2を設備されていないと判定されたら、架線2を設備されていない領域に進入する前に走行モードの選択にかかわらず内燃機関走行モードへと自動で切り替えることにより、走行用モータ32への電力を確保できない場合にも、エンジンの回転駆動力が確保され、この場合にも車両への走行駆動力が途切れてしまうという不具合を招かない。
【0052】
また、パンタグラフ31が架線2から電力を受けうる位置にあるか否かに応じて、パンタグラフ31を格納位置と作動位置とに自動で適切に設定することができるのでドライバの負担の軽減することができる。
さらに、電気エネルギ回収装置によって、車両の制動エネルギを回収して電気エネルギとしてバッテリ47に貯留すると共に、架線2から受けた電力のうち走行に使用しない余剰電気エネルギについても回収してバッテリ47に貯留することにより、エネルギをより有効に利用することができる。
【0053】
また、本実施形態にかかる集電装置付きハイブリッド自動車の運行システムによれば、架線付き道路1A及び架線なし接続道路1Bの双方の道路側と、これらの道路を走行している架線を使用可能な自動車との間での路車間通信によって、給電制御装置6が、各自動車からの架線の使用要求情報を得て、これに基づいて架線2への給電状態を制御するので、架線2への給電を適切に行うことができ、車両10は、架線2からの電力を確実に得ながら走行することができる。したがって、可能な限りモータ走行を実施し、エンジン走行による排出ガスの発生や騒音等を抑えることができる。
【0054】
そして、トラックやバスといった大型の商用車に対して適用すると、架線を設備し易い幹線道路を長距離走行する場合が多く、集電装置を設置するためのコスト負担も、その利用頻度を高めることによって実質的に軽減することができるうえ、旅客事業者又は運送事業者が車両を保有するので、集電装置に対しても適正に保守管理することが可能である。したがって、大型の商用車への適用がかかる集電装置付きハイブリッド自動車を普及させるには好適である。
〔第2実施形態〕
次に、図5を用いて本発明の第2実施形態を説明する。
【0055】
図5は本実施形態にかかる集電装置付きハイブリッド自動車の駆動系を示すもので、図5(a)はその構成図、図5(b)はその終減速機のスケルトン図である。
図5に示すように、本実施形態の車両は、後1軸に構成され、この後軸25に終減速機27が装備され、エンジン20からの回転駆動力がクラッチ21,変速機22,プロペラシャフト23を介して終減速機27に入力されるようになっている。そして、この終減速機27には、プロペラシャフト33を介してモータ32からの回転駆動力も入力されるようになっている。
【0056】
終減速機27は、図5(b)に示すように、前側プロペラシャフト23と結合されたフロント入力軸27aと、後側プロペラシャフト33と結合されたリヤ入力軸27bとが対向して同軸配置され、これらの入力軸27a,27bは、ギヤを介してドライブピニオンギヤ28に入力される。ドライブピニオンギヤ28はリングギヤと一体を成すデフケース29に内蔵された差動ギヤを介して出力軸27L,27Rが互いに対向して同軸配置されている。左側出力軸27Lは左側駆動輪26Lのドライブシャフト25Lと結合され、右側出力軸27Rは右側駆動輪26Rのドライブシャフト25Rと結合されている。
【0057】
このような終減速機27は、第1実施形態の後2軸の場合でエンジン20によって後2軸の各駆動輪26,36を駆動する場合の第1終減速機(前側終減速機)に適用されるものを流用することができる。
上記の構成を除いた各部は、本実施形態も第1実施形態と同様に構成されるので説明を省略する。
【0058】
したがって、クラッチ21,変速機22,プロペラシャフト23及び終減速機27の入力軸27aとからエンジン20の回転駆動力を駆動輪26に伝達する第1の駆動力伝達系が構成され、この第1の駆動力伝達系にエンジン20を含めて第1駆動系統が構成される。
また、プロペラシャフト33及び終減速機27の入力軸27bとからモータ32の回転駆動力を駆動輪26に伝達する第2の駆動力伝達系が構成され、この第2の駆動力伝達系に集電装置30及びモータ32を含めて第2駆動系統が構成される。
【0059】
本発明の第2実施形態にかかる集電装置付きハイブリッド自動車は、上述のように構成されるので、第1実施形態のものと略同様な効果が得られるのと共に、エンジン20とモータ32とにより、共通の駆動輪26を駆動するように構成しながら、エンジン20のみによる駆動方式の一般車両に対して、既存の終減速機27を利用した僅かな部品交換と第2駆動系統の追加とによって低コストに車両を製造することができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はかかる実施の形態に限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でかかる実施の形態に対して適宜変更して実施しうるものである。
例えば、各実施形態では、大型トラックへの適用例を説明したが、本発明は、トラックやバスといった大型の商用車に好適であるが、その他の種々の自動車への適用も可能である。
【0061】
また、各実施形態では、架線2を支柱3により上方に設けたが、道路に架線2を敷設しても良い。このような場合には、集電装置30を車両10の下方側に設ければ良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
化石燃料消費の抑制やCOをはじめとした排出ガスの抑制の観点から電力を用いる走行頻度を増加させるために、自動車や自動車運行システムに広く適用でき、特に、トラックやバスといった大型の商用車に用いて、新たな自動車運行システムを構築するのに好適であり、大型商用車の製造産業や車両の運行管理産業等に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 集電装置付きハイブリッド自動車(車両)
25,35 後軸
26,36 駆動輪
20 エンジン(走行用内燃機関)
21 クラッチ
22 変速機
23,33 プロペラシャフト
24,27,34 終減速機
28 ドライブピニオンギヤ
29 リングギヤと一体を成すデフケース
30 集電装置
31,31a,3b 集電部としてのパンタグラフ(トロリーポール)
32 電動モータ(走行用モータ)
2,2a,2b 架線
40 統合制御手段としてのECU(電子制御ユニット)
41 内燃機関制御手段としてのENG−ECU(エンジン制御用電子制御ユニット)
42 モータ制御手段としてのM−ECU(モータ制御用電子制御ユニット)
43 集電制御手段としてのR−ECU(集電制御用電子制御ユニット)
44 充電制御回路
45 インバータ
46 回生制御手段
47 バッテリ(貯電手段)
48 送受信装置
50 選択スイッチ(走行モード選択手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪を回転駆動する走行用内燃機関と、該走行用内燃機関の回転駆動力を前記駆動輪に伝達する第1の駆動力伝達系と、からなる第1駆動系統と、
架線から電力を受ける集電装置と、該集電装置によって受けた電力によって回転し前記駆動輪を回転駆動する走行用モータと、該走行用モータの回転駆動力を前記駆動輪に伝達する前記第1の駆動力伝達系とは別の第2の駆動力伝達系と、からなる第2駆動系統と、
前記第1駆動系統と前記第2駆動系統とを統合制御する統合制御手段とを備えている
ことを特徴とする、集電装置付きハイブリッド自動車。
【請求項2】
前記駆動輪として、前記第1駆動系統によって駆動される第1の駆動輪と、前記第2駆動系統によって駆動される第2の駆動輪とは、別個の駆動輪である
ことを特徴とする、請求項1記載の集電装置付きハイブリッド自動車。
【請求項3】
前記駆動輪として、前記第1駆動系統によって駆動される第1の駆動輪と、前記第2駆動系統によって駆動される第2の駆動輪とは、共通の駆動輪であって、
前記第1の駆動力伝達系は前記共通駆動輪の終減速機の第1入力軸に接続され、前記第2の駆動力伝達系は前記共通駆動輪の終減速機の第2入力軸に接続されている
ことを特徴とする、請求項1記載の集電装置付きハイブリッド自動車。
【請求項4】
前記走行用内燃機関を制御する内燃機関制御手段と、前記集電装置を制御する集電制御手段と、前記走行用モータを制御するモータ制御手段と、を備え、
前記統合制御手段は、前記内燃機関制御手段と前記集電制御手段と前記モータ制御手段とを統合制御する
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の集電装置付きハイブリッド自動車。
【請求項5】
車両の走行モードとして、少なくとも、前記走行用モータの回転駆動力のみにより前記車両を走行駆動するモータ走行モードと、前記走行用内燃機関の回転駆動力のみにより前記車両を走行駆動する内燃機関走行モードと、が備えられ、
前記走行モードの何れかを選択する走行モード選択手段を備え、
前記統合制御手段は、走行中に、前記走行モード選択手段により前記走行用内燃機関を使用する走行モードから前記モータ走行モードへと切り替えられると、前記走行用モータの作動回転数が予め設定された所定回転数以上になったことを条件に、作動していた前記走行用内燃機関を停止する
ことを特徴とする、請求項4記載の集電装置付きハイブリッド自動車。
【請求項6】
前記車両の走行している道路の前方に前記架線が設備されているか否かを判定する架線判定手段を更に備え、
前記統合制御手段は、前記走行用モータを使用する走行モードでの走行中に前記架線判定手段により前記道路の前方に前記架線が設備されていないと判定されたら、前記架線が設備されていない領域に進入する前に前記走行モード選択手段による走行モードの選択にかかわらず前記内燃機関走行モードへと自動で切り替える
ことを特徴とする、請求項5記載の集電装置付きハイブリッド自動車。
【請求項7】
前記集電装置は、前記架線から電力を受ける使用位置と、電力を受けない格納位置との間で可動に構成されると共に、
前記集電装置が前記架線から電力を受けうる位置にあるか否かを判定する車両位置判定手段を更に備え、
前記集電制御手段は、前記走行モード選択手段により前記走行用モータを使用する走行モードが選択されている際には、前記車両位置判定手段により前記集電装置が前記架線から電力を受けうる位置にあると判定されたら前記集電装置を前記使用位置に設定して集電を実施し、前記走行モード選択手段により前記内燃機関走行モードが選択されている際には、前記集電装置を前記格納位置に設定して集電を実施しない
ことを特徴とする、請求項6記載の集電装置付きハイブリッド自動車。
【請求項8】
前記架線から電力を受けない場合にも一時的に前記走行用モータに電力を供給して前記走行用モータを作動可能にする貯電装置と、
車両の制動エネルギを回収して電気エネルギとして前記貯電手段に貯留すると共に、前記架線から受けた電力のうち走行に使用しない余剰電気エネルギについても回収して前記貯電手段に貯留する電気エネルギ回収装置とを備えている
ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の集電装置付きハイブリッド自動車。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の集電装置付きハイブリッド自動車を運行するシステムであって、
前記架線を装備した走行レーンを有する架線付き道路と、
前記架線付き道路に接続する前記架線を装備しない架線なし接続道路と、
前記架線付き道路及び前記架線なし接続道路の双方の道路側と、前記の何れかの道路を走行している前記集電装置付きハイブリッド自動車及びその他の前記架線を使用可能な自動車との間で通信を行う路車間通信手段と、
前記路車間通信手段によって前記各自動車からの前記架線の使用要求情報を得て、これに基づいて前記架線への給電状態を制御する給電制御手段と、を備えている
ことを特徴とする、集電装置付きハイブリッド自動車の運行システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−254150(P2010−254150A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106940(P2009−106940)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】