説明

電力変換装置

【課題】複数のスイッチング素子を備えた電力変換回路と、該電力変換回路に接続されたインダクタンス要素とを備えた電力変換装置において、ゲート駆動回路の動作状態に影響されることなく、インダクタンス要素が開放状態になったときに、電力変換回路内の構成機器等が損傷を受けるような過大なサージ電圧の発生を確実に防止できる構成を得る。
【解決手段】複数のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のゲート駆動回路が停止した状態でもモータ(3)内の電流を還流する還流経路(14)を形成するように、上記複数のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のうち少なくとも一部をノーマリオン型のスイッチング素子にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスイッチング素子を備えた電力変換回路と、該電力変換回路に接続されたインダクタンス要素とを備えた電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のスイッチング素子を備えた電力変換回路に対してインダクタンス要素が接続されてなる電力変換装置が知られている。このような電力変換装置では、インダクタンス要素として、例えばモータなどの誘導負荷やリアクトルなどが、上記電力変換回路に接続されているため、該電力変換回路内のスイッチング素子が全てオフ状態になると、上記インダクタンス要素が開放状態となって、その際にサージ電圧などの異常高電圧が発生する場合がある。このサージ電圧が電力変換装置内で発生すると、上記電力変換回路内の各構成要素や負荷等に高電圧が作用することになり、これらの構成要素や負荷等に損傷を与える可能性がある。
【0003】
これに対し、例えば特許文献1に開示されるように、電力変換装置の動作停止時に、電力変換回路(スイッチ回路)内のスイッチング素子をスイッチング動作させることにより、上記インダクタンス要素内のエネルギが放出されるような電流の還流経路を形成した後、該インダクタンス要素に流れる電流が所定値以下になったときにスイッチング素子をオフ状態にする構成が知られている。このように、電力変換装置の動作停止時に、上記インダクタンス要素内のエネルギを放出させることにより、スイッチング素子のオフ状態によって該インダクタンス要素が開放状態になっても、サージ電圧が発生するのを防止することができる。
【特許文献1】特開平6−351257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に、上記スイッチング素子には、ゲートに電圧が印加されていない状態(ゲート・ソース間の電圧が0V)で非導通状態となるノーマリオフ型のスイッチング素子が用いられているため、上記特許文献1のような制御を行う場合には、上記スイッチング素子をゲート駆動回路によって駆動制御する必要がある。そのため、上記ゲート駆動回路が故障や停電等によって正常に動作しない場合には、インダクタンス要素内のエネルギを放出するように上記スイッチング素子を駆動制御することができず、該インダクタンス要素内のエネルギによって過大なサージ電圧が発生して、該サージ電圧によって電力変換回路内の構成要素や負荷等が損傷を受ける可能性がある。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数のスイッチング素子を備えた電力変換回路と、該電力変換回路に接続されたインダクタンス要素とを備えた電力変換装置において、ゲート駆動回路の動作状態に影響されることなく、インダクタンス要素が開放状態になったときに、電力変換回路内の構成機器等が損傷を受けるような過大なサージ電圧の発生を確実に防止できる構成を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る電力変換装置(1)では、インダクタンス要素(3)内の電流が還流する還流経路(14)を形成するように、電力変換回路(13)を構成する複数のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のうち少なくとも一部をノーマリオン型とした。
【0007】
具体的には、第1の発明では、複数のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作によって、入力電源(2)から供給される入力電力を電力変換するように構成された電力変換回路(13)と、該電力変換回路(13)に接続されたインダクタンス要素(3)と、を備えた電力変換装置を対象とする。
【0008】
そして、上記電力変換回路(13)は、該複数のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のゲート駆動回路が停止した状態でも上記インダクタンス要素(3)に流れる電流を還流する還流経路(14)を形成するように、上記複数のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のうち少なくとも一部がノーマリオン型であるものとする。
【0009】
以上の構成により、電力変換回路(13)を構成する複数のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のゲート駆動回路が停止した状態(ゲート・ソース間の電圧が0V)であっても、ノーマリオン型のスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)によって、インダクタンス要素(3)に流れる電流を還流する還流経路(14)が形成されるため、該インダクタンス要素(3)が開放状態になったときに、異常に高電圧のサージ電圧が発生するのを防止することができる。すなわち、上記還流経路(14)が形成されるように、上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)の少なくとも一部をノーマリオン型にすることで、該スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のゲート駆動回路が故障や停電等によって停止した(正常に動作しない)状態であっても、ノーマリオン型のスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)はオン状態であることから、上記還流経路(14)を形成することができ、上記インダクタンス要素(3)の開放状態に起因する過大なサージ電圧の発生を防止することができる。
【0010】
上述の構成は、電圧型インバータ回路に適用することができる。具体的には、上記電力変換回路(13)は、略方形波状の交流電圧を出力可能なように、少なくとも2つのスイッチング素子(Su,Sx)が直列に接続されてなる複数の上下アームを備えた電圧型インバータ回路であり、上記インダクタンス要素は、上記電力変換回路(13)の出力側に接続される誘導負荷(3)であり、上記上アームまたは下アームのいずれか一方を構成する全てのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)がノーマリオン型であるものとする(第2の発明)。
【0011】
このように、電圧型インバータ回路である電力変換回路(13)において、上アームまたは下アームのいずれか一方を構成する全てのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)をノーマリオン型にすることで、該電力変換回路(13)の出力側に接続される誘導負荷(3)が開放状態になったときには、上記上アームまたは下アームのいずれか一方のノーマリオン型のスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)によって還流経路(14)が形成されて、上記誘導負荷(3)内の電流が還流される。したがって、上記誘導負荷(3)が開放状態になったときに、過大なサージ電圧が発生するのを防止することができ、これにより、電力変換装置(1)内の構成機器等が損傷を受けるのを防止できる。
【0012】
また、上記第1の発明の構成は、電圧型インバータ回路の一つである3レベルインバータ回路にも適用することできる。具体的には、上記電力変換回路(23,33)は、3段階の出力電圧レベルによって略方形波状の交流電圧を出力可能なように、少なくとも4つのスイッチング素子(Su1,Su2,Su2',Sx1,Sx2,Sx2')が直列に接続されてなる複数の上下アームを備えた3レベルインバータ回路であり、上記インダクタンス要素は、上記電力変換回路(23,33)の出力側に接続される誘導負荷(3)であり、上記上アームまたは下アームのいずれか一方を構成する全てのスイッチング素子(Sx1,Sx2,Sy1,Sy2,Sz1,Sz2)、または、上下アームのスイッチング素子のうち上記誘導負荷(3)に接続される側のスイッチング素子(Su2',Sx1,Sv2',Sy1,Sw2',Sz1)、のいずれか一方がノーマリオン型であるものとする(第3の発明)。
【0013】
このように、3レベルインバータ回路である電力変換回路(23,33)において、上アームまたは下アームのいずれか一方を構成する全てのスイッチング素子(Sx1,Sx2,Sy1,Sy2,Sz1,Sz2)、または、上下アームのスイッチング素子のうち誘導負荷(3)に接続される側のスイッチング素子(Su2',Sx1,Sv2',Sy1,Sw2',Sz1)、のいずれか一方をノーマリオン型にすることで、上記スイッチング素子(Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2,Sx1,Sx2,Sy1,Sy2,Sz1,Sz2,Su2',Sv2',Sw2',Sx2',Sy2',Sz2')のゲート駆動回路が停止状態になったときには、上記ノーマリオン型のスイッチング素子によって還流経路(24,34)が形成されて、上記誘導負荷(3)内の電流が還流される。したがって、上記誘導負荷(3)が開放状態になったときに、過大なサージ電圧が発生するのを防止することができ、これにより、電力変換装置(21,31)内の構成機器等が損傷を受けるのを防止できる。
【0014】
また、上記第1の発明の構成は、マトリックスコンバータ回路にも適用することができる。具体的には、上記電力変換回路(42)は、複数の相の交流入力電圧を、直接、所定の複数の相の交流出力電圧に変換するように、上記複数のスイッチング素子によって構成される複数の双方向スイッチ(S1u,S2u,S3u,S1v,S2v,S3v,S1w,S2w,S3w)を備えていて、上記インダクタンス要素(3)は、上記電力変換回路の出力側に接続される誘導負荷(3)であり、上記複数の双方向スイッチ(S1u,S2u,S3u,S1v,S2v,S3v,S1w,S2w,S3w)のうち上記入力電源(2)の一相に接続される双方向スイッチ(S1u,S1v,S1w)は、該双方向スイッチ(S1u,S1v,S1w)を構成する全てのスイッチング素子(Son)がノーマリオン型であるものとする(第4の発明)。
【0015】
このように、マトリックスコンバータ回路である電力変換回路(42)において、複数の双方向スイッチ(S1u,S2u,S3u,S1v,S2v,S3v,S1w,S2w,S3w)のうち入力電源(2)の一相に接続される双方向スイッチ(S1u,S1v,S1w)を構成する全てのスイッチング素子(Son)を、ノーマリオン型にすることで、上記電力変換回路(42)の出力側に接続される誘導負荷(3)が開放状態になったときには、上記ノーマリオン型のスイッチング素子(Son)によって還流経路(42)が形成されて、上記誘導負荷(3)内の電流が還流される。したがって、上記誘導負荷(3)が開放状態になったときに、過大なサージ電圧が発生するのを防止することができ、これにより、電力変換装置(41)内の構成機器等が損傷を受けるのを防止できる。
【0016】
また、上記第1の発明の構成は、電流型インバータ回路にも適用することができる。具体的には、上記電力変換回路は、上記入力電源(2)から出力される交流電力を整流するためのコンバータ回路(52)と、該コンバータ回路(52)の出力電流を略方形波状の交流電流に変換するインバータ回路(53)と、上記コンバータ回路(52)の出力側とインバータ回路(53)の入力側との間に、両回路に対して直列に設けられた上記インダクタンス要素としてのリアクトル(54)とを備えていて、上記コンバータ回路(52)及びインバータ回路(53)は、それぞれ、少なくとも2つのスイッチング素子(S1,S2,Su',Sx')が直列に接続されてなる複数の上下アームを備えているとともに、少なくとも一組の上下アームのスイッチング素子(S5,S6,Su',Sv',Sw',Sx',Sy',Sz')がノーマリオン型であるものとする(第5の発明)。
【0017】
このように、電流型インバータ回路である電力変換回路において、コンバータ回路(52)及びインバータ回路(53)の少なくとも一組の上下アームのスイッチング素子(S5,S6,Su',Sv',Sw',Sx',Sy',Sz')をノーマリオン型にすることで、上記コンバータ回路(52)とインバータ回路(53)との間に両回路(52,53)に対して直接に接続されるインダクタンス要素としてのリアクトル(54)が開放状態になったときには、上記ノーマリオン型のスイッチング素子によって還流経路(55)が形成されて、上記リアクトル(54)内の電流が還流される。したがって、上記リアクトル(54)が開放状態になったときに、過大なサージ電圧が発生するのを防止することができ、これにより、電力変換装置(51)内の構成機器等が損傷を受けるのを防止できる。
【0018】
特に、上記第5の発明の構成において、上記インバータ回路(53)の出力側には、誘導負荷(3)が接続されていて、上記インバータ回路(53)を構成する全てのスイッチング素子(Su',Sv',Sw',Sx',Sy',Sz')がノーマリオン型であるのが好ましい(第6の発明)。
【0019】
このように、インバータ回路(53)の出力側に誘導負荷(3)が接続されている場合には、どの相にサージ電圧が発生するのか分からないため、上記インバータ回路(53)を構成する全てのスイッチング素子(Su',Sv',Sw',Sx',Sy',Sz')をノーマリオン型にすることで、上記コンバータ回路(52)のノーマリオン型のスイッチング素子(S5,S6)との間で、上記誘導負荷(3)のどの相の電流でも還流させることができ、該誘導負荷(3)の開放状態に起因する過大なサージ電圧の発生を確実に防止することができる。
【0020】
また、上記インダクタンス要素は、上記電力変換回路(1)の出力側に接続される電動機(3)であり、上記電動機(3)は、回転中に該電動機(3)の入力側を短絡させても上記電力変換回路(1)及び該電動機(3)を破壊するような電流が上記還流経路(14)内に流れないように構成されているのが好ましい(第7の発明)。
【0021】
こうすることで、インダクタンス要素である電動機(3)の回転中に該電動機(3)の入力側を短絡させて還流経路(14)を形成した場合でも、該還流経路(14)内に電力変換回路(1)や上記電動機(3)が破壊されるような電流が流れるのを防止できる。
【0022】
特に、上記電動機(3)は、回転子の内部に永久磁石が埋め込まれた同期電動機であるであるのが好ましい(第8の発明)。このような磁石埋め込み型の同期電動機(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor:以下、IPMSMともいう)は、回転子の表面に永久磁石を配置した同期電動機(Surface Permanent Magnet Synchronous Motor:以下、SPMSMともいう)よりもインダクタンスが大きいため、電動機の入力側で還流経路を形成しても、該還流経路内にはSPMSMのような過大な電流が流れることはなく、電力変換回路(1)等の破壊を防止することができる。
【0023】
また、上記ノーマリオン型のスイッチング素子は、接合型FETまたはヘテロ接合型FETであるのが好ましい(第8の発明)。このような構造のFETによって、ノーマリオン型のスイッチング素子を構成することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上より、第1の発明によれば、電力変換回路(13)を構成するスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のゲート駆動回路が停止した状態でもインダクタンス要素(3)に流れる電流を還流するための還流経路(14)を形成するように、少なくとも一部のスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)をノーマリオン型にすることで、ゲート駆動回路が正常に動作しない場合でもインダクタンス要素(3)が開放状態になった際に過大なサージ電圧が発生するのを防止でき、該サージ電圧によって電力変換装置(1)内の構成機器等が損傷を受けるのを防止できる。
【0025】
また、第2の発明によれば、電圧型インバータ回路である電力変換回路(13)において、上アームまたは下アームのいずれか一方を構成する全てのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)をノーマリオン型にすることで、上記第1の発明と同様の効果を得ることができる。
【0026】
また、第3の発明によれば、3レベルインバータ回路である電力変換回路(23,33)において、上アームまたは下アームのいずれか一方を構成する全てのスイッチング素子(Sx1,Sx2,Sy1,Sy2,Sz1,Sz2)、または、上下アームのスイッチング素子のうち誘導負荷(3)に接続される側のスイッチング素子(Su2',Sx1,Sv2',Sy1,Sw2',Sz1)、のいずれか一方をノーマリオン型にすることで、上記第1の発明と同様の効果を得ることができる。
【0027】
また、第4の発明によれば、マトリックスコンバータ回路である電力変換回路(42)において、双方向スイッチ(S1u,S2u,S3u,S1v,S2v,S3v,S1w,S2w,S3w)のうち入力電源(2)の一相に接続される双方向スイッチ(S1u,S1v,S1w)を構成する全てのスイッチング素子(Son)をノーマリオン型にすることで、上記第1の発明と同様の効果を得ることができる。
【0028】
また、第5の発明によれば、電流型インバータ回路である電力変換回路において、コンバータ回路(52)及びインバータ回路(53)のそれぞれの少なくとも一つの相に対応する上下アームのスイッチング素子(S5,S6,Su',Sv',Sw',Sx',Sy',Sz')を、ノーマリオン型にすることで、上記コンバータ回路(52)とインバータ回路(53)との間に両回路(52,53)に直列に接続されるインダクタンス要素としてのリアクトル(54)が開放状態になった際に、過大なサージ電圧が発生するのを防止できる。特に、第6の発明のように、上記インバータ回路(53)の出力側に誘導負荷(3)が接続される構成の場合には、該インバータ回路(53)を構成する全てのスイッチング素子(Su',Sv',Sw',Sx',Sy',Sz')をノーマリオン型にすることで、上記誘導負荷(3)が開放状態になった際にいずれの相でも過大なサージ電圧が発生するのを確実に防止することができる。
【0029】
また、第7の発明によれば、上記インダクタンス要素としての電動機(3)は、回転中に該電動機(3)の入力側を短絡させても上記電力変換回路(1)等を破壊するような電流を上記還流経路(14)内に流さないように構成されているため、該電力変換回路(1)等の破壊を防止できる。特に、第8の発明によれば、上記電動機(3)は、回転子の内部に永久磁石が埋め込まれた同期電動機であるため、回転子の表面に永久磁石が配置された同期電動機の場合のように上記還流経路(14)に過大な電流が流れて電力変換回路(1)等が破壊されるのを防止できる。
【0030】
また、第9の発明によれば、接合型FETまたはヘテロ接合型FETによって、ノーマリオン型のスイッチング素子を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
《実施形態1》
図1に、本発明の実施形態1に係る電力変換装置(1)の概略構成を示す。この電力変換装置(1)は、コンバータ回路(11)と、平滑コンデンサ(12)と、インバータ回路(13)(電力変換回路)とを備えていて、交流電源(2)(入力電源)から供給された交流の電圧を所定の周波数の電圧に変換して、三相交流モータ(3)(インダクタンス要素、誘導負荷)に供給するように構成されている。なお、この三相交流モータ(3)は、例えば、空気調和機の冷媒回路に設けられる圧縮機を駆動するものであり、回転子の内部に永久磁石が配置された磁石埋め込み型の同期電動機(IPMSM)である。
【0033】
上記コンバータ回路(11)は、上記交流電源(2)に接続され、交流の電圧を直流に整流するように構成されている。このコンバータ回路(11)は、複数(本実施形態では4つ)のダイオード(D1〜D4)がブリッジ状に結線されてなるダイオードブリッジ回路であり、上記交流電源(2)に対し、リアクトル(L)を介して接続されている。これにより、上記交流電源(2)の交流電圧は、上記ダイオード(D1〜D4)のブリッジ回路によって直流電圧に変換される。
【0034】
上記平滑コンデンサ(12)は、上記コンバータ回路(11)によって整流された直流電圧を平滑化するコンデンサである。この平滑コンデンサ(12)は、例えば、電解コンデンサによって構成されている。
【0035】
上記インバータ回路(13)は、上記平滑コンデンサ(12)に対して並列に接続されている。このインバータ回路(13)は、複数のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)(例えば三相交流であれば6個)がブリッジ結線されてなる。すなわち、上記インバータ回路(13)は、2つのスイッチング素子を互いに直列接続してなる3つのスイッチングレグ(14,15,16)を備えていて、各スイッチングレグ(14,15,16)において上アームのスイッチング素子(Su,Sv,Sw)と下アームのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)との中点がそれぞれ上記モータ(3)の各相(図示省略)に接続されている。
【0036】
上記インバータ回路(13)は、いわゆる電圧型インバータ回路であり、スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のオンオフ動作によって、直流電圧を三相交流電圧に変換して、上記モータ(3)へ供給するように構成されている。上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)は、上アームのスイッチング素子(Su,Sv,Sw)が、例えばIGBTなどのように、0V以下でオフ状態であり、正電圧でオン状態となる、いわゆるノーマリオフ型のトランジスタによって構成されている一方、下アームのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)が、例えばJFET(接合型FET:Junction FET)などのように、負電圧(例えば−15V)でオフ状態となり、0Vに近い所定電圧(デバイスの構成などによって異なるが例えば−2〜0V)になるとオン状態になる、いわゆるノーマリオン型のトランジスタによって構成されている。また、ノーマリオン型である下アームのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)は、SiCなどのワイドバンドギャップ半導体を主材料として構成されていて、高温条件下での動作や高速動作が可能に構成されている。このように、ワイドバンドギャップ半導体を主材料としてノーマリオン型のスイッチング素子を構成することで、高い冷却性能を有する冷却構造が不要になるとともに、スイッチング時の効率向上を図ることができ、電力変換装置(1)の効率向上を図れる。なお、本実施形態では、上記各スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)に対して、還流ダイオード(Du,Dv,Dw,Dx,Dy,Dz)が逆並列に接続されている。
【0037】
上記インバータ回路(13)を構成するスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)は、それぞれ、図示しないゲート駆動回路によって駆動されるように構成されている。このゲート駆動回路は、上記スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のゲートに対して、電圧を印加することで、該スイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のオンオフを制御するように構成されている。すなわち、上記ゲート駆動回路によりゲートに電圧が印加されなくなると、ノーマリオフ型のスイッチング素子(Su,Sv,Sw)は、オフ状態になる一方、ノーマリオン型のスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)は、オン状態になる。
【0038】
上述のように、上記インバータ回路(13)を構成するスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のうち、下アームのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)をノーマリオン型のトランジスタによって構成することで、上記ゲート駆動回路の動作が停止して、インバータ回路(13)内のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)の動作を停止した場合に、上記図1に太線で示すように、インダクタンス要素としての上記モータ(3)内の電流が上記ノーマリオン型のスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)を流れるための還流経路(14)が形成されるため、過大なサージ電圧が発生するのを確実に防止できる。
【0039】
すなわち、上記下アームのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)は、ノーマリオン型なので、上記電力変換装置(1)の動作が停止してゲート駆動回路から信号が出力されなくなると、オン状態になって上記還流経路(14)を確実に形成する。ここで、上記図1の例では、下アームのスイッチング素子(Sx)、還流ダイオード(Dy)によって、上記還流経路(14)が形成される。
【0040】
よって、上記ゲート駆動回路の故障や停電等を含めて該ゲート駆動回路が動作していない状態では、常に還流経路(14)が形成されることになるため、上記電力変換装置(1)の動作が停止して上記モータ(3)が開放状態になっても、該モータ(3)内の電流は上記還流経路(14)を流れる。したがって、上記モータ(3)が開放状態になるときに、過大なサージ電圧が発生するのを防止でき、該サージ電圧によって上記電力変換装置(1)内の構成機器等が損傷を受けるのを防止できる。
【0041】
また、上記三相交流モータ(3)を、回転子の内部に永久磁石が埋め込まれた同期電動機(IPMSM)とすることで、回転子の表面に永久磁石が配置された同期電動機(SPMSM)の場合のように還流経路(14)内に過大な電流が流れるのを防止できる。ここで、一般的に、永久磁石を有する同期電動機の入力側を回転中に短絡させると、Φ(永久磁石による電機子鎖交磁束)/Ld(d軸インダクタンス)に比例したd軸電流が流れる。永久磁石の配置の関係で、上記SPMSMは、上記IPMSMよりもLdが小さいため、入力側を短絡させると過大な電流が流れて、電力変換回路や同期電動機を破壊する恐れがある。これに対して、上記IPMSMでは、入力側を短絡させてもSPMSMのような過大な電流が流れないため、電力変換回路等が破壊されるのを防止できる。
【0042】
なお、この実施形態では、下アームのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)を全てノーマリオン型にしたが、この限りではなく、上アームのスイッチング素子(Su,Sv,Sw)をノーマリオン型にしてもよい。
【0043】
−実施形態1の変形例1−
図2に、実施形態1の変形例1に係る電力変換装置(21)の概略構成を示す。この変形例では、上記実施形態1とは異なり、インバータ回路(23)が、3段階の電圧レベルを出力可能な3レベルインバータ回路によって構成されている。
【0044】
具体的には、インバータ回路(23)(電力変換回路)は、上下アームにおいて、それぞれ2つのスイッチング素子(Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2,Sx1,Sx2,Sy1,Sy2,Sz1,Sz2)が直列に接続されていて、該上下アームの2つのスイッチング素子(Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2,Sx1,Sx2,Sy1,Sy2,Sz1,Sz2)の接続点と直流電源(22,22)の中性点とを接続する2つのクランプダイオード(D11,D12)を備えている。なお、上記各スイッチング素子(Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2,Sx1,Sx2,Sy1,Sy2,Sz1,Sz2)には、逆並列に還流ダイオード(Du1,Du2,Dv1,Dv2,Dw1,Dw2,Dx1,Dx2,Dy1,Dy2,Dz1,Dz2)が接続されている。
【0045】
そして、上記実施形態1と同様、上記スイッチング素子(Su1,Su2,Sv1,Sv2,Sw1,Sw2,Sx1,Sx2,Sy1,Sy2,Sz1,Sz2)のうち、下アームのスイッチング素子(Sx1,Sx2,Sy1,Sy2,Sz1,Sz2)は、ノーマリオン型のトランジスタ(例えばJFETやHFET)によって構成されている。
【0046】
上述のように、下アームのスイッチング素子(Sx1,Sx2,Sy1,Sy2,Sz1,Sz2)をノーマリオン型にすることで、該スイッチング素子(Sx1,Sx2,Sy1,Sy2,Sz1,Sz2)のゲート駆動回路が動作していない場合に、上記図2に太線で示すような電流の還流経路(24)を形成することができ、モータ(3)の開放状態に起因する過大なサージ電圧の発生を防止することができる。したがって、上記サージ電圧によって電力変換装置(21)内の構成機器等が損傷を受けるのを防止できる。
【0047】
−実施形態1の変形例2−
図3に、実施形態1の変形例2に係る電力変換装置(31)の概略構成を示す。この変形例では、上記変形例1とは異なり、3レベルインバータ回路において、上下アームの2つのスイッチング素子のうち、一部のスイッチング素子(Su2,Sx1,Sv2,Sy1,Sw2,Sz1)をノーマリオン型にしている。
【0048】
具体的には、インバータ回路(33)(電力変換回路)は、上記変形例1と同様の構成を有していて、上下アームの2つのスイッチング素子のうち、モータ(3)に接続される側のスイッチング素子(Su2',Sx1,Sv2',Sy1,Sw2',Sz1)がノーマリオン型になっている。すなわち、上記インバータ回路(33)において出力電圧がゼロになるようなスイッチングパターンで、オン状態となるスイッチング素子(Su2',Sx1,Sv2',Sy1,Sw2',Sz1)がノーマリオン型のトランジスタによって構成されている。
【0049】
このような構成によって、上記図3に太線で示すような電流の還流経路(34)を形成することができ、モータ(3)の開放状態に起因する過大なサージ電圧の発生を防止することができる。したがって、上記サージ電圧によって電力変換装置(31)内の構成機器等が損傷を受けるのを防止できる。
【0050】
《実施形態2》
図4に、本発明の実施形態2に係る電力変換装置(41)の概略構成を示す。この実施形態2に係る電力変換装置(41)は、交流電源(2)から所定の周波数の交流電力を直接、得ることができる、いわゆるマトリックスコンバータ回路を備えている。
【0051】
具体的には、上記電力変換装置(41)は、三相交流電源(2)と三相交流モータ(3)(インダクタンス要素、誘導負荷)との間に設けられた9個の双方向スイッチ(S1u,S2u,S3u,S1v,S2v,S3v,S1w,S2w,S3w)によって構成されたマトリックスコンバータ回路(42)(電力変換回路)を備えている。すなわち、上記電力変換装置(41)は、交流電源(2)から三相の交流電力を入力とする3つの入力端子と、所定の周波数の三相の交流電力を出力する3つの出力端子とを備え、各出力端子には、それぞれの入力端子とそれぞれ接続された双方向スイッチ(S1u,S2u,S3u,S1v,S2v,S3v,S1w,S2w,S3w)が接続されている。
【0052】
上記双方向スイッチ(S1u,S2u,S3u,S1v,S2v,S3v,S1w,S2w,S3w)は、双方向に導通させる必要があるため、本実施形態では図5に示すように2個のスイッチング素子(Son,Soff)を逆向きに直列接続して双方向スイッチ(S1u,S2u,S3u,S1v,S2v,S3v,S1w,S2w,S3w)を構成している。より詳しくは、上記双方向スイッチ(S1u,S2u,S3u,S1v,S2v,S3v,S1w,S2w,S3w)のうち、電源(2)の一相に接続される双方向スイッチ(S1u,S1v,S1w)は、図5(A)に示すように、ノーマリオン型のスイッチング素子(Son,Son)を逆向きに直列接続することによって構成される一方、電源(2)の他の相に接続される双方向スイッチ(S2u,S3u,S2v,S3v,S2w,S3w)は、図5(B)に示すように、ノーマリオフ型のスイッチング素子(Soff,Soff)を逆向きに直列接続することによって構成されている。
【0053】
この構成により、ノーマリオン型のスイッチング素子(Son)によって構成された双方向スイッチ(S1u,S1v,S1w)によって、ゲート駆動回路が停止状態でも、上記図4に太線で示すような電流の還流経路(43)が形成されるため、モータ(3)の開放状態に起因する過大なサージ電圧の発生を防止することができる。したがって、上記サージ電圧によって電力変換装置(41)内の構成機器等が損傷を受けるのを防止できる。
【0054】
《実施形態3》
図6に、本発明の実施形態3に係る電力変換装置(51)の概略構成を示す。この実施形態3に係る電力変換装置(51)は、モータ(3)に対して、略方形波状の交流電流を出力する、いわゆる電流型インバータ回路を備えている。
【0055】
具体的には、上記電力変換装置(51)は、交流電源(2)から出力される交流電力を整流するためのコンバータ回路(52)と、該コンバータ回路(52)の出力に基づいて略方形波状の交流電流を出力するインバータ回路(53)と、上記コンバータ回路(52)及びインバータ回路(53)の間に両回路(52,53)に対して直列に接続されるリアクトル(54)(インダクタンス要素)と、を備えている。なお、上記コンバータ回路(52)、インバータ回路(53)及びリアクトル(54)を備えていて、且つ、上記電力変換装置(51)内に構成された回路が、本発明の電力変換回路に対応する。
【0056】
上記コンバータ回路(52)は、6つのスイッチング素子(S1〜S6)がブリッジ結線されてなる。すなわち、上記コンバータ回路(52)は、2つのスイッチング素子を互いに直列接続してなる3つのスイッチングレグ(61,62,63)を備えていて、各スイッチングレグ(61,62,63)において上アームのスイッチング素子(S1,S3,S5)と下アームのスイッチング素子(S2,S4,S6)との中点がそれぞれ上記交流電源(2)の各相に接続されている。また、上記各スイッチング素子(S1〜S6)には、それぞれ、ダイオード(D1'〜D6')が直列接続されている。
【0057】
上記インバータ回路(53)は、上記コンバータ回路(52)と同様、6つのスイッチング素子(Su',Sv',Sw',Sx',Sy',Sz')がブリッジ結線されてなる。すなわち、上記インバータ回路(53)は、2つのスイッチング素子を互いに直列に接続してなる3つのスイッチングレグ(64,65,66)を備えていて、各スイッチングレグ(64,65,66)において上アームのスイッチング素子(Su',Sv',Sw')と下アームのスイッチング素子(Sx',Sy',Sz')との中点がそれぞれ上記モータ(3)の各相に接続されている。また、上記各スイッチング素子(Su',Sv',Sw',Sx',Sy',Sz')には、それぞれ、ダイオード(D7'〜D12')が直列接続されている。
【0058】
そして、本実施形態では、上記コンバータ回路(52)において、上記交流電源(2)の一相に接続されるスイッチングレグ(63)を構成するスイッチング素子(S5,S6)が、ノーマリオン型のスイッチング素子によって構成されているとともに、上記インバータ回路(53)内の全てのスイッチング素子(Su',Sv',Sw',Sx',Sy',Sz')がノーマリオン型のスイッチング素子によって構成されている。
【0059】
この構成により、上記コンバータ回路(52)の一部と、上記リアクトル(54)と、上記インバータ回路(53)とによって、上記図6に示すような電流の還流経路(55)が形成される。これにより、各スイッチング素子(S1〜S6,Su',Sv',Sw',Sx',Sy',Sz')のゲート駆動回路が停止した状態で、モータ(3)内やリアクトル(54)内の電流を還流させることができ、該モータ(3)やリアクトル(54)を開放状態にした際に過大なサージ電圧が発生するのを防止できる。したがって、上記サージ電圧によって電力変換装置(51)内の構成機器等が損傷を受けるのを防止できる。
【0060】
また、上記コンバータ回路(52)において、上記交流電源(2)の二相に接続されるスイッチングレグ(61,62)を構成するスイッチング素子(S1〜S4)は、ノーマリオフ型のスイッチング素子によって構成されている。これにより、各スイッチング素子(S1〜S6)のゲート駆動回路が停止した状態では、上記交流電源(2)の電力がスイッチングレグ(61,62)に供給されるタイミングで該交流電源(2)からの電力供給が遮断され、上記リアクトル(54)に電流が流れ続けるのを防止できる。
【0061】
ここで、この実施形態では、上記コンバータ回路(52)の一部のスイッチング素子(S5,S6)をノーマリオン型のスイッチング素子によって構成しているが、この限りではなく、上記コンバータ回路(52)の全てのスイッチング素子(S1〜S6)をノーマリオン型のスイッチング素子によって構成してもよい。なお、上記インバータ回路(53)は、モータ(3)のどの相で過大なサージ電圧が発生するのか分からないため、全てのスイッチング素子(Su',Sv',Sw',Sx',Sy',Sz')をノーマリオン型にする必要がある。ただし、上記インバータ回路(53)の出力側にモータ(3)などの誘電負荷が接続されていない場合には、該インバータ回路(53)を構成する全てのスイッチング素子(Su',Sv',Sw',Sx',Sy',Sz')をノーマリオン型にする必要はなく、上記リアクトル(54)の還流経路を形成するように、少なくとも一つのスイッチングレグを構成するスイッチング素子をノーマリオン型にすればよい。
【0062】
《その他の実施形態》
上記各実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0063】
上記各実施形態では、ノーマリオン型のスイッチング素子として、例えばJFETを用いているが、この限りではなく、ヘテロ接合型のFET(Heterojunction FET:HFET)や、MOSFETのデプレッション形、SIT(Static Induction Transistor)、MESFET(Metal Semiconductor FET)などを用いてもよい。
【0064】
また、上記各実施形態では、三相交流モータ(3)として、回転子の内部に永久磁石が配置された同期電動機(IPMSM)を用いているが、この限りではなく、回転子の表面に永久磁石が配置された同期電動機(SPMSM)を用いてもよい。ただし、上記モータ(3)としてSPMSMを用いる場合には、過大な電流によって電力変換回路(1)等が破壊されないように、IPMSMを用いる場合に比べて許容電流の大きな電力変換回路(スイッチング素子)を用いる必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、スイッチング素子を有する電力変換回路と、該電力変換回路に接続されるリアクトルやモータなどのインダクタンス要素と、を備えた電力変換装置に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態1に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施形態1の変形例1に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
【図3】実施形態1の変形例2に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
【図4】実施形態2に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
【図5】(A)ノーマリオン型の双方向スイッチ、(B)ノーマリオフ型の双方向スイッチの構成例を示す図である。
【図6】実施形態3に係る電力変換装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1,21,31,41,51 電力変換装置
2 交流電源(入力電源)
3 三相交流モータ(インダクタンス要素)
11,52 コンバータ回路
13,23,33,53 インバータ回路(電力変換回路)
14,24,34,43,55 還流経路
42 マトリックスコンバータ回路(電力変換回路)
54 リアクトル(インダクタンス要素)
61〜66 スイッチングレグ
D1〜D4,D1’〜D6’ ダイオード
Du,Dv,Dw,Dx,Dy,Dz 還流ダイオード
D11、D12 クランプダイオード
Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz,S1〜S6 スイッチング素子
Son ノーマリオン型のスイッチング素子
Soff ノーマリオフ型のスイッチング素子
S1u〜S3u,S1v〜S3v,S1w〜S3w 双方向スイッチ
L リアクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のスイッチング動作によって、入力電源(2)から供給される入力電力を電力変換するように構成された電力変換回路(13)と、該電力変換回路(13)に接続されたインダクタンス要素(3)と、を備えた電力変換装置であって、
上記電力変換回路(13)は、該複数のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のゲート駆動回路が停止した状態でも上記インダクタンス要素(3)に流れる電流を還流する還流経路(14)を形成するように、上記複数のスイッチング素子(Su,Sv,Sw,Sx,Sy,Sz)のうち少なくとも一部がノーマリオン型であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記電力変換回路(13)は、略方形波状の交流電圧を出力可能なように、少なくとも2つのスイッチング素子(Su,Sx)が直列に接続されてなる複数の上下アームを備えた電圧型インバータ回路であり、
上記インダクタンス要素は、上記電力変換回路(13)の出力側に接続される誘導負荷(3)であり、
上記上アームまたは下アームのいずれか一方を構成する全てのスイッチング素子(Sx,Sy,Sz)がノーマリオン型であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記電力変換回路(23,33)は、3段階の出力電圧レベルによって略方形波状の交流電圧を出力可能なように、少なくとも4つのスイッチング素子(Su1,Su2,Su2',Sx1,Sx2,Sx2')が直列に接続されてなる複数の上下アームを備えた3レベルインバータ回路であり、
上記インダクタンス要素は、上記電力変換回路(23,33)の出力側に接続される誘導負荷(3)であり、
上記上アームまたは下アームのいずれか一方を構成する全てのスイッチング素子(Sx1,Sx2,Sy1,Sy2,Sz1,Sz2)、または、上下アームのスイッチング素子のうち上記誘導負荷(3)に接続される側のスイッチング素子(Su2',Sx1,Sv2',Sy1,Sw2',Sz1)、のいずれか一方がノーマリオン型であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1において、
上記電力変換回路は、複数の相の交流入力電圧を、直接、所定の複数の相の交流出力電圧に変換するように、上記複数のスイッチング素子によって構成される複数の双方向スイッチ(S1u,S2u,S3u,S1v,S2v,S3v,S1w,S2w,S3w)を備えていて、
上記インダクタンス要素は、上記電力変換回路の出力側に接続される誘導負荷(3)であり、
上記複数の双方向スイッチ(S1u,S2u,S3u,S1v,S2v,S3v,S1w,S2w,S3w)のうち上記入力電源(2)の一相に接続される双方向スイッチ(S1u,S1v,S1w)は、該双方向スイッチ(S1u,S1v,S1w)を構成する全てのスイッチング素子(Son)がノーマリオン型であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1において、
上記電力変換回路は、上記入力電源(2)から供給される交流電力を整流するためのコンバータ回路(52)と、該コンバータ回路(52)の出力電流を略方形波状の交流電流に変換するインバータ回路(53)と、上記コンバータ回路(52)の出力側とインバータ回路(53)の入力側との間に、両回路に対して直列に設けられた上記インダクタンス要素としてのリアクトル(54)とを備えていて、
上記コンバータ回路(52)及びインバータ回路(53)は、それぞれ、少なくとも2つのスイッチング素子(S1,S2,Su',Sx')が直列に接続されてなる複数の上下アームを備えているとともに、少なくとも一組の上下アームのスイッチング素子(S5,S6,Su',Sv',Sw',Sx',Sy',Sz')がノーマリオン型であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項5において、
上記インバータ回路(53)の出力側には、誘導負荷(3)が接続されていて、
上記インバータ回路(53)を構成する全てのスイッチング素子(Su',Sv',Sw',Sx',Sy',Sz')がノーマリオン型であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つにおいて、
上記インダクタンス要素は、上記電力変換回路(1)の出力側に接続される電動機(3)であり、
上記電動機(3)は、回転中に該電動機(3)の入力側を短絡させても上記電力変換回路(1)及び該電動機(3)を破壊するような電流が上記還流経路(14)内に流れないように構成されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項7において、
上記電動機(3)は、回転子の内部に永久磁石が埋め込まれた同期電動機であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つにおいて、
上記ノーマリオン型のスイッチング素子は、接合型FETまたはヘテロ接合型FETであることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−220303(P2010−220303A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61460(P2009−61460)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】