電力変換装置
【課題】新たな部品を追加することなくモータの巻線間のサージ電圧を抑えられる電力変換装置を提供する。
【解決手段】インバータ回路10の浮遊容量C11と、インバータ回路10とモータM1を接続する配線の寄生インダクタンスL10と、モータM1の巻線のインダクタンスLm1と、モータM1の浮遊容量C10とによって構成されるLC共振回路の共振周波数が、インバータ回路10の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL10及び浮遊容量C11の少なくともいずれかが調整されている。寄生インダクタンスL10と、浮遊容量C10を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。しかも、LC共振回路の共振によるコモンモード電流の増大を抑えられる。従って、車両駆動用モータM1の相巻線間のサージ電圧を抑えられる。
【解決手段】インバータ回路10の浮遊容量C11と、インバータ回路10とモータM1を接続する配線の寄生インダクタンスL10と、モータM1の巻線のインダクタンスLm1と、モータM1の浮遊容量C10とによって構成されるLC共振回路の共振周波数が、インバータ回路10の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL10及び浮遊容量C11の少なくともいずれかが調整されている。寄生インダクタンスL10と、浮遊容量C10を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。しかも、LC共振回路の共振によるコモンモード電流の増大を抑えられる。従って、車両駆動用モータM1の相巻線間のサージ電圧を抑えられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力された直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路を備えた電力変換装置がある。インバータ回路がスイッチングすると、モータの巻線にパルス状の電圧が印加される。電圧が印加されると、モータの巻線にノーマルモード電流が流れる。また、インバータ回路及びモータの浮遊容量を介してコモンモード電流が重畳される。コモンモード電流が重畳されると、特定の巻線に電流が集中し電圧が上昇する。その結果、モータの巻線間にサージ電圧が発生する。
【0003】
このようなサージ電圧の原因であるコモンモード電流を抑えることができる電力変換装置として、例えば特許文献1に開示されているインバータ式駆動装置がある。
【0004】
このインバータ式駆動装置は、インバータと、コモンモードチョークコイルと、コンデンサと、抵抗とを備えている。コモンモードチョークコイルは、インバータとモータの間に各相毎に接続されている。コンデンサと抵抗は直列接続されている。直列接続されたコンデンサ及び抵抗の一端は、コモンモードチョークコイルとモータの間に各相毎に接続されている。直列接続されたコンデンサ及び抵抗の他端は、仮想接地電位部に共通接続されている。コモンモードチョークコイル、コンデンサ及び抵抗によって、モータの巻線に流れるコモンモード電流を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−069762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述したインバータ式駆動装置では、コモンモード電流を抑えるために、コモンモードチョークコイル、コンデンサ及び抵抗を別途設けなければならない。そのため、装置が大型化してしまうとともに、コストアップしてしまうという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、新たな部品を追加することなくモータの巻線間のサージ電圧を抑えることができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、この課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、配線の寄生インダクタンスと浮遊容量を利用するとともに、インバータ回路の出力特性に応じてこれらを適切に調整することでコモンモード電流を抑え、新たな部品を追加することなくモータの巻線間のサージ電圧を抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の電力変換装置は、モータに接続され、入力される直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路を備えた電力変換装置において、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、インバータ回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数が、インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンス及び浮遊容量の少なくともいずれかが調整されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、モータの浮遊容量を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。ところで、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、インバータ回路及びモータの浮遊容量によってLC共振回路が構成される。インバータ回路の出力がLC共振回路の共振周波数を含んでいると、その共振周波数においてコモンモード電流が大きくなってしまう。しかし、LC共振回路の共振周波数は、インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンス及び浮遊容量の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、モータの巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0011】
請求項2に記載の電力変換装置は、モータに接続され、入力される直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路と、インバータ回路に接続され、入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換してインバータ回路に出力するコンバータ回路と、を備えた電力変換装置において、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、インバータ回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、並びに、コンバータ回路とインバータ回路を接続する配線及びインバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、コンバータ回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかが、インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンス及び浮遊容量の少なくともいずれかが調整されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、モータの浮遊容量を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。ところで、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、インバータ回路及びモータの浮遊容量によってLC共振回路が構成される。また、コンバータ回路とインバータ回路を接続する配線及びインバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、コンバータ回路及びモータの浮遊容量によって別のLC共振回路が構成される。インバータ回路の出力がLC共振回路の共振周波数を含んでいると、その共振周波数においてコモンモード電流が大きくなってしまう。しかし、これらのLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかは、インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンス及び浮遊容量の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、モータの巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0013】
請求項3に記載の電力変換装置は、モータに接続され、入力される直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路と、インバータ回路に接続され、入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換してインバータ回路に出力するコンバータ回路と、コンバータ回路の入力側に接続され、入力される直流電力を変換して出力する電力変換回路と、を備えた電力変換装置において、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、インバータ回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、コンバータ回路とインバータ回路を接続する配線及びインバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、コンバータ回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、並びに、電力変換回路とコンバータ回路を接続する配線、コンバータ回路とインバータ回路を接続する配線及びインバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、電力変換回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかが、インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンス及び浮遊容量の少なくともいずれかが調整されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、モータの浮遊容量を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。ところで、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、インバータ回路及びモータの浮遊容量によってLC共振回路が構成される。また、コンバータ回路とインバータ回路を接続する配線及びインバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、コンバータ回路及びモータの浮遊容量によって別のLC共振回路が構成される。さらに、電力変換回路とコンバータ回路を接続する配線、コンバータ回路とインバータ回路を接続する配線、及び、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、電力変換回路及びモータの浮遊容量によって別のLC共振回路が構成される。インバータ回路の出力がLC共振回路の共振周波数を含んでいると、その共振周波数においてコモンモード電流が大きくなってしまう。しかし、これらのLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかは、インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンス及び浮遊容量の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、モータの巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0015】
請求項4に記載の電力変換装置は、モータに接続され、入力される直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路と、インバータ回路に接続され、入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換してインバータ回路に出力するコンバータ回路と、コンバータ回路の出力側に接続され、入力される直流電力を変換して出力する電力変換回路と、を備えた電力変換装置において、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、インバータ回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、コンバータ回路とインバータ回路を接続する配線及びインバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、コンバータ回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、並びに、電力変換回路とインバータ回路を接続する配線及びインバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、電力変換回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかが、インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンス及び浮遊容量の少なくともいずれかが調整されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、モータの浮遊容量を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。ところで、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、インバータ回路及びモータの浮遊容量によってLC共振回路が構成される。また、コンバータ回路とインバータ回路を接続する配線及びインバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、コンバータ回路及びモータの浮遊容量によって別のLC共振回路が構成される。さらに、電力変換回路とインバータ回路を接続する配線、及び、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、電力変換回路及びモータの浮遊容量によって別のLC共振回路が構成される。インバータ回路の出力がLC共振回路の共振周波数を含んでいると、その共振周波数においてコモンモード電流が大きくなってしまう。しかし、これらのLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかは、インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンス及び浮遊容量の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、モータの巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0017】
請求項5に記載の電力変換装置は、配線長を調整することによって寄生インダクタンスを調整することを特徴とする。この構成によれば、寄生インダクタンスを確実に調整することができる。
【0018】
請求項6に記載の電力変換装置は、基準点との間に絶縁部材を設け、絶縁部材の誘電率及び絶縁部材の厚さの少なくともいずれかを調整することによって浮遊容量を調整することを特徴とする。この構成によれば、浮遊容量をより確実に調整することができる。
【0019】
請求項7に記載の電力変換装置は、車両に搭載されたモータに交流電力を供給することを特徴とする。この構成によれば、車両に搭載されたモータに交流電力を供給する電力変換装置において、新たな部品を追加することなくモータの巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態におけるモータ制御装置のブロック図である。
【図2】図1に示す寄生インダクタンスと浮遊容量によって構成されるLC共振回路の回路図である。
【図3】図1に示すインバータ回路の出力可能周波数と、図2に示すLC共振回路の共振周波数の関係を説明するためのグラフである。
【図4】図1に示す車両駆動用モータの相巻線間のサージ電圧のグラフである。
【図5】第2実施形態におけるモータ制御装置のブロック図である。
【図6】図5に示す寄生インダクタンスと浮遊容量によって構成されるLC共振回路の回路図である。
【図7】図5に示すインバータ回路の出力可能周波数と、図6に示すLC共振回路の共振周波数の関係を説明するためのグラフである。
【図8】第3実施形態におけるモータ制御装置のブロック図である。
【図9】図8に示す寄生インダクタンスと浮遊容量によって構成されるLC共振回路の回路図である。
【図10】図8に示すインバータ回路の出力可能周波数と、図9に示すLC共振回路の共振周波数の関係を説明するためのグラフである。
【図11】第4実施形態におけるモータ制御装置のブロック図である。
【図12】図11に示す寄生インダクタンスと浮遊容量によって構成されるLC共振回路の回路図である。
【図13】図11に示すインバータ回路の出力可能周波数と、図12に示すLC共振回路の共振周波数の関係を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態では、本発明に係る電力変換装置を、車両に搭載され、車両駆動用モータを制御するモータ制御装置に適用した例を示す。
【0022】
(第1実施形態)
まず、図1〜図3を参照して第1実施形態のモータ制御装置の構成について説明する。ここで、図1は、第1実施形態におけるモータ制御装置のブロック図である。図2は、図1に示す寄生インダクタンスと浮遊容量によって構成されるLC共振回路の回路図である。図3は、図1に示すインバータ回路の出力可能周波数と、図2に示すLC共振回路の共振周波数の関係を説明するためのグラフである。
【0023】
図1に示す車両駆動用モータM1は、車両を駆動するためのモータである。車両駆動用モータM1は、U相巻線U1、V相巻線V1及びW相巻線W1を備えている。U相巻線U1、V相巻線V1及びW相巻線W1は、インダクタンスLm1を有している。U相巻線U1、V相巻線V1及びW相巻線W1はY結線され、金属からなる筐体(図略)に収容されている。U相巻線U1、V相巻線V1及びW相巻線W1と筐体の間には、絶縁部材(図略)が設けられている。筐体は、車体(基準点)に固定されている。そのため、U相巻線U1、V相巻線V1及びW相巻線W1と車体との間には、それぞれ浮遊容量C10が発生する。
【0024】
モータ制御装置1(電力変換装置)は、高電圧バッテリB1の出力する直流高電圧を3相交流電圧に変換して車両駆動用モータM1に供給し、車両駆動用モータM1を制御する装置である。つまり、直流電力を交流電力に変換して車両駆動用モータM1に供給し、車両駆動用モータM1を制御する装置である。モータ制御装置1は、インバータ回路10を備えている。
【0025】
インバータ回路10は、車両駆動用モータM1に接続され、入力される直流高電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換し、車両駆動用モータM1に供給する回路である。つまり、入力される直流電力を交流電力に変換して車両駆動用モータM1に供給する回路である。インバータ回路10は、金属からなる筐体(図略)に収容されている。インバータ回路10と筐体との間には、絶縁部材(図略)が設けられている。筐体は、車体に固定されている。そのため、インバータ回路10と車体との間には、浮遊容量C11が発生する。
【0026】
インバータ回路10の入力端子は、配線を介して高電圧バッテリB1の両端に接続されている。また、出力端子は、配線を介して車両駆動モータM1のU相巻線U1、V相巻線V1及びW相巻線W1にそれぞれ接続されている。インバータ回路10と車両駆動用モータM1を接続する配線は、寄生インダクタンスL10を有している。
【0027】
寄生インダクタンスL10と、インダクタンスLm1と、浮遊容量C10によって、従来のようにコモンモード電流を抑えるフィルタ回路が構成される。また、図2に示すように、浮遊容量C11と、寄生インダクタンスL10と、インダクタンスLm1と、浮遊容量C10とによって、LC共振回路11が各相毎に構成される。
【0028】
ここで、図3に示すように、LC共振回路11の共振周波数は、インバータ回路10の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL10及び浮遊容量C11の少なくともいずれかが調整されている。具体的には、インバータ回路10の周波数特性において、ゲインが1以上となる最大周波数より高い周波数となるように、寄生インダクタンスL10及び浮遊容量C11の少なくともいずれかが調整されている。より具体的には、インバータ回路10と車両駆動用モータM1を接続する配線の配線長を調整することによって寄生インダクタンスL10が、絶縁部材の誘電率及び絶縁部材の厚さの少なくともいずれかを調整することによって浮遊容量C11が調整されている。
【0029】
次に、図1を参照してモータ制御装置の動作について説明する。車両のイグニッションスイッチ(図略)がオンすると、図1に示すモータ制御装置1が動作を開始する。インバータ回路10は、高電圧バッテリB1から入力される直流高電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換する。そして、車両駆動用モータM1に供給し、車両駆動用モータM1を制御する。
【0030】
インバータ回路10がスイッチングすると、車両駆動用モータM1の相巻線にパルス状の電圧が印加される。電圧が印加されると、車両駆動用モータM1の相巻線にノーマルモード電流が流れる。また、車両駆動用モータM1及びインバータ回路10の浮遊容量C10、C11を介してコモンモード電流が重畳される。コモンモード電流が重畳されると、特定の巻線に電流が集中し電圧が上昇する。その結果、車両駆動用モータM1の相巻線間にサージ電圧が発生する。
【0031】
しかし、寄生インダクタンスL10と、インダクタンスLm1と、浮遊容量C10によって、従来のようにコモンモード電流を抑えるフィルタ回路が構成されている。そのため、コモンモード電流を抑えることができる。
【0032】
ところで、図2に示すように、浮遊容量C11と、寄生インダクタンスL10と、インダクタンスLm1と、浮遊容量C10とによって、LC共振回路11が各相毎に構成される。インバータ回路10の出力がLC共振回路11の共振周波数を含んでいると、その共振周波数においてコモンモード電流が大きくなってしまう。しかし、LC共振回路11の共振周波数は、インバータ回路10の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL10及び浮遊容量C11の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路11の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、車両駆動用モータM1の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0033】
次に、図4を参照して効果について説明する。ここで、図4は、図1に示す車両駆動用モータの相巻線間のサージ電圧のグラフである。
【0034】
第1実施形態によれば、寄生インダクタンスL10と、インダクタンスLm1と、浮遊容量C10を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。また、浮遊容量C10と、寄生インダクタンスL10と、インダクタンスLm1と、浮遊容量C11とによって構成されたLC共振回路11の共振周波数は、インバータ回路10の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL10及び浮遊容量C10、C11の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路11の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、車両に搭載された車両駆動用モータM1に交流電力を供給するモータ制御装置において、図4に示すように、共振回路11の共振周波数が所定周波数範囲内にある場合に比べ、車両駆動用モータM1の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0035】
また、第1実施形態によれば、インバータ回路10と車両駆動用モータM1を接続する配線の配線長を調整することによって寄生インダクタンスL10が調整される。そのため、寄生インダクタンスL10を確実に調整することができる。
【0036】
さらに、第1実施形態によれば、車体との間に設けられた絶縁部材の誘電率及び絶縁部材の厚さの少なくともいずれかを調整することによって浮遊容量C10,C11が調整される。そのため、浮遊容量C10、C11を確実に調整することができる。
【0037】
なお、第1実施形態では、LC共振回路11の共振周波数が、インバータ回路10の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲の最大周波数より高い周波数になる例を挙げているが、これに限られるものではない。所定周波数範囲の最小周波数より低い周波数になるようにしてもよい。この場合、寄生インダクタンスL10や浮遊容量C11を大きくするように調整してやればよい。
【0038】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のモータ制御装置について説明する。第2実施形態のモータ制御装置は、第1実施形態のモータ制御装置に対して、インバータ回路の入力側に昇圧コンバータ回路を追加したものである。第2実施形態のモータ制御装置は、インバータ回路を除いて第1実施形態のモータ制御装置と同一構成である。
【0039】
まず、図5〜図7を参照してモータ制御装置の構成について説明する。ここで、図5は、第2実施形態におけるモータ制御装置のブロック図である。図6は、図5に示す寄生インダクタンスと浮遊容量によって構成されるLC共振回路の回路図である。図7は、図5に示すインバータ回路の出力可能周波数と、図6に示すLC共振回路の共振周波数の関係を説明するためのグラフである。
【0040】
図5に示す車両駆動用モータM2は、第1実施形態の車両駆動用モータM1と同一構成である。U相巻線U2、V相巻線V2及びW相巻線W2は、インダクタンスLm2を有している。U相巻線U2、V相巻線V2及びW相巻線W2と車体(基準点)との間には、それぞれ浮遊容量C20が発生する。
【0041】
モータ制御装置2(電力変換装置)は、低電圧バッテリB2の出力する直流低電圧を昇圧するとともに3相交流電圧に変換して車両駆動用モータM2に供給し、車両駆動用モータM2を制御する装置である。つまり、直流電力を交流電力に変換して車両駆動用モータM2に供給し、車両駆動用モータM2を制御する装置である。モータ制御装置2は、インバータ回路20と、昇圧コンバータ回路21(コンバータ回路)とを備えている。
【0042】
インバータ回路20は、入力側を除いて第1実施形態のインバータ回路10と同一構成である。インバータ回路20と車体との間には、浮遊容量C21が発生する。また、インバータ回路20と車両駆動用モータM2を接続する配線は、寄生インダクタンスL20を有している。
【0043】
昇圧コンバータ回路21は、インバータ回路20に接続され、入力される直流低電圧をスイッチングして直流高電圧に変換し、インバータ回路20に出力する回路である。つまり、入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換してインバータ回路20に出力する回路である。昇圧コンバータ回路21は、金属からなる筐体(図略)に収容されている。昇圧コンバータ回路21と筐体との間には、絶縁部材(図略)が設けられている。筐体は、車体に固定されている。そのため、昇圧コンバータ回路21と車体との間には、浮遊容量C22が発生する。
【0044】
昇圧コンバータ回路21の入力端子は、配線を介して低電圧バッテリB2の両端に接続されている。また、出力端子は、配線を介してインバータ回路20の入力端子に接続されている。昇圧コンバータ回路21とインバータ回路20を接続する配線は、寄生インダクタンスL21を有している。
【0045】
寄生インダクタンスL20と、インダクタンスLm2と、浮遊容量C20によって、従来のようにコモンモード電流を抑えるフィルタ回路が構成される。また、図6に示すように、浮遊容量C21と、寄生インダクタンスL20と、インダクタンスLm2と、浮遊容量C20とによって、LC共振回路22が各相毎に構成される。さらに、浮遊容量C22と、寄生インダクタンスL21、L20と、インダクタンスLm2と、浮遊容量C20とによって、LC共振回路23が各相毎に構成される。
【0046】
ここで、LC共振回路23は、LC共振回路22に比べ浮遊容量及び寄生インダクタンスが大きくなる。そのため、図7に示すように、LC共振回路23の共振周波数は、LC共振回路22の共振周波数より低くなる。
【0047】
LC共振回路22、23の共振周波数は、インバータ回路20の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL20、L21及び浮遊容量C21、C22の少なくともいずれかが調整されている。具体的には、LC共振回路22の共振周波数は、インバータ回路20の周波数特性において、ゲインが1以上となる最大周波数より高い周波数となるように、寄生インダクタンスL20及び浮遊容量C21の少なくともいずれかが調整されている。また、LC共振回路23の共振周波数は、インバータ回路20の周波数特性において、ゲインが1以上となる最小周波数より低い周波数となるように、寄生インダクタンスL20、L21及び浮遊容量C22の少なくともいずれかが調整されている。より具体的には、インバータ回路20と車両駆動用モータM2を接続する配線の配線長、及び、昇圧コンバータ回路21とインバータ回路20を接続する配線の配線長を調整することによって寄生インダクタンスL20、L21が調整されている。また、絶縁部材の誘電率及び絶縁部材の厚さの少なくともいずれかを調整することによって浮遊容量C21、C22が調整されている。
【0048】
次に、図5を参照してモータ制御装置の動作について説明する。車両のイグニッションスイッチ(図略)がオンすると、図5に示すモータ制御装置2が動作を開始する。昇圧コンバータ回路21は、低電圧バッテリB2から入力される直流低電圧をスイッチングして直流高電圧に変換し出力する。インバータ回路20は、昇圧コンバータ回路21から入力される直流高電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換する。そして、車両駆動用モータM2に供給し、車両駆動用モータM2を制御する。
【0049】
インバータ回路20がスイッチングすると、第1実施形態の場合と同様に、車両駆動用モータM2の相巻線間にサージ電圧が発生する。
【0050】
しかし、寄生インダクタンスL20と、インダクタンスLm2と、浮遊容量C20によって、従来のようにコモンモード電流を抑えるフィルタ回路が構成されている。そのため、コモンモード電流を抑えることができる。
【0051】
ところで、図6に示すように、浮遊容量C21と、寄生インダクタンスL20と、インダクタンスLm2と、浮遊容量C20とによって、LC共振回路22が各相毎に構成される。また、浮遊容量C22と、寄生インダクタンスL21、L20と、インダクタンスLm2と、浮遊容量C20とによって、LC共振回路23が各相毎に構成される。インバータ回路20の出力がLC共振回路22、23の共振周波数を含んでいると、その共振周波数においてコモンモード電流が大きくなってしまう。しかし、LC共振回路22、23の共振周波数は、インバータ回路20の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL20、L21及び浮遊容量C21、C22の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路22、23の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、車両駆動用モータM2の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0052】
次に、効果について説明する。第2実施形態によれば、寄生インダクタンスL20と、インダクタンスLm2と、浮遊容量C20を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。また、LC共振回路22、23の共振周波数は、インバータ回路20の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL20、L21及び浮遊容量C21、C22の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路22、23の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、車両駆動用モータM2の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0053】
なお、第2実施形態では、LC共振回路22、23の共振周波数が、ともに、インバータ回路20の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数になるように調整されている例を挙げているが、これに限られるものではない。LC共振回路22、23の共振周波数の少なくともいずれかが、所定周波数範囲以外の周波数になるように調整されていればよい。LC共振回路の共振によるコモンモード電流の増大を抑えられるので、車両駆動用モータM2の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態のモータ制御装置について説明する。第3実施形態のモータ制御装置は、第2実施形態のモータ制御装置に対して、昇圧コンバータ回路の入力側にインバータ回路を追加したものである。第3実施形態のモータ制御装置は、追加したインバータ回路を除いて第2実施形態のモータ制御装置と同一構成である。
【0055】
まず、図8〜図10を参照してモータ制御装置の構成について説明する。ここで、図8は、第3実施形態におけるモータ制御装置のブロック図である。図9は、図8に示す寄生インダクタンスと浮遊容量によって構成されるLC共振回路の回路図である。図10は、図8に示すインバータ回路の出力可能周波数と、図9に示すLC共振回路の共振周波数の関係を説明するためのグラフである。
【0056】
図8に示す車両駆動用モータM3は、第2実施形態の車両駆動用モータM2と同一構成である。U相巻線U3、V相巻線V3及びW相巻線W3は、インダクタンスLm3を有している。U相巻線U3、V相巻線V3及びW相巻線W3と車体(基準点)との間には、それぞれ浮遊容量C30が発生する。
【0057】
モータ制御装置3(電力変換装置)は、低電圧バッテリB3の出力する直流低電圧を昇圧するとともに3相交流電圧に変換して車両駆動用モータM3に供給し、車両駆動用モータM3を制御する装置である。また、低電圧バッテリB3の出力する直流低電圧を3相交流電圧に変換して負荷LD3に供給する装置でもある。つまり、直流電力を交流電力に変換し、車両駆動用モータM3に供給して車両駆動用モータM3を制御するとともに、負荷LD3に供給する装置である。モータ制御装置3は、インバータ回路30と、昇圧コンバータ回路31(コンバータ回路)と、インバータ回路32(電力変換回路)とを備えている。
【0058】
インバータ回路30は、第2実施形態のインバータ回路20と同一構成である。インバータ回路30と車体との間には、浮遊容量C31が発生する。また、インバータ回路30と車両駆動用モータM3を接続する配線は、寄生インダクタンスL30を有している。
【0059】
昇圧コンバータ回路31は、第2実施形態の昇圧コンバータ回路21と同一構成である。昇圧コンバータ回路31と車体との間には、浮遊容量C32が発生する。また、昇圧コンバータ回路31とインバータ回路30を接続する配線は、寄生インダクタンスL31を有している。
【0060】
インバータ回路32は、昇圧コンバータ回路31の入力側に接続され、入力される直流低電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換し、負荷LD3に供給する回路である。つまり、入力される直流電力を交流電力に変換して負荷LD3に供給する回路である。インバータ回路32は、金属からなる筐体(図略)に収容されている。インバータ回路32と筐体との間には、絶縁部材(図略)が設けられている。筐体は、車体に固定されている。そのため、インバータ回路32と車体との間には、浮遊容量C33が発生する。
【0061】
インバータ回路32の入力端子は、配線を介して昇圧コンバータ回路31の入力端子に接続されている。また、出力端子は、配線を介して負荷LD3に接続されている。インバータ回路32と昇圧コンバータ回路31を接続する配線は、寄生インダクタンスL32を有している。
【0062】
寄生インダクタンスL30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30によって、従来のようにコモンモード電流を抑えるフィルタ回路が構成される。また、図9に示すように、浮遊容量C31と、寄生インダクタンスL30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30とによって、LC共振回路33が各相毎に構成される。さらに、浮遊容量C32と、寄生インダクタンスL31、L30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30とによって、LC共振回路34が各相毎に構成される。加えて、浮遊容量C33と、寄生インダクタンスL32、L31、L30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30とによって、LC共振回路35が各相毎に構成される。
【0063】
ここで、LC共振回路34は、LC共振回路33に比べ浮遊容量及び寄生インダクタンスが大きくなる。そのため、図10に示すように、LC共振回路34の共振周波数は、LC共振回路33の共振周波数より低くなる。また、LC共振回路35は、LC共振回路34に比べ浮遊容量及び寄生インダクタンスが大きくなる。そのため、LC共振回路35の共振周波数は、LC共振回路34の共振周波数より低くなる。
【0064】
LC共振回路33、34、35の共振周波数は、インバータ回路30の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL30〜L32及び浮遊容量C31〜C33の少なくともいずれかが調整されている。具体的には、LC共振回路33の共振周波数は、インバータ回路30の周波数特性において、ゲインが1以上となる最大周波数より高い周波数となるように、寄生インダクタンスL30及び浮遊容量C31の少なくともいずれかが調整されている。また、LC共振回路34の共振周波数は、インバータ回路30の周波数特性において、ゲインが1以上となる最小周波数より低い周波数となるように、寄生インダクタンスL30、L31及び浮遊容量C32の少なくともいずれかが調整されている。さらに、LC共振回路35の共振周波数は、インバータ回路30の周波数特性において、ゲインが1以上となる最小周波数より低い周波数となるように、寄生インダクタンスL30〜L32及び浮遊容量C33の少なくともいずれかが調整されている。より具体的には、インバータ回路30と車両駆動用モータM3を接続する配線の配線長、昇圧コンバータ回路31とインバータ回路30を接続する配線の配線長、及び、インバータ回路32と昇圧コンバータ回路31を接続する配線の配線長を調整することによって寄生インダクタンスL30〜L32が調整されている。また、絶縁部材の誘電率及び絶縁部材の厚さの少なくともいずれかを調整することによって浮遊容量C31〜C33が調整されている。
【0065】
次に、図8を参照してモータ制御装置の動作について説明する。車両のイグニッションスイッチ(図略)がオンすると、図8に示すモータ制御装置3が動作を開始する。昇圧コンバータ回路31は、低電圧バッテリB3から入力される直流低電圧をスイッチングして直流高電圧に変換し出力する。インバータ回路30は、昇圧コンバータ回路31から入力される直流高電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換する。そして、車両駆動用モータM3に供給し、車両駆動用モータM3を制御する。また、インバータ回路32は、低電圧バッテリB3から入力される直流低電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換する。そして、負荷LD3に供給する。
【0066】
インバータ回路30がスイッチングすると、第2実施形態の場合と同様に、車両駆動用モータM3の相巻線間にサージ電圧が発生する。
【0067】
しかし、寄生インダクタンスL30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30によって、従来のようにコモンモード電流を抑えるフィルタ回路が構成されている。そのため、コモンモード電流を抑えることができる。
【0068】
ところで、図9に示すように、浮遊容量C31と、寄生インダクタンスL30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30とによって、LC共振回路33が各相毎に構成される。また、浮遊容量C32と、寄生インダクタンスL31、L30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30とによって、LC共振回路34が各相毎に構成される。さらに、浮遊容量C33と、寄生インダクタンスL32、L31、L30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30とによって、LC共振回路35が各相毎に構成される。インバータ回路30の出力がLC共振回路33〜35の共振周波数を含んでいると、その共振周波数においてコモンモード電流が大きくなってしまう。しかし、LC共振回路33〜35の共振周波数は、インバータ回路30の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL30〜L32及び浮遊容量C31〜C33の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路33〜35の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、車両駆動用モータM3の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0069】
次に、効果について説明する。第3実施形態によれば、寄生インダクタンスL30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。また、LC共振回路33〜35の共振周波数は、インバータ回路30の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL30〜L32及び浮遊容量C31〜C33の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路33〜35の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、車両駆動用モータM3の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0070】
なお、第3実施形態では、LC共振回路33〜35の共振周波数が、ともに、インバータ回路30の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数になるように調整されている例を挙げているが、これに限られるものではない。LC共振回路33〜35の共振周波数の少なくともいずれかが、所定周波数範囲以外の周波数になるように調整されていてればよい。LC共振回路の共振によるコモンモード電流の増大を抑えられるので、車両駆動用モータM3の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0071】
また、第3実施形態では、昇圧コンバータ回路31の入力側に接続される回路が、インバータ回路32である例を挙げているが、これに限られるものではない。入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換するコンバータ回路であってもよい。入力される直流電力を変換して出力する電力変換回路であればよい。
【0072】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態のモータ制御装置について説明する。第4実施形態のモータ制御装置は、第2実施形態のモータ制御装置に対して、昇圧コンバータ回路の出力側にインバータ回路を追加したものである。第4実施形態のモータ制御装置は、追加したインバータ回路を除いて第2実施形態のモータ制御装置と同一構成である。
【0073】
まず、図11〜図13を参照してモータ制御装置の構成について説明する。ここで、図11は、第4実施形態におけるモータ制御装置のブロック図である。図12は、図11に示す寄生インダクタンスと浮遊容量によって構成されるLC共振回路の回路図である。図13は、図11に示すインバータ回路の出力可能周波数と、図12に示すLC共振回路の共振周波数の関係を説明するためのグラフである。
【0074】
図11に示す車両駆動用モータM40は、第2実施形態の車両駆動用モータM2と同一構成である。U相巻線U40、V相巻線V40及びW相巻線W40は、インダクタンスLm40を有している。U相巻線U40、V相巻線V40及びW相巻線W40と車体(基準点)との間には、それぞれ浮遊容量C40が発生する。
【0075】
車両駆動用モータM41は、車両駆動用モータM40と同一構成のモータである。車両駆動用モータM41は、U相巻線U41、V相巻線V41及びW相巻線W41を備えている。U相巻線U41、V相巻線V41及びW相巻線W41は、Y結線されている。
【0076】
モータ制御装置4(電力変換装置)は、低電圧バッテリB4の出力する直流低電圧を昇圧するとともに3相交流電圧に変換して車両駆動用モータM40に供給し、車両駆動用モータM40を制御する装置である。また、昇圧した直流高電圧を3相交流電圧に変換して車両駆動用モータM41に供給し、車両駆動用モータM41を制御する装置でもある。つまり、直流電力を交流電力に変換し、車両駆動用モータM40、M41に供給して車両駆動用モータM40、M41を制御する装置である。モータ制御装置4は、インバータ回路40と、昇圧コンバータ回路41(コンバータ回路)と、インバータ回路42(電力変換回路)とを備えている。
【0077】
インバータ回路40は、第2実施形態のインバータ回路20と同一構成である。インバータ回路40と車体との間には、浮遊容量C41が発生する。また、インバータ回路40と車両駆動用モータM40を接続する配線は、寄生インダクタンスL40を有している。
【0078】
昇圧コンバータ回路41は、第2実施形態の昇圧コンバータ回路21と同一構成である。昇圧コンバータ回路41と車体との間には、浮遊容量C42が発生する。また、昇圧コンバータ回路41とインバータ回路40を接続する配線は、寄生インダクタンスL41を有している。
【0079】
インバータ回路42は、昇圧コンバータ回路41の出力側に接続され、入力される直流高電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換し、車両駆動用モータM41に供給する回路である。つまり、入力される直流電力を交流電力に変換して車両駆動用モータM41に供給する回路である。インバータ回路42は、金属からなる筐体(図略)に収容されている。インバータ回路42と筐体との間には、絶縁部材(図略)が設けられている。筐体は、車体に固定されている。そのため、インバータ回路42と車体との間には、浮遊容量C43が発生する。
【0080】
インバータ回路42の入力端子は、配線を介して昇圧コンバータ回路41の出力端子に接続されている。また、出力端子は、配線を介して車両駆動モータM41のU相巻線U41、V相巻線V41及びW相巻線W41にそれぞれ接続されている。インバータ回路42と昇圧コンバータ回路41を接続する配線は、寄生インダクタンスL42を有している。
【0081】
寄生インダクタンスL40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40によって、従来のようにコモンモード電流を抑えるフィルタ回路が構成される。また、図12に示すように、浮遊容量C41と、寄生インダクタンスL40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40とによって、LC共振回路43が各相毎に構成される。さらに、浮遊容量C42と、寄生インダクタンスL41、L40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40とによって、LC共振回路44が各相毎に構成される。加えて、浮遊容量C43と、寄生インダクタンスL42、L41、L40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40とによって、LC共振回路45が各相毎に構成される。
【0082】
ここで、LC共振回路34は、LC共振回路43に比べ浮遊容量及び寄生インダクタンスが大きくなる。そのため、図13に示すように、LC共振回路44の共振周波数は、LC共振回路43の共振周波数より低くなる。また、LC共振回路45は、LC共振回路44に比べ浮遊容量及び寄生インダクタンスが大きくなる。そのため、LC共振回路45の共振周波数は、LC共振回路44の共振周波数より低くなる。
【0083】
LC共振回路43、44、45の共振周波数は、インバータ回路40の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL40〜L42及び浮遊容量C41〜C43の少なくともいずれかが調整されている。具体的には、LC共振回路43の共振周波数は、インバータ回路40の周波数特性において、ゲインが1以上となる最大周波数より高い周波数となるように、寄生インダクタンスL40及び浮遊容量C41の少なくともいずれかが調整されている。また、LC共振回路44の共振周波数は、インバータ回路40の周波数特性において、ゲインが1以上となる最小周波数より低い周波数となるように、寄生インダクタンスL40、L41及び浮遊容量C42の少なくともいずれかが調整されている。さらに、LC共振回路45の共振周波数は、インバータ回路40の周波数特性において、ゲインが1以上となる最小周波数より低い周波数となるように、寄生インダクタンスL40〜L42及び浮遊容量C43の少なくともいずれかが調整されている。より具体的には、インバータ回路40と車両駆動用モータM40を接続する配線の配線長、昇圧コンバータ回路41とインバータ回路40を接続する配線の配線長、及び、インバータ回路42と昇圧コンバータ回路41を接続する配線の配線長を調整することによって寄生インダクタンスL40〜L42が調整されている。また、絶縁部材の誘電率及び絶縁部材の厚さの少なくともいずれかを調整することによって浮遊容量C41〜C43が調整されている。
【0084】
次に、図11を参照してモータ制御装置の動作について説明する。車両のイグニッションスイッチ(図略)がオンすると、図11に示すモータ制御装置4が動作を開始する。昇圧コンバータ回路41は、低電圧バッテリB4から入力される直流低電圧をスイッチングして直流高電圧に変換し出力する。インバータ回路40は、昇圧コンバータ回路41から入力される直流高電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換する。そして、車両駆動用モータM40に供給し、車両駆動用モータM40を制御する。また、インバータ回路42も、昇圧コンバータ回路41から入力される直流高電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換する。そして、車両駆動用モータM41に供給し、車両駆動用モータM41を制御する。
【0085】
インバータ回路40がスイッチングすると、第2実施形態の場合と同様に、車両駆動用モータM40の相巻線間にサージ電圧が発生する。
【0086】
しかし、寄生インダクタンスL40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40によって、従来のようにコモンモード電流を抑えるフィルタ回路が構成されている。そのため、コモンモード電流を抑えることができる。
【0087】
ところで、図12に示すように、浮遊容量C41と、寄生インダクタンスL40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40とによって、LC共振回路43が各相毎に構成される。また、浮遊容量C42と、寄生インダクタンスL41、L40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40とによって、LC共振回路44が各相毎に構成される。さらに、浮遊容量C43と、寄生インダクタンスL42、L41、L40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40とによって、LC共振回路45が各相毎に構成される。インバータ回路40の出力がLC共振回路43〜45の共振周波数を含んでいると、その共振周波数においてコモンモード電流が大きくなってしまう。しかし、LC共振回路43〜45の共振周波数は、インバータ回路40の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL40〜L42及び浮遊容量C41〜C43の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路43〜45の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、車両駆動用モータM40の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0088】
次に、効果について説明する。第4実施形態によれば、寄生インダクタンスL40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。また、LC共振回路43〜45の共振周波数は、インバータ回路40の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL40〜L42及び浮遊容量C41〜C43の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路43〜45の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、車両駆動用モータM40の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0089】
なお、第4実施形態では、LC共振回路43〜45の共振周波数が、ともに、インバータ回路40の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数になるように調整されている例を挙げているが、これに限られるものではない。LC共振回路43〜45の共振周波数の少なくともいずれかが、所定周波数範囲以外の周波数になるように調整されていてればよい。LC共振回路の共振によるコモンモード電流の増大を抑えられるので、車両駆動用モータM40の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0090】
また、第4実施形態では、昇圧コンバータ回路41の出力側に接続される回路が、インバータ回路42である例を挙げているが、これに限られるものではない。入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換するコンバータ回路であってもよい。入力される直流電力を変換して出力する電力変換回路であればよい。
【符号の説明】
【0091】
1〜4・・・モータ制御装置(電力変換回路)、10、20、30、40・・・インバータ回路、21、31、41・・・昇圧コンバータ回路(コンバータ回路)、32、42・・・インバータ回路(電力変換回路)、C10、C11、C20〜C22、C30〜C33、C40〜C43・・・浮遊容量、L10、L20、L21、L30〜L32、L40〜L42・・・寄生インダクタンス、Lm1〜Lm3、Lm40・・・相巻線のインダクタンス、11、22、23、33、34、35、43、44、45・・・LC共振回路、B1・・・高電圧バッテリ、B2〜B4・・・低電圧バッテリ、M1〜M3、M40、M41・・・車両駆動用モータ、U1〜U3、U40、U41・・・U相巻線、V1〜V3、V40、V41・・・V相巻線、W1〜W3、W40、W41・・・W相巻線、LD3・・・負荷
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力される直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路を備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入力された直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路を備えた電力変換装置がある。インバータ回路がスイッチングすると、モータの巻線にパルス状の電圧が印加される。電圧が印加されると、モータの巻線にノーマルモード電流が流れる。また、インバータ回路及びモータの浮遊容量を介してコモンモード電流が重畳される。コモンモード電流が重畳されると、特定の巻線に電流が集中し電圧が上昇する。その結果、モータの巻線間にサージ電圧が発生する。
【0003】
このようなサージ電圧の原因であるコモンモード電流を抑えることができる電力変換装置として、例えば特許文献1に開示されているインバータ式駆動装置がある。
【0004】
このインバータ式駆動装置は、インバータと、コモンモードチョークコイルと、コンデンサと、抵抗とを備えている。コモンモードチョークコイルは、インバータとモータの間に各相毎に接続されている。コンデンサと抵抗は直列接続されている。直列接続されたコンデンサ及び抵抗の一端は、コモンモードチョークコイルとモータの間に各相毎に接続されている。直列接続されたコンデンサ及び抵抗の他端は、仮想接地電位部に共通接続されている。コモンモードチョークコイル、コンデンサ及び抵抗によって、モータの巻線に流れるコモンモード電流を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−069762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述したインバータ式駆動装置では、コモンモード電流を抑えるために、コモンモードチョークコイル、コンデンサ及び抵抗を別途設けなければならない。そのため、装置が大型化してしまうとともに、コストアップしてしまうという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、新たな部品を追加することなくモータの巻線間のサージ電圧を抑えることができる電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、この課題を解決すべく鋭意研究し試行錯誤を重ねた結果、配線の寄生インダクタンスと浮遊容量を利用するとともに、インバータ回路の出力特性に応じてこれらを適切に調整することでコモンモード電流を抑え、新たな部品を追加することなくモータの巻線間のサージ電圧を抑えられることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の電力変換装置は、モータに接続され、入力される直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路を備えた電力変換装置において、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、インバータ回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数が、インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンス及び浮遊容量の少なくともいずれかが調整されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、モータの浮遊容量を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。ところで、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、インバータ回路及びモータの浮遊容量によってLC共振回路が構成される。インバータ回路の出力がLC共振回路の共振周波数を含んでいると、その共振周波数においてコモンモード電流が大きくなってしまう。しかし、LC共振回路の共振周波数は、インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンス及び浮遊容量の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、モータの巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0011】
請求項2に記載の電力変換装置は、モータに接続され、入力される直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路と、インバータ回路に接続され、入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換してインバータ回路に出力するコンバータ回路と、を備えた電力変換装置において、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、インバータ回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、並びに、コンバータ回路とインバータ回路を接続する配線及びインバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、コンバータ回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかが、インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンス及び浮遊容量の少なくともいずれかが調整されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、モータの浮遊容量を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。ところで、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、インバータ回路及びモータの浮遊容量によってLC共振回路が構成される。また、コンバータ回路とインバータ回路を接続する配線及びインバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、コンバータ回路及びモータの浮遊容量によって別のLC共振回路が構成される。インバータ回路の出力がLC共振回路の共振周波数を含んでいると、その共振周波数においてコモンモード電流が大きくなってしまう。しかし、これらのLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかは、インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンス及び浮遊容量の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、モータの巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0013】
請求項3に記載の電力変換装置は、モータに接続され、入力される直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路と、インバータ回路に接続され、入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換してインバータ回路に出力するコンバータ回路と、コンバータ回路の入力側に接続され、入力される直流電力を変換して出力する電力変換回路と、を備えた電力変換装置において、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、インバータ回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、コンバータ回路とインバータ回路を接続する配線及びインバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、コンバータ回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、並びに、電力変換回路とコンバータ回路を接続する配線、コンバータ回路とインバータ回路を接続する配線及びインバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、電力変換回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかが、インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンス及び浮遊容量の少なくともいずれかが調整されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、モータの浮遊容量を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。ところで、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、インバータ回路及びモータの浮遊容量によってLC共振回路が構成される。また、コンバータ回路とインバータ回路を接続する配線及びインバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、コンバータ回路及びモータの浮遊容量によって別のLC共振回路が構成される。さらに、電力変換回路とコンバータ回路を接続する配線、コンバータ回路とインバータ回路を接続する配線、及び、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、電力変換回路及びモータの浮遊容量によって別のLC共振回路が構成される。インバータ回路の出力がLC共振回路の共振周波数を含んでいると、その共振周波数においてコモンモード電流が大きくなってしまう。しかし、これらのLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかは、インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンス及び浮遊容量の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、モータの巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0015】
請求項4に記載の電力変換装置は、モータに接続され、入力される直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路と、インバータ回路に接続され、入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換してインバータ回路に出力するコンバータ回路と、コンバータ回路の出力側に接続され、入力される直流電力を変換して出力する電力変換回路と、を備えた電力変換装置において、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、インバータ回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、コンバータ回路とインバータ回路を接続する配線及びインバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、コンバータ回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、並びに、電力変換回路とインバータ回路を接続する配線及びインバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、電力変換回路の浮遊容量と、モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかが、インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンス及び浮遊容量の少なくともいずれかが調整されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、モータの浮遊容量を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。ところで、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、インバータ回路及びモータの浮遊容量によってLC共振回路が構成される。また、コンバータ回路とインバータ回路を接続する配線及びインバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、コンバータ回路及びモータの浮遊容量によって別のLC共振回路が構成される。さらに、電力変換回路とインバータ回路を接続する配線、及び、インバータ回路とモータを接続する配線の寄生インダクタンスと、モータの巻線のインダクタンスと、電力変換回路及びモータの浮遊容量によって別のLC共振回路が構成される。インバータ回路の出力がLC共振回路の共振周波数を含んでいると、その共振周波数においてコモンモード電流が大きくなってしまう。しかし、これらのLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかは、インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンス及び浮遊容量の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、モータの巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0017】
請求項5に記載の電力変換装置は、配線長を調整することによって寄生インダクタンスを調整することを特徴とする。この構成によれば、寄生インダクタンスを確実に調整することができる。
【0018】
請求項6に記載の電力変換装置は、基準点との間に絶縁部材を設け、絶縁部材の誘電率及び絶縁部材の厚さの少なくともいずれかを調整することによって浮遊容量を調整することを特徴とする。この構成によれば、浮遊容量をより確実に調整することができる。
【0019】
請求項7に記載の電力変換装置は、車両に搭載されたモータに交流電力を供給することを特徴とする。この構成によれば、車両に搭載されたモータに交流電力を供給する電力変換装置において、新たな部品を追加することなくモータの巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態におけるモータ制御装置のブロック図である。
【図2】図1に示す寄生インダクタンスと浮遊容量によって構成されるLC共振回路の回路図である。
【図3】図1に示すインバータ回路の出力可能周波数と、図2に示すLC共振回路の共振周波数の関係を説明するためのグラフである。
【図4】図1に示す車両駆動用モータの相巻線間のサージ電圧のグラフである。
【図5】第2実施形態におけるモータ制御装置のブロック図である。
【図6】図5に示す寄生インダクタンスと浮遊容量によって構成されるLC共振回路の回路図である。
【図7】図5に示すインバータ回路の出力可能周波数と、図6に示すLC共振回路の共振周波数の関係を説明するためのグラフである。
【図8】第3実施形態におけるモータ制御装置のブロック図である。
【図9】図8に示す寄生インダクタンスと浮遊容量によって構成されるLC共振回路の回路図である。
【図10】図8に示すインバータ回路の出力可能周波数と、図9に示すLC共振回路の共振周波数の関係を説明するためのグラフである。
【図11】第4実施形態におけるモータ制御装置のブロック図である。
【図12】図11に示す寄生インダクタンスと浮遊容量によって構成されるLC共振回路の回路図である。
【図13】図11に示すインバータ回路の出力可能周波数と、図12に示すLC共振回路の共振周波数の関係を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態では、本発明に係る電力変換装置を、車両に搭載され、車両駆動用モータを制御するモータ制御装置に適用した例を示す。
【0022】
(第1実施形態)
まず、図1〜図3を参照して第1実施形態のモータ制御装置の構成について説明する。ここで、図1は、第1実施形態におけるモータ制御装置のブロック図である。図2は、図1に示す寄生インダクタンスと浮遊容量によって構成されるLC共振回路の回路図である。図3は、図1に示すインバータ回路の出力可能周波数と、図2に示すLC共振回路の共振周波数の関係を説明するためのグラフである。
【0023】
図1に示す車両駆動用モータM1は、車両を駆動するためのモータである。車両駆動用モータM1は、U相巻線U1、V相巻線V1及びW相巻線W1を備えている。U相巻線U1、V相巻線V1及びW相巻線W1は、インダクタンスLm1を有している。U相巻線U1、V相巻線V1及びW相巻線W1はY結線され、金属からなる筐体(図略)に収容されている。U相巻線U1、V相巻線V1及びW相巻線W1と筐体の間には、絶縁部材(図略)が設けられている。筐体は、車体(基準点)に固定されている。そのため、U相巻線U1、V相巻線V1及びW相巻線W1と車体との間には、それぞれ浮遊容量C10が発生する。
【0024】
モータ制御装置1(電力変換装置)は、高電圧バッテリB1の出力する直流高電圧を3相交流電圧に変換して車両駆動用モータM1に供給し、車両駆動用モータM1を制御する装置である。つまり、直流電力を交流電力に変換して車両駆動用モータM1に供給し、車両駆動用モータM1を制御する装置である。モータ制御装置1は、インバータ回路10を備えている。
【0025】
インバータ回路10は、車両駆動用モータM1に接続され、入力される直流高電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換し、車両駆動用モータM1に供給する回路である。つまり、入力される直流電力を交流電力に変換して車両駆動用モータM1に供給する回路である。インバータ回路10は、金属からなる筐体(図略)に収容されている。インバータ回路10と筐体との間には、絶縁部材(図略)が設けられている。筐体は、車体に固定されている。そのため、インバータ回路10と車体との間には、浮遊容量C11が発生する。
【0026】
インバータ回路10の入力端子は、配線を介して高電圧バッテリB1の両端に接続されている。また、出力端子は、配線を介して車両駆動モータM1のU相巻線U1、V相巻線V1及びW相巻線W1にそれぞれ接続されている。インバータ回路10と車両駆動用モータM1を接続する配線は、寄生インダクタンスL10を有している。
【0027】
寄生インダクタンスL10と、インダクタンスLm1と、浮遊容量C10によって、従来のようにコモンモード電流を抑えるフィルタ回路が構成される。また、図2に示すように、浮遊容量C11と、寄生インダクタンスL10と、インダクタンスLm1と、浮遊容量C10とによって、LC共振回路11が各相毎に構成される。
【0028】
ここで、図3に示すように、LC共振回路11の共振周波数は、インバータ回路10の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL10及び浮遊容量C11の少なくともいずれかが調整されている。具体的には、インバータ回路10の周波数特性において、ゲインが1以上となる最大周波数より高い周波数となるように、寄生インダクタンスL10及び浮遊容量C11の少なくともいずれかが調整されている。より具体的には、インバータ回路10と車両駆動用モータM1を接続する配線の配線長を調整することによって寄生インダクタンスL10が、絶縁部材の誘電率及び絶縁部材の厚さの少なくともいずれかを調整することによって浮遊容量C11が調整されている。
【0029】
次に、図1を参照してモータ制御装置の動作について説明する。車両のイグニッションスイッチ(図略)がオンすると、図1に示すモータ制御装置1が動作を開始する。インバータ回路10は、高電圧バッテリB1から入力される直流高電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換する。そして、車両駆動用モータM1に供給し、車両駆動用モータM1を制御する。
【0030】
インバータ回路10がスイッチングすると、車両駆動用モータM1の相巻線にパルス状の電圧が印加される。電圧が印加されると、車両駆動用モータM1の相巻線にノーマルモード電流が流れる。また、車両駆動用モータM1及びインバータ回路10の浮遊容量C10、C11を介してコモンモード電流が重畳される。コモンモード電流が重畳されると、特定の巻線に電流が集中し電圧が上昇する。その結果、車両駆動用モータM1の相巻線間にサージ電圧が発生する。
【0031】
しかし、寄生インダクタンスL10と、インダクタンスLm1と、浮遊容量C10によって、従来のようにコモンモード電流を抑えるフィルタ回路が構成されている。そのため、コモンモード電流を抑えることができる。
【0032】
ところで、図2に示すように、浮遊容量C11と、寄生インダクタンスL10と、インダクタンスLm1と、浮遊容量C10とによって、LC共振回路11が各相毎に構成される。インバータ回路10の出力がLC共振回路11の共振周波数を含んでいると、その共振周波数においてコモンモード電流が大きくなってしまう。しかし、LC共振回路11の共振周波数は、インバータ回路10の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL10及び浮遊容量C11の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路11の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、車両駆動用モータM1の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0033】
次に、図4を参照して効果について説明する。ここで、図4は、図1に示す車両駆動用モータの相巻線間のサージ電圧のグラフである。
【0034】
第1実施形態によれば、寄生インダクタンスL10と、インダクタンスLm1と、浮遊容量C10を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。また、浮遊容量C10と、寄生インダクタンスL10と、インダクタンスLm1と、浮遊容量C11とによって構成されたLC共振回路11の共振周波数は、インバータ回路10の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL10及び浮遊容量C10、C11の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路11の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、車両に搭載された車両駆動用モータM1に交流電力を供給するモータ制御装置において、図4に示すように、共振回路11の共振周波数が所定周波数範囲内にある場合に比べ、車両駆動用モータM1の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0035】
また、第1実施形態によれば、インバータ回路10と車両駆動用モータM1を接続する配線の配線長を調整することによって寄生インダクタンスL10が調整される。そのため、寄生インダクタンスL10を確実に調整することができる。
【0036】
さらに、第1実施形態によれば、車体との間に設けられた絶縁部材の誘電率及び絶縁部材の厚さの少なくともいずれかを調整することによって浮遊容量C10,C11が調整される。そのため、浮遊容量C10、C11を確実に調整することができる。
【0037】
なお、第1実施形態では、LC共振回路11の共振周波数が、インバータ回路10の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲の最大周波数より高い周波数になる例を挙げているが、これに限られるものではない。所定周波数範囲の最小周波数より低い周波数になるようにしてもよい。この場合、寄生インダクタンスL10や浮遊容量C11を大きくするように調整してやればよい。
【0038】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のモータ制御装置について説明する。第2実施形態のモータ制御装置は、第1実施形態のモータ制御装置に対して、インバータ回路の入力側に昇圧コンバータ回路を追加したものである。第2実施形態のモータ制御装置は、インバータ回路を除いて第1実施形態のモータ制御装置と同一構成である。
【0039】
まず、図5〜図7を参照してモータ制御装置の構成について説明する。ここで、図5は、第2実施形態におけるモータ制御装置のブロック図である。図6は、図5に示す寄生インダクタンスと浮遊容量によって構成されるLC共振回路の回路図である。図7は、図5に示すインバータ回路の出力可能周波数と、図6に示すLC共振回路の共振周波数の関係を説明するためのグラフである。
【0040】
図5に示す車両駆動用モータM2は、第1実施形態の車両駆動用モータM1と同一構成である。U相巻線U2、V相巻線V2及びW相巻線W2は、インダクタンスLm2を有している。U相巻線U2、V相巻線V2及びW相巻線W2と車体(基準点)との間には、それぞれ浮遊容量C20が発生する。
【0041】
モータ制御装置2(電力変換装置)は、低電圧バッテリB2の出力する直流低電圧を昇圧するとともに3相交流電圧に変換して車両駆動用モータM2に供給し、車両駆動用モータM2を制御する装置である。つまり、直流電力を交流電力に変換して車両駆動用モータM2に供給し、車両駆動用モータM2を制御する装置である。モータ制御装置2は、インバータ回路20と、昇圧コンバータ回路21(コンバータ回路)とを備えている。
【0042】
インバータ回路20は、入力側を除いて第1実施形態のインバータ回路10と同一構成である。インバータ回路20と車体との間には、浮遊容量C21が発生する。また、インバータ回路20と車両駆動用モータM2を接続する配線は、寄生インダクタンスL20を有している。
【0043】
昇圧コンバータ回路21は、インバータ回路20に接続され、入力される直流低電圧をスイッチングして直流高電圧に変換し、インバータ回路20に出力する回路である。つまり、入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換してインバータ回路20に出力する回路である。昇圧コンバータ回路21は、金属からなる筐体(図略)に収容されている。昇圧コンバータ回路21と筐体との間には、絶縁部材(図略)が設けられている。筐体は、車体に固定されている。そのため、昇圧コンバータ回路21と車体との間には、浮遊容量C22が発生する。
【0044】
昇圧コンバータ回路21の入力端子は、配線を介して低電圧バッテリB2の両端に接続されている。また、出力端子は、配線を介してインバータ回路20の入力端子に接続されている。昇圧コンバータ回路21とインバータ回路20を接続する配線は、寄生インダクタンスL21を有している。
【0045】
寄生インダクタンスL20と、インダクタンスLm2と、浮遊容量C20によって、従来のようにコモンモード電流を抑えるフィルタ回路が構成される。また、図6に示すように、浮遊容量C21と、寄生インダクタンスL20と、インダクタンスLm2と、浮遊容量C20とによって、LC共振回路22が各相毎に構成される。さらに、浮遊容量C22と、寄生インダクタンスL21、L20と、インダクタンスLm2と、浮遊容量C20とによって、LC共振回路23が各相毎に構成される。
【0046】
ここで、LC共振回路23は、LC共振回路22に比べ浮遊容量及び寄生インダクタンスが大きくなる。そのため、図7に示すように、LC共振回路23の共振周波数は、LC共振回路22の共振周波数より低くなる。
【0047】
LC共振回路22、23の共振周波数は、インバータ回路20の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL20、L21及び浮遊容量C21、C22の少なくともいずれかが調整されている。具体的には、LC共振回路22の共振周波数は、インバータ回路20の周波数特性において、ゲインが1以上となる最大周波数より高い周波数となるように、寄生インダクタンスL20及び浮遊容量C21の少なくともいずれかが調整されている。また、LC共振回路23の共振周波数は、インバータ回路20の周波数特性において、ゲインが1以上となる最小周波数より低い周波数となるように、寄生インダクタンスL20、L21及び浮遊容量C22の少なくともいずれかが調整されている。より具体的には、インバータ回路20と車両駆動用モータM2を接続する配線の配線長、及び、昇圧コンバータ回路21とインバータ回路20を接続する配線の配線長を調整することによって寄生インダクタンスL20、L21が調整されている。また、絶縁部材の誘電率及び絶縁部材の厚さの少なくともいずれかを調整することによって浮遊容量C21、C22が調整されている。
【0048】
次に、図5を参照してモータ制御装置の動作について説明する。車両のイグニッションスイッチ(図略)がオンすると、図5に示すモータ制御装置2が動作を開始する。昇圧コンバータ回路21は、低電圧バッテリB2から入力される直流低電圧をスイッチングして直流高電圧に変換し出力する。インバータ回路20は、昇圧コンバータ回路21から入力される直流高電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換する。そして、車両駆動用モータM2に供給し、車両駆動用モータM2を制御する。
【0049】
インバータ回路20がスイッチングすると、第1実施形態の場合と同様に、車両駆動用モータM2の相巻線間にサージ電圧が発生する。
【0050】
しかし、寄生インダクタンスL20と、インダクタンスLm2と、浮遊容量C20によって、従来のようにコモンモード電流を抑えるフィルタ回路が構成されている。そのため、コモンモード電流を抑えることができる。
【0051】
ところで、図6に示すように、浮遊容量C21と、寄生インダクタンスL20と、インダクタンスLm2と、浮遊容量C20とによって、LC共振回路22が各相毎に構成される。また、浮遊容量C22と、寄生インダクタンスL21、L20と、インダクタンスLm2と、浮遊容量C20とによって、LC共振回路23が各相毎に構成される。インバータ回路20の出力がLC共振回路22、23の共振周波数を含んでいると、その共振周波数においてコモンモード電流が大きくなってしまう。しかし、LC共振回路22、23の共振周波数は、インバータ回路20の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL20、L21及び浮遊容量C21、C22の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路22、23の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、車両駆動用モータM2の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0052】
次に、効果について説明する。第2実施形態によれば、寄生インダクタンスL20と、インダクタンスLm2と、浮遊容量C20を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。また、LC共振回路22、23の共振周波数は、インバータ回路20の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL20、L21及び浮遊容量C21、C22の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路22、23の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、車両駆動用モータM2の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0053】
なお、第2実施形態では、LC共振回路22、23の共振周波数が、ともに、インバータ回路20の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数になるように調整されている例を挙げているが、これに限られるものではない。LC共振回路22、23の共振周波数の少なくともいずれかが、所定周波数範囲以外の周波数になるように調整されていればよい。LC共振回路の共振によるコモンモード電流の増大を抑えられるので、車両駆動用モータM2の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態のモータ制御装置について説明する。第3実施形態のモータ制御装置は、第2実施形態のモータ制御装置に対して、昇圧コンバータ回路の入力側にインバータ回路を追加したものである。第3実施形態のモータ制御装置は、追加したインバータ回路を除いて第2実施形態のモータ制御装置と同一構成である。
【0055】
まず、図8〜図10を参照してモータ制御装置の構成について説明する。ここで、図8は、第3実施形態におけるモータ制御装置のブロック図である。図9は、図8に示す寄生インダクタンスと浮遊容量によって構成されるLC共振回路の回路図である。図10は、図8に示すインバータ回路の出力可能周波数と、図9に示すLC共振回路の共振周波数の関係を説明するためのグラフである。
【0056】
図8に示す車両駆動用モータM3は、第2実施形態の車両駆動用モータM2と同一構成である。U相巻線U3、V相巻線V3及びW相巻線W3は、インダクタンスLm3を有している。U相巻線U3、V相巻線V3及びW相巻線W3と車体(基準点)との間には、それぞれ浮遊容量C30が発生する。
【0057】
モータ制御装置3(電力変換装置)は、低電圧バッテリB3の出力する直流低電圧を昇圧するとともに3相交流電圧に変換して車両駆動用モータM3に供給し、車両駆動用モータM3を制御する装置である。また、低電圧バッテリB3の出力する直流低電圧を3相交流電圧に変換して負荷LD3に供給する装置でもある。つまり、直流電力を交流電力に変換し、車両駆動用モータM3に供給して車両駆動用モータM3を制御するとともに、負荷LD3に供給する装置である。モータ制御装置3は、インバータ回路30と、昇圧コンバータ回路31(コンバータ回路)と、インバータ回路32(電力変換回路)とを備えている。
【0058】
インバータ回路30は、第2実施形態のインバータ回路20と同一構成である。インバータ回路30と車体との間には、浮遊容量C31が発生する。また、インバータ回路30と車両駆動用モータM3を接続する配線は、寄生インダクタンスL30を有している。
【0059】
昇圧コンバータ回路31は、第2実施形態の昇圧コンバータ回路21と同一構成である。昇圧コンバータ回路31と車体との間には、浮遊容量C32が発生する。また、昇圧コンバータ回路31とインバータ回路30を接続する配線は、寄生インダクタンスL31を有している。
【0060】
インバータ回路32は、昇圧コンバータ回路31の入力側に接続され、入力される直流低電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換し、負荷LD3に供給する回路である。つまり、入力される直流電力を交流電力に変換して負荷LD3に供給する回路である。インバータ回路32は、金属からなる筐体(図略)に収容されている。インバータ回路32と筐体との間には、絶縁部材(図略)が設けられている。筐体は、車体に固定されている。そのため、インバータ回路32と車体との間には、浮遊容量C33が発生する。
【0061】
インバータ回路32の入力端子は、配線を介して昇圧コンバータ回路31の入力端子に接続されている。また、出力端子は、配線を介して負荷LD3に接続されている。インバータ回路32と昇圧コンバータ回路31を接続する配線は、寄生インダクタンスL32を有している。
【0062】
寄生インダクタンスL30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30によって、従来のようにコモンモード電流を抑えるフィルタ回路が構成される。また、図9に示すように、浮遊容量C31と、寄生インダクタンスL30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30とによって、LC共振回路33が各相毎に構成される。さらに、浮遊容量C32と、寄生インダクタンスL31、L30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30とによって、LC共振回路34が各相毎に構成される。加えて、浮遊容量C33と、寄生インダクタンスL32、L31、L30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30とによって、LC共振回路35が各相毎に構成される。
【0063】
ここで、LC共振回路34は、LC共振回路33に比べ浮遊容量及び寄生インダクタンスが大きくなる。そのため、図10に示すように、LC共振回路34の共振周波数は、LC共振回路33の共振周波数より低くなる。また、LC共振回路35は、LC共振回路34に比べ浮遊容量及び寄生インダクタンスが大きくなる。そのため、LC共振回路35の共振周波数は、LC共振回路34の共振周波数より低くなる。
【0064】
LC共振回路33、34、35の共振周波数は、インバータ回路30の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL30〜L32及び浮遊容量C31〜C33の少なくともいずれかが調整されている。具体的には、LC共振回路33の共振周波数は、インバータ回路30の周波数特性において、ゲインが1以上となる最大周波数より高い周波数となるように、寄生インダクタンスL30及び浮遊容量C31の少なくともいずれかが調整されている。また、LC共振回路34の共振周波数は、インバータ回路30の周波数特性において、ゲインが1以上となる最小周波数より低い周波数となるように、寄生インダクタンスL30、L31及び浮遊容量C32の少なくともいずれかが調整されている。さらに、LC共振回路35の共振周波数は、インバータ回路30の周波数特性において、ゲインが1以上となる最小周波数より低い周波数となるように、寄生インダクタンスL30〜L32及び浮遊容量C33の少なくともいずれかが調整されている。より具体的には、インバータ回路30と車両駆動用モータM3を接続する配線の配線長、昇圧コンバータ回路31とインバータ回路30を接続する配線の配線長、及び、インバータ回路32と昇圧コンバータ回路31を接続する配線の配線長を調整することによって寄生インダクタンスL30〜L32が調整されている。また、絶縁部材の誘電率及び絶縁部材の厚さの少なくともいずれかを調整することによって浮遊容量C31〜C33が調整されている。
【0065】
次に、図8を参照してモータ制御装置の動作について説明する。車両のイグニッションスイッチ(図略)がオンすると、図8に示すモータ制御装置3が動作を開始する。昇圧コンバータ回路31は、低電圧バッテリB3から入力される直流低電圧をスイッチングして直流高電圧に変換し出力する。インバータ回路30は、昇圧コンバータ回路31から入力される直流高電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換する。そして、車両駆動用モータM3に供給し、車両駆動用モータM3を制御する。また、インバータ回路32は、低電圧バッテリB3から入力される直流低電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換する。そして、負荷LD3に供給する。
【0066】
インバータ回路30がスイッチングすると、第2実施形態の場合と同様に、車両駆動用モータM3の相巻線間にサージ電圧が発生する。
【0067】
しかし、寄生インダクタンスL30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30によって、従来のようにコモンモード電流を抑えるフィルタ回路が構成されている。そのため、コモンモード電流を抑えることができる。
【0068】
ところで、図9に示すように、浮遊容量C31と、寄生インダクタンスL30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30とによって、LC共振回路33が各相毎に構成される。また、浮遊容量C32と、寄生インダクタンスL31、L30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30とによって、LC共振回路34が各相毎に構成される。さらに、浮遊容量C33と、寄生インダクタンスL32、L31、L30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30とによって、LC共振回路35が各相毎に構成される。インバータ回路30の出力がLC共振回路33〜35の共振周波数を含んでいると、その共振周波数においてコモンモード電流が大きくなってしまう。しかし、LC共振回路33〜35の共振周波数は、インバータ回路30の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL30〜L32及び浮遊容量C31〜C33の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路33〜35の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、車両駆動用モータM3の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0069】
次に、効果について説明する。第3実施形態によれば、寄生インダクタンスL30と、インダクタンスLm3と、浮遊容量C30を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。また、LC共振回路33〜35の共振周波数は、インバータ回路30の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL30〜L32及び浮遊容量C31〜C33の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路33〜35の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、車両駆動用モータM3の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0070】
なお、第3実施形態では、LC共振回路33〜35の共振周波数が、ともに、インバータ回路30の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数になるように調整されている例を挙げているが、これに限られるものではない。LC共振回路33〜35の共振周波数の少なくともいずれかが、所定周波数範囲以外の周波数になるように調整されていてればよい。LC共振回路の共振によるコモンモード電流の増大を抑えられるので、車両駆動用モータM3の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0071】
また、第3実施形態では、昇圧コンバータ回路31の入力側に接続される回路が、インバータ回路32である例を挙げているが、これに限られるものではない。入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換するコンバータ回路であってもよい。入力される直流電力を変換して出力する電力変換回路であればよい。
【0072】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態のモータ制御装置について説明する。第4実施形態のモータ制御装置は、第2実施形態のモータ制御装置に対して、昇圧コンバータ回路の出力側にインバータ回路を追加したものである。第4実施形態のモータ制御装置は、追加したインバータ回路を除いて第2実施形態のモータ制御装置と同一構成である。
【0073】
まず、図11〜図13を参照してモータ制御装置の構成について説明する。ここで、図11は、第4実施形態におけるモータ制御装置のブロック図である。図12は、図11に示す寄生インダクタンスと浮遊容量によって構成されるLC共振回路の回路図である。図13は、図11に示すインバータ回路の出力可能周波数と、図12に示すLC共振回路の共振周波数の関係を説明するためのグラフである。
【0074】
図11に示す車両駆動用モータM40は、第2実施形態の車両駆動用モータM2と同一構成である。U相巻線U40、V相巻線V40及びW相巻線W40は、インダクタンスLm40を有している。U相巻線U40、V相巻線V40及びW相巻線W40と車体(基準点)との間には、それぞれ浮遊容量C40が発生する。
【0075】
車両駆動用モータM41は、車両駆動用モータM40と同一構成のモータである。車両駆動用モータM41は、U相巻線U41、V相巻線V41及びW相巻線W41を備えている。U相巻線U41、V相巻線V41及びW相巻線W41は、Y結線されている。
【0076】
モータ制御装置4(電力変換装置)は、低電圧バッテリB4の出力する直流低電圧を昇圧するとともに3相交流電圧に変換して車両駆動用モータM40に供給し、車両駆動用モータM40を制御する装置である。また、昇圧した直流高電圧を3相交流電圧に変換して車両駆動用モータM41に供給し、車両駆動用モータM41を制御する装置でもある。つまり、直流電力を交流電力に変換し、車両駆動用モータM40、M41に供給して車両駆動用モータM40、M41を制御する装置である。モータ制御装置4は、インバータ回路40と、昇圧コンバータ回路41(コンバータ回路)と、インバータ回路42(電力変換回路)とを備えている。
【0077】
インバータ回路40は、第2実施形態のインバータ回路20と同一構成である。インバータ回路40と車体との間には、浮遊容量C41が発生する。また、インバータ回路40と車両駆動用モータM40を接続する配線は、寄生インダクタンスL40を有している。
【0078】
昇圧コンバータ回路41は、第2実施形態の昇圧コンバータ回路21と同一構成である。昇圧コンバータ回路41と車体との間には、浮遊容量C42が発生する。また、昇圧コンバータ回路41とインバータ回路40を接続する配線は、寄生インダクタンスL41を有している。
【0079】
インバータ回路42は、昇圧コンバータ回路41の出力側に接続され、入力される直流高電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換し、車両駆動用モータM41に供給する回路である。つまり、入力される直流電力を交流電力に変換して車両駆動用モータM41に供給する回路である。インバータ回路42は、金属からなる筐体(図略)に収容されている。インバータ回路42と筐体との間には、絶縁部材(図略)が設けられている。筐体は、車体に固定されている。そのため、インバータ回路42と車体との間には、浮遊容量C43が発生する。
【0080】
インバータ回路42の入力端子は、配線を介して昇圧コンバータ回路41の出力端子に接続されている。また、出力端子は、配線を介して車両駆動モータM41のU相巻線U41、V相巻線V41及びW相巻線W41にそれぞれ接続されている。インバータ回路42と昇圧コンバータ回路41を接続する配線は、寄生インダクタンスL42を有している。
【0081】
寄生インダクタンスL40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40によって、従来のようにコモンモード電流を抑えるフィルタ回路が構成される。また、図12に示すように、浮遊容量C41と、寄生インダクタンスL40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40とによって、LC共振回路43が各相毎に構成される。さらに、浮遊容量C42と、寄生インダクタンスL41、L40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40とによって、LC共振回路44が各相毎に構成される。加えて、浮遊容量C43と、寄生インダクタンスL42、L41、L40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40とによって、LC共振回路45が各相毎に構成される。
【0082】
ここで、LC共振回路34は、LC共振回路43に比べ浮遊容量及び寄生インダクタンスが大きくなる。そのため、図13に示すように、LC共振回路44の共振周波数は、LC共振回路43の共振周波数より低くなる。また、LC共振回路45は、LC共振回路44に比べ浮遊容量及び寄生インダクタンスが大きくなる。そのため、LC共振回路45の共振周波数は、LC共振回路44の共振周波数より低くなる。
【0083】
LC共振回路43、44、45の共振周波数は、インバータ回路40の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL40〜L42及び浮遊容量C41〜C43の少なくともいずれかが調整されている。具体的には、LC共振回路43の共振周波数は、インバータ回路40の周波数特性において、ゲインが1以上となる最大周波数より高い周波数となるように、寄生インダクタンスL40及び浮遊容量C41の少なくともいずれかが調整されている。また、LC共振回路44の共振周波数は、インバータ回路40の周波数特性において、ゲインが1以上となる最小周波数より低い周波数となるように、寄生インダクタンスL40、L41及び浮遊容量C42の少なくともいずれかが調整されている。さらに、LC共振回路45の共振周波数は、インバータ回路40の周波数特性において、ゲインが1以上となる最小周波数より低い周波数となるように、寄生インダクタンスL40〜L42及び浮遊容量C43の少なくともいずれかが調整されている。より具体的には、インバータ回路40と車両駆動用モータM40を接続する配線の配線長、昇圧コンバータ回路41とインバータ回路40を接続する配線の配線長、及び、インバータ回路42と昇圧コンバータ回路41を接続する配線の配線長を調整することによって寄生インダクタンスL40〜L42が調整されている。また、絶縁部材の誘電率及び絶縁部材の厚さの少なくともいずれかを調整することによって浮遊容量C41〜C43が調整されている。
【0084】
次に、図11を参照してモータ制御装置の動作について説明する。車両のイグニッションスイッチ(図略)がオンすると、図11に示すモータ制御装置4が動作を開始する。昇圧コンバータ回路41は、低電圧バッテリB4から入力される直流低電圧をスイッチングして直流高電圧に変換し出力する。インバータ回路40は、昇圧コンバータ回路41から入力される直流高電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換する。そして、車両駆動用モータM40に供給し、車両駆動用モータM40を制御する。また、インバータ回路42も、昇圧コンバータ回路41から入力される直流高電圧をスイッチングして3相交流電圧に変換する。そして、車両駆動用モータM41に供給し、車両駆動用モータM41を制御する。
【0085】
インバータ回路40がスイッチングすると、第2実施形態の場合と同様に、車両駆動用モータM40の相巻線間にサージ電圧が発生する。
【0086】
しかし、寄生インダクタンスL40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40によって、従来のようにコモンモード電流を抑えるフィルタ回路が構成されている。そのため、コモンモード電流を抑えることができる。
【0087】
ところで、図12に示すように、浮遊容量C41と、寄生インダクタンスL40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40とによって、LC共振回路43が各相毎に構成される。また、浮遊容量C42と、寄生インダクタンスL41、L40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40とによって、LC共振回路44が各相毎に構成される。さらに、浮遊容量C43と、寄生インダクタンスL42、L41、L40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40とによって、LC共振回路45が各相毎に構成される。インバータ回路40の出力がLC共振回路43〜45の共振周波数を含んでいると、その共振周波数においてコモンモード電流が大きくなってしまう。しかし、LC共振回路43〜45の共振周波数は、インバータ回路40の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL40〜L42及び浮遊容量C41〜C43の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路43〜45の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、車両駆動用モータM40の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0088】
次に、効果について説明する。第4実施形態によれば、寄生インダクタンスL40と、インダクタンスLm40と、浮遊容量C40を利用して、従来のようなフィルタ回路を構成する。そのため、新たな部品を追加することなくコモンモード電流を抑えることができる。また、LC共振回路43〜45の共振周波数は、インバータ回路40の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、寄生インダクタンスL40〜L42及び浮遊容量C41〜C43の少なくともいずれかが調整されている。そのため、LC共振回路43〜45の共振によるコモンモード電流の増大を抑えることができる。従って、車両駆動用モータM40の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0089】
なお、第4実施形態では、LC共振回路43〜45の共振周波数が、ともに、インバータ回路40の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数になるように調整されている例を挙げているが、これに限られるものではない。LC共振回路43〜45の共振周波数の少なくともいずれかが、所定周波数範囲以外の周波数になるように調整されていてればよい。LC共振回路の共振によるコモンモード電流の増大を抑えられるので、車両駆動用モータM40の相巻線間のサージ電圧を抑えることができる。
【0090】
また、第4実施形態では、昇圧コンバータ回路41の出力側に接続される回路が、インバータ回路42である例を挙げているが、これに限られるものではない。入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換するコンバータ回路であってもよい。入力される直流電力を変換して出力する電力変換回路であればよい。
【符号の説明】
【0091】
1〜4・・・モータ制御装置(電力変換回路)、10、20、30、40・・・インバータ回路、21、31、41・・・昇圧コンバータ回路(コンバータ回路)、32、42・・・インバータ回路(電力変換回路)、C10、C11、C20〜C22、C30〜C33、C40〜C43・・・浮遊容量、L10、L20、L21、L30〜L32、L40〜L42・・・寄生インダクタンス、Lm1〜Lm3、Lm40・・・相巻線のインダクタンス、11、22、23、33、34、35、43、44、45・・・LC共振回路、B1・・・高電圧バッテリ、B2〜B4・・・低電圧バッテリ、M1〜M3、M40、M41・・・車両駆動用モータ、U1〜U3、U40、U41・・・U相巻線、V1〜V3、V40、V41・・・V相巻線、W1〜W3、W40、W41・・・W相巻線、LD3・・・負荷
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに接続され、入力される直流電力を交流電力に変換して前記モータに供給するインバータ回路を備えた電力変換装置において、
前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記インバータ回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数が、前記インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、前記寄生インダクタンス及び前記浮遊容量の少なくともいずれかが調整されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
モータに接続され、入力される直流電力を交流電力に変換して前記モータに供給するインバータ回路と、
前記インバータ回路に接続され、入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換して前記インバータ回路に出力するコンバータ回路と、
を備えた電力変換装置において、
前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記インバータ回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、並びに、前記コンバータ回路と前記インバータ回路を接続する配線及び前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記コンバータ回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかが、前記インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、前記寄生インダクタンス及び前記浮遊容量の少なくともいずれかが調整されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
モータに接続され、入力される直流電力を交流電力に変換して前記モータに供給するインバータ回路と、
前記インバータ回路に接続され、入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換して前記インバータ回路に出力するコンバータ回路と、
前記コンバータ回路の入力側に接続され、入力される直流電力を変換して出力する電力変換回路と、
を備えた電力変換装置において、
前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記インバータ回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、前記コンバータ回路と前記インバータ回路を接続する配線及び前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記コンバータ回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、並びに、前記電力変換回路と前記コンバータ回路を接続する配線、前記コンバータ回路と前記インバータ回路を接続する配線及び前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記電力変換回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかが、前記インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、前記寄生インダクタンス及び前記浮遊容量の少なくともいずれかが調整されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
モータに接続され、入力される直流電力を交流電力に変換して前記モータに供給するインバータ回路と、
前記インバータ回路に接続され、入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換して前記インバータ回路に出力するコンバータ回路と、
前記コンバータ回路の出力側に接続され、入力される直流電力を変換して出力する電力変換回路と、
を備えた電力変換装置において、
前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記インバータ回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、前記コンバータ回路と前記インバータ回路を接続する配線及び前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記コンバータ回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、並びに、前記電力変換回路と前記インバータ回路を接続する配線及び前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記電力変換回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかが、前記インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、前記寄生インダクタンス及び前記浮遊容量の少なくともいずれかが調整されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
配線長を調整することによって前記寄生インダクタンスを調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
基準点との間に絶縁部材を設け、前記絶縁部材の誘電率及び前記絶縁部材の厚さの少なくともいずれかを調整することによって前記浮遊容量を調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
車両に搭載されたモータに交流電力を供給することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項1】
モータに接続され、入力される直流電力を交流電力に変換して前記モータに供給するインバータ回路を備えた電力変換装置において、
前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記インバータ回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数が、前記インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、前記寄生インダクタンス及び前記浮遊容量の少なくともいずれかが調整されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
モータに接続され、入力される直流電力を交流電力に変換して前記モータに供給するインバータ回路と、
前記インバータ回路に接続され、入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換して前記インバータ回路に出力するコンバータ回路と、
を備えた電力変換装置において、
前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記インバータ回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、並びに、前記コンバータ回路と前記インバータ回路を接続する配線及び前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記コンバータ回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかが、前記インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、前記寄生インダクタンス及び前記浮遊容量の少なくともいずれかが調整されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
モータに接続され、入力される直流電力を交流電力に変換して前記モータに供給するインバータ回路と、
前記インバータ回路に接続され、入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換して前記インバータ回路に出力するコンバータ回路と、
前記コンバータ回路の入力側に接続され、入力される直流電力を変換して出力する電力変換回路と、
を備えた電力変換装置において、
前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記インバータ回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、前記コンバータ回路と前記インバータ回路を接続する配線及び前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記コンバータ回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、並びに、前記電力変換回路と前記コンバータ回路を接続する配線、前記コンバータ回路と前記インバータ回路を接続する配線及び前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記電力変換回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかが、前記インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、前記寄生インダクタンス及び前記浮遊容量の少なくともいずれかが調整されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
モータに接続され、入力される直流電力を交流電力に変換して前記モータに供給するインバータ回路と、
前記インバータ回路に接続され、入力される直流電力を電圧の異なる直流電力に変換して前記インバータ回路に出力するコンバータ回路と、
前記コンバータ回路の出力側に接続され、入力される直流電力を変換して出力する電力変換回路と、
を備えた電力変換装置において、
前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記インバータ回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、前記コンバータ回路と前記インバータ回路を接続する配線及び前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記コンバータ回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数、並びに、前記電力変換回路と前記インバータ回路を接続する配線及び前記インバータ回路と前記モータを接続する配線の寄生インダクタンスと、前記モータの巻線のインダクタンスと、前記電力変換回路の浮遊容量と、前記モータの浮遊容量とによって構成されるLC共振回路の共振周波数の少なくともいずれかが、前記インバータ回路の出力可能な周波数のうち、所定周波数範囲以外の周波数となるように、前記寄生インダクタンス及び前記浮遊容量の少なくともいずれかが調整されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
配線長を調整することによって前記寄生インダクタンスを調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
基準点との間に絶縁部材を設け、前記絶縁部材の誘電率及び前記絶縁部材の厚さの少なくともいずれかを調整することによって前記浮遊容量を調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
車両に搭載されたモータに交流電力を供給することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−21837(P2013−21837A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154053(P2011−154053)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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