説明

電動アクチュエータ

【課題】終点に移動した移動体を被押し当て体に押し当てることができ、被押し当て体のクランプ又は被圧入体への圧入を可能にした電動アクチュエータを提供する。
【解決手段】電動アクチュエータ11は、スライダ13の位置情報を検出するエンコーダ20と、スライダ13の速度調節器42a,42bと、スライダ13の移動距離を学習する学習部と、学習部を動作させるための操作釦44a,44bと、電動モータMに駆動信号を出力する制御部30と、スライダ13の推力調節器43とを有する。電動アクチュエータ11の制御部30は、スライダ13を終点に位置させた後、推力調節器43の操作に応じて設定された推力に基づき電動モータMに駆動信号を出力して、スライダ13に推力を発生させてスライダ13をワークに押し当てる。その結果、挟持体と電動アクチュエータ11のスライダ13とでワークをクランプすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータの駆動力により移動体を移動させる電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワーク等を搬送する手段として、電動アクチュエータが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の電動アクチュエータは、ワーク等を移動又は搬送させるために直線移動するスライダと、駆動軸を含むモータと、駆動軸に嵌入されたギア部を介してモータの駆動力をスライダに伝達するタイミングベルトを有する。さらに、電動アクチュエータは、スライダの始点と終点の相対的停止位置を調節するストッパボルトをそれぞれ含む一対のストッパと、スライダの移動の制御を含み電動アクチュエータを統合して制御する制御盤とを有する。
【0003】
また、電動アクチュエータは、スライダの位置情報を検出するエンコーダと、スライダの等速移動の速度を設定するための速度調節器と、スライダの加速度移動の加速度を設定するための加速度調節器とを有する。さらに、制御盤は、スライダの移動距離を学習する学習部を有するとともに、この学習部を動作させるための学習動作用操作子を有する。
【0004】
そして、特許文献1の電動アクチュエータによれば、スライダの始点と終点の停止位置をストッパの位置調節により設定して、学習動作用操作子の操作に応じた制御盤の指令によりスライダの移動距離を学習させる。また、速度調節器及び加速度調節器によりスライダの速度及び加速度を設定する。すると、制御盤は、エンコーダからの位置情報と、設定されたスライダの等速移動の速度条件及び加速度移動の加速度条件と、学習された移動距離とに基づきモータに駆動信号を出力して、スライダを移動させる。その結果、スライダが始点又は終点に近づくと、制御盤は、スライダを等速移動の速度より低い速度に制御してスライダを始点又は終点に当接させて始点又は終点に位置させるようになっている。
【0005】
また、電動アクチュエータとしては、特許文献1に開示のように、スライダを直線移動させてワーク等を搬送又は移動させるものの他に、ワークを支持した回転テーブルを回転させてワーク等を移動又は搬送させるものもある。
【特許文献1】特開2004−54789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示のような電動アクチュエータは、スライダに支持したワーク等を始点から終点へ搬送又は移動させることを目的としたものである。よって、特許文献1には、電動アクチュエータのスライダをワーク(被押し当て体)に押し当てて、電動アクチュエータを用いてワークをクランプすること、又はスライダをワーク(被押し当て体)に押し当てて、電動アクチュエータを用いてワークを被圧入体へ圧入させることについては何ら開示も示唆もされていない。また、回転テーブルを備えた電動アクチュエータにおいても、回転テーブルに支持したワーク等を始点から終点へ搬送又は移動させることを目的としたものである。
【0007】
本発明は、終点に移動した移動体を被押し当て体に押し当てることができ、被押し当て体のクランプ又は被圧入体への圧入を可能にした電動アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、電動モータの駆動力により移動する移動体と、前記移動体を支持するアクチュエータ本体と、前記移動体の始点と終点との間の位置情報を検出する位置情報検出器と、前記移動体の速度を設定するための速度調節器と、前記移動体の前記始点と前記終点間における移動距離を学習する学習部と、前記学習部を動作させるための学習動作用操作子と、前記電動モータを制御する制御部と、前記移動体に推力を発生させる推力調節器と、を有し、前記学習動作用操作子の操作に応じて前記学習部が前記移動体の移動距離を学習し、前記制御部が、前記位置情報検出器からの位置情報、前記速度調節器により設定された速度、及び前記学習部により学習された前記移動距離に基づき前記電動モータに駆動信号を出力して、前記移動体を前記始点と終点の間を移動させるようにし、さらに、前記制御部が、前記推力調節器の操作に応じて設定された推力に基づき前記電動モータに駆動信号を出力して、前記移動体に推力を発生させるようにしたことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動アクチュエータにおいて、前記電動モータの温度を検出する温度検出器を有するとともに、前記推力を連続発生させた状態において前記温度検出器の検出結果に基づき前記電動モータが温度異常と判定された時に該温度異常を使用者に報知する報知部を有することを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電動アクチュエータにおいて、前記移動体は、前記電動モータの駆動力によって前記アクチュエータ本体上を直線移動するスライダであることを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電動アクチュエータにおいて、前記移動体は、前記電動モータの駆動力によって前記アクチュエータ本体上を回転する回転テーブル及び該回転テーブルに一体回転可能に設けられたクランプアームであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、終点に移動した移動体を被押し当て体に押し当てることができ、被押し当て体のクランプ又は被圧入体への圧入を可能にした電動アクチュエータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の電動アクチュエータを具体化した一実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。なお、以下の説明において電動アクチュエータの「前」及び「後」は、図1及び図6に示す矢印Y1の方向を前後方向とし、「上」及び「下」は、図1及び図6に示す矢印Y2の方向を上下方向とする。
【0014】
図1に示すように、電動アクチュエータ11は、矩形板状をなすアクチュエータ本体12を有するとともに、図6に示すように、アクチュエータ本体12の上面には、アクチュエータ本体12の前後方向(軸方向)に沿って直線状に延びるガイドレール12aが形成されている。そして、ガイドレール12aには移動体としてのスライダ13が摺動可能に取り付けられるとともに、スライダ13はガイドレール12aによってアクチュエータ本体12の前後方向(軸方向)へ直線移動可能に支持されている。
【0015】
また、アクチュエータ本体12には、一対のロッド14がアクチュエータ本体12の前後方向(軸方向)に沿って移動可能に収容されるとともに、一対のロッド14はアクチュエータ本体12の前端(一端)から出没可能に設けられている。各ロッド14の前端(先端)には、スライダエンドプレート15が接合されるとともに、このスライダエンドプレート15にはスライダ13の前端が接合されている。よって、アクチュエータ本体12からロッド14が突出することにより、スライダエンドプレート15を介してスライダ13が前方へ移動(前進)するようになっている。一方、アクチュエータ本体12にロッド14が没入することにより、スライダエンドプレート15を介してスライダ13が後方へ移動(後進)するようになっている。
【0016】
アクチュエータ本体12の後端(他端)にはアダプタケース16の前端が接合されている。そして、スライダ13は、アクチュエータ本体12内に設けられた移動規制部材によってロッド14の移動距離が規制されるようになっている。なお、ロッド14がアクチュエータ本体12内で移動規制部材に当接した位置がスライダ13の始点となっている。
【0017】
図1に示すように、アダプタケース16の後端にはモータハウジングプレート17が接合されている。このモータハウジングプレート17の後端には、前後に開口するモータケース18の前端(一端)が接合されるとともに、モータケース18の前側の開口がモータハウジングプレート17によって閉鎖されている。さらに、モータケース18の後端にはエンドプレート19が接合されるとともに、モータケース18の後側の開口がエンドプレート19によって閉鎖されている。
【0018】
モータハウジングプレート17、モータケース18、及びエンドプレート19によって囲まれる空間内には、スライダ13の位置情報を検出するための位置情報検出器であるエンコーダ20を含む電動モータM(ステッピングモータ)が収容されるとともに、電動モータMの駆動を制御する制御部30が収容されている。電動モータMの駆動力は、駆動力伝達手段としてのボールねじ32(図2参照)によってロッド14の前後方向への直線運動に変換され、スライダ13を直線移動させるようになっている。
【0019】
図2に示すように、制御部30は、電動アクチュエータ11が搭載される装置等を統合して制御するための上位制御装置31(プログラマブルロジックコントローラ、所謂PLC)に接続されるとともに、制御部30及び電動モータMを駆動させるための電源Pに接続されている。また、制御部30は、電動アクチュエータ11内における制御、比較、判定等の各機能を有し、これらを統合して処理するためのCPU40を有する。また、制御部30は、図示しないが、コンバータと、電動モータMを駆動させるためにCPU40から出力される駆動信号を増幅する駆動回路部とを有する。
【0020】
制御部30にはエンコーダ20が電気的に接続されているとともに、制御部30はエンコーダ20からの位置情報に基づきスライダ13の位置を推定する。また、制御部30には、電動モータMの温度を検出するための温度検出器としての温度センサ41が電気的に接続されている。制御部30には、使用者によって操作される速度調節器42a,42b及び推力調節器43が電気的に接続されている。速度調節器42a,42bは、スライダ13の移動条件である速度及び加速度を設定するためのものであり、電動モータMに出力する駆動信号の出力パルス間隔を制御して電動モータMの回転数を制御するものである。また、推力調節器43は、スライダ13を被押し当て体としてのワークW(図6参照)に押し当てるための推力を設定するためのものであり、電動モータMに出力される駆動信号の出力パルスの大きさを制御して電動モータMのトルクを制御するものである。
【0021】
制御部30には、スライダ13の移動距離を学習させるために、スライダ13を所定の速度で移動させる学習動作用操作子としての操作釦44a,44bが電気的に接続されている。さらに、制御部30には、電動アクチュエータ11の動作状態、及び電動モータMの異常を使用者に報知(表示)するためのLED45が電気的に接続されている。なお、LED45は、制御部30の電源が投入されているときに表示する電源表示と、電動モータMの異常が発生したときに表示する警報表示とを有する。制御部30は、タイマ48を有する。このタイマ48は、スライダ13に推力を発生させた時点からの経過時間を計測する。すなわち、タイマ48は、推力の連続発生時間を計測する。
【0022】
制御部30は、記憶部47を有し、この記憶部47は速度調節器42a,42b及び推力調節器43から入力された設定条件等を記憶する。また、記憶部47は、操作釦44a,44bによってスライダ13を移動(前進及び後進)させた際に、エンコーダ20によって検出されたスライダ13の移動距離を記憶する。そして、本実施形態では制御部30と記憶部47とにより学習部が構成されている。
【0023】
また、制御部30は、温度センサ41から出力される温度情報に基づいて、電動モータMの温度を推定し、その推定された電動モータMの温度に基づいて電動モータMの駆動制御を行う。記憶部47には、温度センサ41からの温度情報と電動モータMの温度とを関連付けたマップが記憶されている。そして、このマップに基づいて制御部30は電動モータMの温度を推定する。また、記憶部47には、推定された電動モータMの温度と比較される温度の閾値が、情報として記憶されている。この温度の閾値は、電動モータMが焼け付く虞がある温度より遙かに低い値に設定されている。
【0024】
また、制御部30は、タイマ48から出力される時間情報に基づいて電動モータMの駆動制御を行う。記憶部47には、時間情報と比較される時間の閾値が情報として記憶されている。この時間の閾値は、推力を連続発生させたときに電動モータMが焼き付く虞がある時間より遙かに短い値に設定されている。
【0025】
そして、記憶部47には、電動アクチュエータ11を駆動制御するための駆動制御プログラム等の各種プログラムが記憶され、制御部30は駆動制御プログラム等に基づいて電動アクチュエータ11を駆動制御する。
【0026】
図3に示すように、速度調節器42a,42b、及び推力調節器43それぞれはエンドプレート19の操作面19aに露出する操作部を備えるとともに、各操作部それぞれは一般的なボリュームから構成されている。また、操作面19aには、前進用の速度調節器42aの操作部と、後進用の速度調節器42bの操作部が設けられている。操作釦44a,44bはエンドプレート19の操作面19aに露出する操作部を備えるとともに、各操作部それぞれは押しボタンから構成されている。なお、操作面19aには、前進用の操作釦44aの操作部と、後進用の操作釦44bの操作部が設けられている。
【0027】
そして、上記構成の電動アクチュエータ11は、図6に示すように、スライダ13の先端を被押し当て体としてのワークWに押し当てるとともに、このワークWを挟持体Kに押し当て、スライダ13と挟持体KとでワークWをクランプするために用いられる。
【0028】
次に、電動アクチュエータ11を用いてワークWをクランプするために行われる使用者による各条件の設定について説明する。
まず、電動アクチュエータ11の電源Pを投入し、スライダ13を始点に位置させる。そして、図4に示すように、スライダ13の移動距離を設定するとともに、その移動距離を学習部に学習させる(ステップS1)。なお、スライダ13の移動距離は、始点から終点までの距離である。そして、スライダ13の終点とは、スライダ13と挟持体KによってワークWをクランプするために、ワークWを挟持体Kに押し当てたときの位置である。移動距離を学習部に学習させる際、スライダ13の終点となる位置に位置決め部材(図示せず)を配置しておく。
【0029】
そして、ステップS1において、電動アクチュエータ11の使用者が、前進用の操作釦44aを操作することにより、スライダ13が所定の一定速度で位置決め部材に向けて移動(前進)する。次に、スライダ13が位置決め部材に当接した状態で操作釦44aを長押しすると、エンコーダ20から出力される位置情報(出力パルス数)に基づきスライダ13の前進位置が算出される。
【0030】
また、ステップS1において、電動アクチュエータ11の使用者が、後進用の操作釦44bを操作することにより、スライダ13が所定の一定速度で位置決め部材からアダプタケース16に向けて移動(後進)する。次に、スライダ13が始点に戻った状態で操作釦44bを長押しすると、エンコーダ20から出力される位置情報(出力パルス数)に基づきスライダ13の後進位置が算出されて、学習される。そして、前進及び後進した際に学習された移動距離が記憶部47に記憶される。
【0031】
次に、ステップS2では、電動アクチュエータ11の使用者が、速度調節器42a,42bを操作することにより、スライダ13の速度(前進時及び後進時)が所望の値に調節されて、制御部30の記憶部47に記憶される。図7に示すように、スライダ13の速度は、移動開始時点t0から所定時間経過した第1時点t1までは所定の加速度で等加速度移動(加速移動)し、第1時点t1から所定時間経過した第2時点t2までは所定の設定速度で等速移動するように設定される。さらに、スライダ13の速度は、第2時点t2から所定時間経過した第3時点t3(終点)までは所定の加速度で等加速度移動(減速移動)するように設定される。また、スライダ13の移動時において、移動開始時点t0から減速移動が終了するまでの第3時点t3までの間、電動モータMには最大トルクが発生している。なお、制御部30は、設定された移動距離と速度に基づいて、スライダ13の加速度を自動で設定する。この加速度は、スライダ13が始点及び終点に当接する際の衝撃を緩和できるように設定される。
【0032】
図4に示すように、ステップS3では、電動アクチュエータ11の使用者が、推力調節器43を操作することにより、スライダ13が終点に到達してから所定時間経過した第4時点t4までの間に、スライダ13に発生させる推力が所望の値に調節される。推力調節器43によって調節された推力は、制御部30の記憶部47に記憶される。この推力は、スライダ13の移動時に電動モータMに発生させた最大トルクより低いトルクとなるように設定される。
【0033】
このように、電動アクチュエータ11の使用者が、速度調節器42a,42b及び推力調節器43を操作することにより、電動アクチュエータ11の使用者が、スライダ13の移動状態を確認しながらその移動条件を設定することができる。
【0034】
次に、スライダ13に推力を発生させ、電動アクチュエータ11によりワークWをクランプさせる際に、制御部30によって遂行される電動アクチュエータ11の駆動制御について説明する。図5は、制御部30によって遂行される電動アクチュエータ11の駆動制御プログラムを表すフローチャートである。
【0035】
さて、スライダ13が始点に配置されるとともに、スライダ13と挟持体Kとの間にワークWが配置された状態において、制御部30は電動モータMに駆動信号を出力し、電動モータMの回転数を制御する(ステップS11)。すると、図7に示すように、スライダ13は、移動開始時点t0から第1時点t1までは所定の加速度で等加速度移動(加速移動)し、第1時点t1から第2時点t2までは所定の一定速度で等速移動する。さらに、スライダ13は、第2時点t2から第3時点t3まは所定の加速度で等加速度移動(減速移動)する。
【0036】
次に、制御部30は、エンコーダ20から出力される位置情報と、記憶部47に記憶された移動距離とに基づき、スライダ13が所定の移動距離を移動し、終点に到達したか否かを判定する(ステップS12)。この判定結果が肯定判定の場合、制御部30は、電動モータMの制御を回転数制御からトルク制御に切り替え、電動モータMに出力する駆動信号(パルス幅)を調節して電動モータMに、最大トルクより低い所定の推力を発生させる(ステップS13)。すると、スライダ13がワークWに所定の推力で押し当てられる。その結果、第3時点t3から第4時点t4までの間、ワークWがスライダ13と挟持体Kによってクランプされる。
【0037】
一方、ステップS12の判定結果が否定判定の場合、制御部30はステップS11に戻り、以下、ステップS12までのステップを繰り返し行う。次に、制御部30は、スライダ13に推力を発生させた状態において温度センサ41からの温度情報と、記憶部47に記憶された温度の閾値とを比較して電動モータMに温度異常が無いか否かを判定する(ステップS14)。判定結果が肯定判定である場合、すなわち、電動モータMに温度異常が無い場合は、制御部30は上位制御装置31からの制御信号待ち状態となる。
【0038】
一方、ステップS14の判定結果が否定判定である場合、すなわち、電動モータMに温度異常がある場合は、制御部30は電動モータMに出力する駆動信号(パルス幅)を調節して、電動モータMのトルクが低下するように電動モータMを制御する。
【0039】
次に、スライダ13に連続して推力を発生させたときに制御部30によって遂行される電動アクチュエータ11の駆動制御について説明する。図8は、制御部30によって遂行される電動アクチュエータ11の駆動制御プログラムを表すフローチャートである。
【0040】
さて、スライダ13に推力を連続発生させた状態において、制御部30がタイマ48からの時間情報と、記憶部47に記憶された時間の閾値とを比較して経過時間が閾値を超えた状態が発生したと判定すると(ステップ21)、制御部30は、温度センサ41からの温度情報と、記憶部47に記憶された温度の閾値とを比較する。そして、制御部30は電動モータMに温度異常が無いか否かを判定する(ステップS22)。判定結果が肯定判定である場合、すなわち、電動モータMに温度異常が無い場合は、制御部30は上位制御装置31からの制御信号待ち状態となる。
【0041】
一方、ステップS22の判定結果が否定判定である場合、すなわち、電動モータMに温度異常がある場合は、制御部30は電動モータMに出力する駆動信号(パルス幅)を調節して、電動モータMのトルクが低下するように電動モータMを制御する(ステップS23)。次に、制御部30は、警報表示用のLED45を点灯させ、使用者に推力を低下させた旨を報知する。
【0042】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)電動アクチュエータ11は、スライダ13を終点に位置させた後、スライダ13に推力を発生させる推力調節器43を備える。このため、スライダ13に推力を発生させることにより、スライダ13をワークWに押し当てることができる。よって、電動アクチュエータ11のスライダ13により、ワークWを挟持体Kとの間にクランプすることができ、電動アクチュエータ11をクランプ手段として使用することができる。
【0043】
(2)電動アクチュエータ11は、電動モータMの温度を検出する温度センサ41を備える。そして、スライダ13に推力を発生させ、電動アクチュエータ11を用いてワークWをクランプさせた状態のとき、温度センサ41からの温度情報に基づき、電動モータMの温度が異常になったと判定された場合は、制御部30は電動モータMのトルクを低下させる制御を行うとともに、LED45を点灯させて使用者に温度異常を報知する。よって、電動アクチュエータ11をクランプ手段として用いた際の電動モータMの焼き付き等を防止することができる。
【0044】
(3)スライダ13はアクチュエータ本体12上を直線移動するものである。よって、スライダ13をワークWに向けて直線移動させることにより、ワークWを挟持体Kとスライダ13とで確実にクランプすることができる。
【0045】
(4)ワークWをクランプする際にスライダ13に発生させる推力(トルク)は、スライダ13を移動させる際に発生させるトルクより小さく設定される。このため、例えば、スライダ13を等速度移動させる際のトルクでスライダ13をワークWに押し当ててクランプする場合に比して、ワークWをクランプするときの消費電力を抑えることができる。
【0046】
(5)電動アクチュエータ11が推力調節器43を備え、スライダ13が終点に位置したときに電動モータMに発生させるトルクを調節可能にしたことにより、スライダ13によってワークWをクランプすることができる。ワークWの硬さは、ワークWの種類によって異なる。推力調節器43によって電動モータMに発生させるトルクを変更可能とすることにより様々な硬さのワークWであっても電動アクチュエータ11でクランプすることができる。
【0047】
(6)電動アクチュエータ11は、スライダ13によるワークWのクランプ状態が長時間に亘って行われた場合に電動モータMのトルクを低下させる機能を有する。このため、例えば、長時間一定のトルクを発生させてワークWをクランプさせる場合に比して、消費電力を抑えることができる。
【0048】
(7)電動アクチュエータ11において、電動モータM及び制御部30を収容するモータケース18にはエンドプレート19が接合され、そのエンドプレート19の操作面19aに速度調節器42a,42b、推力調節器43、及び操作釦44a,44bが設けられている。よって、例えば、速度調節器42a,42b、推力調節器43、及び操作釦44a,44bが設けられたコントロール部を、モータケース18と別体に設けるとともにケーブル等で電動モータMに接続する場合に比して電動アクチュエータ11をコンパクトにすることができる。
【0049】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 図9に示すように、電動アクチュエータ50として、アクチュエータ本体52に、移動体としての回転テーブル51及びクランプアーム53を備えるタイプのものに具体化してもよい。この電動アクチュエータ50は、回転テーブル51にクランプアーム53が一体回転可能に取着されている。クランプアーム53は板状をなす。また、アクチュエータ本体52の側面に操作面52aを有するとともに、操作面52aに速度調節器42a,42b、推力調節器43、操作釦44a,44bの操作部が露出している。
【0050】
そして、図9の2点鎖線に示すように、クランプアーム53が上下方向へ延びるように位置させた状態を回転テーブル51の始点とする。また、回転テーブル51を始点から90度回転させた位置を回転テーブル51の終点とする。そして、回転テーブル51を始点から終点まで回転させた後、推力調節器43によって設定された推力を回転テーブル51に発生させる。すると、回転テーブル51によりクランプアーム53をワークWに押し当てることができる。よって、電動アクチュエータ50のクランプアーム53により、ワークWを挟持体Kとの間にクランプすることができ、電動アクチュエータ11をクランプ手段として使用することができる。
【0051】
図9に示す電動アクチュエータ50を、ワークWの搬送手段として用いてもよい。すなわち、回転テーブル51上にワークWを載せて回転テーブル51を回転させる。このとき、推力調節器43により、回転テーブル51が終点に位置するときは、回転テーブル51に推力を発生させる。このように構成すると、回転テーブル51が付勢部材(例えば、バネ部材)により、始点に向けて回転する方向へ付勢されている場合、付勢部材の付勢力に抗して回転テーブル51を終点に保持することができる。
【0052】
さらに、図9に示す電動アクチュエータ50を、回転テーブル51が上側から下側へ向けて回転するように垂直姿勢に配置して使用してもよい。この場合、クランプアーム53は削除される。このとき、回転テーブル51が、その終点に位置したとき、回転テーブル51に推力を発生させることにより、回転テーブル51を終点に保持することができる。よって、回転テーブル51の自重及びワークWの質量が回転テーブル51に加わっても、回転テーブル51が下側に向けて回転することを防止して、ワークWを終点へ搬送した状態を保持することができる。
【0053】
また、図9に示す電動アクチュエータ50において、回転テーブル51に取着されたクランプアーム53をワークWに押し当て、その押し当てによりワークWを被圧入体に圧入させるように電動アクチュエータ50を用いてもよい。このように使用したとき、被圧入体の剛性やワークWの剛性に合わせて回転テーブル51に発生される推力を調節することにより、ワークWを被圧入体に圧入することができる。
【0054】
○ 電動アクチュエータ11をワークWの搬送手段として用いてもよい。すなわち、スライダ13上にワークWを載せてスライダ13を移動させる。このとき、推力調節器43により、スライダ13が終点に位置するときは、スライダ13に発生させる推力を最小に設定することにより、電動モータMの消費電力を抑えることができる。
【0055】
○ また、電動アクチュエータ11をワークWの搬送手段として用いてもよい。ここで、電動アクチュエータ11のスライダ13が上下方向へ移動するように電動アクチュエータ11を垂直姿勢に配置したとき、スライダ13が、その終点たるガイドレール12aの上端に位置したとき、スライダ13に推力を発生させることにより、スライダ13を終点に保持することができる。よって、スライダ13の自重及びワークWの質量がスライダ13に加わっても、スライダ13が下方へ移動することを防止して、ワークWを終点へ搬送した状態を保持することができる。
【0056】
○ 電動アクチュエータ11のスライダ13をワークWに押し当て、その押し当てによりワークWを被圧入体に圧入させるように電動アクチュエータ11を用いてもよい。このように使用したとき、被圧入体の剛性やワークWの剛性に合わせてスライダ13に発生される推力を調節することにより、ワークWを被圧入体に圧入することができる。
【0057】
○ 電動モータMの温度異常時に、音声出力部により警告音等を出して使用者に温度異常を報知するようにしてもよく、この場合音声出力部が報知部を構成する。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0058】
(1)電動モータの駆動力により移動する移動体と、前記移動体を支持するアクチュエータ本体と、前記移動体の始点と終点との間の位置情報を検出する位置情報検出器と、前記移動体の速度を設定するための速度調節器と、前記移動体の前記始点と前記終点間における移動距離を学習する学習部と、前記学習部を動作させるための学習動作用操作子と、前記電動モータに駆動信号を出力する制御部と、前記移動体に推力を発生させる推力調節器と、を有し、前記学習動作用操作子の操作に応じて前記学習部が前記移動体の移動距離を学習し、前記制御部が、前記位置情報検出器からの位置情報、前記速度調節器により設定された速度、及び前記学習部により学習された前記移動距離に基づき前記電動モータに駆動信号を出力して、前記移動体を移動させるようにし、さらに、前記移動体を前記終点に位置させるとき、前記制御部が、前記推力調節器の操作によって設定された推力に基づき前記電動モータに駆動信号を出力して、前記移動体に推力を発生させて前記移動体を被押し当て体に押し当てるようにしたことを特徴とする電動アクチュエータの制御方法。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施形態の電動アクチュエータを示す斜視図。
【図2】電動アクチュエータの電気的構造を示すブロック図。
【図3】操作面を示す図。
【図4】使用者による各条件の設定手順を示すフローチャート。
【図5】電動アクチュエータの駆動制御プログラムを表すフローチャート。
【図6】スライダによりワークをクランプした状態を示す斜視図。
【図7】電動モータの速度及びトルク変動を示す図。
【図8】電動アクチュエータの駆動制御プログラムを表すフローチャート。
【図9】別例の電動アクチュエータを示す斜視図。
【符号の説明】
【0060】
M…電動モータ、12,52…アクチュエータ本体、13…移動体としてのスライダ、20…位置情報検出器としてのエンコーダ、30…学習部を構成する制御部、41…温度検出器としての温度センサ、42a,42b…速度調節器、43…推力調節器、44a,44b…学習動作用操作子としての操作釦、45…報知部としてのLED、47…学習部を構成する記憶部、51…移動体としての回転テーブル、53…移動体としてのクランプアーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの駆動力により移動する移動体と、
前記移動体を支持するアクチュエータ本体と、
前記移動体の始点と終点との間の位置情報を検出する位置情報検出器と、
前記移動体の速度を設定するための速度調節器と、
前記移動体の前記始点と前記終点間における移動距離を学習する学習部と、
前記学習部を動作させるための学習動作用操作子と、
前記電動モータを制御する制御部と、
前記移動体に推力を発生させる推力調節器と、
を有し、前記学習動作用操作子の操作に応じて前記学習部が前記移動体の移動距離を学習し、前記制御部が、前記位置情報検出器からの位置情報、前記速度調節器により設定された速度、及び前記学習部により学習された前記移動距離に基づき前記電動モータに駆動信号を出力して、前記移動体を前記始点と終点の間を移動させるようにし、
さらに、前記制御部が、前記推力調節器の操作に応じて設定された推力に基づき前記電動モータに駆動信号を出力して、前記移動体に推力を発生させるようにしたことを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記電動モータの温度を検出する温度検出器を有するとともに、前記推力を連続発生させた状態において前記温度検出器の検出結果に基づき前記電動モータが温度異常と判定された時に該温度異常を使用者に報知する報知部を有する請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記移動体は、前記電動モータの駆動力によって前記アクチュエータ本体上を直線移動するスライダである請求項1又は請求項2に記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記移動体は、前記電動モータの駆動力によって前記アクチュエータ本体上を回転する回転テーブル及び該回転テーブルに一体回転可能に設けられたクランプアームである請求項1又は請求項2に記載の電動アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−41864(P2010−41864A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203675(P2008−203675)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【出願人】(395018251)マッスル株式会社 (15)
【Fターム(参考)】