説明

電動パワーステアリング装置

【課題】 衝撃荷重印加時の異音の発生を抑制することのできる電動パワーステアリング装置を提供すること。
【解決手段】 当接面45と締結面46との間におけるその軸方向の等価バネ剛性が、軸受30の軸方向の等価バネ剛性と等しくなるように、サイドハウジング12の当該部分の厚みdを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ラック軸と同軸に配置されたモータを有し、該モータの発生するアシストトルクをラック軸の往復動に変換することにより操舵系にアシスト力を付与する所謂ラックアシスト型の電動パワーステアリング装置(EPS)が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図7に示すように、このようなラックアシスト型のEPS61では、ラック軸62は、中空円筒状に形成されたモータシャフト63に挿通されており、該モータシャフト63は、軸受64に軸支されることによりハウジング65に支持されている。そして、モータシャフト63の回転がボールねじ機構(図示略)にてラック軸62の往復動に変換されることにより操舵系にアシスト力が付与されるようになっている。
【特許文献1】特開2003−335249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、縁石等の障害物への衝突時等、操舵輪に衝撃が印加された場合、ラック軸62は、その衝撃により軸方向に移動する。しかしながら、ボール送り機構は、ラック軸62の往復動をモータシャフト63の回転運動に変換できない。そのため、モータシャフト63は、ラック軸62とともに軸方向に移動しようとし、その衝撃荷重は同モータシャフト63を軸支する軸受64に印加される。そして、その衝撃荷重により軸受64及びハウジング65が弾性変形することになる。
【0005】
しかし、一般に、軸受64とハウジング65とは異なる素材により形成されるため、その荷重印加に伴う弾性変形の程度(等価バネ剛性)も異なっている。そのため、上記のような衝撃荷重が印加された際には、軸受64の変形量とハウジング65の変形量との間に差が生じ、この変形量の差に起因して、これら軸受64及びハウジング65が元に戻る際に異音を発することがあるという問題がある。
【0006】
例えば、図7に示すEPS61では、軸受64には剛性確保のためステンレス鋼等の鋼材が用いられているのに対し、ハウジング65には、軽量化等の観点からアルミ合金が用いられている。そして、軸受64は、その内輪64aがモータシャフト63に固定されるとともに、その外輪64bが締結部材66にて締め付けられ、ハウジング65の当接面67と締結部材66の締結面68との間に挟持されることによりハウジング65に固定されている。
【0007】
このようなEPS61の場合、図8及び図9に示すように、操舵輪への衝撃印加によりラック軸62が移動した場合、軸受64は、その衝撃荷重によりラック軸62の移動方向に圧縮される。そして、ハウジング65は、軸受64の軸方向の移動を規制する規制面、即ち、ハウジング65の当接面67又は締結部材66の締結面68が、軸受64に押圧されることにより同方向に伸張される。
【0008】
しかし、その素材の違いから、軸受64の等価バネ剛性よりもハウジング65の等価バネ剛性の方が小さいため、その等価バネ剛性の差により軸受64の圧縮量よりもハウジング65の伸張量の方が大きくなる。そのため、図8に示すようにラック軸62が当接面67側から締結面68側に移動した場合(図中右方向)には、軸受64と当接面67との間に隙間Sが発生し、また図9に示すようにラック軸62がその反対方向に移動した場合(図中左方向)には、軸受64と締結面68との間に隙間Sが発生する。そして、軸受64及びハウジング65が元に戻る際の軸受64と当接面67又は締結面68との当たり音が、異音として発せられるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、衝撃荷重印加時の異音の発生を抑制することのできる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、軸方向に往復動可能に支持されたラック軸と、前記ラック軸が挿通される円筒状のモータシャフトと、前記モータシャフトを回転可能且つ軸方向に移動不能に軸支する軸受と、前記モータシャフトの回転を前記ラック軸の往復動に変換するボールねじ機構とを備え、前記軸受は、該軸受の軸方向への移動を規制する第1及び第2の規制面の間に挟持されることによりハウジングに固定された電動パワーステアリング装置であって、前記ハウジングは、前記第1及び第2の規制面間における前記軸方向の等価バネ剛性が、前記軸受の前記軸方向の等価バネ剛性と等しく設定されてなること、を要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、操舵輪への衝撃印加に伴うラック軸及びモータシャフトの移動により軸受にその衝撃荷重が印加された場合であっても、同軸受の圧縮量とハウジングの伸張量とが等しくなる。従って、軸受と第1又は第2の規制面との間の隙間の発生を抑制することができ、その結果、軸受及びハウジングが元に戻る際の当たり音を効果的に抑制することができるようになる。特に、第1又は第2の規制面の何れかが軸受を締め付ける締結部材により形成される場合には、軸受及びハウジングが元に戻る際の衝撃による締結部材の緩み及び螺子山の剪断を防止することができる。また、その締結部材の締結力により上記隙間の発生を抑え込む必要がなくなることから、締結部材の締め付けトルクを小さくすることができ、その結果、特殊な締め付け治具や設備を用いる必要がなくなるとともに、その組み付け性を向上させることができるようになる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、軸方向に往復動可能に支持されたラック軸と、前記ラック軸が挿通される円筒状のモータシャフトと、前記モータシャフトを回転可能且つ軸方向に移動不能に軸支する軸受と、前記モータシャフトの回転を前記ラック軸の往復動に変換するボールねじ機構とを備え、前記軸受は、該軸受の軸方向への移動を規制する第1及び第2の規制面の間に挟持されることによりハウジングに固定された電動パワーステアリング装置であって、前記ハウジングは、前記第1及び第2の規制面間に軸方向に移動しない不動点を有し、前記不動点は、該不動点と前記第1の規制面又は前記第2の規制面との間における軸方向の等価バネ剛性が、前記軸受の前記軸方向の等価バネ剛性と等しくなる位置に設定されること、を要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、操舵輪への衝撃印加に伴いラック軸及びモータシャフトが軸方向の何れか一方に移動する際の軸受の圧縮量とハウジングの伸張量とを等しくすることができる。その結果、その移動方向における軸受とハウジングとの間の隙間の発生を抑制して、この方向の衝撃荷重印加時の異音の発生を効果的に抑制することができるようになる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記不動点は、前記ハウジングを構成するハウジング部材の合わせ面により形成されること、を要旨とする。
上記構成によれば、各ハウジングは、合わせ面によりその軸方向の移動が規制されるため、この合わせ面に対応する位置に不動点を形成することができる。従って、ハウジングの形状に大きな変更を加えることなく衝撃荷重印加時の異音の発生を抑制することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記ハウジングは、前記第1及び第2の規制面間における前記軸方向の等価バネ剛性が、前記軸受の前記軸方向の等価バネ剛性と等しくなるように、その径方向の厚みが設定されてなること、を要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、径方向の厚みにより断面積を変更することができ、これにより等価バネ剛性を変更することができる。従って、ハウジングの形状に大きな変更を加えることなく衝撃荷重印加時の異音の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、衝撃荷重印加時の異音の発生を抑制することの可能な電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明をラックアシスト型の電動パワーステアリング装置に具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
【0019】
図1は電動パワーステアリング装置(EPS)の外観図、そして図2はEPSのA−A断面図である。図2に示すように、EPS1は、ステアリング操作により回転するピニオン軸4と、該ピニオン軸4に噛合されるとともに軸方向に沿って往復動可能に支持されたラック軸5と、該ラック軸5と同軸に配置されたモータ6とを備えている。
【0020】
図1に示すように、EPS1は、略円筒状に形成されたモータハウジング11と該モータハウジング11の両端に固定されたサイドハウジング12,13とからなるハウジング14を備えており、ラック軸5は、該ハウジング14の軸線方向に沿って貫設されている。そして、図2に示すように、ラック軸5は、サイドハウジング12に設けられたラックガイド15及びサイドハウジング13に設けられたすべり軸受(図示せず)に軸支されることによりその軸方向に沿って往復動可能にハウジング14に支持されている。
【0021】
サイドハウジング12内には、ピニオン軸4がラック軸5と交差する状態で回転可能に支持されており、ラック軸5は、ラックガイド15に押圧されることにより、このピニオン軸4と噛合されている。また、図1に示すように、ピニオン軸4の一端には、トルクセンサ17のトションバー(図示略)を介してステアリングシャフト18が連結されており、該ステアリングシャフト18の先端には、ステアリングホイール19が固定されている。そして、ステアリング操作に伴ってピニオン軸4が回転し、その回転がラック軸5の往復動に変換されることにより、操舵輪(図示略)の舵角が変更されるようになっている。
【0022】
図2に示すように、モータ6は、モータコイル24が巻回されたステータ25と、中空筒状のモータシャフト26とを備えている。ステータ25は、モータハウジング11の内周面に固定されており、モータシャフト26には、ラック軸5が挿通されている。そして、モータシャフト26は、その両端近傍が軸受30,31に軸支されることにより回転可能にハウジング14に支持されている。
【0023】
また、EPS1は、ラック軸5の外周に形成されたねじ部33a、モータシャフト26の内周に形成されたナット部33b、及びこれらねじ部33a及びナット部33bの間に挿入された複数の鋼球33cにより構成されるボールねじ機構35を備えている。そして、このボールねじ機構35により、モータシャフト26の回転がラック軸5の往復動に変換されることにより、操舵系にアシスト力が付与されるようになっている。
【0024】
次に、本実施形態のEPS1におけるモータシャフトの軸受構造について説明する。
図3は、EPS1の軸受近傍における部分断面図である。同図に示すように、本実施形態のEPS1では、サイドハウジング12側の軸受30には、複列アンギュラ形のボールベアリングが採用されており、モータシャフト26は、この軸受30により回転可能かつ軸方向に移動不能に軸支されている。
【0025】
詳述すると、モータシャフト26の端部外周には、その外径が軸受30の内輪30aの内径と略等しく設定された圧入部41が凹設されており、該圧入部41の端部外周には螺子山が螺刻されたねじ部41aが形成されている。そして、モータシャフト26は、その圧入部41が軸受30の内輪30aに圧入され、そのねじ部41aに螺合されたナット42にて締め付けられることにより同内輪30aに固定されている。
【0026】
一方、サイドハウジング12の内周には、その内径が軸受30の外輪30bの外径と略等しく設定された嵌合凹部43が凹設されており、該嵌合凹部43の内周には、螺子山が螺刻されたねじ部43aが形成されている。そして、軸受30は、その外輪30bが嵌合凹部43に嵌合されるとともに、ねじ部43aに螺合された環状の締結部材44に締め付けられることにより、サイドハウジング12に固定されている。そして、軸受30は、その外輪30bが嵌合凹部43の一端の当接面45と締結部材44の締結面46との間に挟持されることにより、その軸方向の移動が規制されるようになっている。即ち、本実施形態では、当接面45が第1の規制面を構成し、締結面46が第2の規制面を構成する。
【0027】
本実施形態では、サイドハウジング12は、上記当接面45と締結面46との間におけるその軸方向の等価バネ剛性が、軸受30(詳しくはその外輪30b)の軸方向の等価バネ剛性と等しくなるように設定されている。具体的には、図4に示すように、サイドハウジング12は、その上記等価バネ剛性が軸受30のものと等しくなるように、その径方向の厚みdが設定されている。
【0028】
詳述すると、対象物の断面積を「A」、その縦弾性係数を「E」、対象物の長さを「t」とすると、物体の等価バネ剛性Kは、次の計算式により求めることができる。
K=A×E/t ・・・(1)
ここで、上記当接面45から締結面46までの長さthは、軸受30の軸方向の長さtbと略等しい。従って、軸受30の径方向の断面積を「Ab」、その縦弾性係数を「Eb」とし、上記当接面45と締結面46との間のサイドハウジング12の径方向の断面積を「Ah」、その縦弾性係数を「Eh」とすれば、軸受30と等しい等価バネ剛性を確保するために要求されるサイドハウジング12の上記断面積Ahは、次式により求めることができる。
【0029】
Ah=Ab×Eb/Eh ・・・(2)
また、サイドハウジング12の嵌合凹部43の内径を「Di」、上記当接面45から締結面46までの間のサイドハウジング12の外径を「De」とすると、サイドハウジング12の上記断面積Ahは次式により求めることができる。
【0030】
Ah=π×(De/2)^2−π×(Di/2)^2 ・・・(3)
尚、上記式(2)において「^2」は、二乗を示すものである。
更に、軸受30の外径を変更しないとすれば、サイドハウジング12の嵌合凹部43の内径Diは固定値となる。従って、上記(3)式に嵌合凹部43の内径Di及び上記(2)式を代入することにより、サイドハウジング12の外径Deを求めることができ、その算出された外径Deから内径Diを差し引く((De−Di)/2)ことにより、サイドハウジング12の上記厚みdを求めることができる。
【0031】
そして、上記当接面45と締結面46との間のサイドハウジング12の厚みdを、上記各式に基づき算出された厚みに設定することで、上記当接面45から締結面46までの間におけるサイドハウジング12の軸方向の等価バネ剛性を、軸受30の等価バネ剛性と等しく設定することができる。
【0032】
このような構成とすれば、操舵輪への衝撃印加に伴うラック軸5及びモータシャフト26の移動により、軸受30にその衝撃荷重が印加された場合の軸受30の圧縮量とサイドハウジング12の伸張量とが等しくなる。従って、軸受30と上記当接面45又は締結面46との間の隙間の発生(図8及び図9参照)を抑制することができ、その結果、軸受30及びサイドハウジング12が元に戻る際の当たり音を効果的に抑制することができるようになる。
【0033】
加えて、軸受30及びサイドハウジング12が元に戻る際の衝撃による締結部材44の緩み及び螺子山の剪断を防止することができ、更に締結部材44の締結力により上記隙間の発生を抑え込む必要がなくなることから、締結部材44の締め付けトルクを小さくすることができる。その結果、特殊な締め付け治具や設備を用いる必要がなくなるとともに、その組み付け性を向上させることができるようになる。
【0034】
(第2の実施形態)
以下、本発明をラックアシスト型の電動パワーステアリング装置に具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、第1の実施形態と同一の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
図5は本実施形態のEPSの部分断面図、そして図6はその軸受近傍の部分断面図である。図5及び図6に示すように、本実施形態のEPS50の基本構成は、上記第1の実施形態のEPS1と同一であり、そのモータハウジング51とサイドハウジング52とを接続する合わせ面が、上記当接面45と締結面46との間の直線Lに示す位置に形成されている点が異なっている。
【0036】
具体的には、図6に示すように、サイドハウジング52の開口端52a近傍の外周には、その径方向外側に向かって延設されたフランジ部55が形成されており、サイドハウジング52は、このフランジ部55の側面55aがモータハウジング51の端面51aに当接するように、その開口端52aがモータハウジング51内に嵌入されている。また、図5に示すように、サイドハウジング52のフランジ部55には、螺子孔56aが形成された締結部56が設けられており、モータハウジング51の端部周面には、サイドハウジング52側の螺子孔56aに対応する螺子孔57aを有する締結部57が設けられている。そして、サイドハウジング52は、その締結部56とモータハウジング51の締結部57とがボルト58にて締結されることによりモータハウジング51に固定され、そのフランジ部55の側面55aとモータハウジング51の端面51aとにより上記合わせ面が形成されている。
【0037】
ここで、図6に示すように、上記当接面45と締結面46との間の直線Lに示す位置に上記合わせ面が形成されることにより、サイドハウジング52には、同合わせ面に対応する位置に軸線方向に移動しない不動点Pが形成される。
【0038】
上述のように、サイドハウジング52は、軸受30への衝撃荷重印加により、上記当接面45又は締結面46が同軸受30に押圧されることにより軸方向に伸張される。しかし、この不動点Pにおいては、モータハウジング51に当接する上記合わせ面の存在によりその軸方向の移動が規制されている。従って、サイドハウジング52は、軸受30に対する衝撃荷重の印加方向、即ちラック軸の移動方向に応じて同不動点Pから上記当接面45又は締結面46との間において伸張することになる。
【0039】
そのため、不動点Pと締結面46との間の長さを「th1」とすれば、上記(1)式より、不動点Pと締結面46との間における軸方向の等価バネ剛性は、上記当接面45と締結面46との間における等価バネ剛性のth/th1倍となる。尚、「th」は、当接面45から締結面46までの長さである。従って、この不動点Pと締結面46との間の長さth1を短く設定することにより、この不動点Pと締結面46との間における軸方向の等価バネ剛性を大きくすることができる。
【0040】
そして、本実施形態のEPS50では、この不動点Pと締結面46との間におけるサイドハウジング52の等価バネ剛性が軸受30の等価バネ剛性と等しくなるように、上記合わせ面の位置が設定されている。
【0041】
このような構成とすれば、操舵輪への衝撃印加に伴いラック軸5及びモータシャフト26が上記当接面45側から締結面46側に向かって移動(図中右方向)した場合における軸受30の圧縮量とサイドハウジング12の伸張量とを等しくすることができる。その結果、軸受30とサイドハウジング12との間の隙間の発生を抑制して、この方向の衝撃荷重印加時の異音の発生を効果的に抑制することができるようになる。
【0042】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記第1の実施形態では、当接面45と締結面46との間におけるその軸方向の等価バネ剛性が、軸受30の軸方向の等価バネ剛性と等しくなるようにサイドハウジング12の厚みdを設定した。しかし、これに限らず、サイドハウジング12のこの部分の材質を縦弾性係数の大きなものに変更する構成としてもよい。
【0043】
・上記第2の実施形態では、不動点Pと締結面46との間におけるサイドハウジング52の等価バネ剛性が軸受30の等価バネ剛性と等しくなるように上記合わせ面の位置を設定した。しかし、これに限らず、不動点Pと当接面45との間における等価バネ剛性が軸受30の等価バネ剛性と等しくなるように不動点Pを形成する構成としてもよく、この場合、不動点Pと当接面45との間の長さth2(図6参照)を短く設定すればよい。
【0044】
・上記第2の実施形態では、不動点Pは、前記ハウジングを構成するハウジング部材としてのモータハウジング51とサイドハウジング52との合わせ面により形成されることとした。しかし、これに限らず、不動点は、ハウジングを車両の構造体に固定するための固定点により形成される構成としてもよい。
【0045】
・また、上記第1の実施形態の構成と第2の実施形態の構成とを組み合わせる、即ちサイドハウジングの厚みdと不動点Pの位置とを併せて設定する構成としてもよい。
・上記各実施形態では、本発明をラックアシスト型EPSに具体化したが、回転軸を回転可能且つ軸方向に移動不能に軸支する軸受を備え、該軸受をその軸方向への移動を規制する第1及び第2の規制面の間に挟持することによりハウジングに固定する軸受の固定構造を有するものに具体化してもよい。
【0046】
・本実施形態では、軸受とハウジングの等価バネ剛性が等しくなるようにしたが、ハウジングの等価バネ剛性を軸受よりも高くしてもよい。
次に、以上の実施形態から把握することのできる請求項以外の技術的思想を記載する。
【0047】
(イ)回転軸を回転可能且つ軸方向に移動不能に軸支する軸受を、該軸受の軸方向への移動を規制する第1及び第2の規制面の間に挟持することによりハウジングに固定する軸受の固定構造であって、前記ハウジングは、前記第1及び第2の規制面間における前記軸方向の等価バネ剛性が、前記軸受の前記軸方向の等価バネ剛性と等しく設定されてなること、を特徴とする軸受の固定構造。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1の実施形態の電動パワーステアリング装置(EPS)の外観図。
【図2】第1の実施形態のEPSのA−A断面図。
【図3】第1の実施形態のEPSにおける軸受近傍の部分断面図。
【図4】第1の実施形態のEPSの部分断面図。
【図5】第2の実施形態のEPSの部分断面図。
【図6】第2の実施形態のEPSにおける軸受近傍の部分断面図。
【図7】従来のEPSにおける軸受近傍の部分断面図。
【図8】従来のEPSの作用説明図。
【図9】従来のEPSの作用説明図。
【符号の説明】
【0049】
1,50…電動パワーステアリング(EPS)、5…ラック軸、11,51…モータハウジング、12,13,52…サイドハウジング、14…ハウジング、26…モータシャフト、30,31…軸受、30a…内輪、30b…外輪、35…ボールねじ機構、43…嵌合凹部、44…締結部材、45…当接面、46…締結面、51a…端面、55a…側面、K…等価バネ剛性、d…厚み、P…不動点、tb,th,th1,th2…長さ、L…直線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に往復動可能に支持されたラック軸と、前記ラック軸が挿通される円筒状のモータシャフトと、前記モータシャフトを回転可能且つ軸方向に移動不能に軸支する軸受と、前記モータシャフトの回転を前記ラック軸の往復動に変換するボールねじ機構とを備え、前記軸受は、該軸受の軸方向への移動を規制する第1及び第2の規制面の間に挟持されることによりハウジングに固定された電動パワーステアリング装置であって、
前記ハウジングは、前記第1及び第2の規制面間における前記軸方向の等価バネ剛性が、前記軸受の前記軸方向の等価バネ剛性と等しく設定されてなること、
を特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
軸方向に往復動可能に支持されたラック軸と、前記ラック軸が挿通される円筒状のモータシャフトと、前記モータシャフトを回転可能且つ軸方向に移動不能に軸支する軸受と、前記モータシャフトの回転を前記ラック軸の往復動に変換するボールねじ機構とを備え、前記軸受は、該軸受の軸方向への移動を規制する第1及び第2の規制面の間に挟持されることによりハウジングに固定された電動パワーステアリング装置であって、
前記ハウジングは、前記第1及び第2の規制面間に軸方向に移動しない不動点を有し、
前記不動点は、該不動点と前記第1の規制面又は前記第2の規制面との間における軸方向の等価バネ剛性が、前記軸受の前記軸方向の等価バネ剛性と等しくなる位置に設定されること、を特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記不動点は、前記ハウジングを構成するハウジング部材の合わせ面により形成されること、を特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の電動パワーステアリング装置において、
前記ハウジングは、前記第1及び第2の規制面間における前記軸方向の等価バネ剛性が、前記軸受の前記軸方向の等価バネ剛性と等しくなるように、その径方向の厚みが設定されてなること、を特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−21581(P2006−21581A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199838(P2004−199838)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(302066630)株式会社ファーベス (138)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【出願人】(000001247)光洋精工株式会社 (7,053)
【Fターム(参考)】