説明

電動ポンプ

【目的】モータ部とモータ制御部との組付け及び端子同士の溶接固着の作業性を向上させると共に、モータの呼吸孔を極めて簡単に構成することができる電動ポンプとすること。
【構成】ポンプ部9とモータ部5を制御する回路部Bが装着された回路ケース1を有するモータ制御部Aと、ヒートシンク6と、回路ケース1に設けられ且つ外面側からヒートシンク6側に向かって突出する回路端子2aとからなること。モータ部5にはモータ制御部Aとの接合側で且つ回路端子2aに対応する位置に軸方向外部に突出するステータ端子52cが設けられること。モータ部5とモータ制御部Aとの接合にてステータ端子52cは回路ケース1の内面側1aから外面側1bに向かって貫通され、回路ケース1の外面側1bにて回路端子2aとステータ端子52cとが接合又は近接状態となること。ヒートシンク6には、回路端子2aとステータ端子52cが露出する開口部63が形成されること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ部,モータ部,モータ制御部及びヒートシンクからなり、モータ部とモータ制御部との組付け及び端子同士の溶接固着の作業性を向上させると共に、モータの呼吸孔を極めて簡単に構成することができる電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートシンクを有する車両用のウォータポンプとして使用される電動ポンプが種々存在する。代表的な電動ポンプとして、特許文献1に開示されたものが存在する。特許文献1を概説すると、ケース本体1は、樹脂製であり、略円筒形状の円筒部1aと、円筒部1aと連通する略四角筒形状の四角筒部1bとを備える。そしてステータ5には、軸線方向に四角筒部1b内まで突出する巻線端子5cが40°間隔で3つ設けられている。
【0003】
また、駆動回路11は、ロータ6の回転角度を検出するための3つの磁気センサ19、ステータ5に駆動電力を供給するための3つの駆動電力供給端子20、制御IC21等を備える。そして各駆動電力供給端子20は40°間隔で円弧状に併設されている。駆動回路基板10の駆動電力供給端子20に対応した位置には、端子孔10aが形成されている。そして、ステータ5の巻線端子5cは、端子孔10aに挿入され、巻線端子5cの先端が駆動電力供給端子20に接続されるものである。上記構成によって駆動回路基板10上のパワートランジスタ18のスイッチング動作にて駆動電流が生成され、その駆動電流をステータ5に供給することができる。
【0004】
次に、特許文献1(特許文献1に開示された図5参照)に記載されている別例の流体ポンプ装置について検討する。駆動回路基板31の右側すなわちケース本体1から遠い側には、駆動回路基板31を全て覆うようにケースカバー32が配置されている。特許文献1には、駆動電力供給端子20の形状について具体的な記載が無く、且つ巻線端子5cの先端と駆動電力供給端子20が接続されるとは記載されているものの、どのように接続されるのか、については記載が無い。
【0005】
よって正確なところは不明であるが、駆動電力供給端子20を見ると、巻線端子5cの先端を上下から挟み込めるような袋小路形状となっているように見受けられる。よって、ケース本体1とケースカバー32を接近させ、くっつけてしまえば自ずと巻線端子5cの先端は駆動電力供給端子20に挿入される。挿入されれば、駆動電力供給端子20の挟み込む方向へのバネの力によって、駆動電力供給端子20と巻線端子5cの先端は接触し、通電可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−193683
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、以下のような課題が残されている。駆動電力供給端子20のバネの力により、駆動電力供給端子20と巻線端子5cの先端は接触するが、バネの力で挟み込んでいるだけのため、車両やエンジン等から伝達される振動により接触が緩む恐れがある。それを防ぐためには、駆動電力供給端子20と巻線端子5cの先端をレーザ溶接、スポット溶接、抵抗溶接、かしめ、又は半田付け等の適宜の手段で固着させなければならない。
【0008】
しかし、特許文献1の構成では駆動電力供給端子20と巻線端子5cの先端が接触する箇所はケースカバー32で完全に覆われているため、電極や半田ごてを駆動電力供給端子20と巻線端子5cの先端が接触する箇所やその近傍に移動させることが困難であり、よって上記固着手段を用いることは難しい。そのため特許文献1の構成では、製品の信頼性について向上の余地があった。
【0009】
本発明の目的(技術的課題)は、ポンプ部,モータ部,モータ制御部及びヒートシンクを組付けた状態でステータ側の端子と回路側の端子を容易に抵抗溶接でき、一つの組付け工程に限定されることなく組付け工程を適宜変更することができ、しかも安価に前記構成を達成可能とした電動ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、ポンプ部を駆動するモータ部と接合され且つ該モータ部を制御する回路部が装着された回路ケースを有するモータ制御部と、前記回路ケースの外面側に接合されるヒートシンクと、前記回路ケースに設けられ且つ外面側からヒートシンク側に向かって突出する回路端子とからなり、前記モータ部には前記モータ制御部との接合側で且つ前記回路端子に対応する位置に軸方向外部に突出するステータ端子が設けられ、前記モータ部と前記モータ制御部との接合にて前記ステータ端子は前記回路ケースの内面側から外面側に向かって貫通され、前記回路ケースの外面側にて前記回路端子と前記ステータ端子とが接合又は近接状態となり、前記ヒートシンクには、前記回路端子と前記ステータ端子が露出する開口部が形成されてなる電動ポンプとしたことにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項2の発明を、請求項1において、前記回路ケースにおける回路端子の突出箇所と同一箇所又は近接する位置に、前記ステータ端子が貫通する端子接合孔が形成されてなる電動ポンプとしたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2において、前記ステータ端子と、前記回路端子との接合箇所は集合状態に設けられてなる電動ポンプとしたことにより、上記課題を解決した。請求項4の発明を、請求項3において、前記ステータ端子と、前記回路端子との接合箇所は外周寄りの位置に設けられてなる電動ポンプとしたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、ポンプ部,モータ部,モータ制御部及びヒートシンクの組付け作業において、特にモータ部とモータ制御部における端子同士の接合に溶接を施す作業が必要であるにも係わらず、ポンプ部,モータ部,モータ制御部及びヒートシンクの組付が完了してから、ステータ端子と回路端子との抵抗溶接による固着ができる。詳述すると、ステータ端子は回路ケースを貫通させて回路ケースの外面側に突出し、回路端子と接合又は近接する。
【0013】
一方ヒートシンクには開口部が形成されており、この開口部は、ヒートシンクがモータ制御部の回路ケースの外面側に接合された状態でステータ端子と回路端子とが露出される位置に形成されている。また、回路ケースの外面側にて回路端子とステータ端子とが接合又は近接状態となっている。このような構成によって、ヒートシンクの開口部から抵抗溶接用の電極を、回路端子とステータ端子の両側から圧力をかけ易くなり、その状態で大電流を加えることにより容易に抵抗溶接を行うことができ、組み付け能率が向上し、溶接強度や振動に対する耐久性を高めることができる。
【0014】
また、ヒートシンクの開口部は、モータ制御部の呼吸孔としての役目をなすという利点もある。さらにヒートシンクがアルミ合金による鋳造品として製造されるならば、ヒートシンクの開口部は金型により形成可能であるため、加工費用は略ゼロとなり、逆に開口部を形成することでアルミ合金の使用量が削減されるので、軽量化、材料費の低減につながるという利点も存在する。一般にヒートシンクは、熱伝導率の良いアルミ合金が使用されることが多く、且つヒートシンクのフィンは切削加工よりも鋳造に好適であるということ観点から、本発明におけるヒートシンクは、鋳造にすることでより一層コスト的に有利といえる。
【0015】
請求項2の発明では、回路ケースにおける回路端子の突出箇所と同一箇所又は近接する位置に、前記ステータ端子が貫通する端子接合孔が形成されているので、モータ部とモータ制御部とを接合することにより、モータ部側のステータ端子が端子接合孔に極めて容易に挿入させることができ、且つ端子接合孔が回路端子と同一位置又は近接しているので、回路端子とステータ端子とは接合又は近接した状態にすることができ、両端子を容易に圧力をかけて抵抗溶接を行うことができる。
【0016】
請求項3の発明では、前記ステータ端子と、前記回路端子との接合箇所は集合状態に設けられているので、ヒートシンクの開口部も最小限の大きさにすることができる。さらに、請求項4の発明では、前記ステータ端子と、前記回路端子との接合箇所は外周寄りの位置に設けられることにより、抵抗溶接にて接合する箇所は主要なパワーデバイス及び回路基板が装着されている回路ケースの中央箇所ではなく、該回路ケースの中央から端の位置に配置されている。よって、抵抗溶接を行うときにもパワーデバイスや回路基板に対して悪影響を及ぼすことがない。
【0017】
さらに、前記パワーデバイスや前記回路基板は、回路ケースの略中央位置に配置することができ、しかもヒートシンクの開口部は中央から離れた位置となるので、パワーデバイスや回路基板等の電気素子から発生した熱がヒートシンクの中央から周囲に拡散し易くなり、放熱性をより一層向上させることができる。また、ヒートシンクの開口部は、前述したように抵抗溶接用の電極挿通孔としての機能を兼ねると共に呼吸孔としての機能も備えたものである。したがって、ヒートシンクの開口部は、電極挿通孔とは別に呼吸孔を設ける必要がなく、構造が簡素化されることによりコストダウンにつながる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)は本発明の構成を示す縦断側面図、(B)は(A)のX1−X1矢視図である。
【図2】(A)はモータ部とモータ制御部とヒートシンクとを分離した状態の縦断側面図、(B)は(A)の(ア)部拡大図である。
【図3】(A)はモータ部の区画壁側平面図、(B)はモータ制御部の外面側平面図、(C)は(B)の(イ)部拡大図、(D)は(C)の変形例の拡大図である。
【図4】(A)はステータ端子がモータ制御部の端子接合孔に挿入しようとする工程図、(B)はステータ端子がモータ制御部の端子接合孔に挿入完了した工程図、(C)は開口部から電極を回路端子とステータ端子に当接させて抵抗溶接を行う工程図、(D)は開口部に蓋体を装着した状態図である。
【図5】(A)ヒートシンクの平面図、(B)は開口部に蓋体を装着した要部底面図、(C)は(B)の一部省略したX2−X2矢視拡大断面図、(D)は蓋体とキャップ材とを分離した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明における電動ポンプの構成は、図1,図2に示すように、モータ制御部Aと、ヒートシンク6と、モータ部5と、ポンプ部9とから構成され、また必要に応じて蓋体7と、通気キャップ8とが備わる。特にモータ制御部Aとヒートシンク6及び該ヒートシンク6の近傍箇所の相互に関連する構成に関するものである。また、本発明における電動ポンプのポンプ部9の種類については、ウォータポンプとして説明するが、ポンプ部9の種類が限定されるものではなく、オイルポンプ等にも好適なものである。
【0020】
モータ制御部Aは、図1(A),図2(A)に示すように、回路ケース1と、回路基板3と、FET等のパワーデバイス4とから構成される。回路ケース1は、合成樹脂にて形成され、略円板形状のベース板11の外周に両側面より突出する円筒形状の外周側部12が形成されている〔図2(A),図3(B)参照〕。前記回路ケース1のベース板11には、内面側1aと外面側1bとが存在する。
【0021】
前記内面側1aは、回路ケース1が前記モータハウジング51に接合される側であり、閉鎖周壁部13が形成され、該閉鎖周壁部13に回路基板3が装着される〔図1(A),図2(A)参照〕。前記外面側1bは、回路ケース1がヒートシンク6に接合される側であり、パワーデバイス4が組み込まれ側である〔図1(A),図2(A)参照〕。回路基板3とパワーデバイス4とは、回路ケース1のベース板11にインサートされたリードフレーム2により電気的接合がなされる〔図3(B)参照〕。該リードフレーム2は、帯板状の導体である。
【0022】
リードフレーム2は、回路ケース1が樹脂成形される工程で鋳込み成形されるものである。リードフレーム2,回路基板3及びパワーデバイス4とは、モータ部5の電気的制御を行うものであり、これらのリードフレーム2,回路基板3及びパワーデバイス4の組み合わせたものをまとめて回路部Bと称する。
【0023】
前記ベース板11には、その外面側1bで且つ外周寄りとなる直径方向端部箇所、すなわち、外周側部12付近の位置に複数本の回路端子2a,2a,…が立上り状態で突出形成されている(図2、図4等参照)。該回路端子2a,2a,…は、後述するモータ部5のステータ端子52c,52c,… と接合して、モータ部5を制御するものであり、具体的に個数は3本である〔図3(B)参照〕。回路端子2a,2a,…は、回路ケース1に後述するヒートシンク6が接合されたときに、ベース板11からヒートシンク6に向かって立ち上がるように形成されている。
【0024】
ベース板11において、それぞれの回路端子2a,2a,…には、同一箇所又は近接した位置に端子接合孔14,14,…が形成されている〔図2,図3(B),(C)参照〕。端子接合孔14は、後述するモータ部5のステータ端子52c,52c,…が挿入され、回路端子2a,2a,…と接触又は近接した状態で並設されるようになっている〔図1、図4(B)参照〕。まず、端子接合孔14が回路端子2aの同一箇所に形成されることとは、ベース板11から突出する回路端子2aの根元を包囲するように形成されることであり、具体的には回路端子2aの突出する根元の部分の孔がそのまま拡開されて端子接合孔14としたものである〔図3(C)参照〕。
【0025】
また、端子接合孔14が回路端子2aの近接した位置に形成されることとは、回路端子2aとは僅かの間隔をおいて離れた位置に貫通孔が形成され、この貫通孔が端子接合孔14とされたものである〔図3(D)参照〕。端子接合孔14は、回路端子2aに同一位置とすることにより、回路端子2a,2a,…とステータ端子52c,52c,…とを抵抗溶接にて接合する場合に好都合となる。また、回路端子2aは、長手方向の中間箇所に折曲部を介して屈曲形成されている。
【0026】
回路端子2aの折曲部によって、端子接合孔14より突出するステータ端子52cと近接又は接合し、後述する抵抗溶接が行い易くなる。また、端子接合孔14が回路端子2aと近接した位置に形成された場合には、前記回路端子2aは、その根元部分の周囲はベース板11を構成する樹脂によって密着状に包囲されることとなり、回路端子2aの根元部分がより一層強固に補強されることになる。
【0027】
また、回路端子2a,2a,…は、複数(実際には3本)存在し、これらは相互に近接するように集合した状態にある〔図3(B)参照〕。この回路端子2a,2a,…の集合した領域は、回路ケース1のベース板11の中心から離れた位置で外周側部12寄りの位置に設けられている〔図3(B)参照〕。このような構成により、ベース板11の中心寄りの位置に回路部Bを構成する回路基板3及びパワーデバイス4が装着されている〔図2(A)参照〕。
【0028】
モータ部5は、図1(A),図2(A)に示すように、モータハウジング51の内部に鉄合金製のステータ52及びインナーマグネット53が装着されている。ステータ52は、ステータコア52aにコイル52bが巻き付けられており、これらが樹脂54に被覆され防水性も有する。そして、ステータコア52aに巻かれたコイル52bの通電を制御により順番に切り替えていくことで磁界が切り替わり、軸中心寄りに配置されたインナーマグネット53を回転駆動させることができる。
【0029】
インナーマグネット53がステータ52の磁力により回転することによって、インナーマグネット53に一体的に装着されているポンプ部9のインペラシャフト92が回転し、インペラシャフト92に装着されたインペラ91が回転し、ポンプとしての機能を果たすことができる。前記インナーマグネット53はプラスチックマグネットにて形成されている。
【0030】
モータハウジング51には、インナーマグネット53が配置される領域まではエンジンの冷却水が浸入する。モータ部5のモータハウジング51において、モータ制御部Aの回路ケース1との接合箇所には区画壁51aが存在する。該区画壁51aは、ポンプ部9のインペラ91の羽根から離れた側で且つインペラシャフト92の軸端部近傍である。区画壁51aは、樹脂製又はアルミニウム合金製で、略円板状に形成されており、冷却水を密封するための壁であると共に、接合されるモータ制御部Aの回路基板3を区画壁51aを介して冷却する役目もなすものである〔図1(A),図2(A)参照〕。
【0031】
前記ステータ52におけるコイル52bには、ステータ端子52c,52c,…が接合され、該ステータ端子52c,52c,…は、前記区画壁51aから外部で且つ軸方向に沿って突出している〔図2(A),図4参照〕。ここで、軸方向とは、モータ部5が接続しているポンプ部9のインペラシャフト92の軸方向のことである。
【0032】
ステータ端子52c,52c,…は、モータ制御部Aの回路ケース1と、モータ部5のモータハウジング51とが接合された状態で、前記ステータ端子52c,52c,… が、モータ制御部Aのベース板11の内面側1aより端子接合孔14,14,…に挿入され、ベース板11の外面側1bに突出するようになっている〔図4(A),(B)参照〕。
【0033】
このとき、それぞれのステータ端子52c,52c,… は、それぞれの回路端子2a,2a,…と接触又は近接した状態で並設される〔図1(B),図4(B)参照〕。したがって、モータ部5におけるモータハウジング51からのステータ端子52c,52c,…の突出位置は、モータ制御部Aの回路ケース1に対して正規の状態で接合されたときに、ステータ端子52c,52c,…が前記端子接合孔14,14,…に円滑に挿入されると共に回路端子2a,2a,…と接合可能な位置となる〔図3(A),(B)参照〕。すなわち、複数の回路端子2a,2a,…と、複数のステータ端子52c,52c,…とは、対応するように略同一の配列で集合するように構成される。
【0034】
モータ部5は、前述したように、モータハウジング51の内周側まで流体が浸入する構成となっており、一般にステータ52は発熱部品であるため、モータハウジング51内周側に浸入する流体によってステータ52の熱が放熱される。よって、ステータ52の熱は、モータ制御部A側の回路基板3に伝わり難くなっている。また流体と回路基板3とが前記区画壁51aを介して近接しているので、流体によって回路基板3の熱は放熱され易く、該回路基板3の温度上昇も抑制できる。
【0035】
ヒートシンク6には、図5(A)に示すように、主板61の表面側に薄板状の立上り片62a,62a,…からなるフィン部62が形成されている。該主板61は、略円板形状に形成されており、且つモータ制御部Aの回路ケース1に設けられたコネクタ部分のために中心に向かって直径方向に凹み61aが形成されている。前記主板61には、開口部63が形成されている。該開口部63は、前記ヒートシンク6が前記回路ケース1の外面側1bに正規に接合された状態で、集合配置された回路端子2a,2a,…及びその集合領域の周辺付近まで露出する程度の大きさである〔図1、図4(B)参照〕。
【0036】
そのために、開口部63は、回路端子2a,2a,…の集合領域に対応するように、ヒートシンク6の直径方向の端縁付近に形成される。開口部63の周囲には、前記フィン部62の立上り片62a,62a,…が存在しない平坦な面とした平坦面部6aとなっている。前記開口部63の形状及び大きさは、略長方形状に形成され、回路端子2a,2a,…とステータ端子52c,52c,…と接合箇所が集合する領域よりも僅か又は一回り程度大きくなる広さとし、後述するように回路端子2aとステータ端子52cとを接合させて電極T,Tを押し当てて、抵抗溶接の作業が行える程度の広さとする〔図4(C)参照〕。
【0037】
ヒートシンク6の開口部63には、蓋体7が装着されることもある。該蓋体7は、樹脂製もしくはアルミ合金製であり、具体的には、略長方形状をした平板であり、幅方向中間箇所には呼吸孔71が形成されている。蓋体7は、前記ヒートシンク6の開口部63に被せられることによって、開口部63から水や泥等が回路部B内に浸入しないようにする役目をなすものである。
【0038】
蓋体7の呼吸孔71には、通気キャップ8が装着される。該通気キャップ8の機能は、空気(圧力)をモータ制御部Aの回路ケース1内外でバランスを取るようにし、ポンプ内とポンプ外(外気)の圧力差を無くし、ポンプ内外で水蒸気をやり取りすることでポンプ内外の湿度差を無くすものである。
【0039】
該通気キャップ8は、合成樹脂製であり、上蓋板81,下蓋板82,連結立上り片83及び嵌合脚部85とから構成される。上蓋板81は円板形状に形成され、下蓋板82は、貫通孔82aが形成され、上蓋板81と下蓋板82とは、適宜の間隔をおいて、上蓋板81及び下蓋板82の外周に等間隔の空隙84,84,…が形成されるようにして連結立上り片83,83,…が形成される。
【0040】
前記空隙84,84,…は、モータ制御部Aの回路ケース1の内部と外部との気圧や湿度を同等にする役目をなすものであり、空隙84,84,…は3箇所形成されている。蓋体7の呼吸孔71に通気キャップ8を装着するときに、嵌合脚部85,85,…が中心側に弾性的に窄まるようになっており、復元力によって、嵌合突起85aが呼吸孔71の周囲に嵌合するようになっている。
【0041】
下蓋板82の貫通孔82aには、透湿膜87が装着される。透湿膜87は、水滴よりは小さく水蒸気よりは大きい孔が無数に形成されたものであり、空気や水蒸気は通すが水滴は通さない膜である。また、前記嵌合脚部85,85,…には、Oリング88が配置され、通気キャップ8を蓋体7の呼吸孔71に挿入して、押し付けて嵌合脚部85によって呼吸孔71に固定されることで、下蓋板82とヒートシンク6の裏面側によってOリング88が潰された状態となって密封効果を発揮する。
【0042】
ポンプ部9は主に、図1(A)、図2(A)に示すように、吸入口と吐出口とを有するポンプカバー部93と、複数枚の羽根が放射状に周方向角度均等に配置された樹脂製のインペラ91と、該インペラ91に固着され、該インペラ91の回転中心に配置された鉄合金製のインペラシャフト92とからなる。該インペラシャフト92は、前記モータ部5に配置される永久磁石であるインナーマグネット53と一体となっており、該インナーマグネット53の回転によって、インペラシャフト92が回転し、該インペラシャフト92と共にインペラ91は回転する。
【0043】
次に、モータ制御部A,モータ部5,ポンプ部9,ヒートシンク6を組み付ける工程において、回路端子2a,2a,…とステータ端子52c,52c,…とを接合して、抵抗溶接を行う作業について説明する。モータ制御部A,モータ部5,ポンプ部9,ヒートシンク6とは、ボルト・ナットにより接合固着される。モータ制御部Aとモータ部5とを接合する工程で、モータ部5のステータ端子52c,52c,…がモータ制御部Aの回路ケース1の内面側1aより端子接合孔14,14,…に挿入され、回路ケース1の外面側1bに突出し、回路ケース1の回路端子2a,2a,…と接合する〔図4(A),(B)参照〕。
【0044】
ヒートシンク6は、回路ケース1に接合されており、ヒートシンク6の開口部63から、回路端子2a,2a,…とステータ端子52c,52c,…との接合箇所が露出した状態となる。回路端子2a,2a,…とステータ端子52c,52c,…とはベース板11の外面側1bからヒートシンク6に向かって立ち上がるように構成されており、端子同士に互いを押し付けるような荷重を加えると共に、前記開口部63から電極T,Tを挿入し、回路端子2aとステータ端子52cに電極T,Tを当接させて大電流を加え抵抗溶接される〔図4(C)参照〕。
【0045】
この時、ヒートシンク6の開口部63を通して、回路ケース1側の回路端子2a,2a,…及びステータ端子52c,52c,…を目視しながら、電極T,Tを端子に当接させることができる。開口部63は、そのまま呼吸孔として使用することができる。また必要に応じて、ヒートシンク6の開口部63には、蓋体7が被せられビス等の固着具にて固着される〔図5(B)参照〕。さらに蓋体7の呼吸孔71には通気キャップ8が装着される〔図5(C),(D)参照〕。
【符号の説明】
【0046】
A…モータ制御部、5…モータ部、1…回路ケース、1a…内面側、1b…外面側、
14…端子接合孔、2a…回路端子、52c…ステータ端子、6…ヒートシンク、
63…開口部、9…ポンプ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ部を駆動するモータ部と接合され且つ該モータ部を制御する回路部が装着された回路ケースを有するモータ制御部と、前記回路ケースの外面側に接合されるヒートシンクと、前記回路ケースに設けられ且つ外面側からヒートシンク側に向かって突出する回路端子とからなり、前記モータ部には前記モータ制御部との接合側で且つ前記回路端子に対応する位置に軸方向外部に突出するステータ端子が設けられ、前記モータ部と前記モータ制御部との接合にて前記ステータ端子は前記回路ケースの内面側から外面側に向かって貫通され、前記回路ケースの外面側にて前記回路端子と前記ステータ端子とが接合又は近接状態となり、前記ヒートシンクには、前記回路端子と前記ステータ端子が露出する開口部が形成されてなることを特徴とする電動ポンプ。
【請求項2】
請求項1において、前記回路ケースにおける回路端子の突出箇所と同一箇所又は近接する位置に、前記ステータ端子が貫通する端子接合孔が形成されてなることを特徴とする電動ポンプ。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ステータ端子と、前記回路端子との接合箇所は集合状態に設けられてなることを特徴とする電動ポンプ。
【請求項4】
請求項3において、前記ステータ端子と、前記回路端子との接合箇所は外周寄りの位置に設けられてなることを特徴とする電動ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−110177(P2012−110177A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258585(P2010−258585)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000144810)株式会社山田製作所 (183)
【Fターム(参考)】