説明

電動操舵装置

【課題】 電動操舵装置の歯車列を構成する各ギヤの寸法精度や組付精度の高精度化によらず、各ギヤのバックラッシュを抑制し、それらの回転伝達時の歯打ち音を低減すること。
【解決手段】 操舵ハンドル4が接続される入力軸21と、車輪側操舵部材6が接続される出力軸22と、入力軸21と出力軸22の間に設けられるトルクセンサ23と、トルクセンサ23の検出トルクに応じて駆動される電動モータ24と、電動モータ24の回転を出力軸22に伝える歯車列25とを有し、歯車列25が、電動モータ24の駆動軸24Aに設けられる駆動ギヤ41と、出力軸22に設けられる従動ギヤ42と、駆動ギヤ41と従動ギヤ42の間に設けた枢軸44に支持されてそれらの駆動ギヤ41と従動ギヤ42に噛合う中間ギヤ43とを有して構成される電動操舵装置10において、前記中間ギヤ43が枢軸44の軸方向に移動可能にされ、該中間ギヤ43を駆動ギヤ41と従動ギヤ42の各歯面に対して押圧する押圧手段47を設けてなるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両、自動二輪車等の車両、船外機等の船舶推進機を備えた船舶等に用いて好適な電動操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両の電動操舵装置として、特許文献1に記載の如く、操舵ハンドルが接続される入力軸と、車輪側操舵部材が接続される出力軸と、入力軸と出力軸の間に設けられるトルクセンサと、トルクセンサの検出トルクに応じて駆動される電動モータと、電動モータの回転を出力軸に伝える歯車列とを有してなるものがある。
【0003】
この電動操舵装置を構成している歯車列は、電動モータの駆動軸に接続される駆動ギヤと、出力ギヤに設けられる従動ギヤと、駆動ギヤと従動ギヤの間に設けた枢軸に支持されてそれらの駆動ギヤと従動ギヤに噛合う中間ギヤとを有して構成されている。そして、それらの駆動ギヤと従動ギヤと中間ギヤの3者を、互いに平行配置されてなる平歯車とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2663454号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電動操舵装置では、電動モータの駆動軸に接続される駆動ギヤと、出力ギヤに設けられる従動ギヤと、駆動ギヤと従動ギヤの間に設けた枢軸に支持されてそれらの駆動ギヤと従動ギヤに噛合う中間ギヤの各ギヤの寸法精度や組付精度の度合に応じたバックラッシュの存在が、各ギヤの回転伝達時の歯打ち音の原因になる。
【0006】
本発明の課題は、電動操舵装置の歯車列を構成する各ギヤの寸法精度や組付精度の高精度化によらず、各ギヤのバックラッシュを抑制し、それらの回転伝達時の歯打ち音を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、操舵ハンドルが接続される入力軸と、車輪側操舵部材が接続される出力軸と、入力軸と出力軸の間に設けられるトルクセンサと、トルクセンサの検出トルクに応じて駆動される電動モータと、電動モータの回転を出力軸に伝える歯車列とを有し、歯車列が、電動モータの駆動軸に設けられる駆動ギヤと、出力軸に設けられる従動ギヤと、駆動ギヤと従動ギヤの間に設けた枢軸に支持されてそれらの駆動ギヤと従動ギヤに噛合う中間ギヤとを有して構成される電動操舵装置において、前記中間ギヤが枢軸の軸方向に移動可能にされ、該中間ギヤを駆動ギヤと従動ギヤの各歯面に対して押圧する押圧手段を設けてなるようにしたものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記中間ギヤがベベルギヤからなるようにしたものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に発明において更に、前記中間ギヤが前記歯車列を収納するハウジングに設けた枢軸に支持され、前記押圧手段が該中間ギヤを枢軸の軸方向に沿って駆動ギヤと従動ギヤの各歯面に対して押圧する弾性体からなるようにしたものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3の発明において更に、前記弾性体が前記枢軸のまわりで、前記中間ギヤの端面と前記ハウジングの間に介装されてなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
(請求項1)
(a)電動操舵装置の中間ギヤが枢軸の軸方向に移動可能にされ、該中間ギヤを駆動ギヤと従動ギヤの各歯面に対して押圧する押圧手段を設けた。従って、中間ギヤの枢軸に対して交差(斜交又は直交)する傘面状の歯面が隙間なく駆動ギヤと従動ギヤの各歯面に押圧されて噛合うものになり、各ギヤのバックラッシュを抑制するものになる。これにより、歯車列を構成する各ギヤの寸法精度や組付精度の高精度化によらず、各ギヤのバックラッシュを抑制し、それらの回転伝達時の歯打ち音を低減することができる。
【0012】
また、押圧手段が、中間ギヤを駆動ギヤの歯面に対して押圧するとき、押圧手段自体が弾発的に拡縮できるから、路面が車両の車輪に及ぼすキックバック(反力)を吸収することもできる。これにより、車両の凹凸路面走行時やコーナリング走行時の操舵ハンドル、操舵軸等のガタ振れを軽減できる。
【0013】
(請求項2)
(b)中間ギヤをベベルギヤとすることにより、上述(a)を確実に実現できる。尚、中間ギヤはハイポイドギヤであっても良い。
【0014】
(請求項3)
(c)押圧手段が中間ギヤを枢軸の軸方向に沿って駆動ギヤと従動ギヤの各歯面に対して押圧する弾性体からなるものとすることにより、前述(a)の押圧手段を簡易に構成できる。
【0015】
(請求項4)
(d)弾性体が中間ギヤの枢軸まわりで、該中間ギヤの端面と、該枢軸が設けられるハウジングの間に介装されることにより、前述(a)の押圧手段を一層簡易に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は鞍乗型車両の要部を示す模式図である。
【図2】図2は実施例1の電動操舵装置を示す断面図である。
【図3】図3は図2の要部を示す断面図である。
【図4】図4は実施例2の電動操舵装置を示す断面図である。
【図5】図5は図4の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施例1)(図1〜図3)
図1の鞍乗型車両100は、バギー車やスノーモービル等の不整地走行用車両として用いられる。鞍乗型車両100は、車体フレーム1の前後に前輪2(一輪又は二輪)と後輪3(不図示の一輪又は二輪)を設け、不図示のエンジンを搭載している。鞍乗型車両100は、前輪2を操舵するバーハンドル4(操舵ハンドル)を操舵軸5に支持し、操舵軸5と車輪側操舵部材6との間に電動操舵装置10を介装している。操舵軸5は車体フレーム1の上部フレーム1Aに支持され、車輪側操舵部材6は車体フレーム1の下部フレーム1Bに支持され、電動操舵装置10はブラケット7を介して車体フレーム1の上部フレーム1Aに支持されている。
【0018】
電動操舵装置10は、図2、図3に示す如く、第1ハウジング11(本体ハウジング)と、第1ハウジング11の上下に取付ボルト14、15によりボルト結合される第2ハウジング12(上カバー)及び第3ハウジング13(下カバー)に被包される単一ユニット体10Aにて構成され、このユニット体10Aに入力軸21、出力軸22、トルクセンサ23、電動モータ24、減速歯車列25を内蔵する。
【0019】
尚、本実施例の鞍乗型車両100では、電動操舵装置10の電動モータ24を、操舵軸5より走行方向の前側で、かつ電動操舵装置10の上方へ突出させている。但し、電動モータ24は、操舵軸5より走行方向の後側に配置されても良いし、電動操舵装置10の下方へ突出させても良い。
【0020】
電動操舵装置10は、操舵軸5がセレーション結合されて接続される入力軸21の上端部を軸受31により第2ハウジング12に支持し、車輪側操舵部材6がセレーション結合されて接続される出力軸22の上下端部を上下の軸受32A、32Bにより第1ハウジング11と第3ハウジング13に支持している。第2ハウジング12における軸受31の上部開口部にはオイルシール33が封着され、第3ハウジング13における軸受32Bの下部開口部にはオイルシール34が封着される。入力軸21の中空部にはトーションバー26が挿入され、トーションバー26の一端は入力軸21に連結ピン26Aで連結され、トーションバー26の他端は出力軸22の中空部にセレーション結合される。電動操舵装置10は、操舵軸5に接続される入力軸21と、車輪側操舵部材6に接続される出力軸22をトーションバー26により連結して同一中心軸上に配置する。
【0021】
トルクセンサ23は、図3に示す如く、入力軸21と出力軸22に係合している円筒状のコア23Cを囲む2個の検出コイル23A、23Bを第2ハウジング12に設けている。コア23Cは、出力軸22のガイドピン23Dに係合する縦溝23Eを備えて軸方向にのみ移動可能とされるとともに、入力軸21のスライダピン23Fに係合するスパイラル溝23Gを備える。これにより、バーハンドル4に加えた操舵トルクが入力軸21に付与され、トーションバー26の弾性ねじり変形により、入力軸21と出力軸22の間に回転方向の相対変位を生ずると、入力軸21と出力軸22の回転方向の変位がコア23Cを軸方向に変位させるものになり、このコア23Cの変位による検出コイル23A、23Bの周辺の磁気的変化に起因する検出コイル23A、23Bのインダクタンスが変化する。即ち、コア23Cが入力軸21の側へ移動すると、コア23Cが近づく方の検出コイル23Aのインダクタンスが増加し、コア23Cが遠ざかる方の検出コイル23Bのインダクタンスが減少し、このインダクタンスの変化により操舵トルクを検出できる。
【0022】
電動モータ24は、第1ハウジング11に取付ボルト27により取付け支持され、不図示のコントローラにより、トルクセンサ23の検出トルクに応じて駆動される。
【0023】
減速歯車列25は、第1ハウジング11と第3ハウジング13に覆われるように収納され、電動モータ24の駆動軸24Aの回転を出力軸22に伝える。
【0024】
しかるに、減速歯車列25は、電動モータ24の駆動軸24Aに継手28を介して接続される駆動ギヤ41と、出力軸22に固定的に設けられる従動ギヤ42と、駆動ギヤ41と従動ギヤ42の間に設けた枢軸44に支持されてそれらの駆動ギヤ41と従動ギヤ42に噛合う中間ギヤ43を有して構成される。枢軸44は第1ハウジング11に設けた玉軸受45により上端部を、第3ハウジング13に設けたすべり軸受46により下端部を枢支されている。
【0025】
減速歯車列25において、駆動ギヤ41は平歯車からなり、従動ギヤ42はベベルギヤからなり、中間ギヤ43はベベルギヤからなる。そして、従動ギヤ42が固定される出力軸22に対し、駆動ギヤ41が接続される電動モータ24の駆動軸24Aは斜交し、中間ギヤ43が支持される枢軸44は平行配置される。
【0026】
減速歯車列25は、中間ギヤ43の内周にはセレーション43Aを設け、枢軸44の外周にはセレーション44Aを設けている。中間ギヤ43はセレーション43A、44Aを介して枢軸44にセレーション結合され、枢軸44と一体に回転して上下の軸受45、46に枢支されるとともに、枢軸44に対し軸方向に移動可能にされる。そして、減速歯車列25は、中間ギヤ43を駆動ギヤ41の歯面と従動ギヤ42の歯面に対し押圧する押圧手段47を設けている。尚、枢軸44の上端部の玉軸受45は自動調芯型とされている。これにより、中間ギヤ43は下向き(ベベル軸受46の側)に向けて縮径して枢軸44に対して斜交する傘面状の歯面を、駆動ギヤ41の直円柱状の歯面と、従動ギヤ42の上向き(入力軸21の側)に向けて縮径して出力軸22に対して斜交する片面状の歯面の両者に隙間なく噛合いするものとされる。
【0027】
このとき、押圧手段47は、中間ギヤ43を枢軸44の軸方向に沿って駆動ギヤ41と従動ギヤ42の各歯面に対して押圧する弾性体、本実施例ではコイルばね48からなるものとされている。コイルばね48は、枢軸44のまわりで、中間ギヤ43の上端面と、第1ハウジング11、本実施例では第1ハウジング11に設けた玉軸受45の内輪端面に着座させた座板49との間に弾発状態で介装される。
【0028】
電動操舵装置10は、バーハンドル4に加えた操舵トルクをトルクセンサ23により検出し、その検出トルクにより電動モータ24を駆動し、電動モータ24の発生トルクを減速歯車列25の駆動ギヤ41、中間ギヤ43、従動ギヤ42を介して出力軸22に伝える。これにより、電動モータ24の発生トルクを運転者がバーハンドル4に加える操舵力に対するアシスト力として用いるものになる。
【0029】
本実施例の電動操舵装置10によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)電動操舵装置10の中間ギヤ43が枢軸44の軸方向に移動可能にされ、該中間ギヤ43を駆動ギヤ41と従動ギヤ42の各歯面に対して押圧する押圧手段47を設けた。従って、中間ギヤ43の枢軸44に対して交差(斜交又は直交)する傘面状の歯面が隙間なく駆動ギヤ41と従動ギヤ42の各歯面に押圧されて噛合うものになり、各ギヤ41と43、及び各ギヤ42と43のバックラッシュを抑制するものになる。これにより、歯車列を構成する各ギヤの寸法精度や組付精度の高精度化によらず、各ギヤ41と43、及び各ギヤ42と43のバックラッシュを抑制し、それらの回転伝達時の歯打ち音を低減することができる。
【0030】
また、押圧手段47が、中間ギヤ43を駆動ギヤ41の歯面に対して押圧するとき、押圧手段47自体が弾発的に拡縮できるから、路面が車両100の車輪に及ぼすキックバック(反力)を吸収することもできる。これにより、車両100の凹凸路面走行時やコーナリング走行時のハンドルバー4、操舵軸5等のガタ振れを軽減できる。
【0031】
(b)中間ギヤ43をベベルギヤとすることにより、上述(a)を確実に実現できる。尚、中間ギヤ43はハイポイドギヤであっても良い。
【0032】
(c)押圧手段47が中間ギヤ43を枢軸44の軸方向に沿って駆動ギヤ41と従動ギヤ42の各歯面に対して押圧する弾性体48からなるものとすることにより、前述(a)の押圧手段47を簡易に構成できる。
【0033】
(d)弾性体48が中間ギヤ43の枢軸44まわりで、該中間ギヤ43の端面と、該枢軸44が設けられるハウジング11の間に介装されることにより、前述(a)の押圧手段47を一層簡易に構成できる。
【0034】
(実施例2)(図4、図5)
図4、図5の電動操舵装置10が実施例1の電動操舵装置10と異なる点は、減速歯車列25の構造にある。
【0035】
減速歯車列25は、電動モータ24の駆動軸24Aに継手28を介して接続される駆動ギヤ51と、出力軸22に固定的に設けられる従動ギヤ52と、駆動ギヤ51と従動ギヤ52の間に設けた枢軸54に支持されてそれらの駆動ギヤ51と従動ギヤ52に噛合う中間ギヤ53を有して構成される。枢軸54は第1ハウジング11に設けた玉軸受55により上端部を、第3ハウジング13に設けたアジャストナット56が備えるすべり軸受57により下端部を枢支している。アジャストナット56は第3ハウジング13に設けたねじ孔に螺着され、第3ハウジング13の外側に臨む下端面に六角操作孔56Aを備え、第3ハウジング13の内側に臨む上端面の側に開口する軸装填孔56Bにすべり軸受57を圧入して備えている。
【0036】
減速歯車列25において、駆動ギヤ51、従動ギヤ52及び中間ギヤ53はベベルギヤからなる。そして、従動ギヤ52が固定される出力軸22に対して、駆動ギヤ51が接続される電動モータ24の駆動軸24Aは斜交し、中間ギヤ53が支持される枢軸54は平行配置される。
【0037】
減速歯車列25は、駆動ギヤ51の支軸に外周セレーション51Aを設け、継手28の内周に内周セレーション28Aを設けている。駆動ギヤ51は継手28にセレーション結合されて支持され、電動モータ24の駆動軸24Aと一体に回転するとともに、継手28に対して軸方向に移動可能にされる。そして、減速歯車列25は、継手28と駆動ギヤ51の支軸まわりに弾発コイルばね29を巻装し、弾発コイルばね29は駆動ギヤ51の下向きの傘面状の歯面をその軸方向において中間ギヤ53の上向きの傘面状の歯面に押圧する。
【0038】
更に、減速歯車列25は、中間ギヤ53の内周にセレーション53Aを設け、枢軸54の外周にセレーション54Aを設けている。中間ギヤ53はセレーション53A、54Aを介して枢軸54にセレーション結合され、枢軸54と一体に回転して上下の軸受55、57に枢支されるとともに、枢軸54に対し軸方向に移動可能にされる。そして、減速歯車列25は、中間ギヤ53を駆動ギヤ51の歯面と従動ギヤ52の歯面に対し押圧する押圧手段58を設けている。尚、枢軸54の上端部の玉軸受55は自動調芯型とされている。
【0039】
これにより、減速歯車列25において、中間ギヤ53は上向き(玉軸受55の側)に向けて縮径して枢軸54に対して斜交する傘面状の歯面を、駆動ギヤ51の下向き(電動モータ24と反対側)に向けて縮径して駆動軸24Aに対して斜交する傘面状の歯面と、従動ギヤ52の下向き(入力軸21と反対側)に向けて縮径して出力軸22に対して斜交する傘面状の歯面の両者に隙間なく噛合いするものとされる。
【0040】
このとき、押圧手段58は、中間ギヤ53を枢軸54の軸方向に沿って駆動ギヤ51と従動ギヤ52の各歯面に対して押圧する弾性体、本実施例ではゴムブッシュ59からなるものとされている。ゴムブッシュ59は、枢軸54のまわりで、中間ギヤ53の下端面と、第3ハウジング13、本実施例では第3ハウジング13に設けたアジャストナット56の上端面との間に弾発状態で介装される。アジャストナット56が六角操作孔56Aに係合する工具の回転によりゴムブッシュ59を加圧してその弾発量を調整するとき、これによって適度に弾発されたゴムブッシュ59が中間ギヤ53を枢軸54の軸方向に沿って駆動ギヤ51と従動ギヤ52の各歯面に対して押圧するものになる。ゴムブッシュ59は環状ゴム本体59Aの内周、上端面、下端面のそれぞれに被覆されて互いに連続するテフロン(登録商標)層59Bを備え、ゴム本体59Aの磨耗等による劣化を防止可能にしている。
【0041】
本実施例の電動操舵装置10によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)電動操舵装置10の中間ギヤ53が枢軸54の軸方向に移動可能にされ、該中間ギヤ53を駆動ギヤ51と従動ギヤ52の各歯面に対して押圧する押圧手段58を設けた。従って、中間ギヤ53の枢軸54に対して交差(斜交又は直交)する傘面状の歯面が隙間なく駆動ギヤ51と従動ギヤ52の各歯面に押圧されて噛合うものになり、各ギヤ51と53、及び各ギヤ52と53のバックラッシュを抑制するものになる。これにより、歯車列25を構成する各ギヤの寸法精度や組付精度の高精度化によらず、各ギヤ51と53、及び各ギヤ52と53のバックラッシュを抑制し、それらの回転伝達時の歯打ち音を低減することができる。
【0042】
また、押圧手段58が、中間ギヤ53を駆動ギヤ51の歯面に対して押圧するとき、押圧手段58自体が弾発的に拡縮できるから、路面が車両100の車輪に及ぼすキックバック(反力)を吸収することもできる。これにより、車両100の凹凸路面走行時やコーナリング走行時のハンドルバー4、操舵軸5等のガタ振れを軽減できる。
【0043】
(b)中間ギヤ53をベベルギヤとすることにより、上述(a)を確実に実現できる。尚、中間ギヤ53はハイポイドギヤであっても良い。
【0044】
(c)押圧手段58が中間ギヤ53を枢軸54の軸方向に沿って駆動ギヤ51と従動ギヤ52の各歯面に対して押圧する弾性体59からなるものとすることにより、前述(a)の押圧手段58を簡易に構成できる。
【0045】
(d)弾性体59が中間ギヤ53の枢軸54まわりで、該中間ギヤ53の端面と、該枢軸54が設けられるハウジングの間に介装されることにより、前述(a)の押圧手段58を一層簡易に構成できる。
【0046】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、本発明の中間ギヤは枢軸に対して交差(斜交又は直交)する傘面状の歯面を有するものであれば良く、ベベルギヤに限らず、ハイポイドギヤであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、電動操舵装置において、電動モータの回転を出力軸に伝える歯車列の中間ギヤが枢軸の軸方向に移動可能にされ、該中間ギヤを駆動ギヤと従動ギヤの各歯面に対して押圧する押圧手段を設けた。従って、電動操舵装置の歯車列を構成する各ギヤの寸法精度や組付精度の高精度化によらず、各ギヤのバックラッシュを抑制し、それらの回転伝達時の歯打ち音を低減することができる。
【符号の説明】
【0048】
4 バーハンドル(操舵ハンドル)
5 操舵軸
6 車輪側操舵部材
10 電動操舵装置
11 第1ハウジング
12 第2ハウジング
13 第3ハウジング
21 入力軸
22 出力軸
23 トルクセンサ
24 電動モータ
24A 駆動軸
25 歯車列
41 駆動ギヤ
42 従動ギヤ
43 中間ギヤ
44 枢軸
47 押圧手段
48 コイルばね(弾性体)
51 駆動ギヤ
52 従動ギヤ
53 中間ギヤ
54 枢軸
56 アジャストナット
58 押圧手段
59 ゴムブッシュ(弾性体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵ハンドルが接続される入力軸と、車輪側操舵部材が接続される出力軸と、入力軸と出力軸の間に設けられるトルクセンサと、トルクセンサの検出トルクに応じて駆動される電動モータと、電動モータの回転を出力軸に伝える歯車列とを有し、
歯車列が、電動モータの駆動軸に設けられる駆動ギヤと、出力軸に設けられる従動ギヤと、駆動ギヤと従動ギヤの間に設けた枢軸に支持されてそれらの駆動ギヤと従動ギヤに噛合う中間ギヤとを有して構成される電動操舵装置において、
前記中間ギヤが枢軸の軸方向に移動可能にされ、該中間ギヤを駆動ギヤと従動ギヤの各歯面に対して押圧する押圧手段を設けてなることを特徴とする電動操舵装置。
【請求項2】
前記中間ギヤがベベルギヤからなる請求項1に記載の電動操舵装置。
【請求項3】
前記中間ギヤが前記歯車列を収納するハウジングに設けた枢軸に支持され、
前記押圧手段が該中間ギヤを枢軸の軸方向に沿って駆動ギヤと従動ギヤの各歯面に対して押圧する弾性体からなる請求項1又は2に記載の電動操舵装置。
【請求項4】
前記弾性体が前記枢軸のまわりで、前記中間ギヤの端面と前記ハウジングの間に介装されてなる請求項3に記載の電動操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−274748(P2010−274748A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128232(P2009−128232)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】