説明

電動機用減速機

【課題】高い減速比が得られる構造でありながら、小型化・軽量化を図ることができ、かつ、駆動系損失を効果的に低減できる電動機用減速機の提供。
【解決手段】中空筒状のロータシャフトL1を有するモータMと、ロータシャフトL1からの駆動力が入力される減速機構Tと、減速機構Tで減速された駆動力を左右の車軸L2,L3に配分して伝達する差動機構Dとを有する電動機用減速機1であって、減速機構Tは、2組の遊星歯車機構PG1,PG2で構成されており、差動機構Dの出力が伝達される車軸L2は、ロータシャフトL1の内側を貫通して設置されている。減速機構Tに遊星歯車機構PG1,PG2を採用し、モータMと減速機構Tと差動機構Dを同軸上に配置して、車軸L2をロータシャフトL1の内側に貫通させたことで、減速機1の外径寸法をコンパクトにでき、小型化・軽量化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された電動機の出力を減速して車軸に伝達するための電動機用減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動機(モータ)を駆動源とした電気自動車(以下「EV」と記す。)の開発が進められている。EVでは、モータの出力を減速して車軸に伝達する減速機を備えた駆動伝達装置が設けられている。従来の車両に搭載されるこの種の駆動伝達装置として、例えば、特許文献1、2に記載された装置が提案されている。特許文献1に記載された電気自動車用の駆動装置は、モータと、該モータの回転を減速する平行軸式の減速機構と、減速後の回転を左右の駆動軸に配分して伝達するディファレンシャルギヤ(差動機構)とを備えている。そして、モータとディファレンシャルギヤを同軸上に配置し、ディファレンシャルギヤに連結されたドライブシャフトをモータのロータ内に貫通させた構造としている。また、特許文献2に記載された電気自動車用パワートレーンは、モータと該モータの出力を減速するための減速機とを備えており、モータの出力軸と減速機の入力軸とが同一軸線上で駆動結合するように、モータケースと減速機ケースとを合体させた構成としている。
【0003】
ところで、EVでは、車両の走行性能やエネルギー効率を高める観点から、車両の小型化・軽量化を図ることが重要である。したがって、上記のような減速機を備えた駆動伝達装置に対しても、高い減速比が得られる構造でありながら、可能な限り小型化・軽量化を図ることが求められている。また、車両の外観デザインの自由度を高めるためには、減速機及び駆動伝達装置を出来るだけコンパクトな構成とすることが望ましい。
【0004】
この点、特許文献1に記載の駆動装置では、平行軸式の減速機構を備えているため、カウンターギヤ及びそれを被うケースの分、外形寸法が大きくなる。そのため、特許文献1に記載の駆動装置をFF車に採用した場合、車両のボンネット高が高くなったり、全長が長くなったりする。したがって、電気自動車(EV)に特有のボンネットラインの低いデザインやフロントオーバーハングの小さいデザインが取り難くなる。また、特許文献2に記載のパワートレーンでは、ディファレンシャルギヤ(特許文献2では、図示が省略されている。)とモータとが別軸上に配置されているため、減速機の外形寸法、特に高さ寸法が大きくなってしまう。
【0005】
また、特許文献1に記載の減速機は、平行軸ギヤを採用しているが、平行軸ギヤでは、駆動力を伝達する際、はすば歯車の噛合点にスラスト方向の分力が発生する。ところが、各はすば歯車に作用するスラスト分力がバランスしていないと、このスラスト分力は、ギヤを倒そうとする方向のモーメント荷重として作用する。そのため、当該モーメント荷重によってギヤ噛合点がずれることで、ギヤの耐久強度の低下やギヤノイズの悪化、さらには別部品との干渉を起こすことが懸念される。また、ディファレンシャルケース及び減速機構のケースは、当該モーメント荷重に対する充分な剛性を持たせる必要があり、減速機の大型化、重量増、コスト増の要因となる。
【0006】
また、上記のスラスト分力によるモーメント荷重がディファレンシャルギヤにも作用するため、ディファレンシャルギヤの側部を支持するベアリング(ディファレンシャルケースの支持ベアリング)には、高い剛性を有するテーパーローラーベアリングが多く採用されている。このテーパーローラーベアリングは、ベアリング容量及び剛性を確保するために、車体への組付時に予め隙間を無くすような予圧(軸方向荷重)をかけて設置されるが、大きなスラスト力が作用した場合や、温度が変化した場合でも十分な剛性を確保できるように、相応の予圧が必要である。そのため、予圧設定用の部品(シム)が別途必要になったり、組立管理工数の増加を招いたりするという問題がある。
【0007】
また、テーパーローラーベアリングは、原理的に滑りを伴って回転するため、転がりのみで回転するボールベアリングやローラーベアリングと比較して、フリクション損失が大きい。さらに、予圧による荷重やスラスト分力が滑り面に作用することでもフリクション損失が大きくなる傾向にあり、これらは、駆動系損失の要因の1つとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭50−106320号公報
【特許文献2】特開平9−48250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い減速比が容易に得られる構造でありながら、小型化・軽量化を図ることができ、かつ、駆動系損失を効果的に低減できる電動機用減速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明にかかる電動機用減速機は、中空筒状の出力軸(L1)を有する電動機(M)と、電動機(M)の出力軸(L1)からの駆動力が入力される減速機構(T)と、減速機構(T)で減速された駆動力を左右の車軸(L2,L3)に配分して伝達する差動機構(D)と、を備え、電動機(M)と減速機構(T)と差動機構(D)とは互いに同軸上に配列されており、減速機構(T)は、遊星歯車機構(PG1,PG2)で構成されており、差動機構(D)からの出力が伝達される一方の車軸(L2)は、出力軸(L1)の内側を貫通して設置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明にかかる電動機用減速機によれば、電動機と減速機構と差動機構とを互いに同軸上に配列し、差動機構の出力が伝達される車軸を電動機の出力軸の内側に貫通させていることで、減速機の外径寸法をコンパクトにでき、小型化・軽量化を図ることが可能となる。特に、上記のように電動機と減速機構と差動機構とを同軸上に配置したことにより、減速機の高さ寸法又は横幅寸法(軸方向に対する幅寸法)を小さく抑えることができるので、車両のボンネットラインを低くしたりフロントオーバーハングを短くしたりするなど、EVの車両に特有のデザインを取ることが容易に可能となる。それに加えて、本発明では、減速機構に遊星歯車機構を用いているので、高い減速比が得られる構造でありながら、平行軸ギヤからなる減速機構を備えた場合と比べて、減速機の高さ寸法又は横幅寸法が小さくて済むようになる。
【0012】
また、遊星歯車機構では、動力伝達時のギヤに発生するラジアル荷重及びモーメント荷重が内部でバランスしているため、これらの荷重が遊星歯車機構の外部には殆ど作用しない。したがって、減速機構を支持するベアリングの小型化・簡素化が可能となり、減速機の重量低減が可能となる。また、ベアリングに作用する荷重を少なく抑えることができるので、ベアリングで発生するフリクション損失が低減する。これにより、モータの電力消費量の改善が期待できる。また、差動機構にもラジアル荷重及びモーメント荷重が作用しないため、差動機構の側部を支持するベアリングを、従来の大容量・高価格のテーパーローラーベアリングから、小容量・低価格のボールベアリングに置換することが可能となる。したがって、従来はテーパーローラーベアリングを採用していたことで、駆動系の中でエネルギー損失の割合が高かった差動機構の側部を支持するベアリングのフリクション損失を大幅に低減することが可能となる。
また、テーパーローラーベアリングをボールベアリングに置換することで、ベアリングの組付時に予圧管理を行う必要がなくなるため、予圧設定用の部品及び組立管理工数を削減でき、製品の低コスト化が可能となる。
さらに、ディファレンシャルケースにラジアル荷重及びモーメント荷重が作用しないことより、その分、ディファレンシャルケース及び減速機構のケースの剛性を低く抑えてその薄型化・軽量化を図ることができるので、減速機のさらなる小型化・軽量化が可能となる。
【0013】
また、上記の電動機用減速機では、減速機構(T)を構成する遊星歯車機構(PG1,PG2)は、電動機(M)の出力軸(L1)からの駆動力が入力される第1遊星歯車機構(PG1)と、第1遊星歯車機構(PG1)から入力された駆動力を差動機構(D)に出力する第2遊星歯車機構(PG2)との2組の遊星歯車機構で構成するとよい。これによれば、2組の遊星歯車機構を用いた効果的な減速が可能となるため、大減速比を成立させることができる。したがって、電動機の出力特性を車両特性に適合させ易くなる。また、出力トルクが低い電動機の使用が許容されるようになるので、電動機の小型化を図ることが可能となる。
【0014】
また、上記の電動機用減速機では、遊星歯車機構(PG1,PG2)は、シングルピニオン型の遊星歯車機構であるとよい。このように、シングルピニオン型の遊星歯車機構を採用することにより、ダブルピニオン型の遊星歯車機構を用いた場合と比較して、噛合効率の向上により、ギヤの伝達効率を高めることが可能となる。また、遊星歯車機構の部品点数を少なく抑えて連結構成の簡素化を図ることができる。
【0015】
また、上記の電動機用減速機の一実施態様として、電動機(M)の出力軸(L1)は、第1遊星歯車機構(PG1)のサンギヤ(S1)に連結されており、第1遊星歯車機構(PG1)のキャリア(C1)は、第2遊星歯車機構(PG2)のサンギヤ(S2)に連結されており、第2遊星歯車機構(PG2)のキャリア(C2)は、差動機構(D)の入力部材(20)に連結されており、第1遊星歯車機構(PG1)のリングギヤ(R1)及び第2遊星歯車機構(PG2)のリングギヤ(R2)は、固定側の部材(10)に固定されているとよい。
【0016】
上記の連結構成によれば、二組の遊星歯車機構に他の連結構成を採用している場合と比較して、より大きな減速比が得られるようになる。また、電動機の出力軸と遊星歯車機構との連結は、電動機の出力軸と第1遊星歯車機構のサンギヤとの一体化により行えるため、電動機と遊星歯車機構との連結構成の簡素化を図ることができる。さらに、第1、第2遊星歯車機構の外周側に設けたリングギヤを常時固定要素として使用するため、遊星歯車機構を収容するケーシングに対して、遊星歯車機構を容易かつ確実に固定することが可能となる。
【0017】
また、上記の電動機用減速機では、第2遊星歯車機構(PG2)のキャリア(C2)は、差動機構(D)の入力部材(20)と一体に構成されているとよい。これによれば、減速機の部品点数を少なく抑えることができ、小型化・軽量化・低コスト化が可能となる。また、第2遊星歯車機構から差動機構への動力伝達効率の向上を図ることができる。
【0018】
また、上記の電動機用減速機の他の実施態様として、第1遊星歯車機構(PG1)のピニオンギヤ(P1)と第2遊星歯車機構(PG2)のピニオンギヤ(P2)は、同一のキャリア(C)に支持されており、電動機(M)の出力軸(L1)は、当該キャリア(C)に連結されており、第2遊星歯車機構(PG2)のサンギヤ(S2)は、固定側の部材(10)に固定されており、第1遊星歯車機構(PG1)のサンギヤ(S1)は、差動機構(D)の入力部材(20)に連結されているとよい。
【0019】
上記の構成では、第1、第2遊星歯車機構での噛合は、いずれもサンギヤとピニオンギヤの噛合のみである。したがって、減速機におけるギヤの伝達効率(噛合効率)の向上を図ることができる。また、第1、第2遊星歯車機構にリングギヤを設けずに済むので、その分、減速機の径寸法の小型化、及び部品点数の削減や軽量化を図ることができる。
【0020】
また、上記の電動機用減速機の他の実施態様として、第1遊星歯車機構(PG1)のピニオンギヤ(P1)と第2遊星歯車機構(PG2)のピニオンギヤ(P2)は、同一のキャリア(C)に支持されており、電動機(M)の出力軸(L1)は、当該キャリア(C)に連結されており、第1遊星歯車機構(PG1)のリングギヤ(R1)は、固定側の部材(10)に固定されており、第2遊星歯車機構(PG2)のリングギヤ(R2)は、差動機構(D)の入力部材(20)に連結されているとよい。
【0021】
上記の構成では、第1、第2遊星歯車機構での噛合は、いずれもピニオンギヤとリングギヤの噛合のみである。したがって、減速機におけるギヤの伝達効率(噛合効率)の向上を図ることができる。さらに、ピニオンギヤに作用する遠心力とリングギヤの噛合による半径方向の反力とが打ち消しあうので、ピニオンギヤ内部でキャリアに対して相対回転可能に設けられるピニオンベアリングの小型化が可能となる。また、ピニオンギヤに作用する遠心力に対してキャリアの剛性をあまり高くする必要がない。したがって、キャリアの肉厚を薄くできることなどで、減速機構の構成の簡素化や軽量化を図ることができる。
【0022】
また、上記の電動機用減速機の他の実施態様として、電動機(M)の出力軸(L1)は、第2遊星歯車機構(PG2)のサンギヤ(S2)に連結されており、第2遊星歯車機構(PG2)のサンギヤ(S2)と噛合するピニオンギヤ(P2)は、第1遊星歯車機構(PG1)のピニオンギヤ(P1)と一体に構成されて同一のキャリア(C)に支持されており、第1遊星歯車機構(PG1)のピニオンギヤ(P1)と噛合するリングギヤ(R1)は、固定側の部材(10)に固定されており、第2遊星歯車機構(PG2)のピニオンギヤ(P2)と噛合するリングギヤ(R2)は、差動機構(D)の入力部材(20)に連結されているとよい。
【0023】
この構成では、上記他の実施態様と比較して、キャリアの回転数が低くなるので、ピニオンギヤに発生する遠心力が小さくなる。また、ピニオンギヤのギヤ反力は、第2遊星歯車機構のサンギヤとリングギヤとで逆方向に作用するため、互いに打ち消しあう。また、ピニオンギヤでは、遠心力とリングギヤのギヤ反力とが打ち消しあうため、ピニオンギヤを支持するベアリング(ピニオンベアリング)の負荷を軽減できる。また、ピニオンギヤは、モータの出力軸に連結された第2遊星歯車機構のサンギヤに噛合しているので、ピニオンギヤの回転数をモータの回転数(出力軸の回転数)以下に設定することが可能となる。さらに、上記の構成では、第1遊星歯車機構にサンギヤを設けていないため、第1遊星歯車機構のピニオンギヤを内径側に拡大することが可能となる。これにより、レシオ設定の自由度が高くなる。また、減速機構の外径をコンパクトにレイアウトすることが可能となる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる電動機用減速機によれば、高い減速比が容易に得られる構造でありながら、小型化・軽量化を図ることができ、かつ、駆動系損失を効果的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態にかかる電動機用減速機の構成を示すスケルトン図であり、(b)は、(a)に示す電動機用減速機の速度線図である。
【図2】(a)は、本発明の第2実施形態にかかる電動機用減速機の構成を示すスケルトン図であり、(b)は、(a)に示す電動機用減速機の速度線図である。
【図3】(a)は、本発明の第3実施形態にかかる電動機用減速機の構成を示すスケルトン図であり、(b)は、(a)に示す電動機用減速機の速度線図である。
【図4】(a)は、本発明の第4実施形態にかかる電動機用減速機の構成を示すスケルトン図であり、(b)は、(a)に示す電動機用減速機の速度線図である。
【図5】(a)は、本発明の第5実施形態にかかる電動機用減速機の構成を示すスケルトン図であり、(b)は、(a)に示す電動機用減速機の速度線図である。
【図6】(a)は、本発明の第6実施形態にかかる電動機用減速機の構成を示すスケルトン図であり、(b)は、(a)に示す電動機用減速機の速度線図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1(a)は、本発明の第1実施形態にかかる電動機用減速機(以下、単に「減速機」と記す。)1の構成を示すスケルトン図で、同図(b)は、減速機1の速度線図である。図1(a)に示す減速機1は、中空筒状のロータシャフト(出力軸)L1を有するモータ(電動機)Mと、モータMの回転を減速するための第1、第2遊星歯車機構PG1,PG2からなる減速機構Tと、減速機構Tからの出力を左右の車軸L2,L3に配分して伝達するためのディファレンシャル機構(差動機構)Dと備えている。そして、これらモータMと減速機構Tとディファレンシャル機構Dを同軸上に配置し、ディファレンシャル機構Dに連結された一方の車軸L2が中空筒状のロータシャフトL1の内側を貫通して、その先端が図示しない車輪に接続されている。
【0027】
減速機構Tは、互いに同軸上に配置された第1遊星歯車機構PG1と第2遊星歯車機構PG2の二組の遊星歯車機構(プラネタリギヤセット)を備えている。モータM側に配置された第1遊星歯車機構PG1は、サンギヤS1、キャリアC1、リングギヤR1を備えており、ディファレンシャル機構D側に配置された第2遊星歯車機構PG2は、サンギヤS2、キャリアC2、リングギヤR2を備えている。第1遊星歯車機構PG1のサンギヤS1は、モータMのロータシャフトL1に連結されており、キャリアC1は、第2遊星歯車機構PG2のサンギヤS2に連結されている。第2遊星歯車機構PG2のキャリアC2は、ディファレンシャル機構Dのギヤケース(入力部材)20と一体に構成されている。また、第1遊星歯車機構PG1のリングギヤR1と第2遊星歯車機構PG2のリングギヤR2はいずれも、減速機構Tを収容している減速機ケース(固定側の部材)10に固定されている。第1遊星歯車機構PG1と第2遊星歯車機構PG2は、いずれもシングルピニオン型の遊星歯車機構である。なお、図1(a)に示す符号B1,B2は、ロータシャフトL1を支持するベアリングであり、符号B3は、車軸L2の一端を支持するベアリングであり、符号B4は、ディファレンシャル機構Dの側部を支持するベアリング(ギヤケース20の支持ベアリング)である。
【0028】
この減速機1では、図1(b)の速度線図に示すように、第1遊星歯車機構PG1のリングギヤR1が減速機ケース10に対して固定された状態で、モータMのロータシャフトL1からの出力がサンギヤS1に入力される。そして、第1遊星歯車機構PG1で減速された駆動力がキャリアC1から出力され、このキャリアC1からの出力が第2遊星歯車機構PG2のサンギヤS2に入力される。そして、第2遊星歯車機構PG2のリングギヤR2が減速機ケース10に対して固定されているので、第2遊星歯車機構PG2で減速された駆動力がキャリアC2からディファレンシャル機構Dに出力されるようになっている。
【0029】
本実施形態の減速機1では、上記のように、モータMと減速機構Tとディファレンシャル機構Dとを同軸上に配置し、ディファレンシャル機構Dの出力が伝達される一方の車軸L2をロータシャフトL1の内側に貫通させていることで、減速機1の外径寸法をコンパクトにでき、小型化・軽量化を図ることが可能となる。特に、モータMと減速機構Tとディファレンシャル機構Dとを同軸上に配置したことにより、減速機1の高さ寸法又は横幅寸法(軸方向に対する幅寸法)を小さく抑えることができるので、車両のボンネットラインを低くしたりフロントオーバーハングを短くしたりするなど、EVの車両に特有のデザインを取ることが容易に可能となる。
【0030】
また、第1、第2遊星歯車機構PG1,PG2では、動力伝達時の各ギヤに発生するラジアル荷重及びスラスト力により発生するモーメント荷重が内部で相殺されるため、これらの荷重が第1、第2遊星歯車機構PG1,PG2の外部には殆ど作用しない。したがって、減速機構T及びそれに連結された部材を支持するベアリング(ベアリングB1〜B4など)の小型化・簡素化が可能となり、減速機1の小型化・軽量化を図ることが可能となる。また、当該ベアリングに作用する荷重を少なく抑えることができるので、当該ベアリングで発生するフリクション損失が低減する。これにより、モータMの電力消費量の改善が期待できる。また、ディファレンシャル機構Dにもラジアル荷重及びモーメント荷重が作用しないため、ディファレンシャル機構Dの側部を支持するベアリングB4を、従来の大容量・高価格のテーパーローラーベアリングから、小容量・低価格のボールベアリングに置換することが可能となる。したがって、従来はテーパーローラーベアリングを採用していたことで、駆動系の中でエネルギー損失の割合が高かったベアリングB4のフリクション損失を大幅に低減することが可能となる。また、ベアリングB4をテーパーローラーベアリングからボールベアリングに置換することで、ベアリングB4の組付時に予圧管理を行う必要がなくなるため、予圧設定用の部品(シム)及び組立管理工数を削減でき、製品の低コスト化が可能となる。
【0031】
さらに、ディファレンシャル機構Dのギヤケース20にもラジアル荷重及びモーメント荷重が殆ど作用しないことで、その分、ギヤケース20及び減速機ケース10の剛性が低くて済む。したがって、ギヤケース20及び減速機ケース10の薄型化・軽量化を図ることができ、減速機1のさらなる小型化・軽量化が可能となる。
【0032】
また、この減速機1では、2組の遊星歯車機構PG1,PG2を用いた効果的な減速が可能となるため、大減速比を成立させることが可能となる。したがって、電動機Mの出力特性を車両特性に適合させ易くなる。また、出力トルクが低い電動機であっても使用できるようになるので、電動機Mの小型化・軽量化を図ることが可能となる。
【0033】
また、遊星歯車機構PG1,PG2をシングルピニオン型の遊星歯車機構とすることにより、ダブルピニオン型の遊星歯車機構を用いた場合と比較して、噛合効率の向上により、ギヤの伝達効率を高めることが可能となる。また、遊星歯車機構PG1,PG2の部品点数を少なく抑えて構成の簡素化を図ることができる。
【0034】
また、この減速機1では、2組の遊星歯車機構PG1,PG2の具体的な連結構成として、モータMのロータシャフトL1は、第1遊星歯車機構PG1のサンギヤS1に連結されており、第1遊星歯車機構PG1のキャリアC1は、第2遊星歯車機構PG2のサンギヤS2に連結されており、第2遊星歯車機構PG2のキャリアC2は、ディファレンシャル機構Dのギヤケース20に連結されており、第1遊星歯車機構PG1のリングギヤR1及び第2遊星歯車機構PG2のリングギヤR2は、減速機ケース10に固定されている。
【0035】
この連結構成によれば、他の連結構成を採用した場合と比較して、より大きな減速比が得られるようになる。また、モータMと第1遊星歯車機構PG1との連結は、モータMのロータシャフトL1と第1遊星歯車機構PG1のサンギヤS1との一体化により行われている。そのため、モータMと遊星歯車機構PG1との連結構成の簡素化を図ることができる。さらに、2組の遊星歯車機構PG1,PG2の外周側に設置されたリングギヤR1,R2を常時固定要素として使用するようにしたことで、遊星歯車機構PG1,PG2を収容する減速機ケース10に対して、これら遊星歯車機構PG1,PG2を容易かつ確実に固定することが可能となる。
【0036】
また、この減速機1では、ディファレンシャル機構Dのギヤケース20と第2遊星歯車機構PG2のキャリアC2とを同一部品で一体に構成している。これにより、減速機1の部品点数を少なく抑えることができ、小型化・軽量化・低コスト化が可能となる。また、第2遊星歯車機構PG2からディファレンシャル機構Dへの動力伝達効率の向上を図ることができる。
【0037】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項については、第1実施形態と同じである。これらの点は、他の実施形態についても同様である。
【0038】
図2(a)は、本発明の第2実施形態にかかる減速機1−2の構成を示すスケルトン図であり、同図(b)は、減速機1−2の速度線図である。第2実施形態の減速機1−2が備える減速機構Tは、一組の遊星歯車機構PG2のみで構成されている。遊星歯車機構PG2は、モータMのロータシャフトL1に連結されたサンギヤS2と、減速機ケース10に対して固定されたリングギヤR2と、ディファレンシャル機構Dのギヤケース20と一体に構成されたキャリアC2を備えている。これにより、図2(b)の速度線図に示すように、リングギヤR2が固定された状態で、モータMからの駆動力が遊星歯車機構PG2のサンギヤS2に入力され、遊星歯車機構PG2で減速された回転がキャリアC2からディファレンシャル機構Dに出力されるようになっている。
【0039】
本実施形態の減速機1−2は、1組の遊星歯車機構PG2からなる減速機構Tを備えているため、減速機1−2の小型化・軽量化を図ることができる。また、遊星歯車機構が1組であるため、モータMの駆動力をより高い効率で伝達することが可能となる。しなしながら、その反面、第1実施形態の減速機1と比較して、得られる減速比が小さくなる。そのため、現状では、低速駆動力要求が比較的小さい車両に搭載するのに適しており、例えば、コミューター車両やミニカーのような小型の車両に搭載すると好適である。なお、トルクの大きいモータが使用できる場合(軸方向の寸法に余裕があって長いモータが使える場合や、今後、小型で高トルクの新型モータが開発された場合など)は、トルク不足を補えるので、通常サイズの車両にも搭載が可能となる。
【0040】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図3(a)は、本発明の第3実施形態にかかる減速機1−3の構成を示すスケルトン図で、同図(b)は、減速機1−3の速度線図である。本実施形態の減速機1−3は、第1実施形態の減速機1が備えていた傘歯車を組み合わせてなるディファレンシャル機構Dに代えて、遊星歯車機構からなるディファレンシャル機構(以下、「プラネタリデフ」という。)D´を採用している。プラネタリデフD´は、一方の車軸L2に連結されたサンギヤSdと、他方の車軸L3に連結されたキャリアCdと、減速機構Tの第2遊星歯車機構PG2が備えるリングギヤR2に連結されたリングギヤRdとで構成されている。一方、減速機構Tの第2遊星歯車機構PG2は、第1遊星歯車機構PG1のキャリアC1が連結されたサンギヤS2と、減速機ケース10に対して固定されたキャリアC2と、プラネタリデフD´のリングギヤRdに連結されたリングギヤR2を備えている。
【0041】
本実施形態の減速機1−3では、ディファレンシャル機構にプラネタリデフD´を採用したことで、ディファレンシャル機構の軸方向の寸法を小型化できるので、減速機1−3の軸方向の長さ寸法を小さく抑えることが可能となる。
【0042】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図4(a)は、本発明の第4実施形態にかかる減速機1−4の構成を示すスケルトン図で、同図(b)は、減速機1−4の速度線図である。本実施形態の減速機1−4が備える第1遊星歯車機構PG1は、ディファレンシャル機構Dのギヤケース20に連結されたサンギヤS1と、キャリアCを介してモータMのロータシャフトL1に連結されたピニオンギヤP1とを備えている。また、第2遊星歯車機構PG2は、減速機ケース10に固定されたサンギヤS2と、第1遊星歯車機構PG1のピニオンギヤP1と一体に構成されたピニオンギヤP2とを備えている。ピニオンギヤP1とピニオンギヤP2は、所定間隔で同軸状に連結されており、互いの径寸法及び歯数が異なっている。これらピニオンギヤP1とピニオンギヤP2は、いずれもキャリアCに支持されている。
【0043】
この減速機1−4では、図4(b)の速度線図に示すように、モータMのロータシャフトL1からの出力がキャリアCを介して第1遊星歯車機構PG1のピニオンギヤP1と第2遊星歯車機構PG2のピニオンギヤP2とに伝達される。そして、第2遊星歯車機構PG2のサンギヤS2は、減速機ケース10に対して固定されているので、減速された駆動力が第1遊星歯車機構PG1のサンギヤS1からディファレンシャル機構Dのギヤケース20に対して出力されるようになっている。この場合、図4(b)に示す速度線図のρ1,ρ2について、下記の関係が成り立つ。
ρ1=Zp1/Zs1
ρ2=Zp2/Zs2
ρ2>ρ1
ここで、
Zs1:サンギヤS1の歯数
Zs2:サンギヤS2の歯数
Zp1:ピニオンギヤP1の歯数
Zp2:ピニオンギヤP2の歯数
【0044】
本実施形態の減速機1−4では、第1遊星歯車機構PG1での噛合は、サンギヤS1とピニオンギヤP1の噛合のみであり、第2遊星歯車機構PG2での噛合は、サンギヤS2とピニオンギヤP2の噛合のみである。したがって、ギヤの伝達効率(噛合効率)が良いという利点がある。また、第1、第2遊星歯車機構PG1,PG2がリングギヤを有していないことで、その分、減速機1−4の径寸法の小型化、及び部品点数の削減や軽量化を図ることができる。また、後述する第5実施形態と比較して、ピニオンギヤP1,P2の回転数があまり高くならずに済むという利点がある。
【0045】
〔第5実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図5(a)は、本発明の第5実施形態にかかる減速機1−5の構成を示すスケルトン図で、同図(b)は、減速機1−5の速度線図である。本実施形態の減速機1−5が備える第1遊星歯車機構PG1は、減速機ケース10に対して固定されたリングギヤR1と、キャリアCを介してモータMのロータシャフトL1に連結されたピニオンギヤP1とを備えている。また、第2遊星歯車機構PG2は、ディファレンシャル機構Dのギヤケース20と一体に構成されたリングギヤR2と、第1遊星歯車機構PG1のピニオンギヤP1と一体に構成されたピニオンギヤP2とを備えている。ピニオンギヤP1とピニオンギヤP2は、所定間隔で同軸状に連結されており、互いの径寸法及び歯数が異なっている。これらピニオンギヤP1とピニオンギヤP2は、いずれもキャリアCに支持されている。
【0046】
この減速機1−5では、図5(b)の速度線図に示すように、モータMのロータシャフトL1からの出力がキャリアCを介して第1遊星歯車機構PG1のピニオンギヤP1と第2遊星歯車機構PG2のピニオンギヤP2とに入力される。そして、第2遊星歯車機構PG2のリングギヤR2は、減速機ケース10に対して固定されているので、減速された駆動力が第2遊星歯車機構PG2のリングギヤR2からディファレンシャル機構Dのギヤケース20に対して出力されるようになっている。この場合、図5(b)に示す速度線図のρ3,ρ4について、下記の関係が成り立つ。
ρ3=Zp2/Zr2
ρ4=Zp1/Zr1
ρ4>ρ3
ただし、
Zr1:リングギヤR1の歯数
Zr2:リングギヤR2の歯数
Zp1:ピニオンギヤP1の歯数
Zp2:ピニオンギヤP2の歯数
【0047】
本実施形態の減速機1−5では、第1遊星歯車機構PG1での噛合は、ピニオンギヤP1とリングギヤR1の噛合のみであり、第2遊星歯車機構PG2での噛合は、ピニオンギヤP2とリングギヤR2の噛合のみである。したがって、第4実施形態と同様、ギヤの伝達効率(噛合効率)が良いという利点がある。さらに、ピニオンギヤP1、P2に作用する遠心力とリングギヤR1、R2の噛合による半径方向の反力とが打ち消しあうので、ピニオンギヤP1、P2の内部でキャリアCに対して相対回転可能に設けられるピニオンベアリング(図示せず)の小型化が可能となる。また、ピニオンギヤP1、P2に作用する遠心力に対して、キャリアCの剛性をあまり高くする必要がない。したがって、キャリアCの肉厚を薄くできることなどで、減速機構Tの構成の簡素化や軽量化を図ることができる。
【0048】
〔第6実施形態〕
次に、本発明の第6実施形態について説明する。図6(a)は、本発明の第6実施形態にかかる減速機1−6の構成を示すスケルトン図で、同図(b)は、減速機1−6の速度線図である。本実施形態の減速機1−6が備える第1遊星歯車機構PG1は、減速機ケース10に対して固定されたリングギヤR1と、リングギヤR1に噛合するピニオンギヤP1とを備えている。また、第2遊星歯車機構PG2は、ディファレンシャル機構Dのギヤケース20と一体に構成されたリングギヤR2と、第1遊星歯車機構PG1のピニオンギヤP1と一体に構成されたピニオンギヤP2と、モータMのロータシャフトL1に連結されたサンギヤS2とを備えている。ピニオンギヤP1とピニオンギヤP2は、所定間隔で同軸状に連結されており、互いの径寸法及び歯数が異なっている。これらピニオンギヤP1とピニオンギヤP2は、いずれもキャリアCに支持されている。
【0049】
この減速機1−6では、図6(b)の速度線図に示すように、モータMのロータシャフトL1からの出力がサンギヤS2に入力される。そして、第1遊星歯車機構PG1のピニオンギヤP1と第2遊星歯車機構PG2のピニオンギヤP2とが一体に構成されており、かつ、第1遊星歯車機構PG1のリングギヤR1が減速機ケース10に対して固定されているので、減速された駆動力が第2遊星歯車機構PG2のリングギヤR2からディファレンシャル機構Dのギヤケース20に対して出力されるようになっている。この場合、図6(b)に示す速度線図のρ2,ρ3,ρ4について、下記の関係が成り立つ。
ρ2=Zp2/Zs2
ρ3=Zp2/Zr2
ρ4=Zp1/Zr1
ρ4>ρ3
ただし、
Zs2:サンギヤS2の歯数
Zr1:リングギヤR1の歯数
Zr2:リングギヤR2の歯数
Zp1:ピニオンギヤP1の歯数
Zp2:ピニオンギヤP2の歯数
【0050】
本実施形態の減速機1−6では、第4、第5実施形態の減速機1−4,1−5に比べてより大減速が可能である。第4実施形態の減速機1−4は、キャリアCの回転数が高く、ピニオンギヤP1,P2に発生する遠心力が大きくなる。また、ピニオンギヤP1,P2のギヤ反力と遠心力とが同一方向に作用するため、ピニオンギヤP1,P2を支持するベアリング(ピニオンベアリング)に過大な負荷が掛かるおそれがある。これに対して、本実施形態の減速機1−6では、キャリアCの回転数が低く、ピニオンギヤP1,P2に発生する遠心力は小さくなる。また、ピニオンギヤP2のギヤ反力は、サンギヤS2とリングギヤR2とで逆方向に作用するため、打ち消しあう。また、ピニオンギヤP1,P2では、遠心力とリングギヤR1,R2のギヤ反力とが打ち消しあうため、ピニオンギヤP1,P2を支持するベアリング(ピニオンベアリング)の負荷を軽減することができる。
【0051】
また、第5実施形態の減速機1−5では、ピニオンギヤP1,P2の回転数がモータMの回転数(ロータシャフトL1の回転数)よりも増加する。これに対して、本実施形態の減速機1−6では、ピニオンギヤP1,P2の回転数をロータシャフトL1の回転数以下に設定することが可能である。さらに、本実施形態の減速機1−6では、第1遊星歯車機構PG1にサンギヤを設けていないため、ピニオンギヤP1の径をロータシャフトLの外径の位置まで大きくできる。したがって、レシオ設定の自由度が高くなる。また、減速機1−6の外径をコンパクトにレイアウトすることが可能となる。
【0052】
本実施形態の減速機1−6のレシオ、及びモータMの出力軸L1に対するピニオンギヤP1,P2の回転数比の計算例を示す。ここでは、レシオNL=(ρ2+ρ4)/(ρ4−ρ3)である。したがって、ρ4≒ρ3で大減速が可能となる。また、モータMの出力軸L1に対するピニオンギヤP1,P2の回転数比NP=1/(ρ2+ρ4)である。したがって、(ρ2+ρ4)>1に設定すれば、ピニオンギヤP1,P2の回転数をモータMの出力軸L1の回転数以下よりも小さくすることが可能となる。
【0053】
上記の関係を具体的な数値で例示する。Zs2=35,Zr2=97,Zr1=111,Zp2=31,Zp1=45とすると、ρ2=0.886,ρ3=0.320,ρ4=0.405である。よって、レシオNL=15.045となるので、大きな減速比を取ることが可能となる。また、回転数比NP=0.775(<1)となる。したがって、ピニオンギヤP1,P2の回転数をモータの出力軸L1の回転数よりも低く抑えることが可能となる。
【0054】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記各実施形態に示した本発明にかかる電動機用減速機1〜1−5を搭載する車両は、駆動源としてモータのみを備えたEVには限らず、それ以外にも、例えば、モーターアシスト式の四輪駆動システム(前輪をエンジンで駆動し、後輪をモータで補助的に駆動する四輪駆動システム)を備えた車両などにも適用が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1〜1−6 減速機(電動機用減速機)
10 減速機ケース(固定側の部材)
20 ギヤケース(入力部材)
B1〜B4 ベアリング
C1,C2 キャリア
D ディファレンシャル機構(差動機構)
D´ ディファレンシャル機構(プラネタリデフ)
L1 ロータシャフト(出力軸)
L2,L3 車軸
M モータ(電動機)
P1,P2 ピニオンギヤ
PG1 第1遊星歯車機構
PG2 第2遊星歯車機構
R1,R2 リングギヤ
S1,S2 サンギヤ
T 減速機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状の出力軸を有する電動機と、
前記電動機の前記出力軸からの駆動力が入力される減速機構と、
前記減速機構で減速された駆動力を左右の車軸に配分して伝達する差動機構と、を備え、
前記電動機と前記減速機構と前記差動機構とは、互いに同軸上に配列されており、
前記減速機構は、遊星歯車機構で構成されており、
前記差動機構からの出力が伝達される一方の車軸は、前記出力軸の内側を貫通して設置されている
ことを特徴とする電動機用減速機。
【請求項2】
前記減速機構を構成する前記遊星歯車機構は、
前記出力軸からの駆動力が入力される第1遊星歯車機構と、前記第1遊星歯車機構から入力された駆動力を前記差動機構に出力する第2遊星歯車機構と、の2組の遊星歯車機構で構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の電動機用減速機。
【請求項3】
前記遊星歯車機構は、シングルピニオン型の遊星歯車機構である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動機用減速機。
【請求項4】
前記電動機の前記出力軸は、前記第1遊星歯車機構のサンギヤに連結されており、
前記第1遊星歯車機構のキャリアは、前記第2遊星歯車機構のサンギヤに連結されており、
前記第2遊星歯車機構のキャリアは、前記差動機構の入力部材に連結されており、
前記第1遊星歯車機構のリングギヤ及び前記第2遊星歯車機構のリングギヤは、固定側の部材に固定されている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の電動機用減速機。
【請求項5】
前記第2遊星歯車機構のキャリアは、前記差動機構の入力部材と一体に構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の電動機用減速機。
【請求項6】
前記第1遊星歯車機構のピニオンギヤと前記第2遊星歯車機構のピニオンギヤは、同一のキャリアに支持されており、
前記電動機の前記出力軸は、前記キャリアに連結されており、
前記第2遊星歯車機構のサンギヤは、固定側の部材に固定されており、
前記第1遊星歯車機構のサンギヤは、前記差動機構の入力部材に連結されている
ことを特徴とする請求項2に記載の電動機用減速機。
【請求項7】
前記第1遊星歯車機構のピニオンギヤと前記第2遊星歯車機構のピニオンギヤは、同一のキャリアに支持されており、
前記電動機の前記出力軸は、前記キャリアに連結されており、
前記第1遊星歯車機構のリングギヤは、固定側の部材に固定されており、
前記第2遊星歯車機構のリングギヤは、前記差動機構の入力部材に連結されている
ことを特徴とする請求項2に記載の電動機用減速機。
【請求項8】
前記電動機の前記出力軸は、前記第2遊星歯車機構のサンギヤに連結されており、
前記第2遊星歯車機構の前記サンギヤと噛合するピニオンギヤは、前記第1遊星歯車機構のピニオンギヤと一体に構成されて同一のキャリアに支持されており、
前記第1遊星歯車機構のピニオンギヤと噛合するリングギヤは、固定側の部材に固定されており、
前記第2遊星歯車機構のピニオンギヤと噛合するリングギヤは、前記差動機構の入力部材に連結されている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の電動機用減速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−102639(P2011−102639A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30725(P2010−30725)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】