説明

電動車両

【課題】スイングアームの上方の空間を有効利用することができる電動車両の提供。
【解決手段】走行駆動力を発生する電動モータ41と、車体フレーム11の後方に揺動可能に設けられ後端に後輪35を軸支するスイングアーム34と、電動モータ41の駆動力を車輪35に伝達するドライブシャフト52と、車体フレーム11とスイングアーム34とを連結するサスペンション67とを有し、電動モータ41を車両前後方向に沿って回転軸42を配置する縦置きとし車幅方向の中央に対し左右一方に偏寄して配置してドライブシャフト52に連結し、サスペンション67を電動モータ41およびドライブシャフト52に対し前後方向の位置をラップさせて下方かつ車幅方向内方に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
走行駆動力発生用の電動モータを有する車両において、電動モータを含むパワーユニットで後輪を支持するスイングアームを構成し、このスイングアームとその上方の車体フレームとの間に後輪用のサスペンションを配置したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−79054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、スイングアームとその上方の車体フレームとの間に後輪用のサスペンションを配置する構造であると、スイングアームの上方の空間を有効利用できないという課題がある。
【0005】
本発明は、スイングアームの上方の空間を有効利用することができる電動車両の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車体フレーム(例えば実施形態における車体フレーム11)と、走行駆動力を発生する電動モータ(例えば実施形態における電動モータ41)と、前記車体フレームの後方に揺動可能に設けられ後端に後輪(例えば実施形態における後輪35)を軸支するスイングアーム(例えば実施形態におけるスイングアーム34)と、前記電動モータの駆動力を車輪に伝達するドライブシャフト(例えば実施形態におけるドライブシャフト52)と、前記車体フレームと前記スイングアームとを連結するサスペンション(例えば実施形態におけるサスペンション67)と、を有する電動車両において、前記電動モータを車両前後方向に沿って回転軸(例えば実施形態における回転軸(42)を配置する縦置きとし車幅方向の中央に対し左右一方に偏寄して配置して前記ドライブシャフトに連結し、前記サスペンションを前記電動モータおよび前記ドライブシャフトに対し前後方向の位置をラップさせて下方かつ車幅方向内方に配置したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記電動モータおよび前記ドライブシャフトの組を車幅方向の左右に並列配置し、これらの組同士の間に前記サスペンションを配置したことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係る発明において、前記車体フレームは、ステアリングシャフト(例えば実施形態におけるステアリングシャフト14)を軸支するヘッドパイプ(例えば実施形態におけるヘッドパイプ12)と、該ヘッドパイプから後方に延びるメインフレーム(例えば実施形態におけるアッパフレーム20)と、該メインフレームから後方に延びるシートレール(例えば実施形態におけるシートレール23)と、前記メインフレームと前記シートレールとを連結するリヤサブフレーム(例えば実施形態におけるリヤサブフレーム24)とを有し、収納ボックス(例えば実施形態における収納ボックス95)を、前記スイングアームまたは前記ドライブシャフトの上方の前記シートレールの側方の空間部、または、前記スイングアームまたは前記ドライブシャフトと前記シートレールとの間の空間部に配置して、前記シートレールに取り付けたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に係る発明において、前記車体フレームは、ステアリングシャフト(例えば実施形態におけるステアリングシャフト14)を軸支するヘッドパイプ(例えば実施形態におけるヘッドパイプ12)と、該ヘッドパイプから上側にて後方に延びるアッパフレーム(例えば実施形態におけるアッパフレーム20)と、前記ヘッドパイプから下側にて後方に延びるロアフレーム(例えば実施形態におけるロアフレーム21)とを有し、これらアッパフレームおよびロアフレームの間のバッテリ収納部(例えば実施形態におけるバッテリ収納部70)に、前記電動モータに給電するバッテリ(例えば実施形態におけるバッテリ80)を着脱可能に配置するとともに、前記電動モータを前記バッテリ収納部の後方に配置したことを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に係る発明において、前記電動モータは車体フレームに取り付けられており、前記ドライブシャフトは等速ジョイント(例えば実施形態における等速ジョイント53)で前記電動モータに結合されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に係る発明において、前記電動モータは前記スイングアームと一体に揺動することを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に係る発明において、前記ドライブシャフトは、前記電動モータの駆動力を前記後輪に伝達することを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に係る発明において、前記車体フレームは、ステアリングシャフト(例えば実施形態における14)を軸支するヘッドパイプ(例えば実施形態におけるヘッドパイプ12)と、該ヘッドパイプから上側にて後方に延びるアッパフレーム(例えば実施形態におけるアッパフレーム20)と、前記ヘッドパイプから下側にて後方に延びるロアフレーム(例えば実施形態におけるロアフレーム21)とを有し、前記電動モータの下端位置が、前記ロアフレームの下端位置よりも上方に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、電動モータを車両前後方向に沿って回転軸を配置する縦置きとし車幅方向の中央に対し左右一方に偏寄して配置してドライブシャフトに連結するとともに、サスペンションを電動モータおよびドライブシャフトに対し前後方向の位置をラップさせて下方かつ車幅方向内方に配置したため、スイングアームの上方の空間にサスペンションを配置する必要がなくなり、スイングアームの上方の空間を有効利用することができる。しかも、電動モータ、ドライブシャフトおよびサスペンションを前後方向および車幅方向に纏めてコンパクトに配置することができる。また、電動モータを車両前後方向に沿って回転軸を配置する縦置きとしたため、回転軸線方向を車両前後方向に沿う方向に変換する機構が不要となり、さらなるコンパクト化が図れる。加えて、サスペンションを電動モータおよびドライブシャフトの下方に配置したため、電動モータおよびドライブシャフトへの飛び石等をサスペンションで保護することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、電動モータおよびドライブシャフトの組を車幅方向の左右に並列配置し、これらの組同士の間にサスペンションを配置したため、重量物である電動モータとドライブシャフトを左右に振り分け、これらの間にサスペンションを配置して重量バランスの均等化を図ることができる。また、複数の組に分けることで、一組の電動モータおよびドライブシャフトを小型化できるため、配置スペースも小型化でき、その周囲の空間を広く確保できる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、収納ボックスを、スイングアームまたはドライブシャフトの上方のシートレールの側方の空間部、または、スイングアームまたはドライブシャフトとシートレールとの間の空間部に配置して、シートレールに取り付けたため、収納ボックスの容積を確保できる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、アッパフレームおよびロアフレームの間(乗員の跨ぎ部)のスペースを有効利用してバッテリ収納部を配置することになるため、車体のコンパクト化が図れるとともに、その後方に電動モータを配置することにより、バッテリ収納部の高さを確保できる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、電動モータが車体フレームに取り付けられ、ドライブシャフトは等速ジョイントで電動モータに結合されているため、揺動物の重量を軽量化できる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、電動モータがスイングアームと一体に揺動するため、これらをユニット化することができ、組み付け作業性を向上できる。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、ドライブシャフトは、電動モータの駆動力を後輪に伝達するものであるため、電動モータより前方の空間を有効利用することができる。
【0021】
請求項8に係る発明によれば、電動モータの下端位置が、ロアフレームの下端位置よりも上方に位置するため、電動モータの底打ちをロアフレームで防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電動車両を示す側面図である。
【図2】同電動車両の車体フレーム、モータユニットおよびサスペンションを示す図1のA−A断面図である。
【図3】同電動車両の車体フレーム、バッテリ収納部およびバッテリを示す図1のB−B断視図である。
【図4】同電動車両の制御系のブロック図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る電動車両を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第1実施形態に係る電動車両を図1〜図4に基づいて説明する。
【0024】
第1実施形態に係る電動車両は電動二輪車であり、図1に示すように、車体の骨格部を構成する車体フレーム11を有している。車体フレーム11の前端のヘッドパイプ12には、ステム13に設けられたステアリングシャフト14が回転可能に軸支されており、このステム13には左右一対のフロントフォーク15が取り付けられている。これらフロントフォーク15の下端部には前輪16が軸支され、ステム13の上部には、ハンドル17が取り付けられている。これにより、ハンドル17を操作することで、前輪16が転舵可能となっている。
【0025】
また、車体フレーム11は、上記ヘッドパイプ12の上部の左右から上側にて後方に延びる左右一対のアッパフレーム(メインフレーム)20と、ヘッドパイプ12の下部の左右から下側にて後方に延びる左右一対のロアフレーム21とを有しており、左右のそれぞれにおいてアッパフレーム20の後端とロアフレーム21の後端とが繋がるダブルクレードルタイプとなっている。
【0026】
さらに、車体フレーム11は、左右のアッパフレーム20の中間位置からそれぞれ後方に全体として後上がりに延びる左右一対のシートレール23と、左右のアッパフレーム20の後端部からそれぞれ後上がりに延びて左右方向同側にあるアッパフレーム20とシートレール23とを連結する左右一対のリヤサブフレーム24と、車幅方向に延在して左右のロアフレーム21同士を結ぶロアクロスパイプ25と、アッパフレーム20およびリヤサブフレーム24の左右方向同側のもの同士を結ぶ左右一対の支持プレート26と、左右のリヤサブフレーム24の下部からそれぞれ後方に延出する左右一対の支持プレート27とを有している。
【0027】
左右一対のシートレール23にはシート30が取り付けられる。なお、この車両は、車体フレーム11の全体がカウル31で覆われたスクータタイプの車両となっている。
【0028】
左右一対のリヤサブフレーム24には、これらを連結して車幅方向に沿うピボット軸33が設けられ、このピボット軸33にスイングアーム34の前端が回転可能に軸支されている。スイングアーム34は二又に分かれて後方に延出しており、後端に後輪35が回転可能に軸支されている。これにより、スイングアーム34は、車体フレーム11の後方に揺動可能に設けられその後端に後輪35を軸支している。
【0029】
アッパフレーム20およびリヤサブフレーム24の境界上部に設けられた左右の支持プレート26には、これらを結ぶようにモータユニット38が取り付けられている。よって、モータユニット38はアッパフレーム20およびリヤサブフレーム24の間に配置されている。モータユニット38は、その外観を構成するユニットケース39の内部に、図2に示すように、車幅方向の中央に対し左右それぞれに均等に偏寄し且つ上下方向および前後方向の位置を互いに合わせて、走行駆動力を発生する左右一対の電動モータ41が配置されている。これら電動モータ41は、同じものであり、図1に示すように、回転軸42を車両前後方向に沿って配置する縦置きとされている。具体的に、第1実施形態では、回転軸42を車両前後方向に沿って水平に配置している。
【0030】
図2に示すように、左右の電動モータ41を収納するモータユニット38のユニットケース39は、例えばアルミニウム合金製であり、電動モータ41をそれぞれ収納する左右一対の略円筒状の収納部43と、これら収納部43同士を連結する車幅方向中央の連結部44とを有している。連結部44は上部に下方に円弧状に凹む上凹部45が形成され、下部にも上方に円弧状に凹む下凹部46が形成されている。また、ユニットケース39には左右両外側の上部に、左右方向同側の支持プレート26にボルト47で固定される取付ボス部48が形成されている。電動モータ41を収納する左右の収納部43も車両前後方向に沿って水平に配置されている。ユニットケース39は、車幅方向の中央に対し左右対称形状をなしている。
【0031】
なお、図1に示すように、電動モータ41を含むモータユニット38の下端位置は、ロアフレーム21の下端位置よりも上方に位置している。しかも、電動モータ41およびこれを含むモータユニット38は、ロアフレーム21と前後方向の位置をラップさせている。また、電動モータ41およびこれを含むモータユニット38は、アッパフレーム20と前後方向および上下方向の位置をラップさせている。
【0032】
モータユニット38の上方には、モータドライバであるPDU(power driver unit )50が近接して設けられている。PDU50は、電動モータ41およびこれを含むモータユニット38と前後方向および左右方向の位置をラップさせて設けられている。また、PDU50は、シートレール23と前後方向の位置をラップさせており、シートレール23よりも下側に配置されている。具体的には、側面視でアッパレール20とシートレール23とリヤサブフレーム24とで囲まれた範囲内に配置されている。
【0033】
モータユニット38から後方に突出する左右の電動モータ41の回転軸42は、それぞれの駆動力を伝達する左右一対のドライブシャフト52の左右方向同側のものの前端にそれぞれ連結されている。左右一対のドライブシャフト52は、同じものであり、それぞれ前端に等速ジョイント53を有し、等速ジョイント53において左右方向同側の回転軸42に結合されている。等速ジョイント53は、回転軸42と、ドライブシャフト52の等速ジョイント53から後方に延出するシャフト本体54とを揺動可能かつ等速回転可能に連結する。左右一対のドライブシャフト52は後輪35の左右に配置される。
【0034】
左右一対のドライブシャフト52の後端は左右一対の傘歯ピニオンギヤ56の左右方向同側のものにそれぞれ同軸回転可能に連結されており、左右一対の傘歯ピニオンギヤ56は、左右一対の傘歯ホイールギヤ57の左右方向同側のものにそれぞれ噛み合っている。左右一対の傘歯ピニオンギヤ56は、同じものであり、左右一対の傘歯ホイールギヤ57も、同じものである。これら左右一対の傘歯ホイールギヤ57は後輪35の左右両側に固定されている。傘歯ピニオンギヤ56および傘歯ホイールギヤ57は、車両前後方向に沿うドライブシャフト52の回転軸線を車幅方向に沿う方向に90度変換する。
【0035】
ここで、以上の等速ジョイント53を含む左右一対のドライブシャフト52、左右一対の傘歯ピニオンギヤ56および左右一対の傘歯ホイールギヤ57は、スイングアーム34の外観を構成するアームケース59内に収納されている。そして、左右一対の電動モータ41が、互いに逆回転することで、これら左右一対のドライブシャフト52、左右一対の傘歯ピニオンギヤ56および左右一対の傘歯ホイールギヤ57がそれぞれの駆動力を後輪35に同じ回転方向に伝達する。
【0036】
スイングアーム34の前側の下部の車幅方向中央には、車幅方向に沿う連結軸61が設けられており、この連結軸61の両端に左右一対のリンクプレート62の一端が回転可能に軸支されている。これらのリンクプレート62は、それぞれの中間位置が、左右の支持プレート27を車幅方向に沿って繋ぐ支軸63に回転可能に軸支されており、リンクプレート62の他端に車幅方向に沿って連結軸64が設けられている。この連結軸64の前方には、左右のロアフレーム21同士を結ぶロアクロスパイプ25の車幅方向中央に車幅方向に沿って設けられた連結軸65が配置されている。
【0037】
そして、リンクプレート62の連結軸64にサスペンション67の後端が回転可能に軸支され、ロアクロスパイプ25の連結軸65にサスペンション67の前端が回転可能に軸支されている。これにより、連結軸64と連結軸65とで一本のみのサスペンション67が車両前後方向に沿う姿勢で車幅方向中央に保持されている。言い換えれば、この一本のみのサスペンション67が、連結軸61、リンクプレート62、連結軸64および連結軸65を介して、車体フレーム11のロアクロスパイプ25とスイングアーム34とを連結する。
【0038】
サスペンション67は、図示略のコイルスプリングと緩衝器とから構成されるものであり、スイングアーム34がピボット軸33を中心に上方に揺動すると、スイングアーム34に連結されたリンクプレート62が支軸63を中心に図1の反時計回り方向に回転し、その下部の連結軸64を後方に移動させて、サスペンション67を伸ばす。スイングアーム34がピボット軸33を中心に下方に揺動すると、スイングアーム34に連結されたリンクプレート62が支軸63を中心に図1の時計回り方向に回転し、その下部の連結軸64を前方に移動させて、サスペンション67を縮める。
【0039】
ここで、サスペンション67は、電動モータ41およびこれを含むモータユニット38に対し、前後方向の位置をラップさせて下方に配置されており、図2に示すように電動モータ41に対してはさらに車幅方向内方に配置されている。また、サスペンション67は、図1に示すように、ドライブシャフト52およびこれを含むスイングアーム34に対しても、前後方向の位置をラップさせて下方かつ車幅方向内方に配置されている。しかも、サスペンション67は、上下方向の位置を合わせ車幅方向の左右に並列配置された電動モータ41およびドライブシャフト52の組同士の間に配置されている。加えて、サスペンション67は、図2に示すように、電動モータ41およびこれを含むモータユニット38と上下方向の位置をラップさせるように下凹部46内に上部を入り込ませて配置されており、車幅方向については、左右の電動モータ41それぞれと位置をラップさせ、モータユニット38の範囲内に全体が配置されている。加えて、サスペンション67は、図1に示すように、ロアフレーム21と前後方向および上下方向の位置をラップさせて左右のロアフレーム21の間に配置されている。
【0040】
図3に示すように、車体フレーム11の左右一対のアッパフレーム20および左右一対のロアフレーム21の間には、バッテリ収納部70が設けられている。このバッテリ収納部70は、図1に示すように、電動モータ41を含むモータユニット38、ロアクロスパイプ25およびPDU50の前方に配置されている。言い換えれば、電動モータ41を含むモータユニット38、ロアクロスパイプ25およびPDU50は、バッテリ収納部70の後方に配置されている。
【0041】
このバッテリ収納部70には、電動モータ41に給電する高圧のバッテリ80が着脱可能に配置されている。バッテリ収納部70には、前後方向に複数列、上下方向に複数段のバッテリ80が収納可能となっており、具体的には前後方向に5列、上下方向に2段の合計10機のバッテリ50が収納可能となっている。バッテリ収納部70は、上方に開口可能であり、上方に設けられたカウル31の図示略のカバーおよびシート30を開くことでバッテリ80が着脱可能となっている。なお、バッテリ収納部70に収納するバッテリ80の数は、予定走行距離等に応じて増減が可能であり、バッテリ80の搭載数を減らすことにより空くバッテリ収納部70のスペースを収納スペースとして有効利用できるようになっている。
【0042】
カウル31の前部を構成するフロントカウル82には、前方に開口する吸気口83が設けられており、フロントカウル82を含むカウル31の内側には、吸気口83に繋がる吸気ダクト84が設けられている。この吸気ダクト84は、バッテリ収納部70の前方上部に繋がっている。他方、バッテリ収納部70には、後端の底部に排気口85が設けられている。よって、吸気口83から吸気ダクト84内に導入された冷却用のエアがバッテリ収納部70の前方上部から後端の底部の排気口85に向けてバッテリ収納部70内を流れ、バッテリ収納部70内のバッテリ80を冷却する。なお、吸気ダクト84には走行風が導入されることになるが、停車時にもエアを吸気口83から吸い込むための電動ファン86が吸気ダクト84内に配置されている。また、吸気ダクト84内には、比較的発熱量の多いDC−DCコンバータ88が配置されている。
【0043】
フロントカウル82の前端面には、例えばAC100Vの外部電源の電源コードが着脱される充電プラグ90が設けられており、フロントカウル82内のこの充電プラグ90とヘッドパイプ12との間に、外部電源を用いてバッテリ80を充電する充電器91が設けられている。
【0044】
左右のドライブシャフト52が内蔵されたスイングアーム34の上方かつ左右のシートレール23のそれぞれの車幅方向外側の側方の空間部には、左右一対の収納ボックス95が配置されている。これら収納ボックス95は、図示略のブラケットを介してシートレール23に取り付けられている。なお、これらよりも小型の収納ボックスを、左右のドライブシャフト52が内蔵されたスイングアーム34と、左右のシートレール23のそれぞれとの間に配置することも可能である。
【0045】
ここで、図4に示すように、バッテリ80からの電力は、図示略のメインスイッチと連動するコンタクタ100を介してモータドライバたるPDU50に供給され、PDU50にて直流から3相交流に変換された後に、3相交流モータである電動モータ41に供給される。また、バッテリ80からの出力電圧は、DC−DCコンバータ88を介して降圧されて、12Vの低圧のサブバッテリ101や灯火器、電動ファン86等の一般電装部品102、並びにMCU(motor control unit)103等の制御系部品に供給される。
【0046】
バッテリ80は、例えばAC100Vの電源に接続される上記した充電器91により充電される。バッテリ80の充放電状況や温度等は、BMU(battery managing unit )104に監視され、この情報がMCU103と共用される。MCU103には、スロットル(アクセル)センサ105からの出力要求情報が入力され、この出力要求情報に基づきMCU103がPDU50を介して電動モータ41を駆動制御する。なお、バッテリ80の種類によってはサブバッテリ101を無くした構成とすることも可能である。
【0047】
以上に述べた第1実施形態に係る電動車両によれば、電動モータ41を車両前後方向に沿って回転軸42を配置する縦置きとし車幅方向の中央に対し左右一方に偏寄して配置してドライブシャフト52に連結するとともに、サスペンション67を電動モータ41およびドライブシャフト52に対し前後方向の位置をラップさせて下方かつ車幅方向内方に配置したため、スイングアーム34の上方の空間にサスペンションを配置する必要がなくなり、スイングアーム34の上方の空間を有効利用することができる。しかも、電動モータ41、ドライブシャフト52およびサスペンション67を前後方向および車幅方向に纏めてコンパクトに配置することができる。
【0048】
また、電動モータ41を車両前後方向に沿って回転軸42を配置する縦置きとしたため、回転軸線方向を車両前後方向に沿う方向に変換する機構が不要となり、さらなるコンパクト化が図れる。加えて、サスペンション67を電動モータ41およびドライブシャフト52の下方に配置したため、電動モータ41およびドライブシャフト52への飛び石等をサスペンション67で保護することができる。
【0049】
電動モータ41およびドライブシャフト52の組を車幅方向の左右に並列配置し、これらの組同士の間にサスペンション67を配置したため、重量物である電動モータ41を左右に振り分け、これらの間にサスペンション67を配置して重量バランスの均等化を図ることができる。また、複数の組に分けることで、一組の電動モータ41およびドライブシャフト52を小型化できるため、これらの配置スペースも小型化でき、その周囲の空間を広く確保できる。
【0050】
収納ボックス95を、ドライブシャフト52を含むスイングアーム34の上方のシートレール23の側方の空間部に配置して、シートレール23に取り付けたため、スイングアーム34の上方の空間が確保されていることにより、収納ボックス95の容積を確保できる。なお、上記したように、収納ボックス95を、ドライブシャフト52を含むスイングアーム34とシートレール23との間の空間部に配置しても、同様に収納ボックス95の容積を確保できる。また、ドライブシャフト52をスイングアーム34の外側に設けた場合には、収納ボックスを、スイングアームまたはドライブシャフトの上方のシートレールの側方の空間部、または、スイングアームまたはドライブシャフトとシートレールとの間の空間部に配置すれば、同様に収納ボックスの容積を確保できる。
【0051】
アッパフレーム20およびロアフレーム21の間(乗員の跨ぎ部)のスペースを有効利用してバッテリ収納部70を配置することになるため、車体のコンパクト化が図れるとともに、その後方に電動モータ41を配置することにより、バッテリ収納部70の高さを確保でき、結果として容積を確保できる。したがって、バッテリ収納部70により多くのバッテリ80を搭載可能となり、またバッテリ80の搭載数を減らした場合に発生する収納スペースも広くなる。
【0052】
電動モータ41が車体フレーム11に取り付けられ、ドライブシャフト52は等速ジョイント51で電動モータ41に結合されているため、揺動物であるドライブシャフト52等を含むスイングアーム34の重量を軽量化できる。
【0053】
ドライブシャフト52は、電動モータ41の駆動力を後輪35に伝達するものであるため、電動モータ41より前方の空間を有効利用することができる。したがって、バッテリ収納部70の容積を確保できる。
【0054】
電動モータ41の下端位置が、ロアフレーム21の下端位置よりも上方に位置するため、電動モータ41の底打ちをロアフレーム21で防止することができる。
【0055】
フロントカウル82の前端面に充電プラグ90が設けられているため、車両の停車時に充電プラグ90を容易に電源に近づけることができる。よって、充電作業が容易となる。
【0056】
吸気ダクト84でバッテリ収納部70に冷却用の外気を導入するため、バッテリ80を良好に冷却することができる。
【0057】
吸気ダクト84内にDC−DCコンバータ88を配置するため、DC−DCコンバータ88を良好に冷却することができる。
【0058】
次に、本発明の第2実施形態に係る電動車両を主に図5に基づいて、第1実施形態に係る電動車両との相違部分を中心に説明する。
【0059】
第2実施形態に係る電動車両では、スイングアーム34のアームケース59内に左右の電動モータ41が収納されている。つまり、左右の電動モータ41もスイングアーム34と一体に揺動する。これにより、ドライブシャフト52は第1実施形態の等速ジョイント53を介さずに電動モータ41の回転軸32に同軸配置されて連結されている。その結果、電動モータ41は車両前後方向に沿って回転軸42を配置する縦置きとされるものの、水平ではなく、スイングアーム34と同様に若干後下がりに傾斜している。また、第1実施形態のユニットケース39および支持プレート26も設けられていない。
【0060】
このような第2実施形態に係る電動車両によれば、電動モータ41がスイングアーム34と一体に揺動するため、これらをユニット化することができ、組み付け作業性を向上できる。
【0061】
なお、以上の第1,第2実施形態においては、電動モータ41を二つ有する場合を例にとり説明したが、一つのみ設ける場合にも適用可能である。
【0062】
また、以上の第1,第2実施形態においては、電動二輪車を例にとり説明したが、後輪二輪をスイングアームで支持するタイプの鞍乗り型の電動四輪車等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
11 車体フレーム
12 ヘッドパイプ
14 ステアリングシャフト
20 アッパフレーム(メインフレーム)
21 ロアフレーム
23 シートレール
24 リヤサブフレーム
34 スイングアーム
35 後輪(車輪)
41 電動モータ
42 回転軸
52 ドライブシャフト
53 等速ジョイント
67 サスペンション
70 バッテリ収納部
80 バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(11)と、
走行駆動力を発生する電動モータ(41)と、
前記車体フレーム(11)の後方に揺動可能に設けられ後端に後輪(35)を軸支するスイングアーム(34)と、
前記電動モータ(41)の駆動力を車輪(35)に伝達するドライブシャフト(52)と、
前記車体フレーム(11)と前記スイングアーム(34)とを連結するサスペンション(67)と、
を有する電動車両において、
前記電動モータ(41)を車両前後方向に沿って回転軸(42)を配置する縦置きとし車幅方向の中央に対し左右一方に偏寄して配置して前記ドライブシャフト(52)に連結し、
前記サスペンション(67)を前記電動モータ(41)および前記ドライブシャフト(52)に対し前後方向の位置をラップさせて下方かつ車幅方向内方に配置したことを特徴とする電動車両。
【請求項2】
前記電動モータ(41)および前記ドライブシャフト(52)の組を車幅方向の左右に並列配置し、これらの組同士の間に前記サスペンション(67)を配置したことを特徴とする請求項1記載の電動車両。
【請求項3】
前記車体フレーム(11)は、ステアリングシャフト(14)を軸支するヘッドパイプ(12)と、該ヘッドパイプ(12)から後方に延びるメインフレーム(20)と、該メインフレーム(20)から後方に延びるシートレール(23)と、前記メインフレーム(20)と前記シートレール(23)とを連結するリヤサブフレーム(24)とを有し、
収納ボックス(95)を、前記スイングアーム(34)または前記ドライブシャフト(52)の上方の前記シートレール(23)の側方の空間部、または、前記スイングアーム(34)または前記ドライブシャフト(52)と前記シートレール(23)との間の空間部に配置して、前記シートレール(23)に取り付けたことを特徴とする請求項1または2記載の電動車両。
【請求項4】
前記車体フレーム(11)は、ステアリングシャフト(14)を軸支するヘッドパイプ(12)と、該ヘッドパイプ(12)から上側にて後方に延びるアッパフレーム(20)と、前記ヘッドパイプ(12)から下側にて後方に延びるロアフレーム(21)とを有し、
これらアッパフレーム(20)およびロアフレーム(21)の間のバッテリ収納部(70)に、前記電動モータ(41)に給電するバッテリ(80)を着脱可能に配置するとともに、前記電動モータ(41)を前記バッテリ収納部(70)の後方に配置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の電動車両。
【請求項5】
前記電動モータ(41)は車体フレーム(11)に取り付けられており、前記ドライブシャフト(52)は等速ジョイント(53)で前記電動モータ(41)に結合されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の電動車両。
【請求項6】
前記電動モータ(41)は前記スイングアーム(34)と一体に揺動することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の電動車両。
【請求項7】
前記ドライブシャフト(52)は、前記電動モータ(41)の駆動力を前記後輪(35)に伝達することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載の電動車両。
【請求項8】
前記車体フレーム(11)は、ステアリングシャフト(14)を軸支するヘッドパイプ(12)と、該ヘッドパイプ(12)から上側にて後方に延びるアッパフレーム(20)と、前記ヘッドパイプ(12)から下側にて後方に延びるロアフレーム(21)とを有し、
前記電動モータ(41)の下端位置が、前記ロアフレーム(21)の下端位置よりも上方に位置することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項記載の電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−96613(P2012−96613A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244335(P2010−244335)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】