説明

電子デバイス及びその製造方法

【課題】高性能及び高機能で、高周波特性に優れ、コストダウンに有効な絶縁構造を持つ電子デバイス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板1は、その厚み方向に伸びる縦孔30を有している。絶縁物充填層3は、縦孔30内にその内周面を覆うように充填してなる環状層である。縦導体2は、絶縁物充填層3によって囲まれた領域20内に充填された凝固金属体でなる。絶縁充填層3は、有機絶縁物又はガラスを主成分とする無機絶縁物と、ナノコンポジット構造のセラミックとを有する層である。ナノコンポジット構造のセラミックは、常温比抵抗が1014Ω・cmを超え、比誘電率が4〜9の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン基板などの半導体基板に多数の貫通電極を設けるTSV(Through-Silicon-Via)技術が提案されている。TSV技術を使えば、大量の機能を小さな占有面積の中に詰め込めるようになるし、また、素子同士の重要な電気経路が劇的に短くできるために、処理の高速化が導かれる。
【0003】
TSV技術の適用した場合、貫通電極をシリコン基板から電気絶縁しなければならない。電気絶縁の手段として、特許文献1は、シリコン基板を貫通する貫通電極を、間隔を隔てて取り囲むように、シリコン基板を貫通するリング状の分離溝を設け、分離溝の底面及び側面上に直接シリコン膜を形成し、次に分離溝内に残された隙間を埋めるように、シリコン膜上に絶縁膜を形成し、分離溝の内周側面及び外周側面とそれぞれ接するシリコン膜の表面を熱酸化して、シリコン熱酸化膜とする技術を開示している。
【0004】
しかし、シリコン基板を貫通する貫通電極を、間隔を隔てて取り囲むように、リング状の絶縁分離溝を設ける構造では、貫通電極間の距離が大きくならざるを得ないので、貫通電極の高密度分布、電子デバイスのより一層の高性能化、高機能化に限界を生じる。
【0005】
しかも、分離溝の底面及び側面上に直接、シリコン膜を形成する工程、シリコン膜形成後に、分離溝内に残された隙間を埋めるようにシリコン膜上に絶縁膜を形成する工程、更に、シリコン膜の表面を熱酸化する工程が必要であり、工程が複雑で、長くならざるを得ない。従来の平面的配置技術をTSV技術によって置き換える際に、工業的量産上、重要視されるのは、コスト・パフォーマンスであり、上述した先行技術では、この要請に充分には応えることができない。
【0006】
更に、上述した先行技術では、膜によって分離溝を満たそうとするものであるため、分離溝の溝幅は、例えば2μm前後の極めて狭小の値にせざるを得ず、ウエハの通常の厚みを考慮すると、分離溝のアスペクト比は、100〜200にもなってしまう。このため、分離溝に対するシリコン膜形成工程が困難になる。
【0007】
TSV技術を適用する必要のある電子デバイスでは、処理及び転送速度の高速化等の観点から、高周波化されるから、貫通電極を通る高周波電流の漏洩を、極力抑える必要がある、即ち、高周波特性を改善する必要がある。
【0008】
TSV技術は、センサーモジュル、光電気モジュール、ユニポーラトランジスタ、MOS FET、CMOS FET、メモリーセル、もしくは、それらの集積回路部品(IC)、又は各種スケールのLSI、発光ダイオード、太陽電池など、半導体基板を機能要素とする電子デバイスに広く適用され得るものであるが、何れの場合にも、上述した問題点が発生する。なお、関連する先行技術文献として、特許文献2〜7がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−251964号公報
【特許文献2】特開2000−311982号公報
【特許文献3】特開2004−095849号公報
【特許文献4】特開2009−277927号公報
【特許文献5】特開2006−024653号公報
【特許文献6】特開2006−049557号公報
【特許文献7】特開平10−215044号公報
【特許文献8】特開2008−47895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、高性能及び高機能で、高周波特性の優れた電子デバイス及びその製造方法を提供することである。
【0011】
本発明のもう一つの課題は、コストダウンに有効な絶縁構造を持つ電子デバイス及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するため、本発明に係る電子デバイスは、半導体基板と、絶縁物充填層と、縦導体とを含む。前記半導体基板は、その厚み方向に伸びる縦孔を有している。前記絶縁物充填層は、前記縦孔内にその内周面を覆うように充填してなる環状層であって、有機絶縁物又はガラスを主成分とする無機絶縁物と、ナノコンポジット構造のセラミックとを有する層である。前記ナノコンポジット構造のセラミックは、常温比抵抗が1014Ω・cmを超え、比誘電率が4〜9の範囲にある。前記縦導体は、前記絶縁物充填層によって囲まれた領域内に充填された凝固金属体でなる。
【0013】
上述したように、本発明に係る電子デバイスでは、半導体基板は、その厚み方向に伸びる縦孔を有しており、絶縁物充填層は、縦孔内にその内周面を覆うように充填してなる環状層であり、縦導体は、絶縁物充填層によって囲まれた領域内に充填されているから、貫通電極等で代表される縦導体が、環状の絶縁物充填層よって、隣接する他の縦導体から電気的に絶縁される。
【0014】
しかも、絶縁物充填層は、ガラスを主成分とする無機絶縁物、又は、有機絶縁物を、縦孔内に充填してなるものであり、縦導体は絶縁物充填層によって囲まれた領域内に充填された導体でなるから、貫通電極を、間隔を隔てて取り囲むように、リング状の絶縁分離溝を設ける従来構造と異なって、縦導体及び絶縁物充填層が、縦孔の内部に集約される。このため、縦導体及び絶縁物充填層の占有面積が小さくなり、隣接する縦導体間ピッチ距離が縮小される。この結果、縦導体の分布密度を上げ、高性能及び高機能の電子デバイスを実現することができるようになる。
【0015】
絶縁物充填層は、縦孔内に充填してなるものであり、縦導体は絶縁物充填層によって囲まれた領域内に充填された導体でなるから、両者は、共に、縦孔の内部に充填するという簡単、かつ、安価なプロセスで実現することができる。「充填」とは、「詰め込んでいっぱいにすること」であり、スパッタなどの成膜方法とは区別される。
【0016】
絶縁物充填層は、有機絶縁物又はガラスを主成分とする無機絶縁物のいずれかを有する。これらの絶縁物としては、既に、比誘電率及び比抵抗の異なる種々の材料が知られているから、材料の選択によって比誘電率及び比抵抗を調整し、それによって、高周波領域における信号漏洩を低減させ、信号伝送特性を向上させることができる。
【0017】
また、有機絶縁物は、ペースト化が容易である。無機絶縁物としても、液状ガラス、即ち、ペースト状のガラスが知られている。従って、これらのペースト材料を縦孔内に充填するという簡単、かつ、安価なプロセスでコストの安価な電子デバイスを実現することができる。
【0018】
前記絶縁物充填層は、成分として、有機絶縁物又はガラスを主成分とする無機絶縁物とともに、ナノコンポジット構造のセラミックを有している。ナノコンポジット構造のセラミックは、常温比抵抗が1014Ω・cmを超え、比誘電率が4〜9の範囲にある。これよって、絶縁物充填層全体としての比誘電率及び比抵抗を調整し、高周波領域における信号漏洩を低減し、信号伝送特性を向上させることができる。
【0019】
本発明に係る電子デバイスは、更に、電磁シールド層を含んでいてもよい。電磁シールド層は、絶縁物充填層に埋設され、縦導体の周りを包囲している。上述した電磁シールド層によれば、半導体回路などの能動素子、アンテナなどの受動素子でなる回路素子を設けた半導体基板において、縦導体(貫通電極)に流れる高周波電流に起因して発生する電磁界による回路素子の特性変動を回避することができる。
【0020】
本発明に係る電子デバイスは、インターポーザとしての形態をとることができるし、半導体素子を有する半導体ウエハ又は半導体装置の形態をとることもできる。そのような電子デバイスの典型は、三次元システム・パッケージ(3D-SiP)である。その他、発光ダイオード、太陽電池又はそれを用いた装置などであってもよい。
【0021】
なお、先行技術文献として挙げた特許文献2〜8の何れも、次の点で本発明とは異なる。まず、特許文献2の導電層は、第2の貫通孔内に流動性の導電性樹脂等を充填して形成されるものであって、凝固金属体ではない。したがって、凝固金属体の場合に考慮しなければならない耐熱性の問題がない。さらに、中間絶縁層が、ガラスを主成分とする無機絶縁膜、又は、有機絶縁膜に、高周波特性改善用のナノコンポジット構造セラミックを含有させたものであることを示唆する記載がない。
【0022】
次に、特許文献3において、第1のシリコン酸化膜は、シリコン基板を熱酸化することによって得られるものである。特許文献4では、半導体基板である場合は、その両面及び貫通電極と基板との界面に、絶縁膜を設ける。絶縁膜は、SiO2又はAl23などの膜であると記載されているに過ぎない。
【0023】
特許文献5において、縦導体に対応する導電層(第2導電層)は、メッキの層であるし、絶縁膜はシリコン酸化膜である。特許文献6の第1の導電体は、電解めっき工程によって形成されるものであるし、第1及び第2の絶縁の材料としてはSiO2が例示されているにすぎない。
【0024】
特許文献7において、メタライズ配線導体は、例えばタングステン・モリブデン・銅・銀等の金属焼結体から成るものであって、凝固金属体ではない。筒状メタライズ導体の内側に配設されたセラミック充填材は、例えば酸化アルミニウム質焼結体・窒化アルミニウム質焼結体・ムライト質焼結体・炭化珪素質焼結体・ガラスセラミック焼結体等のセラミック材料から成るものである。特許文献8には、保護層が記載されているが、この保護層は、酸化ケイ素(SiO2)でなるのである。
【0025】
上述したように、特許文献2〜8の何れにも、ガラスを主成分とする無機絶縁膜、又は、有機絶縁膜と、高周波特性改善用のナノコンポジット構造セラミックとを有する点については、記載がない。
本発明本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。但し、添付図面は、単なる例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る電子デバイスの一部を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図ある。
【図3】本発明に係る電子デバイスの別の実施形態における一部を示す平面図である。
【図4】本発明に係る基板を用いた電子デバイスの例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る基板を用いた電子デバイスの別の例を示す断面図である。
【図6】本発明に係る電子デバイスの製造方法を示す図である。
【図7】本発明に係る電子デバイスの別の製造方法を示す図である。
【図8】図7に示した工程の後の工程を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1及び図2を参照すると、本発明に係る電子デバイスの一例として、インターポーザが図示されている。このインターポーザは、半導体基板1と、縦導体2と、絶縁物充填層3とを含む。半導体基板1は、例えば、厚みT1のシリコン基板であり、ウエハ、又は、ウエハから切り出されたチップの形態を有する。厚みT1は、限定するものではないが、50〜700μm程度である。
【0028】
半導体基板1は、その厚み方向に伸びる縦孔30を有している。実施の形態に示す縦孔30は、内径D1を有して、半導体基板1を厚み方向に貫通しており、基板面に想定されるXY平面でみて、X方向及びY方向に所定の配置ピッチDx、Dyをもって、例えば、マトリクス状に整列して配置される。もっとも、配置ピッチDx、Dyは、一定寸法である必要はないし、その孔形も、円形状、角形状など、任意の形状を採ることができる。
【0029】
絶縁物充填層3は、無機絶縁物又は有機絶縁物を、縦孔30の内部に充填した環状の層である。従って、絶縁物充填層3の内側には、筒状の領域20が生じる。縦導体2は、絶縁物充填層3によって囲まれたこの筒状の領域20の内部に充填されている。実施の形態に示す縦導体2は、半導体基板1を貫通する貫通電極である。縦導体2のディメンションは、一例として例示すると、配置ピッチDx、Dy、が4〜100μmの範囲、最大部の径D2が0.5〜25μmの範囲である。
【0030】
上述したように、半導体基板1は、その厚み方向に伸びる縦孔30を有しており、絶縁物充填層3は、縦孔30の内周面を覆う環状の層であり、縦導体2は絶縁物充填層3によって囲まれた領域20の内部に充填されているから、貫通電極等で代表される縦導体2が、環状の絶縁物充填層3よって、隣接する他の縦導体2から電気的に絶縁される。
【0031】
しかも、絶縁物充填層3は、絶縁物を縦孔内に充填してなるものであり、縦導体2は絶縁物充填層3によって囲まれた領域20内に充填された導体でなるから、貫通電極を、間隔を隔てて取り囲むように、リング状の絶縁分離溝を設ける従来構造と異なって、縦導体2及び絶縁物充填層3が、縦孔30の内部に集約される。このため、縦導体2及び絶縁物充填層3の占有面積が小さくなり、隣接する縦導体間ピッチ距離が縮小される。この結果、縦導体2の分布密度を上げ、高性能及び高機能の電子デバイスを実現することができるようになる。
【0032】
しかも、絶縁物充填層3は、無機絶縁物又は有機絶縁物の中から、比誘電率が低く、比抵抗の高いものを選択して用いることができる。従って、絶縁物充填層3の全体としての比誘電率及び比抵抗を、材料選択によって調整し、それによって、高周波領域における信号漏洩を低減させ、信号伝送特性を向上させることができる。
【0033】
絶縁物充填層3は、有機絶縁物のペースト、又は、液状ガラス、即ち、ガラスペーストを縦孔30の内部に充填し、加圧して硬化させることによって形成し得る。従って、絶縁物充填層3は、縦孔30の内部にペースト材料を充填し、硬化させるという簡単、かつ、安価なプロセスで形成することができる。
【0034】
しかも、絶縁物充填層3は、充填層であるので、成膜プロセスを必要とする従来技術と異なって、縦孔30の溝幅を狭くしなければならない理由がなくなる。このため、絶縁物充填層3の形成工程が容易化される。
【0035】
絶縁物充填層3を構成する有機絶縁物としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂、液晶ポリマ、紫外線硬化型樹脂などを挙げることができる。
【0036】
絶縁物充填層3を構成する無機絶縁物としては、ガラスを主成分とするものが、その典型例である。ガラス材料としては、種々のものを用い得る。一例として、SiO、PbO、B23、ZnO、MgO、Al23、Na2CO、CaCO3、NaO、CaO、KOの少なくとも一種を含むガラス材料を例示することができる。これらのガラス材料から、比誘電率が低く、比抵抗の高いものを選択して用いる。従って、絶縁物充填層33の全体としての比誘電率及び比抵抗を調整し、それによって、高周波領域における信号漏洩を低減し、信号伝送特性を向上させることができる。
【0037】
絶縁物充填層3は、ガラス成分とともに、ナノコンポジット構造のセラミックを含んでいる。ナノコンポジット構造のセラミックは、高周波特性改善のためのものであって、その比誘電率及び比抵抗を選択することによって、絶縁物充填層33の全体としての比誘電率及び比抵抗を調整し、GHzの高周波領域における信号漏洩を低減させ、信号伝送特性を向上させることができる。そのようなセラミック材料としては、常温比抵抗が1014Ω・cmを超え、比誘電率が4〜9の範囲にあるアルミナ(Al)、ムライト(3Al・2SiO)、コージライト(2MgO・2Al・5SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、窒化珪素(Si)又は窒化アルミ(AlN)などを挙げることができる。
【0038】
縦導体2は、メッキ法、溶融金属充填法又は導電ペースト充填法など、公知技術の適用によって形成することができる。縦導体2を組成する材料は、形成方法によって異なる。メッキ法の場合には、主にCuメッキ膜が用いられ、溶融金属充填法の場合には、Ag、Cu、Au、Pt、Pd、Ir、Al、Ni、Sn、In、Bi、Znの群から選択された少なくとも1種の金属元素を含む金属成分を用いることができる。
【0039】
上述した金属成分及びそれによって得られた縦導体2も、好ましくは、ナノコンポジット構造を有する。
【0040】
上述したナノコンポジット構造を有する金属成分を用いることの利点は、ナノコンポジット構造には、等軸化を促進する働きが備わっているから、縦導体2に発生する応力が小さくなることである。
【0041】
なお、ナノコンポジット構造とは、複数の元素の一方の結晶粒内にナノ粒子を分散(粒内ナノコンポジット結晶構造)させるか、又は、結晶粒界にナノ粒子を分散(粒界ナノコンポジット結晶構造)させたものをいう。単元素の場合には、結晶組織と非結晶組織とが存在しているものをいい、結晶化率が高くなるほど、ナノコンポジット構造が顕著になる。
【0042】
本発明に係る電子デバイスは、図1〜図2に示したインターポーザとしての形態のほか、半導体基板1の内部に回路素子5を有する形態をとることもできる。図3にその一例を示す。図において、図1〜図2に現れた構成部分に相当する部分については、同一参照符号を付し、重複説明は省略する。
【0043】
図3を参照すると、能動素子又は受動素子などの回路素子5が設けられた半導体基板1において、絶縁物充填層3の層厚方向で見て、その中間部に電磁シールド層4が埋設されている。この電磁シールド層4は、縦導体2の周りを包囲しており、環状である。電磁シールド層4は、絶縁物充填層3の層厚方向で見て、その中間部に設けられているので、絶縁物充填層3は、外側絶縁層31と、内側絶縁層32に二分されることになる。
【0044】
一般的にいって、電磁シールドは、電磁波が導電性の材料を通過するとき、その表面での反射と内部での吸収とによって、電磁波に減衰を与える現象として説明される。電磁シールド層4のための材料としては、一般にこの種の材料として知られている金属材料を用いることができる。
【0045】
上述した電磁シールド層4によれば、半導体回路などの能動素子、アンテナなどの受動素子でなる回路素子5を設けた半導体基板1において、縦導体2に流れる高周波電流に起因して発生する電磁界による回路素子5の特性変動を回避することができる。
【0046】
更に、本発明に係る電子デバイスは、基板の複数枚を積層して実現することができる。図4にその実施の形態の一例を示す。図4において、図1〜図3に現れた構成部分に相当する部分については、同一参照符号を付し、重複説明は省略する。
【0047】
図4に示した実施の形態では、図1〜図2に示した基板INTの上に、図3に示した複数枚nの基板SM1〜SMnを順次に積層し、接合した構造となっている。基板INTの縦導体2には、マザーボード接続用の金属ボール71が接合されている。
【0048】
基板SM1〜SMnのうち、互いに隣接する基板、例えば、基板SM1及び基板SM2は、一方の基板SM2の縦導体2に備えられた接続導体61が、他方の基板SM1の縦導体2に備えられた接続導体62と、接合膜63及び酸化防止膜64によって接合されている。接合膜63は、第1金属または合金成分と、この第1金属または合金成分よりは融点の高い第2金属または合金成分とを含んでいて、溶融温度が第1金属または合金成分の融点よりも高くなっている。
【0049】
酸化防止膜64は、貴金属膜で構成されており、フラックス・レスで接合するための機能を発揮する。酸化防止膜64を構成する貴金属膜は、好ましくは、Ag、Au、Pd及びPtの群から選択された少なくとも一種を含む。更に、貴金属膜は、膜厚が100nm以下であることが好ましい。この範囲であれば、全体膜厚に対する膜厚増加を抑えつつ、本来の酸化防止機能を発揮させることができる。
【0050】
上述した接合膜63の構成によれば、接合のための熱処理時には、接合膜63の微細膜厚に起因して生じる微細サイズ効果により、第1金属または合金成分の融点に近い温度で、第2金属または合金成分を溶融させることができる。勿論、このとき、第1金属または合金成分も溶融する。この際、第1金属または合金成分の低融点金属は接続導体4と反応して、金属間化合物を形成して消費され、接合後は融点が大幅に上昇する。
【0051】
しかも、接合膜63は、凝固後の溶融温度が、主として、第2金属または合金成分の融点によって支配されるから、凝固後の完成品である電子デバイスでは、接合膜63の溶融温度が、第2金属または合金成分の持つ融点に近い温度、即ち、少なくとも、第1金属または合金成分の融点よりも高い温度にある。
【0052】
したがって、接合処理時は熱処理温度が低くて済み、凝固後は高い融点を確保し得る高耐熱性の電子デバイスを実現することができる。
【0053】
第1金属または合金成分は、好ましくは、Sn、In、Bi、Sb又はGaの群から選択された少なくても1種を含む。また、第2金属または合金成分は、好ましくは、Cr、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ni、Ni−P合金、及び、Ni−B合金の群から選択された少なくても1種を含む。
【0054】
本発明に係る電子デバイスは、代表的には、三次元システムインパッケージ(3D-SiP)としての形態をとる。具体的には、システムLSI、メモリLSI、イメージセンサ又はMEMS等である。アナログやデジタルの回路、DRAMのようなメモリ回路、CPUのようなロジック回路などを含む電子デバイスであってもよいし、アナログ高周波回路と低周波で低消費電力の回路といった異種の回路を、別々のプロセスによって作り、それらを積層した電子デバイスであってもよい。
【0055】
また、センサーモジュル、光電気モジュール、ユニポーラトランジスタ、MOS FET、CMOS FET、メモリーセル、もしくは、それらの集積回路部品(IC)、又は各種スケールのLSIなど、凡そ、電子回路を機能要素とする電子デバイスのほとんどのものが含まれ得る。更に、太陽電池、発光ダイオード、及び、発光ダイオードを用いた発光装置、照明装置、ディスプレイ装置、もしくは、信号灯などの電子デバイスも含まれる。
【0056】
図5は、上述した各種電子デバイスのうち、発光ダイオードの一例を示している。発光ダイオードは、省エネルギー、長寿命という利点があり、照明装置、カラー画像表示装置、液晶パネルのバックライト、又は、交通信号灯などの光源として、注目されている。
【0057】
図示の発光ダイオードは、基板11と、半導体発光層8と、電極(21〜2N)とを含む。半導体発光層8は、基板11の一面上に積層されている。電極(21〜2N)は、半導体発光層8に電気エネルギーを供給するものであって、基板11を貫通し半導体発光層8に到達する微細孔内に充填された導体によって構成されている。
【0058】
基板11は、代表的には、サファイア基板である。基板11の一面上には、バッファ層12があり、半導体発光層8は、バッファ層12を介して、基板11の上に搭載されている。
【0059】
半導体発光層8は、発光ダイオードにおいて周知である。pn接合を持ち、代表的にはIII−V族化合物半導体が用いられる。もっとも、公知技術に限らず、これから提案されることのある化合物半導体を含むことができる。本発明において、発光ダイオードは、赤色発光ダイオード、緑色発光ダイオード、青色発光ダイオード、橙色発光ダイオードの何れであってもよいし、白色発光ダイオードであってもよい。
【0060】
図5は、窒素(N)系の化合物半導体を用いたGaN系青色発光ダイオードの一例を示している。図を参照すると、半導体発光層8は、n型半導体層81、活性層82、p型半導体層83及びトップ層84を、この順序で積層した構造を持つ。一例であるが、n型半導体層81は、SiドープGaN層で構成され、p型半導体層83はMgドープGaN層で構成される。
【0061】
活性層82は、GaN−InGaN等でなる多重量子井戸MQW(Multiple Quantum Well)構造を有し、p型半導体層83と接する側に、Al−GaN超格子キャップ層を備えることがある。トップ層84は、光学的に透明な光学層であればよく、透明電極層である必要はない。即ち、半導体発光層81の光出射面に透明電極を持たない場合がある。
【0062】
電極(21〜2N)は、基板11を貫通し半導体発光層8に到達する微細孔(111〜11N)内に充填した導体によって構成されている。
【0063】
微細孔(111〜11N)は、好ましくは、所定の面密度で分布させる。これにより、微細孔(111〜11N)の内部に充填された電極(21〜2N)を、従来の透明電極層に代わる電極として機能させ、半導体発光層8に対する電流面拡散を促進し、均一な面発光を実現し得る。従って、発光量及び発光効率を改善しながら、透明電極層を省略して、製造プロセスを簡素化し、コストダウンを図ることができる。しかも、透明電極層による光エネルギーの損失がなくなるので、発光量及び発光効率が向上する。
【0064】
実施の形態において、微細孔(111〜11N)は、基板11の面において、所定のピッチ間隔で、マトリクス状に配置されている。行数及び列数は任意である。微細孔(111〜11N)は、その孔径がμmオーダである。ピッチ間隔もそのようなオーダでよい。
【0065】
微細孔(111〜11N)のうち、互いに隣接する微細孔、例えば、微細孔111と、微細孔112とにおいて、一方の微細孔111内の電極21はp側電極とし、他方の微細孔112内の電極22はn側電極とする。
【0066】
p側電極となる電極21は、基板11を貫通し、更に、バッファ層12、n型半導体層81及び活性層82を貫通し、先端がp型半導体層83に食い込んでいる。電極21は、電気絶縁の必要な領域が、絶縁物充填層301によって覆われている。n側電極となる電極22は、基板11及びバッファ層12を貫通し、先端がn型半導体層81に食い込んで止まっている。
【0067】
絶縁物充填層301〜30Nは、無機絶縁物又は有機絶縁物を、縦孔111〜11Nの内部に充填した環状の層である。従って、絶縁物充填層301〜30Nの内側には、筒状の領域が生じる。縦導体21〜2Nは、絶縁物充填層301〜30Nによって囲まれたこの筒状の領域の内部に充填されている。
【0068】
上述したように、絶縁物充填層301〜30Nは縦孔111〜11Nの内周面を覆う環状の層であり、縦導体21〜2Nは絶縁物充填層301〜30Nによって囲まれた領域の内部に充填されているから、貫通電極等で代表される縦導体21〜2Nが、環状の絶縁物充填層301〜30Nよって、極性の異なる隣接する他の縦導体21〜2Nから電気的に絶縁される。
【0069】
しかも、絶縁物充填層301〜30Nは、無機絶縁物又は有機絶縁物を、縦孔111〜11N内に充填してなるものであり、縦導体21〜2Nは絶縁物充填層301〜30Nによって囲まれた領域内に充填された導体でなるから、貫通電極を、間隔を隔てて取り囲むように、リング状の絶縁分離溝を設ける従来構造と異なって、縦導体21〜2N及び絶縁物充填層301〜30Nが、縦孔111〜11Nの内部に集約される。このため、縦導体21〜2N及び絶縁物充填層301〜30Nの占有面積が小さくなり、隣接する縦導体間ピッチ距離が縮小される。この結果、縦導体21〜2Nの分布密度を上げ、均一面発光を生じる高性能及び高機能の発光ダイオード装置を実現することができるようになる。
【0070】
絶縁物充填層301〜30Nは、ナノコンポジット構造のセラミックを含有する有機絶縁物のペースト、又は、ガラスペーストを縦孔111〜11Nの内部に充填し、加圧して硬化させることによって形成し得る。従って、絶縁物充填層301〜30Nは、縦孔111〜11Nの内部にペースト材料を充填し、硬化させるという簡単、かつ、安価なプロセスで形成することができる。
【0071】
しかも、絶縁物充填層301〜30Nは、充填層であるので、成膜プロセスを必要とする技術と異なって、縦孔111〜11Nの溝幅を狭くしなければならない理由がなくなる。このため、絶縁物充填層301〜30Nの形成工程が容易化される。
【0072】
絶縁物充填層301〜30Nを構成する有機絶縁物及び無機絶縁物については、既に例示したとおりである。また、図示の発光ダイオードは、それ自体で、面発光形の照明装置やカラー画像表示装置を構成しえるし、液晶ディスプレイのバックライト装置として使用することもできる。更に、交通信号灯として使用することもできる。更に、図示は省略するけれども、太陽電池の場合も、同様の絶縁構造を採用することができる。
【0073】
次に、本発明に係る電子デバイスの製造方法について、図6を参照して説明する。まず、図6(a)に図示するように、予め、縦孔30を穿孔した半導体基板1を支持具SPの上に配置する。縦孔30は、ドライエッチィングCVD法、レーザ穿孔法など、公知の技術によって形成することができる。
【0074】
次に、図6(b)に図示するように、縦孔30の内部に、無機絶縁物300を充填する。充填の一方法としては、有機樹脂ペースト又はガラスペーストなどを、減圧雰囲気内で縦孔30の内部に流し込んだ後、縦孔30内のペーストに、プレス圧、ガス圧又は転圧などを加えて加圧しながら硬化させる方法を挙げることができる。有機樹脂ペースト又はガラスペーストは、ナノコンポジット構造セラミックを含有する。
【0075】
次に、図6(c)に図示するように、充填・硬化された絶縁物300に対し、フォトリソグラフィ、ドライエッチィングCVD法、レーザ穿孔法など、公知の穿孔技術を適用することによって、筒状の領域20を形成する。これにより、環状の絶縁物充填層3が得られる。上述した何れの穿孔技術を適用するかは、絶縁物300として、どのような材料を用いるかによる。例えば、絶縁物300が、紫外線硬化樹脂でなる場合には、フォトリソグラフィ工程を採用することができ、紫外線を用いた露光、及び、現像工程を実行することにより、所定の領域20を形成することができる。
【0076】
次に、図6(d)に図示するように、筒状の領域20の内部に縦導体2を形成する。縦導体2の形成方法としては、溶融金属を、減圧雰囲気内で筒状の領域20の内部に流し込んだ後、筒状の領域20の溶融金属に、プレス圧、ガス圧又は転圧などを加えて加圧しながら硬化させる方法を挙げることができる。これにより、図1及び図2に示した電子デバイスが得られる。図6に示した製造方法は、図5に示した発光ダイオードの製造、及び、発光ダイオードと構造の類似した太陽電池の製造にも同様に適用が可能である。
【0077】
次に、電子デバイスの別の製造方法について、図7を参照して説明する。まず、図7(a)に図示するように、予め、縦孔30を穿孔した半導体基板1を支持具SPの上に配置する。半導体基板1には、能動素子又は受動素子でなる回路素子5が既に形成されている。
【0078】
次に、図7(b)に図示するように、縦孔30の内部に、有機絶縁物又は無機絶縁物300を充填し、硬化させる。
【0079】
次に、充填・硬化された無機絶縁物300に対し、図7(c)に図示するように、上述した穿孔工程を実行することによって、筒状の領域21を形成する。これにより、環状の絶縁物充填層31が得られる。絶縁物充填層31の内側には、その内壁面40によって囲まれた筒状の領域20が生じる。
【0080】
次に、図7(d)に図示するように、筒状の領域20を画定する絶縁物充填層31の内壁面40に、電磁シールド層4を形成する。電磁シールド層4は、スパッタ等の真空成膜法によって形成することができる。電磁シールド層4の内側にはその内壁面によって画定される筒状の領域22が生じる。
【0081】
次に、図8(a)に図示するように、電磁シールド層4によって囲まれた筒状の領域22内に、有機絶縁物又は無機絶縁物301を充填する。
【0082】
次に、図8(b)に図示するように、充填硬化された絶縁物301に対し、穿孔工程を実行することによって、筒状の領域20を形成する。これにより、環状の絶縁物充填層32が得られる。
【0083】
次に、図8(c)に図示するように、筒状の領域20の内部に、縦導体用溶融金属(合金を含む)を充填し、硬化させることによって、縦導体2を形成する。これにより、図3に示した電子デバイスが得られる。
【0084】
図7及び図8の実施の形態において、縦孔30、絶縁物充填層3、電磁シールド層4及び縦導体2を形成する手段、及び、材質等は、明細書及び図4を参照して既に説明したとおりである。
【0085】
以上、好ましい実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、その基本的技術思想および教示に基づき、種々の変形例を想到できることは自明である。
【符号の説明】
【0086】
1 半導体基板
2 縦導体
20 縦孔
3 絶縁物充填層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、絶縁物充填層と、縦導体とを含む電子デバイスであって、
前記半導体基板は、その厚み方向に伸びる縦孔を有しており、
前記絶縁物充填層は、前記縦孔内にその内周面を覆うように充填してなる環状層であって、有機絶縁物又はガラスを主成分とする無機絶縁物と、ナノコンポジット構造のセラミックとを有する層であり、
前記ナノコンポジット構造のセラミックは、常温比抵抗が1014Ω・cmを超え、比誘電率が4〜9の範囲にあり、
前記縦導体は、前記絶縁物充填層によって囲まれた領域内に充填された凝固金属体でなる、
電子デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載された電子デバイスであって、更に、電磁シールド層を含み、前記電磁シールド層は、前記絶縁物充填層の層厚の中間部に埋設され、前記縦導体の周りを包囲している、電子デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された電子デバイスであって、三次元システム・パッケージ(3D-SiP)である、電子デバイス。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載された電子デバイスであって、発光ダイオードを含む、電子デバイス。
【請求項5】
電子デバイスの製造方法であって、
半導体基板を含む基板に、その厚み方向に向かう縦孔を形成し、
前記縦孔の内部に絶縁物を充填し、前記絶縁物は、有機絶縁物又はガラスを主成分とする無機絶縁物と、ナノコンポジット構造セラミックとを有し、前記ナノコンポジット構造セラミックは、常温比抵抗が1014Ω・cmを超え、比誘電率が4〜9の範囲にあり、
前記絶縁物に縦孔を形成し、
前記絶縁物の前記縦孔内に溶融金属を充填する、
工程を含む、電子部品の製造方法。
【請求項6】
電子デバイスの製造方法であって、
半導体基板を含む基板に、その厚み方向に向かう縦孔を形成し、
前記縦孔の内部に絶縁物を充填し、前記絶縁物は、有機絶縁物またはガラスを主成分とする無機絶縁物と、ナノコンポジット構造セラミックとを有し、前記ナノコンポジット構造セラミックは、常温比抵抗が1014Ω・cmを超え、比誘電率が4〜9の範囲にあり、
前記絶縁物に第1縦孔を形成し、
前記絶縁物の前記第1縦孔の内壁面に、電磁シールド膜を形成し、
前記電磁シールド膜によって囲まれた第2縦孔内に、更に第2絶縁物を充填し、
前記第2絶縁物に第3縦孔を形成し、
前記第2絶縁物の前記第3縦孔内に溶融金属を充填する、
工程を含む、電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−9820(P2012−9820A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56556(P2011−56556)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(504034585)有限会社 ナプラ (55)
【Fターム(参考)】