説明

電子放出素子及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、従来の電子放出素子よりも、電界印加時の放電や電子放出特性の変化あるいは劣化が抑えられた電子放出素子を提供することである。
【解決手段】導電性基材1と、メッシュ状導電体2と、前記導電性基材1に電気的に導通した状態で接合される電子放出源4と、前記導電性基材1と前記メッシュ状導電体2とを非接触状態にするスペーサー5と、を有し、前記導電性基材1と前記メッシュ状導電体2及び前記スペーサー5は電気的に絶縁されている電子放出素子であって、前記メッシュ状導電体2の導電性を有する部分と前記電子放出源4の沿面最短距離bが前記メッシュ状導電体2の導電性を有する部分と前記電子放出源4の空間最短距離aを上回っていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子放出素子、該電子放出素子の製造方法、及び該電子放出素子を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子放出素子としては、従来より、例えばブラウン管のような熱陰極素子が用いられてきた。しかし、熱陰極素子は、熱エネルギーによって電子を放出させるために、エネルギー効率が低いという問題点がある。そのため、近年は電子放出に熱エネルギーを必要としない冷陰極素子の需要が大きくなりつつある。
【0003】
冷陰極素子として電界放出型の電子放出素子、すなわち電界を与えることで電子を放出する電子放出源が広く用いられている。
【0004】
本発明者等は再表99−57345号公報(以下、特許文献1と記す)に記載した方法、すなわち、有機金属熱分解法(以下、MOCVD法と記述する)を用いて突起物を有する金属酸化物構造体を提案した。
【0005】
さらに、この突起物を有する金属酸化物構造体を用いて、特開2000−276999号公報(以下、特許文献2と記す)、特開2002−274819号公報(以下、特許文献3と記す)に示すような電子放出素子を提案した。
【0006】
これら電界放出型電子放出素子は、高い電界を与えればより多くの電子を放出することになる。電界放出型電子放出素子に高い電界を与えるためには、陽極と陰極の間の距離を短くする、または陽極と陰極の間の電位差を大きくする方法があり、通常はこの両者を適宜組み合わせる方法が用いられている。
【0007】
【特許文献1】再表99−57345号公報
【特許文献2】特開2000−276999号公報
【特許文献3】特開2002−274819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電子放出源の電子放出性能や構造によっては、必要な電子放出量(電流値で表される)を得るためには、陽極と陰極の間の短い距離に高い電位差を与えなければならず、陰極と陽極が電気的に絶縁されている場合であっても、場合によっては陰極と陽極の間に放電が起きてしまい、放電痕から電流が短絡して陰極からは電子が放出されない、あるいは放電によって陰極が破壊されるという課題があった。また、この場合、電子放出源を長時間使用した場合の寿命、信頼性に劣るという課題もあった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、電界印加時の放電や電子放出特性の変化あるいは劣化が抑えられた電子放出素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、電子放出素子として好ましく用いられる構造体について鋭意検討を行った結果、特定の構造、形状を有するメッシュ状導電体を利用することで、電力損失や電子放出特性の変化あるいは劣化等の課題が改善された、エネルギー効率の高い電子放出素子を提供できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明の電子放出素子は、導電性基材と、メッシュ状導電体と、前記導電性基材に電気的に導通した状態で接合される電子放出源と、前記導電性基材と前記メッシュ状導電体とを非接触状態にするスペーサーと、を有し、前記導電性基材と前記メッシュ状導電体及び前記スペーサーは電気的に絶縁されている電子放出素子であって、前記メッシュ状導電体の導電性を有する部分と前記電子放出源の沿面最短距離が前記メッシュ状導電体の導電性を有する部分と前記電子放出源の空間最短距離を上回っていることを特徴とする。
【0012】
更に本発明の電子放出素子は、「前記メッシュ状導電体は、導電体で囲まれた1つ以上の開口部を有し、前記電子放出源に向き合っている面及び前記開口部内部表面が絶縁膜で被覆されていること」、「前記メッシュ状導電体は、導電体で囲まれた1つ以上の開口部を有し、前記電子放出源に向き合っている面が絶縁膜で被覆されていること」、「前記メッシュ状導電体を被覆する絶縁膜が金属酸化物であること」、「前記電子放出源は、電界を与えることで電子を放出する陰極素子であること」、「電子放出源が、スピント型電極、カーボンナノチューブ、金属酸化物ウイスカーのいずれかを利用及び/または加工したものを用いること」、「前記導電性基材の最上部から前記メッシュ状導電体の導電層最下部までの距離をdとし、前記導電性基材の最上部から前記電子放出源の最上部までの距離をdとした場合、前記距離d,dの関係が10×d≧dであること」、「前記電子放出源は前記メッシュ状導電体の開口部内部のみに存在していること」を好ましい様態として含むものである。
【0013】
また、上記本発明の電子放出素子の製造方法は、所定圧力の空気が存在する空間にメッシュ状導電体を加熱した状態で設置し、該メッシュ状導電体に空気中の酸素または水と反応して酸化物を形成する金属化合物の気体及び/または微粒子を向かわせて金属酸化物をメッシュ状導電体に被覆する工程を有することを特徴とする。
【0014】
更に本発明の電子放出素子の製造方法は、「少なくとも1箇所の開口部を有する板状物をマスクとして導電性基材上の特定の位置に電子放出源を形成した後に、前記絶縁膜で被覆されたメッシュ状導電体と前記導電性基材を電気的に絶縁した状態で接合すること」、「前記絶縁膜で被覆されたメッシュ状導電体と前記導電性基材を電気的に絶縁した状態で接合した後に、前記導電性基材上に電子放出源を電気的に導通した状態で設けること」、「所定圧力の空気が存在する空間に導電性基材を加熱した状態で設置し、該導電性基材に空気中の酸素または水と反応して酸化物を形成する金属化合物の気体及び/または微粒子を向かわせて金属酸化物からなる電子放出源を導電性基材に形成する工程を有すること」を好ましい様態として含むものである。
【0015】
さらに、本発明の発光装置は、上記電子放出素子と発光体が真空の容器内に配置されていて、電子放出素子から放出された電子線によって発光体が発光するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明によれば、電界印加時の放電や電子放出特性の変化あるいは劣化が抑えられた電子放出素子を得ることができる。また、製造工程が簡略化された、低コストでの製造が可能になる電子放出素子が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0018】
図1及び図2は、本発明に係わる電子放出素子の一例を示す概略構成図であって、図1は平面図、図2は図1のA−A断面図である。
【0019】
この電子放出素子は、図2に示すように、導電性を有する基材(以下、導電性基材と記す)1と、絶縁膜3で被覆されたメッシュ状導電体2と、前記導電性基材1に電気的に導通した状態で接合される電子放出源4と、前記導電性基材1と前記メッシュ状導電体2との間に介在し、前記両部材1、2を非接触状態で保持するスペーサー5と、からなる。メッシュ状導電体2は導電性基材1と電気的に絶縁されている。さらに、スペーサー5と導電性基材1及びメッシュ状導電体2は絶縁性の封止材(図示しない)によって固着されている。また、電子放出源4は導電性基材1上に直接形成されることで(あるいは導電体を介して導電性基材1に間接的に形成されることで)、該導電性基材1に電気的に導通している。メッシュ状導電体2は、電子放出源4に向き合っている面とは反対側の面(図1に右下がりの斜線で示す部分)は絶縁膜が被覆されておらず、外部と導通を取ることができる。
【0020】
導電性基材1とは、少なくとも基材上一部の面での固有抵抗率が100kΩ/cm以下、好ましくは10kΩ/cm以下であるものをいう。導電性基材1の固有抵抗率を100kΩ/cm以下としたのは、固有抵抗率が100kΩ/cmを超えると、抵抗が過大となり、電子放出素子として使用できないからである。
【0021】
また、導電性基材1としては、絶縁性の基材に導電性の被膜を被覆したもの、あるいは基材全体が導通性を有するもの等が挙げられる。具体的には、絶縁性の基材に導電性の被膜を被覆した導電性基材1としては、例えばガラス板上にITO(インジウム・スズ酸化物)のような導電性被膜を被覆したもの、ベークライト等の樹脂上に銅薄膜のような導電性薄膜を接着したもの等が挙げられる。また、基材全体が導通性を有する導電性基材1としては、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、インコネル、ハステロイ等の通常用いられる金属板等が挙げられる。なお、絶縁性の基材に導電性の被膜を被覆した導電性基材、基材全体が導通性を有する導電性基材は前述の例示したものに限定されるものではない。
【0022】
メッシュ状導電体2は、固有抵抗率が100kΩ/cm以下であり、導電体で囲まれた少なくとも1箇所の開口部を有するものである。具体的には、メッシュ状導電体2は、例えば図3に示す金属板のような板状導電体2aに多数の開口部2bを開けたもの、金属線のような線状導電体が網目状または織物状に接合または組み合わせることで少なくとも1つの開口部を有するもの、金属線のような線状導電体を略円状、円状、略多角形状、多角形状につなげることで少なくとも1箇所の開口部を有するもの等が挙げられる。また、メッシュ状導電体2の固有抵抗率を100kΩ/cm以下としたのは、固有抵抗率が100kΩ/cmを超えると、抵抗が過大となり、電子放出素子として使用できないからである。
【0023】
本発明における電子放出素子中のメッシュ状導電体は、メッシュ状導電体2の導電性を有する部分と電子放出源4の沿面最短距離bが、メッシュ状導電体2の導電性を有する部分と電子放出源4の空間最短距離aを上回っていることを特徴とする。具体的には、図2に示す距離a<bという関係が成立することを特徴とする。
【0024】
このように構成したのは、メッシュ状導電体2と電子放出源4との間に放電を発生させることなく電位差を与えることができるようにするためである。上述したように構成することにより、電界印加時の放電や電子放出特性の変化あるいは劣化が抑えられた電子放出素子を得ることができる。特に、電子放出源を長時間使用した場合の寿命、信頼性が向上する。
【0025】
図2に示す距離aと距離bの比率は、a:b=10:11以上1:20未満が好ましく、1:2以上1:20未満がさらに好ましい。この距離aと距離bの比率が10:11未満の場合、メッシュ状導電体2と電子放出源4との間に放電を発生させることなく電位差を与えることができない場合があり好ましくない。また、距離aと距離bの比率が1:20以上の場合、電子放出素子自体の重量や体積が大きくなり好ましくない。
【0026】
また、図2に示すように、メッシュ状導電体2が少なくとも電子放出源4に向き合っている面部分が凸部を形成している形状も好ましい。これは、以下の理由による。すなわち、メッシュ状導電体2において、電子放出源4に向き合っている面部分が凸部を形成していない場合、例えば電子放出源4に向き合っている面を外れた部分にメッシュ状導電体2の凸部が存在している場合には、メッシュ状導電体2の凸部と電子放出源4における凸部に近い部分においてのみ電界放出が起こり、電子放出源4の全体から電界放出が起こらない場合があるからである。
【0027】
メッシュ状導電体2が凸部を形成している場合、凸部が実質的に平面であれば、電子放出源4に均一に電界がかかるので好ましい。
【0028】
メッシュ状導電体2は、好ましくは少なくとも一部の表面、さらに好ましくは電子放出源4に向き合っている面及び開口部内部表面、特に好ましくは電子放出源4に向き合っている面全体のみが絶縁膜3で被覆されている。
【0029】
メッシュ状導電体2は絶縁膜3で被覆されていなくても差し支えない。
【0030】
メッシュ状導電体2において、電子放出源4に向き合っている面及び開口部内部表面が絶縁膜3で被覆されていると、電子放出源4から放出された電子がメッシュ状導電体2に吸収されることなく陽極に到達するため、エネルギー効率の高い電子放出素子となり好ましい。
【0031】
また、この場合、メッシュ状導電体2の陽極に向いている面(電子放出源4に向き合っている面とは反対側の面)が絶縁膜3で被覆されておらず導電性を有している。これにより、前記電子放出源4から放出された電子が陽極に衝突すること等で発生するイオンをメッシュ状導電体2の導電性を有する面(電子放出源4に向き合っている面とは反対側の面)で捕獲しやすくなり、電子放出源4がイオン衝撃を受けにくくなるので、寿命の長い電子放出素子となり好ましい。
【0032】
さらにこの場合、メッシュ状導電体2の開口部内部表面は絶縁膜3で被覆されておらず、電子放出源4に向き合っている面全体のみが絶縁膜3で被覆されていることがさらに好ましい。これは、メッシュ状導電体2の開口部内部表面が絶縁膜3で被覆されていると、メッシュ状導電体2に電位を与えた際に絶縁膜3の表面で帯電が起きてしまい、電子放出源4に有効に電界がかかりにくくなり、エネルギー効率が低くなる場合があるからである。
【0033】
前記メッシュ状導電体2を被覆する絶縁膜3とは、固有抵抗率が100kΩ/cmを超える膜状物質であり、金属酸化物からなる絶縁膜が好ましい。この絶縁膜3を金属酸化物としたのは、後述する最も好ましく用いられる方法により、前記メッシュ状導電体2に均一で微細でピンホールのない絶縁膜3の被覆が行いやすいからである。また、絶縁膜3の膜厚は特に限定されない。メッシュ状導電体2を被覆する絶縁膜3の固有抵抗率を100kΩ/cmを超えるとしたのは、該固有抵抗率が100kΩ/cm以下であると、絶縁に要する抵抗が得られず、電子放出素子の構成部品として使用できないからである。
【0034】
メッシュ状導電体2の少なくとも一部表面を絶縁膜3で被覆する方法は通常公知のいずれの方法であってもよい。一例として絶縁膜に金属酸化物を用いる場合では、被覆する金属酸化物を気相や液相を通じて物理的または化学的に金属酸化物上に形成する方法、例えば、蒸着、スパッタリング、ディッピング、及び溶液鍍金等の鍍金、塗布、印刷が挙げられる。また、焼き付け法等の方法も挙げられる。
【0035】
これらの中で好ましく用いられる方法は、すなわち前述したようにメッシュ状導電体2に金属酸化物絶縁膜3を被覆する方法は、所定圧力の空気が存在する空間にメッシュ状導電体を加熱した状態で設置し、メッシュ状導電体に空気中の酸素または水と反応して酸化物を形成する金属化合物の気体及び/または微粒子を向かわせてメッシュ状導電体に金属酸化物絶縁膜を被覆する方法である。この方法は、前述した従来公知の方法と比較して、常圧、かつ開放系で薄膜を被覆する方法なので、原料の供給量や供給速度を大きくとることができ、成膜速度が大きくなり好ましい。また、原料を均一に供給することが容易なので、均一な薄膜を得ることができるので好ましい。
【0036】
この方法は、まず、原材料である金属化合物を気体化及び/または微粒子化する。金属化合物を微粒子化する方法としては、例えば、金属化合物を蒸気圧が十分高くなる温度に加熱して気体化した後に得られた金属化合物の蒸気を冷却する方法、金属化合物を液状で噴霧する方法、金属化合物を固体の状体ですりつぶす方法等が挙げられる。
【0037】
この工程では、系内に、酸素や水を存在させないか、その存在量を極めて少なくしておくことが好ましい。このようにしないと、金属化合物と酸素または水との反応が生じ、配管につまりが生じたり、所望の物性の金属酸化物絶縁膜がメッシュ状導電体上に形成されないおそれがある。ただし、使用する金属化合物の酸素及び水との反応速度が極めて遅い場合には、系内に酸素や水を共存させてもよい。
【0038】
原材料である金属化合物としては、空気中の酸素または水と反応して目的とする金属酸化物が形成されるものを使用する。
【0039】
このような金属化合物としては、例えば(イ)アルコキシド類、(ロ)配位子として、アセチルアセトン、エチレンジアミン、ピペリジン、ピピラジン、シクロヘキサンジアミン、テトラアザシクロテトラデカン、エチレンジアミンテトラ酢酸、エチレンビス(グアニド)、エチレンビス(サリチルアミン)、テトラエチレングリコール、アミノエタノール、グリシン、トリグリシン、ナフチリジン、フェナントロリン、ペンタンジアミン、ピリジン、サリチルアルデヒド、サリチリデンアミン、ポルフィリン、チオ尿素などから選ばれる1種以上を有する錯体、(ハ)配位子として、カルボニル基、アルキル基、アルケニル基、フェニルあるいはアルキルフェニル基、オレフィン基、アリール基、シクロブタジエン基をはじめとする共役ジエン基、シクロペンタジエニル基をはじめとするジエニル基、トリエン基、アレーン基、シクロヘプタトリエニル基をはじめとするトリエニル基などから選ばれる1種以上を有する、各種の有機金属化合物及びハロゲン化有機金属化合物が挙げられる。
【0040】
この中でも、アセチルアセトンを配位子として有する錯体及びアルコキシド類がより好ましく用いられる。
【0041】
次に、気体化及び/または微粒子化された金属化合物を、所定圧力の空気が存在する空間に設置されたメッシュ状導電体表面に向けて移動させ、金属化合物を空気中の酸素または水と反応させて、メッシュ状導電体上に金属酸化物絶縁膜を形成する。
【0042】
金属化合物の気体及び/または微粒子は、それのみをそのままメッシュ状導電体面に移動させてもよいし、キャリアガスを用いて積極的に移動させ、キャリアガスとの混合状態でノズルからメッシュ状導電体面に吹き付けてもよい。この場合のキャリアガスの流量は、気体化及び/または微粒子化された金属化合物の温度やメッシュ状導電体を設置する空間の雰囲気によってその最適値が異なるが、メッシュ状導電体の設置空間が室温、常圧雰囲気である場合には、キャリアガスの流量を、空間体積値が20/分以下になるようにすることが好ましく、5/分以下となるようにすることがさらに好ましい。ここで、空間体積値とは、キャリアガスの流量R(1分あたりの体積)と、前述した工程で金属化合物を気体化及び/または微粒子化させる加熱槽(キャリアガスが導入される空間)の体積Vとの比(R/V)に相当する。
【0043】
キャリアガスは、原材料の金属化合物と反応しないものであれば特に限定されない。具体例として、窒素ガスやヘリウム、ネオン、アルゴン等の不活性ガス、炭酸ガス、有機弗素ガス、あるいはヘプタン、ヘキサン等の有機物質等が挙げられる。これらのうちで、安全性、経済性の面から不活性ガスが好ましい。特に不活性ガスの中でも窒素ガスが経済性の面より好ましい。
【0044】
キャリアガスを用いて、金属化合物をノズルからメッシュ状導電体面に吹き付ける方法を採用する場合は、ノズルの吹き出し口とメッシュ状導電体面との距離を所定範囲内とすることが好ましい。この範囲は、吹き出し口の開口部の長軸の長さ(断面が長方形である場合には長辺の長さ、正方形である場合には1辺の長さ)をL、吹き出し口とメッシュ状導電体面との距離をKとしたときに、その比(K/L)が0.01以上1以下となるようにすることが好ましく、0.05以上0.7以下となるようにすることがより好ましく、0.1以上0.5以下となるようにすることがさらに好ましい。この比(K/L)を1以下としたのは、この比(K/L)が1を超えると、金属化合物が金属酸化物に変換される効率が低くなるからである。
【0045】
メッシュ状導電体の設置空間の雰囲気は、減圧下、常圧下、あるいは加圧下のいずれでもよい。しかしながら、高度な減圧下、例えば超真空下であると、金属酸化物の成長速度が遅く、生産性に劣るため好ましくない。加圧下で実施する場合、金属酸化物の成長速度に関しては問題ないが、加圧するための設備が必要となって好ましくない。従って、メッシュ状導電体の設置空間の雰囲気は、1.01×10〜2.03×10Paとすることが好ましく、1.01×10〜1.01×10Paとすることがより好ましく、常圧とすることが最も好ましい。
【0046】
金属酸化物絶縁膜をメッシュ状導電体上に被覆するための最適な反応温度は、0℃〜800℃が好ましく、20℃〜800℃がより好ましく、100℃〜700℃がさらに好ましい。さらに、金属化合物を気体化させる場合、金属酸化物絶縁膜をメッシュ状導電体上に被覆するための最適な反応温度は、金属化合物を気体化させる温度よりも高いことが好ましい。
【0047】
絶縁膜をメッシュ状導電体上に形成する回数は1回でも複数回でもどちらでもよい。絶縁膜をメッシュ状導電体上に複数回形成する場合、メッシュ状導電体に形成された金属酸化物絶縁膜上にさらに1回以上絶縁膜を形成してもよいし、1回目の被覆で金属酸化物絶縁膜が形成しなかった部分を2回目以降に絶縁膜を形成しても差し支えない。
【0048】
図5に、金属酸化物絶縁膜を形成するための製造装置の一例を示す。この製造装置は、キャリアガスである窒素の供給源51と、キャリアガスの流量を調整する流量計52と、原材料である金属化合物を気化する加熱槽53と、キャリアガスを加熱槽53に導入する配管54と、加熱槽53で気化された金属化合物をメッシュ状導電体2に向かわせる配管55と、メッシュ状導電体2を加熱状態に保持する基板ステージ56とで構成されている。配管54には液体窒素トラップ57が設けてある。この液体トラップ57は、供給源51から供給されたキャリアガス中に含まれる水を除去するためのものである。
【0049】
配管55の先端部には所定形状の吹き出し口58が接続してあり、この吹き出し口58の開口部58aは、配管55からの気体が、基板ステージ56上にセットされたメッシュ状導電体2上に絶縁膜3を形成する面全体に吹き出されるように形成されている。また、配管55及び吹き出し口58はリボンヒーターで加熱されている。なお、図5では吹き出し口58が1個記載されているが、2個以上の吹き出し口を持つ製造装置を用いても差し支えない。
【0050】
電子放出源4は、熱、光、電界等のエネルギー、好ましくは電界を与えることで電子を放出する陰極素子である。電界を与えることで電子を放出する陰極素子の具体例として、スピント型電極、シングルウォールカーボンナノチューブを利用及び/または加工した陰極(シングルウォールカーボンナノチューブ型電極)、マルチウォールカーボンナノチューブを利用及び/または加工した陰極(マルチウォールカーボンナノチューブ型電極)、金属酸化物ウイスカーを利用及び/または加工した陰極(金属酸化物ウイスカー型電極)、Ballistic electron Surface−Emitting Display(BSD)型電極、Ballistic Lighting Display(BLD)型電極、Metal Insulator Metal(MIM)型電極、Surface Conduction Emission(SCE)型電極が挙げられる。勿論これ以外であっても、電界を与えることで電子を放出する陰極素子であればいずれであっても差し支えない。これらの中で、スピント型電極、シングルウォールカーボンナノチューブを利用及び/または加工した陰極(シングルウォールカーボンナノチューブ型電極)、マルチウォールカーボンナノチューブを利用及び/または加工した陰極(マルチウォールカーボンナノチューブ型電極)、金属酸化物ウイスカーを利用及び/または加工した陰極(金属酸化物ウイスカー型電極)が、導電性基材1上に作製しやすいことから、特に好ましく用いられる。
【0051】
ここで、スペーサー5は、導電性基材1及びメッシュ状導電体2と電気的に絶縁された状態で接合されており、1層以上の絶縁物をその間に挟んでいても差し支えない。
【0052】
スペーサー5と導電性基材1及びメッシュ状導電体2を接合する方法は、フリットガラスあるいはトールシール等による接着、固定用金属ピンとのカシメやスポット溶接等、通常公知のいずれの方法であってもよい。好ましくはフリットガラスによる接着である。
【0053】
本発明の実施の形態に係わる電子放出素子は、組み立てる順番によっては電子放出源4の上に、スペーサー5が接合される場合があるが、スペーサー5と導電性基材1が電気的に絶縁された状態で接合されてさえいれば差し支えない。また、スペーサー5のメッシュ状導電体2を接触する部分、好ましくは少なくとも電子放出源4に向き合っている面及び開口部内部表面を予め絶縁膜3で被覆した後に、メッシュ状導電体2が電気的に絶縁された状態で接合された形態が好ましい。
【0054】
本発明の実施の形態に係わる電子放出素子は、図6に示すように、導電性基材1の導電層最上部からメッシュ状導電体2の導電層最下部までの距離をdとし、導電性基材1の導電層最上部から電子放出源4の最上部までの距離をdとした場合、前記距離d、dが10×d≧dになっていることが好ましい。さらに好ましくは5×d≧d、特に好ましくはd≧dである。前記距離d、dが10×d<dの場合、メッシュ状導電体の構造によってはメッシュ状導電体の導電体部と電子放出源の先端部の間にかかる電界の向きが電子放出源を有する基板側に向いてしまい、発光体側に電子が流れにくくなる場合や、メッシュ状導電体の導電体部と電子放出源の先端部の間の距離が電子放出源の先端部と発光体との距離に近くなってしまい、該電子放出源に対するメッシュ状導電体からの電界効果に乏しい場合があるためである。
【0055】
なお、本実施の形態では、導電性基材1と電子放出源4とが電気的に導通した状態で接合されている構成例として、図6に示すように電子放出源4を導電性基材1表面上に直接接合した構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、導電性基材1と電子放出源4が、導電性基材1とは異種の導電性部材7を介して電気的に導通した状態で間接的に接合されていてもよい。この場合は、図7に示すように、dは導電性基材1の最上部から異種の導電性基材7を介した電子放出源4の最上部までの距離を示す。また、図8に示すように、導電性基材1表面に凹凸が存在する場合は、該導電性基材1の凸部上面に電子放出源1を接合した構成としてもよい。この場合、導電性基材1の凹部底面から前記凸部上面に直接接合した電子放出源4の最上部までの距離をdとする。
【0056】
また、本実施の形態では電子放出源の例として、図6〜8に示すようにコーン状電子放出源を例示したが、これに限定されるものではなく、例えばシングルウォールカーボンナノチューブ型電極、マルチウォールカーボンナノチューブ型電極、金属酸化物ウイスカー型電極、BSD型電極、BLD型電極等、他の電子放出源であっても差し支えない。
【0057】
電子放出源4と導電性基材1を接合する方法は、ワイヤーボンディング、銀ペーストによる接着、スポット溶接等、通常公知のいずれの方法であってもよいが、好ましくは導電性を有する基材上に電子放出源を直接形成する方法である。
【0058】
電子放出源4を形成する箇所は、好ましくは導電性基材1に垂直方向から観察した際に、メッシュ状導電体2と導電性基材1が相互に重なっている部分を超えない箇所、さらに好ましくは、メッシュ状導電体2の開口部内部に相当する箇所である。電子放出源4がメッシュ状導電体2の開口部内部以外に存在した場合、電子放出源4から放出された電子がメッシュ状導電体2に衝突して電子のエネルギーが散乱したり、メッシュ状導電体2から電子放出源4までの距離が大きくなりすぎて電子放出源4にかかる電界が小さくなることで電子の放出が起こりにくくなったりして好ましくない。
【0059】
次に、上記構成の電子放出素子の製造方法について説明する。
【0060】
一の好ましい方法は、少なくとも1箇所の開口部を有する板状物をマスクとして導電性基材上の特定の位置に選択的に電子放出源を形成した後に前記マスクとしての板状物を外し、しかる後にメッシュ状導電体を、スペーサーを介して電気的に絶縁された状態で導電性基材上に接合する方法である。この方法を用いた場合、マスクとしての板状物によって導電性基材上の所望する位置のみに電子放出源が形成されるので好ましい。
【0061】
他の好ましい方法は、メッシュ状導電体を導電性基材上にスペーサーを介して電気的に絶縁された状態で接合し、この導電性基材上に電子放出源を直接形成する方法である。この方法を用いた場合、前述したマスクとしての板状物を用いなくとも導電性基材上の所望する位置のみに電子放出源が形成されるので、前述した方法に比べてより好ましい。この方法を用いると、電子放出源の種類や形成方法によっては、電子放出源または電子放出源を構成する材料がメッシュ状導電体上に形成される場合があるが、この場合には、メッシュ状導電体上に形成された電子放出源や電子放出源を構成する材料を、該メッシュ状導電体から従来公知の方法で除去することが好ましい。
【0062】
ここで、上記構成の電子放出素子を製造する製造方法の一工程である、導電性基材上に電子放出源を直接形成する方法の具体例を例示して説明する。なお、導電性基材上に電子放出源を形成する方法は以下に例示する方法に限定されるものではない。
【0063】
例えば、電子放出源として、シングルウォールカーボンナノチューブ型電極、マルチウォールカーボンナノチューブ型電極を用いる場合は、スクリーン印刷法、吹き付け塗布法、気相成長法等の方法が挙げられる。
【0064】
また、電子放出源として、金属酸化物ウイスカー型電極を用いる場合は、所定圧力の空気が存在する空間に導電性基材を加熱した状態で設置し、該導電性基材に空気中の酸素または水と反応して酸化物を形成する金属化合物の気体及び/または微粒子を向かわせて導電性基板に金属酸化物からなる電子放出源(金属酸化物ウイスカー)を形成し、得られた金属酸化物ウイスカーを利用及び/または加工する方法が好ましく用いられる。この方法を用いる場合、原料となる金属化合物の種類及び/または気化温度、金属酸化物を被覆させる温度を変化させることによって、膜状からウイスカーまでさまざまな形の導電性金属酸化物(電子放出源)を形成させることができ、また上述のメッシュ状導電体を金属酸化物絶縁膜で被覆する場合と同様の原料、条件、製造装置等を適用することができる。この方法で、電子放出源(金属酸化物ウイスカー)及び上述のメッシュ状導電体を被覆する金属酸化物絶縁膜を作製する場合、従来公知の方法と比較して、常圧、かつ開放系でウイスカーや薄膜を形成する方法なので、原料の供給量や供給速度を大きくとることができ、形成速度が大きくなり好ましい。また、同一の製造装置を使用できるので、装置の使用効率を高くすることができ、結果として電子放出素子全体の生産効率を高くすることができる。
【0065】
なお、導電性基材上の特定の位置に選択的に電子放出源を形成する必要がある場合には、通常公知のマスキング方法を用いることができる。
【実施例】
【0066】
本発明に係る電子放出素子の製造方法および該電子放出素子を用いた発光装置の一実施例について説明する。
【0067】
図1に示す電子放出素子を作製した。
【0068】
メッシュ状導電体2としては、図3、図4に示すように、縦(w2)1350μm×横(h2)5350μm×厚さ200μmのステンレス板(板状導電体2a)を使用した。図4に側面を示すように、ステンレス板2aは短辺(w2)及び長辺(h2)の端部から各々100μmの距離bの幅、高さに欠き取り(段差部2c)があり、凸型の断面形状を有している。
【0069】
さらにステンレス板2aには凸部平面2dの短辺(w1)及び長辺(h1)の端部から各々100μmの距離bを隔てて開口部2bの端部が存在し、開口部2bは短手方向に10個、長手方向に20個、合計200個存在している。各開口部2bの大きさは、短手方向の長さxが50μm、長手方向の長さyが200μmであり、各開口部間の相互の間隔zは短手方向、長手方向とも50μmの間隔で配置している。
【0070】
まず、図5に示すような製造装置を用い、絶縁膜3で被覆されたメッシュ状導電体2を製造する。
【0071】
具体的には、吹き出し口58及び基板ステージ56を常温の実験室内に配置し、吹き出し口58と基板ステージ56との間の空間を大気圧とする。メッシュ状導電体2は、開口部を持つ凸部平面2dを上に向けて基板ステージ56に設置する。メッシュ状導電体2を基板ステージ56で600℃に加熱するとともに、加熱槽53内にアルミニウムアセチルアセトネートを入れて130℃に加熱する。
【0072】
この状態で、供給源51から配管54に窒素を1.2dm/分で供給することにより、金属化合物の気体と窒素ガスとの混合気体を、配管55を介して吹き出し口58からメッシュ状導電体2の間に吹きつける。なお、配管55及び吹き出し口58はリボンヒーターで130℃に加熱されている。
【0073】
これにより、原材料である金属化合物は、メッシュ状導電体2面上及びその近傍で、空気中の酸素または水と反応して金属酸化物となり、この金属酸化物が絶縁膜3としてメッシュ状導電体2面上を厚みが2μmになるように被覆する。
【0074】
こうして得られた絶縁膜3で被覆されたメッシュ状導電体2を絶縁膜3で被覆された面を導電性基材1に向き、かつスペーサー5がメッシュ状導電体2の欠き取り部分(図4に示す段差部2c)のみでメッシュ状導電体2と接触するように、厚さ0.15mmのガラス板をスペーサー5として、絶縁性の封止材(図示しない)を用いて固定する。このとき、スペーサー5と導電性基材1及びメッシュ状導電体2は電気的に完全に絶縁されるようにする。
【0075】
こうして得られた構造体に、スクリーン印刷法、吹き付け塗布法、気相成長法等の方法によりカーボンナノチューブを形成する。メッシュ状導電体2の開口部内部以外に存在するカーボンナノチューブ、カーボン成分を除去した後、絶縁膜3で被覆されたメッシュ状導電体2の開口部内部に存在するカーボンナノチューブを電子放出源4とする。
【0076】
図9は、このようにして作成された電子放出素子10を用いた発光装置である。
【0077】
まず、ガラス基板G2の一方の面にスパッタリング法等によって導電性膜を成膜することにより、電極層(陰極)D2を形成する。このガラス基板G2の電極層D2側の面に、電子放出素子10の導電性基材1が導通するように接合する。
【0078】
一方、ガラス基板G1の一方の面には、スパッタリング法等によって導電性膜を成膜することにより電極層(陽極)D1を形成した後、この電極層D1側の面に蛍光体を塗布することにより膜状の発光体Hを形成する。
【0079】
次に、電極層D1と発光体Hが形成されたガラス基板G1と、電子放出素子10が導通するように一体化されたガラス基板G2とを、発光体H側及び電子放出素子10側を内側にして、発光体Hとの間に所定の間隔を開けて平行に配置する。その状態で側面部全体を枠部材(図示しない)で囲い、内部を真空にして密封する。このようにガラス基板G1、G2と枠部材で密封された真空の容器を構成し、この発光装置の電源B1から陰極D2とメッシュ状導電体2との間に、また、電源B2から陰極D2と陽極D1との間にそれぞれ高電圧を印加することにより、電子放出源4の先端に強い電界が生じて該電子放出源4の先端から電子が放出され、その電子が加速されて発光体Hに衝突することにより発光体Hが発光する。その結果、陽極D1が透明電極(透明導電性膜)であれば、ガラス基板G1から光が放射される。
【0080】
この発光装置の電子放出素子10は、絶縁膜3で被覆されたメッシュ状導電体2を用いることで電力損失や電子放出特性の変化あるいは劣化が抑えられ、また、導電性基材1とメッシュ状導電体2がスペーサー5を介して電気的に絶縁された状態で接合されているので、新たに製造工程を変更する余地の少ない、低コストでの製造が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の電子放出素子は、照明等の発光装置、ディスプレイ等の表示装置の分野で好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の電子放出素子の一例を示す概略平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】メッシュ状導電体の一例を示す概略構成図である。
【図4】図3の長辺方向からの側面図である。
【図5】金属酸化物絶縁膜を被覆するための製造装置を示す概略構成図である。
【図6】本発明の電子放出素子の一例を示す概略構成図である。
【図7】本発明の電子放出素子の一例を示す概略構成図である。
【図8】本発明の電子放出素子の一例を示す概略構成図である。
【図9】本発明の発光装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0083】
B1,B2 …電源
D1,D2 …電極層(透明導電性膜)
G1,G2 …ガラス基板(容器)
H …発光体
a …空間最短距離
b …沿面最短距離
,d …距離
1 …導電性基材
2 …メッシュ状導電体
2a …導電体
2b …開口部
2c …段差部
2d …凸部平面
3 …絶縁膜
4 …電子放出源
5 …スペーサー
7 …導電性部材(導電物質)
10 …電子放出素子
51 …供給源
52 …流量計
53 …加熱槽
54 …配管
55 …配管
56 …基板ステージ
57 …液体窒素トラップ
58 …吹き出し口
58a …開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基材と、メッシュ状導電体と、前記導電性基材に電気的に導通した状態で接合される電子放出源と、前記導電性基材と前記メッシュ状導電体とを非接触状態にするスペーサーと、を有し、前記導電性基材と前記メッシュ状導電体及び前記スペーサーは電気的に絶縁されている電子放出素子であって、前記メッシュ状導電体の導電性を有する部分と前記電子放出源の沿面最短距離が前記メッシュ状導電体の導電性を有する部分と前記電子放出源の空間最短距離を上回っていることを特徴とする電子放出素子。
【請求項2】
前記メッシュ状導電体は、導電体で囲まれた1つ以上の開口部を有し、前記電子放出源に向き合っている面及び前記開口部内部表面が絶縁膜で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子。
【請求項3】
前記メッシュ状導電体は、導電体で囲まれた1つ以上の開口部を有し、前記電子放出源に向き合っている面全体のみが絶縁膜で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の電子放出素子。
【請求項4】
前記メッシュ状導電体を被覆する絶縁膜が金属酸化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子放出素子。
【請求項5】
前記電子放出源は、電界を与えることで電子を放出する陰極素子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子放出素子。
【請求項6】
電子放出源が、スピント型電極、カーボンナノチューブ、金属酸化物ウイスカーのいずれかを利用及び/または加工したものを用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子放出素子。
【請求項7】
前記導電性基材の最上部から前記メッシュ状導電体の導電層最下部までの距離をdとし、前記導電性基材の最上部から前記電子放出源の最上部までの距離をdとした場合、前記距離d,dの関係が10×d≧dであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子放出素子。
【請求項8】
前記電子放出源は前記メッシュ状導電体の開口部内部のみに存在していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電子放出素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の電子放出素子を製造する方法であって、所定圧力の空気が存在する空間にメッシュ状導電体を加熱した状態で設置し、該メッシュ状導電体に空気中の酸素または水と反応して酸化物を形成する金属化合物の気体及び/または微粒子を向かわせて金属酸化物をメッシュ状導電体に被覆する工程を有することを特徴とする電子放出素子の製造方法。
【請求項10】
少なくとも1箇所の開口部を有する板状物をマスクとして導電性基材上の特定の位置に電子放出源を形成した後に、前記絶縁膜で被覆されたメッシュ状導電体と前記導電性基材を電気的に絶縁した状態で接合することを特徴とする請求項9に記載の電子放出素子の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁膜で被覆されたメッシュ状導電体と前記導電性基材を電気的に絶縁した状態で接合した後に、前記導電性基材上に電子放出源を電気的に導通した状態で設けることを特徴とする請求項9に記載の電子放出素子の製造方法。
【請求項12】
所定圧力の空気が存在する空間に導電性基材を加熱した状態で設置し、該導電性基材に空気中の酸素または水と反応して酸化物を形成する金属化合物の気体及び/または微粒子を向かわせて金属酸化物からなる電子放出源を導電性基材に形成する工程を有することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の電子放出素子の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに記載の電子放出素子と発光体が真空の容器内に配置されていて、電子放出素子から放出された電子線によって発光体が発光するようになっていることを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−49059(P2006−49059A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227571(P2004−227571)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(301070195)株式会社シィアイテクノ (1)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】