説明

電子装置の制御部、電子装置、画像形成装置、電子装置の制御方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】異常解析用データの保存用メモリ領域を予め設けておかなくても、異常発生時に必要な解析用データを充分に保存できるようにする。
【解決手段】電子装置の異常を検出するためのデータをデータ取込手段Aによって取り込み、その取り込んだデータをデータ保存手段Bに一時的に保存し、その保存したデータを基に異常検出手段Cが電子装置の異常を検出する。異常検出手段Cが異常を検出すると、異常解析用データ保存手段Dが、電子装置を動作させるためのプログラムやデータが格納されている書き換え可能な不揮発性メモリ13上のプログラムやデータを消去し、その消去した領域に検出された異常を解析するために必要な異常解析用データを書き込み保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置等の電子装置の制御部、その制御部を備えた電子装置および画像形成装置、さらにその電子装置の制御方法ならびにプログラムおよび記録媒体に関し、特に、電子装置に異常が発生した場合に、その異常を解析するために必要な異常解析用データを保存する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子装置として、例えば画像形成装置においては、感光体ドラム駆動モータや中間転写ベルト駆動モータなどは、高画質化のためにモータのエンコーダ信号やベルトの速度信号などをフィードバックするなどしてその回転速度が高精度に制御されている。またプロダクション市場(商用印刷市場、企業内印刷市場等)においては平常時の高画質化は当然のことであるが、さらに経年変化や突発的な異常による画像の低下や異常時もそれを検出して異常紙を破棄して再印刷するか、もしくは継続不可能な状態と判断された場合には機械を停止してサービスマン等による復旧を促すなどの必要がある。
【0003】
ここで機械を復旧させる場合に必要な情報として、どういった異常が発生したのかという情報を保持しておくのは当然であるが、さらに異常発生要因を特定する場合には、上述したモータのエンコーダ信号等を保存しておく必要がある。モータのエンコーダ信号などは、異常が発生した瞬間のデータのみでは意味をなさず、異常解析のためにはそれ以前のデータを必要とする。
【0004】
そこで異常解析用データの保存には、異常発生時に上位システム、例えばネットワークに接続されている電子装置の場合にはホストシステムにデータを送信し保存しておく手段や、スタンドアローンの電子装置であればデータを圧縮して装置内に保存しておく手段などが考えられ既に知られている。
【0005】
例えば、特許文献1には、遠隔にある画像形成装置の状態を監視する目的で、その画像形成装置の異常や故障の状態を通信回線を利用して上位システムに送信してそこで保存しておき、異常発生時にはその保存データを解析できるようにした情報収集システムが開示されている。
【特許文献1】特開平2−257155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、異常発生時のデータを当該電子装置内に保存しておく場合には、いつ発生するか分からない異常のために、その異常発生時のデータを保存するためのメモリ領域を確保しておかなければならないため、コストアップ要因となった。また、保存しておきたいデータ量が多い場合には安価なDRAMなどの揮発性メモリを使用するが、データを確認するまで装置の電源を切断できないし、フラッシュROMなどの不揮発性メモリに保存する場合はコストを抑えるため保存用メモリ領域を制限せざるを得ず、必要十分なデータが保存できないなどの問題があった。
【0007】
また、特許文献1に記載されたように、電子装置の異常や故障の状態等の解析用データを通信回線を利用して上位システムに送信して保存する手段は、スタンドアローンの電子装置には適用できないし、ネットワークに接続されている電子装置であっても、解析用データが膨大な場合には、その送信に時間がかかってしまい、全てのデータを送信し終わる前に電源が遮断されてしまう可能性があるという問題があった。
【0008】
この発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、電子装置の状態把握のためにデータを取得して、そのデータを基に異常状態を検出する機能を有する電子装置において、異常解析用データの保存用メモリ領域を予め設けておかなくても、異常発生時に必要な解析用データを充分に保存できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による電子装置の制御部は、上記の目的を達成するため、電子装置の異常を検出するためのデータを取り込むデータ取込手段と、そのデータ取込手段が取り込んだデータを一時的に保存するデータ保存手段と、そのデータ保存手段が保存したデータを基に電子装置の異常を検出する異常検出手段と、電子装置を動作させるためのプログラムやデータが格納されている書き換え可能な不揮発性メモリと、上記異常検出手段により異常が検出された場合に、上記不揮発性メモリ上のプログラムやデータを消去し、その消去した領域に上記検出された異常を解析するために必要な異常解析用データを書き込み保存する異常解析用データ保存手段とを有することを特徴とする。
【0010】
上記不揮発性メモリに、電子装置を動作させるためのプログラムやデータと、上記異常解析用データの取り出しに使用するプログラムやデータとを格納しておき、上記異常解析用データ保存手段が上記不揮発性メモリ上のプログラムやデータを消去する際に、上記異常解析用データの取り出しに使用するプログラムやデータ以外のプログラムやデータを消去するようにするとよい。
【0011】
あるいは、上記不揮発性メモリに、電子装置を動作させるためのプログラムやデータと、上記異常解析用データの取り出しに使用するプログラムやデータをダウンロードするためのプログラムとを格納しておき、上記異常解析用データ保存手段が上記不揮発性メモリ上のプログラムやデータを消去する際に、上記異常解析用データの取り出しに使用するプログラムやデータをダウンロードするためのプログラム以外のプログラムやデータを消去するようにしてもよい。
【0012】
これらの電子装置の制御部において、電子装置を動作させるためのプログラムやデータを外部からダウンロードして、上記不揮発性メモリに格納して再インストールする手段を有するのが望ましい。
あるいは、上記不揮発性メモリを電子装置本体に着脱可能に設け、その不揮発性メモリに格納されていた上記プログラムやデータが消去された場合には、それを該プログラムやデータが格納された不揮発性メモリに交換することにより電子装置を復旧できるように構成してもよい。
【0013】
上記異常検出手段により異常が検出された場合に、その異常発生箇所をさらに特定する異常個所特定手段を有し、上記異常解析用データ保存手段は、上記不揮発性メモリ上のプログラムやデータを消去した領域に、上記検出された異常のうち上記異常個所特定手段によって特定された箇所の異常を解析するために必要な異常解析用データのみを書き込み保存するとよい。
その場合、上記異常解析用データ保存手段は、上記不揮発性メモリ上のプログラムやデータを消去する際に、上記異常個所特定手段によって特定された箇所の制御に必要なプログラムやデータのみを消去するのが望ましい。
【0014】
上記異常解析用データ保存手段はさらに、、上記不揮発性メモリ上のプログラムやデータが消去された領域が連続した領域となるように残っているプログラムおよびデータを再配置し、連続した消去領域に上記特定された箇所の異常を解析するために必要な異常解析用データを書き込み保存するとなおよい。
また、上記異常解析用データを圧縮する圧縮処理手段を有し、上記異常解析用データ保存手段は、上記異常解析用データを書き込み保存する際に、上記圧縮処理手段によって圧縮された異常解析用データを書き込み保存すると、より効率よく異常解析用データを保存できる。
【0015】
これらの電子装置の制御部と、モータおよび該モータを駆動する駆動回路とを備え、上記制御部が上記駆動回路を介して上記モータの駆動を制御する機能も有する電子装置も提供する。
さらに、これらの電子装置の制御部と画像形成部とを備え、上記制御部が該画像形成部を制御する機能も有する画像形成装置も提供する。
上述した制御部による電子装置の各制御方法、コンピュータを上述した制御部の各手段として機能させるためのプログラム、およびそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も提供する。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、通常動作に必要なプログラムやデータなどが書き換え可能な不揮発性メモリに格納されている電子装置において、制御部によって制御不可能な異常状態を検出した場合に、通常動作に必要なプログラムやデータを書き換え可能な不揮発性メモリから消去し、その消去されたメモリ領域に保存しておきたい異常解析用データを格納するので、異常解析用データの保存用メモリ領域を予め用意しておく必要がなく、しかも異常発生時には必要な異常解析用データを十分に保存しておくことができる。そのため、異常解析用データを保存するためのメモリコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1はこの発明による制御部を備えた電子装置の一実施形態を示すブロック回路図である。この電子装置は、制御部1と、モータ2およびそれを駆動する駆動回路であるモータドライバ3と、エンコーダ4とを備えている。
【0018】
制御部1は、この電子装置全体を制御するための中央演算ユニットであるCPU11と、揮発性メモリであるRAM12と、書き換え可能な不揮発性メモリであるフラッシュROM13と、モータ制御に必要な機能を有するASIC(特定用途向け集積回路)14とからなる。
RAM12は、CPU11がこの電子装置を制御するために必要なデータを一時的に格納する。フラッシュROM13は、CPU11が動作するためのプログラムおよびデータが格納されており、異常検出時には異常解析用データを保存するためにも使用され、この電子装置の電源が切断された後も格納されているプログラムおよびデータを保持する。
【0019】
ASIC14は、モータ2を回転させるための相励磁信号をCPU11によって指示された条件で生成し、モータドライバ3に出力してモータ2を駆動させ、そのモータ2の回転速度を把握するためにエンコーダ4が発生するエンコーダ信号の変化を検出するなどの機能を持つ。
【0020】
モータドライバ3は、ASIC14からの相励磁信号に基づいてモータ2を回転させられるだけの電流を流す。
エンコーダ4は、モータ2の回転軸またはその回転や移動速度と同等の精度を有する箇所に取り付けられ、その速度に応じた間隔のパルス信号であるエンコーダ信号を発生する。
【0021】
次に、この電子装置の制御部1による制御処理の第1実施例について図2のフローチャートによって説明するが、先ずモータの速度制御に関して説明する。なお、図2および以後の各フローチャートにおいても、各ステップを「S」と略記する。
図1に示した電子装置の電源が投入(オン)されると、CPU11は図2に示す処理を開始する。
【0022】
まず、S1でモータの起動要求の有無を確認し、起動要求があるまで待機する。上位システもしくはユーザからの指示によりモータの起動要求がなされた場合には、S2で速度指示値(目標回転速度)をASIC14に指示する。DCブラシレスモータの場合、回転速度の指示はPWMデューティにより指示することが多い。ASIC14の内部に周期とデューティを任意に設定できるタイマ機能を有し、そのデューティ値をソフトウェアで設定することによりモータ回転速度を指示する。
【0023】
その後、S3、S4を経てS5へ進むが、S3、S4はS13〜S19とともに、異常検知に関する処理であるから後述する。S5では、モータ速度チェックのため、エンコーダパルス(エンコーダ信号のパルス)間隔を定期的に監視する。エンコーダパルス間隔を監視することによってモータ2が目標速度に達しているか、もしくは目標速度から変動していないかなどをチェックすることが可能である。そして、S6でモータ速度と目標速度が一致しているかどうかをチェックし、一致している場合には、ASIC14に指示したPWMタイマ値である速度指示値を更新せず、その状態を継続維持させる。
【0024】
モータ速度と目標速度が一致していない場合には、S7でモータ速度が目標速度より速いか否かをチェックし、速い場合にはS8で速度指示値を減算し、ASIC14中のPWMタイマ値を更新してS2での速度指示値を下げる。それによりモータ2の回転速度が低下し、エンコーダパルス間隔が長くなる。S7でモータ速度が目標速度より遅い場合には、S9で速度指示値を加算し、S2での速度指示値を上げる。それによりモータ2の回転速度が増加し、エンコーダパルス間隔が短くなる。
【0025】
S6でモータ速度と目標速度が一致した場合、あるいはS8で速度指示値を減算するかS9で速度指示値を加算した後には、S10へ進んでモータ停止要求の有無を判断し、モータ停止要求が無い場合はS2へ戻り、速度指示値(目標回転速度)をASIC14に指示する。モータ停止要求があった場合には、S11で速度指示値=0にしてモータ2を停止させた後、S12で電源オフの指示が有ったか否かを判断しあった場合は電源をオフにして終了するが、電源オフの指示が無ければS1へ戻って待機する。
【0026】
速度指示値の算出手段については、様々な制御理論があるが、ここでは特定せず、基本的な制御の概略のみを説明した。このフローチャートの処理により、モータは目標とする回転速度を維持することが可能である。
なお、上述の説明ではASIC14に内蔵したタイマによるモータ速度指示手段を例にして説明したが、汎用CPUなどに内蔵されるタイマで代用できる場合にはそれを使用可能であり、特に用途手段を限定するものではない。
【0027】
図3は正常な制御状態のモータ速度の例を示す波形図である。正常な状態で制御されているモータの速度は、図3に示すように縦軸をモータ速度、横軸を時間とすると、目標速度に対して殆ど変動なく維持されている。
しかし、なんらかの異常が発生した状態のモータ速度は図4に示すようになる。電子装置になんらかの異常が発生した場合、この図4に示すように目標速度に対して大きく変動した速度が現れることがある。
【0028】
前述したような常時定期的にエンコーダパルス間隔を監視して速度指示値を可変するフィードバック制御を行っていれば、このような速度変動が現れた場合でもそれを収束させてもとの安定した状態に戻すことも可能である。
しかしその変動や周期が大きく、フィードバック制御範囲外であった場合には、当然安定した状態には戻せない。このようなことは、例えば装置の経年劣化や、突発的な破損により発生する可能性は十分にある。
【0029】
このような異常が発生した場合にそれを検知して、異常解析用データを保存するための処理を、図2のS3,S4,S13〜S19によって説明する。
図2のS2で速度指示値をASIC14に指示した後、S3で一定周期でエンコーダパルス間隔データを取り込んで、後のFFT処理のためにRAM12に保存しておく。そして、S4で必要データ数の保存が完了したか否かを判断し、完了するとS13へ進んで、その保存した必要データ数のエンコーダパルス間隔データをFFT処理(演算)をすることにより、どういった周波数成分がモータ回転速度の中に現れているのかを把握する。
【0030】
例えば、いままで発生していなかったモータ回転速度の周波数成分が現れてきたとすると、モータそのものか、それに関連するギア等に磨耗や破損が発生している可能性が予測できる。そこで、S13でFFT処理を実行した後、S14で制御可能な状態か否かを判断する。その結果制御可能な状態であると判断すればS5へ進んで、前述したモータ速度制御を行うが、装置に異常な状態が検出され、制御可能な状態ではないと判断した場合には、S15へ進んですぐにモータを停止し、S16で異常発生を表示や警告音の発生等によってユーザに通知する。
【0031】
FFT処理(演算)は周知技術であるが、例えばエンコーダパルスのFFT演算(高速フーリエ演算)によって回転体の角速度変動を検出する例が、特開2008−99490号公報に記載されている。
なお、ここでは、FFT処理によるモータ異常の検出の例を説明したが、異常検出手段はそれに限定するものではない。例えば、エンコーダパルス間隔データが制御可能な間隔範囲より大きくなったとき、間隔のバラツキが所定範囲を越えた時などに異常発生と判断することもできる。
【0032】
そして、S17でフラッシュROMに格納されている通常動作に使用するプログラムやデータを消去し、S18でその消去したエリアに異常解析用データを保存する。このS17とS18の処理がこの発明の特徴であり、後で具体的に説明する。
その後、S19で電源がオフされるのを待って処理を終了する。
【0033】
図5は上述した第1実施例の場合のフラッシュROMの使用例を示す説明図である。
図1に示したフラッシュROM13には、通常の使用状態では図5の(a)に示すように、割込みベクタ領域、プログラム領域、データ領域、および未使用の空き領域が存在する。
割込みベクタ領域は、この電子装置の電源投入時にプログラムが起動するための割込み処理プログラムの開始アドレスが、プログラム領域にはこの電子装置を動作させるためのソフトウェアであるプログラムが、データ領域にはそのプログラムが使用するデータがそれぞれ格納されており、空き領域は使用されていない予備の領域である。
【0034】
従来の電子装置では、一般にこの空き領域を利用して、異常発生時に異常解析用データを保存していた。通常はこの空き領域は少ないため、必要な異常解析用データを充分に保存できないという問題があった。そこで、異常解析用データの保存容量を確保するために大容量のフラッシュROMを搭載して大きな空き領域を設けたり、異常解析用データ保存用に別のフラッシュROMを搭載しておくこともあった。しかし、通常は使用しないメモリ領域を常時確保しておくのはメモリの使用効率が悪く、コストアップ要因となる。
【0035】
この発明による電子装置の制御部1では、通常はフラッシュROM13の図5の(a)に示すプログラム領域およびデータ領域に格納されているプログラムやデータなどにより、CPU11が前述したモータ2の速度制御等の動作を行う。そのプログラムには異常検出プログラムも含み、図2のフローチャートで説明したように、モータ2の回転を制御しながら、同時にFFT処理などの異常検出処理も行っている。
【0036】
そして、異常検出プログラムによる異常検出処理で、装置の復旧が不可能な異常が発生したと判断した場合には、図5の(b)に示すようにフラッシュROM13の割込みベクタ領域、プログラム領域、およびデータ領域に格納されているプログラムやデータなどを全て消去する。これは、なんらかの復旧作業を行わなければ装置の継続動作が不可能な状態である場合、装置が復旧や修復されるまでは通常動作用のプログラムやデータは必要がないためである。
【0037】
そして、図5の(c)に示すようにフラッシュROM13の未使用の空き領域に加え、通常の動作用プログラムやデータを消去した領域を全て異常解析用データの保存用エリアとして使用して、異常解析用データを保存する。したがって、必要な異常解析用データを充分に保存でき、しかも、異常解析用データを保存するために常時大きなメモリ領域を用意しておく必要がないため非常に効率的であり、何らコストアップにならない。
【0038】
異常解析用データは、異常の詳細要因を特定するための解析用のデータであり、前述の場合にはFFT処理(演算)を行なった元のデータであるエンコーダパルス間隔データであり、RAM12に一時的に保存されているデータである。それを、異常検出時にフラッシュROM13に保存する。
【0039】
図1における制御部1による上述した第1実施例の制御処理を実行するための機能構成を図6に機能ブロック図として示す。この図6の各手段は図2における各ステップと次のように対応する。
すなわち、電子装置の異常を検出するためのデータを取り込むデータ取込手段Aと、そのデータ取込手段Aが取り込んだデータを一時的に保存するデータ保存手段Bは、図2のS3,S4と図1のRAM12に相当する。
データ保存手段Bが保存したデータを基に電子装置の異常を検出する異常検出手段Cは、図2のS13,S14に相当する。
【0040】
フラッシュROM13は、図1で説明したように、電子装置を動作させるためのプログラムやデータが格納されている書き換え可能な不揮発性メモリである。
そして、異常解析用データ保存手段Dは、異常検出手段Cにより異常が検出された場合に、フラッシュROM13上のプログラムやデータを消去し、その消去した領域に検出された異常を解析するために必要な異常解析用データ(RAM12に保存されたエンコーダパルス間隔データ)を書き込み保存する手段であり、図2のS17とS18に相当する。
【0041】
限られた資源である不揮発性メモリ(フラッシュROM13)をこのように使用することにより、従来は保存できなかった容量の異常解析用データを保存することが可能になるとともに、通常は不要な異常解析用データ保存用の不揮発性メモリを余分に搭載しておく必要もなくなり、システムのコスト低減にも寄与する。
【0042】
さらに、図6に破線で示すように、異常解析用データを圧縮する圧縮処理手段Eを設け、異常解析用データ保存手段Dは、、異常解析用データをフラッシュROM13に書き込み保存する際に、その圧縮処理手段Eによって圧縮された異常解析用データを書き込み保存するようにすれば、さらに多くの異常解析用データを保存することが可能になる。
【0043】
この実施形態では、上述したように異常検出時には書き換え可能な不揮発性メモリであるフラッシュROM13内の割込みベクタや、電子装置を動作させるためのプログラム及びデータを全て消去するが、そのフラッシュROM13がソケットに挿着して実装され、電子装置に容易に着脱可能に設けられるようにするとよい。そして、異常解析用データが保存されたフラッシュROM13を取り外して、解析装置でその異常解析用データを読み出して解析し、異常発生原因等を解明する。また、プログラムやデータが消去されたフラッシュROM13を、そのプログラムやデータが格納されている新しいフラッシュROMに交換することによって、電子装置を復旧することができる。
【0044】
しかし、プリント基板などにフラッシュROMを直接半田付けにより実装する(着脱可能でない)場合の実施例を以下に説明する。
図7は、図1に示した電子装置のフラッシュROM13が着脱可能でない場合に適した、制御部1による制御処理の第2実施例によるフラッシュROMの使用例を示す説明図である。
【0045】
この例でも、異常発生時にはフラッシュROM上の通常使用するプログラムおよびデータを消去する点は図5に示した使用例と変わりはないが、図7の(a)に示すようにフラッシュROM13に上位システムとの通信用プログラムも格納しておく。そして、異常検出時には同図の(b)に示すように、割込みベクタ領域と通信用プログラムを除き、それ以外のプログラム領域とデータ領域のプログラムおよびデータを消去して、異常解析用データの保存エリアとして確保する。その確保した領域に同図の(c)に示すように異常解析用データを保存する。
【0046】
異常解析用データの取り出し手段としては種々あるが、上位システムもしくはデータ取り込み用端末を接続して、データ通信による取り込みを行うことが多い。そのため、フラッシュROM13上のプログラムをすべて消去するのではなく、そのための通信用プログラム(すなわち異常解析用データの取り出しに使用するプログラムやデータ)はそのまま残しておくことにより、図11のCPU11が他のシステムや端末からの指示でその通信用プログラムを用いて、フラッシュROM13に保存している異常解析用データを外部へ送信することが可能になる。
【0047】
さらに解析用データの保存領域を確保したい場合には、フラッシュROM13に上位システムなどからデータ転送用プログラムをダウンロードするためのプログラムのみを残しておいて対応することも可能である。つまり異常解析用データを上位システムなどに転送する場合には、図11のCPU11がまず、そのデータ転送用プログラムをダウンロードするためのプログラムを使用して上位システムから転送用プログラムをダウンロードし、それを揮発性メモリであるRAM12などに展開する。
【0048】
その後、CPU11がその展開された転送用プログラムを使用して、フラッシュROM13に保存している解析用データを上位システムなどに送信する。
上位システムとやり取りをして異常解析用データを送信する通信プログラムの容量よりも、単純にその通信プログラムをダウンロードしてRAM等に展開するプログラムの方が小容量で済むため、異常解析用データを保存するための不揮発性メモリの使用効率を向上できる。
【0049】
また異常解析用データを取り込み、装置の異常個所の修理等を行った後、上位システムまたはその他の端末から、再度通常動作用のプログラムやデータをダウンロードして不揮発性メモリであるフラッシュROM13にインストールすることにより、この電子装置を復旧し再度稼動させることも可能である。この場合は新たに基板交換を行うなどの余分なコストアップ要因となる作業を実施しなくてよい。
その際に使用するインストール用プログラムなどは、前述したように解析用データを保存するために消去される以外のプログラムとしてフラッシュROM13に格納しておくことによって容易に対応が可能である。
【0050】
図8はこの制御部1による制御処理の第2実施例を示すフローチャート、図9は再インストールの処理を示すフローチャートであり、図10は制御部1がその第2実施例の制御処理を実行するための機能構成を示すブロック図である。
図8において、図2と同じ処理のステップには同じステップ符号を付し、図10においても図6と同じ手段には同じ符号を付してあり、それらの説明は省略する。
【0051】
図8のフローチャートにおいて図2と相違するのは、S27〜S30のステップだけである。S14で装置に異常な状態が検出され、制御可能な状態ではないと判断した場合には、S15でモータを停止し、S16で異常発生をユーザに通知するまでは、図2で説明した第1実施例と同じであるが、その後のS27では図7の(b)で説明したように、フラッシュROM13上の通信プログラムとその処理に必要なデータ(割り込みベクタ等)を残し、その他の領域のプログラムやデータを消去する。
【0052】
そして、S28でフラッシュROM13の消去したエリア(空き領域も含む)に、図7の(c)で説明したように異常解析用データを保存する。その後、S29で外部システム等からの「異常解析用データ送信要求」があると、S30でフラッシュROM13に保存している異常解析用データをその要求元へデータ送信する。そして、S19で電源がオフになれば処理を終了するが、電源がオフにならなければS29へ戻って「異常解析用データ送信要求」のチェックを繰り返し、その要求があれば異常解析用データを送信する。
【0053】
そして、外部システム等においてその異常解析用データを解析し、異常原因などを解明して電子装置を修理した後、復旧させる際には、フラッシュROM13上の消去したプログラムやデータを再インストールする必要がある。
【0054】
そのため、図1における制御部1のCPU11は図9のフローチャートに示すように、電源がオンされるとS51で「プログラムダウンロード要求」を待ち、その要求があるとS2でフラッシュROM13に保存されている異常解析用データを消去する。そして、外部から通常の動作用プログラムと必要なデータをダウンロードして、そのプログラムとデータをフラッシュROM13の異常解析用データを消去した領域に書き込む。S54で書き込み完了と判断するまで書き込みを行い、完了したらS56で電源がオフになるのを待って、再インストール処理を終了する。
【0055】
この第1実施例の図10に示す機能ブロック図においては、図6に示した各手段に加えて、データ送信手段Gと再インストール手段Hを設けており、異常解析用データ保存手段D′は、図6の異常解析用データ保存手段Dとは若干異なり、図8におけるS27,S28の処理を行う。すなわち、異常検出手段Cによって異常が検出されると、フラッシュROM13上の通信プログラムとその処理に必要なデータ(割り込みベクタ等)を残し、その他の領域のプログラムやデータを消去する。そして、その消去したエリア(空き領域も含む)に異常解析用データを保存する。
【0056】
データ送信手段Gは、図8におけるS29,S30の処理を行う。すなわち、外部システム等から「異常解析用データ送信要求」あると、フラッシュROM13に保存している異常解析用データをその要求元へデータ送信する。
【0057】
再インストール手段Hは、図9で説明した再インストールの処理を行う。すなわち、フラッシュROM13に保存されている異常解析用データを消去し、外部から通常の動作用プログラムと必要なデータをダウンロードして、それをフラッシュROM13の異常解析用データを消去した領域に書き込む。
【0058】
次に、この発明による制御部を備えた電子装置の他の実施形態を図11から図14によって説明する。図11はその電子装置のブロック回路図、図12はその場合のフラッシュROMの使用例を示す説明図、図13は図11の制御部1′による制御処理の第3実施例を示すフローチャート、図14は制御部1′がその制御処理を実行するための機能構成を示すブロック図である。
【0059】
図11に示す電子装置は、制御部1′が2個のASIC14,15を有し、図1に示した電子装置の構成に加えて、もう一つのモータ6を備え、その駆動回路であるモータドライバ7と回転速度を検出するためのエンコーダ8とをASIC15に接続している。モータ等の被制御対象を3個以上設けてもよい。ASIC1は各被制御部ごとに設けてもよいが、複数の被制御対象に対して共通に1個のASICを備えてもよい。
【0060】
この実施形態では、図11におけるフラッシュROM13を図12に示すように使用する。フラッシュROM13には、通常の使用状態では図12の(a)に示すように、図7に示した例と同様に割込みベクタ領域、通信用プログラム、プログラム領域、データ領域、および空き領域が存在するが、プログラム領域は、モータ2を制御するためのプログラム領域1とモータ6を制御するためのプログラム領域2、およびその他の被制御対象を制御するためのプログラム領域3とに分けて各プログラムを格納し、データ領域もプログラム領域1で使用するデータ領域1と、プログラム領域2で使用するデータ領域2とに分けて各データを格納している。
【0061】
そして、異常を検知したときには、さらにその異常発生箇所を特定し、その特定した異常発生箇所を制御するためのプログラム領域のプログラムとデータ領域のデータを削除する。例えば、異常発生箇所がモータ6であると特定した場合は、図12の(b)に示すように、モータ6を制御するためのプログラム領域2のプログラムと、そのプログラム領域2で使用するデータ領域2のデータを削除する。
その後、図12の(c)に示すように、その消去した各領域と空き領域に異常解析用データを書き込み保存する。
【0062】
図11の制御部1′によってこのような制御処理を行う実施例を示すフローチャートを図13に示す。このフローチャートにおいて、図8に示したフローチャートと異なるのは、S31とS32が追加され、S27とS28がS37とS38に変わっていことである。その他の各ステップは便宜上図8に示したフローチャートと同じステップ記号を付してあるが、モータに関する判断や処理の各ステップでは、実際には各モータ毎に個別にその判断や処理を行っている。したがって、S5〜S11の速度制御も各モータ毎に行う。
【0063】
S32では、S14で制御不能な異常が発生したと判断した場合、その解析結果から、更に異常発生箇所を特定する。
そのため、S3では被制御対象毎に、この例では図11に示したモータ2とモータ6毎に、すなわちエンコーダ4とエンコーダ8からのエンコーダパルス間隔データを個別に保存する。そして、S13ではその各エンコーダパルス間隔データの必要データ数を個別にFFT処理する。S32ではその各解析結果から、異常発生箇所を特定することができる。
【0064】
そして、S15では異常発生が特定されたモータを停止させ、S16でその異常発生および発生個所を通知する。
その後、S37ではフラッシュROM13上の異常発生個所の制御に必要なプログラムとデータのみを消去する。前述の例のように、異常発生個所がモータ6であった場合は、その制御に必要な図12に示したプログラム領域2のプログラムと、そのプログラム領域2で使用するデータ領域2のデータのみを消去する。
【0065】
そして、S38でそのフラッシュROM13上の消去したエリア(空き領域も含む)に、モータ6の異常解析用データ(エンコーダ8からのエンコーダパルス間隔データ)のみを保存する。
その後、S29で外部から異常解析用データ送信要求があれば、S30でフラッシュROM13に残っている通信用プログラムを使用して、保存している異常解析用データを要求元へ送信する。
【0066】
異常解析用データ送信要求がないか、異常解析用データを送信した後にS1へ戻って、モータ起動要求を待つ。モータ起動要求があると、S31で異常発生のモータ起動か否かをチェックし、異常発生のモータ起動(先の例ではモータ6の起動)であれば再びS1へ戻ってモータ起動要求を待つ。異常発生のモータ起動でなければS2へ進んで、異常のないモータに対して以後の処理を実行する。
【0067】
図11における制御部1′がこの実施例の制御処理を実行するための機能構成を図14に機能ブロック図で示す。
この図14において図10と相違するのは、異常検出手段Cが異常を検出した際にその異常個所特定する異常個所特定手段Fを設けたことと、異常解析用データ保存手段D″が、前述したようにフラッシュROM13上の特定された異常発生個所の制御に必要なプログラムとデータのみを消去し、その消去したエリア(空き領域も含む)に、その特定された異常発生個所の異常解析用データのみを書き込み保存する点である。
【0068】
図10における圧縮処理手段Eを図示していないが、圧縮処理手段Eを設けて、特定された異常発生個所の異常解析用データを圧縮してフラッシュROM13上の消去されたエリアに書き込み保存するようにしてもよい。
データ送信手段Gは、外部から異常解析用データ送信要求があれば、フラッシュROM13上保存している特定された異常発生個所の異常解析用データを要求元へ送信する。
再インストール手段Hは、フラッシュROM13から消去した特定された異常発生個所を制御するためのプログラム及びデータのみを外部からダウンロードして、フラッシュROM13にインストールすればよい。
【0069】
このようにすることにより、異常解析用データ保存時間を低減でき、異常が発生していない部分だけでも使用できる機能は使用し続けることが可能になり、トータルの装置ダウンタイムの低減も実現することが可能になる。
【0070】
図15は、図11に示した電子装置の制御部1′による制御処理におけるフラッシュROMの他の使用例を示す説明図である。
この使用例において、フラッシュROM13の通常の使用状態を示す図15の(a)と、異常検出時に特定された異常発生個所の制御に必要なプログラムとデータのみを消去する(b)の状態は、図12の(a)と(b)と同じであるが、その後図15の(c)に示すように、フラッシュROM13上のプログラムやデータが消去された領域が空き領域も含めて連続した領域となるように、残っているプログラムおよびデータの領域を再配置する。そして、図15の(d)に示すように連続した消去領域に、特定された箇所の異常を解析するために必要な異常解析用データを書き込み保存する。
【0071】
図16は、図11における制御部1′によってその制御処理を実施するためのフローチャートである。このフローチャートにおいて図13に示したフローチャートと異なるのは、図13におけるS37の後にS47を実行し、その後S38に代えてS48を実行するようにした点だけである。
【0072】
S37でフラッシュROM13上の特定された異常発生個所の制御に必要なプログラムとデータを消去した後、S47では、消去したエリアが空き領域も含めて連続した領域となるように、残っているプログラムおよびデータの領域を再配置して格納する。
そして、S48でその連続した消去エリアに、特定された箇所の異常を解析するために必要な異常解析用データを書き込み保存する。
【0073】
図11における制御部1′がこの制御処理を実行するための機能構成は図14に示した機能ブロック図と同様であるが、異常検出手段Cによって制御不能な異常が検出され、異常個所特定手段Fによって異常発生個所が特定された場合、異常解析用データ保存手段D″が、フラッシュROM13上のその特定された異常発生個所の制御に必要なプログラムとデータのみを消去した後、そのプログラムやデータが消去された領域が空き領域も含めて連続した領域となるように、残っているプログラムおよびデータの領域を再配置する機能も持っている。そして、その連続した消去領域に、特定された箇所の異常を解析するために必要な異常解析用データのみを書き込み保存する。
【0074】
ここで、この発明を適用した電子装置としてカラー画像形成装置の一例を図17によって説明する。
このカラー画像形成装置(カラー複写機)は、装置本体20の上部に原稿を読み取るためのスキャナユニット30が、下部に転写紙をストックして給紙する給紙ユニット40が、一側面に排紙トレイ50がそれぞれ設けられている。
【0075】
装置本体20内には、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびブラック(B)の各トナー像を形成するための4個の感光体ドラム21〜24と、その各感光体ドラム21〜24によって形成された各色のトナー像を順次重ね合わせて転写する中間転写ベルト25を備えている。さらに、その中間転写ベルト25上のカラートナー画像を転写紙に転写するための二次転写ローラ26と斥力ローラ27、その転写部へ転写紙を給送するレジストローラ対28、および転写紙に転写されたカラートナー画像を転写紙上に定着させるための定着ユニット29等を備えている。
【0076】
斥力ローラ27は、二次転写ローラ26の対抗部分に配置され、中間転写ベルト25と二次転写ローラ26との間のニップを生成/維持させるためのローラである。レジストローラ対28は、給紙ユニット40から給紙される転写紙を一時停止させてスキュー補正し、所定のタイミングで転写部である中間転写ベルト25と二次転写ローラ26との間のニップへ給送する。
【0077】
給紙ユニット40内には、転写紙Pを積載しておく給紙トレイ41と、その最上位の転写紙Pを搬送部へ送り出すための給紙ローラ42、送り出された転写紙をレジストローラ対28まで搬送する搬送ローラ43等を備えている。一般に給紙トレイ41を複数段備えており、それぞれサイズの異なる転写紙を積載して、それたを選択的に給紙できるようにしている。図17には転写紙の搬送路を破線で示している。
定着ユニット29でトナー像が定着された画像形成済みの転写紙は、排紙トレイ50上に排出される。
【0078】
図示は省略されているが、装置本体内には、各感光体ドラム21〜24の周囲には、それぞれ帯電ユニット、露光ユニット、現像装置、一次転写ローラ、除電ユニット等が設けられている。各一次転写ローラは、各各感光体ドラム21〜24に対して中間転写ベルト25を挟んで対向する位置に設けられている。
【0079】
各各感光体ドラム21〜24、中間転写ベルト25は、それぞれ独立したモータによって回転駆動される。給紙ローラ42、搬送ローラ43、レジストローラ対28等も個別のモータあるいは共通のモータからクラッチを介して回転駆動される。
これらの各モータを、図11に示したような制御部とエンコーダによって、幾つかのブロックに分けて制御する。
【0080】
このカラー画像形成装置に異常が発生した場合でも、全動作を停止させる必要がない場合もある。例えばこのカラー画像形成装置における前述の異常検出処理において、4個の感光体ドラム21〜24をそれぞれフィードバック制御している場合を考える。4個の各感光体ドラム21〜24を駆動するモータに対する制御指示は、特に外乱等がなければ常に大きく変動することはなく、設計時に考慮していた制御範囲内で推移することになる。
【0081】
しかし、ギアの磨耗等の経年劣化によりモータの偏心が大きくなると、それを正常に制御しようとしてそのモータに対する制御指示値が大きく変動することになり、それを異常として検出することができる。ここで、4個の感光体ドラム21〜24を独立して制御している場合には、どの感光体ドラム系に異常が生じているのかを判断することが可能である。例えばイエローのトナー像を形成する感光体ドラム21を駆動するモータにのみに異常が検出された場合、フルカラー動作を行なわず、モノクロ(黒単色)で画像形成をするには何等問題はない。
【0082】
そのため、装置復旧までの間機能を制限して継続的にこのカラー画像形成装置を使用できるようにしておくことによって、ダウンタイムの低減を図れる。ただし、この場合でも異常が発生した感光体ドラムを駆動するモータの異常解析用データは保存しておきたい。
そのため、図12〜図16によって説明したような制御処理を適用するとよい。
【0083】
例えば、図12又は図15に示したように、フラッシュROMに格納するプログラム領域を大きく3つに分け、データ領域を2つに分離するものとする。そして、プログラム領域1には画像形成装置全体の動作を管理するプログラムを、プログラム領域2にはにフルカラー画像を形成する制御を行なうためのプログラムを、プログラム領域3にはモノクロ画像を形成する制御を行なうためのプログラムを、データ領域1には画像形成装置全体の動作やモノクロ制御用のパラメータデータを、データ領域2にはにフルカラー制御用のパラメータデータを格納しているものとする。
【0084】
前記のようにイエロー画像作像用の感光体ドラム31の駆動系みが継続動作不可能な異常状態となった場合は、フルカラー画像を形成する制御を行なうことはできないが、モノクロ画像形成に機能を制限して動作させることはできる。その場合プログラム領域2のプログラムとデータ領域2のデータは不要になる。そのため、フラッシュROM上のその領域のプログラムおよびデータは必要がないため消去しても問題はない。そして、それらを消去して確保したフラッシュROM上の領域に、イエロー感光体ドラム駆動系の異常解析用データを格納しておく。それによって、機能制約しながらも画像形成動作を継続でき、かつ異常解析用データを保存することもできる。
【0085】
さらに、図15で説明したように、異常発生個所の制御に必要なプログラムやデータを消去した後のプログラムやデータを再配置して、異常解析用データ保存領域を連続して確保するようにすれば、フラッシュROM等の不揮発性メモリをより効率よく使用できる。
【0086】
なお、前述した領域確保およびプログラムやデータ、割り込みベクタ等の割り当てについては一例であり、これに限定されるものではない。異常検出後の機能制約の内容やその際の不揮発性メモリの使用方法についても、上述した例に限定するものではない。
また、上述したカラー画像形成装置はスキャナユニットを搭載したカラー複写機として説明したが、パーソナルコンピユータなどの外部コントローラから画像データを受け取って画像を形成するカラープリンタやモノクロプリンタなどにも、同様にこの発明を適用することができる。
【0087】
また、モータを制御する場合の異常解析用データとしては、「エンコーダパルス間隔データ」が最低限必要なデータであるが、それに加えて次のようなデータを含めることによって、異常解析がより容易になる可能性がある。
・異常発生時のモータ目標速度
・発生日情報(年月日時間など)
・画像形成装置の場合、コピー/プリント中であれば、搬送していた紙の種類の情報
・環境情報(温度、湿度など)
・画像形成装置の場合、コピー枚数情報(連続して印刷している場合、何枚目で異常が発生したか等)
【0088】
一方、装置を復旧させるにあたり必要な情報(消去してはいけないデータ)としては、異常発生前の状態に復旧させるために必要な機械固有のデータ類があり、たとえば次のようなデータである。
・ 装置の通電時間情報(寿命把握等に使用)
・ 画像形成装置の場合、コピー/プリント累積枚数情報(寿命やサプライ交換時期把握等に使用)
・モータやセンサなどのバラツキ補正データ(装置のバラツキを補正するための機器固有のデータ)
【0089】
なお、この発明の実施例として画像形成装置等のモータ制御の異常時について説明したが、その他の実施例としては透過型センサの光量低下異常などでも同様である。
所定のタイミングで透過型センサの光量を調整して一定出力が得られるようにしておき、そこを紙などの媒体が遮蔽しているときのセンサ出力を制御等に使用する電子装置においては、センサの光量が調整できるかどうかが非常に重要である。
【0090】
このような装置では、調整範囲を超える光量にしなければ一定出力が得られないような状態になってしまった場合に異常状態として動作を停止する必要がある。異常発生時に調整時光量の推移を記録しておくことで、異常要因がなにかを解析することが可能となる場合も多い。この発明は、このようなセンサの光量異常などの要因解析においても有効である。
【0091】
この発明による電子装置の制御方法は、これまでに説明してきた各制御処理を行う方法であり、図5、図7、図12、および図15に示したフラッシュROMの使用例や、各フローチャートによる説明から明らかである。
この発明によるプログラムは、電子装置を動作させるためのプログラムやデータが格納された書き換え可能な不揮発性メモリを備えた電子装置の制御プログラムであって、コンピュータを、図6、図10、図14等の機能ブロック図に示した各手段として機能させるためのプログラムである。
【0092】
この発明による記録媒体は、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なフロピディスク、CD−ROM、ROM、フラッシュROM、メモリカード、メモリチップなどの記録媒体である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
この発明は、複写機やプリンタ等の画像形成装置などの電子装置の制御に広く利用できるが、特にモータの回転速度を高精度に制御する必要がある電子機器に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】この発明による制御部を備えた電子装置の一実施形態を示すブロック回路図である。
【図2】図1に示した電子装置の制御部1による制御処理の第1実施例を示すフローチャートである。
【図3】正常な制御状態のモータ速度の例示す波形図である。
【図4】何等かの異常が発生した状態のモータ速度の例を示す波形図である。
【図5】図2によって説明した制御処理の第1実施例の場合のフラッシュROMの使用例を示す説明図である。
【0095】
【図6】図1における制御部1が第1実施例の制御処理を実行するための機能構成を示すブロック図である。
【図7】図1に示した電子装置の制御部による制御処理の第2実施例の場合のフラッシュROMの使用例を示す説明図である。
【図8】同じくその制御処理の第2実施例を示すフローチャートである。
【図9】電子装置を復旧させるための再インストールの処理を示すフローチャート
【図10】図1における制御部1が第2実施例の制御処理を実行するための機能構成を示すブロック図である。
【0096】
【図11】この発明による制御部を備えた電子装置の他の実施形態を示す回路図である。
【図12】図11に示した電子装置の制御部1′による制御処理におけるフラッシュROMの使用例を示す説明図である。
【図13】同じくその制御部1′による制御処理の実施例を示すフローチャートである。
【図14】同じくその制御部1′が図13に示した実施例の制御処理を実行するための機能構成を示すブロック図である。
【図15】図11に示した電子装置の制御部1′による制御処理におけるフラッシュROMの他の使用例を示す説明図である。
【図16】同じくその制御部1′によってその制御処理を実施するためのフローチャートである。
【図17】この発明を適用したカラー画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0097】
1,1′:制御部 2,6:モータ 3,7:モータドライバ(駆動回路)
4,8:エンコーダ
11:CPU(中央演算ユニット) 12:RAM(揮発性メモリ)
13:フラッシュROM(書き換え可能な不揮発性メモリ)
14:ASIC(特定用途向け集積回路)
20:装置本体 21〜24:感光体ドラム 25:中間転写ベルト
26:二次転写ローラ 27:斥力ローラ 28:レジストローラ対
29:定着ユニット 30:スキャナユニット 40:給紙ユニット
41:給紙トレイ 42:給紙ローラ 43:搬送ローラ
50:排紙トレイ
A:データ取込手段 B:データ保存手段 C:異常検出手段
D,D′,D″:異常解析用データ保存手段 E:圧縮処理手段
F:異常個所特定手段 G:データ送信手段 H:再インストール手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置の異常を検出するためのデータを取り込むデータ取込手段と、
該データ取込手段が取り込んだデータを一時的に保存するデータ保存手段と、
該データ保存手段が保存したデータを基に前記電子装置の異常を検出する異常検出手段と、
前記電子装置を動作させるためのプログラムやデータが格納されている書き換え可能な不揮発性メモリと、
前記異常検出手段により異常が検出された場合に、前記不揮発性メモリ上のプログラムやデータを消去し、その消去した領域に前記検出された異常を解析するために必要な異常解析用データを書き込み保存する異常解析用データ保存手段と
を有することを特徴とする電子装置の制御部。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置の制御部において、
前記不揮発性メモリには、前記電子装置を動作させるためのプログラムやデータと、前記異常解析用データの取り出しに使用するプログラムやデータとが格納されており、
前記異常解析用データ保存手段は、前記不揮発性メモリ上のプログラムやデータを消去する際に、前記異常解析用データの取り出しに使用するプログラムやデータ以外のプログラムやデータを消去することを特徴とする電子装置の制御部。
【請求項3】
請求項1に記載の電子装置の制御部において、
前記不揮発性メモリには、前記電子装置を動作させるためのプログラムやデータと、前記異常解析用データの取り出しに使用するプログラムやデータをダウンロードするためのプログラムとが格納されており、
前記異常解析用データ保存手段は、前記不揮発性メモリ上のプログラムやデータを消去する際に、前記異常解析用データの取り出しに使用するプログラムやデータをダウンロードするためのプログラム以外のプログラムやデータを消去することを特徴とする電子装置の制御部。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電子装置の制御部において、
前記電子装置を動作させるためのプログラムやデータを外部からダウンロードして、前記不揮発性メモリに格納して再インストールする手段を有することを特徴とする電子装置の制御部。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電子装置の制御部において、
前記不揮発性メモリが前記電子装置本体に着脱可能に設けられており、該不揮発性メモリに格納されていた前記プログラムやデータが消去された場合には、それを該プログラムやデータが格納された不揮発性メモリに交換することにより前記電子装置を復旧できるように構成したことを特徴とする電子装置の制御部。
【請求項6】
請求項1に記載の電子装置の制御部において、
前記異常検出手段により異常が検出された場合に、その異常発生箇所をさらに特定する異常個所特定手段を有し、
前記異常解析用データ保存手段は、前記不揮発性メモリ上のプログラムやデータを消去した領域に、前記検出された異常のうち前記異常個所特定手段によって特定された箇所の異常を解析するために必要な異常解析用データのみを書き込み保存することを特徴とする電子装置の制御部。
【請求項7】
請求項6に記載の電子装置の制御部において、
前記異常解析用データ保存手段は、前記不揮発性メモリ上のプログラムやデータを消去する際に、前記異常個所特定手段によって特定された箇所の制御に必要なプログラムやデータのみを消去することを特徴とする電子装置の制御部。
【請求項8】
請求項7に記載の電子装置の制御部において、
前記異常解析用データ保存手段は、前記不揮発性メモリ上のプログラムやデータが消去された領域が連続した領域となるように残っているプログラムおよびデータを再配置し、連続した消去領域に前記特定された箇所の異常を解析するために必要な異常解析用データを書き込み保存することを特徴とする電子装置の制御部。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電子装置の制御部において、
前記異常解析用データを圧縮する圧縮処理手段を有し、
前記異常解析用データ保存手段は、前記異常解析用データを書き込み保存する際に、前記圧縮処理手段によって圧縮された異常解析用データを書き込み保存することを特徴とする電子装置の制御部。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電子装置の制御部と、モータおよび該モータを駆動する駆動回路とを備え、前記制御部が前記駆動回路を介して前記モータの駆動を制御する機能も有することを特徴とする電子装置。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の電子装置の制御部と画像形成部とを備え、前記制御部が該画像形成部を制御する機能も有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
電子装置を動作させるためのプログラムやデータが格納された書き換え可能な不揮発性メモリを備えた電子装置の制御方法であって、
前記電子装置の異常を検出するためのデータを取り込むデータ取込ステップと、
該ステップで取り込んだデータを一時的に保存するデータ保存ステップと、
該ステップで保存したデータを基に前記電子装置の異常を検出する異常検出ステップと、
該ステップで異常が検出された場合に、前記不揮発性メモリ上のプログラムやデータを消去し、その消去した領域に前記検出された異常を解析するために必要な異常解析用データを書き込み保存する異常解析用データ保存ステップと
を有することを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項13】
請求項12に記載の電子装置の制御方法において、
異常解析用データ保存ステップでは、前記不揮発性メモリ上のプログラムやデータを消去する際に、該不揮発性メモリに前記電子装置を動作させるためのプログラムやデータと前記異常解析用データの取り出しに使用するプログラムやデータとが格納されている場合には、該異常解析用データの取り出しに使用するプログラムやデータ以外のプログラムやデータを消去することを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項14】
請求項12に記載の電子装置の制御方法において、
前記異常解析用データ保存ステップでは、前記不揮発性メモリ上のプログラムやデータを消去する際に、該不揮発性メモリに前記電子装置を動作させるためのプログラムやデータと前記異常解析用データの取り出しに使用するプログラムやデータをダウンロードするためのプログラムとが格納されている場合には、該異常解析用データの取り出しに使用するプログラムやデータをダウンロードするためのプログラム以外のプログラムやデータを消去することを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか一項に記載の電子装置の制御方法において、
前記電子装置を復旧させる際には、前記電子装置を動作させるためのプログラムやデータを外部からダウンロードして、前記不揮発性メモリに格納して再インストールすることを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項16】
請求項12に記載の電子装置の制御方法において、
前記異常検出ステップで異常が検出された場合に、その異常発生箇所をさらに特定する異常個所特定ステップを有し、
前記異常解析用データ保存ステップでは、前記不揮発性メモリ上のプログラムやデータを消去した領域に、前記異常検出ステップで検出された異常のうち前記異常個所特定ステップで特定された箇所の異常を解析するために必要な異常解析用データのみを書き込み保存することを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項17】
請求項16に記載の電子装置の制御部において、
前記異常解析用データ保存ステップでは、前記不揮発性メモリ上のプログラムやデータを消去する際に、前記異常個所特性ステップで特定された箇所の制御に必要なプログラムやデータのみを消去することを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項18】
請求項12から17のいずれか一項に記載の電子装置の制御方法において、
前記異常解析用データを圧縮する圧縮処理ステップを有し、
前記異常解析用データ保存ステップでは、前記異常解析用データを書き込み保存する際に、前記圧縮処理ステップでによって圧縮された異常解析用データを書き込み保存することを特徴とする電子装置の制御方法。
【請求項19】
電子装置を動作させるためのプログラムやデータが格納された書き換え可能な不揮発性メモリを備えた電子装置の制御プログラムであって、コンピュータを、
前記電子装置の異常を検出するためのデータを取り込むデータ取込手段と、
該手段で取り込んだデータを一時的に保存するデータ保存手段と、
該手段で保存したデータを基に前記電子装置の異常を検出する異常検出手段と、
該ステップで異常が検出された場合に、前記不揮発性メモリ上のプログラムやデータを消去し、その消去した領域に前記検出された異常を解析するために必要な異常解析用データを書き込み保存する異常解析用データ保存手段と
として機能させるためのプログラム。
【請求項20】
請求項19に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−72798(P2010−72798A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237703(P2008−237703)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】