説明

電子装置の製造方法

【課題】印刷により基板上に導電膜を形成した後、この導電膜の上に電子部品を搭載し、導電膜を介して基板と電子部品とを接続してなる電子装置の製造方法において、1枚の所定板厚のマスクを用いて、同一基板内において部品搭載箇所で印刷膜厚を変える。
【解決手段】マスク10において、第2の導電膜52を形成する第2の穴12におけるマスク10の上面側の開口部における対向する縁部に、当該開口部の一部を横断するブリッジ12aを設け、ブリッジ12aの厚さをマスク10の上面と同一面を起点として第2の穴12の深さ方向の途中までとし、第2の穴12におけるマスク10の上面側の開口部のうちブリッジ12aで遮蔽されていない部位から、導電性接続材料40を第2の穴12に充填することにより、第2の導電膜52として、ブリッジ12aが位置する部位ではそれ以外の部位に比べてブリッジ12aの厚さ分、凹んで薄くなっている膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷により基板上に導電膜を形成した後、この導電膜の上に電子部品を搭載し、導電膜を介して基板と電子部品とを接続してなる電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の一般的な電子装置の製造方法を図13に示す。基板30上に、板厚方向に貫通する穴11、12を有する板状のマスク10を配置し、スキージ20によって、ペースト状の導電性接続材料40をマスク10の上面から穴11、12に充填する(図13(a)参照)ことにより、当該導電性接続材料40よりなる導電膜51、52を基板30上、具体的には、マスク10の穴11、12に位置する基板30のランド(図示せず)上に印刷して形成する(図13(b)参照)。
【0003】
このとき、具体的には、上記導電性接続材料40は、はんだや導電性接着剤などであり、この導電性接続材料40をマスク10の上面に配置し、スキージ20をマスク10の上面と平行な所定方向xに進行させることによって、導電性接続材料40をマスク10の上面に押し広げながら穴11、12に充填する。これにより、穴11、12に充填されて形成される導電膜51、52は、穴11、12の開口形状に対応する平面形状を有するものとなる。
【0004】
そして、この導電膜51、52の上に図示しない電子部品を搭載し、導電膜によって電子部品と基板とを接続すれば、電子装置ができあがる。
【0005】
ここで、図13では、マスク10の穴11、12の開口面積を異ならせている。これは、異なる体格の電子部品を搭載するためであり、開口面積の大きな穴11にて形成される導電膜51は、大型部品を接続するものであり、開口面積の小さな穴12にて形成される導電膜52は、小型部品を接続するものとして構成される。
【0006】
そして、印刷された導電膜51、52は、マスク10の板厚に対応して一定膜厚を有するのが一般的であるが、このような穴11、12の開口面積が異なる場合、開口面積の大きな穴11による導電膜51は、開口面積の小さな穴12による導電膜52よりも薄くなりがちで、且つ、膜厚のばらつきも大きくなる。
【0007】
近年、高密度実装化の要求にともなって、基板に搭載される電子部品の小型化が進んでおり、0603型、0402型などのコンデンサや抵抗などの部品実装が必要となっている。
【0008】
ここで、小型部品の実装における課題の1つとして、部品自身の電極間や基板側の電極間の距離が小さいために、実装後の部品下における導電膜間のクリアランスの確保が難しいことが挙げられる。
【0009】
具体的に、図14は、従来の一般的な電子装置の製造方法における部品搭載工程を示す工程図である。この図14では、基板側の電極としての一対のランド31上に導電性接続材料よりなる導電膜52が配置され(図14(a))、その上に電子部品62を搭載するが(図14(b))。
【0010】
このとき導電膜52が部品搭載時の荷重を受けて、両ランド31間にはみ出す。そして、両ランド31の距離が小さい場合、導電膜52間のクリアランスKも小さくなり、ショートの懸念がある。そして、このクリアランスKの確保については、導電膜52の膜厚が薄い方が制御しやすい。
【0011】
一方、大型部品においては、部品高さがある分、たとえば後工程での封止樹脂の注入圧力が大きく加わることや、発生する熱応力が大きいため、導電膜の膜厚を厚くして部品の接続強度を大きくすることが必要となる。
【0012】
このようなことから、電子部品として、小型部品と大型部品とを混載する電子装置においては、印刷される導電膜51、52の膜厚をそれぞれの部品に対応して異ならせて制御することが重要といえる。
【0013】
これに対して、従来では、一般に、板厚の異なる2枚のマスクを用いている。図15は、この従来の2枚のマスクを用いて膜厚の異なる導電膜を形成する印刷方法を示す工程図である。
【0014】
まず、板厚の薄い1枚目のマスク10bで、小型部品用としての膜厚の薄い導電膜52を印刷する。次に、1枚目よりも板厚の厚い2枚目のマスク10aで、大型部品用としての膜厚の厚い導電膜51を印刷する。このとき、2枚目のマスク10aには、ハーフエッチング加工などで溝加工を施し、1枚目のマスク10bで印刷された導電膜52を覆い隠すようにする。これにより、小型部品と大型部品とで印刷膜厚を分けるようにしている。
【0015】
しかしながら、この方法では、印刷用のマスク10a、10bが2枚必要であることと、各マスクに応じて印刷機も2台必要となるために、製造コストがかかる。
【0016】
また、従来では、特許文献1に記載されているように、1枚のマスクでハーフエッチングを施し、1枚のマスク内にて板厚を多段階に加工する方法もある。しかしながら、この方法では、導電性接続材料の転写量が安定せず、印刷の際に局所的な膜厚ばらつきが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2009−151069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、印刷により基板上に導電膜を形成した後、この導電膜の上に電子部品を搭載し、導電膜を介して基板と電子部品とを接続してなる電子装置の製造方法において、1枚の所定板厚のマスクを用いて、同一基板内において部品搭載箇所で印刷膜厚を変えることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、基板(30)上に、板厚方向に貫通する穴(11、12)を有する板状のマスク(10)を配置し、スキージ(20)によって、ペースト状の導電性接続材料(40)をマスク(10)の上面から穴(11、12)に充填することにより、穴(11、12)の開口形状に対応する平面形状を有する導電膜(51、52)を基板(30)上に印刷して形成し、この導電膜(51、52)の上に電子部品(62)を搭載し、導電膜(51、52)によって電子部品(62)と基板(30)とを接続してなる電子装置の製造方法であって、さらに以下の点を特徴としている。
【0020】
・導電膜(51、52)の印刷工程では、導電膜として、膜厚の異なる第1の導電膜(51)と第2の導電膜(52)とを、一枚の所定板厚の前記マスク(10)を用いて形成するものであること。
【0021】
・マスク(10)における穴のうち、第1の導電膜(51)を形成するものを第1の穴(11)、第2の導電膜(52)を形成するものを第2の穴(12)としたとき、マスク(10)として、第2の穴(12)におけるマスク(10)の上面側の開口部における対向する縁部に当該開口部の一部を横断するブリッジ(12a)が設けられるとともに、当該ブリッジ(12a)の厚さがマスク(10)の上面と同一面を起点として第2の穴(12)の深さ方向の途中までの厚さとなっているものを用いること。
【0022】
・第2の穴(12)におけるマスク(10)の上面側の開口部のうちブリッジ(12a)で遮蔽されていない部位から、導電性接続材料(40)を第2の穴(12)に充填することにより、第2の導電膜(52)として、第2の穴(12)の内部のうちブリッジ(12a)が位置する部位では、ブリッジ(12a)以外の部位に比べてブリッジ(12a)の厚さ分、凹んで薄くなっている膜を形成すること。本製造方法は、これらの点を特徴としている。
【0023】
それによれば、第2の穴(12)のうちブリッジ(12a)が位置する部位では、ブリッジ(12a)以外の部位に比べて、ブリッジ(12a)の体積分、体積が減らされた第2の導電膜(52)が形成され、第2の導電膜(52)は、第1の導電膜(51)に比べて実効的な膜厚が薄くなったものとして形成される。よって、本発明の製造方法によれば、1枚のマスク(10)を用いて、同一の基板(30)内において部品搭載箇所で印刷膜厚を変えることができる。
【0024】
ここで、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の製造方法において、第2の穴(12)におけるマスク(10)の上面側の開口部において、ブリッジ(12a)の横断方向を、スキージ(20)の進行方向と平行な方向とすれば、導電性接続材料(40)を、より効率良く第2の穴(12)に充填することができる。
【0025】
請求項3に記載の発明では、基板(30)上に、板厚方向に貫通する穴(13)を有する板状のマスク(10)を配置し、スキージ(20)によって、ペースト状の導電性接続材料(40)をマスク(10)の上面から穴(13)に充填することにより、穴(13)に位置する基板(30)のランド(31)上に導電膜(51、52)を印刷して形成し、この導電膜(51、52)の上に電子部品(62)を搭載し、導電膜(51、52)によって電子部品(62)と基板(30)とを接続してなる電子装置の製造方法であって、さらに以下の点を特徴としている。
【0026】
・導電膜(51、52)の印刷工程では、導電膜として、膜厚の異なる第1の導電膜(51)と第2の導電膜(52)とを、一枚の所定板厚の前記マスク(10)を用いて形成するものであること。
【0027】
・ランド(31)の表面に、当該表面のうち中央部側を開口させ当該開口部の周辺部を被覆する環状のダム形状を有し、導電性接続材料(40)を弾く材料よりなるダム材(70)を形成しておくこと。
【0028】
・マスク(10)の穴(13)を介して、ダム材(70)の上を含めてダム材(70)の開口部内のランド(31)上に導電性接続材料(40)を供給する導電性接続材料供給工程と、その後、ダム材(70)上に位置する導電性接続材料(40)を、ダム材(70)と導電性接続材料(40)との弾きを利用して、ダム材(70)の開口部内に凝集させる凝集工程と、を実行すること。
【0029】
・第1の導電膜(51)用のランド(31)と第2の導電膜(52)用のランド(31)とで、ダム材(70)の開口部の面積を変えることにより、凝集工程における当該凝集後の導電性接続材料(40)の厚さを制御すること。本製造方法は、これらの点を特徴としている。
【0030】
それによれば、たとえば、第1の導電膜(51)よりも第2の導電膜(52)の方が、膜厚が薄いとき、第1の導電膜(51)用のランド(31)と第2の導電膜(52)用のランド(31)とで、ダム材(70)の開口部の面積を、前者の方を狭く、後者の方を広くすることで、第1の導電膜(51)よりも膜厚が薄い第2の導電膜(52)を形成できる。このように、本発明の製造方法によれば、ダム材(70)の開口部の面積を変えることで、1枚のマスク(10)を用いて、同一の基板(30)内において部品搭載箇所で印刷膜厚を変えることができる。
【0031】
ここで、請求項4に記載の発明のように、請求項3に記載の製造方法において、導電膜(51、52)の印刷工程の後、電子部品(62)の搭載を行う前に、ダム材(70)をレーザ照射により除去すれば、導電膜(51、52)の印刷後にダム材(70)が不要な場合に、ダム材(70)を除去することができ、好ましい。
【0032】
請求項5に記載の発明では、基板(30)上に、板厚方向に貫通する穴(13)を有する板状のマスク(10)を配置し、ペースト状の導電性接続材料(40)をマスク(10)の上面に配置し、スキージ(20)をマスク(10)の上面と平行な第1の方向(x)に進行させることによって、導電性接続材料(40)をマスク(10)の上面に押し広げながら穴(13)に充填することにより、穴(13)に位置する基板(30)上に導電膜(51、52)を印刷して形成し、この導電膜(51、52)の上に電子部品(62)を搭載し、導電膜(51、52)によって電子部品(62)と基板(30)とを接続してなる電子装置の製造方法であって、さらに以下の点を特徴としている。
【0033】
・導電膜(51、52)の印刷工程では、導電膜として、膜厚の異なる第1の導電膜(51)と第2の導電膜(52)とを、一枚の所定板厚の前記マスク(10)を用いて形成するものであること。
【0034】
・スキージ(20)のうち、当該スキージ(20)におけるマスク(10)側に位置する部位であって導電性接続材料(40)を介してマスク(10)に接触しつつマスク(10)の上面上を移動する部位を当該スキージ(20)の接触部としたとき、スキージ(20)として、接触部が、マスク(10)の上面と直交する方向(z)に延びる複数個の短冊状の板(21)を、第1の方向(x)と直交し且つマスク(10)の上面に平行な第2の方向(y)に沿って積層するとともに、個々の短冊状の板(21)をマスク(10)の上面と直交する方向(z)に独立して移動可能としたものにより構成されたものを用いること。
【0035】
・導電膜(51、52)の印刷工程では、複数個の短冊状の板(21)の一部を、複数個の短冊状の板(21)の残部よりも、マスク(10)の上面と直交する方向(z)にてマスク(10)側に突出させることで、当該突出する短冊状の板(21)の部分では、当該残部の部分よりも導電膜(51、52)の膜厚を薄くするものであり、第1の導電膜(51)と第2の導電膜(52)とで、複数個の短冊状の板(21)の突出度合を変えることにより、これら両導電膜(51、52)の膜厚を変えるようにしたこと。本製造方法は、これらの点を特徴としている。
【0036】
それによれば、スキージ(20)の接触部における複数個の短冊状の板(21)の突出度合を変えることにより、第1の導電膜(51)と第2の導電膜(52)との膜厚を変えることができるから、1枚のマスク(10)を用いて、同一の基板(30)内において部品搭載箇所で印刷膜厚を変えることができる。
【0037】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置の製造方法における印刷工程を示す工程図であり、(a)は概略平面図、(b)、(c)は(a)中のA−A概略断面図である。
【図2】図1中のマスクにおける第2の穴の拡大図であり、(a)は概略断面図、(b)は概略上面図、(c)は概略斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る電子装置の製造方法における部品搭載工程を示す工程図である。
【図4】マスクの穴における各寸法を示す図である。
【図5】第1実施形態における第2の導電膜の他の例を示す概略斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図7】凝集後の導電性接続材料の厚さ制御の詳細を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る電子装置の印刷工程に用いるスキージを示す図である。
【図9】図8に示される本実施形態のスキージの特性を示す図である。
【図10】第3実施形態におけるスキージによる印刷工程を示す工程図である。
【図11】第3実施形態の印刷工程の他の例を示す工程図である。
【図12】図11の印刷工程によって形成された導電膜51の概略斜視図である。
【図13】従来の一般的な電子装置の製造方法を示す工程図である。
【図14】従来の一般的な電子装置の製造方法における部品搭載工程を示す工程図である。
【図15】従来の2枚のマスクを用いて膜厚の異なる導電膜を形成する印刷方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0040】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子装置の製造方法における導電膜51、52の印刷工程を示す工程図であり、(a)はマスク10の上面構成を示す概略平面図、(b)、(c)は(a)中の一点鎖線A−Aに沿った概略断面図である。図2は、図1中のマスク10における第2の穴12の拡大図であり、(a)は概略断面図、(b)は概略上面図、(c)は概略斜視図である。
【0041】
また、図3は本製造方法における部品搭載工程を示す工程図であり、(a)は第2の導電膜52の概略斜視図、(b)は第2の導電膜52の概略上面図、(c)は第2の導電膜52上に小型部品としての第2の電子部品62を搭載した状態を示す概略上面図である。本製造方法は、最終的に、図3(c)に示される状態にて当該電子部品62が搭載された電子装置を製造するものである。
【0042】
本実施形態の製造方法は、大きくは、基板30上に、マスク10およびスキージ20を用いて、ペースト状の導電性接続材料40を供給し、導電性接続材料40よりなる導電膜51、52を基板30上に印刷して形成し、その後、導電膜51、52の上に電子部品62を搭載し、導電膜51、52によって電子部品62と基板30とを接続することで、上記図3(c)に示される電子装置を製造するものである。
【0043】
ここで、本電子装置にて基板30上に搭載される電子部品は、一般的な電子制御装置に使用される受動部品、能動部品などであり、導電膜51、52を介して接続される表面実装部品である。この電子部品としては、サイズの異なる各部品が混載されている。
【0044】
ここでは、サイズの大きな電子部品を第1の電子部品とし、第1の電子部品よりもサイズの小さな電子部品を第2の電子部品とする。第1の電子部品は図示されていないが、図3には、第2の電子部品62が示されている。図3では、第2の電子部品62としてコンデンサの例が挙げられている。
【0045】
具体的に、電子部品を大型の第1の電子部品と小型の第2の電子部品62とに区分けすると、第2の電子部品62は1005以下のサイズの部品、1mm以下のIC部品などであり、これら部品よりも大きなそれ以外の部品が第1の電子部品である。
【0046】
また、基板30はセラミック基板、プリント基板などの配線基板などであり、導電性接続材料40は、一般的な導電性接着剤、はんだなど、印刷により導電膜51、52を形成する材料である。
【0047】
そして、基板30上に形成される導電膜51、52は、膜厚の異なる第1の導電膜51と第2の導電膜52とよりなり、面積が広く厚い方の第1の導電膜51は大型の第1の電子部品が接続されるものであり、面積が小さく薄い方の第2の導電膜52は小型の第2の電子部品62が接続されるものである。
【0048】
次に、本実施形態の電子装置の製造方法について述べる。まず、図1、図2を参照して導電膜51、52の印刷工程を述べる。この印刷工程に用いられるマスク10は、一枚の所定板厚を有するもの、つまりマスク10全体で板厚が同一なものであり、印刷工程では、この一枚のマスク10によって、膜厚の異なる第1の導電膜51と第2の導電膜52とを形成する。
【0049】
この板状のマスク10は、図1(a)、(b)に示されるように、その板厚方向に貫通する穴11、12を有する。このマスク10における穴11、12のうち、第1の導電膜51を形成するものを第1の穴11、第2の導電膜52を形成するものを第2の穴52とする。
【0050】
具体的には、このマスク10は、ステンレスなどよりなるメタルマスクやメッシュマスクなどである。各穴51、52の構成は異なっているが、これら穴51、52を有するマスク10は、アディティブ加工、レーザ加工、エッチング加工などにより形成される。
【0051】
そして、印刷工程では、図1(a)、(b)に示されるように、基板30の上に、基板30に密着するように板状のマスク10を重ね合わせて配置し、ペースト状の導電性接続材料40をマスク10の上面に配置し、スキージ20をマスク10の上面と平行な第1の方向xに進行させる。それによって、導電性接続材料40をマスク10の上面に押し広げながら穴51、52に充填する。ここで、スキージ20は一般的なものを用いる。
【0052】
それにより、図1(c)に示されるように、穴11、12の開口形状に対応する平面形状を有し、且つマスク10の板厚に対応する膜厚を有する導電膜51、52が、基板30上に印刷して形成される。つまり、各導電膜51、52は平面形状がそれぞれの穴11、12の開口形状と同等であり且つ膜厚がマスク10の板厚と同等である。こうして、導電膜51、52は、穴51、52に位置する基板30上、具体的には、基板30の図示しないランド上に形成される。
【0053】
ここで、本製造方法の印刷工程では、図1、図2に示されるように、マスク10として、小型の第2の電子部品62用である第2の導電膜52を形成するための第2の穴12において、ブリッジ12aが設けられてものを用いる。
【0054】
このブリッジ12aは、第2の穴12におけるマスク10の上面側の開口部における対向する縁部に設けられ、当該開口部の一部を横断するものである。そして、ブリッジ12aの厚さは、マスク10の上面と同一面を起点として第2の穴12の深さ方向の途中までの厚さとなっているものである。
【0055】
ここでは、第2の穴12における上記縁部のうち上記方向xに隔てられて対向する縁部間を横断するように、ブリッジ12aは設けられており、そのブリッジ12aの上面はマスク10の上面を同一平面である。また、ここでは、ブリッジ12aは、当該縁部間を上記x方向に延びる四角柱形状をなしているが、ブリッジ12aの形状は円柱や三角柱、それ以外の多角柱などであってもよい。
【0056】
そして、スキージ20を上記方向xに進行させて導電性接続材料40を穴51、52に充填することにより、第2の穴52におけるマスク10の上面側の開口部のうちブリッジ12aで遮蔽されていない部位から、導電性接続材料40は第2の穴52に充填される。このとき、導電性接続材料40は、ブリッジ12aの下の部分も含んで第2の穴52に充填される。
【0057】
こうして、印刷工程によれば、第1の導電膜51、第2の導電膜52は、それぞれ第1の穴11、第2の穴12の空間形状と実質同一形状にて形成される。具体的に、第2の導電膜52としては、図1〜図3に示されるように、第2の穴12の内部のうちブリッジ12aが位置する部位では、ブリッジ12a以外の部位に比べてブリッジ12aの厚さ分、凹んで薄くなっている膜が形成される。
【0058】
つまり、第2の導電膜52は、小型の第2の電子部品62に適用されるため、第1の導電膜51に比して薄い膜厚であることが望まれるが、第2の導電膜52は、上記凹んだ部分である凹部52a以外では、第1の導電膜51と同程度の膜厚であるものの、当該凹部52aにて部分的に膜厚が薄くなったものである。
【0059】
こうして、一枚の基板30上に各導電膜51、52を印刷して形成した後、第1の導電膜51上に上記第1の電子部品を搭載し、第2の導電膜52上に第2の電子部品62を搭載し、両導電膜51、52を硬化させることで、基板30とこれら電子部品との接続が完了し、本電子装置ができあがる。
【0060】
以上のように、本実施形態の製造方法によれば、第2の導電膜52は、凹部52aにて上記ブリッジ12aの体積分、体積が減らされたものとして形成され、第1の導電膜51に比べて実効的な膜厚が薄くなったものとして形成される。よって、本製造方法によれば、1枚のマスク10を用いて、同一の基板30内において部品搭載箇所で印刷膜厚を変えることができる。
【0061】
また、本製造方法においては、図1、図2に示されるように、第2の穴12におけるマスク10の上面側の開口部において、ブリッジ12aの横断方向(つまりブリッジ12aの延びる方向)は、スキージ20の進行方向xと平行な方向とすることが望ましい。
【0062】
それによれば、スキージ20をマスク10の上面上にて移動させるとき、スキージ20がブリッジ12aに引っ掛かりにくくなり、導電性接続材料40を、より効率良く第2の穴12に充填することができる。なお、このことは、本製造方法において、ブリッジ12aの横断方向とスキージ20の進行方向xとを平行にすることに限定するものではなく、たとえば、これら両方向は交差していてもよい。
【0063】
また、本製造方法によれば、小型の電子部品62の実装において、部品自身の電極間や基板側の電極間の距離が小さくても、実装後の部品下における導電膜間のクリアランスの確保が容易に行える。
【0064】
具体的には、図3(c)に示されるように、基板30側の電極としての一対のランド31上に第2の導電膜52を介して、小型の第2の電子部品52を搭載するが、このとき第2の導電膜52が部品搭載時の荷重を受けて、両ランド31間にはみ出す。
【0065】
ここで、両ランド31の距離が小さい場合であっても、第2の導電膜52は、上記凹部52aの分、体積が小さいものとなっているので、当該はみ出し後の導電膜52間のクリアランスKの大きさは確保され、ショートの恐れは無い。
【0066】
また、この図3に示されるように、1個の第2の電子部品62に対して、一対の第2の導電膜52を形成する場合、その各導電膜52における凹部52aは、両導電膜52の対向する間に開口することが望ましい。これは、両導電膜52の対向する間への上記導電膜52のはみ出し量を少なくするのに好ましいためである。
【0067】
そのためには、1個の第2の電子部品62に対して、一対の第2の導電膜52を形成する場合、その各導電膜52に対応する第2の穴12におけるブリッジ12aの横断方向を、当該両第2の穴12の対向する方向と平行な方向にすればよい。
【0068】
次に、本実施形態の製造方法における第1の穴11および第2の穴12の寸法の一具体例を示しておく。図4は、マスクの穴11、12における各寸法を示す図であり、(a)は本実施形態の第1の穴11の斜視図、(b)は(a)における第1の穴11の断面図、(c)は従来と同様、マスク10の板厚を薄くすることで第2の導電膜52形成用の第2の穴12を形成した比較例を示す概略断面図、(d)は本実施形態の第2の穴12の概略断面図である。
【0069】
これら図4の(a)〜(d)の各場合において、開口形状が矩形である穴11、12の幅W、奥行きLは共通である。また、寸法H1、H2はマスク板厚(つまり穴11、12の深さ)であり、寸法W2はブリッジ12aの幅、寸法H3はブリッジ12aの厚さである。
【0070】
たとえば、図4(a)、(b)のように、板厚H1μmのマスク10で印刷した場合の導電膜の容積(つまり転写量)V1は、H1μm×Lμm×Wμm=V1μmである。また、図4(c)のように、板厚H2μmのマスク10で印刷した場合の導電膜の容積(つまり転写量)V2は、H2μm×Lμm×Wμm=V2μmである。ここで、H1>H2であるから、上記両容積V1、V2の差は、V1−V2=V3μmである。
【0071】
このとき、図4(d)のように、マスク板厚H1のマスク10にてブリッジ12aを形成して、第2の導電膜52を形成するとき、ブリッジ12aの体積は、上記V3とすることとなる。つまり、ブリッジ12aの体積V3μm=Lμm×W2μm×H3μmとなる。ここで、たとえばW2<W/2、H3<H1として、W2、H3を求め、ブリッジ12aの寸法設計を行う。
【0072】
より具体的に、本実施形態のマスク10の板厚を60μmとする。ここで、1005型の部品は、従来ではマスクの板厚45μmで印刷しなければならない。この場合、上記計算によれば、1005型の部品用の第2の穴12に形成するブリッジ12aの寸法は、たとえばL:300μm、W2:300μm、H3:30μmとなる。
【0073】
また、図5は、本実施形態における第2の導電膜52の他の例を示す概略斜視図であり、上記図3(a)における凹部52aを変形したものである。その変形点は、一対の第2の導電膜52の対向する間に向かって低くなるように、各凹部52aの底面を傾斜させたところである。
【0074】
このような傾斜はブリッジ12aの形状により容易に形成される。これによれば、一対の第2の導電膜52の対向する間に面する凹部52aの部分が、より膜厚の薄いものにできるから、当該間への導電膜52のはみ出し量を低減するという点で好ましい。
【0075】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係る電子装置の製造方法を示す工程図であり、(a)、(c)、(e)、(f)は各工程におけるワークの概略断面構成を示し、(b)は(a)の上面図、(d)は(c)の上面図である。
【0076】
上記第1実施形態では、マスク10の穴を工夫するものであったが、本製造方法は、マスク10は一般的なものを用いつつ、基板30のランド31側に工夫を施したことが相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0077】
図6に示されるように、本実施形態の製造方法も、大きくは、基板30上に、板厚方向に貫通する穴13を有する板状のマスク10を配置し、スキージ20によって、ペースト状の導電性接続材料40をマスク10の上面から穴13に充填することにより、穴13に位置する基板30のランド31上に導電膜52を印刷して形成し、この導電膜52の上に電子部品62を搭載し、導電膜52によって電子部品62と基板30とを接続するものである。
【0078】
ここで、本製造方法においても、導電膜の印刷工程では、当該導電膜として、膜厚の異なる第1の導電膜51と第2の導電膜52、つまり、比較的厚い第1の導電膜51と比較的薄い第2の導電膜52とを、一枚の所定板厚のマスク10を用いて形成する。なお、図6では、薄い方の第2の導電膜52を示してあるが、厚い方の第1の導電膜51は、後述の図7に示してある。
【0079】
具体的に、まず、本製造方法では、印刷工程の前に、ランド31の表面にダム材70を形成しておく。このダム材70は、ランド31の表面のうち中央部側を開口させ当該開口部の周辺部を被覆する環状のダム形状を有する。ここでは、図6に示されるように、矩形環状すなわち額縁形状をなしている。
【0080】
そして、このダム材70は、導電性接続材料40を弾く材料よりなる。たとえば、導電性接続材料40として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を主剤とするエポキシ樹脂を用い、それを弾くダム材70としては、フッ素系樹脂やシリコーン系樹脂などの撥水性材料を用いる。
【0081】
そして、このダム材70は、マスクを用いて基板30のランド31上に蒸着、スピンコート、印刷などの方法により作製される。また、予め導電性接続材料40は、印刷後にダム材70と弾いて、変形しやすいようにその溶剤量を調整しておく。
【0082】
そして、本製造方法の印刷工程では、上記同様に、マスク10とスキージ20を用いて導電性接続材料40の基板30のランド31への供給・転写を行う。このとき、図6(a)、(b)に示されるように、マスク10の穴13を介して、ダム材70の上を含めてダム材70の開口部内のランド31上に、導電性接続材料40を供給する(導電性接続材料供給工程)。
【0083】
その後、基板30上からマスク10を取り除いて、基板30を一定時間放置する。それにより、図6(c)、(d)に示されるように、ダム材70上に位置する導電性接続材料40を、ダム材70と導電性接続材料40との弾きおよび導電性接続材料40の凝集力を利用して、ダム材70の開口部内に凝集させる(凝集工程)。
【0084】
ここにおいて、本製造方法では、厚い方である第1の導電膜51用のランド31と薄い方である第2の導電膜52用のランド31とで、ダム材70の開口部の面積を変えることにより、凝集工程における当該凝集後の導電性接続材料40の厚さを制御する。
【0085】
この凝集後の導電性接続材料40の厚さ制御について、図7を参照して具体的に述べる。図7は、当該厚さ制御の詳細を示す図であり、(a)は薄い方である第2の導電膜52用のランド31におけるダム材70の概略平面図、(b)は(a)における凝集後の導電性接続材料40の概略断面図、(c)は厚い方である第1の導電膜51用のランド31におけるダム材70の概略平面図、(d)は(c)における凝集後の導電性接続材料40の概略断面図である。なお、図7では、マスク10およびその穴13を破線にて示すことで、ダム材70と穴13との位置関係を示している。
【0086】
図7では、各導電膜用のランド31における各ダム材70について、その外郭は同一形状・同一サイズの矩形であるが、その開口部はサイズの異なる矩形である。ここで、ダム材70の開口部の面積を変えることで、ダム材70自身の幅サイズが変わる。
【0087】
それゆえ、印刷直後では、ダム材70の開口部からはみ出してダム材70上に位置する導電性接続材料40の量も変わる。具体的には、図7(c)、(d)の方では、図7(a)、(b)の方に比べて、マスク10の穴13に位置するダム材70自身の幅サイズが大きく、ダム材70上に位置する導電性接続材料40の量も多くなるため、凝集後には、より狭い開口部とも相まって、導電性接続材料40の厚さが大きくなっているのである。
【0088】
つまり、本製造方法では、ダム材70の開口部の面積を変えて、ダム材70上に位置する導電性接続材料40の量を変えることで、ダム材70上からダム材70の開口部内に凝集してくる導電性接続材料40の量を異ならせ、それにより、第1の導電膜51用のランド31と第2の導電膜52用のランド31とで、当該凝集後の導電性接続材料40の厚さ、すなわち導電膜51、52の厚さを異ならせるように制御している。
【0089】
こうして、図7に示されるように、第1の導電膜51よりも第2の導電膜52の方が、膜厚が薄いとき、第1の導電膜51用のランド31と第2の導電膜52用のランド31とで、ダム材70の開口部の面積を、前者の方を狭く、後者の方を広くすることで、第1の導電膜51よりも膜厚が薄い第2の導電膜52を形成できる。
【0090】
なお、この導電膜51、52の厚さの制御は、各ランド31に対応するマスク10の穴13の開口面積が同一の場合でも、ダム材70の開口部の面積を変えることで実現できるが、さらに、マスク10の穴13の開口面積を変えることで、当該制御を行ってもよい。この穴13の開口面積を変えることによっても、ダム材70上に配置される導電性接続材料40の量を変えることができるためである。
【0091】
こうして、導電膜51、52の印刷工程にいって、膜厚の異なる導電膜51、52を1枚の基板30に形成した後、本製造方法では、図6(e)に示されるように、必要に応じて、電子部品62の搭載を行う前に、ダム材70をレーザ照射により除去する。
【0092】
これは、ダム材70が、封止材との剥離などの後工程で問題となる場合に有効であり、ダム材70のみにレーザを照射して揮発させるようにする。
【0093】
このとき、ダム材70は導電性接続材料40のダレやにじみを防ぐ役割もするので、加熱により導電性接続材料40中の溶剤をある程度揮発させて、導電性接続材料40の形状変形によるダレを阻止した後、レーザ照射を行うのがよい。ただし、加熱温度は部品搭載への影響のない温度とする。また、このレーザ照射後には、必要に応じて、揮発成分の付着物をプラズマ照射やUV照射により除去してもよい。
【0094】
そして、形成された各導電膜51、52に対して、電子部品62を搭載し、導電膜51、52を介して電子部品62を基板30に接続すれば、本実施形態の電子装置ができあがる。以上が本実施形態の製造方法である。
【0095】
このように、本製造方法によれば、ダム材70の開口部の面積を変えることで、1枚のマスク10を用いて、同一の基板30内において部品搭載箇所で印刷膜厚を変えることができる。
【0096】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態に係る電子装置の製造方法における印刷工程に用いるスキージ20を示す図であり、(a)はスキージ20における接触部の平面図、(b)、(c)はスキージ20の正面図である。また、図9は、図8に示される本実施形態のスキージ20の特性を示す図である。
【0097】
また、図10は、同スキージ20による印刷工程を示す工程図であり、この図10において、(a)はスキージ20による印刷中の状態を示す概略断面図、(b)はスキージ20の各作動状態を示す正面図、(c)はスキージ20によって形成された膜厚の異なる導電膜51、52の概略断面図である。
【0098】
上記第1実施形態はマスク10の穴を工夫するものであり、上記第2実施形態は基板30のランド31を工夫するものであったが、本製造方法は、マスク10や基板30は一般的なものとしつつ、スキージ20に工夫を施したことが相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0099】
図10に示されるように、本製造方法も大きくは、基板30上に、板厚方向に貫通する穴13を有する板状のマスク10を配置し、導電性接続材料40をマスク10の上面に配置し、スキージ20をマスク10の上面と平行な第1の方向xに進行させることによって、導電性接続材料40をマスク10の上面に押し広げながら穴13に充填することにより、穴13に位置する基板30上に導電膜51、52を印刷して形成し、その後、導電膜51、52によって電子部品62と基板30とを接続するものである。
【0100】
ここで、本製造方法においても、導電膜の印刷工程では、当該導電膜として、膜厚の異なる第1の導電膜51と第2の導電膜52、つまり、比較的厚い第1の導電膜51と比較的薄い第2の導電膜52とを、一枚の所定板厚のマスク10を用いて形成する。
【0101】
まず、本製造方法では、スキージ20の接触部を、当該スキージ20のうち当該スキージ20におけるマスク10側に位置する部位であって導電性接続材料40を介してマスク10に接触しつつマスク10の上面上を移動する部位とする。
【0102】
そして、図8に示されるように、このスキージ20として、その接触部が複数個の短冊状の板21の集合体よりなるものを用いる。この複数個の短冊状の板21は、マスク10の上面と直交する方向zに延びるものであって、上記第1の方向xと直交し且つマスク10の上面に平行な第2の方向yに沿って積層されている。
【0103】
それとともに、個々の短冊状の板21は、マスク10の上面と直交する方向zに独立して移動可能とされている。具体的には、隣り合う短冊状の板21同士は、互いにマスク10の上面と直交する方向zに独立して摺動可能となっている。各板21の移動は空気圧・油圧等を用いた電子制御により行う。
【0104】
ここでは、各短冊状の板21は、図8(a)に示されるように、上記第1、第2の両方向xyに平行な平面に沿った断面形状が、T字形状をなしており、隣り合う板21同士が凹凸で互いに引っかかり合った構成となっており、それにより、スキージ20全体で見たときの強度維持を可能としている。このようなスキージ20は、ベークライトやステンレスなどよりなる。
【0105】
たとえば、スキージ20は、印刷パターン上を通過する部分である接触部のうち中央の120mmの幅に短冊状の板21を配置している。そして、奥行き×幅×高さ:10mm×4mm×90mmの板21を30個連結させている。ここで、板1の幅は、微細パターンへの対応に適応するため、できるだけ狭い方が好ましい。なお、これら具体的な寸法値は、図8中に示してある。
【0106】
このようなスキージ20においては、図8(b)に示されるように全ての板21が同じ高さに揃った状態から、図8(c)に示されるように、複数個の短冊状の板21の一部を、複数個の短冊状の板21の残部よりも、マスク10の上面と直交する方向zにてマスク10側に突出させることができるようになっている。図8(c)では、2個の板21を残りよりも上方に引っこめることで、当該残りを当該2個の板21よりもマスク10側に突出させている。
【0107】
そして、本製造方法の印刷工程では、図8(c)のように、複数個の短冊状の板21の一部を、残部よりもマスク10側に突出させることで、当該突出する短冊状の板21の部分では、当該残部の部分よりも導電膜51、52の膜厚を薄くするものである。
【0108】
そして、第1の導電膜51と第2の導電膜52とで、複数個の短冊状の板21の突出度合を変えることにより、これら両導電膜51、52の膜厚を変えるようにする。具体的には、図9に示されるように、短冊状の板21の上昇量(短冊上昇量)がそのまま導電膜の膜厚(膜厚T)の増加分に反映する。
【0109】
本印刷工程について、図10を参照して、さらに述べる。基板30上に、マスク10を設けるが、図10(a)に示されるように、このマスク10には、厚い第1の導電膜51を形成するための穴13と、第1の導電膜51よりも薄い第2の導電膜52を形成するための穴13とが設けられている。
【0110】
ここで、図10(b)に示されるように、基板30上において、第2の導電膜52を形成するための穴13が存在する領域K1、K3では、スキージ20は上記短冊状の板21を同じ高さに揃えた状態としてマスク10の板厚と同等の導電膜を形成するようにする。
【0111】
一方、第1の導電膜51を形成するための穴13が存在する領域K2では、その穴13に対応する部分の短冊状の板21を引っこませた状態として、マスク10の板厚に、当該板の引っこんだ分の膜厚が足しあわされた導電膜を形成するようにする。
【0112】
例えば、マスク10の板厚45μmで印刷を行うとする。3225型の部品は、導電膜の厚さが45μmでは不足であるが、当該部品の穴13上を通過する際に、短冊状の板21を15μm上昇させて印刷すれば、60μm相当の膜厚の導電膜を実現することができる。
【0113】
このように領域K1〜K3に応じて、板21の突出を行ってスキージ20による印刷を行うことにより、図10(c)に示されるように、第1の導電膜51を形成するための穴13では、比較的厚い第1の導電膜51が印刷され、第2の導電膜52を形成するための穴13では、比較的薄い第2の導電膜52が印刷される。
【0114】
こうして、本製造方法においても、導電膜51、52を形成した後、電子部品の搭載・接続を行えば、電子装置が完成する。
【0115】
このように、本製造方法によれば、スキージ20の接触部における複数個の短冊状の板21の突出度合を変えることにより、第1の導電膜51と第2の導電膜52との膜厚を変えることができるから、1枚のマスク10を用いて、同一の基板30内において部品搭載箇所で印刷膜厚を変えることができる。
【0116】
図11は、本実施形態のスキージ20を用いた印刷工程の他の例を示す工程図であり、(a)はスキージ20による印刷中の状態を示す概略断面図、(b)はスキージ20の各作動状態を示す正面図である。また、図12は、図11の例によって形成された部分的に膜厚の異なる導電膜51の概略斜視図である。
【0117】
図11の例では、スキージ20において短冊状の板21の個々が任意の高さに独立して移動可能であるということから、1個の導電膜51において、その中央部から周辺部に向かって山状に突出するように、個々の短冊状の板21の突出度合を変えたものである。このように、1個の導電膜51において部分的に膜厚を変えることも可能である。
【0118】
(他の実施形態)
なお、第1の導電膜51と第2の導電膜52は、膜厚の異なるものであればよく、厚い方の第1の導電膜51を大型の第1の電子部品用、薄い方の第2の導電膜52を小型の第2の電子部品用に限定するものではない。つまり、上記製造方法は、1枚の同じ基板上に異なる膜厚の導電膜を印刷形成するものであれば、適用可能である。
【符号の説明】
【0119】
10 マスク
11 マスクの第1の穴
12 マスクの第2の穴
13 マスクの穴
12a ブリッジ
20 スキージ
30 基板
31 ランド
40 導電性接続材料
51 第1の導電膜
52 第2の導電膜
62 電子部品
70 ダム材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(30)上に、板厚方向に貫通する穴(11、12)を有する板状のマスク(10)を配置し、スキージ(20)によって、ペースト状の導電性接続材料(40)を前記マスク(10)の上面から前記穴(11、12)に充填することにより、前記穴(11、12)の開口形状に対応する平面形状を有する導電膜(51、52)を前記基板(30)上に印刷して形成し、
この導電膜(51、52)の上に電子部品(62)を搭載し、前記導電膜(51、52)によって前記電子部品(62)と前記基板(30)とを接続してなる電子装置の製造方法であって、
前記導電膜(51、52)の印刷工程では、前記導電膜として、膜厚の異なる第1の導電膜(51)と第2の導電膜(52)とを、一枚の所定板厚の前記マスク(10)を用いて形成するものであり、
前記マスク(10)における前記穴のうち、前記第1の導電膜(51)を形成するものを第1の穴(11)、前記第2の導電膜(52)を形成するものを第2の穴(12)としたとき、
前記マスク(10)として、前記第2の穴(12)における前記マスク(10)の上面側の開口部における対向する縁部に当該開口部の一部を横断するブリッジ(12a)が設けられるとともに、当該ブリッジ(12a)の厚さが前記マスク(10)の上面と同一面を起点として前記第2の穴(12)の深さ方向の途中までの厚さとなっているものを用いるものであり、
前記第2の穴(12)における前記マスク(10)の上面側の開口部のうち前記ブリッジ(12a)で遮蔽されていない部位から、前記導電性接続材料(40)を前記第2の穴(12)に充填することにより、
前記第2の導電膜(52)として、前記第2の穴(12)の内部のうち前記ブリッジ(12a)が位置する部位では、前記ブリッジ(12a)以外の部位に比べて前記ブリッジ(12a)の厚さ分、凹んで薄くなっている膜を形成することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の穴(12)における前記マスク(10)の上面側の開口部において、前記ブリッジ(12a)の横断方向は、前記スキージ(20)の進行方向と平行な方向とすることを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
【請求項3】
基板(30)上に、板厚方向に貫通する穴(13)を有する板状のマスク(10)を配置し、スキージ(20)によって、ペースト状の導電性接続材料(40)を前記マスク(10)の上面から前記穴(13)に充填することにより、前記穴(13)に位置する前記基板(30)のランド(31)上に導電膜(51、52)を印刷して形成し、
この導電膜(51、52)の上に電子部品(62)を搭載し、前記導電膜(51、52)によって前記電子部品(62)と前記基板(30)とを接続してなる電子装置の製造方法であって、
前記導電膜(51、52)の印刷工程では、前記導電膜として、膜厚の異なる第1の導電膜(51)と第2の導電膜(52)とを、一枚の所定板厚の前記マスク(10)を用いて形成するものであり、
前記ランド(31)の表面に、当該表面のうち中央部側を開口させ当該開口部の周辺部を被覆する環状のダム形状を有し、前記導電性接続材料(40)を弾く材料よりなるダム材(70)を形成しておき、
前記マスク(10)の前記穴(13)を介して、前記ダム材(70)の上を含めて前記ダム材(70)の開口部内の前記ランド(31)上に前記導電性接続材料(40)を供給する導電性接続材料供給工程と、
その後、前記ダム材(70)上に位置する前記導電性接続材料(40)を、前記ダム材(70)と前記導電性接続材料(40)との弾きを利用して、前記ダム材(70)の開口部内に凝集させる凝集工程と、を実行するものであり、
前記第1の導電膜(51)用の前記ランド(31)と前記第2の導電膜(52)用の前記ランド(31)とで、前記ダム材(70)の開口部の面積を変えることにより、前記凝集工程における当該凝集後の前記導電性接続材料(40)の厚さを制御することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項4】
前記導電膜(51、52)の印刷工程の後、前記電子部品(62)の搭載を行う前に、前記ダム材(70)をレーザ照射により除去することを特徴とする請求項3に記載の電子装置の製造方法。
【請求項5】
基板(30)上に、板厚方向に貫通する穴(13)を有する板状のマスク(10)を配置し、ペースト状の導電性接続材料(40)を前記マスク(10)の上面に配置し、スキージ(20)を前記マスク(10)の上面と平行な第1の方向(x)に進行させることによって、前記導電性接続材料(40)を前記マスク(10)の上面に押し広げながら前記穴(13)に充填することにより、前記穴(13)に位置する前記基板(30)上に導電膜(51、52)を印刷して形成し、
この導電膜(51、52)の上に電子部品(62)を搭載し、前記導電膜(51、52)によって前記電子部品(62)と前記基板(30)とを接続してなる電子装置の製造方法であって、
前記導電膜(51、52)の印刷工程では、前記導電膜として、膜厚の異なる第1の導電膜(51)と第2の導電膜(52)とを、一枚の所定板厚の前記マスク(10)を用いて形成するものであり、
前記スキージ(20)のうち、当該スキージ(20)における前記マスク(10)側に位置する部位であって前記導電性接続材料(40)を介して前記マスク(10)に接触しつつ前記マスク(10)の上面上を移動する部位を当該スキージ(20)の接触部としたとき、
前記スキージ(20)として、前記接触部が、前記マスク(10)の上面と直交する方向(z)に延びる複数個の短冊状の板(21)を、前記第1の方向(x)と直交し且つ前記マスク(10)の上面に平行な第2の方向(y)に沿って積層するとともに、個々の前記短冊状の板(21)を前記マスク(10)の上面と直交する方向(z)に独立して移動可能としたものにより構成されたものを用いるものであり、
前記導電膜(51、52)の印刷工程では、前記複数個の短冊状の板(21)の一部を、前記複数個の短冊状の板(21)の残部よりも、前記マスク(10)の上面と直交する方向(z)にて前記マスク(10)側に突出させることで、当該突出する短冊状の板(21)の部分では、当該残部の部分よりも前記導電膜(51、52)の膜厚を薄くするものであり、
前記第1の導電膜(51)と前記第2の導電膜(52)とで、前記複数個の短冊状の板(21)の突出度合を変えることにより、これら両導電膜(51、52)の膜厚を変えるようにしたことを特徴とする電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−159857(P2011−159857A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21208(P2010−21208)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】