説明

電子部品パッケージの製造方法

【課題】 圧縮成形時における樹脂材の圧入に対して、電子部品の破損を防止するとともに、前記樹脂材のスルーホール電極面への流れ込みを抑えて導通不良を防止することのできる電子部品パッケージの製造方法を提供することである。
【解決手段】 基板22にチップコイル26を配置するための貫通孔23を設け、前記チップコイル26が実装された基板22の上面を圧縮成形により樹脂材36で封止する電子部品パッケージ21の製造方法において、前記基板22の裏面全体に予め保護シート31を貼着しておき、前記貫通孔23内に配置したチップコイル26の裏面を前記保護シート31に密着させ、樹脂材36で前記基板22の上面を封止した後、前記保護シート31を剥離する工程を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICやコイル等の電子部品が実装された基板上を圧縮成形によって樹脂封止した電子部品パッケージの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の電子機器の小型化及び薄型化に伴い、IC、コイル、コンデンサ等の電子部品が単一の基板上に複数実装された薄型の電子部品パッケージが用いられている。このような電子部品パッケージは、配線パターンや電極部が形成された薄型の基板上に前記各種の電子部品を実装し、この電子部品の上に樹脂材を圧入する圧縮成形によって製造するのが一般的となっている。
【0003】
前記圧縮形成にあっては、各種の電子部品が実装されている基板の上方に成形金型を介して樹脂材を一定の圧力をかけて圧入されるため、この樹脂材を圧入する際の圧力によって、電子部品が割れたり、ひびが入ったりするなどの損傷が生じやすいものとなっている。特に、前記樹脂材は、熱膨張率の調整、耐熱性、耐湿性向上などの目的でアルミナ、シリカなどのフィラー(充填材)が添加されることが多く、このような充填材が多く含まれていると、前記電子部品に及ぼすダメージも大きくなるといった問題もある。
【0004】
上記問題に対して、特許文献1に示されるような構造の電子部品パッケージが提案されている。この電子部品パッケージは、基板と、この基板の下面に配置した複数の電子部品及びこれら複数の電子部品を接続する配線と、前記複数の電子部品の外周に配置した接着部と、この接着部を介し前記基板の下面側を覆う部品カバーとを備えている。そして、この部品カバーと前記電子部品との間に、前記接着部で囲まれたキャビティを有し、このキャビティが前記複数の電子部品の間に設けた仕切り壁によって仕切られた構造となっている。このように、前記キャビティは、複数の電子部品を仕切るように仕切り壁を設けているため、樹脂材を圧入する際の圧力がかかった場合にも、前記仕切り壁が基板や部品カバーの形状を支持し、さらにその圧力を分散させることができ、これによって電子部品パッケージの破損を低減することができるというものである。
【0005】
また、特許文献2には、基板に実装した電子部品の上方をシリコーンゴム等の樹脂材よりも弾性率の小さい緩衝体で覆い、この緩衝体の上から前記樹脂材を圧入することによって封止された電子部品パッケージが示されている。
【特許文献1】特開2007−173284号公報
【特許文献2】特開2007−134370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2に示したような構造の電子部品パッケージでは、樹脂材の圧入力を分散あるいは軽減するための仕切り壁や緩衝体をパッケージ内に組み込む必要がある。このような仕切り壁や緩衝体を組み込むことで、パッケージ全体の薄型化が制限されるため、年々薄型化する各種の電子機器に対応できなくなる。また、前記仕切り壁や緩衝体を設けるための材料費や工数が増加するといった問題もある。
【0007】
特に、各種のドライバ回路、例えば、エレクトロルミネッセンス(EL)駆動用のドライバ回路を構成する電子部品パッケージにあっては、薄型のパネル内に内蔵するためにより一層の薄型化や小型化が要求され、基板と樹脂材部分の厚みを極力小さく抑えなければならない。このため、樹脂材部分に前記仕切り壁や緩衝体などを含まないように製造することが望まれる。
【0008】
また、前記EL駆動用のドライバ回路では、駆動制御用のICやコンデンサ、抵抗などの受動素子の他に、ELパネルへの充放電を行うための昇圧用のチップコイルが含まれているが、このチップコイルは、大きな外圧が瞬時にかかった場合の耐性が比較的弱く、樹脂材の圧入によって破損が生じやすいといった問題があった。
【0009】
さらに、前記各種の電子部品を実装する基板には、外部接続電極としてスルーホール電極が形成されるが、前記樹脂材を基板上に圧入する際に、この樹脂材が基板の裏面にまで回り込んでしまい、スルーホール電極の接触不良あるいは導通不良を引き起こすなどの原因となっている。特に、前記チップコイルは、ICや抵抗、コンデンサなどに比べて厚みを有しているので、基板にチップコイルを配置するための貫通孔を設け、この貫通孔に前記チップコイルの下部を落とし込んで形成する場合がある。しかしながら、このような貫通孔を設けた場合、この貫通孔とこの貫通孔に嵌め込まれた前記チップコイルとの隙間に樹脂材が入り込み、基板の裏面側にまで樹脂材が回り込んでしまうといった問題がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、圧縮成形時における樹脂材の圧入に対して、電子部品の破損を防止するとともに、前記樹脂材のスルーホール電極面への流れ込みを抑えて導通不良を防止することのできる電子部品パッケージの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の電子部品パッケージの製造方法は、基板に電子部品を配置するための貫通孔を設け、前記電子部品が実装された基板の上面を圧縮成形により樹脂材で封止する電子部品パッケージの製造方法において、前記基板の裏面全体に予め保護シートを貼着しておき、前記貫通孔内に配置した電子部品の裏面を前記保護シートに密着させ、樹脂材で前記基板の上面を封止した後、前記保護シートを剥離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電子部品パッケージの製造方法によれば、封止する前の工程において、基板の裏面に剥離可能な保護シートを貼着しているため、基板の表面側における樹脂材の圧入による衝撃を前記保護シートによって吸収することができる。このため、前記基板に実装されている電子部品の破損を防止し、製造不良を大幅に低減させることができる。
【0013】
また、前記樹脂材を圧入する際に、保護シートが基板の裏面側に隙間なく密着されているため、前記基板の裏面側にかけて形成されているスルーホール電極の電極面に樹脂材が回り込むようなことがないので、導通不良を防止する効果も得られる。
【0014】
また、前記樹脂材が固化した後、保護シートを剥離するため、全体の厚みを抑えた薄い平板状の電子部品パッケージを容易且つ安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて本発明に係る電子部品パッケージの製造方法の実施形態を詳細に説明する。図1乃至図3は、本発明に係る製造方法によって形成された電子部品パッケージの一例を示したものである。この電子部品パッケージ21は、エレクトロルミネッセンス(EL)パネルを駆動するための電子部品が実装されたELドライバ回路であり、基板22と、この基板22に実装される複数の電子部品と、この電子部品を封止する封止体29とによって薄板状に形成されている。
【0016】
前記電子部品は、ELパネルへの充放電を行うための昇圧用のチップコイル26、駆動制御用のIC27,その他、コンデンサや抵抗などの受動素子28等によって構成される。基板22は、前記チップコイル26を配置するための貫通孔23と、回路を形成するための図示しない配線パターン及びマザーボード等の外部接続用基板に実装するためのスルーホール電極24が形成されている。また、前記封止体29は、前記チップコイル26の上面までを覆うように、熱硬化性を有したエポキシ系の樹脂材を圧入した後、固化することによって形成されている。
【0017】
次に、前記電子部品パッケージ21の製造方法を図4乃至図8に基づいて説明する。最初に基板22を形成する(図4)。この基板22には、チップコイル26の形状に合わせて表面から裏面にかけて貫通する貫通孔23を形成し、表面に図示しない配線パターン、側面に外部端子となるスルーホール電極24を形成する。前記貫通孔23は、チップコイル26の挿入配置を容易にするため、図2に示したように、前記チップコイル26との間に僅かな隙間30を有するように少し余裕を持たせて形成される。
【0018】
次に、前記基板22の裏面側に保護シート31を貼着する(図5)。この保護シート31は、図6に示すように、緩衝面32と、この緩衝面32の片面に形成される粘着面33との2層構造によって形成されている。前記緩衝面32は、チップコイル26が基板22の表面から圧入される樹脂材の圧力を受けた場合に、この圧力を低減することができる程度のクッション性と基板22に沿うような柔軟性を備える。このようなクッション性及び柔軟性を有するものとして、厚みが0.025mm以上のシリコン材やアクリル材などが好ましい。一方、前記粘着面33は、エポキシ樹脂などで形成される前記基板22の裏面側に密着するとともに、剥離可能な粘着剤を全面に均等に塗布して形成される。この粘着面33によって、前記基板22の裏面が隙間や気泡が生じないように密着される。その際、特に前記貫通孔23とチップコイル26との間に生じる隙間30やスルーホール電極24の裏面側が浮かないように前記基板22の裏面に対して保護シート31に張りを持たせた状態で密着(張設)させるのが重要となる。そして、前記保護シート31が裏面全体に貼着された基板22の表面にチップコイル26,IC27,受動素子28が実装される(図6)。前記チップコイル26は基板22に設けられている貫通孔23内に配置され、その下面が貫通孔23内に露出する保護シート31の粘着面33に密着する。また、IC27やその他の受動素子28は、前記基板22の表面側の所定位置に載置され、リフロー処理を経てハンダ接続される。
【0019】
前記ハンダによる実装が終了した基板22を保護シート31が貼着された状態のまま水平な作業台34上に載置し、前記基板22の周囲に成形金型35を配置し、圧縮成形によって樹脂材36を基板22上に圧入する(図7)。図7は圧縮成形の一つであるトランスファー成形による製造例を示したものである。このトランスファー成形における成形金型35は、前記基板22の外周を囲う下金型35aと、この下金型35aの上に配置される上金型35bとで構成され、前記上金型35bに設けられている注入部37を介して樹脂材36が下金型35a内に圧入される。この圧入は、前記注入部37に溜めた樹脂材36をプランジャ38によって、熱硬化性の樹脂材36をチップコイル26の上面が隠れる高さになるまで加圧しながら充填させた後、熱を加えて硬化させる。また、この加圧充填によって、前記チップコイル26と基板22に設けた貫通孔23との隙間30を樹脂材36で埋めることができる。このような成形方法によって、樹脂材36を圧入する際に基板22の表面側には大きな圧力がかかり、これによってチップコイル26の周囲からも大きな圧力がかかることになるが、このチップコイル26の裏面に貼着されている保護シート31の緩衝面32によって前記圧力を吸収するため、チップコイル26の損傷や破損を防止することができる。
【0020】
前記樹脂材36の圧入が終了し、この樹脂材36が完全に固化した後、成形金型35を外し、基板22の裏面に貼着されている保護シート31を剥離する(図8)。
【0021】
以上の工程を経ることによって、図1乃至図3に示したように、前記チップコイル26やIC27、受動素子28がモールド加工された電子部品パッケージを形成することができる。本発明に係る電子部品パッケージ21では、前述したように製造過程で基板22の裏面に保護シート31を貼着し、この保護シート31によって樹脂材36の圧入による衝撃を低減させることができるので、チップコイル26などの電子部品の損傷や破損を有効に防止することが可能となった。また、前記樹脂材36を圧入する際に基板22の裏面が保護シート31によって隙間なく密着されているので、導通面となるスルーホール電極24の裏面側に前記樹脂材36が回り込むことがないため、導通不良を防止する効果も同時に得ることができる。また、前記樹脂材36の硬化後に保護シート31を剥離して除去するため、最終的な電子部品パッケージ21は、基板22と、この基板22上に樹脂材36を圧入して形成された封止体29の厚み分のみとなり、全体の薄型化が図られることになる。
【0022】
また、上記実施形態で示したようなELドライバ回路にあっては、基板22に設けた貫通孔23内にチップコイル26を実装することができるため、実装の位置決めが容易であるとともに、基板22を含めた電子部品パッケージ全体の薄型化が図られることとなる。さらに、前記チップコイル26を基板22の設けた貫通孔23内に前記樹脂材が入り込み固化することで基板22に固定することができる。
【0023】
なお、上記実施形態では、チップコイルを含むELドライバ回路としての電子部品パッケージの製造方法を示したが、このようなELドライバ以外の電子部品パッケージであって、樹脂封止して製造されるパッケージに応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る製造方法によって製造された電子部品パッケージを表面から見た斜視図である。
【図2】上記電子部品パッケージを裏面から見た斜視図である。
【図3】上記電子部品パッケージの断面図である。
【図4】本発明の電子部品パッケージの基板を製造する工程を示した図である。
【図5】上記基板の裏面に保護シートを貼着する工程を示した図である。
【図6】上記基板に電子部品を実装する工程を示した図である。
【図7】上記基板上に樹脂材を圧入して封止体を形成する工程を示した図である。
【図8】上記基板から保護シートを剥離する工程を示した図である。
【符号の説明】
【0025】
21 電子部品パッケージ
22 基板
23 貫通孔
24 スルーホール電極
26 チップコイル
27 IC
28 受動素子
29 封止体
30 隙間
31 保護シート
32 緩衝面
33 粘着面
34 作業台
35 成形金型
35a 下金型
35b 上金型
36 樹脂材
37 注入部
38 プランジャ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に電子部品を配置するための貫通孔を設け、前記電子部品が実装された基板の上面を圧縮成形により樹脂材で封止する電子部品パッケージの製造方法において、
前記基板の裏面全体に予め保護シートを貼着しておき、前記貫通孔内に配置した電子部品の裏面を前記保護シートに密着させ、樹脂材で前記基板の上面を封止した後、前記保護シートを剥離することを特徴とする電子部品パッケージの製造方法。
【請求項2】
前記貫通孔は、基板の裏面に張設された前記保護シートによって塞がれている請求項1記載の電子部品パッケージの製造方法。
【請求項3】
前記貫通孔内に配置された電子部品の周囲には隙間が設けられ、この隙間に前記基板の上面を封止する樹脂材の一部が圧入される請求項1記載の電子部品パッケージの製造方法。
【請求項4】
前記保護シートは、圧縮成形による衝撃を吸収するためのクッション性を備える請求項1記載の電子部品パッケージの製造方法。
【請求項5】
前記電子部品は、チップコイルである請求項1記載の電子部品パッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−49222(P2009−49222A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214355(P2007−214355)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】