説明

電子部品用パッケージおよび圧電振動デバイス

【課題】ベースと蓋とを接合する際にスプラッシュによる金属成分の飛散物が発生しても、その飛散物が内部空間に届くのを抑える。
【解決手段】発振器1の本体筐体11は、水晶振動片3とICチップ2とを搭載するベース4と、ベース4と接合して内部空間12を形成し、水晶振動片3とICチップ2とを内部空間12に気密封止する蓋5と、から構成される。蓋5のベース4との接合面51には、その外周52に曲率半径をR1とする外周角部53が形成されている。また、ベース4と蓋5との接合の際に蓋5と接する接触部(金属リング7)の接合面71には、その内周72に内部空間12に面した曲率半径をR2とする内周角部73が形成されている。蓋5の外周角部53の曲率半径R1は、金属リング7の内周角部73の曲率半径R2より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品素子を気密封止する電子部品用パッケージ、および電子部品素子である圧電素子を気密封止した圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品は、その内部空間に搭載した電子部品素子の特性が劣化するのを防ぐために内部空間を気密封止する。この気密封止を必要とする電子部品素子として、例えば、半導体素子や圧電素子などが挙げられる。
【0003】
ここでいう電子部品は、例えば、その本体筐体のパッケージがベースと金属蓋とから構成されたものであり、その内部空間に半導体素子や圧電素子などが搭載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に記載の電子部品収納用パッケージでは、電子部品素子が搭載される搭載部を有する絶縁基体(ベース)の上面に、内周面および外周面の各角部に丸みを有する略四角枠状の金属枠体(リング)を搭載部を取り囲むように取着している。そして、金属枠体上に金属蓋を接合して電子部品収納用パッケージが構成される。また、金属枠体では、各角部における外周面の丸みの曲率半径が、内周面の丸みの曲率半径よりも大きい。
【0005】
上記したように、特許文献1に記載の電子部品収納用パッケージでは、ベースに金属蓋を接合するための接合部位に金属枠体が設けられている。
【特許文献1】特開2002−158305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ベースに金属蓋を接合する際、金属枠体と金属蓋との間に介在する封止材を抵抗溶接することで加熱溶接しているが、放電スパークによって溶けた金属成分(金属枠体、金属蓋、封止材などの溶融物)が接合部位から内部空間に飛散する現象(以下、スプラッシュ)が生じる。このスプラッシュにより金属成分の飛散物が内部空間に搭載する電子部品素子に付着するため、電子部品の特性を劣化させる要因となっている。
【0007】
特に、上記した特許文献1に示すように、金属枠体に関して、各角部における外周面の丸みの曲率半径が内周面の丸みの曲率半径よりも大きいと、金属枠体の接合部位から内部空間までの距離が近く、ベースに金属蓋を接合した際に金属枠体の接合部位からスプラッシュによる金属成分の飛散物が内部空間に届き易くなる。
【0008】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、ベースと蓋とを接合する際にスプラッシュによる金属成分の飛散物が発生しても、その飛散物が内部空間に届くのを抑える電子部品用パッケージ及び圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる電子部品用パッケージは、電子部品素子を搭載するベースと、前記ベースと接合して内部空間を形成し電子部品素子を前記内部空間に気密封止する蓋と、が設けられ、前記蓋の前記ベースとの接合面には、その外周に曲率半径をR1とする外周角部が形成され、前記ベースと前記蓋との接合の際に前記蓋と接する接触部の接合面には、その内周に前記内部空間に面した曲率半径をR2とする内周角部が形成され、前記蓋の外周角部の曲率半径R1は、前記接触部の内周角部の曲率半径R2より小さいことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、前記ベースと前記蓋とを接合する際にスプラッシュによる金属成分の飛散物が発生しても、その飛散物が内部空間に届くのを抑えることが可能となる。
【0011】
具体的に、前記外周角部の曲率半径R1が前記内周角部の曲率半径R2より小さいので、外周角部の曲率半径R1と内周角部の曲率半径R2とが同じ場合や、外周角部の曲率半径R1が内周角部の曲率半径R2より大きい場合と比較して、前記ベースと前記蓋との接合の際の接合部位を、前記内部空間から離すことが可能となる。その結果、接合部位で発生するスプラッシュによる金属成分の飛散物が前記内部空間に届くのを抑制することが可能となる。
【0012】
前記構成において、前記ベースと前記蓋とは、シーム接合されてもよい。
【0013】
この場合、シーム接合では前記蓋の外周(平面視外周)に沿って接合部位が形成されるため、接合部位であるシームパスの位置を前記内部空間から離すことが可能となる。
【0014】
前記構成において、当該電子部品用パッケージの角部におけるシームパスが、当該電子部品用パッケージの他の部位におけるシームパスよりも幅広となってもよい。
【0015】
この場合、当該電子部品用パッケージの角部におけるシーム接合を良好に行うことが可能となる。
【0016】
前記構成において、当該電子部品用パッケージのサイズは、3.2×2.5mm以下であってもよい。
【0017】
この場合、当該電子部品用パッケージのサイズは3.2×2.5mm以下であるので、当該電子部品用パッケージのサイズが小さい。しかしながら、本発明によれば、前記蓋の外周角部の曲率半径R1が前記接触部の内周角部の曲率半径R2より小さいので、前記ベースと前記蓋との接合の際の接合部位を確実に確保するとともに、接合部位から前記内部空間までの距離を確保することが可能となる。
【0018】
前記構成において、前記外周角部の曲率半径R1は0.2mm以下であり、前記内周角部の曲率半径R2は0.3mm以下であることが好適である。
【0019】
具体的に、前記構成において、前記接触部は前記ベースに設定され、前記ベースと前記蓋とは接合材により接合されてもよい。または、前記構成において、前記ベースと前記蓋との接合にはリングが介在され、前記接触部は前記リングに設定され、前記ベースと前記蓋とは前記リングを介して接合材により接合されてもよい。
【0020】
前記構成において、前記ベースと前記蓋とはリングを介して封止材により接合され、前記接触部は前記リングに設定され、前記蓋の平面視外形寸法は、前記リングの平面視外形寸法よりも小さくてもよい。
【0021】
この場合、前記ベースに前記蓋を接合するために前記ベースへ前記リングを介して前記蓋を配した際、前記ベース(具体的にリング)への前記蓋の位置ズレが起こっても前記ベース(具体的にリング)への前記蓋の接合を確実に行い、その内部空間は気密封止される。
【0022】
前記構成において、前記ベースと前記蓋とはリングを介して封止材により接合され、前記接触部は前記リングに設定され、前記リングの平面視外周に曲率半径をR3とする外周角部が形成され、前記蓋の外周角部の曲率半径R1は、前記リングの外周角部の曲率半径R3と同じか、大きくてもよい。
【0023】
この場合、前記ベースに前記蓋を接合するために前記ベースへ前記リングを介して前記蓋を配した際、前記ベース(具体的にリング)への前記蓋の位置ズレが起こっても前記ベース(具体的にリング)への前記蓋の接合を確実に行い、その内部空間は気密封止される。
【0024】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる圧電振動デバイスは、本発明にかかる電子部品用パッケージに、電子部品素子として圧電素子が気密封止されたことを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、本発明にかかる電子部品用パッケージを設けているので、本発明にかかる電子部品用パッケージと同様の作用効果を有し、前記ベースに前記蓋を接合する際にスプラッシュによる金属成分の飛散物が発生しても、その飛散物が内部空間に届くのを抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる電子部品用パッケージ及び圧電振動デバイスによれば、ベースに蓋を接合する際にスプラッシュによる金属成分の飛散物が発生しても、その飛散物が内部空間に届くのを抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、電子部品として圧電振動デバイスである発振器に本発明を適用し、さらに電子部品素子としてATカット水晶振動片とICチップに本発明を適用した場合を示す。
【実施例1】
【0028】
本実施例1にかかる発振器1には、図1〜3に示すように、電子部品素子であるICチップ2と、電子部品素子である圧電素子のATカット水晶振動片3(以下、水晶振動片という)と、この水晶振動片3を搭載し保持するベース4と、ベース4に保持した水晶振動片3を気密封止するための金属蓋5(以下、蓋という)と、が設けられている。
【0029】
この発振器1では、ベース4と蓋5とがシーム接合されて本体筐体11(本発明でいう電子部品用パッケージ)が構成され、この接合により気密封止された本体筐体11の内部空間12が形成される。なお、本発明にかかる発振器1の本体筐体11のサイズは、3.2×2.5mm以下が好適であり、実際に本実施例1にかかる本体筐体11は2.5×2.0mmである。
【0030】
この本体筐体11の内部空間12のベース4上に、図3に示すように、導電性接合材(導電性接着剤、金属バンプ、めっきバンプ等)60により水晶振動片3が接合されるとともに電気的に接続されている(電気機械的に接合されている)。また、図3に示すように、内部空間12のベース4上に、ICチップ2が樹脂接着剤62によりダイボンディングされる(機械的に接合される)とともに、ワイヤ63によりICチップ2が電気的に接続されている。そして、これら水晶振動片3とICチップ2とが搭載された本体筐体11の内部空間12は、ベース4と蓋5とがシーム接合されることで形成され、かつ、気密封止されている。
【0031】
次に、この発振器1の本体筐体11の各構成について説明する。
【0032】
ベース4は、セラミック材料が積層して構成される。具体的に、ベース4は、図1,3に示すように、ICチップ2を機械的に接合する底部41と、底部41上に積層し下記する電極パターン47にICチップ2を電気的に接続する第一段部42と、第一段部42上に積層し水晶振動片3を電気機械的に接合する第二段部43と、第二段部43上に積層し蓋5との接合面となる堤部44とから構成される箱状体に形成されている。なお、ベース4の外形寸法は、2.5×2.0mmに設定され、その堤部44の端面441(上面)の幅は0.2〜0.4mmに設定されている。
【0033】
堤部44は、ベース4の平面視外周縁に沿って形成されている。このベース4の堤部44の端面441には、メタライズ層45が設けられている。メタライズ層45はタングステンからなり、このメタライズ層45上には銀ろう材を用いてコバール等からなる金属リング7がベース4に一体的に形成され、これらタングステンからなるメタライズ層45,銀ろう材,金属リング7を金メッキ(図示省略)により被覆して構成される。なお、メタライズ層45としてタングステンのかわりにモリブデンを用いてもよい。
【0034】
また、金属リング7は、ベース4と蓋5との接合の際に蓋5と接する接触部としても機能する(設定されている)。この金属リング7の蓋5との接触部(接合面71)には、その内周72に内部空間12に面した曲率半径をR2とする内周角部73が平面視四隅に形成され、金属リング7の外周(平面視外周)に曲率半径R3とする外周角部74が平面視四隅に形成されている。なお、接合面71の外周は、下記する蓋5の外周と同様の形状からなり、具体的に、曲率半径をR1とする外周角部が平面視四隅に形成されている。
【0035】
ベース4の内部空間12には、複数の電極パッド46と電極パターン47が形成されている。複数の電極パッド46は、それぞれに対応した電極パターン47にそれぞれ接続され、ベース4の外壁(外周壁面)に形成されたキャスタレーション48などを介して、ベース4の裏面に形成される端子電極(図示省略)に電気的に接続される。なお、これら電極パッド46、電極パターン47、端子電極は、タングステン等のメタライズ材料を印刷した後にベース4と一体的に焼成して形成される。そして、これら電極パッド46、電極パターン47、端子電極のうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されている。
【0036】
上記したベース4の第二段部43上に形成された電極パッド46上に水晶振動片3が片保持して電気機械的に接合されている。なお、第二段部43の電極パッド46が形成された位置に対して当該ベースの長手方向に対向する位置には、水晶振動片3が傾いて保持されるのを防ぐための枕部として機能する突出部431が形成されている。
【0037】
ICチップ2は、底部41に樹脂接着剤62によりダイボンディングされ(機械的に接合され)、第一段部42上に形成された電極パターン47にワイヤ63により電気的に接続されている。
【0038】
蓋5は、図2,3に示すように、平面視略矩形状の一枚板のコバール母材からなり、このコバール母材の両主面に図示しないニッケル層(符号8参照)が形成されている。なお、蓋5の外形寸法は、2.4×1.9mmに設定されている。すなわち、蓋5の平面視外形寸法は、金属リング7の平面視外形寸法よりも小さい。また、必要に応じてニッケル層とコバール母材の間に銅を主成分とする熱緩衝層を形成してもよい。
【0039】
また、蓋5の金属リング7との接合面51(具体的に、本実施例1では金属リング7との接合面)には、その外周52に曲率半径をR1とする外周角部53が平面視四隅に形成されている。また、蓋5の平面視長辺54および平面視短辺55は、対向して平行辺として設けられている。
【0040】
蓋5の外周角部53の曲率半径R1は、金属リング7の内周角部73の曲率半径R2より小さい。特に、本体筐体11のサイズが、3.2×2.5mm以下の場合、外周角部53の曲率半径R1は0.2mm以下であり、内周角部73の曲率半径R2は0.3mm以下に設定されていることが好ましく、本実施例1では、曲率半径R1は0.15mmに設定され、曲率半径R2は0.20mmに設定されている。
【0041】
また、蓋5の外周角部53の曲率半径R1は、金属リング7の外周角部74の曲率半径R3と同じかもしくは大きくなるように形成している。本実施例1では、外周角部53の曲率半径R1と外周角部74の曲率半径R3は0.15mm以下に設定されている。
【0042】
また、本実施例1にかかるベース4と蓋5との接合に用いる封止材8は、上記した蓋5のニッケル層から構成される。
【0043】
上記した構成からなるベース4と蓋5とは、金属リング7を介して封止材8によりシーム接合される。ベース4の金属リング7と蓋5とのシーム接合は、ベース4の金属リング7に蓋5を配した状態で、図示しないシームローラをベース4の平面視短辺方向に走査させながら加熱溶融により行い、その後、ベース4の平面視長辺方向にシームローラを走査させながら加熱溶融により行う。このように、本体筐体11の平面視四隅(角部13)では、2度シーム接合が行われる。なお、ベース4の平面視長辺方向にシームローラを走査させながらベース4の金属リング7と蓋5とのシーム接合を行い、その後に、シームローラをベース4の平面視短辺方向に走査させながらベース4の金属リング7と蓋5とのシーム接合を行ってもよい。
【0044】
また、ベース4の金属リング7と蓋5とのシーム接合を行うことで生じる、発振器1の本体筐体11の角部13におけるシームパス9は、図1に示すように、本体筐体11の他の部位(例えば、角部13以外の平面視外周の各辺)におけるシームパス9よりも幅広となっている(図1の矢印参照)。さらに、図1に示すシームパス9は、蓋5の平面視外周に沿って形成されている。
【0045】
なお、シームパス9を図1に示しているが、ベース4に蓋5を接合していない状態の時のベース4(具体的には金属リング7)にはシームパス9は形成されていない。すなわち、図1は、あくまでもベース4に蓋5を接合して封止した時のシームパス9を示すために作成した模式図であり、シームパス9は、図3に示すベース4と蓋5とを接合して封止した状態の時に形成される。
【0046】
水晶振動片3はATカット水晶片の基板31からなり、水晶振動片3の基板31は、図1,3に示すように、平面視矩形状の一枚板の直方体形状からなる。
【0047】
また、この基板31の両主面32には一対の励振電極33が対向して形成されている。そして、励振電極33を外部電極(本実施例では、ベース4の電極パッド46)と電気機械的に接合するために励振電極33から引出電極34が引き出し形成されている。そして、励振電極33が、引出電極34から導電性接合材60を介してベース4の電極パッド46と電気機械的に接合されている。なお、励振電極33及び引出電極34は、真空蒸着法やスパッタリング法などにより形成され、例えば、基板31側からクロム、金(Cr−Au)の順に積層して形成されている。
【0048】
上記したように、本実施例1にかかる発振器1およびその本体筐体11によれば、ベース4に蓋5を接合する際にスプラッシュによる金属成分(金属リング7、メタライズ層45、蓋5、封止材8などの溶融物)の飛散物が発生しても、その飛散物が内部空間12に届くのを抑えることができる。
【0049】
具体的に、本実施例1によれば、ベース4と蓋5とが設けられ、蓋5のベース4との接合面51には曲率半径をR1とする外周角部53が形成され、ベース4と蓋5との接合の際に蓋5と接する接触部(具体的に金属リング7)の接合面71には内部空間12に面した曲率半径をR2とする内周角部73が形成され、外周角部53の曲率半径R1は内周角部73の曲率半径R2より小さい。そのため、外周角部53の曲率半径R1と内周角部73の曲率半径R2とが同じ場合や、外周角部53の曲率半径R1が内周角部73の曲率半径R2より大きい場合と比較して、ベース4と蓋5との接合の際の接合部位(図1に示すシームパス9)を、内部空間12から離すことができ、接合部位で発生するスプラッシュによる金属成分(金属リング7、メタライズ層45、蓋5、封止材8などの溶融物)の飛散物が内部空間12に届くのを抑制することができる。
【0050】
また、蓋5の外周角部53の曲率半径R1は、金属リング7の外周角部74の曲率半径R3と同じに設定しているので、ベース4の金属リング7に蓋5を接合するためにベース4の金属リング7へ蓋5を配した際、金属リング7の外周の範囲内で蓋5の位置がずれた場合でも、蓋5の外周角部53がベース4の金属リング7の外周角部74から突出することはない。従って、金属リング7に対して蓋5の端部が接触しない状態で加熱溶融されることがなくなり、その内部空間は不完全な状態で気密封止が行なわれることがない。加えて、蓋5の外周角部53の曲率半径R1が金属リング7の外周角部74の曲率半径R3より大きい場合と比較して、ベース4と蓋5との接合の際の接合部位(図1に示すシームパス9)を、内部空間12から離すことができ、接合部位で発生するスプラッシュによる金属成分の飛散物が内部空間12に届くのを抑制することができる。
【0051】
また、蓋5の外周角部53の曲率半径R1は、金属リング7の外周角部74の曲率半径R3より大きく形成しても、上記同様に金属リング7に対して蓋5の端部が接触しない状態で加熱溶融されることがなくなり、その内部空間12は不完全な状態で気密封止が行なわれることがない。
【0052】
また、ベース4と蓋5とはシーム接合されるので、接合部位であるシームパス9の位置を内部空間12から離すことができる。なお、本実施例1では、シームローラを用いたシーム接合を適用しているが、これに限定されるものではなく、金属リング7を用いない接合であってもよい(下記の実施例2参照)。なお、いずれのシーム接合であっても、本体筐体11の角部が複数回シーム接合される形態に本発明は好適である。具体的に、本実施例1によれば、本体筐体11の角部13(平面視四隅)におけるシームパス9が、本体筐体11の他の部位におけるシームパス9よりも幅広となっている。この場合、本体筐体11の角部13におけるシーム接合を良好に行うことができる。
【0053】
また、本実施例1にかかる本体筐体11のサイズは3.2×2.5mm以下であるので、本体筐体11のサイズが小さい。しかしながら、本実施例1によれば、蓋5の外周角部53の曲率半径R1が金属リング7の内周角部73の曲率半径R2より小さいので、小型の本体筐体11であっても、ベース4と蓋5との接合の際の接合部位(シームパス9)を確実に確保するとともに、接合部位(シームパス9)から内部空間12までの距離を確保することができる。
【0054】
また、蓋5の平面視外形寸法は金属リング7の平面視外形寸法よりも小さいので、ベース4に蓋5を接合するためにベース4へ金属リング7を介して蓋5を配した際、金属リング7の外周の範囲内でベース4(具体的には金属リング7)への蓋5の位置ズレが起こってもベース4への蓋5の接合を確実に行い、その内部空間12は気密封止される。
【0055】
なお、上記した実施例1では、ベース4と蓋5との接合に金属リング7を介在させているが、本発明はこれに限定されるものではなく、金属リング7を介在させなくてもよく、その例を以下に示す。
【実施例2】
【0056】
次に、本実施例2にかかる発振器を図面を用いて説明する。なお、本実施例2にかかる発振器は、上記した実施例1とは異なり金属リング7を用いていない。しかしながら、基本的な構成は実施例1と同様の構成からなる。そのため、本実施例2の実施例1と同一構成による作用効果及び変形例は、上記した実施例1と同様の作用効果及び変形例を有する。
【0057】
そこで、本実施例2では、上記した実施例1と異なる構成について説明し、同一の構成についての説明は基本的に省略する。
【0058】
本実施例2にかかる発振器1には、図¥4〜6に示すように、電子部品素子であるICチップ2と、電子部品素子である圧電素子のATカット水晶振動片3(以下、水晶振動片という)と、この水晶振動片3を搭載し保持するベース4と、ベース4に保持した水晶振動片3を気密封止するための金属蓋5(以下、蓋という)と、が設けられている。
【0059】
この発振器1では、ベース4と蓋5とがシーム接合されて本体筐体11(本発明でいう電子部品用パッケージ)が構成され、この接合により気密封止された本体筐体11の内部空間12が形成される。なお、本発明にかかる発振器1の本体筐体11のサイズは、3.2×2.5mm以下が好適であり、実際に本実施例2にかかる本体筐体11は2.5×2.0mmである。
【0060】
この本体筐体11の内部空間12のベース4上に、導電性接合材60を用いて水晶振動片3が接合されるとともに電気的に接続されている(電気機械的に接合されている)。また、図4,6に示すように、内部空間12のベース4上に、ICチップ2が導電性バンプ61(金属バンプ等)を用いてFCB(Flip Chip Bonding)法により超音波接合されるとともに電気的に接続されている(電気機械的に接合されている)。そして、これら水晶振動片3とICチップ2とが搭載された本体筐体11の内部空間12は、ベース4と蓋5とがシーム接合されることで形成され、かつ、気密封止されている。
【0061】
次に、この発振器1の本体筐体11の各構成について説明する。
【0062】
ベース4は、セラミック材料が積層して構成される。具体的に、ベース4は、図4,6に示すように、ICチップ2を電気機械的に接合する底部41と、底部41上に積層し水晶振動片3を電気機械的に接合する第三段部49と、第三段部49上に積層し蓋5との接合面となる堤部44とから構成される箱状体に形成されている。なお、ベース4の外形寸法は、2.5×2.0mmに設定され、その堤部44の端面(上面)の幅は0.2〜0.3mmに設定されている。
【0063】
ベース4の内部空間12には、複数の電極パッド46と電極パターン47が形成されている。複数の電極パッド46は、それぞれに対応した電極パターン47にそれぞれ接続され、ベース4の外壁(外周壁面)に形成されたキャスタレーション48などを介して、ベース4の裏面に形成される端子電極(図示省略)に電気的に接続される。
【0064】
堤部44は、ベース4の平面視外周縁に沿って形成されている。このベース4の堤部44の端面441には、蓋5との接合領域となるメタライズ層45が設けられている。具体的に、本実施例にかかるメタライズ層45は、タングステン層上にニッケル層を形成し、ニッケル層上に金メッキ層を形成して構成される。なお、タングステン層のかわりにモリブデン層を用いてもよい。
【0065】
また、このメタライズ層45は、ベース4と蓋5との接合の際に蓋5と接する接触部としても機能する(設定されている)。このメタライズ層45の蓋5との接触部における接合面451には、その内周452に内部空間12に面した曲率半径をR2とする内周角部453が平面視四隅に形成されている。
【0066】
上記したベース4の第三段部49上に形成された電極パッド46上に水晶振動片3が片保持して電気機械的に接合されている。なお、第三段部49の電極パッド46が形成された位置に対して当該ベースの長手方向に対向する位置には、水晶振動片3が傾いて保持されるのを防ぐための枕部として機能する突出部431が形成されている。
【0067】
ICチップ2は、底部41に導電性バンプ61により電気機械的に接合されている。
【0068】
蓋5は、図5,6に示すように、平面視略矩形状の一枚板のコバール母材からなり、少なくともこの蓋5のベース4と接合する面に図示しない銀ろう材等(図6の符号8参照)が形成され、上面にニッケル層(図示省略)が形成されている。なお、蓋5の外形寸法は、2.4×1.9mmに設定されている。また、必要に応じて銀ろう材とコバール母材の間に銅を主成分とする熱緩衝層を形成してもよい。
【0069】
また、蓋5のベース4との接合面51(具体的に、本実施例2ではベース4の堤部44に形成されたメタライズ層45との接合面)には、その外周52に曲率半径をR1とする外周角部53が平面視四隅に形成されている。また、蓋5の平面視長辺54および平面視短辺55は、それぞれ対向して平行辺として設けられている。
【0070】
蓋5の外周角部53の曲率半径R1は、ベース4のメタライズ層45の内周角部453の曲率半径R2より小さい。特に、本体筐体11のサイズが、3.2×2.5mm以下の場合、外周角部53の曲率半径R1は0.2mm以下であり、内周角部73の曲率半径R2は0.3mm以下に設定されていることが好ましく、本実施例2では、曲率半径R1は0.15mmに設定され、曲率半径R2は0.20mmに設定されている。
【0071】
また、本実施例2にかかるベース4と蓋5との接合に用いる封止材8は、上記した蓋5の銀ろう材等から構成される。
【0072】
上記した構成からなるベース4と蓋5とは、封止材8によりシーム接合される。ベース4と蓋5とのシーム接合は、ベース4に蓋5を配した状態で、図示しないシームローラをベース4の平面視短辺方向に走査させながら加熱溶融により行い、その後、ベース4の平面視長辺方向にシームローラを走査させながら加熱溶融により行う。このように、本体筐体の平面視四隅の角部13では、2度シーム接合が行われる。なお、ベース4の平面視長辺方向にシームローラを走査させながらベース4と蓋5とのシーム接合を行い、その後に、シームローラをベース4の平面視短辺方向に走査させながらベース4と蓋5とのシーム接合を行ってもよい。
【0073】
また、ベース4と蓋5とのシーム接合を行うことで生じる、発振器1の本体筐体11の角部13におけるシームパス9は、図4に示すように、本体筐体11の他の部位(例えば、角部13以外の平面視外周の各辺)におけるシームパス9よりも幅広となっている。さらに、図4に示すシームパス9は、蓋5の平面視外周に沿って形成されている。なお、シームパス9を図4に示しているが、ベース4に蓋5を接合していない状態の時のベース4にはシームパス9は形成されていない。すなわち、図4は、あくまでもベース4に蓋5を接合した時のシームパス9を示すために作成した模式図であり、シームパス9は、図6に示すベース4と蓋5とを接合した状態の時に形成される。
【0074】
水晶振動片3はATカット水晶片の基板31からなり、水晶振動片3の基板31は、平面視矩形状の一枚板の直方体形状からなる。
【0075】
また、この基板31の両主面32には一対の励振電極33が対向して形成されている。そして、励振電極33を外部電極(本実施例2では、ベース4の電極パッド46)と電気機械的に接合するために励振電極33から引出電極34が引き出し形成されている。そして、励振電極33が、引出電極34から導電性接合材60を介してベース4の電極パッド46と電気機械的に接合されている。
【0076】
上記したように、本実施例2にかかる発振器1およびその本体筐体11によれば、上記した実施例1と同様の構成による作用効果を有する。そのため、本実施例2によれば、ベース4に蓋5を接合する際にスプラッシュによる金属成分(金属リング7、メタライズ層45、蓋5、封止材8などの溶融物)の飛散物が発生しても、その飛散物が内部空間12に届くのを抑えることができる。
【0077】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
気密封止を必要とする電子部品素子を内部空間に搭載する電子部品に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、本実施例1にかかる、水晶振動片とICチップを搭載した状態のベースにシームパスを示したベースの概略平面図である。
【図2】図2は、本実施例1にかかる蓋の概略平面図である。
【図3】図3は、本実施例1にかかる、内部空間を公開した発振器の概略側面図である。
【図4】図4は、本実施例2にかかる、水晶振動片とICチップを搭載した状態のベースにシームパスを示したベースの概略平面図である。
【図5】図5は、本実施例2にかかる蓋の概略平面図である。
【図6】図6は、本実施例2にかかる、内部空間を公開した発振器の概略側面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 発振器(圧電振動デバイス)
11 本体筐体(電子部品用パッケージ)
12 内部空間
13 角部(電子部品用パッケージの角部)
2 ICチップ(電子部品素子)
3 ATカット水晶振動片(電子部品素子)
4 ベース
45 メタライズ層
451 接合面(接触部)
452 内周
453 内周角部
5 金属蓋(蓋)
51 接合面
52 外周
53 外周角部
7 コバールリング(リング)
71 接合面(接触部)
72 内周
73 内周角部
9 シームパス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品用パッケージにおいて、
電子部品素子を搭載するベースと、前記ベースと接合して内部空間を形成し電子部品素子を前記内部空間に気密封止する蓋と、が設けられ、
前記蓋の前記ベースとの接合面には、その外周に曲率半径をR1とする外周角部が形成され、
前記ベースと前記蓋との接合の際に前記蓋と接する接触部の接合面には、その内周に前記内部空間に面した曲率半径をR2とする内周角部が形成され、
前記蓋の外周角部の曲率半径R1は、前記接触部の内周角部の曲率半径R2より小さいことを特徴とする電子部品用パッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品用パッケージにおいて、
前記ベースと前記蓋とは、シーム接合されたことを特徴とする電子部品用パッケージ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子部品用パッケージにおいて、
当該電子部品用パッケージの角部におけるシームパスが、当該電子部品用パッケージの他の部位におけるシームパスよりも幅広となることを特徴とする電子部品用パッケージ。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の電子部品用パッケージにおいて、
前記ベースと前記蓋とは、リングを介して封止材により接合され、
前記接触部は、前記リングに設定され、
前記蓋の平面視外形寸法は、前記リングの平面視外形寸法よりも小さいことを特徴とする電子部品用パッケージ。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の電子部品用パッケージにおいて、
前記ベースと前記蓋とは、リングを介して封止材により接合され、
前記接触部は、前記リングに設定され、
前記リングの平面視外周に曲率半径をR3とする外周角部が形成され、
前記蓋の外周角部の曲率半径R1は、前記リングの外周角部の曲率半径R3と同じか、大きいことを特徴とする電子部品用パッケージ。
【請求項6】
圧電振動デバイスにおいて、
請求項1乃至5のうちいずれか1つに記載の電子部品用パッケージに、電子部品素子として圧電素子が気密封止されたことを特徴とする圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−224515(P2009−224515A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66566(P2008−66566)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】