電子音響部品に誘電体層を形成する方法および電子音響部品
本発明は、基板と、対応する電極構造物とを有する電子音響部品(1)、特に、表面音波またはバルク音波で動作する部品に誘電体層(3)を形成する製造方法に関し、多重部品システムとしてのホウケイ酸ガラスなどの蒸着ガラス材料や、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムなどの単部品システムからなる、蒸着材料のグループから選ばれる少なくとも一つの蒸着材料が、熱蒸着により析出するので、上記誘電体層(3)が、少なくとも部分的に形成される。本発明は、さらに、電子音響部品に関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、電子音響部品(electroacoustic component)に関係する技術に関するものである。
【0002】
〔背景技術〕
電子音響部品は、例えば、表面音波やバルク音波で動作する部品として知られている。表面音波で動作する部品は、例えば文献WO 2006/058579に記載されている。文献WO 2007/059740は、バルク音波で動作する部品を記載している。さらなる電子音響部品は、文献WO 2007/085237に記載されている。電子音響部品に共通の事実として、装置から引き出される接点に接続される電極構造物は、通常、圧電材料からなる基板上の金属層に形成される。電極構造物は、誘電材料、例えば二酸化ケイ素からなる層で覆われている。
【0003】
〔発明の詳細〕
本発明の目的は、電子音響部品の機能強化技術を提供することにあり、これにより、最適化されるべき部品の形成が可能になる。さらなる目的は、製造プロセスの間の部品の個々の構造化可能性を簡素化することにある。
【0004】
この問題は、本発明に沿い、独立請求項1に記載の電子音響部品に誘電体層を形成する方法および独立請求項15に記載の電子音響部品によって解決される。本発明の有利な構成は従属請求項の内容である。
【0005】
本発明は、対応する電極構造物を有する基板を備えた電子音響部品、特に、表面音波またはバルク音波で動作する部品に誘電体層を形成する方法の概念を有し、上記誘電体層が、蒸着ガラス材料、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムの蒸着材料のグループから選ばれる少なくとも一つの蒸着材料を熱蒸着により析出させることによって少なくとも部分的に形成される。
【0006】
本発明のさらなる特徴に沿えば、電子音響部品、特に、表面音波やバルク音波で動作する部品は、基板と、対応する電極構造物と、以下の蒸着材料のグループからの少なくとも一つの蒸着材料から少なくとも部分的に選ばれる、熱蒸着された誘電体層とを有するように生成される。すなわち、蒸着ガラス材料、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムである。
【0007】
従来技術と比較して本発明で得られる利点は、誘電体層のための層材料の熱蒸着を使用することによって、最適化された層析出を容易にするという事実にある。さらに、熱蒸着は、製造中の所望の部品特性を有する誘電体層、またそれゆえ電子音響部品を提供するために、所望のタイプの用途に応じて、個々の基準によって変化することができる。さらに、誘電体層の析出中に、熱蒸着プロセス層が、この層の迅速な形成を容易にし、それゆえ、製造中のプロセス時間を全体的に見て最適化することができる。
【0008】
少なくとも一つの蒸着材料は、二酸化ケイ素などの単一部品システムや、多重部品システム、例えば蒸着ガラス材料であるホウケイ酸ガラスとすることができる。蒸着ガラス材料は、ここでは、ガラスのような蒸着材料を含むと理解される。このような蒸着材料は、例えば文献US 4,506,435 A1に記載されている。さらに、例えば、以下の製品を用いることができる。すなわち、Schott 8329、Corning 7740(Pyrex)、Corning 7070、Fused Silicaである。
【0009】
本発明の異なる構成では、誘電体層は、単一層または多重層形式のいずれにも導入することができる。多重層構造では、誘電体層は、蒸着ガラス材料の少なくとも一つの部分層と、二酸化ケイ素のさらに少なくとも一つの部分層とが析出されるようにして設けられる。誘電体層は、基板上に直接付けられることもできるし、基板上のすでに存在する一つまたはそれより多い基底層の上に付けることもできる。基底層は、例えば、一つまたはそれより多い誘電体層を含むか、またはそのような誘電体層からなる。
【0010】
誘電体層は、熱蒸着、特にプラズマ支援熱蒸着を用いて、完全にまたは部分的のみのいずれでも形成することができる。一つの構成では、熱蒸着を用いて析出される一つまたはそれより多い誘電体層の部分層に加えて、さらに一つまたはそれより多い部分層を、他の製造方法を用いて形成することができる。例えば、スパッタリングやCVD処理(化学蒸着または化学気相析出)である。これらの形成方法は、例えば、窒化ケイ素の析出にも用いることができる。誘電体層の一つまたはさらなる部分層は、この一つまたはさらなる部分層の析出の前または後に処理することができる。
【0011】
誘電体層全体またはその部分層は、物理的および/または化学的特性、例えば音波の伝搬特性が、各層領域にわたってほぼ同一であるように、構成される均質な層を有するように形成することができる。あるいは、誘電体層全体またはその部分層領域について、非均質層構成が形成されるようにすることもでき、これにより、非均質層または非均質部分層の内部に、化学的および/または物理的特性に関して異なる領域が生じる。例えば、上記層領域の、音波に対する非均一な伝搬特性に関して、または、保護(JEDEC-STD-020Cにおいて湿度感度レベル1)および密封(MIL-STD-833FにおけるHe漏れ速度)特性に関してである。少なくとも一つの均質部分層と少なくとも一つの非均質部分層との組み合わせも、誘電体層に対して形成することができる。
【0012】
本発明は、バルク音波で動作する部品同様、表面音波で動作する部品にも適用することができる。どちらの場合でも、誘電体層は、圧電基板上に形成される電極構造物を全体的または部分的のいずれかで囲むようなやり方で形成することができる。
【0013】
電子音響部品に誘電体層を形成するのは、好ましくは、いわゆるウエハー化合物において行われる。
【0014】
上側層領域の効率的な保護特性を有する誘電体層を形成した後、このように形成された部品は包装前処理され、直接にさらなる処理を受ける準備をする。包装前処理は、「プリパッケージング」と称される。それゆえ、上記以外の、いわゆる「キャビティパッケージ」による一般的なタイプの後処理は、無しで済ませることができる。包装前処理で得られた保護特性は、ウエハー化合物から部品を取り外すのにさらに有利である。これは例えば、のこぎりでの分離によって行われる。部品の接触は、ワイヤボンディングまたはフリップチップアセンブリを行って、そしてプラスチック材料で直接それをカプセル化する(「成形」)ことによって行うことができる。包装前処理によって、電子音響部品をもっと複雑なモジュールに載せてそれを単一のステップにてプラスチックで成形することもできる。
【0015】
本発明の一実施形態では、熱蒸着が、プラズマ支援熱蒸着の形式で行われる。プラズマ支援に基づく方法によって、上記熱蒸着の使用の有利な点を、最適な方法で、層の析出に適用することができる。層の蒸着材料の、プラズマ支援された熱蒸着方法によって、析出する材料が、熱蒸着し、その後、生成すべき誘電体層の領域で液化する。そこでは、この処理は、プラズマ印加によって支援され、その結果、イオン化されたプラズマ部品によって、ショックインパルス伝送を用いて、熱蒸着した蒸着材料粒子へエネルギーが転送される。プラズマのパラメータを直接調節することによって、特に、音響特性と保護特性とについて、電子音響部品に対する誘電体層の個々の形成を容易にすることができる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、熱蒸着が電子ビーム蒸着によって行われる。電子ビームを用いて、ソースにおいて利用可能になる蒸着材料が蒸着する。これは、生成すべき誘電体層の領域にその後それを析出させるためである。蒸着エネルギーは、通常はるつぼの形式で構成されているソースにおいて、電子ビーム(「eビーム」)を用いて蒸着材料へ伝送される。電子ビーム蒸着技術を用いて、高いエネルギー密度と温度とが達成できる。
【0017】
本発明の有利な実施形態では、誘電体層は、以下の形成方法のグループから選ばれる少なくとも一つの形成方法によって形成することができる。すなわち、リフトオフ処理、反応性プラズマエッチング、湿式化学エッチングである。リフトオフ処理では、まず、フォトレジストを用いて、構成される形において蒸着材料が析出されるべき基板の上に、所望の構造のネガ画像が形成される。その後、蒸着材料すなわち蒸着ガラス材料および/または二酸化ケイ素のプラズマ支援熱蒸着が、ウエハー化合物で行われる。ここでは、熱蒸着の前に析出されたフォトレジストは除去される。プラズマ支援熱蒸着の前の、印加されたフォトレジストの構造化は、通常、紫外線照射によって行われる。リフトオフ処理の代替として、あるいはそれに加えて、誘電体層の形成に、湿式エッチングや乾式エッチングなどの公知の方法を用いることができる。これらの方法では部品が化学的および機械的ストレスにさらされるが、にもかかわらず、ある適用では、これらに耐えることができる。
【0018】
本発明の有利な実施形態では、誘電体層は、誘電体層内部に不均一な材料圧縮度(degree of material compaction)を有するように形成される。この不均一な材料圧縮度は、変化する、析出処理中のプラズマの構造によって、プラズマ支援熱蒸着中に設定される。それゆえ、析出処理中の異なる時刻に、異なる材料圧縮度が誘電体層に起こる。材料圧縮度の相対的な変化は、変化する、プラズマガスの流れと、プラズマにおける高周波数パワー(high-frequency power)とを許可することによって可能である。例えば、酸素だけを用いて初めに形成されたプラズマにおいて、アルゴン、クリプトン、キセノン、ネオンなどの他の処理ガスの流速と、プラズマの高周波数パワーとを、緩やかまたは急激に変化させて、材料圧縮度を増加させる。一方、誘電体層やその部分層の材料圧縮度の相対的な減少も可能である。不均一な材料圧縮度は、代替としてあるいは追加として、異なる蒸着材料を用いて誘電体層を形成することによって形成することができる。材料圧縮度の調節を行うことによって、種々の層領域における誘電体層の音響インピーダンスを制御することができる。このようにして、低い材料圧縮度を用いることによって、音波の高い伝搬速度を得ることができる。逆に、高い材料圧縮度とすると、音波の遅い伝搬速度が得られる。異なる材料圧縮度を有する領域間の遷移を連続的に設計することができる。すなわち、勾配という意味である。あるいは、非連続的に設計することもできる。それゆえ、例えば、垂直伝搬速度勾配は、案内されるバルク音波で動作する部品の機能に特に重要である。
【0019】
本発明の好ましい実施形態は、誘電体層の、電極構造物に最も近い側で、最も近い材料圧縮度が形成され、これは、誘電体層の、電極構造物から遠い側の遠い材料圧縮度よりも、高い。最も近い材料圧縮度と遠い材料圧縮度との間の遷移は、誘電体層内において連続的な遷移とすることができる。このように、勾配が、材料圧縮度に形成される。最も近い材料圧縮度と遠い材料圧縮度とを有する構成は、誘電体層の部分層に対しても提供することができる。一方、誘電体層の他のサブ領域は、ほぼ均一な材料圧縮度を有する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態は、誘電体層を形成するとき、二酸化ケイ素を、ほぼ化学量論的なやり方で、電極構造物に近い側に析出させる。化学量論的な析出とは、二酸化ケイ素の化学成分すなわちケイ素と酸素とが、この化合物において、ほぼ、それらの化学量論的な比率の通りに析出されることを意味する。一つの構成において、これの後に、二酸化ケイ素の化学量論的析出の領域の上に、蒸着ガラス材料すなわち酸化アルミニウムや窒化ケイ素の部分層が続くようにすることができる。二酸化ケイ素の化学量論的析出は、部品の温度勾配に対し、好ましい効果を有する。これは、電子音響部品にとって特に重要である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、電極構造物に近いほうの側では誘電体層が基底層を有するように形成され、電極構造物から遠いほうの側では誘電体層が保護カバー層を有するように形成される。基底層と保護カバー層とは、前述の最も近い材料特性と遠い材料特性との通りに形成することができる。一つの実施形態では、基底層を形成するために、高い酸素含有量のプラズマ、または、純粋な酸素プラズマさえ用いることができる。カバー層の形成においては、より低い酸素含有量のプラズマ、または、酸素を含まないプラズマさえ用いることができる。これらの形成は、このプラズマが、今度は、アルゴン、クリプトン、キセノン、ネオンなどの一つまたはそれより多い他のガスのみを含むようにすることによって行う。このようにして、カバー層は、基底層と比べて、増加した材料圧縮度を有するように形成される。それゆえ、本発明の好ましい拡張では、カバー層を、保護層として形成することができ、特に、環境効果に対する部品の保護を提供する。より高い材料圧縮度とすることによって、層への水分の浸透が最小化でき、完全に防ぐことさえできる。カバー層の形成には、蒸着ガラス材料の使用が特に好ましい。これは、カバー層の、より良い密封特性が得られるからである。蒸着ガラス材料の材料(二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素)の特性は異なるので、適用タイプに依存して、製造において所望の層特性を得ることができる。
【0022】
本発明の一つの有利な実施形態では、誘電体層は、およそ0.5μmないしおよそ50μmの厚みの層を有するように形成され、好ましくは、およそ3μmないしおよそ10μmの厚みの層を有するように形成される。後者は、均一な層特性を持たない層と関連して特に好ましい。層の上部分での音波が完全に分散するようにするためには、層の厚みを最小にすることが必要である。いずれの場合にも、勾配層の構造は、最小の高さとすることが必要である。さらなる処理段階で部品を最適に保護するためには、特に、包装前処理は、特別な層厚みを要する。層の厚みをもっと高くすると、経済的に実行不能になる。また、大きな残留電圧が層に発生する可能性がある。
【0023】
本発明の一つの有利な実施形態では、誘電体層は、およそ30nm/分ないしおよそ1000nm/分の層析出速度で析出される。好ましくは、およそ50nm/分ないしおよそ300nm/分で析出される。この速度範囲では、機械的固さの点と、電子フィルター特性への影響の可能性が最も低い点とに関し、誘電体層の残留応力は、部品にとって有利な範囲内にある。
【0024】
本発明の一つの有利な実施形態では、少なくとも一つの蒸着材料が基板上に析出される。基板の温度は、およそ120℃より低くし、好ましくはおよそ100℃よりも低くする。より低いほうの限定範囲では、基板の温度は、好ましくは、およそ室温かそれより幾分高い。
【0025】
本発明の一つの有利な実施形態では、蒸着材料の析出に用いられるプラズマの組成を変化させることによって、誘電体層が、物理的および/または化学的特性に関して互いに異なる層領域を有するように析出される。準中性(quasi-neutral)のプラズマビームを抽出するためには、プラズマ源としては、高周波数励磁された、磁界支援プラズマビーム源を用いることができる。蒸着材料の析出中のプラズマの変化は、好ましくは、用いられるプラズマの処理ガス組成と、ガス流速および高周波数パワーの設定値とによって、影響を受ける。例えば、純粋な酸素流の流速は、有利には、およそ10sccmないしおよそ200sccmとすることができる。好ましくは、およそ20sccmないしおよそ50sccmである。この酸素流速範囲では、SiO2層の化学量論が有利に制御可能である。また、ネオン、クリプトン、キセノン、アルゴンなどの少なくとも一つの他のガスを含む処理ガス流においては、酸素や、あるいは酸素無しのものでさえ、ガス流速は、およそ10sccmないしおよそ200sccmである。好ましくは、およそ20sccmないしおよそ50sccmが有利に用いることができる。残留応力の減少した誘電体層を実現できるのは、特にこれらの範囲である。
【0026】
処理ガス流の異なる組成に対しては、およそ100Wないしおよそ1000Wの高周波数パワーが用いられ、好ましくは、およそ250Wないしおよそ600Wである。高周波数パワーが、イオンビーム密度を制御する。上述のガス流速と組み合わせて、この高周波数パワーの範囲が、技術的に好ましい範囲である。これは、イオンビーム密度に対するプラズマ部品の運動エネルギーの好ましい比率が生成されるからである。
【0027】
蒸着材料の析出に用いられる析出室では、室内圧力は10−3mbarないし10−5mbarが用いられる。蒸着材料への印加パワーは、関係する蒸着材料の部品の蒸気圧や所望の層析出速度によって変化するが、好ましくはおよそ150Wないしおよそ1500Wの値であり、さらに好ましくはおよそ300Wないしおよそ1000Wである。これは、基板温度が高くなりすぎないようなパワー範囲である。あまり温度が高いと、基板上のポリマーが損なわれるので、リフトオフ処理が、妨げられ、あるいは不可能になる。しかしながら、ポリマーで覆われていない基板は、より高いパワーレベル、またそれゆえ、より高温でも、蒸着できる。
【0028】
本発明の一つの有利な実施形態では、誘電体層は、少なくとも一つの蒸着ガラス材料と二酸化ケイ素との同時蒸着を用いて形成できる。このように、異なる材料のそれぞれによって提供される有利な特性を、互いに組み合わせることができる。
【0029】
提案される電子音響部品の実施形態に関しては、それに応じて、該当する、製造方法の実施形態に関連した考慮が適用される。
【0030】
〔発明の好ましい実施形態の詳細〕
以下、本発明は、実施形態の支援により、また、図面を参照して、詳細に説明される。
【0031】
図1は、構成される誘電体層が、熱蒸着を用いて析出される、基板の概略図である。
【0032】
図2は、そこに析出されたフォトレジストを有する、図1の基板の概略図である。
【0033】
図3は、今そこに析出された蒸着材料からなる誘電体層を有する、図2の基板の概略図である。
【0034】
図4は、フォトレジスト層が除去された、図3の基板の概略図である。
【0035】
図5は、基板上の電極構造物が誘電体層によって完全に覆われた、電子音響部品のための配置の概略図である。
【0036】
図6は、基板上の電極構造物が誘電体層によって部分的にのみ覆われた、電子音響部品のための配置の概略図である。
【0037】
図7は、異なる特性を持った層領域間の緩やかな遷移が誘電体層に形成されている、電子音響部品のための配置の概略図である。
【0038】
図8は、異なる特性を持った層領域間の急激な遷移が誘電体層に形成されている、電子音響部品のための配置の概略図である。
【0039】
図9は、電子音響部品の層配置の概略図である。
【0040】
図10は、パッケージを有する電子音響部品の概略図である。
【0041】
図11は、コンタクトパッドと半田屑とを有する、包装前処理された電子音響部品の概略図である。
【0042】
図12は、回路基板上に載置された、図11に係る包装前処理された電子音響部品の配置の概略図である。
【0043】
図1は基板1の概略図を示し、そこには、蒸着材料、すなわち、蒸着ガラス材料、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムからなる誘電体層が、熱蒸着を用いて析出される。好ましくは電子ビーム蒸着処理を用いることができる。特に表面音波やバルク音波で動作する部品の形式で構成される電子音響部品の場合には、基板1は、通常、圧電材料から作られる基板である。電極構造物(図示せず)を有する金属層がこの上に形成される。電極構造物はまた、層システムとしても構成することができ、通常、一つまたはそれより多い金属材料からなる。電子音響部品の、次の製造では、誘電体層がその上に析出される。誘電体層は、電極構造物を少なくとも部分的に覆う。ここで述べる実施形態では、誘電体層は、以下に詳細に述べるリフトオフ処理を用いて形成される。これは、このようにして露出するコンタクトエリアを介して次に行う電極構造物の電気的接触を容易にするためである。
【0044】
図2は、図1からの基板1の概略図を示す。析出される誘電体層のための所望のミクロ構造のネガ画像が、公知のリソグラフィー技術を用いてフォトレジスト2に今印加される。
【0045】
それから、蒸着材料の層が熱蒸着を用いて析出され、図3に係る蒸着層3が形成される。一つの実施形態では、層の析出には、プラズマ支援熱電子ビーム蒸着が用いられる。蒸着層3は、単層形式でも多重層形式でも形成される。多重部品システムとしてのホウケイ酸ガラスなどの少なくとも一つの蒸着ガラス材料や、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素などの単部品システムが析出される。蒸着層3は、一つの実施形態において、およそ150nm/分ないしおよそ300nm/分の析出速度で形成される。
【0046】
誘電体層の析出中に、基板1は、およそ120℃より低い基板温度に保たれる。好ましくはおよそ100℃より低い。蒸着材料の析出は、プラズマ支援で行われる。そのために、処理ガスの酸素とアルゴンとが用いられる。準備段階では、蒸着材料が析出される表面を前もって清掃し、あるいは状態を整える。これは、アルゴンと酸素とで形成されたプラズマを用いて行う。蒸着層3の析出の種々の時間間隔の中で、用いられるプラズマは、特に、そのガス組成とプラズマパワーについて、種々の設定を持っている。これは、蒸着層の所望の層特性を生成するためである。
【0047】
図4は、図3の基板1の概略図を示す。フォトレジスト層2が除去される。
【0048】
図5ないし図12を参照してさらなる実施形態を以下に述べる。図1ないし図4のものと同じ参照番号が同一の特徴に対して用いられる。
【0049】
図5は、電子音響部品の配置の概略図を示す。基板1の上の電極構造物20は、誘電体の蒸着層3によって完全に覆われている。基板1は例えばLiNbO3で作られる。その上に、電極構造物20が形成され、これは、蒸着層3によって完全に覆われている。
【0050】
図6は、電子音響部品の配置の概略図を示す。基板1の上の電極構造物20は、誘電体の蒸着層3によって部分的に覆われている。ここに示す実施形態では基板1はやはりLiNbO3で作られる。
【0051】
図7は、電子音響部品の配置の概略図を示す。異なる特性を持った層領域間の緩やかな遷移が、誘電体の蒸着層3に形成されている。蒸着層3では、第1および第2層領域21、22が形成され、それらの間に緩やかな遷移が生じている。
【0052】
図8は、電子音響部品の配置の概略図を示す。異なる特性を持った層領域間の緩やかでない遷移が、誘電体の蒸着層3に形成されている。2つの層領域21、22間に、物理的および/または化学的特性の「急激な」変化が生じている。
【0053】
図9は、電子音響部品の配置の概略図を示す。示される配置は、特にバルク音波で動作する電子音響部品に適している。蒸着層3は、3つの層領域30、31、32を有する。低いほうの層領域30は、十分な温度勾配を有する誘電体層であるが、基板1や、それの上に横たわる層領域30と比べて、音波の伝搬速度が低い。層領域30は、電極構造物20を完全に包んでいる。あるいは、それと同一平面上に横たわっている。それの上に横たわる層領域31もまた誘電体層として形成されているが、低いほうの層領域30よりも、音波の伝搬速度が高い。低いほうの層領域30とそれの上の層領域31との間の遷移は、境界表面によって特徴付けられており、音波の伝搬速度に関する物理的および/または化学的特性の変化が急激に生じている。上側の層32は、保護層である。上側の層領域32とそれの下の層領域31との間の遷移は、勾配すなわち境界領域の形式で導入することができる。
【0054】
種々の実施形態において、物理的および/または化学的な層特性の間の緩やかな遷移は、用いられるプラズマパラメータを緩やかに変えながら蒸着材料を析出することによって行うことができる。しかしながら、うねっている、すなわち緩やかな遷移はまた、2つの蒸着材料の同時蒸着析出を用いて行うこともでき、そこでは、第2の材料が、コーティング処理の過程の遅い時期にのみ、ゆっくりと活動に入り、第1の材料は緩やかにフェードアウトする。例えば、上側の層領域の保護特性を強化するために、第2の材料としてのガラスの「フェードイン」を行うことができる。電子音響部品の電極構造物20を直接囲む層領域は、好ましくは、純粋な二酸化ケイ素から形成され、化学量論的析出が行われる。これは、酸素プラズマを用いることによって得ることができる。層30、31を有する積層を完成させるために、より大きな材料密度を有する層領域が析出される。これにより、水分や他の環境の影響に対する部品の保護を容易にすることができる。減少したあるいは完全に消えた水分吸収により、これらの層領域の残留応力が減少する。誘電体層の表面に近い部位での水分の吸収により、圧縮応力が増加する可能性がある。
【0055】
図10は、パッケージを有する電子音響部品の概略図を示す。接触端子40の領域では、開口部41が、リフトオフ処理を用いて蒸着層3に形成されている。次に、蒸着層3は、保護層として、表面に近い領域42に導入される。これにより、包装前処理タイプの構造が得られる。接触端子40をワイヤリード43に接続するためのワイヤボンディングの後、電子音響部品は、成形化合物44でカプセル化される。成形化合物44でのカプセル化は、単一の電子音響部品に対し、または、多重の電子部品(図示せず)の化合物に対して、行うことができる。
【0056】
図11は、コンタクトパッド101を有する、包装前処理された電子音響部品100の概略図を示す。その上には、半田屑102が、その後に回路基板上にて行うフリップチップアセンブリのために形成される(図12と比較)。誘電体層103は、単一層形式または多重層形式で導入される。誘電体層103の、上側の部位104は、保護特性を有するように形成される。これは、成形段階のとき同様、それに続く組み立ておよび接触のときに、包装前処理された電子音響部品100を保護するためである。
【0057】
図12は、図11に係る包装前処理された電子音響部品の配置の概略図を示す。これは、回路基板200上に載置されている。包装前処理された電子音響部品は、フリップチップ法によって回路基板200上に載置されている。この回路基板は、例えば、材料FR4で出来た回路基板である。接触は、還流ステップまたは導電性接着剤によって行うことができる。接触処理中に回路基板200を保護するために、接触表面202の領域のみあらかじめ開口させた半田レジスト201を回路基板200に付ける。フリップチップ法を用いて載置された電子音響部品100は、その後、成形化合物(図示せず)を用いて成形されることができる。
【0058】
本明細書、請求項および図面に記載された本発明の特徴は、その種々の実施形態の単独またはそれらの組み合わせにおける本発明の実現に重要となりえる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】構成される誘電体層が、熱蒸着を用いて析出される、基板の概略図である。
【図2】そこに析出されたフォトレジストを有する、図1の基板の概略図である。
【図3】今そこに析出された蒸着材料からなる誘電体層を有する、図2の基板の概略図である。
【図4】フォトレジスト層が除去された、図3の基板の概略図である。
【図5】基板上の電極構造物が誘電体層によって完全に覆われた、電子音響部品のための配置の概略図である。
【図6】基板上の電極構造物が誘電体層によって部分的にのみ覆われた、電子音響部品のための配置の概略図である。
【図7】異なる特性を持った層領域間の緩やかな遷移が誘電体層に形成されている、電子音響部品のための配置の概略図である。
【図8】異なる特性を持った層領域間の急激な遷移が誘電体層に形成されている、電子音響部品のための配置の概略図である。
【図9】電子音響部品の層配置の概略図である。
【図10】パッケージを有する電子音響部品の概略図である。
【図11】コンタクトパッドと半田屑とを有する、包装前処理された電子音響部品の概略図である。
【図12】回路基板上に載置された、図11に係る包装前処理された電子音響部品の配置の概略図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、電子音響部品(electroacoustic component)に関係する技術に関するものである。
【0002】
〔背景技術〕
電子音響部品は、例えば、表面音波やバルク音波で動作する部品として知られている。表面音波で動作する部品は、例えば文献WO 2006/058579に記載されている。文献WO 2007/059740は、バルク音波で動作する部品を記載している。さらなる電子音響部品は、文献WO 2007/085237に記載されている。電子音響部品に共通の事実として、装置から引き出される接点に接続される電極構造物は、通常、圧電材料からなる基板上の金属層に形成される。電極構造物は、誘電材料、例えば二酸化ケイ素からなる層で覆われている。
【0003】
〔発明の詳細〕
本発明の目的は、電子音響部品の機能強化技術を提供することにあり、これにより、最適化されるべき部品の形成が可能になる。さらなる目的は、製造プロセスの間の部品の個々の構造化可能性を簡素化することにある。
【0004】
この問題は、本発明に沿い、独立請求項1に記載の電子音響部品に誘電体層を形成する方法および独立請求項15に記載の電子音響部品によって解決される。本発明の有利な構成は従属請求項の内容である。
【0005】
本発明は、対応する電極構造物を有する基板を備えた電子音響部品、特に、表面音波またはバルク音波で動作する部品に誘電体層を形成する方法の概念を有し、上記誘電体層が、蒸着ガラス材料、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムの蒸着材料のグループから選ばれる少なくとも一つの蒸着材料を熱蒸着により析出させることによって少なくとも部分的に形成される。
【0006】
本発明のさらなる特徴に沿えば、電子音響部品、特に、表面音波やバルク音波で動作する部品は、基板と、対応する電極構造物と、以下の蒸着材料のグループからの少なくとも一つの蒸着材料から少なくとも部分的に選ばれる、熱蒸着された誘電体層とを有するように生成される。すなわち、蒸着ガラス材料、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムである。
【0007】
従来技術と比較して本発明で得られる利点は、誘電体層のための層材料の熱蒸着を使用することによって、最適化された層析出を容易にするという事実にある。さらに、熱蒸着は、製造中の所望の部品特性を有する誘電体層、またそれゆえ電子音響部品を提供するために、所望のタイプの用途に応じて、個々の基準によって変化することができる。さらに、誘電体層の析出中に、熱蒸着プロセス層が、この層の迅速な形成を容易にし、それゆえ、製造中のプロセス時間を全体的に見て最適化することができる。
【0008】
少なくとも一つの蒸着材料は、二酸化ケイ素などの単一部品システムや、多重部品システム、例えば蒸着ガラス材料であるホウケイ酸ガラスとすることができる。蒸着ガラス材料は、ここでは、ガラスのような蒸着材料を含むと理解される。このような蒸着材料は、例えば文献US 4,506,435 A1に記載されている。さらに、例えば、以下の製品を用いることができる。すなわち、Schott 8329、Corning 7740(Pyrex)、Corning 7070、Fused Silicaである。
【0009】
本発明の異なる構成では、誘電体層は、単一層または多重層形式のいずれにも導入することができる。多重層構造では、誘電体層は、蒸着ガラス材料の少なくとも一つの部分層と、二酸化ケイ素のさらに少なくとも一つの部分層とが析出されるようにして設けられる。誘電体層は、基板上に直接付けられることもできるし、基板上のすでに存在する一つまたはそれより多い基底層の上に付けることもできる。基底層は、例えば、一つまたはそれより多い誘電体層を含むか、またはそのような誘電体層からなる。
【0010】
誘電体層は、熱蒸着、特にプラズマ支援熱蒸着を用いて、完全にまたは部分的のみのいずれでも形成することができる。一つの構成では、熱蒸着を用いて析出される一つまたはそれより多い誘電体層の部分層に加えて、さらに一つまたはそれより多い部分層を、他の製造方法を用いて形成することができる。例えば、スパッタリングやCVD処理(化学蒸着または化学気相析出)である。これらの形成方法は、例えば、窒化ケイ素の析出にも用いることができる。誘電体層の一つまたはさらなる部分層は、この一つまたはさらなる部分層の析出の前または後に処理することができる。
【0011】
誘電体層全体またはその部分層は、物理的および/または化学的特性、例えば音波の伝搬特性が、各層領域にわたってほぼ同一であるように、構成される均質な層を有するように形成することができる。あるいは、誘電体層全体またはその部分層領域について、非均質層構成が形成されるようにすることもでき、これにより、非均質層または非均質部分層の内部に、化学的および/または物理的特性に関して異なる領域が生じる。例えば、上記層領域の、音波に対する非均一な伝搬特性に関して、または、保護(JEDEC-STD-020Cにおいて湿度感度レベル1)および密封(MIL-STD-833FにおけるHe漏れ速度)特性に関してである。少なくとも一つの均質部分層と少なくとも一つの非均質部分層との組み合わせも、誘電体層に対して形成することができる。
【0012】
本発明は、バルク音波で動作する部品同様、表面音波で動作する部品にも適用することができる。どちらの場合でも、誘電体層は、圧電基板上に形成される電極構造物を全体的または部分的のいずれかで囲むようなやり方で形成することができる。
【0013】
電子音響部品に誘電体層を形成するのは、好ましくは、いわゆるウエハー化合物において行われる。
【0014】
上側層領域の効率的な保護特性を有する誘電体層を形成した後、このように形成された部品は包装前処理され、直接にさらなる処理を受ける準備をする。包装前処理は、「プリパッケージング」と称される。それゆえ、上記以外の、いわゆる「キャビティパッケージ」による一般的なタイプの後処理は、無しで済ませることができる。包装前処理で得られた保護特性は、ウエハー化合物から部品を取り外すのにさらに有利である。これは例えば、のこぎりでの分離によって行われる。部品の接触は、ワイヤボンディングまたはフリップチップアセンブリを行って、そしてプラスチック材料で直接それをカプセル化する(「成形」)ことによって行うことができる。包装前処理によって、電子音響部品をもっと複雑なモジュールに載せてそれを単一のステップにてプラスチックで成形することもできる。
【0015】
本発明の一実施形態では、熱蒸着が、プラズマ支援熱蒸着の形式で行われる。プラズマ支援に基づく方法によって、上記熱蒸着の使用の有利な点を、最適な方法で、層の析出に適用することができる。層の蒸着材料の、プラズマ支援された熱蒸着方法によって、析出する材料が、熱蒸着し、その後、生成すべき誘電体層の領域で液化する。そこでは、この処理は、プラズマ印加によって支援され、その結果、イオン化されたプラズマ部品によって、ショックインパルス伝送を用いて、熱蒸着した蒸着材料粒子へエネルギーが転送される。プラズマのパラメータを直接調節することによって、特に、音響特性と保護特性とについて、電子音響部品に対する誘電体層の個々の形成を容易にすることができる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、熱蒸着が電子ビーム蒸着によって行われる。電子ビームを用いて、ソースにおいて利用可能になる蒸着材料が蒸着する。これは、生成すべき誘電体層の領域にその後それを析出させるためである。蒸着エネルギーは、通常はるつぼの形式で構成されているソースにおいて、電子ビーム(「eビーム」)を用いて蒸着材料へ伝送される。電子ビーム蒸着技術を用いて、高いエネルギー密度と温度とが達成できる。
【0017】
本発明の有利な実施形態では、誘電体層は、以下の形成方法のグループから選ばれる少なくとも一つの形成方法によって形成することができる。すなわち、リフトオフ処理、反応性プラズマエッチング、湿式化学エッチングである。リフトオフ処理では、まず、フォトレジストを用いて、構成される形において蒸着材料が析出されるべき基板の上に、所望の構造のネガ画像が形成される。その後、蒸着材料すなわち蒸着ガラス材料および/または二酸化ケイ素のプラズマ支援熱蒸着が、ウエハー化合物で行われる。ここでは、熱蒸着の前に析出されたフォトレジストは除去される。プラズマ支援熱蒸着の前の、印加されたフォトレジストの構造化は、通常、紫外線照射によって行われる。リフトオフ処理の代替として、あるいはそれに加えて、誘電体層の形成に、湿式エッチングや乾式エッチングなどの公知の方法を用いることができる。これらの方法では部品が化学的および機械的ストレスにさらされるが、にもかかわらず、ある適用では、これらに耐えることができる。
【0018】
本発明の有利な実施形態では、誘電体層は、誘電体層内部に不均一な材料圧縮度(degree of material compaction)を有するように形成される。この不均一な材料圧縮度は、変化する、析出処理中のプラズマの構造によって、プラズマ支援熱蒸着中に設定される。それゆえ、析出処理中の異なる時刻に、異なる材料圧縮度が誘電体層に起こる。材料圧縮度の相対的な変化は、変化する、プラズマガスの流れと、プラズマにおける高周波数パワー(high-frequency power)とを許可することによって可能である。例えば、酸素だけを用いて初めに形成されたプラズマにおいて、アルゴン、クリプトン、キセノン、ネオンなどの他の処理ガスの流速と、プラズマの高周波数パワーとを、緩やかまたは急激に変化させて、材料圧縮度を増加させる。一方、誘電体層やその部分層の材料圧縮度の相対的な減少も可能である。不均一な材料圧縮度は、代替としてあるいは追加として、異なる蒸着材料を用いて誘電体層を形成することによって形成することができる。材料圧縮度の調節を行うことによって、種々の層領域における誘電体層の音響インピーダンスを制御することができる。このようにして、低い材料圧縮度を用いることによって、音波の高い伝搬速度を得ることができる。逆に、高い材料圧縮度とすると、音波の遅い伝搬速度が得られる。異なる材料圧縮度を有する領域間の遷移を連続的に設計することができる。すなわち、勾配という意味である。あるいは、非連続的に設計することもできる。それゆえ、例えば、垂直伝搬速度勾配は、案内されるバルク音波で動作する部品の機能に特に重要である。
【0019】
本発明の好ましい実施形態は、誘電体層の、電極構造物に最も近い側で、最も近い材料圧縮度が形成され、これは、誘電体層の、電極構造物から遠い側の遠い材料圧縮度よりも、高い。最も近い材料圧縮度と遠い材料圧縮度との間の遷移は、誘電体層内において連続的な遷移とすることができる。このように、勾配が、材料圧縮度に形成される。最も近い材料圧縮度と遠い材料圧縮度とを有する構成は、誘電体層の部分層に対しても提供することができる。一方、誘電体層の他のサブ領域は、ほぼ均一な材料圧縮度を有する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態は、誘電体層を形成するとき、二酸化ケイ素を、ほぼ化学量論的なやり方で、電極構造物に近い側に析出させる。化学量論的な析出とは、二酸化ケイ素の化学成分すなわちケイ素と酸素とが、この化合物において、ほぼ、それらの化学量論的な比率の通りに析出されることを意味する。一つの構成において、これの後に、二酸化ケイ素の化学量論的析出の領域の上に、蒸着ガラス材料すなわち酸化アルミニウムや窒化ケイ素の部分層が続くようにすることができる。二酸化ケイ素の化学量論的析出は、部品の温度勾配に対し、好ましい効果を有する。これは、電子音響部品にとって特に重要である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、電極構造物に近いほうの側では誘電体層が基底層を有するように形成され、電極構造物から遠いほうの側では誘電体層が保護カバー層を有するように形成される。基底層と保護カバー層とは、前述の最も近い材料特性と遠い材料特性との通りに形成することができる。一つの実施形態では、基底層を形成するために、高い酸素含有量のプラズマ、または、純粋な酸素プラズマさえ用いることができる。カバー層の形成においては、より低い酸素含有量のプラズマ、または、酸素を含まないプラズマさえ用いることができる。これらの形成は、このプラズマが、今度は、アルゴン、クリプトン、キセノン、ネオンなどの一つまたはそれより多い他のガスのみを含むようにすることによって行う。このようにして、カバー層は、基底層と比べて、増加した材料圧縮度を有するように形成される。それゆえ、本発明の好ましい拡張では、カバー層を、保護層として形成することができ、特に、環境効果に対する部品の保護を提供する。より高い材料圧縮度とすることによって、層への水分の浸透が最小化でき、完全に防ぐことさえできる。カバー層の形成には、蒸着ガラス材料の使用が特に好ましい。これは、カバー層の、より良い密封特性が得られるからである。蒸着ガラス材料の材料(二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素)の特性は異なるので、適用タイプに依存して、製造において所望の層特性を得ることができる。
【0022】
本発明の一つの有利な実施形態では、誘電体層は、およそ0.5μmないしおよそ50μmの厚みの層を有するように形成され、好ましくは、およそ3μmないしおよそ10μmの厚みの層を有するように形成される。後者は、均一な層特性を持たない層と関連して特に好ましい。層の上部分での音波が完全に分散するようにするためには、層の厚みを最小にすることが必要である。いずれの場合にも、勾配層の構造は、最小の高さとすることが必要である。さらなる処理段階で部品を最適に保護するためには、特に、包装前処理は、特別な層厚みを要する。層の厚みをもっと高くすると、経済的に実行不能になる。また、大きな残留電圧が層に発生する可能性がある。
【0023】
本発明の一つの有利な実施形態では、誘電体層は、およそ30nm/分ないしおよそ1000nm/分の層析出速度で析出される。好ましくは、およそ50nm/分ないしおよそ300nm/分で析出される。この速度範囲では、機械的固さの点と、電子フィルター特性への影響の可能性が最も低い点とに関し、誘電体層の残留応力は、部品にとって有利な範囲内にある。
【0024】
本発明の一つの有利な実施形態では、少なくとも一つの蒸着材料が基板上に析出される。基板の温度は、およそ120℃より低くし、好ましくはおよそ100℃よりも低くする。より低いほうの限定範囲では、基板の温度は、好ましくは、およそ室温かそれより幾分高い。
【0025】
本発明の一つの有利な実施形態では、蒸着材料の析出に用いられるプラズマの組成を変化させることによって、誘電体層が、物理的および/または化学的特性に関して互いに異なる層領域を有するように析出される。準中性(quasi-neutral)のプラズマビームを抽出するためには、プラズマ源としては、高周波数励磁された、磁界支援プラズマビーム源を用いることができる。蒸着材料の析出中のプラズマの変化は、好ましくは、用いられるプラズマの処理ガス組成と、ガス流速および高周波数パワーの設定値とによって、影響を受ける。例えば、純粋な酸素流の流速は、有利には、およそ10sccmないしおよそ200sccmとすることができる。好ましくは、およそ20sccmないしおよそ50sccmである。この酸素流速範囲では、SiO2層の化学量論が有利に制御可能である。また、ネオン、クリプトン、キセノン、アルゴンなどの少なくとも一つの他のガスを含む処理ガス流においては、酸素や、あるいは酸素無しのものでさえ、ガス流速は、およそ10sccmないしおよそ200sccmである。好ましくは、およそ20sccmないしおよそ50sccmが有利に用いることができる。残留応力の減少した誘電体層を実現できるのは、特にこれらの範囲である。
【0026】
処理ガス流の異なる組成に対しては、およそ100Wないしおよそ1000Wの高周波数パワーが用いられ、好ましくは、およそ250Wないしおよそ600Wである。高周波数パワーが、イオンビーム密度を制御する。上述のガス流速と組み合わせて、この高周波数パワーの範囲が、技術的に好ましい範囲である。これは、イオンビーム密度に対するプラズマ部品の運動エネルギーの好ましい比率が生成されるからである。
【0027】
蒸着材料の析出に用いられる析出室では、室内圧力は10−3mbarないし10−5mbarが用いられる。蒸着材料への印加パワーは、関係する蒸着材料の部品の蒸気圧や所望の層析出速度によって変化するが、好ましくはおよそ150Wないしおよそ1500Wの値であり、さらに好ましくはおよそ300Wないしおよそ1000Wである。これは、基板温度が高くなりすぎないようなパワー範囲である。あまり温度が高いと、基板上のポリマーが損なわれるので、リフトオフ処理が、妨げられ、あるいは不可能になる。しかしながら、ポリマーで覆われていない基板は、より高いパワーレベル、またそれゆえ、より高温でも、蒸着できる。
【0028】
本発明の一つの有利な実施形態では、誘電体層は、少なくとも一つの蒸着ガラス材料と二酸化ケイ素との同時蒸着を用いて形成できる。このように、異なる材料のそれぞれによって提供される有利な特性を、互いに組み合わせることができる。
【0029】
提案される電子音響部品の実施形態に関しては、それに応じて、該当する、製造方法の実施形態に関連した考慮が適用される。
【0030】
〔発明の好ましい実施形態の詳細〕
以下、本発明は、実施形態の支援により、また、図面を参照して、詳細に説明される。
【0031】
図1は、構成される誘電体層が、熱蒸着を用いて析出される、基板の概略図である。
【0032】
図2は、そこに析出されたフォトレジストを有する、図1の基板の概略図である。
【0033】
図3は、今そこに析出された蒸着材料からなる誘電体層を有する、図2の基板の概略図である。
【0034】
図4は、フォトレジスト層が除去された、図3の基板の概略図である。
【0035】
図5は、基板上の電極構造物が誘電体層によって完全に覆われた、電子音響部品のための配置の概略図である。
【0036】
図6は、基板上の電極構造物が誘電体層によって部分的にのみ覆われた、電子音響部品のための配置の概略図である。
【0037】
図7は、異なる特性を持った層領域間の緩やかな遷移が誘電体層に形成されている、電子音響部品のための配置の概略図である。
【0038】
図8は、異なる特性を持った層領域間の急激な遷移が誘電体層に形成されている、電子音響部品のための配置の概略図である。
【0039】
図9は、電子音響部品の層配置の概略図である。
【0040】
図10は、パッケージを有する電子音響部品の概略図である。
【0041】
図11は、コンタクトパッドと半田屑とを有する、包装前処理された電子音響部品の概略図である。
【0042】
図12は、回路基板上に載置された、図11に係る包装前処理された電子音響部品の配置の概略図である。
【0043】
図1は基板1の概略図を示し、そこには、蒸着材料、すなわち、蒸着ガラス材料、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムからなる誘電体層が、熱蒸着を用いて析出される。好ましくは電子ビーム蒸着処理を用いることができる。特に表面音波やバルク音波で動作する部品の形式で構成される電子音響部品の場合には、基板1は、通常、圧電材料から作られる基板である。電極構造物(図示せず)を有する金属層がこの上に形成される。電極構造物はまた、層システムとしても構成することができ、通常、一つまたはそれより多い金属材料からなる。電子音響部品の、次の製造では、誘電体層がその上に析出される。誘電体層は、電極構造物を少なくとも部分的に覆う。ここで述べる実施形態では、誘電体層は、以下に詳細に述べるリフトオフ処理を用いて形成される。これは、このようにして露出するコンタクトエリアを介して次に行う電極構造物の電気的接触を容易にするためである。
【0044】
図2は、図1からの基板1の概略図を示す。析出される誘電体層のための所望のミクロ構造のネガ画像が、公知のリソグラフィー技術を用いてフォトレジスト2に今印加される。
【0045】
それから、蒸着材料の層が熱蒸着を用いて析出され、図3に係る蒸着層3が形成される。一つの実施形態では、層の析出には、プラズマ支援熱電子ビーム蒸着が用いられる。蒸着層3は、単層形式でも多重層形式でも形成される。多重部品システムとしてのホウケイ酸ガラスなどの少なくとも一つの蒸着ガラス材料や、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素などの単部品システムが析出される。蒸着層3は、一つの実施形態において、およそ150nm/分ないしおよそ300nm/分の析出速度で形成される。
【0046】
誘電体層の析出中に、基板1は、およそ120℃より低い基板温度に保たれる。好ましくはおよそ100℃より低い。蒸着材料の析出は、プラズマ支援で行われる。そのために、処理ガスの酸素とアルゴンとが用いられる。準備段階では、蒸着材料が析出される表面を前もって清掃し、あるいは状態を整える。これは、アルゴンと酸素とで形成されたプラズマを用いて行う。蒸着層3の析出の種々の時間間隔の中で、用いられるプラズマは、特に、そのガス組成とプラズマパワーについて、種々の設定を持っている。これは、蒸着層の所望の層特性を生成するためである。
【0047】
図4は、図3の基板1の概略図を示す。フォトレジスト層2が除去される。
【0048】
図5ないし図12を参照してさらなる実施形態を以下に述べる。図1ないし図4のものと同じ参照番号が同一の特徴に対して用いられる。
【0049】
図5は、電子音響部品の配置の概略図を示す。基板1の上の電極構造物20は、誘電体の蒸着層3によって完全に覆われている。基板1は例えばLiNbO3で作られる。その上に、電極構造物20が形成され、これは、蒸着層3によって完全に覆われている。
【0050】
図6は、電子音響部品の配置の概略図を示す。基板1の上の電極構造物20は、誘電体の蒸着層3によって部分的に覆われている。ここに示す実施形態では基板1はやはりLiNbO3で作られる。
【0051】
図7は、電子音響部品の配置の概略図を示す。異なる特性を持った層領域間の緩やかな遷移が、誘電体の蒸着層3に形成されている。蒸着層3では、第1および第2層領域21、22が形成され、それらの間に緩やかな遷移が生じている。
【0052】
図8は、電子音響部品の配置の概略図を示す。異なる特性を持った層領域間の緩やかでない遷移が、誘電体の蒸着層3に形成されている。2つの層領域21、22間に、物理的および/または化学的特性の「急激な」変化が生じている。
【0053】
図9は、電子音響部品の配置の概略図を示す。示される配置は、特にバルク音波で動作する電子音響部品に適している。蒸着層3は、3つの層領域30、31、32を有する。低いほうの層領域30は、十分な温度勾配を有する誘電体層であるが、基板1や、それの上に横たわる層領域30と比べて、音波の伝搬速度が低い。層領域30は、電極構造物20を完全に包んでいる。あるいは、それと同一平面上に横たわっている。それの上に横たわる層領域31もまた誘電体層として形成されているが、低いほうの層領域30よりも、音波の伝搬速度が高い。低いほうの層領域30とそれの上の層領域31との間の遷移は、境界表面によって特徴付けられており、音波の伝搬速度に関する物理的および/または化学的特性の変化が急激に生じている。上側の層32は、保護層である。上側の層領域32とそれの下の層領域31との間の遷移は、勾配すなわち境界領域の形式で導入することができる。
【0054】
種々の実施形態において、物理的および/または化学的な層特性の間の緩やかな遷移は、用いられるプラズマパラメータを緩やかに変えながら蒸着材料を析出することによって行うことができる。しかしながら、うねっている、すなわち緩やかな遷移はまた、2つの蒸着材料の同時蒸着析出を用いて行うこともでき、そこでは、第2の材料が、コーティング処理の過程の遅い時期にのみ、ゆっくりと活動に入り、第1の材料は緩やかにフェードアウトする。例えば、上側の層領域の保護特性を強化するために、第2の材料としてのガラスの「フェードイン」を行うことができる。電子音響部品の電極構造物20を直接囲む層領域は、好ましくは、純粋な二酸化ケイ素から形成され、化学量論的析出が行われる。これは、酸素プラズマを用いることによって得ることができる。層30、31を有する積層を完成させるために、より大きな材料密度を有する層領域が析出される。これにより、水分や他の環境の影響に対する部品の保護を容易にすることができる。減少したあるいは完全に消えた水分吸収により、これらの層領域の残留応力が減少する。誘電体層の表面に近い部位での水分の吸収により、圧縮応力が増加する可能性がある。
【0055】
図10は、パッケージを有する電子音響部品の概略図を示す。接触端子40の領域では、開口部41が、リフトオフ処理を用いて蒸着層3に形成されている。次に、蒸着層3は、保護層として、表面に近い領域42に導入される。これにより、包装前処理タイプの構造が得られる。接触端子40をワイヤリード43に接続するためのワイヤボンディングの後、電子音響部品は、成形化合物44でカプセル化される。成形化合物44でのカプセル化は、単一の電子音響部品に対し、または、多重の電子部品(図示せず)の化合物に対して、行うことができる。
【0056】
図11は、コンタクトパッド101を有する、包装前処理された電子音響部品100の概略図を示す。その上には、半田屑102が、その後に回路基板上にて行うフリップチップアセンブリのために形成される(図12と比較)。誘電体層103は、単一層形式または多重層形式で導入される。誘電体層103の、上側の部位104は、保護特性を有するように形成される。これは、成形段階のとき同様、それに続く組み立ておよび接触のときに、包装前処理された電子音響部品100を保護するためである。
【0057】
図12は、図11に係る包装前処理された電子音響部品の配置の概略図を示す。これは、回路基板200上に載置されている。包装前処理された電子音響部品は、フリップチップ法によって回路基板200上に載置されている。この回路基板は、例えば、材料FR4で出来た回路基板である。接触は、還流ステップまたは導電性接着剤によって行うことができる。接触処理中に回路基板200を保護するために、接触表面202の領域のみあらかじめ開口させた半田レジスト201を回路基板200に付ける。フリップチップ法を用いて載置された電子音響部品100は、その後、成形化合物(図示せず)を用いて成形されることができる。
【0058】
本明細書、請求項および図面に記載された本発明の特徴は、その種々の実施形態の単独またはそれらの組み合わせにおける本発明の実現に重要となりえる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】構成される誘電体層が、熱蒸着を用いて析出される、基板の概略図である。
【図2】そこに析出されたフォトレジストを有する、図1の基板の概略図である。
【図3】今そこに析出された蒸着材料からなる誘電体層を有する、図2の基板の概略図である。
【図4】フォトレジスト層が除去された、図3の基板の概略図である。
【図5】基板上の電極構造物が誘電体層によって完全に覆われた、電子音響部品のための配置の概略図である。
【図6】基板上の電極構造物が誘電体層によって部分的にのみ覆われた、電子音響部品のための配置の概略図である。
【図7】異なる特性を持った層領域間の緩やかな遷移が誘電体層に形成されている、電子音響部品のための配置の概略図である。
【図8】異なる特性を持った層領域間の急激な遷移が誘電体層に形成されている、電子音響部品のための配置の概略図である。
【図9】電子音響部品の層配置の概略図である。
【図10】パッケージを有する電子音響部品の概略図である。
【図11】コンタクトパッドと半田屑とを有する、包装前処理された電子音響部品の概略図である。
【図12】回路基板上に載置された、図11に係る包装前処理された電子音響部品の配置の概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する電極構造物を有する基板を備えた電子音響部品、特に、表面音波またはバルク音波で動作する部品に誘電体層を形成する製造方法であって、
上記誘電体層が、蒸着ガラス材料、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムの蒸着材料のグループから選ばれる少なくとも一つの蒸着材料を熱蒸着により析出させることによって少なくとも部分的に形成される製造方法。
【請求項2】
上記熱蒸着が、プラズマ支援蒸着にて形成される請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記熱蒸着が、電子ビーム蒸着にて形成される請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
上記誘電体層が、リフトオフ処理、反応性プラズマエッチング、湿式化学エッチングからなる形成方法のグループから選ばれる少なくとも一つの形成方法によって形成される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記誘電体層が、誘電体層内部に不均一な材料圧縮度を有するように形成される請求項1ないし4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
上記誘電体層の、電極構造物に最も近い側で、最も近い側の材料圧縮度が形成され、この材料圧縮度は、誘電体層の、電極構造物から最も遠い側の材料圧縮度よりも高い請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
上記電極構造物に近い側では、上記誘電体層が、上記誘電体層の、上記電極構造物から最も遠い側での、音波の、遠い側の伝搬速度とは異なる、音波の伝搬速度を有するように、形成される請求項1ないし6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
上記誘電体層を形成するとき、二酸化ケイ素が、ほぼ化学量論的なやり方で、電極構造物に近い側に析出される請求項1ないし7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
上記電極構造物に最も近いほうの側では上記誘電体層が基底層を有するように形成され、電極構造物から最も遠いほうの側では誘電体層が保護カバー層を有するように形成される請求項1ないし8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
上記誘電体層は、およそ0.5μmないしおよそ50μmの厚みの層を有するように形成され、好ましくは、およそ3μmないしおよそ10μmの厚みの層を有するように形成される請求項1ないし9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
上記誘電体層は、およそ30nm/分ないしおよそ1000nm/分の層析出速度で析出され、好ましくは、およそ50nm/分ないしおよそ300nm/分で析出される請求項1ないし10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
少なくとも一つの蒸着材料が基板上に析出され、基板の温度は、およそ120℃より低くし、好ましくはおよそ100℃よりも低くする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
蒸着材料の析出に用いられるプラズマの組成を変化させることによって、上記誘電体層が、物理的および/または化学的特性に関して互いに異なる層領域を有するように析出される請求項1ないし12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
上記誘電体層が、少なくとも一つの蒸着ガラス材料と二酸化ケイ素との同時蒸着を用いて形成される請求項1ないし13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
ワイヤボンディングと成形処理とが行われる請求項1ないし14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された電子音響部品、特に、表面音波またはバルク音波で動作する電子音響部品であって、
基板と、対応する電極構造物と、
蒸着ガラス材料、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムの層蒸着材料のグループからの少なくとも一つの層蒸着材料から少なくとも部分的に選ばれる熱蒸着誘電体層とを有する電子音響部品。
【請求項17】
上記誘電体層が、誘電体層内部に不均一な材料圧縮度を有するように形成される請求項16に記載の電子音響部品。
【請求項18】
上記誘電体層の、電極構造物に最も近い側で、最も近い側の材料圧縮度が形成され、この材料圧縮度は、誘電体層の、電極構造物から最も遠い側の材料圧縮度よりも高い請求項17に記載の電子音響部品。
【請求項19】
上記電極構造物に近い側では、上記誘電体層が、上記誘電体層の、上記電極構造物から最も遠い側での、音波の、遠い側の伝搬速度とは異なる、音波の伝搬速度を有するように、形成される請求項16ないし18のいずれか1項に記載の電子音響部品。
【請求項20】
二酸化ケイ素が、ほぼ化学量論的なやり方で、誘電体層の、電極構造物に最も近い側に析出される請求項16ないし19のいずれか1項に記載の電子音響部品。
【請求項21】
上記電極構造物に最も近いほうの側では上記誘電体層が基底層を有するように形成され、電極構造物から最も遠いほうの側では誘電体層が保護カバー層を有するように形成される請求項16ないし20のいずれか1項に記載の電子音響部品。
【請求項22】
上記誘電体層は、およそ0.5μmないしおよそ50μmの厚みの層を有するように形成され、好ましくは、およそ3μmないしおよそ10μmの厚みの層を有するように形成される請求項16ないし20のいずれか1項に記載の電子音響部品。
【請求項23】
上記誘電体層が、物理的および/または化学的特性に関して互いに異なる層領域を有するように析出される請求項16ないし22のいずれか1項に記載の電子音響部品。
【請求項24】
一つまたはそれより多いボンドワイヤと成形パッケージとが形成される請求項16ないし23のいずれか1項に記載の電子音響部品。
【請求項1】
対応する電極構造物を有する基板を備えた電子音響部品、特に、表面音波またはバルク音波で動作する部品に誘電体層を形成する製造方法であって、
上記誘電体層が、蒸着ガラス材料、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムの蒸着材料のグループから選ばれる少なくとも一つの蒸着材料を熱蒸着により析出させることによって少なくとも部分的に形成される製造方法。
【請求項2】
上記熱蒸着が、プラズマ支援蒸着にて形成される請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記熱蒸着が、電子ビーム蒸着にて形成される請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
上記誘電体層が、リフトオフ処理、反応性プラズマエッチング、湿式化学エッチングからなる形成方法のグループから選ばれる少なくとも一つの形成方法によって形成される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記誘電体層が、誘電体層内部に不均一な材料圧縮度を有するように形成される請求項1ないし4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
上記誘電体層の、電極構造物に最も近い側で、最も近い側の材料圧縮度が形成され、この材料圧縮度は、誘電体層の、電極構造物から最も遠い側の材料圧縮度よりも高い請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
上記電極構造物に近い側では、上記誘電体層が、上記誘電体層の、上記電極構造物から最も遠い側での、音波の、遠い側の伝搬速度とは異なる、音波の伝搬速度を有するように、形成される請求項1ないし6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
上記誘電体層を形成するとき、二酸化ケイ素が、ほぼ化学量論的なやり方で、電極構造物に近い側に析出される請求項1ないし7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
上記電極構造物に最も近いほうの側では上記誘電体層が基底層を有するように形成され、電極構造物から最も遠いほうの側では誘電体層が保護カバー層を有するように形成される請求項1ないし8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
上記誘電体層は、およそ0.5μmないしおよそ50μmの厚みの層を有するように形成され、好ましくは、およそ3μmないしおよそ10μmの厚みの層を有するように形成される請求項1ないし9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
上記誘電体層は、およそ30nm/分ないしおよそ1000nm/分の層析出速度で析出され、好ましくは、およそ50nm/分ないしおよそ300nm/分で析出される請求項1ないし10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
少なくとも一つの蒸着材料が基板上に析出され、基板の温度は、およそ120℃より低くし、好ましくはおよそ100℃よりも低くする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
蒸着材料の析出に用いられるプラズマの組成を変化させることによって、上記誘電体層が、物理的および/または化学的特性に関して互いに異なる層領域を有するように析出される請求項1ないし12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
上記誘電体層が、少なくとも一つの蒸着ガラス材料と二酸化ケイ素との同時蒸着を用いて形成される請求項1ないし13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
ワイヤボンディングと成形処理とが行われる請求項1ないし14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された電子音響部品、特に、表面音波またはバルク音波で動作する電子音響部品であって、
基板と、対応する電極構造物と、
蒸着ガラス材料、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムの層蒸着材料のグループからの少なくとも一つの層蒸着材料から少なくとも部分的に選ばれる熱蒸着誘電体層とを有する電子音響部品。
【請求項17】
上記誘電体層が、誘電体層内部に不均一な材料圧縮度を有するように形成される請求項16に記載の電子音響部品。
【請求項18】
上記誘電体層の、電極構造物に最も近い側で、最も近い側の材料圧縮度が形成され、この材料圧縮度は、誘電体層の、電極構造物から最も遠い側の材料圧縮度よりも高い請求項17に記載の電子音響部品。
【請求項19】
上記電極構造物に近い側では、上記誘電体層が、上記誘電体層の、上記電極構造物から最も遠い側での、音波の、遠い側の伝搬速度とは異なる、音波の伝搬速度を有するように、形成される請求項16ないし18のいずれか1項に記載の電子音響部品。
【請求項20】
二酸化ケイ素が、ほぼ化学量論的なやり方で、誘電体層の、電極構造物に最も近い側に析出される請求項16ないし19のいずれか1項に記載の電子音響部品。
【請求項21】
上記電極構造物に最も近いほうの側では上記誘電体層が基底層を有するように形成され、電極構造物から最も遠いほうの側では誘電体層が保護カバー層を有するように形成される請求項16ないし20のいずれか1項に記載の電子音響部品。
【請求項22】
上記誘電体層は、およそ0.5μmないしおよそ50μmの厚みの層を有するように形成され、好ましくは、およそ3μmないしおよそ10μmの厚みの層を有するように形成される請求項16ないし20のいずれか1項に記載の電子音響部品。
【請求項23】
上記誘電体層が、物理的および/または化学的特性に関して互いに異なる層領域を有するように析出される請求項16ないし22のいずれか1項に記載の電子音響部品。
【請求項24】
一つまたはそれより多いボンドワイヤと成形パッケージとが形成される請求項16ないし23のいずれか1項に記載の電子音響部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−528878(P2011−528878A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519038(P2011−519038)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際出願番号】PCT/DE2009/001033
【国際公開番号】WO2010/009719
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(511020140)エムエスゲー リトグラス アクチエンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】MSG LITHOGLAS AG
【住所又は居所原語表記】Gustav−Meyer−Allee 25,13355 Berlin,Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際出願番号】PCT/DE2009/001033
【国際公開番号】WO2010/009719
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(511020140)エムエスゲー リトグラス アクチエンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】MSG LITHOGLAS AG
【住所又は居所原語表記】Gustav−Meyer−Allee 25,13355 Berlin,Germany
【Fターム(参考)】
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