説明

電気・電子機器の処分

本発明は、プラスチック及び金属構成部材を含む電気・電子機器の処分方法であって、機器及び/又はその粉砕片を溶融加工して溶融加工物を作ることと、溶融加工物を容器に移し、溶融加工物が揮発性炭化水素を遊離させて金属を含む不揮発性残留物を残すよう、遠赤外線を用いて溶融加工物を加熱することと、揮発性炭化水素と不揮発性残留物の一方又は両方を後の使用のために捕集することを、含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電気・電子機器の処分に関し、特に、使用できる製品をそれらから回収するため、斯かる装置を処分する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの不要な消費者製品と同様に、不要な電気・電子機器は、結局は地方自治体の処分のためのゴミ中継施設にたどり着く。最近まで、最も普通の処分方法は、ゴミ埋め立て地に用済みの電気・電子機器(一般にWEEE又はe−waste(電気・電子機器廃棄物)と称する)を単に埋めることであった。しかしながら、環境に関する意識の高まりとともに、WEEEをこの方法で処分することに関する懸念の高まりがある。例えば、1990年代のヨーロッパの幾つかの国では、WEEEをゴミ埋め立て地に棄てることを禁じる法律を導入した。
【0003】
将来広がると見込まれるゴミ埋め立て地にWEEEを棄てることを禁じる動向にともない、斯かるゴミを処分するための新しい技術を開発することが必要になる。適正に処分されれば、WEEEは、二次原料の貴重なソースを提供することができる。例えば、WEEEの一般的な構成部材は、おびただしい種類のプラスチック並びに鉛、スズ、銅、珪素、ベリリウム、炭素、鉄、アルミニウム、カドミウム、水銀、タリウム、アメリシウム、アンチモン、ヒ素、バリウム、ビスマス、ホウ素、コバルト、ユーロピウム、ガリウム、ゲルマニウム、金、インジウム、リチウム、マンガン、ニッケル、ニオブ、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、セレン、銀、タンタル、テルビウム、トリウム、チタン、バナジウム、及びイットリウムなどの元素を含んでいる。しかしながら、適正に処分されなければ(例えば、ゴミ埋め立て地への廃棄)、WEEEの一般的な構成部材は、毒素及び発癌物質の大きなソースをもたらすことがある。
【0004】
それらの装置のしばしば複雑な多部品構造に起因して、安全で効率的かつ有効な態様でのWEEEの処分又は再利用は、今まで困難であることが証明されてきた。用いられてきた一つのアプローチは、WEEEを細断し、複雑な装置を用いて種々の金属及びプラスチック構成材料を分別することを含んでいる。しかる後、分別された構成材料は、金属及びプラスチックのリサイクル業者に売却される。しかしながら、細断された構成材料の複雑な混合物を分別するのに必要な装置は、非常に高価である。さらに、分別方法も完璧からはほど遠く、これがまた、「分別された」材料の用途を限定している。
【0005】
したがって、既存のWEEEの処分方法に伴う一以上の不都合又は欠点に対処する機会又は斯かる不都合又は欠点を改善する機会、あるいは、少なくとも有用な代替の方法を提供する機会は、まだある。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は、プラスチック及び金属構成部材を含む電気・電子機器の処分方法であって、
機器及び/又はその粉砕片を溶融加工して溶融加工物を作ることと、
溶融加工物を容器に移し、溶融加工物が揮発性炭化水素を遊離させて金属を含む不揮発性残留物を残すよう、遠赤外線を用いて溶融加工物を加熱することと、
揮発性炭化水素と不揮発性残留物の一方又は両方を後の使用のために捕集することを、
含む方法を提供するものである。
【0007】
本発明の方法により、不要な電気・電子機器を、安全で効率的かつ効果的な態様で処分することができるだけでなく、そうすることで、多くの貴重な二次原料を、機器から分離することができる。特に、電気・電子機器からのプラスチックは、捕集して石油製品として使用することのできる揮発性炭化水素に変換される。さらに、本方法によって生じる不揮発性残留物は、電気・電子機器からの金属を含んでいる。金属は、捕集した残留物からその後分離し精製して貴金属を含む種々の金属の貴重なソースをもたらす。
【0008】
揮発性炭化水素及び不揮発性残留物は、どちらも後の使用のために捕集されるのが一般的である。
【0009】
したがって、本発明は、本方法にしたがって製造された炭化水素及び本方法にしたがって製造された不揮発性残留物から分離された金属を提供するものである。
【0010】
電気・電子機器を処理するための一般的な技術と対照的に、本発明の方法は、プラスチック構成材料からの労力のかかる(diligent)金属構成材料の分離、又は金属及びプラスチックをそれらのそれぞれの種類に分別することを要しない。特に、電気・電子機器を溶融加工することができるのであれば、存在する金属及びプラスチック構成材料の量又は種類についての制限はない。金属及びプラスチック構成材料の両方を許容するこの能力は、機器の処理を非常に簡単にするものである。
【0011】
電気・電子機器を溶融加工した後、得られた溶融加工物は、溶融加工物が遠赤外線(FIR)に曝される容器に移される。FIRは、溶融加工物中のプラスチック材料を揮発性炭化水素に変換するための溶融加工物の加熱と、金属を含む不揮発性残留物を残すことを促進する。溶融加工物は、加熱の手段としてのFIRを用いて迅速に制御された態様で加熱できることが分かっている。本方法のこの工程は、プラスチック構成材料を金属構成材料から分離する簡単で効率的な手段として実際に機能する。
【0012】
プラスチック及び金属構成材料の労力のかかる分離を受けていない電気・電子機器原料を、原料中のプラスチックを揮発性炭化水素に変換するのにFIR加熱を用いることと組み合わせて、本発明の方法に用いる能力は、処分及び付加価値のある製品の原料からの回収の有効性、効率及び安全性をまとめて高めると考えられる。
【0013】
本発明の更なる面を、以下により詳細に説明する。
【0014】
本明細書において、本発明の実施の形態を、単なる例示として添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明による方法を行うのに用いることのできるシステムの工程系統図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による方法は、電気・電子機器の処分手段を提供するものである。「電気・電子機器」は、少なくともプラスチック及び金属材料から構成され、電気によって作動される一以上の機構(features)又は部品を備えた消費者製品を意味する。斯かる機器には、コンピュータ、プリンター、コピー機、スキャナー、電話、カメラ及び娯楽端末(entertainment devices)があるが、これらには限定されない。
【0017】
本方法は、機器の「処分」手段を提供するので、斯かる機器は、一般に不要であり、ゴミと考えられることが理解されよう。斯かる機器は、本技術分野において一般に「家電廃棄物」、「電子廃棄物」又は「用済みの電気・電子機器」(WEEE)と称する。便宜のため、本発明にしたがって用いられる電気・電子機器を、以下本明細書において、単にWEEEと称する。
【0018】
本発明にしたがって用いられるWEEEは、金属及びプラスチック構成部材の両方を備えている。一般に、広い範囲のプラスチック材料が、電気・電子機器の製造に用いられている。斯かるプラスチック材料には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリル酸エステル−スチレン−アクリロニトリル(ASA)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)、ポリスチレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリウレタン(PU)、エポキシ樹脂(EP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ナイロンなどのポリアミド(PA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、不飽和ポリエステル(UP)、並びにそれらの組み合わせ又はブレンドがあるが、これらに限定されない。
【0019】
これらのプラスチック材料の中で、ABS、ASA、HIPS、SAN及びPSなどのスチレン系プラスチック(styrenic plastics)、並びにPP及びPC、又はそれらのブレンドは、電子・電気機器の製造に用いられるプラスチックの大半を占めている。
【0020】
当業者は、従来のプラスチック材料の再利用技術は、通例、プラスチック材料を非プラスチック材料から分別することを必要とするだけでなく、分別したプラスチックをプラスチックの種類によって分けることも必要とすることを認められよう。電子・電気機器の製造に用いるプラスチックの多様な範囲に鑑みると、従来の再利用技術は、WEEEを加工するのには、多くの場合、適していない。
【0021】
対照的に、本発明による方法は、ほとんどのプラスチック材料の加工に耐えることができるだけでなく、プラスチック材料は、金属などの非プラスチック構成材料で不純になっていることがあり、したがって、本発明による方法は、WEEEの加工に特に適している。本発明にしたがって使用されるWEEEの種類/形態により、WEEEが溶融加工される前に、WEEEの一部又は全部を粉砕又は寸断することが必要なことがある。例えば、WEEEが溶融加工される前に、WEEEを圧砕又は細断などの粉砕過程にかけることができる。便宜のため、本明細書で使用される「WEEE」の用語は、そのままの及び/又は寸断されたWEEEを包含することを意図するものである。
【0022】
用いるWEEEの種類により、本発明の方法を実施する前に、原料から大きな金属及びガラスなどの非プラスチック構成材料を分別するのが望ましいこともある。例えば、使用済みの形態のWEEEは、最初にシュレッダー又はハンマーミルに通して機器を粉砕してもよい。次いで、得られる粉砕した機器を、篩い分け過程に通して、例えばガラス及びトナー粉末を取り除き、次いで、磁気及び渦電流分離法を用いて処理し、嵩張る又は大きい磁性の(例えば、第一鉄を主とするスチール(ferrous-mainly steel))及び非磁性の(例えば、主としてアルミニウム)金属構成材料を取り除くことができる。
【0023】
WEEEに存在する一般的な金属には、例えばハンダ又は鉛蓄電池の形態の鉛、例えば部品リードに施したハンダ及び皮膜の形態のスズ、ワイヤ、印刷回路板のトラック及び部品リードの形態の銅、例えば感光性抵抗器(light-sensitive resistors)及び耐蝕合金の形態のカドミウム、例えばヒートシンクの形態のアルミニウム、例えばスチールシャーシ、ケース及び備品の形態の鉄、例えばニッケルカドミウム電池の形態のニッケル及びカドミウム、スチール部品に施した皮膜の形態の亜鉛、例えばコンピュータ機器に主として用いられるコネクタメッキ(connector plating)の形態の金、銀、白金及びパラジウムなどの貴金属、並びに、例えばチルトスイッチの形態の水銀があるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の方法は、WEEEを溶融加工して、溶融加工物を作ることを含んでいる。「溶融加工」とは、WEEEのプラスチック構成部材を溶融状態に変えるように、溶融混合装置内でWEEEを加工することを意味する。
【0025】
溶融加工は、本技術分野で周知の技術と装置を用いて行うことができる。一般に、溶融加工は、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、他の多軸スクリュー押出機又はファレル連続ミキサーなどの連続押出装置を用いて行われる。
【0026】
WEEEのプラスチック構成部材を溶融状態にするため、溶融加工は、十分な時間、適当な温度で行われる。溶融加工が行われる温度は、一般に、加工するプラスチック構成部材の性質によることが、当業者はお分かりであろう。WEEEは、約220℃〜約260℃の範囲の温度で溶融加工されるのが一般的である。
【0027】
したがって、溶融加工するWEEEの組成物は、溶融加工を行うことができるよう、十分なプラスチック材料を含んでいることが認められよう。溶融加工するWEEEは、少なくとも約70重量%のプラスチック材料を含んでいるのが一般的である。電子・電気機器は、一般に、約20〜30重量%のプラスチック材料を含んでいるだけであるが、圧砕され処理さて大きな非プラスチック材料を取り除いた後は、WEEEのプラスチック含有量は、約70重量%に増加するのが典型的である。
【0028】
電気・電子機器の製造に用いられるプラスチック材料は、非常に多くの難燃剤などの添加剤を含んでいることがある。一般的な難燃剤には、ポリ臭化ビフェニル(PBB)及びポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)などの臭素化化合物がある。一般的な臭素化難燃剤には、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)、デカブロモジフェニルエーテル(DecaBDE)、オクタブロモジフェニルエーテル(OctaBDE)、及び1,2-ビス-トリブロモフェノキシエタン(TBPE)があるが、これらに限定されない。
【0029】
溶融加工するプラスチック材料における難燃剤の存在は、塩酸、臭化水素酸、並びに塩素化/臭素化されたジオキシン(dioxins)及びフランなどの毒性化合物の遊離をもたらすことがある。WEEEの溶融加工の間に、斯かる毒性化合物が発生する場合には、得られる溶融加工物におけるそれらの濃度を、溶融したWEEEを真空抽出過程(vacuum extraction process)にかけることにより、低下させることができる。例えば、一以上の真空ポンプに通気した押出機のような従来の溶融混合装置を用いて、WEEEを溶融加工することができる。溶融体から抽出された揮発性生成物は、コールドトラッピング及び/又はスクラビング(例えば、抽出された酸化合物を除去する苛性スクラバー)などの従来の技術を用いて安全に捕集することができる。
【0030】
本方法にしたがい、WEEEを溶融加工することによってできた溶融加工物は、次いで容器に移される。溶融加工物は、最初に集めて貯蔵した後、容器に移してもよいが、溶融加工物は、まだ溶融状態のうちに、直接容器に移すのが一般的である。
【0031】
本発明にしたがって用いることのできる容器の種類に関しては、容器が溶融加工物を容易に収容することができ、本方法の間に遭遇する化学的環境及び温度に耐えることができるのであれば、特に制限はない。容器は、例えば、ステンレス鋼製でよい。当業者は、通常、この容器を「熱分解反応器」と称する。
【0032】
容器はまた、溶融加工物から遊離された揮発性炭化水素を、捕集することができるようになっていてもよい。例えば、容器は、溶融加工物の上のヘッドスペースに位置する揮発性炭化水素の捕集を可能にするよう設計された少なくとも一つの出口を有しているのが一般的である。捕集された揮発性炭化水素は、オレフィン、パラフィン及び芳香族などの化合物の混合物であるのが典型的である。揮発性炭化水素は、例えば、C-C22炭化水素化合物の混合物を含んでいることがある。当業者は、斯かる化合物は、非常に多くの石油製品としてすぐに使用できることを、認められよう。一実施の形態では、捕集した揮発性炭化水素は、ディーゼル、ガソリン、及び液化石油ガス(LPG)留分の少なくとも一つを含んでいる。
【0033】
揮発性炭化水素を捕集するようになっているのに加えて、容器はまた、金属を含む不揮発性残留物の除去ができるようになっていてもよい。例えば、斯かる残留物を取り除くよう設計された少なくとも一つの出口が容器にあるのも一般的である。
【0034】
容器は、溶融加工物のむらのない加熱を促進するため、容器内の溶融加工物をかき混ぜる又は攪拌するための手段を備えていてもよい。例えば、容器は、容器内で回転して溶融加工物を攪拌する一以上の攪拌要素を備えていてもよい。
【0035】
本方法の重要な特徴は、揮発性炭化水素が溶融加工物から遊離されるように、溶融加工物が遠赤外線(FIR)を用いて加熱されることである。揮発性炭化水素は、単に、溶融加工物に既に存在する炭化水素の熱脱離により、及び/又は熱分解される溶融加工物中に存在するプラスチック材料により、溶融加工物から遊離させることができる。
【0036】
熱分解は、有機材料を揮発性炭化水素に変換するための周知の化学的プロセスである。熱分解は、水素ガスなどの非炭化水素揮発物の生成をもたらすこともある。
【0037】
従来の熱分解技術とは対照的に、本発明の方法は、溶融加工物が比較的低温で(例えば、溶融加工物を約360℃〜約450℃の範囲の温度に加熱することにより)熱分解されるのを可能にするものである。斯かる低い熱分解温度は、FIR(遠赤外線)から溶融加工物への効率的で有効な熱の伝達により達成することができる。
【0038】
溶融加工物の熱分解は、酸素の不存在下に行われるのが一般的であり、溶融加工物中のプラスチック材料の熱分解(thermal cracking)を促進するため、適当な触媒の存在下に行うことができる。
【0039】
FIRを用いて溶融加工物を迅速に加熱しその温度を制御し、次いで比較的低温で熱分解を行う能力は、溶融加工物中のプラスチック材料を揮発性炭化水素に変換する効率を向上させ、また容器内でのコークスの生成を減少させることが分かっている。理論によって限定されるのを望むことなしに、比較的低温と斯かる温度に曝される時間の短いことが、揮発性炭化水素の生成を最大限にし、また容器内でのコークスの生成を減少させると思われる。
【0040】
FIRによる溶融加工物の加熱は、いかなる適当な手段によって行ってもよい。例えば、一以上のFIRヒーターを、容器内に配置することができる。一般的に、複数のFIR ヒーターが、容器内に配置される。したがって、FIR ヒーターは、溶融加工物を加熱するための「内部」又は「直接」手段を提供するものであり、これは、従来の熱分解技術で用いられる「外部」又は「間接」手段と対照的である。
【0041】
FIRは、中赤外線とマイクロ波放射線との間にある電磁スペクトルの一部をなすことを、当業者は理解されよう。
【0042】
FIRのソースを提供するため、本発明にしたがって従来のFIRヒーターを用いることができ、好都合である。FIR ヒーターは、もちろん、本方法が遭遇する条件に耐えるよう構成されている。例えば、FIRヒーターは、適当な放射体化合物(emitter compound)で被覆されたステンレス鋼スリーブで外装されたセラミックロッド要素の形態でよい。FIR ヒーターは、溶融加工物と直接接して溶融加工物の効率的で有効な加熱を促進するよう、容器に対して配置することができる。
【0043】
溶融加工物から遊離された揮発性炭化水素は、いかなる適当な手段によって捕集してもよい。容器は、捕集した揮発性炭化水素をそれらの沸点によって分けることができるよう、還流カラム分留装置を備えるようになっているのが一般的である。所望であれば、向流吸収によりカラム内部の充填材を上昇する炭化水素蒸気からより高い沸点の留分(すなわち「重い」留分)を分けるため、より低い沸点の留分(すなわち、「より軽い」留分)をカラムの上部に導いてもよい。このようにして、より高い沸点の留分を、反応器に戻してさらに熱分解にかけることができる。
【0044】
捕集した炭化水素は、その後、種々の用途/製品に用いることができ、または、所望であれば、留分をさらにより特定の石油製品に分けるのに用いることのできる第二の還流カラム分留装置内で精製に供してもよい。
【0045】
本発明の方法は、ある割合の(大気圧で)非凝縮性の炭化水素、例えば、液化石油ガスの範囲における軽質炭化水素なども産するのが一般的である。斯かる炭化水素ガスは、燃焼させることによって処分することができる。そのほか、斯かる炭化水素ガスは、本発明の方法を実施するのに関わる動力供給装置用の電気を発生させることのできる発電ユニットに燃料供給するのに用いることができる。例えば、発生させた電気は、本方法に用いるFIRヒーターや他の加熱及びポンプユニットに動力供給するのに使用することができる。
【0046】
本方法にしたがって用いられるWEEEが、難燃剤が配合されたプラスチック材料を含んでいる場合には、容器に導入される溶融加工物は、難燃剤又はその分解生成物を含んでいることがある。先に示したように、溶融加工物における難燃剤分解生成物の量は、WEEEを減圧下で溶融加工することによって減少させることができる。
【0047】
WEEEを減圧下で溶融加工したにもかかわらず、得られる溶融加工物が、それでもやはり、難燃剤及び/又はその分解生成物を含んでいることがある。その場合には、FIRを用いた容器内の溶融加工物の加熱は、難燃剤及び/又はそれらの分解生成物を揮発させて遊離した炭化水素の汚染をもたらすことがある。したがって、容器から捕集された揮発性炭化水素生成物は、難燃剤化合物及び/又はそれらの分解生成物を含んでいることがある。捕集された炭化水素流における斯かる化合物の存在が望ましくない場合には、炭化水素を分別(fractionation)及び/又はスクラビングなどの従来の精製技術にかけて斯かる汚染物質を除去することができる。
【0048】
捕集した炭化水素を汚染することのある難燃剤及び/又はその分解生成物の量を減少さえるための代替又は追加の技術として、ゼオライト、例えばY−ゼオライトを溶融加工物とともに容器に導入することができる。特に、ゼオライトは、熱分解生成物から臭素化化合物を除去するそれらの能力で知られている。
【0049】
揮発性炭化水素を遊離させることに加え、本方法にしたがう溶融加工物の加熱は、金属を含む不揮発性残留物も生じさせる。残留物の金属含有量は、用いるWEEEの組成によって異なり、残留物の残りは、炭素質材料並びにセラミック及びガラスなどの何らかの他の不揮発性材料の形態であるのが一般的である。便宜のため、以下本明細書において、斯かる残留物を、まとめて「熱分解残留物」と称する。
【0050】
容器は、例えば容器の底に配置された出口弁によって、熱分解残留物を容易に取り除くようになっているのが一般的である。容器から取り除かれた熱分解残留物は、熱分解されていない(non-pyrolysed)プラスチック及び/又は重質遊離炭化水素などの残留有機材料を含んでいることがある。その場合には、今分離した残留物を、例えばFIRヒータートンネルを通過させることにより第二の加熱過程にかけることができ、それにより存在するあらゆる残留プラスチック又は炭化水素は、残留物から熱分解/揮発され、金属を含む比較的自由流動性のもろい熱分解残留物粉末を得る。この第二の加熱過程によって生成した揮発した炭化水素は、本方法にしたがって処理されるよう容器に再導入することができる。
【0051】
金属を含む今分離した熱分解残留物は、次いで、次の使用のために捕集することができる。例えば、残留物に存在する金属は、従来の分離/精製技術を用いて分離・精製することができる。その場合には、残留物を、最初に反射炉で処理してほとんどの存在する鉛を捕集することができる。次いで、得られるスラグを、亜鉛及びスズなどの金属を放出される蒸気流から捕集することができる高炉(blast furnace)で処理することができる。次いで、高炉固形物を、アノード炉で処理をして、残りの金属を通常アノードスライムと呼ばれるものに濃縮する。次いで、このアノードスライムを、電解精錬によって処理をし、他の金属を捕集することができる。例えば、スライムを、銅電解精錬によって処理して銅を捕集することができ、得られる浸出物(leach)は精錬され(smeltered)、残りの金属をまとめる(consolidate)。次いで、溶融された生成物を、銀電解精製にかけて銀を捕集することができる。この過程からのアノードスライムは、通常、貴金属(例えば、金、白金、パラジウム)濃縮物であり、これらの金属は、所望であれば従来の手段によってさらに精製することができる。
【0052】
本発明による方法は、連続、半連続又はバッチモードで行うことができる。本方法は、連続モードで行うのが一般的である。
【0053】
本発明による方法は、図1に示す工程系統図に概略的に示すシステムを用いて行うことができる。その場合には、WEEEが、押出機などの溶融混合装置(20)の供給口(10)に投入される。溶融混合装置は、溶融したWEEEから難燃剤及び/又はそれらの分解生成物などの揮発性成分を抽出するため、一以上の真空ポンプに通気していてもよい(図示せず)。得られる溶融加工物(図示せず)は、次いで、まだ溶融状態である間に、反応容器(reactor vessel)(30)に導入される。容器に導入された溶融加工物は、インペラ攪拌機などの混合要素(40)で攪拌することができる。
【0054】
本方法にしたがい、溶融加工物は、FIRによって加熱される。FIRは、複数のFIRヒーター(50)によって発生させるのが典型的である。FIRヒーターは、適当な放射体化合物(emitter compound)で被覆されたステンレス鋼スリーブで外装されたセラミックロッドを含むことができる。各FIR加熱ロッドは、12kWの最小加熱容量を有しているのが一般的である。溶融加工物は、通例、約360℃〜約450℃の範囲の温度まで加熱される。溶融加工物を加熱することは、溶融加工物に含まれる揮発性炭化水素及び熱分解によって生成した揮発性炭化水素の遊離を促進する。遊離した炭化水素(図示せず)は、還流カラム分留装置(70)の適当な位置(60)で捕集することができる。捕集した炭化水素は、スクラバー(図示せず)を通過させることにより、及び/又は第二の還流カラム分留装置(図示せず)に送り込むことにより、さらに精製することができる。更なる分別が、例えば、揮発性炭化水素を特定の石油製品に分けることを可能にする。
【0055】
捕集した揮発性炭化水素は、(大気圧で)非凝縮性の炭化水素、例えば、液化石油ガス(LPG)の範囲における炭化水素なども含んでいることがある。斯かる非凝縮性炭化水素は、還流カラム分留装置(70)の上部(80)から捕集されるのが一般的であり、燃焼させること(flaring)(図示せず)により処分してもよく、又は発電ユニット(図示せず)に燃料供給するのに用いてもよい。発電ユニットは、本方法に用いる装置と関わるFIRヒーター及び電動機に動力供給するのに用いることができる。
【0056】
容器には、容器から熱分解残留物を取り出すための出口(90)も、連結されている。容器から取り出された熱分解残留物は、熱分解されていない(non-pyrolised)プラスチック及び/又は重質遊離炭化水素などの残留有機材料を含んでいることがある。その場合には、熱分解残留物を、ヒートトンネル(100)に排出することができ、ヒートトンネルにおいては、FIR ヒーターなどの加熱要素(110)を、あらゆる揮発性炭化水素を追い出すのに及び/又はあらゆる残りの有機材料を熱分解させるのに使用することができる。あらゆる生成した揮発性炭化水素は、容器に再導入してもよい。この更なる加熱過程にかけると、もろい粉末(120)の形態の金属を含む熱分解残留物が生成する。
【0057】
金属を含む熱分解残留物(120)を、次いで、それに含まれる金属を分離・精製するため、さらに処理をしてもよい(図示せず)。
【0058】
斯かるシステムは、連続、半連続及びバッチモードで稼働させることができる。このシステムは、ほぼ密閉して稼働させることもでき、それにより大気への散逸を最小限にすることができる。
【0059】
本発明の実施の形態を、以下の非限定の実施例を参照して、さらに説明する。
【実施例】
【0060】
実施例1
主にプリンター及びコピー機を含むWEEEを、ブレントウッド・インダストリアル・シュレッダーズ・クヮッドシャフト(4軸)シュレッダー(Brentwood Industrial Shredders Quad-shaft (four shaft) shredder)を用いて細断した。次いで、裁断したWEEEから、金属分離(磁気及び渦電流)並びにスクリーニングにより、大きな金属及びガラスを取り除いた。得られた細断したWEEEの混合プラスチック含有量は、約85重量%であり、主としてHIPS、ABS、PC/ABS、ノリル(Noryl(PPO−PS))、及び幾分かのポリオレフィンを含んでいた。次いで、細断したWEEEを、ベント式押出機を用いて250℃で溶融加工し(押出し)、ステンレス鋼(SS316)製熱分解容器に直接投入した。次いで、溶融加工物を、43遠赤外加熱ロッドにより容器の内側から約425℃に加熱し(「内部加熱」)、プラスチック材料の熱分解を促進させた。熱分解の間に遊離した揮発性炭化水素を濃縮して捕集し、(溶融加工物の)約70(重量)%の液体を得た。この液体は、約50%のC11−C22(ディーゼル)に加えて約20%のエチルベンゼン及び約30%のスチレンの混合物からなっていた。残りの不揮発性残留物(溶融加工物の約30重量%)を、容器から取り出し、順次の炉/精錬(smelting)/精製過程によって処理し、以下の金属を得た。鉛(8%)、銅(7%)、鉄(7%)、銀(0.4%)、金(0.2%)(不揮発性残留物の重量%)、残りは炭素であった。
【0061】
本明細書及び後続の請求の範囲を通じ、文脈が他の意味を要求している場合を除き、「含む(comprise:三人称単数以外の現在形)」の語、並びに「含む(comprises:三人称単数現在形)」及び「含む(comprising:現在分詞)」等の変化形は、述べた整数又は工程或いは一群の整数又は工程を含むが、如何なる他の整数又は工程或いは一群の整数又は工程をも排除しないことを意味することが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック及び金属構成部材を含む電気・電子機器の処分方法であって、
機器及び/又はその粉砕片を溶融加工して溶融加工物を作ることと、
溶融加工物を容器に移し、溶融加工物が揮発性炭化水素を遊離させて金属を含む不揮発性残留物を残すよう、遠赤外線を用いて溶融加工物を加熱することと、
揮発性炭化水素と不揮発性残留物の一方又は両方を後の使用のために捕集することを、
含む方法。
【請求項2】
電気・電子機器を溶融加工する前に、電気・電子機器を粉砕過程にかける請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶融加工する前に、粉砕された電気・電子機器を、少なくとも磁性部材を粉砕された電気・電子機器から取り除く分別過程にかける請求項2に記載の方法。
【請求項4】
電気・電子機器及び/又はその粉砕片を、押出機を用いて溶融加工し、押出機が溶融物から揮発性化合物を取り除くよう一以上の真空ポンプに通気している請求項1〜3の何れか一つに記載の方法。
【請求項5】
真空ポンプによって取り除かれた揮発性化合物が、コールドトラップ内に捕集される及び/又は苛性スクラバーを通過させられる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
溶融加工が、約220℃〜約260℃の範囲の温度で行われる請求項1〜5の何れか一つに記載の方法。
【請求項7】
ゼオライトが、溶融加工物とともに容器に投入される請求項1〜6の何れか一つに記載の方法。
【請求項8】
遠赤外線が、各々少なくとも部分的に溶融加工物に浸されている複数の遠赤外線ヒーターによって供給される請求項1〜7の何れか一つに記載の方法。
【請求項9】
遠赤外ヒーターが、放射体化合物で被覆されたステンレス鋼スリーブで外装されたセラミックロッド要素の形態である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
溶融加工物が、遠赤外線によって約360℃〜約450℃の範囲の温度に加熱される請求項1〜9の何れか一つに記載の方法。
【請求項11】
揮発性炭化水素が、還流カラム分留装置を用いて捕集される請求項1〜10の何れか一つに記載の方法。
【請求項12】
捕集した揮発性炭化水素が、ディーゼル、ガソリン、及び液化石油ガス(LPG)留分の少なくとも一つを含んでいる請求項1〜11の何れか一つに記載の方法。
【請求項13】
捕集前に、不揮発性残留物が、容器から放出され遠赤外線を用いて加熱されてあらゆる残留揮発性炭化水素を追い出す請求項1〜12の何れか一つに記載の方法。
【請求項14】
捕集した不揮発性残留物に含まれる金属を精製すること及び分離することをさらに含む請求項1〜13の何れか一つに記載の方法。
【請求項15】
金属が、捕集した不揮発性残留物を一以上の反射炉、高炉、アノード炉、又は電解精製技術を用いて処理することにより、精製・分離される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
精製・分離された金属が、鉛、スズ、銅、カドミウム、アルミニウム、鉄、ニッケル、亜鉛、金、銀、白金及びパラジウムの一以上から選択される請求項14又は15に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−500110(P2012−500110A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523264(P2011−523264)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001055
【国際公開番号】WO2010/019993
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(511044135)ピー−フューエル リミテッド (1)
【Fターム(参考)】