説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】電気光学装置において、輝度ムラを低減するためのコンデンサを効率的なレイアウトで形成することにより、表示画像の高品位化を図る。
【解決手段】電気光学装置は、基板(10)上に、画素領域(10a)において、画素毎に配列された画素電極(9a)と、画素電極の下層側に第1誘電体膜(72)を介して対向配置されており、画素電極に対して保持容量を付加するための容量電極(71)と、周辺領域(10b)において、容量電極と同一膜で形成され、画素電極に画像信号を供給するための一の信号線を構成する第1導電層(500)と、第1導電層の上層側に第2誘電体膜(700)を介して対向配置され、画素電極と同一膜から形成された第2導電層(600)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶装置等の電気光学装置及び該電気光学装置を備えた、例えば電子ペーパ等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置では、基板上に、画素電極と、該画素電極の選択的な駆動を行うための走査線、データ線、及び画素スイッチング用素子としてのTFT(Thin Film Transistor)とを備えることにより、アクティブマトリクス駆動可能に構成されている。アクティブマトリクス駆動では、走査線に走査信号を供給することで前記TFTの動作を制御すると共に、TFTがON(オン)駆動されるタイミングでデータ線に画像信号を順次供給することによって、画像表示が実現される。
【0003】
ここで、画像信号が夫々供給される相隣接するデータ線間には、寄生容量に起因したプッシュダウン(即ち、画像信号電位の電圧降下)によって、例えばシリアル−パラレル展開された画像信号にて同時駆動されるブロックの境目などで、輝度ムラが発生するという問題点がある。この問題点に対し、特許文献1には、データ線にコンデンサを設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−125887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようにコンデンサを増設すると、基板上の積層構造が複雑化してしまい、液晶装置等の電気光学装置に要求される高精細化の要請に対応することが難しくなってしまうという問題点がある。一方、表示画像の高コントラスト化等を目的として、画素スイッチング用のTFTと画素電極との間に蓄積容量が設けられることがある。すると、基板上の積層構造は更に複雑となり、上記問題点は一層深刻なものとなってしまう。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、例えば相隣接するブロックの境界に
生じる輝度ムラを低減するためのコンデンサを効率的なレイアウトで形成することにより、高品位な画像表示が可能な電気光学装置及びそのような電気光学装置を具備してなる電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、基板上に、画素領域において、画素毎に配列された画素電極と、前記画素電極の下層側に第1誘電体膜を介して対向するように設けられており、前記画素電極に対して保持容量を付加するための容量電極と、前記画素領域の周囲に位置する周辺領域において、前記容量電極と同一膜から形成されており、前記画素電極に画像信号を供給するために用いられる一の信号線を構成する第1導電層と、該第1導電層の上層側に第2誘電体膜を介して対向するように設けられ、前記画素電極と同一膜から形成された第2導電層とを備える。
【0008】
本発明の電気光学装置では、基板上に、例えば、走査線、データ線等の配線や画素スイッチング用のトランジスタ等の電子素子が、絶縁膜を介して相互に絶縁されつつ必要に応じて積層されることで画素電極を駆動するための回路が構成され、その上層側に画素電極が配置されている。電気光学装置の動作時には、例えば、走査線を通じて、画素電極に電気的に接続された画素スイッチング用のTFTのスイッチング動作が制御されると共に、データ線を通じて画像信号が供給されることで、該TFTを介して画素電極に対し、画像信号に応じた電圧を印加する。これにより、複数の画素電極が配列された画素領域(又は「画像表示領域」や「画素アレイ領域」とも呼ぶ)における画像表示が可能となる。
【0009】
容量電極は、画素電極の下層側に第1誘電体膜を介して対向するように設けられることにより、保持容量を形成している。即ち、本発明における画素電極は、例えば液晶等の液晶分子の配向状態を制御するという本来の画素電極としての機能を有することに加えて、保持容量(又は「蓄積容量」や「付加容量」とも呼ぶ)を構成する一対の容量電極のうち一方の容量電極としての機能を兼ねるように形成されている。このように保持容量を形成することで、駆動電圧の保持特性を高めることによって画質の向上を図ると共に、基板上の積層構造をシンプルにすることができるので、電気光学装置の製造コストの削減や高精細化に貢献することができる。
【0010】
基板上で平面的に見て、画素領域の周囲には、例えば画素領域に配置された画素スイッチング用のTFTを駆動するための駆動回路や、画素電極に画像信号に対応する駆動電圧を供給する電圧供給回路等を配置するための周辺領域が設けられている。本発明に係る電気光学装置は、その周辺領域に、次に説明する第2容量電極及び導電層が設けられている。
【0011】
第1導電層は、周辺領域に配置されており、画素領域に形成された容量電極と同一膜から形成されている。ここで、「同一膜」とは、電気光学装置の製造工程において同一機会に成膜される膜を意味し、同一種類の膜である。即ち、周辺領域における第2容量電極は、その製造工程において、画素領域における第1容量電極と同一機会に成膜される。また、本発明において「同一膜から形成され」とは、一枚の膜として連続していることまでも要求する趣旨ではなく、基本的に、同一膜のうち相互に分断されている膜部分であれば足りる趣旨である。即ち、周辺領域における第1導電層と、画素領域における容量電極とは、同一機会に形成されているが、互いに分断されていてもよい。これにより、製造工程における特定のプロセスで容量電極及び第1導電層を形成することができるので、製造コストの削減を図ると共に、基板上の積層構造におけるレイアウトの簡素化又は効率化を図ることができる。
【0012】
このような第1導電層は、例えば、画像信号の導電路となるデータ線或いは画像信号線などの、画素電極に画像信号を供給するのに直接的に用いられる一の信号線を構成してもよいし、例えば、画像信号を供給する駆動回路を動作させるための或いは該駆動回路の一部などの、画素電極に画像信号を供給するのに間接的に用いられる一の信号線を構成してもよい。
【0013】
第2導電層は、周辺領域において、第1導電層の上層側に第2誘電体膜を介して対向するように設けられている。即ち、第2導電層は、下層側に形成されている第1導電層との間に第2誘電体膜を挟持することにより、コンデンサを形成している。このように設けたコンデンサをデータ線に直接的又は間接的に、電気的に接続することによって、画像信号が夫々供給される相隣接するデータ線間に発生する寄生容量に起因したプッシュダウン(即ち、画像信号電位の電圧降下)によって、ブロックの境目で輝度ムラが発生することを抑制することができる。なお、ここにいう「ブロック」とは、典型的には、シリアル−パラレル展開或いは相展開された画像信号にて同時駆動されるブロックの意味であるが、それに限らず、データ線に画像信号が供給される際の系列に対応する領域を意味してもよい。
【0014】
また、周辺領域に形成される第2導電層は、画素領域に形成される画素電極と同一膜から形成されている。ここで、画素領域における画素電極は、画素毎に駆動電圧を印加するという性質上、画素毎に島状に形成されているため、第2導電層は画素電極と一枚の膜として連続して形成されているのではなく、相互に分断されて形成される。このように第2導電層を形成することにより、製造工程における特定のプロセスで第2導電層及び画素電極を形成することができるので、製造コストの削減を図ると共に、基板上の積層構造におけるレイアウトの簡素化又は効率化を図ることができる。
【0015】
以上説明したように、本発明に係る電気光学装置によれば、画素領域において画質を向上させるための保持容量を形成しつつ、同時に、周辺領域において、効率的なレイアウトでプッシュダウンを抑制するためのコンデンサを形成することができる。
その結果、電気光学装置の製造コストの削減や高精細化に対応しつつ、高品位な画像表示が可能な電気光学装置を実現することができる。
【0016】
本発明の電気光学装置の一態様では、前記第1導電層は、前記画素電極に画像信号を供給する一の信号線を構成する導電層であり、前記第2導電層は、前記一の信号線に対して配線容量を付加するための導電層である。
【0017】
この態様によれば、第1導電層から、画像信号を供給する一の信号線(即ち、画像信号線の一部やデータ線の一部など)が構成される。このような一の信号線に対して、第2導電層によって配線容量が付加される。よって、周辺領域における第1導電層及び第2導電層によって、ノイズが低減された画像信号の安定供給が、可能とされる。
【0018】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記第2導電層は、所定の電位に保持されている。
【0019】
この態様によれば、第2導電層が所定の電位に保持されることにより、第2導電層は、より下層側に配置された配線や素子等に対して、「電磁シールド」として機能する。ここで、「所定の電位」とは、例えば、固定電位若しくは所定電位、又は所定周期で反転する電位である。つまり、仮に第2導電層の上層側に電磁ノイズの発生源が存在する場合であっても、第2導電層の下層側に配置された配線や素子等は、第2導電層によって電磁ノイズが遮断されることにより、影響を受けることはない。特に、画像信号が供給される配線等が電磁ノイズの影響を受けると、画像信号の波形等が乱れ、表示画像の画質低下を引き起こす原因となる。そこで、本態様では、シールド電極として機能する第2導電層の下層側には、画像信号が供給される一の信号線を構成する第1導電層を配置することで、当該第1導電層に対する外部からの電磁ノイズの影響を軽減或いは防止することができる。その結果、第1導電層は、一の信号線の少なくとも一部として、画像信号を安定に伝達することができるので、高品位な画像表示が可能な電気光学装置を実現することができる。
【0020】
上述の第2導電層が所定の電位に保持される態様では、前記第2導電層より下層側に、画像信号が供給される他の信号線が配置されていてもよい。
【0021】
この態様によれば、第1導電層を含んで構成される一の信号線の他に、電磁シールドとして機能する第2導電層より下層側に、別途、画像信号が供給される他の信号線を配置してもよい。この場合、他の信号線も、第1導電層と同様に、上層側に配置された第2導電層によって電磁ノイズを遮断することができるので、他の信号線は画像信号を乱されることなく、安定に伝達することができる。
【0022】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記第1誘電体膜は、前記第2誘電体膜と一体的に形成されている。
【0023】
この態様によれば、同一機会に形成される、周辺領域における第2容量電極と画素領域における第1容量電極とは、互いに分断されておらず、一枚の膜として連続して形成されている。そのため、電気光学装置の製造工程において、第1誘電体膜と第2誘電体膜とを分断するためのエッチング工程を少なくとも一工程減らすことができるので、より製造コストの削減を図ると共に、基板上の積層構造におけるレイアウトの簡素化又は効率化を図ることができる。このような誘電体膜は、同一の熱工程により製造可能な熱酸化膜であってもよいし、これに代えて又は加えて窒化膜であってもよい。
【0024】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記画素電極、前記容量電極、前記第1導電層及び前記第2導電層は共に、透明な導電性材料から形成されている。
【0025】
この態様によれば、画素領域に配置される画素電極及び容量電極は透明な材料で形成されているので、開口領域(即ち、画素のうち表示光が透過する領域)に配置されたとしても、表示光を遮ることがない。従って、画素電極及び容量電極を含んで構成される保持容量を開口領域に広く形成することができるので、より容量値の大きい保持容量を形成することが可能となる。その結果、画素の保持特性を向上させることができ、より高品位な画像表示が可能な電気光学装置を実現することができる。
【0026】
一方、周辺領域では画像表示に寄与する表示光が透過することはないため、第1導電層及び第2導電層を透明な導電性材料で形成する必要は、必ずしもないが、上述のように、画素電極及び容量電極と夫々同一膜で形成することにより、より製造コストの削減を図ると共に、基板上の積層構造におけるレイアウトの簡素化又は効率化を図ることができる。
【0027】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記透明な導電性材料はITOである。
【0028】
この態様によれば、画素電極、第1容量電極、第2容量電極及び導電層は共に、透明導電材料の一例であるITO(Indium Tin Oxide)で形成される。
【0029】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置(但し、その各種態様も含む)を備える。
【0030】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、高品質な画像を表示することが可能な、投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置等も実現することも可能である。
【0031】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態に係る電気光学装置の平面図である。
【図2】図1のH−H´断面図である。
【図3】本実施形態に係る電気光学装置の主要な電気的接続構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係る液晶装置に複数の画素部の平面図である。
【図5】図5のA−A'断面図である。
【図6】本実施形態に係る液晶装置の周辺領域における容量部付近の積層構造を、画像表示領域における積層構造と比較して示す断面図である。
【図7】電気光学装置を適用した電子機器の一例たるプロジェクタの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。以下の実施形態では、本発明の電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
【0034】
<液晶装置>
先ず、図1及び図2を参照しながら、本実施形態に係る液晶装置1の具体的な構成を説明する。図1は、TFTアレイ基板10をその上に形成された各構成要素と共に対向基板20の側から見た液晶装置1の概略的な平面図であり、図2は、図1のH−H´断面図である。
【0035】
図1及び図2において、液晶装置1は、TFTアレイ基板10と、TFTアレイ基板10に対向配置された対向基板20とを備えて構成されている。TFTアレイ基板10及び対向基板20間には液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10及び対向基板20は、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52を介して相互に接着されている。
【0036】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
【0037】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0038】
画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域10bのうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺のいずれかに沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。尚、走査線駆動回路104を、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102が設けられたTFTアレイ基板10の一辺に隣接する2辺に沿って設けるようにしてもよい。この場合、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿って設けられた複数の配線によって、二つの走査線駆動回路104は互いに電気的に接続される。
【0039】
対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。これら上下導通端子及び上下導通材106により、TFTアレイ基板10及び対向基板20間で電気的な導通をとることができる。
【0040】
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に配向膜が形成されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。尚、液晶装置1は、サンプリング回路の他にプリチャージ回路を備えていてもよい。
【0041】
次に、図3を参照しながら、液晶装置1の電気的な接続構成を説明する。図3は、液晶装置1の主要な電気的接続構成を示すブロック図である。
【0042】
図3において、液晶装置1は、TFTアレイ基板10の周辺領域10bに走査線駆動回路104、データ線駆動回路101、サンプリング回路200、検査回路701、画像信号線171及び容量部CAを備えている。
【0043】
走査線駆動回路104は、YスタートパルスDYが入力されると、Yクロック信号CLY及び反転Yクロック信号CLYinvに基づくタイミングで、走査信号Y1、・・・、Ymを順次生成して出力する。データ線駆動回路101は、XスタートパルスDXが入力されると、Xクロック信号CLX及び反転Xクロック信号XCLXinvに基づくタイミングで、サンプリング信号S1、S2、・・・、Snを順次生成して出力する。走査線駆動回路104及びデータ線駆動回路101の夫々は、TFTアレイ基板10上における画像表示領域10aの周辺領域に形成された複数のTFTを含むシフトレジスタ等の信号処理手段を備えている。
【0044】
サンプリング回路200は、データ線6毎に設けられた複数のサンプリングスイッチ202を備えている。サンプリングスイッチ202は、例えば、電気的に直列に接続された2つのTFTから構成されており、これらTFTの夫々は、Pチャネル型又はNチャネル型の片チャネル型TFTである。
【0045】
液晶装置1は、TFTアレイ基板10の中央を占める画像表示領域10aに、縦横に配線されたデータ線6a、走査線3a及び容量配線400を備えている。画素部700は、データ線6a及び走査線3aが互いに交差に対応する位置にマトリクス状に設けられている。画素部700は、液晶素子118、画素電極9a、及び画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT30、並びに保持容量70を備える。容量配線400は、不図示の定電位源に電気的に接続されている。容量配線400に供給される電源の電位は、画素電極9aに対向配置された対向電極21に供給される対向電極電位LCCOMである。容量配線400は、保持容量70を構成する一方の電極に電気的に接続されている。この一方の電極の電位は、液晶装置1の駆動時に対向電極電位LCCOMに維持される。保持容量70は、液晶素子118と並列に付加されていることによって、画素電極9aの電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも、例えば3桁も長い時間だけ保持されるので、保持特性が改善される結果、高コントラスト比が実現される。
【0046】
画像信号線171の夫々は、サンプリング回路200を介して各々対応するデータ線に電気的に接続されている。外部回路から供給された1系統の入力画像データVIDをシリアル−パラレル変換して得られるN系統の画像信号は、サンプリング信号Siに応じてオンオフが切り換えられるサンプリングスイッチ202を介して画像信号線171の夫々に供給される。N系統の画像信号は、例えば、不図示の画像信号供給回路等の信号変換手段を用いて一系統の入力画像データを変換することによって生成される。
【0047】
本実施形態では、1系列のシリアルな画像信号は、12系列のパラレルな画像信号に、シリアル−パラレル変換或いは展開されている。即ち、1系列の画像信号VIDから、12系統、即ち12相(N=12)の画像信号VID1〜VID12が生成され、これら12相に画像信号に対応して画像信号線171は12本設けられている。更に、不図示の画像信号供給回路において、画像信号VID1〜VID12の各々の電圧が、基準電位である対向電極電位LCCOMに対して正極性及び負極性に反転され、このように極性反転された画像信号VID1〜VID12が出力されてもよい。
【0048】
検査回路701は、データ線6aに電気的に接続されており、検査信号を各画素部700に供給する。
【0049】
容量部CAは、複数のコンデンサC(i)(i=1、2、・・・、n×N,nは2以上の自然数であり、k=1、2、・・・、Nである)を備えている。複数のコンデンサC(i)は、容量配線400及び各データ線6aに電気的に接続されており、サンプリングスイッチ202がオン状態に切り換えられた際に、データ線6に供給された画像信号電位が本来供給されることが想定或いは予定されている画像信号の電位に比べて、小さくなること(即ち、プッシュダウン)を低減或いは防止する。
【0050】
画像表示領域10aにおけるデータ線6aは、検査回路701側の周辺領域10bにおいて信号線500に電気的に接続されている。信号線500には、コンデンサC(i)が電気的に接続されている。
【0051】
次に、本実施形態に係る液晶装置1の、画像表示領域10aにおける具体的な積層構造について、図4及び図5を参照して詳しく説明する。図4は、本実施形態に係る液晶装置1の画像表示領域10aにおける、電気光学動作を行うために配置された電極及び配線等の位置関係を透過的に示した模式図である。図5は、図4のA−A´線断面における積層構造を示す断面図である。尚、図4及び図5では、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0052】
図4において、画素電極9aは、TFTアレイ基板10上に、マトリクス状に複数設けられており(点線部9a'により輪郭が示されている)、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a及び走査線3aが設けられている。データ線6aは、例えばアルミニウム膜等の金属膜あるいは合金膜からなり、走査線3aは、例えば導電性のポリシリコン膜等からなる。また、走査線3aは、TFT30を構成する半導体層1aのチャネル領域1a'に対向するように配置されており、該走査線3aはゲート電極として機能する。走査線3aとデータ線6aとの交差する箇所にはそれぞれ、チャネル領域1a'に走査線3aの本線部がゲート電極として対向配置された画素スイッチング用のTFT30が設けられている。
【0053】
TFTアレイ基板10上に形成された遮光膜11は、TFTアレイ基板10上で平面的に見て、TFT30の半導体層1aを含むように半導体層1aより幅広に形成されている。遮光膜11は半導体層1aより下層側に配置されているので、このように遮光膜11をTFT30の半導体層1aよりも幅広に形成することによって、TFTアレイ基板10における裏面反射や、複板式のプロジェクタ等で他の液晶装置から発せられ合成光学系を突き抜けてくる光などの、戻り光に対してTFT30のチャネル領域1a´を殆ど或いは完全に遮光できる。その結果、液晶装置の動作時に、TFT30における光リーク電流は低減され、コントラスト比を向上させることができ、高品位の画像表示が可能となる。
【0054】
図5に示すように、遮光膜11は下地絶縁膜12によって覆われており、その表面が平坦化されている。尚、下地絶縁膜12は、TFTアレイ基板10の表面研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用のTFT30の特性変化を防止する機能も有している。
【0055】
TFT30は、半導体層1aと、ゲート電極として機能する走査線3aとを有して構成されている。半導体層1aは、ソース領域1s、チャネル領域1a´、ドレイン領域1dを含んで形成されている。ここで、 チャネル領域1a´とソース領域1s、又は、チャネル領域1a´とドレイン領域1dとの界面にはLDD(Lightly Doped Drain)領域が形成されていてもよい。
【0056】
TFT30のゲート電極として機能する走査線3aは、TFTアレイ基板10上で平面的に見て、半導体層1aのチャネル領域1a´と重なる領域にゲート絶縁膜2aを介して対向するように配置されている。走査線3aは、例えば導電性ポリシリコンから形成されており、走査信号が印加されることによってTFT30をオン/オフ制御している。
【0057】
半導体層1aのうちソース領域1sは、ゲート絶縁膜2a、第1層間絶縁膜41及び第2層間絶縁膜42に開孔されたコンタクトホール81を介して、上層側に形成されたデータ線6aに電気的に接続されている。
【0058】
半導体層1aのうちドレイン領域1dは、ゲート絶縁膜2a及び第1層間絶縁膜41に開孔されたコンタクトホール83を介して中継層8に電気的に接続されている。更に中継層8は、第2層間絶縁膜42及び第3層間絶縁膜43に開孔されたコンタクトホール85を介して、上層側に形成された画素電極9aに電気的に接続されている。
【0059】
データ線6a上には第3層間絶縁膜43が積層されており、その更に上層に容量電極71が形成されている。容量電極71は、本発明における「容量電極」の一例であり、容量配線400に電気的に接続されることにより、固定電位に保持されている(図3参照)。
【0060】
容量電極71と画素電極9aとの間には、本発明における「第1誘電体膜」の一例である第1容量絶縁膜72が挟持されており、保持容量70が形成されている。このように、画像信号に対応する電圧が印加される画素電極9aに接続される保持容量70を設けることによって、画素電極9aの電圧を、実際に画像信号が印加されている時間よりも、例えば3桁も長い時間だけ保持することが可能となり、液晶素子の保持特性が改善されるため、高コントラスト比を有する液晶装置を実現することができる。
【0061】
本実施形態では特に、画素電極9aは、保持容量70を構成する一対の容量電極のうち一方の容量電極を兼ねるように形成されている。即ち、画素電極9aは、液晶50を構成する液晶分子の配向状態を制御するという本来の画素電極としての機能を有することに加えて、保持容量70の一方の容量電極としても機能する。従って、例えば仮に一対の容量電極を有する蓄積容量と画素電極とを別個に設ける場合に比べて、TFTアレイ基板10上の積層構造をシンプルにすることができる。
【0062】
また、容量電極71及び画素電極9aは透明な導電性材料であるITOから形成されているため、これらを開口領域に配置されても、透過光を遮断することはない。そのため、開口領域及び非開口領域の両者に渡って形成することができるので、容量値を有する蓄積容量を形成することができる。
【0063】
次に、図6を参照して、本実施形態に係る液晶装置において周辺領域10bにおける容量部CA付近の積層構造について説明する。
【0064】
図6は、周辺領域10bにおける容量部CA付近の積層構造を、画像表示領域10aにおける積層構造と比較して示す断面図である。尚、図6では、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。また、図6では説明の便宜上、画像表示領域10aにおけるTFT30及び容量電極71以外の詳細な積層構造、及び、周辺領域10bにおけるコンデンサ(i)以外の詳細な積層構造については表示を省略している。
【0065】
画像表示領域10aにおいては、図5を参照して説明したように、TFTアレイ基板10上に下地絶縁膜12を介して画素スイッチング用のTFT30が画素部700毎に配置されている。TFT30の上層側には、所定の絶縁膜等(図6において省略)を介して、容量電極71が複数の画素部700に渡って広く形成されている。そして、容量電極71上には、同じく複数の画素部70に渡って第1容量絶縁膜72が広く形成されており、その上に画素部700毎に島状に画素電極9aが形成されている。このように下層側から容量電極71、第1容量絶縁膜72及び画素電極9aが積層させることによって、保持容量70が形成されている。
【0066】
一方、周辺領域10bには、画像表示領域10aにおける容量電極71と同層に、画像信号が供給される信号線500が形成されている。信号線500は、本発明における「第1導電層」の一例であり、画像表示領域10aにおけるデータ線6aに電気的に接続されている(図3参照)。
【0067】
シールド電極600は、画像表示領域10aにおける画素電極9aと同層に形成されている。シールド電極600は、本発明における「第2導電層」の一例であり、画像表示領域10aにおける容量配線400(図3参照)に電気的に接続されることにより、固定電位に保持されている。このようにシールド電極600を固定電位に保持することにより、下層側に配置された信号線500や他の配線・素子等に対して、電磁シールドとして機能している。つまり、仮にシールド電極600の上層側に電磁ノイズの発生源があっても、シールド電極600より下層側に配置された信号線500や他の配線・素子等は、シールド電極600によって電磁ノイズが遮断されるので、影響を受けることはない。仮に、信号線500などの画像信号が供給される配線・素子が電磁ノイズの影響を受けると表示画像の画質低下を引き起こす原因となってしまうが、このようにシールド電極を設けることによって電磁ノイズの遮断することができるので、電磁ノイズの影響を受けにくい高品位な画質表示を実現可能な液晶装置1を実現させることができる。
【0068】
シールド電極600及び信号線500間には第2容量絶縁膜700が挟持されており、プッシュダウンを抑制するためのコンデンサC(i)を形成している。
【0069】
本実施形態では特に、第2容量絶縁膜700は、画像表示領域10aにおいて保持容量70を形成している第1容量絶縁膜72と一体的に(即ち、同一膜で)形成されている。このように第2容量絶縁膜700を形成することにより、本実施形態に係る液晶装置を製造する際に、第1容量絶縁膜72と第2容量絶縁膜700とを分断するためのエッチング工程を少なくとも一工程減らすことができるので、より製造コストの削減を図ると共に、基板上の積層構造におけるレイアウトの簡素化又は効率化を図ることができる。
【0070】
<電子機器>
次に、上述した電気光学装置である液晶装置を各種の電子機器に適用する場合について説明する。以下では、液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。ここに図7は、プロジェクタの構成例を示す平面図である。
【0071】
図7に示すように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106および2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gに入射される。
【0072】
液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、RおよびBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。したがって、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
【0073】
ここで、各液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0074】
なお、液晶パネル1110R、1110Bおよび1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
【0075】
尚、図7を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0076】
また本発明は、上述の実施形態で説明した液晶装置以外にも、シリコン基板上に素子を形成する反射型液晶装置(LCOS)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等にも適用可能である。
【0077】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う半導体装置及びその製造方法、電気光学装置及びその製造方法、並びに該電気光学装置を備えてなる電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
1a…半導体層、1a'…チャネル領域、1s…ソース領域、1d…ドレイン領域、2a、2b…ゲート絶縁膜、3a…走査線、6a…データ線、9a…画素電極、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、10b…周辺領域、11a…遮光膜、30…TFT、41、42、43…層間絶縁膜、50…液晶層、70…蓄積容量、71…容量電極、72…第1容量絶縁膜、500…信号線、600…シールド電極、700…第2容量絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、
画素領域において、画素毎に配列された画素電極と、
前記画素電極の下層側に第1誘電体膜を介して対向するように設けられており、前記画素電極に対して保持容量を付加するための容量電極と、
前記画素領域の周囲に位置する周辺領域において、前記容量電極と同一膜から形成されており、前記画素電極に画像信号を供給するために用いられる一の信号線を構成する第1導電層と、
該第1導電層の上層側に第2誘電体膜を介して対向するように設けられ、前記画素電極と同一膜から形成された第2導電層と
を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第1導電層は、前記画素電極に画像信号を供給する一の信号線を構成する導電層であり、前記第2導電層は、前記一の信号線に対して配線容量を付加するための導電層であることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第2導電層は、所定の電位に保持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記第2導電層より下層側に、画像信号が供給される他の信号線が配置されていることを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記第1誘電体膜は、前記第2誘電体膜と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記画素電極、前記容量電極、前記第1導電層及び前記第2導電層は共に、透明な導電性材料から形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記透明な導電性材料は、ITOであることを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記1から7のいずれか一項に記載の電気光学装置を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−210786(P2010−210786A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55120(P2009−55120)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】