説明

電気湯沸し器

【課題】沸騰動作時に発生する高温の水蒸気を熱交換させて水に戻し、放出される蒸気に使用された電気エネルギーを有効に回収する。
【解決手段】本体1と、本体の内部に収容された湯沸し用容器2と、この容器の上面開口を開閉自在に閉塞する蓋体4と、前記容器を加熱する電気加熱源5と、蓋体4で閉塞した状態の容器2内部から加熱源5の加熱動作中に発生する蒸気を復水化作用で回収するための水が溜められ、かつ当該水を取り出せるタンク6とを備え、このタンクは本体1から取り外し可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭や事務所等で使用されることに適した電気湯沸かし器に関するもので、特に湯沸しに発生する蒸気を冷却して復水する機能を持つ新規な電気湯沸し器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な家庭用電気湯沸かし器は、円筒形の外郭ケースと内側ケースからなる二重壁の間を真空断熱構造にしたり、あるいは外郭ケースと内側ケースの間に断熱材を介在させたりして筒型形状の本体を形成し、この本体内部に、上面開口形の有底湯沸し容器と、この容器の底壁を外部から加熱するシーズヒータ等の扁平形状をした電気加熱源とを設け、前記容器の上面開口を開閉自在に閉鎖する蓋体の一端部を前記本体の上端部に枢軸を介して保持させるという基本的構造を有していた。なお、内側ケースを省略して湯沸し容器の周囲を断熱構造にし、また湯沸し容器の底壁自体を無くし、電気加熱源の天板部分が湯沸し容器の底壁を構成するようにしたものもある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記容器内部には使用者によって最初は規定された量(1〜2リットル程度)の水が入れられ、前記加熱源で容器が熱せられてお湯になるが、このお湯は前記容器の底部に吸込口が開口した電気的に駆動される送水装置(小型の遠心ポンプ)で吸引され、この送水ポンプからのお湯は、前記本体内部で前記容器の外側空間を上下に貫通し、終端開口が下向きになっている送水路の中に供給され、送水路の終端開口から出せるようになっている。また前記蓋体には湯沸し時に前記容器内に発生する多量の水蒸気をそのまま室内空間に放出させるための蒸気抜き孔が形成されている。
【0004】
また前記の電気的に駆動される送水装置(小型の遠心ポンプ等)に代え、又は併用する形で、前記蓋体に手動のベローズポンプを設け、使用者の押圧動作でベローズポンプが圧縮されることで、前記蓋体で密閉された容器内の空気圧力が上昇し、これでお湯の表面が押し下げられて手動でお湯が取り出せるという湯沸し器も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
このような従来の電気湯沸し器の何れも、その湯沸し過程は水から沸騰状態になるまで電気加熱源には最大電力(例えば1KW)が連続して供給され、また沸騰状態になっても水道水に含まれる塩素の匂いを飛ばすため等の理由から沸騰状態が数分間継続し、その後保温モードに移行するという制御が行われている。このため水温の上昇に伴って水蒸気が発生し始め、その後の沸騰段階で最高発生量となり、さらに前記した保温モードに移行したあとでも、使用者が熱湯を欲しい場合は再度沸騰モードが選択されて沸騰状態になり、またお湯が減って水を足した場合には、湯温が低下するから、再度沸騰状態になるように加熱源が制御されるから、この種の湯沸し器においては日常における高温蒸気の放出量は相当あり、この放出される蒸気に使用された貴重な電気エネルギーを無駄にしているという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3888340号公報
【特許文献2】特開2008−61795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする問題点は、湯沸し時に水蒸気の電気エネルギーを大気放出によって浪費してしまう点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電気湯沸し器は、本体と、本体の内部に収容された湯沸し用容器と、この容器の上面開口を開閉自在に閉塞する蓋体と、前記容器を加熱する電気加熱源と、蓋体で閉塞した状態の前記容器内部から加熱源の加熱動作中に発生する蒸気を復水化作用で回収するための水が溜められ、かつ当該水を取り出せるタンクとを備え、このタンクは前記本体から取り外し可能としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電気湯沸し器によれば、湯沸し用容器の内部から加熱源の加熱動作中に発生する蒸気を復水化作用でタンクに回収してお湯にすることができる。しかもそのタンクが本体から取り外し可能となっているので、タンク内に回収した蒸気で生成されたお湯も有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明に係る電気湯沸し器の全体構成を示す斜視図(実施の形態1)。
【図2】図2は第1図のA−A線縦断面図(実施の形態1)。
【図3】図3は第1図のB−B線の部分縦断面図(実施の形態1)。
【図4】図4は図1の電気湯沸し器の使用状態を示す斜視図(実施の形態1)。
【図5】図2は第1図のA−A線縦断面図とその要部拡大縦断面図(実施の形態1)。
【図6】図6は図1の電気湯沸し器の使用時にタンクを外した状態を示す斜視図(実施の形態1)。
【図7】図7は図1の電気湯沸し器の本体上面の拡大平面図(実施の形態1)。
【図8】図8は図1の電気湯沸し器の制御手段の全体構成を示すブロック図(実施の形態1)。
【図9】図9は本発明に係る別の電気湯沸し器の全体構成を示す縦断面図(実施の形態2)。
【図10】図10は本発明に係るさらに別の電気湯沸し器の全体構成を示す縦断面図(実施の形態3)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明において、電気加熱源の「通電条件」とは、加熱するための電気的、物理的な条件をいい、通電時間、通電量、加熱温度、通電パターン(連続通電、断続通電等)等を総称したものである。
【0012】
また表示とは、文字や記号、イラスト、色彩や発光有無や発光輝度等の変化により、使用者に動作条件や通電条件、湯沸しに参考となる関連情報(異常使用を注意する目的や異常運転状態の発生を知らせる目的のものを含む)を視覚的に知らせる動作をいう。
表示手段とは、特に明示のない限り、液晶(LCD)や各種発光素子(半導体発光素子の一例としてはLED(発光ダイオード)、LD(レーザダイオード)等)、有機電界発光(Electro Luminescence)素子など)を含む。このため表示手段の意味には、液晶画面やEL画面等の表示画面を含んでいる。
報知とは、表示又は電気的音声(電気的に作成又は合成された音声をいう)により、制御手段から発令される湯沸しや保温等の各種動作条件や関連情報を使用者に知らせる動作をいう。
【0013】
報知手段とは、特に明示のない限り、ブザーやスピーカ等の可聴音による報知手段と、文字や記号、イラスト、あるいは可視光による報知手段とを含んでいる。
【0014】
以下、図1〜図8に示した本発明に係る電気湯沸し器の実施の形態1について説明する。これらの図に示すように、本実施の形態1に係る電気湯沸かし器は、本体1と、本体の内部に収容された湯沸し用容器2と、この容器の上面開口3を開閉自在に閉塞する蓋体4と、前記容器2を加熱する電気加熱源5と、蓋体で閉塞した状態の前記容器2内部から加熱源の加熱動作中に発生する蒸気を復水化作用で回収するための水が溜められ、かつ当該水を取り出せるタンク6とを備え、このタンクは前記本体1から取り外し可能としたものである。
【0015】
前記本体1の上部前方には庇状の張出部7が形成され、この張出部にある前方に行くに従って下がった傾斜面には各種操作スイッチ(後述する)の操作ボタンや湯沸し・保温動作表示用の液晶画面等を備えた操作部8が配置されている。
【0016】
前記蓋体4は、後端部がヒンジ機構9によって支持されており、反対に前方端部はロック機構10によって前記張出部7に係合自在に保持される構成になっているため、ヒンジ機構9を中心として開閉自在である。ロック機構10については後で詳しく述べる。
【0017】
図1に示すように、本体1の右側には本体1の右側面底部から一体に水平に張出した支持台11が形成されており、この支持台の上に前記タンク6が着脱自在に載置されている。11Aはこの支持台の上面最外周縁に連続的に形成した案内凸部で、前記タンク6を載せる際にその底部を円滑に案内できるために設けてあり、タンク6が正しい位置で載置された状態では、タンク6の底部外周面に接触又は近接した状態になり、タンク6の不必要な前後左右の移動を抑制する。
【0018】
前記タンク6は、透明なプラスチック材料で有底の角筒状に一体成型されたタンク本体6Aと、このタンク本体の上面開口6Dを閉塞するための半透明なプラスチック材料で一体成型された蓋6Bとから構成されている。なお、図示していないが、蓋6Bの下面にはシリコンゴム等の耐熱性と弾力性に富む材料で形成されたシール部材が固定されており、そのため蓋6Bをタンク本体6Aの上部開口に被せた際にはタンク6の内部と外部を気密状態に仕切ることができる(但し、蓋6Bには復水化作用で水量が増えることも想定し、タンク6内を大気圧に維持するための直径1〜2mm程の空気孔が、図示していないが1〜数個程度形成されている)。
【0019】
6Cはタンク本体6Aの前壁に縦に細長く形成した水位確認窓で、この窓部分を透明加工するか又は貫通口を設けてそこに透明な板を水密状態に嵌め込むことで形成されている。このタンク6前面の水位確認窓6Cの真横には、下限水位HLを示すマークと、上限水位HLを示すマークが表示されており、沸騰動作を始める前には下限水位LLと上限水位HLの間の水量をタンク6に準備して欲しい旨の説明文が記載されている。この注喚起は後述する操作部8に液晶文字等で沸騰動作開始前に表示するようにしても良い。又は後述する液晶画面41に表示させても良い。なお、蓋6Bを外せば水は前記開口6Dより取り出すことができるので、この開口を「取り出し口」と称する場合があるが、蓋6Bを取り外す動作を不要にするため、使用者が操作できる弁(コック)を備えた取り出しパイプを設けても良い。そうすれば弁を操作することでその取り出しパイプからタンク6内の水又はお湯を取り出すことが容易になる。
【0020】
12は、前記蓋6Bの下面から一体成型で下方へ垂直に形成された下部接続管(「下部連通管」と呼ぶこともある)で、その最下端開口12Aがタンク6に所定量溜められた水W2の中に所定の深さに没するようになっている。このように下部接続管12の下端開口12Aを、タンク6の水中の一定深さに位置させている訳は、仮に水没深さを適切に設定せず、必要深さより浅かった場合、下端開口12Aから放出された水蒸気をタンク6内の水に十分に接触させることができず、蒸気処理不良となる為である。従って、水中に没する深さは、容器2からタンク6に供給される水蒸気の全てを復水できるように設定されており、具体的には、蒸気気泡の吹き上がる速さと、蒸気が冷えて水に戻る速さとから決定される。
13は下部接続管12の上端部と蓋下面との間に横に広がるように形成された密閉された部屋、14はこの部屋の天井部に形成された接続口である。
【0021】
15はL字形状を呈している上部接続管(「上部連通管」と呼ぶこともある)であり、その一端開口部は前記接続口14に接続され、他端開口部は前記蓋体4の内部空間16に連通している。この上部接続管15は全体が一定の剛性を有するように耐熱プラスチックや金属で形成されているが、金属の場合はその表面全体を断熱性材料で覆うことでその表面に水蒸気の熱が伝わりにくくしている。これは使用者が触れた場合を想定し、表面温度を下げるためである。
【0022】
17は蓋体4の下面全体を覆っている金属製仕切板17であり、この仕切板の上方が前記内部空間16になる。17Aは仕切板17の右側部分、すなわち前記上部接続管15の端部の近い部分に一定範囲で多数形成してある小さな径の貫通孔である。なお、前記下部接続管12と上部接続管15を総称して「蒸気導管」又は「連通管」と呼ぶことがある。また上部接続管15や部屋13、又は蓋体4の内部空間16には、沸騰モードが終了した際に後述する給湯ポンプ27で容器2内のお湯が吸い込まれた際、内部空間16が負圧にならないように本体1の外の空気を導入できる工夫がしてあり、例えば上部接続管15に負圧になると開放する逆止弁や所定温度以上の場合だけ自動的に閉鎖する形状記憶合金の弁体、あるいは蓋体4に空気弁(沸騰動作中は内部空間16の空気圧力で閉じられているものや電磁的駆動で閉鎖されているもの等)を設ける等の構成が採用されている。
【0023】
前記上部連通管15は、図4の矢印で示すように上端部を中心として全体が90度以上回動可能となるように前記蓋体4に支持されている。その回動支持構造は具体的には図4に示すように、蓋体4の右側壁面に形成された嵌合孔にシール材18により外周面が保持されたものである。なお、上部接続管15は耐熱性プラスチックや金属で形成されているが、金属で形成した場合は、使用者が触れた場合のことを想定し、表面全体を耐熱性・断熱性素材、例えばプラスチックで覆うなどの工夫をしており、使用者が直接掴む動作をしても安全である。
【0024】
図5において、19は電磁ソレノイドであり、仕切板17の下面に固定された金属ケース20の内部に格納されている。19Aはこのソレノイドの動作時にそれに内蔵した電磁コイルの力で下方へ所定寸法移動するプランジャー軸(以下、「ロック棒」という)であり、ソレノイド19が動作した状態では内蔵したコイルバネ等の付勢力に抗して図5に示す位置まで突出し、前記上部連通管15に設けた孔15Aの中に入る。このためソレノイド19の動作時には上部連通管15はソレノイド19のロック棒19Aと孔15Aとの係合によって上部連通管15は図4に示したように回動しないようにロックされる。ソレノイド19が動作しない(非通電)状態では前記したコイルバネ等の付勢力によってロック棒19は図5に示す位置から下方に後退し、上部連通管15に設けた孔15Aの中から出る。このためソレノイド19の非動作時には使用者が手で操作すれば上部連通管15は図4に示したように回動させることができる。なお、このような上部接続管15の回動を阻止する電磁ソレノイド19を中心とした機構を「パイプロック手段21」と呼ぶ。
【0025】
22は、支持台11に設けたタンクセンサー(以下、「タンク検出手段」という)で、タンク6が規定通り載置された場合にはそのタンク6の底面で押されて「タンク6が有る」との検知信号を発する。なお実際にタンク6の有無を検出する原理は、タンク6の重量を検知するために例えば圧力を電圧に変換する素子を使用したり、あるいはタンク6の底面に磁気的な識別情報を埋め込み、この情報を磁気的に読み取る素子を設けたりする等色々あるが、本発明の主な目的とするところではないので詳しい説明は省略する。またタンク6の重量を検知する方式にした場合、タンク6の内部に収容された水の量を検知できる「水量センサー」にもなる。
【0026】
23Hは、前記本体1の外郭ケースのタンク6に臨む側に設置した水量センサーで、タンク6が正常に載置された場合にはそのタンク6に収容された水の量が規定量以上あるかどうかを検知する。発光ダイオード等の発光素子と、この素子からの光を受ける受光素子とを設け、水の有無で変化する受光状態から水の有無を検知するという方法が一例としてある。水量センサーは図2に示しているように、タンク6の所定の高さHLにおいて水の有無を光で検知するものである。なお、タンク6の所定の高さLLにも水の有無を光で検知するように水量センサー23Lを設けている。以下の説明では23Hを「上限水位センサー」、23Lを「下限水位センサー」と呼び、この両者を総称して「水位検知手段23」と呼ぶことがある。
【0027】
24は、前記本体1の外郭ケースのタンク6に臨む側に設置した水温センサーで、タンク6の側壁面温度を非接触で検知する赤外線放射センサーや、タンク6の側壁面に感温部を接触させて直接温度を検知する接触式センサー(サーミスタ等)が使用されている。なお、この水温センサーは支持台11に設けた前記タンクセンサー22の近傍に設置しても良い。またタンクセンサー22と兼用させ、例えばT℃以上の温度が検出された場合は、タンク6があることと同時にタンク6温度がT℃であり、このT℃からタンク6内の水温を(予め実験で確かめたデータに基づいて)推測することでも良い。なお、水温センサー24は以下の説明では「第二温度検知手段」と呼ぶ。
【0028】
25は、本体1の外郭ケースの正面側に形成された水位確認窓で、透明なアクリル樹脂等で形成されると共に、光学的に凸レンズ形状になっている。26はお湯の出口側となる端部が前記張出部を貫通して下向きに開口した出水管で、お湯の入口側端部は前記蓋体4の下面に露出している。構造的には図示していないが、前記本体1における容器2の下方空間には電気的に駆動される送水装置としての小型遠心型の給湯ポンプ27(図8参照)が内蔵され、この給湯ポンプ27で吸い込まれたお湯は、給湯ポンプ27の出口に接続された給湯管で前記出水管26の入口まで送られる。なお、蓋体4の開放・閉塞に伴い、給湯管の最終端部開口と前記出口管26の入口側端部開口が分離されたり、水密的に接続されたりする構造になっている。また給湯管は少なくとも前記水位確認窓25の真後ろに対応する部分は透明なプラスチック材料で形成されているため、給湯ポンプ27が停止しているときには、容器2の中のお湯の量(レベル)がその給湯管の中のお湯のレベルを見れば本体1の外部から容易に確認できるようになっている。
【0029】
図2、図5において30は、前記容器2の底壁外面に接触するように設置された温度センサーで、以下の説明では「第一温度検知手段」と呼ぶ。
前記加熱源5は、扁平な渦巻き状のシーズヒータから形成された1KW程度の定格電力の沸騰ヒータ5Aと、前記タンク6を数10℃程度に保温する能力がある小電力の保温ヒータ5B(図8参照)とから構成されており、この沸騰ヒータが前記第一温度検知手段の周囲を囲むようにして前記容器2の底壁外面に密着して設置されている。なお、沸騰ヒータ5Aはシーズヒータのような輻射式ヒータでなくとも良く、例えば電磁誘導加熱式(INDUCTION HEATING)でも良い。また保温ヒータは数10W程度の定格電力のものが使用されている。保温ヒータ5Bに電磁誘導加熱式を採用する場合は、タンク6の全部又は一部の壁面を電磁誘導加熱される金属材にて構成する必要がある。
【0030】
前記蓋体4のロック機構10について図3を中心に説明する。
31は、蓋体4の上面壁に固定された枢軸32を中心として図3に矢印で示すように後端部側が使用者により持ち上げられる解除レバー、33はこの解除レバーの下端部を圧縮用コイルバネ34で常に押圧する掛け金で、その先端は前記本体の張出部7後部から後方へ連続して形成された傾斜壁35の係合段部に係合するようになっている。解除レバー31の後端部を持ち上げる操作をすると掛け金33はコイルバネ34の付勢力に抗して後退させられ、前記係合段部との係合関係が解除されるので、蓋体4を本体1の張出部7から離れるように上記解除レバー31に手を掛けたまま持ち上げることができる。36は解除レバー31の後端部を持ち上げる操作をする場合の手掛け動作をしやすいように蓋体4の上面を凹ませて形成した窪み部である。
【0031】
図3において、37は電磁ソレノイドであり、前記掛け金33の直下で前記張出部7の傾斜壁35下方空間に設置されている。38はこのソレノイドの動作時にそれに内蔵した電磁コイルの力で前方へ所定寸法移動するプランジャー軸(以下、「ロックピン」という)であり、ソレノイド37が動作した状態では内蔵したコイルバネ等の付勢力に抗して図3に示す位置まで突出し、前記傾斜壁35に設けた孔を貫通し、窪み部39に形成した貫通孔39の中に入る。ソレノイド37の非動作時には、ソレノイド37のロックピン38は前記したコイルバネ等の付勢力で後退し、貫通孔39との係合を解除して蓋体4の前方端部を本体1側に機械的にロックして閉じられた状態を解除できる。なお、このソレノイドは沸騰動作時に不用意に蓋体4が使用者によって開けられないようにするためのものであり、動作タイミングなどは後で詳しく述べる。前記した蓋体4のロック機構10(以下、蓋ロック手段ともいう)はこのようなソレノイド37、掛け金33、コイルバネ34などから構成されている。
【0032】
40は前記操作部8の表面全体を覆う保護シート(図3参照)、41はこの操作部に配置した液晶画面で、容器2の中の湯温を数字で表示する表示部42とタンク6の中の水又はお湯の温度を数字で表示する表示部43とを有している。なお、この液晶画面を駆動するための液晶基板は張出部7の天井壁面の裏側(下側)に配置してある。
【0033】
44は給湯ポンプ27の稼動を指令する給湯スイッチ(図示せず)の操作ボタン、45は沸騰ヒータ5Aに通電を指令する再沸騰スイッチ(図示せず)の操作ボタン、46は保温ヒータ5Bに通電を指令する保温スイッチ(図示せず)の操作ボタン、47は前記蓋ロック手段10のソレノイド37とパイプロック手段21のソレノイド19の通電と断電を指令するロック操作スイッチ(図示せず)の操作ボタンで、1回押すとロック解除(ソレノイド19、37を共に非作動状態する)、もう1回押すとロック(ソレノイド19、37を共に作動状態する)ものである。以後押す毎にこの動作を繰り返す。
【0034】
次に制御装置について図8を参照しながら説明する。
50は制御手段であり、商用電源から所定の低い電圧の電力が供給される電源部51と、この電源部の電力で動作するマイクロコンピュータを主体とした処理部52とから構成されている。この処理部は不揮発性メモリからなる記憶部と、入力部及び出力部とから構成されている。記憶部には湯沸かし器の各種動作を決定する制御プログラムと、このプログラムが動作過程で読み出して利用する制御データ等が格納されている。
【0035】
53は入力手段であり、使用者によって操作され入力指令信号が処理部52に読み込まれものである。この入力手段は、前述した操作部8の給湯スイッチの操作ボタン44や再沸騰スイッチの操作ボタン45、保温スイッチの操作ボタン46、ロック操作スイッチの操作ボタン47等から構成されている。
54は前記温度センサー30と表示部42から構成された第一温度表示手段、55は前記水温センサー24とこの表示部43から構成された第二温度表示手段である。
【0036】
前記入力手段53からの指令信号や、第一温度検知手段30と第二温度検知手段24及び水位検知手段23からの各検知出力信号は前記処理部52の入力部(図示せず)に供給され、前記処理部52の出力部(図示せず)から第一温度表示手段54、第二温度表示手段55や沸騰ヒータ5A、保温ヒータ5B、給湯ポンプ27、蓋ロック手段10、パイプロック手段21等に対して所定の指令信号が供給される。
【0037】
次に、本実施の形態1の動作について説明する。
本実施の形態に係る湯沸かし器は、最初に容器2に所望の水を入れる。前記容器2は最大湯沸し容積が2リットルの場合は、使用者によって最初は規定された量(2リットル以下)の水が入れられることが望ましい。図2ではそのようにして水位がW1になっている状態を示す。
【0038】
一方、前記タンク6にも所定の量の水を最初に入れておく。例えば図2に示したように下限水位LLが300ccで、上限水位HLが500CCに設定されている場合、水位確認窓6Cの脇に表示してある容量目盛を見て上記下限と上限の間になるように水を入れる。図2ではそのようにして水位がW2になっている状態を示す。
【0039】
前記処理部52の制御プログラムによって、
(1) 前記第一温度検知手段30の検出温度が低い場合は水であると判定される。
(2) 前記第二温度検知手段24の検出温度が低い場合は水であると判定される。
(3) 前記タンクセンサー22はタンク6が正常位置に置かれた場合は、タンク6がある場合の信号を出し、タンク6があると判定される。
【0040】
以上のような条件が揃った場合、前記処理部52の制御プログラムは次に、
(4) 前記蓋ロック手段10を動作させる信号を出し、蓋体4を閉鎖状態にする。
(5) 前記パイプロック手段21を動作させる信号を出し、上部接続管16を所定の位置にする。この所定の位置とはタンク6と接続された位置である。
【0041】
以上のような動作指令をさせた後で、前記処理部52の制御プログラムは次に、
(6) 前記沸騰ヒータ5Aを動作させる信号を出し、定格最大電力(例えば1KW)の連続通電を開始させる。
(7) 前記第一温度表示手段54に、前記第一温度検知手段30が検出した温度を表示させる指令を出す。
(8) 前記第二温度検知手段24に、前記第二温度検知手段24が検出した温度を表示させる指令を出す。
【0042】
以上のような動作指令によって、容器2中の水の沸騰モードが開始され、水位W1の水は急速に温度上昇させられてお湯になり、やがて沸騰状態になる。
前記第一温度表示手段54には、容器2内部のお湯の温度が前記第一温度検知手段30により随時検出され、その温度がリアルタイムで表示される。
【0043】
湯沸モードが実行されているときには、容器2の上部開口3は蓋体4の内側にある内蓋ともいうべき仕切板17により閉成されており、加熱によって容器2内部から発生した水蒸気は、その仕切板17の貫通孔17Aから集中的に排出され、上部接続管15を通ってタンク6に導かれる。
【0044】
タンク6には予め一定の水位(下限水位LL)以上で、かつ上限水位HL以下の水が溜められており(例えば350CC)、前記蓋6Bの下面から一体成型で下方へ垂直に形成された下部接続管12の最下端開口12Aがタンク6内の水中に所定の深さに没するようになっているから、上部接続管15を通ってタンク6に導かれた蒸気は、下部接続管12の最下端開口12Aから出た瞬間にタンク6内の冷却水に接触して瞬時に温度が下がり、水面W2まで上昇する前にその殆ど全てが結露して蒸気から水となる。水となった蒸気は、回収水としてタンク6内に貯留される。湯沸し量と100℃以上の沸騰時間を何分間継続するかにもよるが、1回の湯沸しモードによって発生した蒸気が水として回収される量は、100CC以下である。したがって、湯沸しを行うと、タンク6内の水量が増加する。
【0045】
一方、タンク6では前記したような高温蒸気が所定時間連続して供給されるためその蒸気が復水化する過程で熱エネルギーを受け、最初から溜めていた水も次第に温度上昇する。このタンク6の水温上昇は、前記第二温度検知手段24により随時検出され、その温度が前記第二温度表示手段55にリアルタイムで表示される。
【0046】
以上のような沸騰状態は、前記第一温度検知手段30の検出温度が100℃以上になることで検知されるから、前記処理部52の制御プログラムによりその沸騰開始の時間を基準にして処理部の内蔵タイマーによって経過時間がカウントされる。そして沸騰状態が所定時間(例えば2分間)継続すると、前記処理部52は次に、
(9) 前記沸騰ヒータ5Aの最大火力通電を停止させる指令信号を出し、沸騰ヒータ5Aで保温動作を行わせるために通電条件を変更する。例えば数10W程度で連続通電し、又は数100W程度を断続的に印加するという通電条件に変更になる
(10)前記保温ヒータ5Bを動作開始させる指令信号を出す。
これにより沸騰ヒータ5Aによる沸騰モードが停止して保温モードに移行し、一方タンク6の保温ヒータ5Bには通電が開始されて別の保温モードが開始される。
【0047】
一方、タンク6は着脱自在に構成されているため、タンク6を取り外す場合には、本体1の操作部8にあるロック操作スイッチの操作ボタン47を押すと、ロック解除(ソレノイド19、37を共に非作動状態)になるから、上部接続管15を図6に示すように回動させてタンク6との接続状態を解除し、タンク6を別の場所に持ち運ぶことができる。なお、このロック解除をすると、ロック機構の操作スイッチの操作ボタン47による信号を利用して、前記保温ヒータ5Bの通電を一時的に遮断されるよう前記処理部52の動作プログラムが構成されている。つまりまたタンク6との接続をしてロックすれば保温が再開される。この場合、タンク6が戻されたことはタンクセンサー22が検知して処理部52へ信号を送る。
【0048】
タンク6を取り外す前には、前記第二温度検知手段24により検出された温度が前記第二温度表示手段55にリアルタイムで表示されるので、タンク6の中の水がどの程度の温度のお湯になっているかどうかは目視で使用者が確認できる。
【0049】
前記処理部52は、保温ヒータの通電開始からの経過時間がその内蔵タイマーによってカウントされる。そして保温状態が所定時間(例えば60分間)継続すると、前記処理部52は次に保温ヒータ5Bを停止させる指令信号を出す。これは長時間通電しているとタンクからの放熱でタンク6の中の水温(湯温)が低下するからである。但し、タンク6の周囲を断熱構造(断熱材で覆うことや周囲の壁を二重にすること、更には二重壁の間を真空にすること等)にすればタンク6の保温性能も高まるので、保温時間をより長く設定することが可能となる。
【0050】
本実施の形態に係る湯沸かし器は、最初に前記タンク6にも所定の下限水量以上で、上限水量以下の水を最初に入れておいた場合にのみ湯沸し動作が開始される。例えば図2に示したものでは350CCを入れたので、水位検知手段23の上限水位センサー23Hは「規定以下でOK」との検知信号を処理部52に送り、下限水位センサー23Lは「規定以上でOK」との検知信号を処理部52に送るから、これら2つの水位検知条件が同時に存在した場合にだけ前記処理部52の制御プログラムは沸騰モードを指令する。言い換えると、上限水位センサー23Hが規定した上限水位を超える水量がある場合、又は下限水位センサー23が規定する下限水位未満の少ない水量では、何れも沸騰動作は開始されない。
【0051】
万一、沸騰動作開始された後で、上限水位センサー23Hによって水位がオーバーする事態が検知された場合、そのまま復水化を継続するとタンク6から水や湯が溢れる事態を招く懸念があるので、この場合処理部52は沸騰モードの途中で緊急停止又は通電量を制限して供給される火力を低下させる指令を発する。
【0052】
また、沸騰動作開始された後で、下限水位センサー23Lによって水位が異常に低下した事態が検知された場合、タンク6にひび割れや孔が開いた懸念も想定されるので、そのまま復水化を継続するとやはり水や湯が漏れる事態を招く懸念があるので、この場合も処理部52は沸騰モードの途中で緊急停止させる指令を発する。この場合は保温ヒータ5Bへの通電も開始されない。
【0053】
もし沸騰モードが終了して保温モードに移行したあと、本ロック操作スイッチの操作ボタン47を押して、ロック解除(ソレノイド19、37を共に非作動状態)にしていないにも拘わらず、同様にタンク6の水位の異常低下が検知された場合も保温ヒータ5Bへの通電を緊急停止する。
【0054】
図9は本発明に係る電気湯沸し器の実施の形態2を示す縦断面図である。
この実施の形態2では、タンク6の構造を二重壁構造にして断熱性を高め保温性能を向上させた点が前記した実施の形態1と異なったところである。図9において60はタンク6を構成するプラスチック製壁面の外側全体に、断熱性材料を巻きつけ、または接着して形成した断熱壁である。これによれば、タンク6の水を沸騰過程の段階の復水化作用でお湯にした場合、その状態を(保温ヒータ等で加温しなくても)長時間維持させることが可能となる利点がある。
【0055】
この実施の形態2では、前記実施の形態1におけるタンクセンサー22や水位検知手段23の水量センサー(上限水位センサー)23H、水量センサー(下限水位センサー)23L、水温センサー(第二温度検知手段)24等は何れも図示していないが、それらを具備させており、前記実施の形態1における湯沸し動作と同様な動作を行う。また断熱性を高め保温性能を向上させているので、この実施の形態2では処理部52は、保温ヒータの通電開始からの経過時間が例えば4時間経過するまでは保温ヒータ5Bを通電する信号を出して保温動作を継続させる。
【0056】
図10は本発明に係る電気湯沸し器の実施の形態3を示す縦断面図である。
この実施の形態2では、タンク6を載置するための支持台11の上面に保温ヒータ5Bを設けた点が前記した実施の形態1、2と異なったところである。ここでいう保温ヒータとしては例えば、表面全体が電気絶縁材料で被覆された面状ヒータが用いられている。この実施の形態3によれば、タンク6の中の水がお湯に変換されたあと、その状態をこの保温ヒータ5Bでタンク6底部分から直接加温するので、効率良く保温動作を行わせることができる。なお、保温ヒータ5Bに使用者が直接触れても、あるいは水を滴下させても安全なように、保温ヒータの少なくとも上面全体が電気絶縁性材料で被覆され、その被覆材表面の温度が60度以下になるように制御されている。
【0057】
その他の実施の形態としては図示していないが、連通管を構成する上部接続管(下部連通管)15とタンク6との接続を、本体1の蓋体4が前記容器2の上面開口を閉塞した状態と開放した状態の何れにおいても維持するようにしても良い。例えば前記蓋体4下面と本体1の上面開口3との間(両者の対向空間内)に上部接続管15の先端開口(蒸気導入口)を位置させたり、ヒンジ機構9のある後部において蓋体4の内部から側壁面を貫通するように上部接続管15を引き出したり、あるいは上部接続管15を屈曲性や伸縮性に富むチューブにする構成にすれば良い。これによれば蓋体4を開く時に前記実施の形態1(図4参照)のように上部接続管15を回動させたり、タンク6と接続を解除する必要がなくなる。
【0058】
また前記タンク6における水やお湯の雑菌繁殖を抑制するため、タンク6の少なくとも内側表面全体に抗菌処理を施したり、タンク6の内部に抗菌材を置いたりすることも考えられる。あるいは、タンクの内壁面に光触媒層の皮膜を形成し、タンク6の外部には発光源、例えば特殊な波長域の光を出す発光ダイオードを設け、前記光触媒皮膜に発光ダイオードから光を与えて光触媒を励起させ、その酸化還元反応で殺菌するような方法を用いても良い。要するに無味、無臭で人体に無害であればその抗菌処理や除菌方法には制限がない。前記した水量センサー23L、23Hに光を用いる場合は、このような光源を抗菌、除菌作用にも兼用するようにしても良い。
【0059】
以上説明したように、実施の形態1〜3の具体的な構成に対応して以下のような効果が期待できる。
まず、連通管を構成する下部接続管(下部連通管)12を、タンク6の内部において所定水位の水中に没する形態にしてあることにより、タンク6の横幅や奥行寸法を大きくすることなく、連続的に放出される容器2側からの高温水蒸気を熱交換させて水に変換させることができる。
【0060】
また、上部接続管15が前記蓋体4の内部に貫通するように設けてあることにより、容器2の中で沸騰したお湯の一部が上部接続管15からタンク6側へ出ることを防ぐことができる。つまり水蒸気だけを覆水化してタンク6に回収できる。
【0061】
また、上部接続管(上部連通管)15は、蓋体4が前記容器2の上面開口を閉塞した状態と開放した状態の何れにおいても蓋体4内部とタンク6内部空間とを連通するように連結されていることにより、常にタンク6と容器2の内部空間との接続を維持でき、また蓋体4の開閉時に本体1側とタンク6側との接続を解除したり、接続したりする動作を不要にできる。
【0062】
また、前記連通管を構成する下部接続管12は、前記タンク6の内部に垂直に設置され、蒸気が放出される末端開口部である下端開口12Aが当該タンク6に溜められた水中に、所定以上の深さで没するようにしたので、連続的に放出される容器2側からの高温水蒸気を熱交換させて水に変換させることができる。仮に十分な深さにしなかった場合(下部接続管12を水中に斜めに挿入し、その蒸気が放出される末端開口部が水中の浅い位置にある場合を含む)は、放出される水蒸気は水と十分接触しない間に水面から出てしまい、結局復水処理不良となる。そこで水蒸気の気泡の浮き上がる速度と、水蒸気が水との接触で冷却されて水に戻る速度とを実験などで確かめて、所定の深さ以上に下部接続管12の末端開口部が位置するようにしてある。これによりタンク6の横幅や奥行寸法を大きくすることなく、効率良く復水化作用を行わせることができる。
【0063】
また、本体1から前記タンク6を取り外す場合、当該タンク6と連通管の一部である前記上部接続管15との接続を解除可能にし、この状態で当該接続管15は蓋体4側に保持されるので、タンク6の取り外し時に上部接続管15を使用者が保持し続けることは不要である。
【0064】
また、本体1から前記タンク6を取り外す場合、タンク6と上部接続管15との接続を解除可能にし、この状態で当該接続管15は蓋体4側に保持されるとともに、加熱源の一部である沸騰ヒータ5Aによる湯沸し動作中には、前記タンク6と上部接続管15との接続を解除できないように規制する蓋のロック機構(蓋ロック手段)10と、これを制御する処理部52を有しているので、沸騰状態で水蒸気が大量に発生している状態でのタンク6の取り外しを防止し、安全性を高めている。
【0065】
さらに、前記タンク6と前記蓋体4又は本体1との間には、両者の分離を阻止する第1のロック機構となるソレノイド19を備え、本体1には蓋体4の開放を阻止する第2のロック機構となるソレノイド37や掛け金33等を備え、前記第2のロック機構のソレノイド37が(処理部52によって)解除動作されている状態で前記第1のロック機構のソレノイド19が解除されるようになっているので、沸騰状態で水蒸気が大量に発生しているような状態で蓋体4が本体1に閉じた状態にロックされている場合には、同時にタンク6の取り外しも阻止され、使用者が不用意に蓋体4を開けたり、タンク6を外すことを防止し、沸騰時の水蒸気に触れたりすることがないようにしており、安全性を高めている。
【0066】
前記タンク6は、容器2内に収容した最大許容量の水(例えば2リットル)を沸騰状態になるまで前記加熱源によって所定時間加熱した場合、当該沸騰過程で発生する水蒸気の復水化により増加する水量を収容する容積に設定されているので、容器2に最大許容量の水を入れて沸騰させても復水化作用で増えた水がタンク6から溢れ出ることがない。
【0067】
前記タンク6には、その外周壁面の少なくとも一部に、収容された水の量を目視で確認できる水量確認窓(水位確認窓)6Cがあるので、お湯を沸かせる動作を開始する前にタンク6の水量が適正水量になっているかどうかを使用者は目視で確認できる。
【0068】
また、前記タンク6には、その内部に収容した水の量を検知する下限水位センサー(最低水量センサー)23Lを設け、当該センサーが所定の水量が無い状態を検知した場合、前記加熱源5による湯沸し動作を禁止する指令を出す処理部52を設けたので、この処理部52が、タンク6に水が所定量無い状態での湯沸し動作を禁止する通電禁止部の役目を果たすから、タンク6の十分な水が無い状態での湯沸し動作を防止できる。これにより沸騰過程の途中で、本体1から供給される大量の水蒸気でタンク6の中の水が加熱され、タンク6内の水も高温のお湯になってしまい、水蒸気を冷却して復水化作用を行うことができなくなるという事態を避けることができる。なお、タンク6の水が所定温度を超えると、タンクがプラスチックで形成されていた場合はその変形や破損を招いたり、使用者に不安感を抱かせたりする懸念もあるので、水量が確保された状態でのみ沸騰ヒータ5Aに通電される制御は重要である。
【0069】
また、タンク6には、その内部に収容した水の量を検知する上限水位センサー(最高水量センサー)23Hを設け、当該センサーによって加熱源5による湯沸し動作中に復水化作用でタンク6内の水量が所定量を超えたことを検知した場合、前記加熱源の湯沸し動作を停止又は加熱能力を減少させるための通電制御動作を実行する処理部52を設けているので、この処理部52が、タンク6に水が所定量以上ある状態での湯沸し動作の継続を禁止するから、沸騰過程の途中で、本体1から供給される大量の水蒸気でタンク6の中の水位が異常に上がり、タンク6から水が溢れ出るという事態を避けることができる。
【0070】
また、タンク6には、その内部に収容した水の温度変化を検知する水温センサー24を設け、当該センサーの出力によってタンク6内の水温が所定値を超えたことを検知した場合、沸騰ヒータ5Aによる湯沸し動作を停止又は加熱能力を減少させる通電制御動作をする処理部52を有しているので、高温度によってタンクが変形したり、使用者に不安感を抱かせたりすることがない。
【0071】
さらに、本体1の上部又は蓋体4には、タンク2に収容された水の温度と湯沸し用の容器2の湯温とをそれぞれ表示する液晶画面41等の動作表示部を備えているので、容器2と湯温とタンク6の水温又は湯温とを事前に確認して蓋体4を開けたり、タンク6を取り外したりすることができる。
【0072】
また、タンク6を着脱自在に載せる支持台11を設け、当該支持台11にタンク6が所定状態にセットされているかどうかを検知するタンクセンサー22を設け、当該センサー22はタンク6が所定状態にセットされている状態で所定の出力を出し、当該出力を受けて沸騰ヒータ5Aによる湯沸し動作を可能とする処理部52を備えているので、タンク6が傾いた状態や、タンク6が設置されていないような異常使用状態における湯沸し動作を防止することから、安全性の高い電気湯沸し器とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る電気湯沸し器は、湯沸し用容器の内部から加熱源の加熱動作中に発生する蒸気を復水化作用でタンクに回収してお湯にすることができ、しかもそのタンクが本体から取り外し可能となっているので、タンク内に回収した蒸気で生成されたお湯も有効に利用することができ、家庭用だけではなく、事務所での給湯用用途等にも適用できる。
【符号の説明】
【0074】
1:本体
2:湯沸し用容器
3:上面開口
4:蓋体
5:電気加熱源
5A:沸騰ヒータ
5B:保温ヒータ
6:タンク
6A:タンク本体
6B:蓋
6C:水位確認窓
6D:上面開口(取り出し口)
7:張出部
8:操作部
9:ヒンジ機構
10:ロック機構(蓋ロック手段)
11:支持台
11A:案内凸部
12:下部連通管(下部連通管)
12A:下端開口
13:部屋
14:接続口
15:上部接続管(上部連通管)
15A:孔
16:内部空間
17:仕切板
17A:貫通孔
18:シール材
19:ソレノイド
19A:ロック棒(プランジャー軸)
20:金属ケース
21:パイプロック手段
22:タンクセンサー(タンク有無、水量センサー)
23:水位検知手段
23H:水量センサー(上限水位センサー)
23L:水量センサー(下限水位センサー)
24:水温センサー(第二温度検知手段)
25:水位確認窓
26:出水管
27:給湯ポンプ
30:温度センサー(第一温度検知手段)
31:解除レバー
32:枢軸
33:掛け金
34:コイルバネ
35:傾斜壁
36:窪み部
37:ソレノイド
38:プランジャー軸(ロックピン)
39:貫通孔
40:保護シート
41:液晶画面
42:表示部
43:表示部
44:給湯スイッチの操作ボタン
45:再沸騰スイッチの操作ボタン
46:保温スイッチの操作ボタン
47:ロック操作スイッチの操作ボタン
50:制御手段
51:電源部
52:処理部
53:入力手段
54:第一温度表示手段
55:第二温度表示手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
本体の内部に収容され上面が開口した湯沸し用容器と、
この湯沸し容器の上面開口を開閉自在に閉塞する蓋体と、
前記湯沸し容器を加熱する電気加熱源と、
前記蓋体で閉塞した状態の前記容器内部から加熱源の加熱動作中に発生する蒸気を復水化作用で回収するための水が溜められ、かつ当該水を取り出す取り出し口を有したタンクと、
を備え、
前記タンクは前記本体1から取り外し可能に構成したことを特徴とする電気湯沸し器。
【請求項2】
前記タンクと前記本体との間には、前記容器に―端開口部が接続され、他端開口部が前記タンク内に溜められた所定水位の水中に没する形態となる連通管を配置したことを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器。
電気湯沸し器。
【請求項3】
前記連通管は、前記蓋体の内部に貫通するように設けてあることを特徴とする請求項2記載の電気湯沸し器
【請求項4】
前記連通管は、前記蓋体の内部に貫通するように設けてあり、当該蓋体が前記容器の上面開口を閉塞した状態と開放した状態の何れにおいても当該連通管によって蓋体内部と前記タンクが連結されていることを特徴とする請求項2記載の電気湯沸し器。
【請求項5】
前記連通管は、前記タンクの内部に垂直に設置され、蒸気が放出される末端開口部が当該タンクに溜められた水中に没することを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の電気湯沸し器。
【請求項6】
前記本体から前記タンクを取り外す場合、当該タンクと前記連通管の接続を解除可能にし、この状態で当該連通管は前記蓋体側に保持されることを特徴とする請求項2記載の電気湯沸し器。
【請求項7】
前記本体から前記タンクを取り外す場合、当該タンクと前記連通管の接続を解除可能にし、この状態で当該連通管は前記蓋体側に保持され、
前記加熱源による湯沸し動作中には、前記タンクと前記連通管との接続を解除できないように規制する制御部を有することを特徴とする請求項2記載の電気湯沸し器。
【請求項8】
前記タンクと前記蓋体又は本体との間には、両者の分離を阻止する第1のロック機構を備え、
前記本体には、前記蓋体の開放を阻止する第2のロック機構を備え、
前記第2のロック機構が解除動作されている状態で前記第1のロック機構が解除できることを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器。
【請求項9】
前記タンクは、前記容器内に収容した最大許容量の水を沸騰状態になるまで前記加熱源によって加熱した場合、当該沸騰過程で発生する水蒸気の復水化により増加する水量を収容する容積を有していることを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器。
【請求項10】
前記タンクには、その外周壁面の少なくとも一部に、収容された水の量を目視で確認できる水量確認窓があることを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器。
【請求項11】
前記タンクには、その内部に収容した水の量を検知する最低水量センサーを設け、当該センサーが所定の水量が無い状態を検知した場合、前記加熱源による湯沸し動作を禁止する通電禁止部を有することを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器。
【請求項12】
前記タンクには、その内部に収容した水の量を検知する上限水量センサーを設け、当該センサーによって前記加熱源による湯沸し動作中に復水化作用で前記タンク内の水量が所定量を超えたことを検知した場合、前記加熱源の湯沸し動作を停止又は加熱能力を減少させる通電制御部を有することを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器。
【請求項13】
前記取り出し口には、その取り出し口を開閉自在に閉塞し、使用者が開放操作できる蓋を備えたことを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器電気湯沸し器。
【請求項14】
前記取り出し口には、その取り出し口を使用者が開閉操作できる弁を備えたことを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器。
【請求項15】
前記本体には、前記タンクを着脱自在に載せる支持台を設けていることを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器。
【請求項16】
前記本体には、前記タンクを着脱自在に載せる支持台を設け、当該支持台に前記タンクが所定状態にセットされているかどうかを検知するセンサーを設け、当該センサーは、前記タンクが所定状態にセットされている状態で所定の出力を出し、当該出力を受けて前記加熱源による湯沸し動作を可能とする通電制御部を有することを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器。
【請求項17】
前記本体には、前記タンクを着脱自在に載せる支持台を設け、当該支持台には前記タンク内部の水を保温する保温用電気ヒータを有していることを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器。
【請求項18】
前記本体には、前記タンクを着脱自在に載せる支持台を設け、当該支持台には前記タンク内部の水を保温する保温用電気ヒータを有し、
この保温用電気ヒータの通電時間を、前記タンク内の水を沸騰させた時点から所定時間内に制限するタイマー手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器。
【請求項19】
前記本体とタンク外周面との間に、断熱材又は真空断熱用の間隙を設けていることを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器。
【請求項20】
前記本体の上部又は蓋体には、前記タンクに収容された水の温度と前記容器の湯温とをそれぞれ表示する動作表示部を備えていることを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器。
【請求項21】
前記本体には、前記容器に収容したお湯の温度変化を検知する湯温センサーを設け、
当該センサーの出力によって前記加熱源による湯沸し温度を制御することを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器
【請求項22】
前記タンクには、その内部に収容した水の温度変化を検知する水温センサーを設け、
当該センサーの出力によってタンク内の水温が所定値を超えたことを検知した場合、前記加熱源の湯沸し動作を停止又は加熱能力を減少させる通電制御部を有することを特徴とする請求項1記載の電気湯沸し器。
【請求項23】
本体と、
本体の内部に収容された上面が開口した湯沸し用容器と、
この容器の上面開口を開閉自在に閉塞する蓋体と、
前記容器を加熱する電気加熱源と、
蓋体で閉塞した状態の前記容器内部から前記加熱源の加熱動作中に発生する蒸気を復水化作用で回収するための水が溜められ、かつ当該水を取り出す取り出し口を有したタンクと、
前記電気加熱源の通電を制御する通電制御装置と、
を備え、
前記タンクは前記本体1と結合及び取り外し自在に構成し、
前記通電制御装置は、
使用者の操作により通電開始指令を出すスイッチと、
当該スイッチにより通電開始指令が出された場合、前記電気加熱源の通電を開始して沸騰モードを開始し、沸騰状態を検知した場合に所定の出力を出す温度スイッチと、
この温度スイッチから出力が出された場合、前記電気加熱源の通電の火力を低下させ、前記沸騰モードを保温モードに切り替える通電制御プログラムが格納された処理ユニットと、
前記本体又は蓋体に設けた動作表示部と、
を有し、
前記処理ユニットは、沸騰モードと保温モードをそれぞれ前記動作表示部に文字や光等の視認できる手段で互いに識別できるように表示することを特徴とする電気湯沸し器。
【請求項24】
前記本体には、前記容器に収容したお湯の温度変化を検知する湯温センサーを設け、当該センサーの出力によって前記加熱源による湯沸し温度を制御することを特徴とする請求項23記載の電気湯沸し器。
【請求項25】
前記タンクには、その内部に収容した水の温度変化を検知する水温限度センサーを設け、
当該センサーの出力によってタンク内の水温が所定値を超えたことを検知した場合、前記加熱源の湯沸し動作を停止又は加熱能力を減少させる通電制御部を有することを特徴とする請求項23記載の電気湯沸し器。
【請求項26】
前記本体には、前記タンクに収容した水の量を検知する最低水量センサーを設けるとともに、前記タンクには、その外周壁面の少なくとも一部に収容した水の量を目視で確認できる水量確認窓を有し、当該確認窓に示された規定水位マークを超える水量がタンクに収容されている状態で、前記前記処理ユニットは前記加熱源の沸騰モードを実行可能にすることを特徴とする請求項23記載の電気湯沸し器。
【請求項27】
前記処理ユニットは、前記加熱源による沸騰モード動作中、前記タンクを前記本体から取り外しできないように規制動作することを特徴とする請求項23記載の電気湯沸し器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−172557(P2010−172557A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19878(P2009−19878)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】