説明

電気自動車およびその制御方法

【課題】 電気自動車における走行中の走行抵抗をより正確に測定する。
【解決手段】 走行抵抗を測定するための惰行走行が指示されたときには、モータ22を駆動するインバータ26をシャットダウンし、車速が所定車速Vrefよりも大きいときには、インバータ26とバッテリ24との電気的な接続と遮断を行なうシステムメインリレー30をオフとし、車速が所定車速Vref以下のときには、システムメインリレー30をオンままに維持する。これにより、車速に拘わらずモータ22の回生制動を防止するから、完全な非駆動状態とすることができる。したがって、この非駆動状態で走行抵抗を測定することにより、より正確に走行抵抗を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気自動車としては、車軸にディファレンシャルギヤを介して接続され、インバータを介してバッテリと電力をやり取りするモータを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この電気自動車では、走行中に非駆動状態が選択されたとき、モータの回転数が所定回転数以上のときにはモータから出力されるトルクが値0となるようインバータのスイッチング素子をスイッチング制御し、モータの回転数が所定回転数未満となったときにインバータのスイッチング素子を遮断して、モータにバッテリの電圧を超える逆起電圧が生じモータが回生制動されるのを抑制することにより、非駆動状態を確保している。
【特許文献1】特開平6−225402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電気自動車において走行中に非駆動状態を確保することは重要な問題として考えられている。ここで、非駆動状態を確保する際、モータから出力されるトルクを値0とする際のスイッチング素子のスイッチングによるエネルギロスが生じるのを抑制したりモータから出力されるトルクをより確実に値0とするために、インバータのスイッチング素子は遮断状態とすることが望ましい。
【0004】
また、このように走行中に非駆動状態を確保することは、車両の走行抵抗を測定する際の正確さを担保する上でも重要である。
【0005】
本発明の電気自動車およびその制御方法は、車軸の非駆動状態をより適正に確保することを目的の一つとする。また、本発明の電気自動車およびその制御方法は、車両の走行抵抗をより正確に測定できるようにすることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気自動車およびその制御方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の電気自動車は、
車軸に接続された電動機を備える電気自動車であって、
充放電可能な蓄電手段と、
該蓄電手段に接続されると共に前記電動機に接続され、電力調節素子を作動させることにより該電動機を駆動する駆動回路と、
前記蓄電手段と前記駆動回路との電気的な接続および遮断が可能な接続遮断手段と、
前記接続遮断手段が接続状態にあるときに所定条件による走行が指示されたとき、前記電力調節素子を停止すると共に遮断状態とするよう前記接続遮断手段を制御する制御手段と
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の電気自動車では、蓄電手段と電動機を駆動する駆動回路との電気的な接続および遮断が可能な接続遮断手段が接続状態にあるときに所定条件による走行が指示されたとき、電力調節素子を停止すると共に遮断状態とするよう接続遮断手段を制御するから
、車軸の非駆動状態をより適正に確保することができる。また、電力調節素子を作動させて非駆動状態を確保するものに比してエネルギ効率を向上させることができる。ここで、「電力調節素子」には、スイッチング素子が含まれる。
【0009】
こうした本発明の電気自動車において、車速を検出する車速検出手段を備え、前記制御手段は、前記接続遮断手段が接続状態にあって前記検出された車速が所定車速未満のときに前記所定条件による走行が指示されたときには、該接続状態を維持する手段であるものとすることもできる。こうすれば、走行中に接続遮断手段が頻繁に遮断されるのを抑制することができる。
【0010】
また、本発明の電気自動車において、前記所定条件は、ニュートラルポジションにシフト操作されたときに成立する条件であるものとすることもできる。こうすれば、ニュートラルポジションに操作されたときに車軸を非駆動状態とすることができる。
【0011】
さらに、本発明の電気自動車において、前記所定条件は、車両の走行抵抗を測定する走行抵抗測定モードによる走行が指示されたときに成立する条件であるものとすることもできる。こうすれば、車軸の非駆動状態を確保してから走行抵抗を測定できるから、走行抵抗をより正確に測定することができる。
【0012】
本発明の電気自動車の制御方法は、
車軸に接続された電動機と、充放電可能な蓄電手段と、該蓄電手段に接続されると共に前記電動機に接続され電力調節素子を作動させることにより前記電動機を駆動する駆動回路と、前記蓄電手段と前記駆動回路との電気的な接続および遮断が可能な接続遮断手段と、を備える電気自動車の制御方法であって、
前記接続遮断手段が接続状態にあるときに所定条件による走行が指示されたとき、前記電力調節素子を停止すると共に遮断状態とするよう前記接続遮断手段を制御する
ことを要旨とする。
【0013】
この本発明の電気自動車の制御方法によれば、蓄電手段と電動機を駆動する駆動回路との電気的な接続および遮断が可能な接続遮断手段が接続状態にあるときに所定条件による走行が指示されたとき、電力調節素子を停止すると共に遮断状態とするよう接続遮断手段を制御するから、車軸の非駆動状態をより適正に確保することができる。また、電力調節素子を作動させて非駆動状態を確保するものに比してエネルギ効率を向上させることができる。ここで、「電力調節素子」には、スイッチング素子が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、図示するように、駆動輪28a,28bに連結された車軸にデファレンシャルギヤ29を介して接続されたモータ22と、モータ22と電力をやり取りするバッテリ24と、バッテリ24の直流電力を所定の交流電力に変換してモータ22に供給するインバータ26と、バッテリ24とインバータ26との間に介在して両者の電気的な接続と遮断とを行なうシステムメインリレー30と、車両全体をコントロールする電子制御ユニット40を備える。
【0016】
モータ22は、外表面に永久磁石が貼り付けられたロータと、三相コイルが巻回されたステータとを備えるPM型の同期発電電動機として構成されている。モータ22から出力された動力は、デファレンシャルギヤ29を介して駆動輪28a,28bに出力される。
【0017】
インバータ26は、6つのトランジスタT1〜T6とこのトランジスタT1〜T6の各々に逆並列接続された6つのダイオードD1〜D6とにより構成されている。インバータ26のトランジスタT1〜T6は、正極母線26aと負極母線26bとに対してソース側とシンク側となるよう2つずつペアで配置され、トランジスタ同士の接続点がモータ22の三相コイル(U相,V相,W相)の各々に接続されている。したがって、トランジスタT1〜T6のスイッチングによりモータ22の三相コイルに三相交流を供給することにより、回転磁界を形成してモータ22を回転駆動することができる。また、モータ22は発電機としても機能するからモータ22に動力を入力すれば、モータ22で生じた三相交流をダイオードD1〜D6により整流してバッテリ24を充電することができる。
【0018】
電子制御ユニット40は、CPU42を中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU42の他に処理プログラムを記憶したROM44と、データを一時的に記憶するRAM46と、図示しない入出力ポートとを備える。この電子制御ユニット40には、シフトレバー50の操作位置を検出するシフトポジションセンサ51からのシフトポジションやアクセルペダル52の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ53からのアクセルペダルポジション,ブレーキペダル54の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ55からのブレーキペダルポジション,車速センサ56からの車速,モータ22の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ58からの回転位置,モータ22の三相コイルの各相に流れる電流を検出する電流センサ59a,59bからの相電流などが入力ポートを介して入力されている。また、電子制御ユニット40からは、インバータ26のトランジスタT1〜T6へのスイッチング制御信号やシステムメインリレー30へのオンオフ信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0019】
こうして構成された実施例の電気自動車20の動作、特に車両の走行抵抗を測定するために惰行走行させた際の動作について説明する。図2は、実施例の電気自動車20の電子制御ユニット40により実行される惰行走行時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、車両の走行抵抗を測定するための惰行走行が指示されたときに実行される。
【0020】
惰行走行時制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット40のCPU42は、まず、インバータ26をシャットダウン(トランジスタT1〜T6のスイッチングを停止)する(ステップS100)。続いて、車速センサ56からの車速Vを入力し(ステップS110)、車速Vと所定車速Vrefとを比較し(ステップS120)、車速Vが所定車速Vrefよりも大きいと判定されたときにはシステムメインリレー30をオフする(ステップS130)。ここで、所定車速Vrefは、モータ22に生じる逆起電圧がバッテリ24側の電圧よりも高くなる範囲を定めるためのものである。モータ22で生じる逆起電圧がバッテリ24側の電圧よりも高くなるときでもシステムメインリレー30をオフすれば、モータ22が回生制動されることはないから、モータ22に接続された車軸を完全な非駆動状態とすることができる。したがって、この非駆動状態で走行抵抗を測定することにより、より正確な走行抵抗を測定することができる。
【0021】
ステップS120で車速Vが所定車速Vref以下と判定されたときには、モータ22で生じる逆起電圧がバッテリ24側の電圧以下となっている状態であり、この状態ではシステムメインリレー30をオフとしなくてもモータ22は回生制動されないから、システムメインリレー30をオンのまま維持する。
【0022】
そして、惰行走行が終了したか否かを判定し(ステップS140)、惰行走行が終了してないと判定されたときにはそのままインバータ26の状態やシステムメインリレー30の状態を保持し、惰行走行が終了したと判定されたときにシステムメインリレー30を接
続する処理を行なって(ステップS150)、本ルーチンを終了する。走行抵抗を測定するための惰行走行が指示されるときは、比較的高車速であるから、通常はシステムメインリレー30はオフとされるが、惰行走行が開始された後に車速が低くなって所定車速Vref以下となってもシステムメインリレー30のオフの状態は保持される。なお、実施例では、走行抵抗を測定するための惰行走行が指示されたときにシステムメインリレー30をオフしたが、走行中にシフトレバー50がニュートラルポジションに操作されて通常の惰行走行が指示されたときにはこうしたシステムメインリレー30のオフは行なわずにインバータ26のシャットダウンのみを行なう。
【0023】
以上説明した実施例の電気自動車20によれば、走行抵抗を測定するための惰行走行が指示されたときには、インバータ26をシャットダウンすると共にシステムメインリレー30をオフとするから、モータ22が回生制動されるのを防止して、車軸を完全な非駆動状態とすることができる。したがって、この非駆動状態で走行抵抗を測定することにより、より正確に走行抵抗を測定することができる。しかも、車速Vが所定車速Vref以下のときに惰行走行が指示されたときには、インバータ26をシャットダウンするのみでシステムメインリレー30はオンの状態を維持するから、走行中にシステムメインリレー30が頻繁にオンオフされるのを抑制することができる。
【0024】
実施例の電気自動車20では、惰行走行する際に車速Vが所定車速Vrefよりも大きいときにはシステムメインリレー30をオフとし車速Vが所定車速Vref以下のときにシステムメインリレー30をオンの状態に維持するものとしたが、車速Vに拘わらずシステムメインリレー30をオフするものとしても構わない。
【0025】
実施例の電気自動車20では、走行抵抗の測定するための惰行走行が指示されたときに図2の惰行走行時制御ルーチンを実行するものとしたが、走行抵抗の測定とは関係なく走行中にシフトレバー50がニュートラルポジションに操作されて惰行走行が指示されたときでも図2のルーチンを実行するものとしても構わない。
【0026】
実施例の電気自動車20では、エンジンを搭載せずにモータ22からの動力だけで走行する通常の電気自動車に適用して説明したが、車軸にモータが接続されている電気自動車であれば、さらにエンジンを搭載するハイブリッド型の電気自動車にも適用可能である。例えば、図3に例示するように、エンジン121とモータ130とを遊星歯車機構131を介して車軸(駆動輪28a,28bに接続された車軸)に連結された駆動軸に接続したハイブリッド型の電気自動車120に適用するものとしてもよいし、図4に例示するように、エンジン221の出力軸に接続されたインナーロータ232と車軸(駆動輪28a,28bに接続された車軸)に連結された駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し電磁気的な作用により両ロータを相対的に回転させる対ロータ電動機230を備えたハイブリッド型の電気自動車220に適用するものとしてもよい。
【0027】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、自動車産業に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例の電気自動車20の電子制御ユニット40により実行される惰行走行時制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】変形例の電気自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図4】変形例の電気自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0030】
20,120,220 電気自動車、22 モータ、24 バッテリ、26 インバータ、26a 正極母線、26b 負極母線、28a,28b 駆動輪、29 デファレンシャルギヤ、30 システムメインリレー、40 電子制御ユニット、42 CPU、44 ROM、46 RAM、50 シフトレバー、51 シフトポジションセンサ、52 アクセルペダル、53 アクセルペダルポジションセンサ、54 ブレーキペダル、55 ブレーキペダルポジションセンサ、56 車速センサ、58 回転位置検出センサ、59a,59b 電流センサ、121,221 エンジン、130 モータ、131 遊星歯車機構、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ、234 アウターロータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸に接続された電動機を備える電気自動車であって、
充放電可能な蓄電手段と、
該蓄電手段に接続されると共に前記電動機に接続され、電力調節素子を作動させることにより該電動機を駆動する駆動回路と、
前記蓄電手段と前記駆動回路との電気的な接続および遮断が可能な接続遮断手段と、
前記接続遮断手段が接続状態にあるときに所定条件による走行が指示されたとき、前記電力調節素子を停止すると共に遮断状態とするよう前記接続遮断手段を制御する制御手段と
を備える電気自動車。
【請求項2】
請求項1記載の電気自動車であって、
車速を検出する車速検出手段を備え、
前記制御手段は、前記接続遮断手段が接続状態にあって前記検出された車速が所定車速未満のときに前記所定条件による走行が指示されたときには、該接続状態を維持する手段である
電気自動車。
【請求項3】
前記所定条件は、ニュートラルポジションにシフト操作されたときに成立する条件である請求項1または2記載の電気自動車。
【請求項4】
前記所定条件は、車両の走行抵抗を測定する走行抵抗測定モードによる走行が指示されたときに成立する条件である請求項1ないし3いずれか記載の電気自動車。
【請求項5】
前記電力調節素子は、スイッチング素子である請求項1ないし4いずれか記載の電気自動車。
【請求項6】
車軸に接続された電動機と、充放電可能な蓄電手段と、該蓄電手段に接続されると共に前記電動機に接続され電力調節素子を作動させることにより前記電動機を駆動する駆動回路と、前記蓄電手段と前記駆動回路との電気的な接続および遮断が可能な接続遮断手段と、を備える電気自動車の制御方法であって、
前記接続遮断手段が接続状態にあるときに所定条件による走行が指示されたとき、前記電力調節素子を停止すると共に遮断状態とするよう前記接続遮断手段を制御する
電気自動車の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−42416(P2006−42416A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214684(P2004−214684)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】