説明

電気自動車における車内環境設定システム

【課題】電池充電無しで走行したり、あるいは電池充電後に走行するかを容易に判断することができ、電気自動車をより便利に運転することができるようになる
【解決手段】上記課題解決のため、本車内環境設定システムは、車内環境設定システム5と、この車内環境設定システム5からの設定情報を表示する表示器6とを含み、この車内環境設定システム5は、メモリカード9から読み込む運転者情報と電池残り容量とに基づいて走行可能距離と電池充電の必要度合いを演算すると共に、該演算にかかる走行可能距離と電池充電必要状態とを上記表示器6に表示するようにしたシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車においてメモリカードの装着により当該車内環境を設定することができるシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車においてエコドライブが推奨されており、そのエコドライブのための燃費等の車両の運転状態を制御するシステムも提案されている(特許文献1、2等参照)。
【0003】
上述のエコドライブ意識は専らガソリンエンジン車に対してであり、ガソリンエンジン車と比較して普及率が低いハイブリッド車を含め電池駆動式の自動車に対してはそのエコドライブ意識は少ないということができる。なお、このような電池駆動の車両を、ハイブリッド車を含め、以下では電気自動車と称することとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−331380号公報
【特許文献2】特開2009−122927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記電気自動車では電池の管理が重要となり、車両に搭乗し少しの運転で電池切れを起こしたのでは不都合であるから、通常、電池残り容量が表示され、電池充電必要との表示も行われるようになっており、自動車搭乗前に電池充電等の準備もできる。
【0006】
しかしながら、1台の電気自動車を家族等の複数の人が共同使用する場合では、電池充電の必要度も相違し、電池充電必要の表示が行われていないにもかかわらず、前回設定した車内環境で搭乗した場合に、途中で早期に電池切れを起こすこともありえる。このように電池残存量でどの程度走行できるかは個々の運転者ごとの車内環境設定で相違する。
【0007】
したがって本発明では、上記電気自動車を共同で使用する場合において、運転に際しては運転者個々の車内環境に対して走行を自動制御し、より便利に運転できるようにすることを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、電池を動力源とする電動機によって車輪を駆動する電気自動車の車内環境を設定するシステムであって、当該システムは、メモリカードの装着が可能でかつその装着したメモリカードから当該メモリカード保有の運転者による過去の運転履歴を含む運転者情報をリードライト手段と、上記リードライト手段が読み込んだ運転者情報から現在の電池残り容量からの走行可能距離と電池充電必要の有無とを演算する演算手段と、上記演算手段の演算結果を表示画面に表示制御する表示制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明において、好ましい態様は、さらに車内環境設定情報を出力するインターフェースを具備し、メモリカードは、前回搭乗時の車内環境設定情報を運転者情報に含み、上記リードライト手段により、上記メモリカードから当該メモリカード保有の運転者による前回搭乗時の車内環境設定情報を読み込むと共に、上記読み込み手段が読み込んだ車内環境設定情報を上記インターフェースから車内環境設定機構に出力することにより、車内環境が自動設定されるようにすることである。
【0010】
(2)本発明による電気自動車は、上記(1)のシステムと、運転制御ユニットと、カーナビ表示器と、を含み、上記システムが備えるリードライト手段にメモリカードを装着したとき、運転に際しての当該メモリカード所有者の運転者情報から車内環境を設定することができるようになっている、ことを特徴とする。
【0011】
好ましくは、上記電気自動車は、上記システムのリードライト手段にメモリカードを装着したとき、走行可能距離と電池充電必要性とをカーナビ表示器に表示するようになっている。
【0012】
(3)本発明による電気自動車システムは、上記(2)の電気自動車と、この電気自動車が備える上記システムのリードライト手段に装着されて、運転者個々の運転者情報の書き込み、読み出しを可能とするメモリカードとを具備し、このメモリカードに書き込んだ運転者情報により電気自動車の運転制御を行う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、運転者個々の運転者情報から電池充電無しで走行可能な距離であるとか、電池充電の必要度合いの情報の表示から、電池充電無しで走行したり、あるいは電池充電後に走行することができるなど、電気自動車をより便利に運転することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の実施の形態にかかる電気自動車においてその内部制御構成をブロックで示す図である。
【図2】図2は車内環境設定システムとその周囲との間での情報入・出力を示す図である。
【図3】図3は車内環境設定システムの内部ブロックを示す図である。
【図4】図4はメモリカードのブロック構成を示す図である。
【図5】図5はカーナビ表示器の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る車内環境設定システムを装備した電気自動車を説明する。図1および図2を参照して当該電気自動車1においては、概略、電気自動車全体を制御する運転制御ユニット2と、二次電池等の電池3と、電動機を含む車輪駆動機構4と、車内環境設定システム5と、カーナビ表示器6とを有する。
【0016】
運転制御ユニット2は、走行や停止その他ではハンドル7や図示略のアクセルペダル等の各種操作に応答して、電動機を含む車輪駆動機構4を制御するものであり、各種制御、操作、応答等の信号が入・出力する。車輪駆動機構4は、電池3を駆動源とし、運転制御ユニット2からの制御信号に応答して車輪8を駆動する。電池3は、こうした車輪駆動、車両内各部の駆動、等により消耗する。
【0017】
車内環境設定システム5は、運転制御ユニット2からの運転制御信号に応答動作すると共に、メモリカード9に書き込まれた運転者情報に従い、エアコン、ライト、座席等の各種車内環境設定機構に対して車内環境設定情報を出力することでこれら車内環境の自動設定を可能とすると共に、現在の運転状況を示す表示情報をカーナビ表示器6に出力する。この場合、エアコン、ライト、カーラジオ、座席位置、等の各種車内環境の設定情報に応答して図示略の各種機構がエアコン、ライト、カーラジオ、座席位置、等を自動設定するようになっている。
【0018】
車内環境設定システム5には、エアコン、ライト、カーラジオ、座席位置、等の各種車内環境の設定機構から車内環境設定情報が入力され、この車内環境設定情報は当該車内環境設定システム5に装着されたメモリカード9に記憶される。例えば、エアコンの設定温度が20度であれば、その20度の設定温度情報は車内環境設定システム5からメモリカード9に記憶され、運転開始時には装着されたメモリカード9から車内環境設定情報がそれら車内環境設備であるエアコンに与えられ、これらエアコン設備はその情報に応答する。
【0019】
図3を参照してそのような車内環境設定システム5についてさらに説明する。車内環境設定システム5は、車内環境設定の全体を統括制御するCPU5aと、走行に関する表示情報をカーナビ表示器6に出力して表示させる表示制御手段5bと、車内環境設定のプログラム情報やその他の情報のメモリ5cと、電池情報である電池3の残り容量と運転者情報とから走行可能距離を演算しその演算出力として表示制御手段5bに走行可能距離情報を出力する第1演算手段5dと、第1演算手段5dの演算結果から電池充電の必要度合いであるその有無を演算しその演算出力として表示制御手段5bに電池情報を出力する第2演算手段5eと、運転制御ユニット2と通信する通信手段5fと、メモリカード9が装着されて該メモリカード所有者の運転者情報を読み込むと共に、読み込んだ運転者情報を第1演算手段5dに出力し、また、運転中における通信手段5fから入力される運転者情報からメモリカード9が記憶する運転者情報を更新して書き込むリードライト手段5gと、入・出力インターフェース5hと、を含む。リードライト手段5gは図示略のメモリカード装着部を有する。
【0020】
メモリカード9は図4で示すようにCPU9aと、メモリ9bと、入・出力インターフェース9cとを含み、メモリ9bには運転者情報が記憶されている。メモリカード9は、車内環境設定システム5のリードライト手段5gに装着されると、メモリ9bに記憶されている運転者情報が読み込まれ、また、運転者情報がメモリ9bに書き込まれて更新される。
【0021】
電気自動車1に運転者が搭乗し、メモリカード9が車内環境設定システム5のリードライト手段5gに装着されると、メモリカード9が記憶する運転者情報が第1演算手段5dに入力される。この第1演算手段5dにはさらに通信手段5fを介して運転制御ユニット2から電池情報が入力される。上記運転者情報は運転者が、前回電気自動車に搭乗して運転したときの運転者情報である。この運転者情報は、例えば、前回搭乗時におけるエアコン、ライト、カーラジオ、ハンドル位置、座席位置等の車内環境設定情報と共に、燃費状況、エアコンやライトの使用データ、走行速度、運転内容等から燃費を演算し、その演算した燃費から割り出した、現在の電池3の容量による当該運転者の場合の走行可能距離情報である。
【0022】
すなわち、第1演算手段5dは、上記運転者情報と現在の電池残り容量とから走行可能な距離情報を演算すると共に、その演算結果を表示制御手段5bに出力する。表示制御手段5bにおいては、図5で示すように、カーナビ表示器6に、走行可能距離情報と、電池充電の必要性の有無を示す情報とを表示させるよう制御する。
【0023】
運転者は、電気自動車1に搭乗し、車内環境設定システム9のリードライト手段5gにメモリカード9を装着した際には、カーナビ表示器6の表示から前回の運転と同様に運転した場合の走行可能な距離と、電池の充電の必要な度合いとの表示から、電池充電することなく、電気自動車1を発進させることができる一方、電池充電したのちに、電気自動車1を発進させるべきであるかを簡単に判断することができるようになる。
【0024】
また、運転者は、電気自動車1に搭乗し、車内環境設定システム9のリードライト手段5gにメモリカード9を装着した際には、メモリカード9に記憶されている前回搭乗した際の車内環境情報が、リードライト手段5gから読み出しされ、CPU5aはこの読み出しされた前回搭乗した際の車内環境情報を入・出力インターフェース5hから各種車内環境設定機構に出力することで、エアコン、ライト、カーラジオ、座席位置、等が自動設定される。また、今回、車内環境を変更した場合は、その変更した車内環境情報は、車内環境設定システム5のリードライト手段5gに書き込まれて更新され、次回の搭乗に備えることができる。
【0025】
以上説明したように本実施の形態では、電池を動力源とする電動機によって車輪を駆動する電気自動車における車内環境設定システムにおいて、リードライト手段5gにより、メモリカード9から当該電気自動車の運転と車内環境とに関する運転者情報を読み込むと共に、その読み込んだ運転者情報を入・出力インターフェース5hから車内環境設定機構に出力することで、車内環境が自動設定されると共に、現在の電池残り容量からの走行可能距離情報と電池充電必要の有無との演算が行われ、その演算結果がカーナビ表示器6の表示画面に表示されることにより、電気自動車の運転者は、車内環境が自動設定されることで便利であることに加えて、電池充電無しで走行可能な距離であるとか、電池充電の必要の有無の表示から電気自動車をより便利に運転することができるようになる。
【0026】
なお、電池残量が一定以下となった場合、カーナビ表示器6の表示画面に電池充電できる場所(電池充電ステーショーン)を表示させるようにしてもよい。このため、カーナビ表示器6には電池充電ステーショーンのうち、現在走行している自動車の位置から最近の電池充電ステーショーンへナビさせることができるすることが好ましい。
【符号の説明】
【0027】
1 電気自動車
2 運転制御ユニット
3 電池
4 車輪駆動機構
5 車内環境設定システム
6 カーナビ表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を動力源とする電動機によって車輪を駆動する電気自動車の車内環境を設定するシステムであって、
当該システムは、
メモリカードの装着が可能でかつその装着したメモリカードから当該メモリカード保有の運転者による過去の運転履歴を含む運転者情報をリードライト手段と、
上記リードライト手段が読み込んだ運転者情報から現在の電池残り容量からの走行可能距離と電池充電必要の有無とを演算する演算手段と、
上記演算手段の演算結果を表示画面に表示制御する表示制御手段と、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
さらに車内環境設定情報を出力するインターフェースを具備し、
上記メモリカードは、前回搭乗時の車内環境設定情報を運転者情報に含み、上記リードライト手段により、上記メモリカードから当該メモリカード保有の運転者による前回搭乗時の車内環境設定情報を読み込むと共に、上記リードライト手段が読み込んだ車内環境設定情報を上記インターフェースから車内環境設定機構に出力することにより、車内環境が自動設定されるようにした、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
電池を動力源とする電動機によって車輪を駆動する電気自動車であって、
請求項2に記載のシステムと、
運転制御ユニットと、
カーナビ表示器と、
を含み、
上記システムが備えるリードライト手段にメモリカードを装着したとき、運転に際しての当該メモリカード所有者の運転者情報から車内環境を設定することができるようになっている、ことを特徴とする電気自動車。
【請求項4】
上記システムのリードライト手段にメモリカードを装着したとき、カーナビ表示器には、走行可能距離と電池充電必要性とをカーナビ表示器に表示することを特徴とする請求項3に記載の電気自動車。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電気自動車と、この電気自動車が備える上記システムのリードライト手段に装着されて、運転者個々の運転者情報の書き込み、読み出しを可能とするメモリカードとを具備し、このメモリカードに書き込んだ運転者情報により電気自動車の運転制御を行う、ことを特徴とする電気自動車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−133408(P2011−133408A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294305(P2009−294305)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000167288)光洋電子工業株式会社 (354)
【Fターム(参考)】