説明

電気自動車

【課題】車体の剛性を高めることができる電気自動車を提供する。
【解決手段】車体の床下にバッテリユニット14が取付けられている。バッテリユニット14の下部に桁部材101,102,103,104が設けられている。桁部材101,102,103,104は車体の幅方向に延び、一対のサイドメンバ31,32間にわたって配置されている。サイドメンバ31,32にサスペンションアームサポートブラケット40,41が設けられている。サスペンションアームサポートブラケット40,41の近傍に配置される桁部材103は、荷重伝達部材170,171を介してサイドメンバ31,32に固定されている。荷重伝達部材170,171は、サスペンションアームサポートブラケット40,41とサイドメンバ31,32の双方に固定されている。サスペンションアームサポートブラケット40,41に入力する横方向の荷重は、荷重伝達部材170,171を介して桁部材103に入力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリを電源とするモータによって走行する電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、走行距離をいかに長くするかが大きな課題である。そのために、可能な限り大形のバッテリを搭載することが望まれている。例えば特許文献1に記載された電気自動車では、車体の床下のクロスメンバの下方にバッテリ取付フレームを設け、このバッテリ取付フレームによってバッテリを保持している。
【特許文献1】特開平6−32247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1のように、車体の床下のクロスメンバの下方にバッテリ取付フレームを設けると、その分だけ最低地上高が低くなる。このため路面状況によっては、バッテリ取付フレームやバッテリ自体が路面側の障害物等に衝突するおそれがある。しかしバッテリ取付フレームの上方にクロスメンバが配置されているため、クロスメンバが邪魔になってバッテリ取付フレームを床下の高い位置に設けることができない。
【0004】
このようにバッテリユニットが車体の床下に配置される場合、車体の構造によっては、クロスメンバがバッテリユニットの一部と干渉する可能性がある。このためクロスメンバを設ける位置が制約を受けることになる。例えばトレーリングアーム式リヤサスペンションを備えた自動車では、トレーリングアームの前端部を支持するためのトレーリングアームサポートブラケットがサイドメンバに設けられている。自動車がカーブを走行する際などに、トレーリングアームサポートブラケットに横方向の大きな荷重が入力する。このため、トレーリングアームサポートブラケット付近にクロスメンバが配置されていないと、車体のロール剛性が低下し、操縦安定性や乗り心地などに影響が出る。
【0005】
従って本発明の目的は、大形のバッテリユニットが床下に搭載される電気自動車において車体の剛性を大きくすることができる電気自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車体の下部に配置される左右一対のサイドメンバを含むフレーム構体と、前記車体の下方から前記フレーム構体に取付けられるバッテリユニットとを具備している。このバッテリユニットは、トレイ部材とカバー部材とを有するバッテリケースと、前記バッテリケースの前記トレイ部材に固定された桁部材とを具備している。前記桁部材は前記車体の幅方向に延びる桁本体と、この桁本体の両端に設けられ前記サイドメンバのバッテリユニット取付部に固定される締結部とを有し、前記桁部材の一端側の前記締結部を前記一方のサイドメンバのバッテリユニット取付部に固定し、かつ、前記桁部材の他端側の前記締結部を前記他方のサイドメンバのバッテリユニット取付部に固定することにより、前記桁部材が前記一対のサイドメンバ間にわたって配置されている。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記一対のサイドメンバに、それぞれリヤサスペンションアームを支持するためのサスペンションアームサポートブラケットが設けられ、前記サスペンションアームブラケットに荷重伝達部が固定され、前記荷重伝達部材に前記桁部材の前記締結部が固定される。この場合、前記一対のサイドメンバに設けられている前記一対のサスペンションアームサポートブラケット間に、前記バッテリユニットの一部が配置されていてもよい。
【0008】
前記締結部の一例は、前記桁本体の上面に固定される底壁と上方に延びる縦壁とを有するベース金具と、前記バッテリユニット取付部に固定される上壁と前記縦壁に前後方向から重なる脚部を有する上金具とを具備し、該上金具は、前記脚部が前記縦壁に固定される前の状態において前記ベース金具に対する高さを調節可能であり、高さが調節された前記上金具の前記脚部が前記ベース金具の前記縦壁に溶接される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車体の剛性を高めることができ、乗り心地等を犠牲にすることなく大形のバッテリユニットを装備することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の一実施形態について、図1から図9を参照して説明する。
図1は電気自動車10の一例を示している。この電気自動車10は、車体11の後部に配置された走行用のモータ12および充電装置13と、車体11の床下に配置されるバッテリユニット14などを備えている。車体11の前部に冷暖房用の熱交換ユニット15が配置されている。
【0011】
この自動車10の前輪20は、図示しないフロントサスペンションによって車体11に支持されている。後輪21は、例えば図2に示すリヤサスペンション22によって車体11に支持されている。リヤサスペンション22の一例は、トレーリングアーム式リヤサスペンションである。このリヤサスペンション22は、左右一対のサスペンションアーム23,24と、車体の幅方向に延びるクロスビーム25と、懸架ばね26と、スタビライザ27と、ショックアブソーバ28などを含んでいる。サスペンションアーム23,24の一例はトレーリングアームであり、車体11の前後方向に延びている。なお、トレーリングアーム式リヤサスペンション以外のリヤサスペンションが使用されてもよい。
【0012】
図3は、前記車体11の下部の骨格をなすフレーム構体30と、このフレーム構体30に取付けられる前記バッテリユニット14とを示している。
フレーム構体30は、車体11の前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ31,32と、車体11の幅方向に延びるクロスメンバ33,34,35を含んでいる。クロスメンバ33,34,35は、サイドメンバ31,32の所定位置に溶接によって固定されている。
【0013】
サイドメンバ31,32の後部にサスペンションアームサポートブラケット40,41が設けられている。サスペンションアームサポートブラケット40,41は、それぞれサイドメンバ31,32の所定位置に溶接によって固定されている。サスペンションアームサポートブラケット40,41に、枢軸部42が設けられている。
【0014】
これら枢軸部42に、図2に示すサスペンションアーム23,24の前端部23a,24aが取付けられている。サスペンションアーム23,24は、それぞれ、枢軸部42を中心に上下方向に回動することができる。自動車10がカーブを走行する際などに、車体11に作用する遠心力によって、サスペンションアーム23,24が図2に矢印Fで示す方向に振られる。このため、サスペンションアームサポートブラケット40,41に、横方向の大きな荷重が入力することになる。
【0015】
図4に示すようにバッテリユニット14はバッテリケース50を備えている。バッテリケース50は、下側に位置するトレイ部材51と、上側に位置するカバー部材52とを備えている。バッテリケース50の前半部に、前側バッテリ収納部55が形成されている。バッテリケース50の後半部に、後側バッテリ収納部56が形成されている。前側バッテリ収納部55と後側バッテリ収納部56との間に、中央バッテリ収納部57と、電気回路収納部58などが形成されている。
【0016】
前記バッテリ収納部55,56,57に、それぞれバッテリモジュール60(図4に一部のみ2点鎖線で示す)が収納されている。バッテリモジュール60の一例は、リチウムイオン電池からなる複数個のセルを直列に接続したものである。電気回路収納部58には、バッテリモジュール60の状態を検出するモニタや制御等をつかさどる電気部品(図示せず)等が収納される。
【0017】
図5に示すように、バッテリユニット14はフロアパネル70の下面側に配置されている。フロアパネル70は、サイドメンバ31,32を含むフレーム構体30の所定位置に溶接によって固定されている。フロアパネル70の上方にフロントシート71(図1に示す)とリヤシート72が配置されている。フロントシート71の下方に、バッテリユニット14の前側バッテリ収納部55が配置されている。リヤシート72の下方に、バッテリユニット14の後側バッテリ収納部56が配置されている。前側バッテリ収納部55と後側バッテリ収納部56との間に形成されたフロアパネル70の凹部70aは、リヤシート72に着座した乗員の足元スペース付近に位置する。
【0018】
トレイ部材51は、一体成形された合成樹脂の内部に、補強用の金属プレートをインサートしてなるモールド成形品であり、上面側が開放した箱形に成形されている。トレイ部材51の材料である合成樹脂は、例えば繊維によって強化されている。トレイ部材51の上面の周縁部にカバー取付面80(図4に示す)が形成されている。カバー取付面80は、トレイ部材51の全周にわたって連続している。カバー取付面80の上に防水用のシール材81が設けられている。
【0019】
カバー部材52は、繊維によって強化された合成樹脂の一体成形品からなる。カバー部材52の前部に、サービスプラグ用の開口部85と冷却風導入口86が形成されている。サービスプラグ用の開口部85に蛇腹状のゴム製ブーツ87が取付けられている。冷却風導入口86にも蛇腹状のゴム製ブーツ88が取付けられている。カバー部材52の上面に、冷却風の一部を流すためのバイパス流路部90と、冷却ファン収納部91などが設けられている。
【0020】
カバー部材52の周縁部にフランジ部95が形成されている。フランジ部95はカバー部材52の全周にわたって連続している。カバー部材52のフランジ部95をトレイ部材51のカバー取付面80の上に乗せ、図4に示すボルト96あるいはナット97によって、トレイ部材51とカバー部材52とが互いにシール材81を介して水密に固定される。
【0021】
トレイ部材51の下面側に複数本(例えば4本)の桁部材101,102,103,104が設けられている。図4と図6に示されるように、桁部材101,102,103,104は、それぞれ車体11の幅方向に延びる桁本体111,112,113,114を有している。
【0022】
前から1番目の桁本体111の両端に締結部121,122が設けられている。前から2番目の桁本体112の両端に締結部123,124が設けられている。前から3番目の桁本体113の両端に締結部125,126が設けられている。前から4番目(最後部)の桁本体112の両端に締結部127,128が設けられている。バッテリユニット14の前端部には左右一対の前側支持部材130,131が設けられている。
【0023】
図7は、前から3番目の桁部材103を示している。この桁部材103は、ボルト135(一部のみ示す)によって前記トレイ部材51の下面に固定される。トレイ部材51には、これらのボルト135を螺合させるナット(図示せず)が設けられている。他の桁部材101,102,104も、これと同様にボルトによってトレイ部材51の底面に固定される。
【0024】
これらの桁部材101,102,103,104は、バッテリユニット14の荷重を支えるに足る強度を有する金属材料(例えば鋼板)によって構成されている。さらに詳しくは、図5と図6に示すように、前から1番目の桁部材101は、金属製の下プレート141と、ハット形断面の上プレート142と、上プレート142の両端に設けられた前記締結部121,122とを有している。下プレート141と上プレート142とによって、桁本体111が構成されている。締結部121,122のそれぞれに、上下方向に貫通するボルト挿入孔143(図3と図4に示す)が形成されている。
【0025】
サイドメンバ31,32には、前記締結部121,122と対向する位置に、ナット部材を備えたバッテリユニット取付部145,146が設けられている。締結部121,122の下側から、ボルト147(図3と図5に示す)をボルト挿入孔143に挿入し、このボルト147をバッテリユニット取付部145,146のナット部材に螺合させ締付けることにより、1番目の桁部材101の締結部121,122がサイドメンバ31,32に固定される。
【0026】
図5と図6に示すように、前から2番目の桁部材102は、金属製の下プレート151と、ハット形断面の上プレート152と、上プレート152の両端に設けられた前記締結部123,124とを有している。下プレート151と上プレート152とによって、桁本体112が構成されている。締結部123,124のそれぞれに、上下方向に貫通するボルト挿入孔153(図3と図4に示す)が形成されている。
【0027】
サイドメンバ31,32には、前記締結部123,124と対向する位置に、ナット部材を備えたバッテリユニット取付部155,156が設けられている。締結部123,124の下側から、ボルト157(図3と図5に示す)をボルト挿入孔153に挿入し、このボルト157をバッテリユニット取付部155,156のナット部材に螺合させ締付けることにより、2番目の桁部材102の締結部123,124がサイドメンバ31,32に固定される。
【0028】
前から3番目の桁部材103は、金属製の下プレート161と、ハット形断面の上プレート162と、上プレート162の両端に設けられた前記締結部125,126とを有している。下プレート161と上プレート162とによって、桁本体113が構成されている。締結部125,126のそれぞれに、上下方向に貫通するボルト挿入孔163(図3と図4に示す)が形成されている。
【0029】
図7に示すように、サイドメンバ31,32に、それぞれ、金属製の荷重伝達部材170,171がボルト172によって固定されている。これら荷重伝達部材170,171は、前から3番目の桁部材103の締結部125,126の上方に対向する位置に設けられている。一方の荷重伝達部材170は、一方のサスペンションアームサポートブラケット40に溶接されている。他方の荷重伝達部材171は、他方のサスペンションアームサポートブラケット41に溶接されている。
【0030】
すなわち荷重伝達部材170,171は、サイドメンバ31,32と、サスペンションアームサポートブラケット40,41とに結合されている。これら荷重伝達部材170,171は、フレーム構体30の一部をなしている。荷重伝達部材170,171に、ナット部材を備えたバッテリユニット取付部175,176が設けられている。
【0031】
締結部125,126の下側から、ボルト177をボルト挿入孔163に挿入し、このボルト177をバッテリユニット取付部175,176のナット部材に螺合させ締付けることにより、3番目の桁部材103の締結部125,126が、荷重伝達部材170,171を介してサイドメンバ31,32に固定される。この桁部材103には、補助ブラケット180,181(図7に示す)が設けられている。補助ブラケット180,181は、それぞれボルト182によって、サスペンションアームサポートブラケット40,41に結合されている。
【0032】
前から4番目の桁部材104も、金属製の下プレート191と、ハット形断面の上プレート192と、上プレート192の両端に設けられた前記締結部127,128とを有している。下プレート191と上プレート192とによって、桁本体114が構成されている。締結部127,128のそれぞれに、上下方向に貫通するボルト挿入孔193(図3と図4に示す)が形成されている。
【0033】
サイドメンバ31,32には、締結部127,128と対向する位置に、延長ブラケット194,195が設けられている。延長ブラケット194,195はサイドメンバ31,32のキックアップ部31b,32bの下方に延びている。延長ブラケット194,195は、フレーム構体30の一部をなしている。これら延長ブラケット194,195に、ナット部材を備えたバッテリユニット取付部196,197が設けられている。
【0034】
締結部127,128の下側から、ボルト198(図3と図5に示す)をボルト挿入孔193に挿入し、延長ブラケット194,195のバッテリユニット取付部196,197のナット部材に螺合させ締付けることにより、4番目の桁部材104の締結部127,128が延長ブラケット194,195を介してサイドメンバ31,32に固定される。
【0035】
図5に示すように、桁部材101,102,103,104の下面は、トレイ部材51の平坦な下面に沿って、水平方向に延びる同一平面L上に位置している。1番目と2番目の桁部材101,102は、サイドメンバ31,32の水平部分31a,32aに設けられたバッテリユニット取付部145,146,155,156に直接固定される。
【0036】
3番目の桁部材103と4番目の桁部材104は、サイドメンバ31,32のキックアップ部31b,32bに設けられたバッテリユニット取付部175,176,196,197に固定されている。3番目と4番目の桁部材103,104は、キックアップ部31b,32bの下方にオフセットした位置にある。このため3番目の桁部材103は、上下方向に厚みを有する荷重伝達部材170,171を介して、バッテリユニット取付部175,176に固定される。4番目の桁部材104は、キックアップ部31b,32bの下方に延びる延長ブラケット194,195によって、バッテリユニット取付部196,197に固定される。
【0037】
バッテリユニット14の前端に位置する前側支持部材130,131は、前から1番目の桁部材101の前方に突出している。前側支持部材130,131は、この桁部材101に結合されている。図3に示すように、前側支持部材130,131に設けられた締結部210,211は、ボルト212によって、クロスメンバ33のバッテリユニット取付部213,214に固定される。
【0038】
本実施形態では、フレーム構体30を製造する上で不可避的に生じるばらつき、たとえばバッテリユニット取付部145,146,155,156,175,176,196,197の高さのばらつきを吸収するために、桁部材101〜104のそれぞれの締結部121〜128と、前側支持部材130,131の締結部210,211は、以下に説明するばらつき調整手段を備えている。
【0039】
図8と図9は、前から2番目の桁部材102の締結部123を代表して示している。すなわちこの締結部123は、桁本体112の端部に固定されるベース金具220と、このベース金具220の上側に設けられた上金具221とを有している。
【0040】
図9に示されるように、ベース金具220は断面が略U状に形成されている。このベース金具220は、桁本体112の上面に溶接によって固定される底壁225と、上方に延びる一対の縦壁226とを有している。図8に示すようにベース金具220の端にフランジ227が形成されている。このフランジ227は、ボルト228(図4に示す)によって、トレイ部材51の側壁に固定される。ボルト228は、トレイ部材51の側壁にインサートされているナット(図示せず)に螺合される。
【0041】
図9に示されるように、上金具221は断面が逆U状に形成されている。すなわちこの上金具221は、バッテリユニット取付部155に固定される上壁230と、ベース金具220の縦壁226に前後方向から重なる一対の脚部231とを有している。図8に示すように上金具221にフランジ232が形成されている。このフランジ232はベース金具220のフランジ227に溶接されている。
【0042】
図9に示されるように、ベース金具220と上金具221とは、互いに前後の位置を板厚分だけずらした状態で組合わされている。そしてベース金具220の縦壁226と、上金具221の脚部231とが溶接部235によって互いに固定されている。溶接部235を溶接する前の状態において、上金具221は、ベース金具220に対する上下方向の位置(相対高さ)を調節することができる。上記以外の締結部121,122,125,126,127,128,210,211も同様に構成されている。
【0043】
複数のフレーム構体30が共通のプレス設備や溶接設備で製造される場合、フレーム構体30の形状のばらつきに関して、各フレーム構体30に共通の傾向が現れることが知られている。すなわちバッテリユニット取付部145,146,155,156,175,176,196,197,213,214の位置ずれに関して、各フレーム構体30に共通の傾向が現れる。そこで、各々のバッテリユニット取付部の位置ずれの程度に応じて、ベース金具220に対する上金具221の高さを調整する。すなわち、各々のバッテリユニット取付部に対し、桁部材101〜104と前側支持部材130,131のそれぞれの締結部121〜128,210,211が、均等に近い締付力で固定されるように、ベース金具220に対する上金具221の高さが調節される。そののち、上金具221がベース金具220に溶接される。
【0044】
以上説明したように、ベース金具220に対する高さが調節された上金具221の脚部231が、ベース金具220の縦壁226に溶接されている。このためフレーム構体30のバッテリユニット取付部145,146,155,156,175,176,196,197,213,214の高さのばらつきに応じて、それぞれの締結部121〜128,210,211をほぼ均等の締付力で固定することができる。よって、フレーム構体30の製造上のばらつきに起因するバッテリユニット取付部の高さのばらつきが吸収され、バッテリユニット14を好ましい状態でフレーム構体30に取付けることができる。
【0045】
本実施形態の電気自動車10は、桁部材101,102,103,104が左右のサイドメンバ31,32間にわたって設けられ、これら桁部材101,102,103,104によってサイドメンバ31,32どうしが結合されている。このためバッテリユニット14の桁部材101,102,103,104がクロスメンバに相当する剛性部材として機能することができる。
【0046】
また、荷重伝達部材170,171がスペンションアームサポートブラケット40,41に固定されており、サスペンションアームサポートブラケット40,41に入力する横方向の荷重が荷重伝達部材170,171を介して桁部材103に入力される。しかもサスペンションアームサポートブラケット40,41に入力した横方向の荷重の一部が、補助ブラケット180,181(図7に示す)を介して、桁部材103に入力する。
【0047】
このため,サスペンションアームサポートブラケット40,41付近にクロスメンバが配置されていなくても、サスペンションアームサポートブラケット40,41付近の剛性を桁部材103によって高めることができ、操縦安定性と乗り心地が向上する。言い換えると、大形のバッテリユニット14の一部を左右一対のサスペンションアームサポートブラケット40,41間のスペースに配置することが可能である。このため、大形のバッテリユニット14を搭載することが可能となり、電気自動車の走行距離を長くすることができる。
【0048】
本実施形態では、図5に示すように、フロアパネル70の下方にバッテリユニット14が配置される。しかもバッテリユニット14は可能な限り容量の大きなものが望まれる。このため大形のバッテリユニット14が、フロアパネル70に接近して配置される。その結果、例えばカバー部材52の前端部の上角部300とフロアパネル70との間の隙間がかなり狭くなってしまう。
【0049】
バッテリユニット14をフロアパネル70に極力近付けるには、この部分(隙間管理対象部Gと呼ぶ)の隙間を精度良く管理することが重要となる。そこで本実施形態では、以下に説明する位置決め手段、すなわち第1〜第3の位置決め部301,302,303が採用されている。
【0050】
第1の位置決め部301は、トレイ部材51とカバー部材52のいずれか一方に形成された第1基準孔310と、他方に形成された凸部311とを備えている。第1基準孔310と凸部311とは、互いに遊びが無くタイトに嵌合することができるように、高精度に加工されている。さらにこの第1の位置決め部301は、隙間管理対象部Gからの距離と高さが高精度に管理される。
【0051】
第1の位置決め部301によって、トレイ部材51とカバー部材52との相対位置が正確に規制される。すなわちカバー部材52の隙間管理対象部Gとトレイ部材51との位置関係が正確に規制される。なお、第1の位置決め部301として、例えば図4に示す特定位置に設けられたボルト96aと、このボルト96aが挿入されるボルト挿入孔96bが利用されてもよい。
【0052】
第2の位置決め部302は、図5と図6に示されるように、トレイ部材51と桁部材102のいずれか一方に形成された第2基準孔315と、他方に形成された凸部316とを備えている。第2基準孔315と凸部316とは、互いに遊びが無くタイトに嵌合することができるように、高精度に加工されている。第1の位置決め部301と第2の位置決め部302との相対位置についても高精度に管理されている。この第2の位置決め部302によって、トレイ部材51と桁部材102との相対位置が正確に規制される。その結果、カバー部材52の隙間管理対象部Gに対する桁部材102の位置が正確に規制される。
【0053】
第3の位置決め部303は、図6に示されるように、桁部材102とサイドメンバ31のいずれか一方に形成された第3基準孔320と、他方に形成された凸部321とによって構成されている。第3基準孔320と凸部321は、互いに遊びが無くタイトに嵌合することができるように、高精度に加工されている。第2の位置決め部302と第3の位置決め部303との相対位置についても高精度に管理されている。
【0054】
この第3の位置決め部303によって、桁部材102とサイドメンバ31との相対位置が正確に規制される。その結果、カバー部材52の隙間管理対象部Gに対するサイドメンバ31の第3の位置決め部303付近の位置が正確に規制される。なお、第3の位置決め部303として、図5と図6に示されるように、特定の位置のボルト157が利用されてもよい。
【0055】
フロアパネル70は、サイドメンバ31,32の所定位置に予め溶接によって固定されている。このため、バッテリユニット14の桁部材102がサイドメンバ31に組付けられた状態において、第1〜第3の位置決め部301,302,303により、カバー部材52の隙間管理対象部Gからフロアパネル70までの距離を高い精度で管理することができる。このため、バッテリケース50の製造上のばらつき等によってバッテリケース50の一部がフロアパネル70に干渉する不具合を回避することができる。
【0056】
本発明は、バッテリケースがリヤ側のサスペンションアーム支持部の周辺空間まで延びる構造の電気自動車に適用した場合に特に効果的であり、前記実施形態では車体後部に走行用モータが搭載された電気自動車について説明した。しかし本発明は、走行用モータが車体前部に配置された電気自動車にも適用することができる。
【0057】
なお本発明を実施するに当たって、フレーム構体、バッテリユニット、桁部材、モータをはじめとして、本発明の電気自動車の構成要素の構造及び配置等を適宜に変更して実施できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気自動車とバッテリユニットの斜視図。
【図2】図2に示された電気自動車のリヤサスペンションの斜視図。
【図3】図1に示された電気自動車のフレーム構体とバッテリユニットの斜視図。
【図4】図3に示されたバッテリユニットのバッテリケースと桁部材の斜視図
【図5】図1に示された電気自動車のフレーム構体とバッテリユニットの側面図。
【図6】図1に示された電気自動車のフレーム構体とバッテリユニットを上方から見た平面図。
【図7】図1に示された電気自動車のフレーム構体の一部と桁部材を下方から見た斜視図。
【図8】図3に示されたバッテリユニットの前から2番目に位置する桁部材の締結部の断面図。
【図9】図8中のF9−F9線に沿う桁部材の締結部の断面図。
【符号の説明】
【0059】
10…電気自動車
11…車体
14…バッテリユニット
30…フレーム構体
31,32…サイドメンバ
40,41…サスペンションアームサポートブラケット
50…バッテリケース
51…トレイ部材
52…カバー部材
101,102,103,104…桁部材
111,112,113,114…桁本体
121,122…締結部
123,124…締結部
125,126…締結部
127,128…締結部
170,171…荷重伝達部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の下部に配置される左右一対のサイドメンバを含むフレーム構体と、
前記車体の下方から前記フレーム構体に取付けられるバッテリユニットとを具備し、
前記バッテリユニットは、
トレイ部材とカバー部材とを有するバッテリケースと、
前記バッテリケースの前記トレイ部材に固定された桁部材とを具備し、
前記桁部材は前記車体の幅方向に延びる桁本体と、この桁本体の両端に設けられ前記サイドメンバのバッテリユニット取付部に固定される締結部とを有し、
前記桁部材の一端側の前記締結部を前記一方のサイドメンバのバッテリユニット取付部に固定し、かつ、前記桁部材の他端側の前記締結部を前記他方のサイドメンバのバッテリユニット取付部に固定することにより、前記桁部材を前記一対のサイドメンバ間にわたって配置したことを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
前記一対のサイドメンバに、それぞれリヤサスペンションアームを支持するためのサスペンションアームサポートブラケットが設けられ、
前記サスペンションアームブラケットに荷重伝達部が固定され、
前記荷重伝達部材に前記桁部材の前記締結部が固定されたことを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記一対のサイドメンバに設けられた前記一対のサスペンションアームサポートブラケット間に前記バッテリユニットの一部が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記締結部は、前記桁本体の上面に固定される底壁と上方に延びる縦壁とを有するベース金具と、前記バッテリユニット取付部に固定される上壁と前記縦壁に前後方向から重なる脚部を有する上金具とを具備し、該上金具は、前記脚部が前記縦壁に固定される前の状態において前記ベース金具に対する高さを調節可能であり、高さが調節された前記上金具の前記脚部を前記ベース金具の前記縦壁に溶接してなることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−83597(P2009−83597A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254259(P2007−254259)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】