説明

電気車用電源装置

【課題】離線補償コンデンサや充電抑制回路に異常が発生した場合に、その異常を検知できる電気車用電源装置を提供することである。
【解決手段】抵抗器とダイオードとが並列接続して形成された充電抑制回路7を離線補償コンデンサ8に直列接続し、離線補償コンデンサ8への充電電流は充電抑制回路7の抵抗器によって電流を制限し、パンタグラフ1aが架線1から離線した場合には離線補償コンデンサ8から充電抑制回路7のダイオードを通して通常フィルタコンデンサ9側に電流を制限することなく必要な電流を供給する。故障判定部12は、充電抑制回路7や離線補償コンデンサ8を流れる電流または充電抑制回路7や離線補償コンデンサ8の電圧に基づいて充電抑制回路7または離線補償コンデンサ8の故障を検出する。を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架線から電力を受け取り電気車の負荷に電力を供給する電気車用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気車用電源装置においては、架線から電力を受け取りインバータで交流電力に変換し、電気車の照明や空調装置などの負荷に電力を供給するようにしている。この電気車用電源装置は、電圧検出器にて架線電圧の有無を取得し、電圧が印加されている場合に動作を開始する。インバータは入力フィルタコンデンサを介して直流電力を入力し、交流電力に変換して車内負荷に電力を供給するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような電気車用電源装置においては、パンタグラフが架線から離線した場合に短時間であれば、入力フィルタコンデンサに充電された電荷を放出して負荷側に電力を供給することができる。従って、パンタグラフが離線した場合の電力供給可能時間を延長する場合には、入力フィルタコンデンサの容量を増加すれば良いことになる。
【0004】
ここで、入力フィルタコンデンサの容量を増加するとパンタグラフが架線に再着線した場合に、架線電圧と入力フィルタコンデンサの電圧との電圧差により、架線から入力フィルタコンデンサに過大な充電電流が流れることがある。過大な充電電流が流れると、電気車用電源装置の入力過電流保護手段や入力フィルタコンデンサの過電圧保護手段が動作したり、変電所側の過電流保護手段が動作したりするので、充電電流が過大とならないようにしなければならない。
【0005】
そこで、例えば、特願2006−338481に示すように、入力フィルタコンデンサを、最低動作に必要な容量の通常フィルタコンデンサと、パンタグラフが架線から離線した場合の電力供給可能時間を延長するために必要な容量の離線補償コンデンサとの2系統に分離し、通常フィルタコンデンサと離線補償コンデンサとを並列接続するようにしたものが開発されている。
【特許文献1】特開平6−261403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、入力フィルタコンデンサを通常フィルタコンデンサと離線補償コンデンサとに分離して並列接続し、離線補償コンデンサの前段に充電抑制回路を接続したものでは、充電抑制回路や離線補償コンデンサの故障検出手段を有していない。
【0007】
離線補償コンデンサが短絡故障した場合には、離線補償コンデンサに充電できないだけでなく、通常フィルタコンデンサも十分に充電されないため、パンタグラフが架線から離線した場合に負荷側に電力を供給できる時間が短くなる。従って、離線補償コンデンサの故障の検知をする必要がある。また、充電抑制回路に短絡故障が発生した場合には、離線補償コンデンサへの充電電流が過大となり、初期充電回路内の充電抵抗にダメージを与えることになる。
【0008】
一方、充電抑制回路もしくは離線補償コンデンサに開放故障が発生すると、離線補償コンデンサに電荷を蓄積できないので、パンタグラフが架線から離線した場合に負荷側に電力を供給できる時間が短くなる。
【0009】
なお、充電抑制回路や離線補償コンデンサの短絡故障または開放故障が発生した場合であってもインバータの動作は可能であるため、充電抑制回路や離線補償コンデンサの故障に気づかずに使用し続けることになり、その場合には、パンタグラフが架線から離線した場合、負荷側に電力を供給できる時間を延長できなくなる。
【0010】
本発明の目的は、離線補償コンデンサや充電抑制回路に異常が発生した場合に、その異常を検知できる電気車用電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電気車用電源装置は、架線からパンタグラフを介して入力した直流をON/OFFする接触器と、直流を正弦波PWM交流に変換する入力フィルタコンデンサを有するインバータと、電源投入時の前記入力フィルタコンデンサへの突入電流を抑制するための初期充電回路と、前記インバータの出力を正弦波に波形整形するためのACフィルタと、前記ACフィルタの出力を直流回路と絶縁して所定の電圧に変換し電車の負荷に電力を供給するための絶縁トランスとから構成され、前記入力フィルタコンデンサを最低動作に必要な容量の通常フィルタコンデンサと前記パンタグラフが前記架線から離線した場合の電力供給可能時間を延長するために必要な容量の離線補償コンデンサとの2系統に分離し、通常フィルタコンデンサと離線補償コンデンサとを並列接続した車両用電源装置において、抵抗器とダイオードとが並列接続して形成された充電抑制回路を前記離線補償コンデンサに直列接続し、前記離線補償コンデンサへの充電電流は前記充電抑制回路の抵抗器によって電流を制限し、パンタグラフが架線から離線した場合には離線補償コンデンサから充電抑制回路のダイオードを通して通常フィルタコンデンサ側に電流を制限することなく必要な電流を供給し、前記充電抑制回路や前記離線補償コンデンサを流れる電流または前記充電抑制回路や前記離線補償コンデンサの電圧に基づいて前記充電抑制回路または前記離線補償コンデンサの故障を検出する故障判定部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、離線補償コンデンサや充電抑制回路に異常が発生した場合に、その異常を検知できる電気車用電源装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る電気車用電源装置の一例を示す構成図である。架線1からパンタグラフ1aを介して直流を入力し、直流入力をON/OFFする接触器(CTT)2を介して初期充電回路3に入力する。初期充電回路3は抵抗器と接点とを有し、電源投入時において接点が開いており、抵抗を通して架線1からの電流を後述の入力フィルタコンデンサである通常フィルタコンデンサ9及び離線補償コンデンサ8に供給する。これにより、通常フィルタコンデンサ9及び離線補償コンデンサ8への突入電流を抑制する。通常フィルタコンデンサ9及び離線補償コンデンサ8が充電された後は初期充電回路3の接点を閉じる。接触器(CTT)2及び初期充電回路3の接点は、制御部11からの指令により開閉制御される。
【0014】
初期充電回路3を通った直流は、インバータ4に入力される。インバータ4は直流をそれぞれ正弦波PWM交流に変換する通常フィルタコンデンサ9を有し、通常フィルタコンデンサ9に並列に、離線補償コンデンサ8と充電抑制回路7との直列回路が接続されている。充電抑制回路7は、抵抗器とダイオードとが並列接続されて形成されている。ACフィルタ5は、インバータ4の出力を正弦波に波形整形し、絶縁トランス6を介して車両電源を得る。つまり、絶縁トランス6はACフィルタ5の出力を直流回路と絶縁して任意の電圧に変換し電車の負荷に電力を供給する。
【0015】
充電抑制回路7内のダイオードの極性は、通常フィルタコンデンサ9から離線補償コンデンサ8に電流が流れる方向である。通常フィルタコンデンサ9の容量は、インバータ4が動作できる最小限の容量であり、架線電圧とインバータ4が動作できる通常フィルタコンデンサ9の最低動作電圧との差電圧時に、初期充電回路3の接点が投入状態にあるとき、入力過電流などの保護動作が発生しない容量を選定する。離線補償コンデンサ8の容量は、パンタグラフ1aが架線1と離線状態にあり、負荷側に電力を規定時間供給することが可能となる十分大きな容量を選定する。
【0016】
また、充電抑制回路7に流れる電流を検出する電流検出器10が設けられる。電流検出器10は、充電抑制回路7と通常フィルタコンデンサ9との接続点の充電抑制回路7側に設けられる。電流検出器10で検出された充電抑制回路7に流れる電流は故障判定部12に入力される。
【0017】
パンタグラフ1aと架線1とが離れている状態から、パンタグラフ1aが架線1と接触したとすると、制御部11は接触器2を閉じ初期充電回路3の接点は開いたままとする。これにより、架線1からパンタグラフ1aを介して初期充電回路3の充電抵抗に電流が流れ、通常フィルタコンデンサ9を充電する。同時に充電抑制回路7を介して離線補償コンデンサ8を充電する。
【0018】
ここで、充電抑制回路7に短絡故障が発生している場合には、充電抑制回路7には正常時に比べて大きな電流が流れることになる。そこで、故障判定部12は、電流検出器10で検出した電流が短絡検出設定値以上となった場合には充電抑制回路7が短絡故障であると判断する。
【0019】
また、充電抑制回路7もしくは離線補償コンデンサ8に開放故障が発生している場合には、充電抑制回路7には電流が流れないことになる。そこで、故障判定部12は、電流検出器10で検出した電流から電流が流れていない(電流が零)と判断した場合には、充電抑制回路7もしくは離線補償コンデンサ8が開放状態であると判断する。
【0020】
また、正常であるときの充電時に電流検出器10で検出した電流を積分すると、離線補償コンデンサ8の容量が求められる。そこで、故障判定部12は、電流検出器10で検出した電流を積分して求めた離線補償コンデンサ8の容量と、初期の離線補償コンデンサ8の容量とを比較する。これにより、離線補償コンデンサ8の容量低下を確認でき、離線補償コンデンサの劣化判断ができる。
【0021】
以上の説明では、充電抑制回路7に流れる電流を検出する電流検出器10は、充電抑制回路7と通常フィルタコンデンサ9との接続点の充電抑制回路7側に設けたが、図2に示すように、充電抑制回路7と離線保障コンデンサ8との直列回路の充電抑制回路7と離線保障コンデンサ8との間に設けてもよい。
【0022】
本発明の第1の実施の形態によれば、充電抑制回路7の短絡故障、充電抑制回路7もしくは離線補償コンデンサ8の開放故障を検出できるので、これらの故障情報を伝送などを介してモニタ画面に表示したり、電気車用電源装置を停止したりすることが可能となる。また、離線補償コンデンサ8の容量を求めることができるので、離線保障コンデンサ8の交換の判断が容易に行える。
【0023】
(第2の実施の形態)
図3は本発明の第2の実施の形態に係る電気車用電源装置の一例を示す構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、電流検出器10は充電抑制回路7に流れる電流を測定するように配置することに代えて、充電抑制回路7内の抵抗に流れる電流を測定するように配置したものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0024】
図3において、電流検出器10は充電抑制回路7内の抵抗に対して通常フィルタコンデンサ9との接続点側の位置に接続され、充電抑制回路7内の抵抗に流れる電流を測定する。充電抑制回路7内の抵抗に短絡故障が発生している場合には、充電抑制回路7内の抵抗には正常時に比べて大きな電流が流れることになる。そこで、故障判定部12は電流検出器10で検出した電流が短絡検出設定値以上となった場合に、充電抑制回路7内の抵抗が短絡故障であると判断する。
【0025】
また、充電抑制回路7内のダイオードに短絡故障が発生している場合には、充電抑制回路7内のダイオードに並列接続された充電抑制回路7内の抵抗に電流は流れないことになる。一方、充電抑制回路7もしくは離線補償コンデンサ8に開放故障が発生している場合にも、充電抑制回路7内の抵抗には電流が流れないことになる。そこで、故障判定部12は、電流検出器10で検出した電流から充電抑制回路7の抵抗に電流が流れていないと判断した場合には、充電抑制回路7のダイオードが短絡状態、充電抑制回路7または離線補償コンデンサ8の開放状態であると判断する。充電抑制回路7の開放状態とは、充電抑制回路7の抵抗及びダイオードの双方が開放している状態をいう。
【0026】
また、正常であるときの充電時に電流検出器10で検出した電流を積分すると、離線補償コンデンサ8の容量が求められる。故障判定部12は、電流検出器10で検出した電流を積分して求めた離線補償コンデンサ8の容量と、初期の離線補償コンデンサ8の容量とを比較する。これにより、離線補償コンデンサ8の容量低下を確認できる。
【0027】
以上の説明では、充電抑制回路7の抵抗に流れる電流を検出する電流検出器10は、充電抑制回路7内の抵抗に対して通常フィルタコンデンサ9との接続点側の位置に接続したが、図4に示すように、離線補償コンデンサ8との接続点側の位置に接続するようにしてもよい。
【0028】
本発明の第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態に効果に加え、充電抑制回路7の抵抗に電流が流れたかどうかの判断となるため、充電抑制回路7の短絡故障が抵抗かダイオードかの識別ができる。
【0029】
(第3の実施の形態)
図5は本発明の第3の実施の形態に係る電気車用電源装置の一例を示す構成図である。この第3の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、電流検出器10は充電抑制回路7に流れる電流を測定するように配置することに代えて、充電抑制回路7内のダイオードに流れる電流を測定するように配置したものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0030】
図5において、電流検出器10は充電抑制回路7内のダイオードに対して通常フィルタコンデンサ9との接続点側の位置に接続され、充電抑制回路7内のダイオードに流れる電流を測定する。
【0031】
ダイオードが正常であれば充電抑制回路7内のダイオードに流れる電流は離線補償コンデンサ8から通常フィルタコンデンサ9に流れる方向であるが、ダイオードに短絡故障が発生している場合には、通常フィルタコンデンサ9から離線補償コンデンサ8に流れる方向にも電流が流れる。そこで、故障判定部12は、電流検出器10で検出した電流が通常フィルタコンデンサ9から離線補償コンデンサ8に流れる方向であった場合に、ダイオードが短絡故障であると判断する。
【0032】
また、充電抑制回路7内のダイオードに開放故障が発生している場合には、放電時にダイオードには電流が流れないことになる。そこで、故障判定部12は、放電時に電流検出器10で検出した電流が流れていないと判断した場合には、充電抑制回路7内のダイオードが開放状態であると判断する。
【0033】
以上の説明では、充電抑制回路7のダイオードに流れる電流を検出する電流検出器10は、充電抑制回路7内のダイオードに対して通常フィルタコンデンサ9との接続点側の位置に接続したが、図6に示すように、離線補償コンデンサ8との接続点側の位置に接続するようにしてもよい。
【0034】
本発明の第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態に効果に加え、充電抑制回路7のダイオードに流れる電流の方向や電流が流れたかどうかの判断となるため、充電抑制回路の故障の検出が容易にできる。充電抑制回路7内のダイオードに開放故障が発生した場合には、放電時間が長くなり電気車用電源装置の完全停止までの時間が延びることになるが、伝送などを介してモニタ画面に開放状態であることを表示したり、電気車用電源装置の故障と判断して記録を残したりすることが可能となる。
【0035】
(第4の実施の形態)
図7は本発明の第4の実施の形態に係る電気車用電源装置の一例を示す構成図である。この第4の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、電流検出器10に代えて、離線補償コンデンサ8の電圧を測定する電圧検出器13A及び通常フィルタコンデンサ9の電圧を測定する電圧検出器13Bを設け、故障判定部12は、離線補償コンデンサ8の電圧及び通常フィルタコンデンサ9の電圧に基づいて充電抑制回路7の短絡故障を検出するようにしたものである。図1と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0036】
図7において、離線補償コンデンサ8の電圧を測定する電圧検出器13A及び通常フィルタコンデンサ9の電圧を測定する電圧検出器13Bが設けられている。充電抑制回路7に短絡故障が発生している場合には、充電中の通常フィルタコンデンサ9の電圧と離線補償コンデンサ8の電圧との差電圧はなくなる。そこで、故障判定部12は、充電中に電圧検出器13Aで検出した離線補償コンデンサ8の電圧が電圧検出器13Bで検出した通常フィルタコンデンサ9の電圧と同じ充電電圧であった場合には、充電抑制回路7が短絡故障であると判断する。また、充電開始してから電圧検出器13Aで検出した電圧があらかじめ決めた設定電圧と一致するまでの時間と、通常フィルタコンデンサ9の電圧があらかじめ決めた設定電圧と一致するまでの時間が同じである場合に、充電抑制回路7が短絡故障であると判断するようにしてもよい。
【0037】
また、充電抑制回路7が開放故障であるとき、あるいは離線補償コンデンサ8が短絡故障であるときは、充電時において離線補償コンデンサ8の電圧は零である。そこで、充電中に電圧検出器13Aで検出した離線補償コンデンサ8の電圧が零であるときは、充電抑制回路7は開放故障あるいは離線補償コンデンサ8の短絡故障であると判断する。
【0038】
本発明の第4の実施の形態によれば、充電中の離線補償コンデンサ8の電圧及び通常フィルタコンデンサ9の電圧を計測し比較することによって、充電抑制回路7の短絡故障を検出できる。また、充電中の離線補償コンデンサ8の電圧を測定することによって、充電抑制回路7は開放故障あるいは離線補償コンデンサ8の短絡故障のいずれかであることを検出できる。従って、伝送などを介してモニタ画面に開放状態であることを表示したり、電気車用電源装置の故障と判断して記録を残したりすることが可能となる。
【0039】
(第5の実施の形態)
図8は本発明の第5の実施の形態に係る電気車用電源装置の一例を示す構成図である。この第5の実施の形態は、図7に示した第7の実施の形態に対し、離線補償コンデンサ8の電圧を測定する電圧検出器13A及び通常フィルタコンデンサ9の電圧を測定する電圧検出器13Bに代えて、充電抑制回路7の電圧を検出する電圧検収器13Cを設け、故障判定部12は、充電抑制回路7の電圧に基づいて充電抑制回路7の短絡故障、開放故障、あるいは離線保障コンデンサ8の開放故障であることを検出するようにしたものである。図7と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0040】
図8において、充電抑制回路7の電圧を測定する電圧検出器13Cが設けられている。
【0041】
充電抑制回路7に短絡故障、充電抑制回路7に開放故障、もしくは離線補償コンデンサ8に開放故障が発生している場合、充電抑制回路7の電圧が零となり充電抑制回路7の電圧が発生しなくなる。
【0042】
そこで、電圧検出器13Cで検出した電圧が零である場合には、充電抑制回路7に短絡故障、充電抑制回路7に開放故障、もしくは離線補償コンデンサ8に開放故障が発生していると判断する。
【0043】
本発明の第5の実施の形態によれば、充電抑制回路7の電圧が零であるとき(電圧がなくなったとき)に、充電抑制回路7の短絡故障、充電抑制回路7の開放故障、もしくは離線補償コンデンサ8の開放故障のいずれかであることを検出できる。従って、伝送などを介してモニタ画面に開放状態であることを表示したり、電気車用電源装置の故障と判断して記録を残したりすることが可能となる。
【0044】
(第6の実施の形態)
図9は本発明の第6の実施の形態に係る電気車用電源装置の一例を示す構成図である。この第6の実施の形態は、インバータ4a、4b、初期充電回路7a、7b、離線保障コンデンサ8a、8bを二重化し、この2組のインバータ4a、4bのうちいずれか一方を選択しインバータ4の出力を正弦波に波形整形するためのACフィルタ5に接続するための系切換接点14を追加して設け、故障判定部12は、系切換接点14で切り換えられた一方のインバータ4aの充電中における通常フィルタコンデンサ9aの充電時間と、他方のインバータ4bの充電中における通常フィルタコンデンサ9bの充電時間との比較により、充電抑制回路7a、7bの短絡を検出するようにしたものである。
【0045】
図9に示すように、インバータ4a、4b、初期充電回路7a、7b、離線保障コンデンサ8a、8bは二重化されている。このような待機二重系の電気車用電源装置において、インバータ4a側を起動する場合には、系切換接点14のSW1-1、SW1-3を投入する。インバータ4b側を起動する場合には、系切換接点14のSW1-2、SW1-4を投入する。
【0046】
ここで、インバータ4a側の回路とインバータ4b側の回路にて、抵抗・コンデンサの定数が同じであれば、通常フィルタコンデンサ9aの充電時間と通常フィルタコンデンサ9bの充電時間とは一致する。そこで、a側の通常フィルタコンデンサ9aが充電される時間とb側の通常フィルタコンデンサ9bが充電される時間とを比較し、充電時間が一致しない場合に、充電抑制回路7a、7bの短絡故障であると判断する。
【0047】
本発明の第6の実施の形態によれば、待機二重系の電気車用電源装置においては、通常フィルタコンデンサ9の電圧を検出すれば、充電抑制回路7a、7bの短絡故障の検出ができるので、充電抑制回路7a、7bに新たに電圧検出器を取り付ける必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電気車用電源装置の一例を示す構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る電気車用電源装置の他の一例を示す構成図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る電気車用電源装置の一例を示す構成図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る電気車用電源装置の他の一例を示す構成図。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る電気車用電源装置の一例を示す構成図。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る電気車用電源装置の他の一例を示す構成図
【図7】本発明の第4の実施の形態に係る電気車用電源装置の一例を示す構成図。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係る電気車用電源装置の一例を示す構成図。
【図9】本発明の第6の実施の形態に係る電気車用電源装置の一例を示す構成図。
【符号の説明】
【0049】
1…架線、1a…パンタグラフ、2…、3…初期充電回路、4…インバータ、5…ACフィルタ、6…絶縁トランス、7…充電抑制回路、8…離線補償コンデンサ、9…通常フィルタコンデンサ、10…電流検出器、11…制御部、12…故障判定部、13…電圧検出器、14…系切換接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線からパンタグラフを介して入力した直流をON/OFFする接触器と、直流を正弦波PWM交流に変換する入力フィルタコンデンサを有するインバータと、電源投入時の前記入力フィルタコンデンサへの突入電流を抑制するための初期充電回路と、前記インバータの出力を正弦波に波形整形するためのACフィルタと、前記ACフィルタの出力を直流回路と絶縁して所定の電圧に変換し電車の負荷に電力を供給するための絶縁トランスとから構成され、前記入力フィルタコンデンサを最低動作に必要な容量の通常フィルタコンデンサと前記パンタグラフが前記架線から離線した場合の電力供給可能時間を延長するために必要な容量の離線補償コンデンサとの2系統に分離し、通常フィルタコンデンサと離線補償コンデンサとを並列接続した車両用電源装置において、抵抗器とダイオードとが並列接続して形成された充電抑制回路を前記離線補償コンデンサに直列接続し、前記離線補償コンデンサへの充電電流は前記充電抑制回路の抵抗器によって電流を制限し、パンタグラフが架線から離線した場合には離線補償コンデンサから充電抑制回路のダイオードを通して通常フィルタコンデンサ側に電流を制限することなく必要な電流を供給し、前記充電抑制回路を流れる電流または前記充電抑制回路や前記離線補償コンデンサの電圧に基づいて前記充電抑制回路または前記離線補償コンデンサの故障を検出する故障判定部を設けたことを特徴とする電気車用電源装置。
【請求項2】
前記故障判定部は、前記充電抑制回路を流れる電流が短絡検出設定値以上となった場合には、前記充電抑制回路は短絡故障であると判断することを特徴とする請求項1記載の電気車用電源装置。
【請求項3】
前記故障判定部は、前記充電抑制回路を流れる電流が零である場合には、前記充電抑制回路もしくは前記離線補償コンデンサは開放故障であると判断することを特徴とする請求項1記載の電気車用電源装置。
【請求項4】
前記故障判定部は、充電開始してから前記離線保障コンデンサの電圧が予め定めた設定電圧になるまでの時間と前記通常フィルタコンデンサの電圧が予め定めた設定電圧になるまでの時間とが同じである場合、充電中の前記離線保障コンデンサの電圧と前記通常フィルタコンデンサの電圧とが等しい場合、前記充電抑制回路は短絡故障であると判断することを特徴とする請求項1記載の電気車用電源装置。
【請求項5】
前記故障判定部は、前記充電抑制回路の電圧が零である場合には、充電抑制回路に短絡故障、充電抑制回路に開放故障、もしくは離線補償コンデンサに開放故障が発生していると判断することを特徴とする請求項1記載の電気車用電源装置。
【請求項6】
前記故障判定部は、正常であるときの前記離線補償コンデンサの充電電流を積分して前記離線補償コンデンサの容量を求め初期の離線補償コンデンサの容量とを比較して前記離線補償コンデンサの劣化判断を行うことを特徴とする請求項1記載の電気車用電源装置。
【請求項7】
前記インバータ、前記初期充電回路及び離線保障コンデンサを二重化し、この2組のインバータのうちいずれか一方を選択しインバータの出力を正弦波に波形整形するためのACフィルタに接続するための系切換接点を追加して設け、前記故障判定部は、系切換接点で切り換えられた一方のインバータの充電中における通常フィルタコンデンサの充電時間と、他方のインバータの充電中における通常フィルタコンデンサの充電時間との比較により、前記充電抑制回路の短絡を検出することを特徴とする請求項1記載の電気車用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−41805(P2010−41805A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201086(P2008−201086)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】