説明

電気部品の接続方法、この接続方法により接続された複合部品および電気部品の接続装置

【課題】電気部品への熱影響を排除した電気部品の接続方法および接続装置、並びに熱影響を排除した複合部品を提供する。
【解決手段】本発明の電気部品の接続方法は、基板WのパッドPに電気部品EPのリードLを重ね合わせて配置し、重複配置されたパッドPおよびリードLの重複部を含む近傍領域に、ノズル30から金属微粒子Gを気体の噴流に乗せて噴射して衝突固着させ、常温かつ常圧下においてパッドPにリードLを接続固定するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品の接続部に、被接続部の投影面積が接続部よりも小さい他の電気部品の被接続部を電気的に接続固定する電気部品の接続方法、この接続方法により接続された電気部品および電気部品の接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電気部品の接続部に、他の電気部品の被接続部を電気的に接続固定する接続方法として、「はんだ」や「ろう」を加熱溶融して接合する「はんだ付」や「ろう付」が広く利用されている。例えば、電気部品の代表例であるプリント配線基板の接続端子(パッドやランド)に、他の電気部品の代表例であるICやトランジスタ、電気コネクタ等がはんだ付により実装され、プリント回路板が形成される。
【0003】
プリント配線基板への電気部品のはんだ付は、プリント配線基板のパッド部にはんだペーストを印刷し、その上に電気部品をセットして加熱炉を通過させ、一括してはんだ付するリフロー方式の手法、電気部品への熱影響を避けるため、はんだごてを用いて各電気部品を個々にはんだ付する手法などが、広く用いられている(例えば、引用文献1、引用文献2を参照)。近年では、はんだごてを介してはんだを加熱溶融させる加熱方法に代えて、レーザ光を照射してはんだを加熱溶融させるレーザ加熱の加熱方法(例えば、引用文献3を参照)が用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−8452号公報
【特許文献2】特開平7−283271号公報
【特許文献3】特開2003−204149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の接続方法においては、はんだを融点以上の温度に加熱して溶融させる必要がある。リフロー方式では、電気部品全体が加熱され高温になるため、耐熱温度が低い電気部品はこの方法で接続することができない。はんだごてによる加熱方式、レーザ光による加熱方式は局所加熱のため、リフロー方式のように電気部品全体が高温にさらされることはない。しかし、はんだ接続される電気部品の接続部および被接続部を、共にはんだの溶融温度以上に上昇させて一定時間保持する必要がある。そのため、被接続部を介して電気部品に伝わる熱の影響、例えばリードを介してICパッケージに伝わる熱の影響や、銅線を介して絶縁被覆に伝わる熱の影響等を、排除することができないという課題があった。
【0006】
特に、環境保護問題の高まりに伴い、JEITA(社団法人電子情報技術産業協会)により使用が推奨されている「鉛フリーはんだ(Sn−3.0Ag−0.5Cu等)」は、永く用いられてきた鉛を含むはんだ(Sn−Pb系はんだ)よりも溶融温度が高いため、耐熱保障温度が低い電気部品には使用できない場合があるという課題があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、電気部品への熱影響を排除して電気的に接続可能な電気部品の接続方法および接続装置、並びに熱影響を排除した複合部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため、本発明を例示する第1の態様は、電気部品の接続部(例えば、実施形態における基板のパッドP)に、被接続部の投影面積が接続部よりも小さい他の電気部品の被接続部(例えば、実施形態における電気部品のリードL)を電気的に接続固定する電気部品の接続方法である。この電気部品の接続方法は、前記電気部品の接続部に前記他の電気部品の被接続部を重ね合わせて配置し、重複配置された接続部および被接続部の重複部を含む近傍領域にノズルから金属微粒子を気体の噴流に乗せて噴射して衝突固着させ、常温かつ常圧下において接続部に被接続部を接続固定するように構成される。
【0009】
なお、前記金属微粒子は、平均粒径が10μm以下の微粒子であることが好ましい。また、前記金属微粒子は、はんだ合金の微粒子であることが好ましく、成分に鉛を含まない組成のはんだ合金の微粒子であることが望ましい。
【0010】
本発明を例示する第2の態様は、電気部品が接続された複合部品(例えば、実施形態における電気部品EPが接続された基板W)である。この複合部品は、上記いずれかに記載の電気部品の接続方法により前記電気部品と前記他の電気部品とが接続固定されることにより構成される。
【0011】
本発明を例示する第3の態様は、電気部品の接続部(例えば、実施形態における基板のパッドP)に、被接続部の投影面積が接続部よりも小さい他の電気部品の被接続部(例えば、実施形態における電気部品のリードL)を電気的に接続固定する電気部品の接続装置である。この電気部品の接続装置は、前記電気部品の接続部に前記他の電気部品の被接続部を重ね合わせた状態で保持する部品保持装置と、ノズルに供給された金属微粒子をノズルの内部に設けられた流路を流れる気体に分散させて流下させ、この流路の下流端部に設けられた噴射口から気体とともに噴射する噴射装置とを備え、部品保持装置により重複状態で保持された接続部および被接続部の重複部を含む近傍領域に、噴射口から金属微粒子を気体の噴流に乗せて噴射して衝突固着させ、常温かつ常圧下において接続部に被接続部を接続固定するように構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、接続部および被接続部の重複部を含む近傍領域に、ノズルから金属微粒子を気体の噴流に乗せて基板に噴射して衝突固着させ、常温かつ常圧下で接続部に被接続部が接続固定される。このため、電気部品への熱影響を排除して電気的に接続可能な電気部品の接続方法および接続装置、並びに熱影響を排除した複合部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電気部品の接続装置の概要構成図である。
【図2】図1におけるII−II矢視の平面図である。
【図3】噴射口近傍における金属微粒子の流れ、およびパッドおよびリードを覆ってこれらを電気的に接続固定する接続状態を説明するための模式図である。
【図4】基板にリードが接続固定された領域の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。まず、本発明に係る電気部品の接続方法を実施するための装置(以下、「部品接続装置」という)BSについて、好適な概要構成を略示する図1、および図1中にII−II矢視で示す平面図を参照しながら説明する。実施形態では、電気部品の接続部に他の電気部品の被接続部を電気的に接続固定する部品接続装置の一例として、回路パターンが形成された基板Wのパッド(銅箔パターンの接続端子)Pに、サーフェースマウント形式の電気部品EPのリードLを接続する形態の部品接続装置について説明する。
【0015】
部品接続装置BSは、大別的には、上面に電気部品EPが位置決めされた基板Wを保持する部品保持装置1と、部品保持装置1に保持された基板Wとノズル30とを相対移動させる移動機構2と、ノズル30内部に金属微粒子を気体とともに流下させる流路を有し、流路の下流端部に開口する噴射口35から気体の噴流に乗せて噴射する噴射装置3と、噴射装置3による金属微粒子の噴射を制御する噴射制御部81および、移動機構2による基板Wとノズル30との相対移動を制御する移動制御部82を備えた制御装置8、などを備えて構成される。
【0016】
基板WのパッドPは、このパッド上に電気接続される電気部品のリードLよりも投影面積が大きく、平面視においてリードLの周囲にパッドPが視認されるように形成される。例えばリードLの幅を0.6[mm](厚さを0.2[mm])とした場合に、パッドPの直径は1〜1.8[mm]程度に設定される。電気部品EPは、この電気部品が実装される基板Wの所定位置に位置決めされ、各リードが対応する各パッドPに重ね合わされた状態で、微量の接着剤や保持治具などの保持部材により基板に係止保持(仮止め)されており、移動機構2により基板Wを移動させたときにリードLとパッドPとがずれないようになっている。
【0017】
部品保持装置1は、上記のように電気部品が保持された基板Wを、噴射装置3に対して位置決めした状態で固定保持可能に構成される。このような部品保持装置1の構成として、例えば、セラミックポーラスやメタルポーラス等のポーラス部材を利用し、テーブル10の上面に基板Wを吸着して固定保持する構成が例示される。テーブル10は、噴射装置3から噴射される金属微粒子と気体とからなる固気混相流の噴射力に対して十分な剛性を有して構成される。
【0018】
図1におけるII−II矢視の平面図を図2に示すように、本構成形態では、テーブル10に複数の位置決めピン12を出没変位可能に設け、テーブル上に載置した基板Wの側縁を位置決めピン12に付き当てることにより、基板Wがテーブル上の基準位置に位置決めされるようにした構成を示す。基板Wを支持する支持面(テーブル上面)11は、基板Wに対して相対的に高い平面度で平坦に形成されており、真空発生器等によりテーブル内部の排気路が排気されたときに、ポーラス部材の微細な孔部を通して支持面近傍の空気が吸引され、基板Wが支持面11に吸引されて強固に固定保持される。なお、このようなポーラス部材を用いた真空吸着手法に代えて、基板Wの周辺部を複数のクランプによりテーブル10に機械的に固定するように構成してもよい。
【0019】
移動機構2は、部品保持装置1に保持された基板Wとノズル30とを相対移動させる。ここで、基板Wおよびノズル30はいずれを移動させるように構成してもよいが、図示する構成形態では、上下に延びる噴射装置3の噴射軸CLに対し、これと直交する水平面内の二方向にテーブル10を移動させるX−Yステージ20を用いた構成例を示す。X−Yステージ20は、テーブル10をX軸方向に移動させるX軸移動機構21、およびテーブル10をY軸方向に移動させるY軸移動機構22から構成される。なるX−Yステージ形態の移動機構を示す。なお、基板Wとノズル30との上下方向の相対移動については、詳細図示を省略するZ軸駆移動機構により、テーブル10に対してノズル30を上下に移動させる構成になっている。
【0020】
噴射装置3は、ノズル30に供給された金属微粒子を、ノズル30の内部に設けられた流路を流れる気体に分散させて流下させ、下流端部に設けられた噴射口35から気体とともに噴射する。このような噴射装置として、例えば、本出願人に係る特開2000−94332号公報に開示したような噴射装置(単管タイプの噴射装置という)や、本出願人に係る特開2006−224205号公報に開示したような噴射装置(複合管タイプの噴射装置という)がある。本発明は、上記いずれの形態の噴射装置でも適用可能であるが、図1は、噴射装置3として複合管タイプの噴射装置を適用した構成例を示す。なお、噴射方向は水平でもよい。
【0021】
この噴射装置3は、金属微粒子を気体とともに噴射するノズル30と、ノズル30に金属微粒子Gを供給する微粒子供給ユニット40と、ノズル30に噴射用のガスを供給するガス供給ユニット45と、噴射口35から噴射されたが基板Wに固着されなかった金属微粒子を吸引する微粒子回収装置55などを備えて構成される。
【0022】
ノズル30には、基体となるボディ31の内部を上下に延びるパイプ状の供給ノズル32が設けられ、この供給ノズル32の上端部に接続されたガス供給パイプ46を介して、ガス供給ユニット45からガス(供給ガスという)が供給される。供給ノズル32の上下中間部には、金属微粒子が通過可能な孔部33が壁面を貫通して開口形成され、この孔部33の周囲に形成された微粒子供給溝43に微粒子導入路42を通って微粒子タンク41に貯留された金属微粒子Gが供給される。
【0023】
金属微粒子Gは、接続部位に求められる電気的特性や機械的特性などに応じて適宜な組成のものを使用できる。例えば、平均粒径が10[μm]以下の、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)の微粒子、有鉛・無鉛のはんだ合金の微粒子などが例示される。金属微粒子Gの平均粒径を10[μm]以下とすることにより、金属微粒子Gの衝突による固着効率を向上させることができるとともに、微細な接続組織でリードLを接続固定することができる。
【0024】
上記平均粒径の金属微粒子として、銅、銀、金の微粒子を用いることにより、母材金属の高い導電率を利用した固着接続部を形成することができる。一方、金属微粒子として、低融点(180〜230℃)であるはんだ合金を用いることにより、衝突時の溶着性を高めることができ、金属密度が高い緻密な接続組織の固着接続部を形成することができる。さらに、鉛フリー組成(例えば、Sn−3.0Ag−0.5Cu、Sn−0.7Cu−0.3Ag等)のはんだ合金を用いることにより、従来では使用が困難とされた保障温度の低い電気部品についても、鉛フリーはんだを用いて電気部品の接続を行うことができる。
【0025】
供給ノズル32の先端側には、供給ノズル32よりも大径の加速ノズル34が下方(噴射方向)に延びて同軸上に設けられ、この加速ノズル34の先端に噴射口35が形成される。供給ノズル32の先端部と加速ノズル34の基端部は一部重なって配設されており、この重複部に、幅が狭い円環状の加速ガス噴流路36が形成される。加速ノズル34の基端部には、加速ガス噴流路36と繋がる加速ガス導入路37が形成され、この加速ガス導入路37に接続された加速ガス供給配管47を介して、ガス供給ユニット45からガス(加速ガスという)が供給される。供給ガスおよび加速ガスは、キャリアガスとして一般的に用いられる窒素(N2)ガス、ヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス、乾燥空気(Air)などが、単体または組み合わされて使用され、ガスの種別および各供給圧力が制御装置8の噴射制御部81により制御される。
【0026】
加速ノズル34の先端側には、加速ノズルよりも大径の外筒部材50が上下に延びて同軸上に設けられ、噴射口35の外周側に金属微粒子の噴射領域JAを囲むように配設される。外筒部材50の内径は、基板Wに噴射される金属微粒子の噴射領域JAの基板面における外径(噴射径)よりも幾分大きい程度に設定される。
【0027】
図示する噴射装置3では、外筒部材50は、加速ノズル34の外周側に不図示のシール部材を介して上下に摺動自在に支持させ、外筒部材50を上下に移動させる外筒移動機構25により加速ノズル34に対して上下に相対移動可能に構成した態様を示す。外筒移動機構25は、例えば、ノズルのボディ31と外筒部材50との間に設けたスプリングと電磁石または直動ソレノイド、ラックとピニオン、リードスクリューなどを利用して構成することができる。外筒移動機構25による外筒部材50の上下移動は、噴射制御部81により制御され、外筒部材50の下端が加速ノズル34の噴射口よりも0.5[mm]程度低い高さ位置を基準位置として、接続される電気部品EPの形状寸法と外筒部材50との位置関係や噴射条件等に応じて制御される。
【0028】
外筒部材50には、壁面を貫通する排気ポート53が形成され、排気チューブ54を介して微粒子回収装置55が接続されている。微粒子回収装置55は、外筒部材内周側の固気混相流体(気体および金属微粒子)を吸引するバキュームブロワ、固気混相粒体から金属微粒子を分離して回収する微粒子回収器などから構成され、噴射口35から噴射室52に噴射されたが基板Wに固着されなかった金属微粒子を吸引して回収する。微粒子回収装置55の作動は制御装置8により制御される。
【0029】
このような構成の部品接続装置BSでは、基板Wが吸着保持されたテーブル10をX軸移動機構21およびY軸移動機構22により移動させ、基板WのパッドPと、電気部品のリードLの重複部(接続部位)が、噴射装置3の噴射軸CL上に位置するように位置決めする。次いで、Z軸移動機構によりノズル30を下動させ、加速ノズル下端の噴射口35とリードLの上面との距離h、すなわちノズルギャップを所定高さに設定する。ノズルギャップhは、通常では0.5〜2[mm]程度の高さ位置に設定される。
【0030】
このとき、電気部品EPの本体から側方に突出するリードLの突出量が大きく、電気部品EPに外筒部材50が干渉するおそれがない場合には、原則的には、外筒部材50を基準位置のままとする。但し、設定されたノズルギャップにおいて外筒部材50の下端とリードLの上面との間に所定以上(例えば0.5[mm]以上)の隙間が生じるような場合や、噴射条件により固着率が低いと想定されるような場合に、外筒移動機構25により外筒部材50を下動させて隙間が所定寸法となるように制御してもよい。
【0031】
これにより、噴射領域JAの外周側に、周囲が外筒部材50で囲まれた噴射室52が形成される。そして、微粒子回収装置55を起動して噴射室52を排気し、噴射装置3による噴射加工を行う。なお、リードLの突出量が小さく電気部品EPに外筒部材50が干渉するおそれがあるような場合には、外筒移動機構25により外筒部材50を上動させて干渉が生じない高さ位置に退避させる。
【0032】
噴射加工は、ガス供給ユニット45からノズルにガスを供給することにより行われる。金属微粒子Gの噴射形態には、供給ガスの供給のみによる噴射、加速ガスの供給のみによる噴射、両者を組み合わせた噴射などがあり、制御装置8により制御されるが、ここでは、両者を組み合わせで噴射する場合の作用を説明する。制御装置8は、ガス供給ユニット45からガス供給パイプ46を介して供給ノズル32の基端側に供給ガスを供給させ、ガス供給ユニット45から加速ガス供給配管47および加速ガス導入路37を介して加速ノズル34の基端側に加速ガスを供給させる。
【0033】
供給ノズル32の基端側に供給ガスが供給されると、供給ノズル32内を流れるガス流のエジェクター効果、およびガス供給パイプ46と供給ノズル32との段差部に生じる乱流の効果により、微粒子供給溝43に位置する金属微粒子Gが孔部33を通って供給ノズル32内に吸い出され、ガス流によって分散されながら供給ノズル内を下方に流下する。
【0034】
このとき、加速ガス導入路37に供給された加速ガスが円環状の加速ガス噴流路36を通って加速ノズル内に高速で噴出しており、供給ノズル32の出口領域では、加速ガス噴流路36から噴出する高速のガス流によって大きな負圧が発生し、また両流路とも流路断面積が急拡大するため大きな乱流が発生する。そのため,供給ノズル32を流下してきた金属微粒子Gが加速ノズル内に吸引されるとともに、乱流に巻き込まれて加速ガス中に分散され、加速ガスの噴流により加速されて下流端の噴射口35から噴射される。
【0035】
金属微粒子Gの噴射速度は、ノズル30に供給する供給ガス、加速ガスの種類および圧力を制御することにより設定され、使用するガスの音速未満の速度(例えば、供給ガスおよび加速ガスが空気の場合には300[m/sec]以下の速度)で噴射される。また、ノズル内径(噴射径)とリードLの幅との関係に応じて、移動機構2により基板Wとノズル30とが相対移動され、リードLの左右の側縁を挟むパッドPにも金属微粒子が噴射されるように制御される。
【0036】
そのため、噴射領域近傍の様子を図3に模式的に示すように、ノズル30から噴射された金属微粒子は、パッドPとリードLの重複部を含む近傍領域に衝突して固着し、接続部位を覆うように順次堆積して噴射金属組成の固着接続部Fを形成する。これにより、電気部品のリードLが基板のパッドPに電気的に接続されると同時に、機械的に固定される。接続部位に固着しなかった金属微粒子は、噴射領域JAの外周を囲む外筒部材50により放射方向への拡散が抑制され、排気ポート53に接続された排気チューブ54を介して微粒子回収装置55に回収される。これにより、金属微粒子が周囲に拡散したり電気部品に付着したりすることを抑制できる。
【0037】
次に、以上説明した部品接続装置BSを持いて実施される電気部品の接続方法について、具体例を説明する。実施例においては、パッドPを想定した厚さ1〜2[μm]程度の銅の薄膜が形成されたアルミナセラミック(Al23)の基板Wの表面に、リードLを想定した幅0.6[mm]×厚さ0.2[mm]の銅片を密着して配置し、その上方から噴射装置3により金属微粒子Gを噴射した。加速ノズル34は、内径がφ1[mm]のものを用い、ノズルギャップhは1[mm]に設定し、加速ノズル34とリード(銅片)Lとをリードの中心を基準として幅方向に±0.3[mm]相対搖動させながら噴射した。
【0038】
金属微粒子Gは、平均粒径が4.7[μm]、合金組成がSn−3.0Ag−0.5Cuのはんだ合金(鉛フリーはんだ)の微粒子を用いた。また、キャリアガスとしてヘリウム(He)を用い、供給ガス圧力は0[MPa]すなわち供給せず、加速ガス圧力を0.5[MPa]に設定して、加速ガスのみによりはんだ合金の微粒子を吸引して噴射した。
【0039】
以上の接続条件により、リードLが接続固定された接続部位近傍の拡大写真を図4に示す。この拡大写真から明らかなように、基板WとリードLの接続部位に噴射されたはんだ合金の微粒子が順次衝突固着して堆積し、重複部を覆って上方に盛り上がる固着接続部Fが形成されてリードLが接続固定されている。なお、このときの噴射時間は約13秒であった。
【0040】
噴射加工による金属微粒子の固着メカニズムについては、必ずしも明確に解明されていないが、微粒子の衝突シミュレーションでは、ミクロ観察した衝突部の局所的な圧力が瞬間的に数ギガパスカルにも達し、微粒子の変形や破砕により生成される新鮮な界面同士が高圧力で圧接されて強固に結合すると考えられている。
【0041】
特に、金属微粒子がはんだ合金の場合には、銅や銀等の他の金属に比べて融点が低く、微粒子衝突部における局所的な衝突温度は、はんだ合金の融点(180〜230℃)を超えると考えられる。このことは、接続部位の拡大写真にも表れており、固着接続部Fにおいて、はんだ合金の微粒子が一部溶融して溶着している様子が観察される。このため、はんだ合金のような低融点の金属微粒子を用いることにより、緻密な接続組織の固着接続部を形成することができる。
【0042】
このように、金属微粒子の衝突部をミクロ観察した場合に、金属微粒子は局所的に高温高圧になると推定されるが、接続部位を含む近傍領域はノズルから噴射される加速ガスによって常時冷却されており、マクロ的に見た固着接続部の温度はほとんど上昇しない。このため、リードLが加熱されて電気部品が高温になるようなことがなく、従来では使用が困難とされた保障温度の低い電気部品についても、加熱プロセスを含まない簡明な工程で電気部品の接続を行うことができる。従来のSn−Pb系はんだ合金を利用可能なことは言うまでもない。
【0043】
以上では、加速ノズル34の内径が噴射口35においてφ1[mm]のものを用いた場合の実施例について説明したが、加速ノズル34の内径は0.5〜2[mm]程度の範囲で適宜なものを用いることができる。また、金属微粒子の例として、鉛フリーのはんだ合金を例示したが、接続部位の仕様に応じて銅、銀、金などのような電気伝導率の高い金属微粒子、銀ろうや銅ろうなどのような比較的融点が低く機械的強度が高い合金の微粒子など、他の組成の金属微粒子を使用して固着接続部を形成することもできる。さらに、接続固定される電気部品および接続部位の一例として、基板WのパッドPと電気部品EPのリードLを例示したが、これらに限られるものでないことは明らかであり、複数の電気部品を接続固定する部位であればよい。
【0044】
以上説明したように、本発明によれば、加熱工程を含まない新規な接続手法により、常温・常圧下で複数の電気部品を接続固定することができ、これにより、加熱に起因する問題を生じない電気部品の接続方法、および接続装置を提供できるとともに、熱影響を排除した複合部品を提供することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 部品保持装置
2 移動機構
3 噴射装置
8 制御装置
30 ノズル(32 供給ノズル、34 加速ノズル)
35 噴射口
40 微粒子供給ユニット
45 ガス供給ユニット
50 外筒部材
55 微粒子回収装置(吸引装置)
BS 部品接続装置
EP 電気部品(他の電気部品)
G 金属微粒子
P パッド(接続部)
L リード(被接続部)
W 基板(電気部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品の接続部に、被接続部の投影面積が前記接続部よりも小さい他の電気部品の前記被接続部を電気的に接続固定する電気部品の接続方法であって、
前記電気部品の前記接続部に前記他の電気部品の前記被接続部を重ね合わせて配置し、
重複配置された前記接続部および前記被接続部の重複部を含む近傍領域に、ノズルから金属微粒子を気体の噴流に乗せて噴射して衝突固着させ、
常温かつ常圧下において前記接続部に前記被接続部を接続固定することを特徴とする電気部品の接続方法。
【請求項2】
前記金属微粒子は、平均粒径が10μm以下の微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の電気部品の接続方法。
【請求項3】
前記金属微粒子は、はんだ合金の微粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気部品の接続方法。
【請求項4】
前記金属微粒子は、成分に鉛を含まない組成のはんだ合金の微粒子であることを特徴とする請求項3に記載の電気部品の接続方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電気部品の接続方法により前記電気部品と前記他の電気部品とが接続固定された複合部品。
【請求項6】
電気部品の接続部に、被接続部の投影面積が前記接続部よりも小さい他の電気部品の前記被接続部を電気的に接続固定する電気部品の接続装置であって、
前記電気部品の前記接続部に前記他の電気部品の前記被接続部を重ね合わせた状態で保持する部品保持装置と、
ノズルに供給された金属微粒子を前記ノズルの内部に設けられた流路を流れる気体に分散させて流下させ、前記流路の下流端部に設けられた噴射口から気体とともに噴射する噴射装置とを備え、
前記部品保持装置により重複状態で保持された前記接続部および前記被接続部の重複部を含む近傍領域に、前記噴射口から前記金属微粒子を前記気体の噴流に乗せて噴射して衝突固着させ、常温かつ常圧下において前記接続部に前記被接続部を接続固定するように構成したことを特徴とする電気部品の接続装置。
【請求項7】
前記噴射口の外周側に金属微粒子の噴射領域を囲んで配設された外筒部材と、
前記噴射口の外周と前記外筒部材の内周との間に形成される間隙部を排気し、前記噴射口から噴射されたが前記接続部および前記被接続部に固着されなかった金属微粒子を吸引する吸引装置とを備え、
前記外筒部材の内周側が前記吸引装置により排気された状態で、前記噴射口から前記金属微粒子が噴射されるように構成したことを特徴とする請求項6に記載の電気部品の接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−245354(P2010−245354A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93457(P2009−93457)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】