電池パック
【課題】素電池と一体の樹脂モールドを含む外装部を備えた電池パックにおいて、新たな部材を追加することなく、厚みの薄い素電池においても、樹脂モールドの取付強度を向上させることができる電池パックを提供する。
【解決手段】素電池2の端部と一体の樹脂モールド15に保護回路14が埋設されている電池パックであって、保護回路14を樹脂モールド15内で支持するフレーム9を備えており、フレーム9は、素電池2の側面を覆うスカート部19を設けており、スカート部19は、素電池2の一対の対向する側面を挟み込んでいる。このことにより、外力印加時に、フレーム9及びこれと一体の樹脂モールド15の位置移動が抑えられることになる。また、スカート部19はフレーム9の一部であり、部品点数の増加が抑えられる。さらに、スカート部19は、素電池2の側面に装着するので、厚みの薄い素電池2にも装着可能である。
【解決手段】素電池2の端部と一体の樹脂モールド15に保護回路14が埋設されている電池パックであって、保護回路14を樹脂モールド15内で支持するフレーム9を備えており、フレーム9は、素電池2の側面を覆うスカート部19を設けており、スカート部19は、素電池2の一対の対向する側面を挟み込んでいる。このことにより、外力印加時に、フレーム9及びこれと一体の樹脂モールド15の位置移動が抑えられることになる。また、スカート部19はフレーム9の一部であり、部品点数の増加が抑えられる。さらに、スカート部19は、素電池2の側面に装着するので、厚みの薄い素電池2にも装着可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素電池の端部に保護回路が取り付けられており、この保護回路が樹脂モールド内に埋設している電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電池パックの薄型化、小型化に伴ない、素電池上部の封口体側から正極リード、負極リードをとり、保護回路及び保護素子を素電池上部に集約させた外装部を備えた電池パックが主流になりつつある。
【0003】
このような電池パックには、素電池と一体の樹脂モールドを含む外装部を備えた構成のものがある。この構成では、樹脂モールドと素電池とは、樹脂モールドの成形により一体になっているに止まり、樹脂モールドの取付強度の確保が問題となっていた。
【0004】
例えば、下記特許文献1、2には、素電池と一体の固定強化部材や係合部材を設け、これらを樹脂モールド内に埋設させた構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−112723号公報
【特許文献2】特開2007−165328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1、2に記載の構成は、固定強化部材や係合部材といった新たな部材を追加する必要になり、構造が複雑になるという問題があった。また、前記の追加部材は素電池の端面に取り付ける必要があり、例えば厚みが5mm以下といった厚みの薄い素電池では取り付けが困難であった。
【0007】
本発明は前記のような従来の問題を解決するものであり、素電池と一体の樹脂モールドを含む外装部を備えた電池パックにおいて、新たな部材を追加することなく、厚みの薄い素電池においても、樹脂モールドの取付強度を向上させることができる電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の電池パックは、素電池の端部と一体の樹脂モールドに保護回路が埋設されている電池パックであって、前記保護回路を前記樹脂モールド内で支持するフレームを備えており、前記フレームは、前記素電池の側面を覆うスカート部を設けており、前記スカート部は、前記素電池の一対の対向する側面を挟み込んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、素電池と一体の樹脂モールドを含む外装部を備えた電池パックにおいて、新たな部材を追加することなく、厚みの薄い素電池においても、樹脂モールドの取付強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電池パック1の分解斜視図。
【図2】本発明の一実施の形態において、素電池2に両面テープ8及び正極リード7を取り付ける前の状態を示す斜視図。
【図3】本発明の一実施の形態において、素電池2にフレーム9を取り付ける前の状態を示す斜視図。
【図4】本発明の一実施の形態において、素電池2に保護素子12及び保護回路14を取り付ける前の状態を示す斜視図。
【図5】本発明の一実施の形態に係るフレーム9の拡大斜視図。
【図6】図5においてフレーム9をA方向から見た図。
【図7】フレーム9に保護回路14を搭載する前の状態を示す斜視図。
【図8】本発明の一実施の形態において、保護回路14がフレーム9に搭載された状態を示す斜視図。
【図9】本発明の一実施の形態において、樹脂モールド15が一体成形された素電池2の斜視図。
【図10】図9に示した素電池2を裏面側から見た斜視図。
【図11】本発明の一実施の形態において、樹脂モールド15の成形後に取り付ける付属部品を示した斜視図。
【図12】本発明の一実施の形態に係る電池パックの完成状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の電池パックは、樹脂モールド内に含まれるフレームに設けたスカート部が素電池の一対の対向する側面を挟み込んでいる。このため、外装部の外観を構成する樹脂モールドに外力が加わった場合、フレームの位置移動が抑えられるとともに、樹脂モールドの位置移動も抑えられることになる。このことにより、樹脂モールドの取付強度を向上させることができる。また、スカート部はフレームの一部であり、部品点数や作業工程の増加を抑えることができる。さらに、スカート部は、素電池の側面を覆うようにして素電池に装着するので、厚みの薄い素電池にも装着可能である。
【0012】
前記本発明の電池パックにおいては、前記フレームは樹脂成形品であり、前記スカート部が一体に成形されていることが好ましい。
【0013】
また、前記フレームに、前記保護回路を保持する係合部を形成しており、前記係合部は、前記保護回路が前記素電池から離れる方向の移動を規制していることが好ましい。この構成によれば、保護回路の浮きが抑えられるので、金型と保護回路との当接部における接触不良を防止でき、樹脂モールドの成形不良を防止することができる。
【0014】
また、前記フレームは、前記保護回路が前記素電池の端部に近づく方向の移動を規制する支持部を形成していることが好ましい。この構成によれば、樹脂モールドの成形時に金型が保護回路に当接したときに、保護回路の位置ずれが防止され、樹脂モールドの成形不良防止に一層有利になる。さらに、保護回路の位置ずれ防止のために、保護回路の裏面側を金型(スライドピン)で受けることも不要になり、金型構造を簡素化できる。
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る電池パック1の分解斜視図を示している。素電池2は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金で形成された厚さの薄い角形の外装缶3内に、発電要素を内蔵したものである。素電池2は、例えば、角形リチウムイオン電池であり、携帯電話、ポータブルAV機器、モバイル機器等に用いられる。素電池2の上部は、封口体4により封止されている。封口体4には、負極端子5、正極端子6を設けている。
【0016】
正極端子6には、正極リード7が接合される。素電池2の上側の端部すなわち封口体4には、両面テープ8により樹脂製のフレーム9が取り付けられることになる。フレーム9は、例えばポリカーボネート樹脂である。フレーム9には、保護素子12及び保護回路14を支持することができる。保護素子12及び保護回路14は、過充電・過電流・過放電等を防止するための保護手段である。
【0017】
フレーム9を素電池2に取り付けた状態では、フレーム9と一体のスカート部19が素電池2の側面を覆い、スカート部19は素電池2の一対の対向する側面を挟み込んでいることになる。このことの詳細については、後に図4−6を参照しながら説明する。
【0018】
フレーム9の開口10に負極端子5が露出し、負極端子5には負極リード11の一端が接合される。負極リード11の他端には保護素子12の端子12aが接合される。保護回路14の裏面側の端子21には、リード22が溶接される。リード22は保護回路14の端部から延出し、この延出部に保護素子12の端子12bが溶接される。
【0019】
保護回路14をフレーム9に搭載する際には、保護回路14に接合した正極リード7を折り曲げることになる。また、保護回路14はフレーム9に支持された状態では、フレーム9に形成した係合23に係合していることになる。これらの詳細については、後に図7、8を参照しながら説明する。
【0020】
前記の各部品が取り付けられた素電池2は、金型に搭載され、素電池2の端部に樹脂モールド15が一体成形されることになる。このことにより、素電池2上部の各部品は、樹脂モールド15内に埋設されることになる。図1では、図示の便宜上、樹脂モールド15は、素電池2上部の各部品から独立させて図示している。樹脂モールド15は、例えばポリアミド樹脂である。
【0021】
樹脂モールド15には開口41が形成されている。これに対し、保護回路11は、外部接続用の出力端子40を備えている。樹脂モールド15を成形した状態では、開口41から出力端子40が露出することになる。このことにより、電池パック1を外部機器に取り付けたときに、外部機器の端子と出力端子40とが接触して導通が図られることになる。
【0022】
素電池2の下部には、両面テープ16又は接着剤を介して缶底カバー17が取り付けられる。この状態で、素電池2の全周を覆うようにシート状のラベル18が被覆されることになる。
【0023】
以下、図1に示した電池パック1を製造工程順に説明する。図2は、素電池2に両面テープ8及び正極リード7を取り付ける前の状態を示す斜視図である。この状態から両面テープ8の片面が封口体4に貼り付けられる。正極端子6には、正極リード7の一端7aが溶接される。
【0024】
図3は、素電池2にフレーム9を取り付ける前の状態を示す斜視図である。両面テープ8の片面にフレーム9が貼り付けられる。
【0025】
図4は、素電池2に保護素子12及び保護回路14を取り付ける前の状態を示す斜視図である。図4の状態では、フレーム9は素電池2に取り付けられている。この取り付けについては、後に図5、6を参照しながら説明する。
【0026】
図4において、フレーム9の開口10(図3)に負極端子5が露出している。負極端子5には、負極リード11の一端が接合される。負極リード11の他端には保護素子12の端子12aが接合される。保護素子12は、フレーム9内に収納される。保護回路14の端子20には正極リード7の他端7bが溶接され、保護回路14の端子21にはリード22が溶接される。
【0027】
図5は、フレーム9の拡大斜視図を示している。図6は、図5においてフレーム9をA方向から見た図を示している。図5に示したように、フレーム9にはスカート部19が一体になっている。図4のように素電池2にフレーム9が取り付けられた状態では、スカート部19は素電池2の底部2a側に延出している。このことにより、スカート部19は素電池2の側面の一部を覆っている。
【0028】
図6に示したように、スカート部19はフレーム9の両側に設けており、一対のスカート部19が対向している。図4の状態では、一対の対向するスカート部19が素電池2の一対の対向する側面を挟み込んでいることになる。
【0029】
図7は、フレーム9に保護回路14を搭載する前の状態を示す斜視図である。保護素子12は、フレーム9内に収納されている。保護回路14の端子20には正極リード7の他端7bが溶接されている。図7の状態から正極リード7を折り曲げながら、保護回路14を矢印a方向に回転移動させることにより、保護回路14はフレーム9に搭載される。
【0030】
図8は、保護回路14がフレーム9に搭載された状態を示す斜視図である。本図の状態では、保護回路14は図7の状態から矢印a方向に回転移動させている。このことにより、正極リード7は折り曲げられ湾曲している。保護回路14はフレーム9の係合部23と係合している。また、保護回路14は、支持部25及び支持部26(図5、7)上にある。
【0031】
図8のように素電池2上部にフレーム9及び保護回路14を取り付けた状態で、素電池2を金型に搭載し、素電池2上部に樹脂モールド15を一体成形することになる。図8では、図示の便宜上、樹脂モールド15は素電池2から独立して図示している。実際には、樹脂モールド15を成形した状態では、樹脂モールド15と素電池2とが一体になり、樹脂モールド15内にフレーム9及び保護回路14が埋設されていることになる。
【0032】
ここで、素電池2を金型に搭載した状態において、保護回路14が正規の位置から浮き上がると、保護回路14に傾きが生じるのが通常である。
【0033】
この状態では、出力端子40と金型との当接が不十分になり、出力端子40上にも樹脂が注入されてしまう。この場合は、出力端子40が樹脂で覆われ成形不良となる。保護回路14の浮きの原因としては、折り曲げられた正極リード7のスプリングバックが挙げられる。
【0034】
前記のように、本実施の形態では、保護回路14は係合部23に係合しており、保護回路14の浮きが防止されている。このことにより、保護回路14の出力端子40の配置部分に、金型が確実に当接し、成形不良を防止することができる。
【0035】
なお、係合部23に爪部を追加し、爪部を保護回路14に引っ掛けて保護回路14の浮き防止をより確実にしてもよい。
【0036】
また、保護回路14は、支持部25及び支持部26(図5、7)上にある。このことにより、保護回路14が沈み込む方向の移動も規制されることになる。したがって、樹脂モールド15の成形時に金型が保護回路14に当接したときに、保護回路14の位置ずれが防止され、樹脂モールド15の成形不良防止に一層有利になる。
【0037】
また、保護回路14の位置ずれ防止のために、保護回路14の裏面側を金型(スライドピン)で受けることも不要になり、金型構造を簡素化できる。
【0038】
図9は、樹脂モールド15が一体成形された素電池2の斜視図を示している。図10は、図9に示した素電池2を裏面側から見た斜視図を示している。図9、10の状態では、樹脂モールド15内において、図8に示したように保護回路14がフレーム9により支持されている。
【0039】
素電池2の表側(図9)においても、裏側(図10)においても、フレーム9のスカート部19は、樹脂モールド15からはみ出ており、素電池2の側面を覆っている。すなわち、樹脂モールド15からはみ出した一対のスカート部19が、素電池2の一対の対向する側面を挟み込んでいる。
【0040】
この構成によれば、樹脂モールド15の取付強度を向上させることができる。具体的には、図9において、樹脂モールド15に矢印a、bで示したようなモーメントが作用した場合、樹脂モールド15内に埋設されているフレーム9にも、矢印a、bで示したモーメントが作用する。同様に、樹脂モールド15に矢印c、dで示したようなせん断力が作用した場合、樹脂モールド15内に埋設されているフレーム9にも、矢印c、dで示したせん断力が作用する。
【0041】
このように外力が加わった場合、フレーム9はスカート部19が素電池2の一対の側面を挟み込んでいるので、フレーム9の位置移動が抑えられる。これに伴い、フレーム9と一体の樹脂モールド15の位置移動も抑えられることになる。すなわち、本実施の形態は、樹脂モールド15の取付強度が高くなっており、樹脂モールド15の素電池2からの剥離防止を図ることができる。
【0042】
ここで、電池パックの薄型化に伴ない、素電池2の厚さt(図9、10)は5mm以下のものもある。素電池2の厚さtを小さくすると、これに伴ってフレーム9の厚さt1(図6)も小さくなる。一方、スカート部19は、素電池2の厚み部分である封口体4(図1)上に配置する部分ではない。このため、フレーム9の厚さt1が小さくなっても、スカート部19の形状や大きさは、特別制限を受けることはない。すなわち、本実施の形態によれば、厚みの薄い素電池2においても、樹脂モールド15の取付強度を向上させることができる。
【0043】
また、スカート部19はフレーム9の一部であり、フレーム9にスカート部19を設けても、部品点数は増加することはない。また、フレーム9を素電池2に取り付けると同時に、スカート部19が素電池2に装着されることになる。したがって、フレーム9にスカート部19を設けても、作業工程が増加することもない。
【0044】
すなわち、本実施の形態によれば、部品点数や作業工程を増加させることなく、厚みの薄い素電池においても、樹脂モールド15の取付強度を向上させることが可能になる。
【0045】
図11は、樹脂モールド15の成形後に取り付ける付属部品を示した斜視図である。素電池2の下部には、両面テープ16又は接着剤を介して缶底カバー17が取り付けられる。この状態で、素電池2の全周を覆うようにシート状のラベル18が被覆されることになる。
【0046】
図12は、電池パック1の完成状態を示す斜視図である。本図の状態では、スカート部19(図11)は、ラベル18で被覆されている。樹脂モールド15は保護回路14(図8)を覆うカバーを兼ねており、樹脂モールド15に、別途カバーを設けることは不要になる。
【0047】
なお、本実施の形態では、正極リード7を折り曲げて保護回路14を素電池2に取り付ける例で説明したが、この構成に限るものではない。本発明は、保護回路を樹脂モールドに埋設させる構成の電池パックであれば適用可能である。
【0048】
また、本実施の形態において、素電池2上部の外装部の構成は一例であって、他の構成であってもよい。例えば、樹脂モールド15を覆うカバーをさらに設けた構成であってもよい。また、保護素子を備えていない構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明によれば素電池と一体の樹脂モールドを含む外装部を備えた電池パックにおいて、新たな部材を追加することなく、厚みの薄い素電池においても、樹脂モールドの取付強度を向上させることができるので、本発明は、例えば携帯電話、ポータブルAV機器、モバイル機器等に用いる電池パックとして有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 電池パック
2 素電池
7 正極リード
9 フレーム
12 保護素子
14 保護回路
15 樹脂モールド
19 スカート部
23 係合部
25,26 支持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、素電池の端部に保護回路が取り付けられており、この保護回路が樹脂モールド内に埋設している電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電池パックの薄型化、小型化に伴ない、素電池上部の封口体側から正極リード、負極リードをとり、保護回路及び保護素子を素電池上部に集約させた外装部を備えた電池パックが主流になりつつある。
【0003】
このような電池パックには、素電池と一体の樹脂モールドを含む外装部を備えた構成のものがある。この構成では、樹脂モールドと素電池とは、樹脂モールドの成形により一体になっているに止まり、樹脂モールドの取付強度の確保が問題となっていた。
【0004】
例えば、下記特許文献1、2には、素電池と一体の固定強化部材や係合部材を設け、これらを樹脂モールド内に埋設させた構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−112723号公報
【特許文献2】特開2007−165328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1、2に記載の構成は、固定強化部材や係合部材といった新たな部材を追加する必要になり、構造が複雑になるという問題があった。また、前記の追加部材は素電池の端面に取り付ける必要があり、例えば厚みが5mm以下といった厚みの薄い素電池では取り付けが困難であった。
【0007】
本発明は前記のような従来の問題を解決するものであり、素電池と一体の樹脂モールドを含む外装部を備えた電池パックにおいて、新たな部材を追加することなく、厚みの薄い素電池においても、樹脂モールドの取付強度を向上させることができる電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の電池パックは、素電池の端部と一体の樹脂モールドに保護回路が埋設されている電池パックであって、前記保護回路を前記樹脂モールド内で支持するフレームを備えており、前記フレームは、前記素電池の側面を覆うスカート部を設けており、前記スカート部は、前記素電池の一対の対向する側面を挟み込んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、素電池と一体の樹脂モールドを含む外装部を備えた電池パックにおいて、新たな部材を追加することなく、厚みの薄い素電池においても、樹脂モールドの取付強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電池パック1の分解斜視図。
【図2】本発明の一実施の形態において、素電池2に両面テープ8及び正極リード7を取り付ける前の状態を示す斜視図。
【図3】本発明の一実施の形態において、素電池2にフレーム9を取り付ける前の状態を示す斜視図。
【図4】本発明の一実施の形態において、素電池2に保護素子12及び保護回路14を取り付ける前の状態を示す斜視図。
【図5】本発明の一実施の形態に係るフレーム9の拡大斜視図。
【図6】図5においてフレーム9をA方向から見た図。
【図7】フレーム9に保護回路14を搭載する前の状態を示す斜視図。
【図8】本発明の一実施の形態において、保護回路14がフレーム9に搭載された状態を示す斜視図。
【図9】本発明の一実施の形態において、樹脂モールド15が一体成形された素電池2の斜視図。
【図10】図9に示した素電池2を裏面側から見た斜視図。
【図11】本発明の一実施の形態において、樹脂モールド15の成形後に取り付ける付属部品を示した斜視図。
【図12】本発明の一実施の形態に係る電池パックの完成状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の電池パックは、樹脂モールド内に含まれるフレームに設けたスカート部が素電池の一対の対向する側面を挟み込んでいる。このため、外装部の外観を構成する樹脂モールドに外力が加わった場合、フレームの位置移動が抑えられるとともに、樹脂モールドの位置移動も抑えられることになる。このことにより、樹脂モールドの取付強度を向上させることができる。また、スカート部はフレームの一部であり、部品点数や作業工程の増加を抑えることができる。さらに、スカート部は、素電池の側面を覆うようにして素電池に装着するので、厚みの薄い素電池にも装着可能である。
【0012】
前記本発明の電池パックにおいては、前記フレームは樹脂成形品であり、前記スカート部が一体に成形されていることが好ましい。
【0013】
また、前記フレームに、前記保護回路を保持する係合部を形成しており、前記係合部は、前記保護回路が前記素電池から離れる方向の移動を規制していることが好ましい。この構成によれば、保護回路の浮きが抑えられるので、金型と保護回路との当接部における接触不良を防止でき、樹脂モールドの成形不良を防止することができる。
【0014】
また、前記フレームは、前記保護回路が前記素電池の端部に近づく方向の移動を規制する支持部を形成していることが好ましい。この構成によれば、樹脂モールドの成形時に金型が保護回路に当接したときに、保護回路の位置ずれが防止され、樹脂モールドの成形不良防止に一層有利になる。さらに、保護回路の位置ずれ防止のために、保護回路の裏面側を金型(スライドピン)で受けることも不要になり、金型構造を簡素化できる。
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る電池パック1の分解斜視図を示している。素電池2は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金で形成された厚さの薄い角形の外装缶3内に、発電要素を内蔵したものである。素電池2は、例えば、角形リチウムイオン電池であり、携帯電話、ポータブルAV機器、モバイル機器等に用いられる。素電池2の上部は、封口体4により封止されている。封口体4には、負極端子5、正極端子6を設けている。
【0016】
正極端子6には、正極リード7が接合される。素電池2の上側の端部すなわち封口体4には、両面テープ8により樹脂製のフレーム9が取り付けられることになる。フレーム9は、例えばポリカーボネート樹脂である。フレーム9には、保護素子12及び保護回路14を支持することができる。保護素子12及び保護回路14は、過充電・過電流・過放電等を防止するための保護手段である。
【0017】
フレーム9を素電池2に取り付けた状態では、フレーム9と一体のスカート部19が素電池2の側面を覆い、スカート部19は素電池2の一対の対向する側面を挟み込んでいることになる。このことの詳細については、後に図4−6を参照しながら説明する。
【0018】
フレーム9の開口10に負極端子5が露出し、負極端子5には負極リード11の一端が接合される。負極リード11の他端には保護素子12の端子12aが接合される。保護回路14の裏面側の端子21には、リード22が溶接される。リード22は保護回路14の端部から延出し、この延出部に保護素子12の端子12bが溶接される。
【0019】
保護回路14をフレーム9に搭載する際には、保護回路14に接合した正極リード7を折り曲げることになる。また、保護回路14はフレーム9に支持された状態では、フレーム9に形成した係合23に係合していることになる。これらの詳細については、後に図7、8を参照しながら説明する。
【0020】
前記の各部品が取り付けられた素電池2は、金型に搭載され、素電池2の端部に樹脂モールド15が一体成形されることになる。このことにより、素電池2上部の各部品は、樹脂モールド15内に埋設されることになる。図1では、図示の便宜上、樹脂モールド15は、素電池2上部の各部品から独立させて図示している。樹脂モールド15は、例えばポリアミド樹脂である。
【0021】
樹脂モールド15には開口41が形成されている。これに対し、保護回路11は、外部接続用の出力端子40を備えている。樹脂モールド15を成形した状態では、開口41から出力端子40が露出することになる。このことにより、電池パック1を外部機器に取り付けたときに、外部機器の端子と出力端子40とが接触して導通が図られることになる。
【0022】
素電池2の下部には、両面テープ16又は接着剤を介して缶底カバー17が取り付けられる。この状態で、素電池2の全周を覆うようにシート状のラベル18が被覆されることになる。
【0023】
以下、図1に示した電池パック1を製造工程順に説明する。図2は、素電池2に両面テープ8及び正極リード7を取り付ける前の状態を示す斜視図である。この状態から両面テープ8の片面が封口体4に貼り付けられる。正極端子6には、正極リード7の一端7aが溶接される。
【0024】
図3は、素電池2にフレーム9を取り付ける前の状態を示す斜視図である。両面テープ8の片面にフレーム9が貼り付けられる。
【0025】
図4は、素電池2に保護素子12及び保護回路14を取り付ける前の状態を示す斜視図である。図4の状態では、フレーム9は素電池2に取り付けられている。この取り付けについては、後に図5、6を参照しながら説明する。
【0026】
図4において、フレーム9の開口10(図3)に負極端子5が露出している。負極端子5には、負極リード11の一端が接合される。負極リード11の他端には保護素子12の端子12aが接合される。保護素子12は、フレーム9内に収納される。保護回路14の端子20には正極リード7の他端7bが溶接され、保護回路14の端子21にはリード22が溶接される。
【0027】
図5は、フレーム9の拡大斜視図を示している。図6は、図5においてフレーム9をA方向から見た図を示している。図5に示したように、フレーム9にはスカート部19が一体になっている。図4のように素電池2にフレーム9が取り付けられた状態では、スカート部19は素電池2の底部2a側に延出している。このことにより、スカート部19は素電池2の側面の一部を覆っている。
【0028】
図6に示したように、スカート部19はフレーム9の両側に設けており、一対のスカート部19が対向している。図4の状態では、一対の対向するスカート部19が素電池2の一対の対向する側面を挟み込んでいることになる。
【0029】
図7は、フレーム9に保護回路14を搭載する前の状態を示す斜視図である。保護素子12は、フレーム9内に収納されている。保護回路14の端子20には正極リード7の他端7bが溶接されている。図7の状態から正極リード7を折り曲げながら、保護回路14を矢印a方向に回転移動させることにより、保護回路14はフレーム9に搭載される。
【0030】
図8は、保護回路14がフレーム9に搭載された状態を示す斜視図である。本図の状態では、保護回路14は図7の状態から矢印a方向に回転移動させている。このことにより、正極リード7は折り曲げられ湾曲している。保護回路14はフレーム9の係合部23と係合している。また、保護回路14は、支持部25及び支持部26(図5、7)上にある。
【0031】
図8のように素電池2上部にフレーム9及び保護回路14を取り付けた状態で、素電池2を金型に搭載し、素電池2上部に樹脂モールド15を一体成形することになる。図8では、図示の便宜上、樹脂モールド15は素電池2から独立して図示している。実際には、樹脂モールド15を成形した状態では、樹脂モールド15と素電池2とが一体になり、樹脂モールド15内にフレーム9及び保護回路14が埋設されていることになる。
【0032】
ここで、素電池2を金型に搭載した状態において、保護回路14が正規の位置から浮き上がると、保護回路14に傾きが生じるのが通常である。
【0033】
この状態では、出力端子40と金型との当接が不十分になり、出力端子40上にも樹脂が注入されてしまう。この場合は、出力端子40が樹脂で覆われ成形不良となる。保護回路14の浮きの原因としては、折り曲げられた正極リード7のスプリングバックが挙げられる。
【0034】
前記のように、本実施の形態では、保護回路14は係合部23に係合しており、保護回路14の浮きが防止されている。このことにより、保護回路14の出力端子40の配置部分に、金型が確実に当接し、成形不良を防止することができる。
【0035】
なお、係合部23に爪部を追加し、爪部を保護回路14に引っ掛けて保護回路14の浮き防止をより確実にしてもよい。
【0036】
また、保護回路14は、支持部25及び支持部26(図5、7)上にある。このことにより、保護回路14が沈み込む方向の移動も規制されることになる。したがって、樹脂モールド15の成形時に金型が保護回路14に当接したときに、保護回路14の位置ずれが防止され、樹脂モールド15の成形不良防止に一層有利になる。
【0037】
また、保護回路14の位置ずれ防止のために、保護回路14の裏面側を金型(スライドピン)で受けることも不要になり、金型構造を簡素化できる。
【0038】
図9は、樹脂モールド15が一体成形された素電池2の斜視図を示している。図10は、図9に示した素電池2を裏面側から見た斜視図を示している。図9、10の状態では、樹脂モールド15内において、図8に示したように保護回路14がフレーム9により支持されている。
【0039】
素電池2の表側(図9)においても、裏側(図10)においても、フレーム9のスカート部19は、樹脂モールド15からはみ出ており、素電池2の側面を覆っている。すなわち、樹脂モールド15からはみ出した一対のスカート部19が、素電池2の一対の対向する側面を挟み込んでいる。
【0040】
この構成によれば、樹脂モールド15の取付強度を向上させることができる。具体的には、図9において、樹脂モールド15に矢印a、bで示したようなモーメントが作用した場合、樹脂モールド15内に埋設されているフレーム9にも、矢印a、bで示したモーメントが作用する。同様に、樹脂モールド15に矢印c、dで示したようなせん断力が作用した場合、樹脂モールド15内に埋設されているフレーム9にも、矢印c、dで示したせん断力が作用する。
【0041】
このように外力が加わった場合、フレーム9はスカート部19が素電池2の一対の側面を挟み込んでいるので、フレーム9の位置移動が抑えられる。これに伴い、フレーム9と一体の樹脂モールド15の位置移動も抑えられることになる。すなわち、本実施の形態は、樹脂モールド15の取付強度が高くなっており、樹脂モールド15の素電池2からの剥離防止を図ることができる。
【0042】
ここで、電池パックの薄型化に伴ない、素電池2の厚さt(図9、10)は5mm以下のものもある。素電池2の厚さtを小さくすると、これに伴ってフレーム9の厚さt1(図6)も小さくなる。一方、スカート部19は、素電池2の厚み部分である封口体4(図1)上に配置する部分ではない。このため、フレーム9の厚さt1が小さくなっても、スカート部19の形状や大きさは、特別制限を受けることはない。すなわち、本実施の形態によれば、厚みの薄い素電池2においても、樹脂モールド15の取付強度を向上させることができる。
【0043】
また、スカート部19はフレーム9の一部であり、フレーム9にスカート部19を設けても、部品点数は増加することはない。また、フレーム9を素電池2に取り付けると同時に、スカート部19が素電池2に装着されることになる。したがって、フレーム9にスカート部19を設けても、作業工程が増加することもない。
【0044】
すなわち、本実施の形態によれば、部品点数や作業工程を増加させることなく、厚みの薄い素電池においても、樹脂モールド15の取付強度を向上させることが可能になる。
【0045】
図11は、樹脂モールド15の成形後に取り付ける付属部品を示した斜視図である。素電池2の下部には、両面テープ16又は接着剤を介して缶底カバー17が取り付けられる。この状態で、素電池2の全周を覆うようにシート状のラベル18が被覆されることになる。
【0046】
図12は、電池パック1の完成状態を示す斜視図である。本図の状態では、スカート部19(図11)は、ラベル18で被覆されている。樹脂モールド15は保護回路14(図8)を覆うカバーを兼ねており、樹脂モールド15に、別途カバーを設けることは不要になる。
【0047】
なお、本実施の形態では、正極リード7を折り曲げて保護回路14を素電池2に取り付ける例で説明したが、この構成に限るものではない。本発明は、保護回路を樹脂モールドに埋設させる構成の電池パックであれば適用可能である。
【0048】
また、本実施の形態において、素電池2上部の外装部の構成は一例であって、他の構成であってもよい。例えば、樹脂モールド15を覆うカバーをさらに設けた構成であってもよい。また、保護素子を備えていない構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明によれば素電池と一体の樹脂モールドを含む外装部を備えた電池パックにおいて、新たな部材を追加することなく、厚みの薄い素電池においても、樹脂モールドの取付強度を向上させることができるので、本発明は、例えば携帯電話、ポータブルAV機器、モバイル機器等に用いる電池パックとして有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 電池パック
2 素電池
7 正極リード
9 フレーム
12 保護素子
14 保護回路
15 樹脂モールド
19 スカート部
23 係合部
25,26 支持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素電池の端部と一体の樹脂モールドに保護回路が埋設されている電池パックであって、
前記保護回路を前記樹脂モールド内で支持するフレームを備えており、
前記フレームは、前記素電池の側面を覆うスカート部を設けており、
前記スカート部は、前記素電池の一対の対向する側面を挟み込んでいることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記フレームは樹脂成形品であり、前記スカート部が一体に成形されている請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記フレームに、前記保護回路を保持する係合部を形成しており、前記係合部は、前記保護回路が前記素電池から離れる方向の移動を規制している請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記フレームは、前記保護回路が前記素電池の端部に近づく方向の移動を規制する支持部を形成している請求項1から3のいずれかに記載の電池パック。
【請求項1】
素電池の端部と一体の樹脂モールドに保護回路が埋設されている電池パックであって、
前記保護回路を前記樹脂モールド内で支持するフレームを備えており、
前記フレームは、前記素電池の側面を覆うスカート部を設けており、
前記スカート部は、前記素電池の一対の対向する側面を挟み込んでいることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記フレームは樹脂成形品であり、前記スカート部が一体に成形されている請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記フレームに、前記保護回路を保持する係合部を形成しており、前記係合部は、前記保護回路が前記素電池から離れる方向の移動を規制している請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記フレームは、前記保護回路が前記素電池の端部に近づく方向の移動を規制する支持部を形成している請求項1から3のいずれかに記載の電池パック。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−96573(P2011−96573A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250946(P2009−250946)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]