説明

電池

【課題】電池容器と電解液との反応による劣化及び電池容器内部の熱による劣化を防止して、性能を向上した電池を提供する。
【解決手段】第1極性の電位の第1電極板7aと、第2極性の電位の第2電極板12と、第1電極板と前記第2電極板との間に配置されたセパレータ16とを備えた積層電極体17a,17bと、多孔部と、導電性があり且つ熱伝導性の良い枠部とを備えた電解液保持板18a,18b,18cと、前記積層電極体と前記電解液保持板とを収納した導電性の電池容器2とを有し、前記電解液保持板は前記積層電極体と前記電池容器との間に配置され、前記枠部は、前記第1電極板及び前記電池容器に接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池、特に性能を向上した電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池には、放電のみ行う一次電池や充放電が可能な二次電池が存在する。これらは電極板、すなわち正極板および負極板がセパレータを介して積層された積層電極体を電池容器に密閉した構成であり、一般的に電池システムにおけるモータ等の電力負荷駆動用の電力供給のために使用される。
しかしながら、これら電池においては、導電性の電池容器と電解液とが反応して電池容器が劣化し、結果として電池が故障する場合があることが知られている。また、同じ型の電池であっても、その電池の配置、例えば電池を縦置きとするか又は横置きとするかによって、電解液が電極板(正極板または負極板)に十分に行き渡らず、結果として電池性能が劣化する場合があることが知られている。
そこで、上記電池容器の劣化を防止すべく、電池の正極端子と導電性の電池容器とを導電体で接続し、電池容器を正極板と同じ電位とする構成の電池(特許文献1参照)等が開発されている。また、上記電池性能の劣化を防止すべく、電池容器の内部に多孔質の電解液保持体を配置して、電解液を電極板へ補給する構成の電池(特許文献2及び3参照)等が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−186591号公報
【特許文献2】特開2007−258071号公報
【特許文献3】特開2010−153132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の電池は、導電性の電池容器の外側に上記導電体を配置しているため、当該電池が使用される電池システムの振動等で当該電池システムの他の部材が当該導電体に当たる等し、結果として当該導電体が所定の位置から外れ、上記反応が進行してしまう恐れがある。
また、特許文献2及び3の電池に配置された電解液保持体は、多孔質の絶縁体であって、熱伝導率が高くない。このため、電解液を電極板へ補給することで電池性能の劣化の防止を企図しても、電池の充電または放電により電池容器の内部で発生する熱を電池容器の外部へ効果的に放出することができず、熱暴走等の電池の故障を引き起こす恐れがある。
そこで、本発明は、簡易な構成により上述の課題を同時に解決し、性能を向上した電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の電池は、第1極性の電位の第1電極板と、第2極性の電位の第2電極板と、第1電極板と前記第2電極板との間に配置されたセパレータとを備えた積層電極体と、多孔部と、導電性があり且つ熱伝導性の良い枠部とを備えた電解液保持板と、前記積層電極体と前記電解液保持板とを収納した導電性の電池容器とを有し、前記電解液保持板は前記積層電極体と前記電池容器との間に配置され、前記枠部は、前記第1電極板及び前記電池容器に接触することを特徴とする。
【0006】
すなわち、この構成により、積層電極体と電池容器との間に配置された電解液保持板が電解液を電極板へ適宜補給することで、電池性能の劣化が防止される。さらに、電池容器内に配置される枠部が第1電極板及び電池容器に接触しているので、所定の位置から外れることなく、電池容器の電位を当該電極板の電位と実質的に同じとして、電池容器の劣化を防止することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電池によれば、上記導電体が所定の位置から外れることで発生する上記反応による電池の故障及び電池容器の内部の熱による電池の故障に関する上記課題を同時に防止して、性能を向上した電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態の電池の概要図である。図1(a)はXZ平面から見た電池の透視図であり、図1(b)は図1(a)のA−A´線におけるYZ断面図である。
【図2】図1の電池に使用される電極板の概要図である。図2(a)は正極板の概要図であり、図2(b)は負極板の概要図である。
【図3】図1の電池に使用される電解液保持板の枠部又は多孔部の概要図である。図3(a)は、XZ平面から見た枠部の側面図であり、図3(b)はXY平面から見た枠部の正面図であり、図3(c)はXZ平面から見た電解液保持板(枠部と多孔部)の側面図であり、図3(d)はXY平面から見た電解液保持板の正面図である。
【図4】本発明の変形例の電池の概要図である。図4(a)はXZ平面から見た電池の透視図であり、図4(b)は図4(a)のB−B´線におけるYZ断面図である。
【図5】図4の電池に使用される電極板の概要図である。図5(a)は正極板の概要図であり、図5(b)は負極板の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の電池は、電池容器と積層電極体との間に板状の電解液保持板を配置しており、そして、電解液保持板は、導電性があり且つ熱伝導性の良い材料からなる枠部と電解液を保持する多孔部とを備え、この枠部が正極板又は負極板の一方と電池容器に物理的かつ直接的に接触することを特徴の1つとしている。以下、図面を参照しながら、実施形態の電池につき詳述する。
なお、実施形態の電池としては、一次電池または二次電池等のいずれの電池でも用いることが可能であるが、ここでは電池の一例として、充放電可能な電池、例えば蓄電池であるリチウムイオン二次電池を用いて説明する。
【0010】
本実施形態の電池1につき図1至及図3を参照して説明する。なお、図1は電池1の概要図であるので、説明容易のために、適宜、電池1の構成部材が省略されている場合がある。例えば、図1(b)に示す構成部材が、図1(a)に全て記載してあるとは限らない。また、以下、例えば寸法「W」のように、寸法及び括弧で記載される括弧の中の英文字等は、いずれも正の実数である。
まず、図1に示すように、電池1は、XY平面上に略矩形の形状の底面をもち且つ当該略矩形の全ての辺から+Z方向へ伸びる壁面をもつ角型の導電性(例えば、アルミニウム等の金属製)の容器本体2と、容器本体2に収納され且つ容器本体2の上記底面及び容器本体2の上記壁面のうちYZ平面と実質的に平行な容器本体2の2つの壁面に接して配置される電解液保持板18(18a、18b、18c)と、電解液保持板18に接するように容器本体2に収納され且つ正極板7aと負極板12とがセパレータ16を介して積層された積層電極体17と、積層電極体17を容器本体2に収納後に容器本体2を密閉する蓋3とを備えている(容器本体2と蓋3とがレーザ溶接等で密閉されて「電池容器」となる)。なお、図示しないものの、電池容器には電解液が蓄えられる。電池容器の内径は、X方向に寸法「W」、Y方向に寸法「D」、Z方向に寸法「H」である。
ここで、蓋3は容器本体2と同一の導電性の材質である。そして、蓋3には、蓋3を貫通して配置される例えば円柱状の電極端子(正極端子4又は負極端子5)と、電極端子を蓋3に固定し且つ電極端子と蓋3との間を電気的に絶縁且つ密閉する絶縁性の樹脂6(例えば、プラスチック樹脂等の絶縁体)が形成されている。
【0011】
積層電極体17(ここでは、2つの積層電極体17aと17b)は、一例として、複数の正極板7aと複数の負極板12とがセパレータ16を介して順次積層された積層型の積層電極体であるとして、以下説明する。
正極板7aは、アルミニウム等の正極用金属箔(以下、「正極基材」ともいう)の両面にマンガン酸リチウム等の正極活物質が塗工された後、打ち抜かれて形成される。正極板7aは、正極基材に正極活物質が塗工されている略矩形の部分(以下、「正極塗工部」8という)と当該正極基材に正極活物質が塗工されていない略矩形の部分(以下、「正極非塗工部」9という)とを備えている。
正極塗工部8のX方向に長さを持つ2つの辺のうち、+Z方向にある辺に接続する略矩形の正極タブ10と、−Z方向にある辺に接続する略矩形の接触部11a、11b、11cは、正極非塗工部9である。また、正極塗工部8のZ方向に長さを持つ2つの辺のうち、−X方向にある辺に接続する略矩形の接触部11d、11e、11f、及び、+X方向にある辺に接続する略矩形の接触部11g、11h、11iも、正極非塗工部9である。
【0012】
これら正極非塗工部9と正極塗工部8との接続関係は、図2(a)に示すとおりである。すなわち、正極塗工部8は、X方向に寸法「w1」及びZ方向に寸法「w2」の略矩形である。
また、正極非塗工部9の1つである正極タブ10は、X方向に寸法「w3」及びZ方向に寸法「w4」の略矩形であって、正極塗工部8のX方向の幅の中心からZ方向へ仮想線(以下、「正極仮想線」という)を引いた場合に、正極仮想線より+X方向に位置し且つ正極塗工部8のX方向の内側に位置し且つ正極塗工部8に接続されて一体となっている(従って、0<w3<{(w1)÷2}である)。なお、寸法「w4」は、正極端子4に電気的に接続するために十分な長さである。
さらに、正極非塗工部9の1つである接触部11a、11b、11cは、X方向に寸法「w5」及びZ方向に寸法「w6」の略矩形であって、正極塗工部8のX方向に長さを持つ2つの辺のうち、−Z方向にある辺の内側に実質的に等間隔で配置され且つ正極塗工部8に接続されて一体となっている。
また、正極非塗工部9の1つである接触部11d、11e、11fは、X方向に寸法「w7」及びZ方向に寸法「w8」の略矩形であって、正極塗工部8のZ方向に長さを持つ2つの辺のうち、−X方向にある辺の内側に実質的に等間隔で配置され且つ正極塗工部8に接続されて一体となっている。同様に、正極非塗工部9の1つである接触部11g、11h、11iは、X方向に寸法「w7」及びZ方向に寸法「w8」の略矩形であって、正極塗工部8のZ方向に長さを持つ2つの辺のうち、+X方向にある辺の内側に実質的に等間隔で配置され且つ正極塗工部8に接続されて一体となっている。
なお、寸法「w6」及び寸法「w7」は、後述する電解液保持板18の枠部19に物理的且つ直接的に接触するために十分な長さである。
【0013】
一方、負極板12は、銅等の負極用金属箔(以下、「負極基材」ともいう)の両面にカーボン等の負極活物質が塗工された後、打ち抜かれて形成される。負極板12は、負極基材に負極活物質が塗工されている略矩形の部分(以下、「負極塗工部」13という)と当該負極基材に負極活物質が塗工されていない略矩形の部分(以下、「負極非塗工部」14という)とを備えている。
負極塗工部13のX方向に長さを持つ2つの辺のうち、+Z方向にある辺に接続する略矩形の負極タブ15は、負極非塗工部14である。
これら負極非塗工部14と負極塗工部13との接続関係は、図2(b)に示すとおりである。
すなわち、負極塗工部13は、X方向に寸法「d1」及びZ方向に寸法「d2」の略矩形である。また、負極非塗工部14である負極タブ15は、X方向に寸法「d3」及びZ方向に寸法「d4」の略矩形であって、負極塗工部13のX方向の幅の中心からZ方向へ仮想線(以下、「負極仮想線」という)を引いた場合に、負極仮想線より−X方向に位置し且つ負極塗工部13のX方向の内側に位置し且つ負極塗工部13に接続されて一体となっている(従って、0<d3<{(d1)÷2}である)。
負極塗工部13のXZ平面における略矩形の寸法は、後述の電解液保持板18を配置した電池容器の内部に折れ曲がることなく収納される寸法である。そして、負極塗工部13のXZ平面における略矩形の寸法は、正極塗工部8のXZ平面における略矩形の寸法よりも大きい。すなわち、0<w1<d1且つ0<w2<d2である。従って、図1(a)に示すように、Y方向から見て、正極塗工部8は負極塗工部13の面内に配置される。また、負極タブ15は、正極仮想線と負極仮想線とをXZ平面上で実質的に合わせて正極板7aと負極板12とをセパレータを介して順次Y方向に積層するので、XZ平面上で正極タブ10と重ならない位置に配置される。
【0014】
セパレータ16は、本実施形態では、図1(b)に示すように、略矩形の袋状のセパレータとしている。そして、袋状のセパレータが、負極板12を内包している。当該袋状のセパレータは、略矩形の少なくとも3辺が全部または一部閉じた形状をしており、袋状のセパレータの内部に負極板12を閉じ込めることができる。なお、ここでは、袋状のセパレータの内部に電極板の塗工部全面(ここでは、負極塗工部13の全面)が収められ且つ当該袋の内部から外部へ電極タブ(ここでは、負極タブ15)が飛び出している状態を「内包」という。
セパレータ16を袋状とすることで、後述の如く正極電位に帯電する電池容器に負極板12が接触することを十分に防止し、また、負極板12が正極板7に接触することを十分に防止している。
もちろん、セパレータの寸法等を調整することで、かような防止の機能が達成できる場合には、必ずしも袋状である必要はない。従って、セパレータの形状を単に略矩形のシート状としてもよいし、当該略矩形のセパレータをつづら折にして、その間に電極板を適宜配置するとしてもよい。
【0015】
そして、袋状のセパレータ16に内包された負極板12から積層を始め、当該負極板12のセパレータ16の上(+Y方向)に正極板7aを積層し、次に、当該正極板7aの上(+Y方向)に袋状のセパレータ16に内包された負極板12を積層する。この際、積層される複数の負極板4は、各々の負極タブ15のXZ平面における位置を揃えて積層される。また、積層される複数の正極板7aは、各々の正極タブ10のXZ平面における位置を揃えて積層される。
これを順次繰り返し、最終的に複数の正極板7aと複数の負極板12からなり且つX方向から見たY方向の両端に負極板12が配置される積層電極体17が形成される。図1(b)では、2つの同一の積層電極体17(それぞれ番号を17aと17bとして図に示す)が電池容器に納められた例を示している。
なお、Y方向から見て実質的に同じ位置に揃えられた全ての正極タブ10は、リベット打ち又は溶接等で、正極端子4に電気的に接続される。この際、正極タブ10を直接的に正極端子4に接続してもよいし、正極タブ10と正極端子4との間に金属製の正極用リードを介在させてもよい。また、Y方向から見て実質的に同じ位置に揃えられた全ての負極タブ15は、リベット打ち又は溶接等で、負極端子5に電気的に接続される。この際、負極タブ15を直接的に負極端子5に接続してもよいし、負極タブ15と負極端子5との間に金属製の負極用リードを介在させてもよい。
【0016】
電解液保持板18は、本実施形態では、簀の子(すのこ)状の枠部19(図3(a)及び(b)参照)と、多数の微細な空孔が形成された多孔部22(図3(c)及び(d)参照)とを備えている。そして、枠部19と多孔部22が互いに嵌め合わされて、1枚の板状の電解液保持板18が形成される。以下に詳述する。
なお、図3では、上記底面に配置される電解液保持板18aを示す。上記壁面に配置される電解液保持板18b及び18cについては、その寸法等が図3に示す電解液保持板18aと異なる場合があるものの同様の構成であるので、代表的に上記底面に配置される電解液保持板18aの説明をすることとして、上記壁面に配置される電解液保持板18b及び18cの説明は省略する。
【0017】
簀の子状の枠部19は、導電性が良く且つ熱伝導率の良い材料で形成される。例えば、アルミニウム合金や銅等の金属で形成される。そして、YZ平面における断面積が寸法「D2」×寸法「H1」で、X方向の長さが寸法「W1」の略四角柱の形状をした横板部20(ここでは、横板部20aと20b)と、XZ平面における断面積が寸法「W2」×(寸法「H1」+寸法「H2」)で、Y方向の長さが{寸法「D1」−(2×寸法「D2」)}の略四角柱の形状をした縦板部21とを備えている(ただし、W1<W且つW1≒W、D1<D且つD1≒D)。
枠部19を簀の子状の形状とするため、図3(b)に示すように、X軸上で同一位置に配置された横板部20aと20bの間に、3つの縦板部21が寸法「W3」の間隔を互いに空けて配置され、且つ、3つの縦板部21のうち−X方向の端に位置する縦板部21は横板部20のX方向の両端のうち−X方向の端から+X方向に寸法「W4」の間隔を空けて配置され、且つ、3つの縦板部21のうち+X方向の端に位置する縦板部21は横板部20のX方向の両端のうち+X方向の端から−X方向に寸法「W4」の間隔を空けて配置されている。さらに、縦板部21のZ方向に存在する2つの平面(すなわち、XY平面から見てZ方向に2つ存在する平面)のうち+Z方向にある平面は、横板部20のZ方向に存在する2つの平面(すなわち、XY平面から見てZ方向に2つ存在する平面)のうち+Z方向にある平面と同一の平面となるよう配置される。
このため、枠部19をXZ平面から見ると、図3(a)に示すように、横板部20と縦板部21の各々のX方向に長さを持つ2つの辺のうち+Z方向にある辺の位置は同一となる。また、横板部20と縦板部21とでは、Z方向の寸法が寸法「H2」だけ異なるため、縦板部21が横板部20から突出した凸形状となる。
このように配置された横板部20と縦板部21は互いに物理的に接続されている。別々の部材として形成した横板部20と縦板部21とを溶接等で接合してもよいし、型に溶かしこんで当初から一体に形成してもよい。
【0018】
多孔部22の形状及び寸法は、図3(c)及び(d)に示すように、枠部19にきれいに嵌め込まれて枠部19と多孔部22とが一体となり、この結果、{寸法「D1」×寸法「W1」×(寸法「H1」+寸法「H2」)}の板状且つ表面に凹凸が実質的に存在しない状態の電解液保持板18が形成できるよう、適宜設計される。
多孔部22は、多数の微細な空孔が形成された材料であれば、例えば、アルミナ微粒子の集合体などの無機酸化物であってもよいし、プラスチックや合成樹脂などのスポンジであってもよい。
ただし、多孔部22が変形容易なスポンジ等であると、一般的に安価であるものの、積層電極体17の隣り合う電極板間、すなわち隣接した正極板7aと負極板12との隙間にスポンジ等が入り込み、充放電に伴う積層電極体17の膨張の際に、当該隙間に入り込んだスポンジ等が障害物となって電極板の破損が生じる恐れもある。一方、多孔部22が変形困難な無機酸化物等であれば、一般的に高価であるものの、当該隙間に入り込むことはないので、これを原因とする電極板の破損が生じる恐れがない。そこで、電池1の製造コストと仕様に応じて、多孔部22の材料を変形困難な無機酸化物等とするか又は変形容易なスポンジ等とするかを選択することとなる。
【0019】
上記のように構成された電解液保持板18は、板状の両面(図3(b)では、XY平面から見た2つの面)に縦板部21がむき出しになるとともに、その周囲を多孔部22で取り囲んでいる。縦板部21がこのようにむき出しになっていることで、積層電極体17の接触部11が縦板部21に物理的且つ直接的に接触し、且つ、縦板部21が電池容器に物理的且つ直接的に接触することができる。
また、電解液の循環促進のために所定の間隔を空けて配置される複数の接触部11に対応した位置に、複数の縦板部21がそれぞれ配置されており、且つ、縦板部21の幅(ここでは、寸法「W2」)が接触部11の幅(ここでは、寸法「w5」)と少なくとも同じ幅であることで、充放電により電極板で発生した熱を電極板の内側から効果的に電池容器へ移動させ、電池容器から放熱することができる。
なお、電解液保持板18における枠部19と多孔部22の形状と寸法は、枠部19の縦板部21が接触部11に対応する位置に配置されて上記のようにむき出しとなるよう互いに嵌め合わされた構成であればよく、また、積層電極体17を電池容器の内部に収納する都合上、枠部19と多孔部22とが嵌め合わされた板状の状態における表面に凹凸が実質的に存在しない構成であることが望ましい。従って、図3に示す電解液保持板18の形状及び寸法に限らず、多孔部22に溜め込んで保持する電解液の量と電池1に求められる上記放熱の能力を勘案して、適宜設計変更が可能である。また、ここでは図3(d)で示される電解液保持板18の面を上記壁面に向けて配置しているが、当該面の裏面を上記壁面に向けて配置してもよい。
【0020】
以上の構成により、本実施形態の電池1を縦置き、すなわち−Z方向に重力が働くように電池1を配置した場合には、電池容器の内部に収納された正極板7aの接触部11a、11b、11cが、容器本体2の底面に配置された電解液保持板18aの枠部19に、積層電極体17の自重によって又は重力によって物理的且つ直接的に接することとなる。また、電解液保持板18aの枠部19も自重によって当該底面に物理的且つ直接的に接することとなる。
また、このとき、電池容器の内部に収納された正極板7aの接触部11d、11e、11fが、容器本体2の上記壁面のうちYZ平面と実質的に平行な容器本体2の2つの壁面のうち−X方向の壁面に配置された電解液保持板18bの枠部19に物理的且つ直接的に接する。そして、接触部11d、11e、11fが撓むことで発生するバネによる力で、電解液保持板18bの枠部19も当該壁面に物理的且つ直接的に接することとなる。
さらに、電池容器の内部に収納された正極板7aの接触部11g、11h、11iが、容器本体2の上記壁面のうちYZ平面と実質的に平行な容器本体2の2つの壁面のうち+X方向の壁面に配置された電解液保持板18cの枠部19に物理的且つ直接的に接する。そして、接触部11g、11h、11iが撓むことで発生するバネによる力で、電解液保持板18cの枠部19も当該壁面に物理的且つ直接的に接することとなる。
【0021】
従って、電解液保持板18(18a、18b、18c)の枠部19が接触部11(11a〜11i)と電池容器のいずれにも物理的且つ直接的に接するので、電池容器の電位が実質的に正極板7aの電位と同じとなる(なお、以下、電池容器の電位を実質的に正極板と同電位にすることを「プルアップ」という)。ここで、接触部11及び電解液保持板18は、特許文献1のように電池容器の外部に配置される部材ではなく、また、積層電極体の重みで圧迫されて又は重力で電池容器に電気的に接触するので外れる恐れがない。よって、特許文献1の構成に比べ、電池容器の劣化をより効果的に防止することができる。
また、電解液保持板18(18a、18b、18c)の枠部19が正極板7a(具体的には接触部11(11a〜11i))と電池容器のいずれにも物理的且つ直接的に接するので、充電または放電により積層電極体17の内部で発生する熱が、積層電極体17の内部から電池容器へ迅速に移動し、結果として電池容器から放熱されることになる。よって、特許文献2及び3の構成に比べ、電池性能の劣化をより効果的に防止することができる。
さらに、上記壁面に配置された電解液保持板18b及び電解液保持板18cの多孔部22が電解液を+Z方向へ吸い上げて電解液を保持しているので、積層電極体17の一部の電極板間に電解液が欠乏した場合に、毛細管現象による毛細管力により、多孔部22から円滑に当該一部の電極板間へ電解液の補給が可能となる。
【0022】
なお、本実施形態の電池1を横置き、すなわち+X方向、又は、−X方向に重力が働くように電池1を配置した場合には、電池容器の内部に収納された正極板7aの接触部11g、11h、11i、又は、接触部11d、11e、11fが、電解液保持板18cの枠部19、又は、電解液保持板18bの枠部19に、積層電極体17の自重によって又は重力によって物理的且つ直接的に接する。
このとき、重力方向に2つ配置される電解液保持板18b又は18cのうち、重力方向において上に位置する電解液保持板18から、当該電解液保持板18の多孔部22の保持した電解液が、上記毛細管力または重力によって積層電極体17へ滴り落ちる構成とすることができるため、積層電極体17の一部の電極板間に電解液が欠乏した場合においても、当該一部の電極板間へ電解液の供給が可能となる。
【0023】
以上のとおり、本実施形態の電池1は、上記課題を同時に防止しつつ性能を向上した電池である。
ところで、実施形態の電池1は、プルアップした構成であったが、正極活物質、負極活物質及び電解液の組み合わせによっては、電池容器の電位を実質的に負極板と同電位にして電池容器と電解液との反応を防止する必要がある。ここで、電池容器の電位を実質的に負極板と同電位にすることを「プルダウン」という。
そこで、図4及び図5に電池1の変形例として、「プルダウン」した場合の電池1´を示す。
図4の電池1´は、正極板7aの代わりに正極板7bを用いている点、及び、袋状のセパレータ16が負極板12ではなく正極板7bを内包している点の2点で、図1の電池1と異なり、他の構成は同様である。従って、当該他の構成についての説明は省略する。
図5(a)及び(b)に示すように、正極板7bは、図2(a)に示す正極板7aの接触部11(11a〜11i)が全く形成されていない点以外は正極板7aと同一構成である。
電池1´は、負極板12の負極塗工部13が、図1の電池1における接触部11と同様に、電解液保持板18の枠部19に物理的且つ直接的に接する。
従って、図4の電池1´は、図1の電池1で述べたと同様の効果を奏することができる。
【0024】
本発明は上述した実施形態やその変形例、またはこれらの組み合わせに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限りで種々の変形が可能である。例えば、電池容器の形状は角型として説明したが、円筒型であってもよい(この場合には、例えば、電解液保持板は反った状態の板状の形状とすればよい)。同様に、積層電極体17は、複数の正極板と複数の負極板とがそれぞれセパレータを介して順次積層された積層電極体(積層型積層電極体)でもよいし、1つの正極板と1つの負極板とが1つのセパレータを介して積層され且つ巻かれた状態の積層電極体(捲回型積層電極体)でもよい。なお、積層電極体6が積層型積層電極体である場合には、正極板7と負極板12の数は1以上、すなわち適宜複数に設計が可能である。
また、上述した実施形態やその変形例では、接触部11は正極基材としたが、接触部11を正極基板とは別個に形成した後に、正極基材へ溶接等して接続してもよい。実施形態では、接触部11の数は、正極塗工部8の1つの辺に3つとし、これに対応する位置に縦板部21を配置した。しかし、当該数は1つでもよいし、また複数でもよい。複数の接触部11を互いに間隔を空けて配置できれば、熱を導く経路が複数存在することになるので放熱を効果的に行うことができ、また、当該間隔を電解液が通り抜けることができるので、電解液の循環をより効果的に行うことができる。従って、結果として、電池性能を向上させることができる。なお、ここで、接触部11に例えば多孔性のカーボンコートを行うと、毛細管力等により電解液保持板18から電極板間への電解液の供給を補助することができるので、電池性能をより向上させることができる。
さらに、実施形態およびその変形例では、3つの電解液保持板18a、18b、18cを別々に形成して配置していたが、これらを一体に接続したコの字状の形状としてもよい。この場合には、コの字状の上記壁面に対応した箇所が、コの字状によるバネの力で当該壁面にしっかり接触するよう構成すると電解液保持板の電池容器内における安定性がさらに良くなる。また、実施形態およびその変形例では、電解液保持板18を底面及び上記壁面の一部(すなわち、4つの壁面のうちの2つ)に配置していたが、底面及び上記壁面の全て(すなわち、4つの壁面のうちの4つ)に配置してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1、1´…電池、2…容器本体、3…蓋、4…正極端子、5…負極端子、6…樹脂、
7(7a、7b)…正極板、8…正極塗工部、9…正極非塗工部、
10…正極タブ、11(11a 〜 11i)…接触部、
12…負極板、13…負極塗工部、14…負極非塗工部、15…負極タブ、
16…セパレータ、17(17a、17b)…積層電極体、
18(18a、18b、18c)…電解液保持板、19…電解液保持板の枠部、
20(20a、20b)…横板部、21…縦板部、
22…電解液保持板の多孔部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1極性の電位の第1電極板と、第2極性の電位の第2電極板と、第1電極板と前記第2電極板との間に配置されたセパレータとを備えた積層電極体と、
多孔部と、導電性があり且つ熱伝導性の良い枠部とを備えた電解液保持板と、
前記積層電極体と前記電解液保持板とを収納した導電性の電池容器と
を有し、
前記電解液保持板は前記積層電極体と前記電池容器との間に配置され、前記枠部は、前記第1電極板及び前記電池容器に接触することを特徴とする電池。
【請求項2】
前記電解液保持板は、前記枠部と前記多孔部とが嵌め合わされて板状の形状となることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記枠部は、縦板部と横板部とが接合された簀の子状の形状であることを特徴とする請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記第1電極板は、電極活物質が塗工された塗工部と、前記電極活物質が塗工されていない接触部とを備え、
前記接触部は、前記縦板部に物理的且つ直接的に接触することを特徴とする請求項3に記載の電池。
【請求項5】
前記多孔部は、変形困難な材料を用いて形成されることを特徴とする請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記セパレータは袋状であり、前記第2電極板を内包していることを特徴とする請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記第1電極板は正極板であり、前記第2電極板は負極板であることを特徴とする請求項1及至請求項6のいずれか一項に記載の電池。
【請求項8】
前記第1電極板は負極板であり、前記第2電極板は正極板であることを特徴とする請求項1及至請求項3のいずれか一項に記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−37996(P2013−37996A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174957(P2011−174957)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】