説明

電磁式エアバイパス弁

【課題】開弁開始時において圧力平衡室に作用するエアの動圧を低減し、開弁時間を短縮することのできる電磁式エアバイパス弁を提供する。
【解決手段】電磁式エアバイパス弁20は、バイパス通路12の流入路13と流出路14との間に設けられた弁座15を開閉する弁部材64を有する可動体65と、可動体65を閉方向に付勢するコイルばね38と、可動体65を電磁力により開方向へ移動させる電磁装置24と、電磁装置24の固定側部材67と可動体65との間に設けられて圧力平衡室52を形成するダイアフラム42と、可動体65に形成されて流入路13と圧力平衡室52とを連通する圧力導入通路58とを備える。閉弁状態において、弁部材64の流入路13側と圧力平衡室52側とに加わるエアの圧力が平衡化される。圧力導入通路58に、圧力平衡室52へ作用するエアの動圧を低減する遮蔽板60を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として内燃機関に用いられる電磁式エアバイパス弁に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁式エアバイパス弁の従来例(特許文献1参照)を述べる。図29は電磁式エアバイパス弁の一部を示す断面図である。
図29に示すように、電磁式エアバイパス弁201は、可動体としての弁ユニット202と、弾性部材としてのコイルばね203と、電磁装置としての調節ユニット204とを備える。ターボチャージャのケーシング205が備えるバイパス通路は、吸込み側としての流入路206と、吐出し側としての流出路207と、流入路206と流出路207の間に設けられた弁座208とを有する。弁ユニット202は、流出路207側において弁座208を開閉する弁部材としての弁閉鎖体210を有する。また、コイルばね203は、弁ユニット202を閉方向(図29において下方)に付勢する。また、調節ユニット204は、コイルばね203の付勢力に抗して弁ユニット202を電磁力により開方向(図29において上方)へ移動させる。調節ユニット204の固定側部材としてのケーシング212と弁ユニット202との間に、流出路207に対して区画された圧力平衡室214を形成する圧力応動部材としてのダイアフラム215が介装されている。弁ユニット202に、流入路206と圧力平衡室214とを連通する圧力導入通路217が形成されている。圧力導入通路217は、弁閉鎖体210の中心部及びその周囲に形成された開口孔218を有する。
【0003】
前記電磁式エアバイパス弁201において、調節ユニット204に電磁力が発生していないときすなわち非通電時には、コイルばね203の付勢力によって弁ユニット202が閉方向(図29において下方)に付勢され、弁閉鎖体210が弁座208に着座することによって閉弁状態になる。また、調節ユニット204に電磁力が発生するときすなわち通電時には、その電磁力により弁ユニット202がコイルばね203の付勢力に抗して開方向(図29において上方)に移動され、弁閉鎖体210が弁座208から離座することによって開弁状態になる。ところで、閉弁状態において、流入路206のエアの圧力は、圧力導入通路217を介して圧力平衡室214に作用する。このため、弁閉鎖体210の前後すなわち流入路206側と圧力平衡室214側とに加わるエアの圧力が平衡化される。したがって、コイルばね203の付勢力及び調節ユニット204の電磁力を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−71207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来例によると、開弁時とくに開弁開始時において、流入路206から弁座208の中空部を通って流出路207へ流出する高圧のエアが弁閉鎖体210に衝突し、そのエアの動圧が弁ユニット202の開口孔218から圧力導入通路217を通って圧力平衡室214に作用する。このため、圧力平衡室214内のエアの圧力が低下しにくく、開弁開始から終了までに要する開弁時間が長くかかるという問題があった。このことは、開弁時の作動応答性の低下を招く一因となる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、開弁開始時において圧力平衡室に作用するエアの動圧を低減し、開弁時間を短縮することのできる電磁式エアバイパス弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とする電磁式エアバイパス弁により解決することができる。
請求項1に記載された電磁式エアバイパス弁によると、バイパス通路の流入路と流出路との間に設けられた弁座を流出路側において開閉する弁部材を有する可動体と、可動体を閉方向に付勢する弾性部材と、弾性部材の付勢力に抗して可動体を電磁力により開方向へ移動させる電磁装置と、電磁装置の固定側部材と可動体との間に設けられ、流出路に対して区画された圧力平衡室を形成する圧力応動部材と、可動体に形成され、流入路と圧力平衡室とを連通する圧力導入通路とを備え、弁座に弁部材が着座した閉弁状態において、弁部材の流入路側と圧力平衡室側とに加わるエアの圧力が平衡化される電磁式エアバイパス弁であって、圧力導入通路には、圧力平衡室へ作用するエアの動圧を低減する動圧低減部材を設けたものである。この構成によると、圧力導入通路に設けられた動圧低減部材によって、開弁開始時において圧力平衡室に作用するエアの動圧を低減し、開弁時間を短縮することができる。ひいては、開弁時の作動応答性を向上することができる。なお、圧力応動部材としては、ダイアフラム、ベローズ等の弾性を有する隔膜部材、あるいは、固定側部材に対して移動可能な隔壁部材を用いることができる。
【0008】
請求項2に記載された電磁式エアバイパス弁によると、動圧低減部材は、エアの動圧を受圧する受圧壁部を有する。この構成によると、動圧低減部材が有する受圧壁部によってエアの動圧を受圧することにより、開弁開始時において圧力平衡室に作用するエアの動圧を低減することができる。
【0009】
請求項3に記載された電磁式エアバイパス弁によると、圧力導入通路は、可動体の軸方向に延びる縦通路部を有し、動圧低減部材は、縦通路部よりもエアの流れの上流側においてエアの動圧を受圧する受圧壁部及びエアが流れる通気開口部を有し、受圧壁部は、可動体の軸方向から見た投影視で縦通路部に重なる位置関係をもって配置され、通気開口部は、可動体の軸方向から見た投影視で縦通路部に重ならない位置関係をもって配置されている。この構成によると、動圧低減部材が有する受圧壁部によってエアの動圧を受圧するとともに、動圧低減部材の通気開口部によってエアの流れを複雑化することにより、開弁開始時において圧力平衡室に作用するエアの動圧を低減することができる。
【0010】
請求項4に記載された電磁式エアバイパス弁によると、動圧低減部材は、エアの流れ方向を案内する案内部を有する。この構成によると、動圧低減部材の案内部によってエアの流れを一層複雑化することにより、開弁開始時において圧力平衡室に作用するエアの動圧を低減することができる。
【0011】
請求項5に記載された電磁式エアバイパス弁によると、動圧低減部材は、エアの流れの方向性を異にする少なくとも2つの通気開口部を有する。この構成によると、エアの流れの方向性を異にする少なくとも2つの通気開口部により、エアの流れに方向性が付与されるため、動圧低減部材の圧力導入通路側から流入路側への異物の排出性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態1にかかる電磁式エアバイパス弁を示す断面図である。
【図2】電磁式エアバイパス弁の可動側部分を示す断面図である。
【図3】電磁式エアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
【図4】遮蔽板を示す平面図である。
【図5】遮蔽板を示す断面図である。
【図6】電磁式エアバイパス弁の開弁開始時における圧力平衡室内の圧力変化及び電磁装置に作用する電流の変化を示す特性線図である。
【図7】比較例にかかる電磁式エアバイパス弁の開弁開始時における圧力平衡室内の圧力変化及び電磁装置に作用する電流の変化を示す特性線図である。
【図8】電磁式エアバイパス弁の開弁時における圧力平衡室内の圧力と開弁時間との関係を示す特性線図である。
【図9】実施形態2にかかる電磁式エアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
【図10】実施形態3にかかる電磁式エアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
【図11】遮蔽板を示す平面図である。
【図12】実施形態4にかかる電磁式エアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
【図13】実施形態5にかかる電磁式エアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
【図14】実施形態6にかかる電磁式エアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
【図15】遮蔽板を示す平面図である。
【図16】遮蔽板を示す断面図である。
【図17】実施形態7にかかる電磁式エアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
【図18】実施形態8にかかる電磁式エアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
【図19】遮蔽板を示す斜視図である。
【図20】実施形態9にかかる遮蔽板を示す斜視図である。
【図21】実施形態10にかかる電磁式エアバイパス弁の可動側部分を示す断面図である。
【図22】電磁式エアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
【図23】遮蔽板を示す平面図である。
【図24】実施形態11にかかる電磁式エアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
【図25】遮蔽板を示す平面図である。
【図26】実施形態12にかかる電磁式エアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
【図27】遮蔽板を示す平面図である。
【図28】実施形態13にかかる電磁式エアバイパス弁を示す断面図である。
【図29】従来例にかかる電磁式エアバイパス弁の一部を示す断面図である。
【図30】実施形態14にかかる電磁式エアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
【図31】遮蔽板を示す平面図である。
【図32】遮蔽板を示す断面図である。
【図33】実施形態15にかかる遮蔽板を示す断面図である。
【図34】実施形態16にかかる遮蔽板を示す断面図である。
【図35】実施形態17にかかる電磁式エアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
【図36】実施形態18にかかる電磁式エアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0014】
[実施形態1]
実施形態1を説明する。本実施形態では、例えばターボチャージャを有する内燃機関におけるブローオフバルブとしての電磁式エアバイパス弁(以下、「エアバイパス弁」という)を例示する。図1はエアバイパス弁を示す断面図である。なお、エアバイパス弁の上下左右については、図1を基準として定めることにする。
図1に示すように、エアバイパス弁20は、ターボチャージャのケーシング10に設置されている。エアバイパス弁20は、弁部材64(後述する)の開閉方向が縦方向(上下方向)となる縦置き状に配置されている。また、ケーシング10にはバイパス通路12が形成されている。バイパス通路12は、流入路13と流出路14とを有する。流入路13と流出路14との間に弁座15が形成されている。また、ケーシング10には、弁座15の上方に同心状に位置する取付孔17が形成されている。取付孔17は、弁座15の内径よりも大きい内径を有する。
【0015】
前記エアバイパス弁20は、電磁装置24を備えている。電磁装置24は、ハウジング22、コイル26、固定コア28、端板29等により構成されている。ハウジング22は、有天円筒状に形成されている。また、コイル26は、ボビン27に巻回された状態でハウジング22内に収容されている。また、固定コア28は、円柱状に形成されており、ボビン27の中空部内に配置されている。また、端板29は、円環板状に形成され、ボビン27の下端面に同心状に設けられている。固定子としてのハウジング22、固定コア28及び端板29は、それぞれ鉄等の磁性材により形成されており、固定の磁気回路を形成している。また、ハウジング22の上端部にはコネクタ30が設けられている。コネクタ30には、図示しない制御装置が接続される。制御装置によってコイル26への通電が制御されるようになっている。また、ハウジング22の下端部には、径方向外方へ突出する取付フランジ22aが形成されている。取付フランジ22aの下面側には、樹脂製の円環板状の取付ベース32が結合されている。取付ベース32とボビン27との間に端板29の外周部が挟持されている。
【0016】
前記固定コア28の下端部には、下方へ突出する案内軸34が同心状に取付けられている。案内軸34には、円筒状の可動コア36が、樹脂製の案内スリーブ37を介して上下方向に往復移動可能に嵌合されている。可動コア36は、前記端板29の中空部内に遊嵌されている。可動子としての可動コア36は、鉄等の磁性材により形成されている。また、案内スリーブ37は、可動コア36に対して圧入等により固定されている。案内スリーブ37と固定コア28との間には、案内軸34に嵌装されたコイルばね38が介装されている。コイルばね38は、可動コア36を固定コア28から離す方向すなわち下方へ付勢している。なお、コイルばね38は本明細書でいう「弾性部材」に相当する。
【0017】
前記電磁装置24に電磁力が発生していないときすなわちコイル26への通電のオフ時(非通電時)には、コイルばね38の付勢力によって可動コア36が固定コア28から離れる方向すなわち下方に付勢されている。また、電磁装置24に電磁力が発生するときすなわちコイル26への通電オン時(通電時)には、その電磁力により可動コア36がコイルばね38の付勢力に抗して固定コア28側すなわち上方に吸引される。図2はエアバイパス弁の可動側部分を示す断面図である。
【0018】
図2に示すように、前記可動コア36の下端部には、外径を小さくする取付筒部36aが形成されている。取付筒部36aには、丸皿状のストッパプレート40、円環状のダイアフラム42、逆カップ状の筒状部材44、及び、止めリング46が同心状に順次嵌合され、かつ、その取付筒部36aの下端部の全周に亘る径方向外方へのかしめによって固定されている。取付筒部36aのかしめ部分をかしめ部36bという。また、ストッパプレート40の外周部は、可動コア36の上動時において前記端板29に当接し、可動コア36のそれ以上の上動を制限する。また、ダイアフラム42は、樹脂製のゴム状弾性材からなる。ダイアフラム42の内周部は、ストッパプレート40と筒状部材44との間に挟着されている。また、ストッパプレート40、筒状部材44、止めリング46は、例えば金属製のプレス成形品からなる。また、筒状部材44としては、例えばステンレス材が用いられている。
【0019】
前記取付ベース32の下面側内周部には、樹脂製で円環状のダイアフラムガイド50が同心状に結合されている。取付ベース32とダイアフラムガイド50との間には、前記ダイアフラム42の外周部が挟着されている。これにより、電磁装置24の固定側部材67(後述する)と可動コア36との間に密閉状の圧力平衡室52が形成されている。なお、ダイアフラム42は本明細書でいう「圧力応動部材」に相当する。また、ダイアフラム42は、ベローズ等の弾性を有する隔膜部材に代えてもよい。
【0020】
前記可動コア36には、前記ストッパプレート40の上方に隣接しかつ径方向に貫通する複数個(例えば4個)の横孔54が周方向に等間隔で形成されている。横孔54は、可動コア36の中空部57と前記圧力平衡室52とを連通している。また、複数個の横孔54の合計の開口面積は、可動コア36の中空部57の開口面積とほぼ同等に設定されている。また、筒状部材44の内部空間56、可動コア36の中空部57及び横孔54によって、一連をなす圧力導入通路58が形成されている。なお、可動コア36の中空部57は本明細書でいう「縦通路部」に相当する。また、可動コア36の横孔54は本明細書でいう「横通路部」に相当する。また、横孔54の個数は適宜増減することができ、少なくとも1個あればよい。
【0021】
前記筒状部材44の下端部には、樹脂製の遮蔽板60が設けられている。図3はエアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図、図4は遮蔽板を示す平面図、図5は同じく断面図である。
図4及び図5に示すように、遮蔽板60は、円板状に形成されている。遮蔽板60の下面には、環状突起からなる弁部61が同心状に形成されている。また、遮蔽板60には、板厚方向に貫通する複数個(例えば4個)の通気孔62が周方向に等間隔で形成されている。通気孔62は、例えば円形状で、弁部61の内周側に配置されている。また、複数個の通気孔62の合計の開口面積は、可動コア36の中空部57の開口面積とほぼ同等に設定されている。また、遮蔽板60の弁部61よりも内周側で通気孔62を除いた板状部分により受圧壁部63が形成されている。なお、通気孔62は本明細書でいう「通気開口部」に相当する。また、通気孔62の個数は適宜増減することができ、少なくとも1個あればよい。
【0022】
図3に示すように、前記遮蔽板60は、前記筒状部材44の下端開口部に該開口部を閉鎖するように嵌合されている。筒状部材44の下端部を全周に亘ってかしめることによって、筒状部材44に対して遮蔽板60が同心状にかつ上下方向に位置決めされた状態で固定されている。筒状部材44のかしめ部分をかしめ部44aという。また、遮蔽板60の受圧壁部63は、前記可動コア36の軸方向から見た投影視で可動コア36の中空部57に重なる位置関係をもって配置されている(図4参照)。また、遮蔽板60の通気孔62は、可動コア36の軸方向から見た投影視で可動コア36の中空部57に重ならない位置関係をもって配置されている。なお、遮蔽板60は本明細書でいう「動圧低減部材」に相当する。また、弁部61を有する遮蔽板60と筒状部材44とにより弁部材64が構成されている。また、可動コア36、ストッパプレート40、ダイアフラム42の内周部、止めリング46、弁部材64(筒状部材44及び遮蔽板60)等によって、上下方向に往復移動可能な可動体65が構成されている。また、ハウジング22、コイル26、固定コア28、端板29、取付ベース32、案内軸34、ダイアフラム42の外周部により、固定側部材67が構成されている(図1参照)。
【0023】
前記エアバイパス弁20は、前記ケーシング10上に設置される(図1参照)。詳しくは、取付ベース32は、取付孔17に対して同心状にかつ取付孔17を塞ぐようにして取付孔17の孔縁部上に配置されている。取付ベース32及びハウジング22の取付フランジ22aは、ケーシング10に対して締結等によって固定されている。また、筒状部材44は、ケーシング10の取付孔17から流出路14内に配置されている。また、遮蔽板60の弁部61は、ケーシング10の弁座15上に対応する。また、ケーシング10と取付ベース32との間には、両者間を弾性的にシールするOリング68が同心状に介装されている(図2参照)。
【0024】
次に、前記エアバイパス弁20の作動について説明する。電磁装置24の非通電時においては、可動コア36を含む可動体65がコイルばね38の付勢力によって固定コア28から離れる方向(図1において下方)に付勢される。これにより、弁部材64の遮蔽板60の弁部61がケーシング10の弁座15上に着座される。この状態が「閉弁状態」である(図2参照)。また、電磁装置24の通電時においては、その電磁力によりその電磁力により可動体65がコイルばね38の付勢力に抗して開方向(図2において上方)に移動される。これにより、弁部材64の遮蔽板60の弁部61が弁座15から離座される。この状態が「開弁状態」である。なお、図3では開弁途中の状態いわゆる半開状態が示されている。
【0025】
また、閉弁状態(図2参照)において、ダイアフラム42は、流出路14に対して圧力平衡室52を区画している。また、流入路13と圧力平衡室52は、遮蔽板60の通気孔62及び圧力導入通路58を介して連通されている。したがって、流入路13のエアの圧力は、遮蔽板60の通気孔62及び圧力導入通路58を介して、圧力平衡室52に作用する。このため、弁部材64の前後すなわち流入路13側と圧力平衡室52側とに加わるエアの圧力が平衡化される。したがって、コイルばね38の付勢力及び電磁装置24の電磁力を軽減することができる。
【0026】
ところで、開弁時とくに開弁開始時において、流入路13から弁座15の中空部を通って流出路14へ流出する高圧のエアの大半が遮蔽板60の受圧壁部63に衝突する。これとともに、エアの大半は流出路14へ流れるが、エアの一部(少しのエア)は遮蔽板60の通気孔62から圧力導入通路58を通って圧力平衡室52に流入する(図3中、太線矢印参照)。このとき、遮蔽板60の通気孔62を通じて圧力平衡室52に作用するエアの動圧は、遮蔽板60を省略した場合の可動コア36の中空部57を通じて圧力平衡室52に作用するエアの動圧に比べて低くなる。したがって、開弁開始時において圧力平衡室52に作用するエアの動圧が低減される。これにより、従来例と比べて、圧力平衡室52内のエアの圧力が低下し易くなり、開弁開始から終了までに要する開弁時間が短縮される。また、筒状部材44と遮蔽板60とによる弁部材64の内部空間は、可動コア36の中空部57及び遮蔽板60の通気孔62の開口面積(通路断面積)に比べ、大きい通路断面積を有するため、圧力平衡室52に作用するエアの動圧の緩衝室56(筒状部材44の内部空間と同一符号を付す)として機能する。また、緩衝室56は、圧力導入通路58の入口側通路部に相当する。
【0027】
本実施形態によるエアバイパス弁20と、遮蔽板60を省略したエアバイパス弁(比較例という)との開弁開始時における圧力平衡室52内の圧力変化及び電磁装置24に作用する電流の変化を測定したところ、図6及び図7に示す測定結果が得られた。図6は本実施形態のエアバイパス弁にかかる特性線図、図7は比較例のエアバイパス弁にかかる特性線図である。図6及び図7において、横軸は時間を示し、左側の縦軸は圧力を示し、右側の縦軸は電流を示している。また、図6において、特性線Aは圧力の変化を示し、特性線Bは電流の変化を示している。また、図7において、特性線aは圧力の変化を示し、特性線bは電流の変化を示している。また、供給するエアの圧力は150(kPa)である。また、図6の特性線A,B、及び、図7の特性線a,bは、20℃で電磁装置24への印加電圧が12Vの場合のデータである。なお、比較例のエアバイパス弁においては、遮蔽板60の省略にともない、筒状部材44の下端部に遮蔽板60の弁部61に代わる弁部が形成されている。
【0028】
比較例(図7参照)において、開弁開始時刻から圧力の抜け始めにかかる時間t1は18(ms)、開弁開始時刻から圧力の抜け終わりまでにかかる時間t2は52(ms)、開弁開始時刻から開弁終了までにかかる開弁時間t3は115(ms)であった。このため、圧力平衡室52のエアの圧力が低下しにくく、開弁時間t3が長くかかることが分かる。これに対し、本実施形態(図6参照)によると、開弁開始時刻から圧力の抜け始めにかかる時間T1は16(ms)、開弁開始時刻から圧力の抜け終わりまでにかかる時間T2は39(ms)、開弁開始時刻から開弁終了までにかかる時間T3は53(ms)であった。このため、圧力平衡室52のエアの圧力が低下し易く、開弁時間T3が短縮されていることが分かる。よって、比較例では、圧力平衡室52にエアの動圧が作用することにより開弁時間t3が長くかかるのに対し、本実施形態では、圧力平衡室52にエアの動圧が作用しにくいことにより開弁時間T3が短縮されていることが分かる。
【0029】
また、本実施形態のエアバイパス弁20と比較例に係るエアバイパス弁における圧力平衡室52内の圧力と開弁時間との関係を測定したところ、図8に示す特性線図が得られた。図8において、横軸は圧力を示し、縦軸は開弁時間を示している。また、特性線Cは本実施形態の特性を示し、特性線Dは比較例の特性を示している。また、図8の特性線C,Dは、20℃で電磁装置24への印加電圧が13Vの場合で、圧力を変化させたときの開弁時間のデータである。
図8において、本実施形態(特性線C参照)によると、比較例(特性線D参照)に比べ、圧力が増大しても開弁時間がほとんど変化しないことが分かる。また、一般的なブローオフバルブの場合、圧力使用範囲が200(kPa)以下である場合が大半であるが、本実施形態のエアバイパス弁20では、圧力が150(kPa)に対応するように設計されている。
【0030】
前記したエアバイパス弁20によると、圧力導入通路58に設けられた遮蔽板60のによって、開弁開始時において圧力平衡室52に作用するエアの動圧を低減し、開弁時間を短縮することができる。ひいては、開弁時の作動応答性を向上することができる。
【0031】
また、遮蔽板60が有する受圧壁部63によってエアの動圧を受圧することにより、開弁開始時において圧力平衡室52に作用するエアの動圧を低減することができる。
【0032】
また、圧力導入通路58が、可動体65の軸方向に延びる可動コア36の中空部57を有し、遮蔽板60が、可動コア36の中空部57よりもエアの流れの上流側(図3においていて下側)においてエアの動圧を受圧する受圧壁部63及びエアが流れる通気孔62を有し、受圧壁部63が、可動体65の軸方向から見た投影視で可動コア36の中空部57に重なる位置関係をもって配置され、通気孔62が、可動体65の軸方向から見た投影視で可動コア36の中空部57に重ならない位置関係をもって配置されている。したがって、遮蔽板60が有する受圧壁部63によってエアの動圧を受圧するとともに、遮蔽板60の通気孔62によってエアの流れ(図3中、太線矢印参照)を複雑化することにより、開弁開始時において圧力平衡室52に作用するエアの動圧を低減することができる。
【0033】
[実施形態2]
実施形態2を説明する。本実施形態以降の実施形態は、前記実施形態1に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図9はエアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
本実施形態は、図9に示すように、前記実施形態1(図3参照)における遮蔽板60の上面外周縁に段付溝70を形成し、その段付溝70にOリング71を装着したものである。Oリング71は、筒状部材44と遮蔽板60との間を弾性的にシールする。このため、筒状部材44と遮蔽板60との間の気密性を向上することができる。
【0034】
[実施形態3]
実施形態3を説明する。本実施形態は、前記実施形態1に変更を加えたものである。図10はエアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図、図11は遮蔽板を示す平面図である。
本実施形態は、図10に示すように、前記実施形態1(図3参照)における筒状部材44に対する遮蔽板60の取付構造を変更したものである。すなわち、筒状部材44の下端部には、前記かしめ部36b(図2参照)に代えて、径方向外方へ突出するフランジ部73が形成されている。また、遮蔽板60は、フランジ部73に対応する外径をもって形成されている。遮蔽板60の外周部上には、複数個(例えば4個)の係止爪74が周方向に等間隔で形成されている(図11参照)。係止爪74は、筒状部材44のフランジ部73の外周部に対して径方向外方への弾性変形いわゆる撓み変形を利用して係合可能に形成されている。なお、フランジ部73の外周部と各係止爪74とにより、いわゆる「スナップフィット」が構成されている。
【0035】
前記筒状部材44のフランジ部73に対して遮蔽板60の外周部を同心状に重ね合わせると、係止爪74がフランジ部73の外周部によって一時的に径方向外方へ撓み変形された後、弾性復元する。これによって、フランジ部73の外周部に各係止爪74が係合することにより、筒状部材44に遮蔽板60が抜け止め状態に取付けられている(図10参照)。したがって、筒状部材44に遮蔽板60をスナップフィットにより容易に取付けることができる。また、フランジ部73と遮蔽板60との間には、両者間を弾性的にシールするOリング75が同心状に介装されている。なお、係止爪74の個数は適宜増減することができる。また、係止爪74は、遮蔽板60に代えて、筒状部材44に形成し、遮蔽板60に係合させることもできる。
【0036】
また、前記実施形態1(図3参照)における可動コア36の取付筒部36aの下端部に、かしめ部36bに代えて、下方すなわち軸方向に延びるストレート状の延出筒部36cが形成されている(図10参照)。これにより、遮蔽板60の通気孔62から可動コア36の中空部57へ流れようとするエアの流れ(図10中、太線矢印参照)を複雑化することができる。したがって、開弁開始時において圧力平衡室52に作用するエアの動圧を低減することができる。また、本実施形態の場合、可動コア36の取付筒部36aに対する止めリング46の圧入によって、可動コア36にストッパプレート40、ダイアフラム42の内周部及び筒状部材44が固定されている。
【0037】
[実施形態4]
実施形態4を説明する。本実施形態は、前記実施形態1に変更を加えたものである。図12はエアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
本実施形態は、図12に示すように、前記実施形態1(図3参照)における金属製の筒状部材44に代えて、樹脂製の筒状部材77が用いられている。筒状部材77の下端部の内周面には、遮蔽板60の外周部を嵌合可能な取付溝78が形成されている。遮蔽板60は、筒状部材77の下端部内に圧入されかつ外周部が取付溝78に嵌合されることによって、筒状部材77に対して位置決めされた状態に取付けられている。
【0038】
[実施形態5]
実施形態5を説明する。本実施形態は、前記実施形態4に変更を加えたものである。図13はエアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
本実施形態は、図13に示すように、前記実施形態4(図12参照)における筒状部材77の下端部に、遮蔽板60の弁部61に代わる弁部80を形成したものである。このため、遮蔽板60の弁部61は、環状突起81になっている。なお、遮蔽板60の環状突起81は省略することもできる。
【0039】
[実施形態6]
実施形態6を説明する。本実施形態は、前記実施形態1に変更を加えたものである。図14はエアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図、図15は遮蔽板を示す平面図、図16は同じく断面図である。
本実施形態は、図14に示すように、前記実施形態1(図3参照)における筒状部材44の下端部に、かしめ部44aに代えて、径方向外方へ突出するフランジ状の弁部83が形成されている。また、前記実施形態1(図3参照)における樹脂製の遮蔽板60に代えて、金属製のプレス成形品からなる遮蔽板84が用いられている。図15及び図16に示すように、遮蔽板84は、皿状に形成されており、打ち抜き加工によって形成された複数個(例えば4個)の通気孔85を有する。遮蔽板84は弁部を有していない。また、遮蔽板84は、筒状部材44の下端部内に圧入によって取付けられている。また、遮蔽板84の通気孔62を除いた板状部分により受圧壁部86が形成されている。
【0040】
[実施形態7]
実施形態7を説明する。本実施形態は、前記実施形態6に変更を加えたものである。図17はエアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
本実施形態は、図17に示すように、前記実施形態6(図14参照)における可動コア36の取付筒部36aの下端部に、かしめ部36bに代えて、ストレート状の延出筒部36cが前記実施形態3(図10参照)と同様に形成されている。この場合も、前記実施形態3(図10参照)と同様、可動コア36の取付筒部36aに対する止めリング46の圧入によって、可動コア36にストッパプレート40、ダイアフラム42の内周部及び筒状部材44が固定されている。
【0041】
[実施形態8]
実施形態8を説明する。本実施形態は、前記実施形態7に変更を加えたものである。図18はエアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図、図19は遮蔽板を示す斜視図である。
本実施形態は、図18及び図19に示すように、前記実施形態7(図17参照)における遮蔽板84に代えて、金属製のプレス成形品からなる平板状の遮蔽板87が用いられている。本実施形態では、図19に示すように、遮蔽板87に各通気孔88が切り起こし加工によって形成されており、その切り起こし加工による切り起こし片がエア案内片89とされている。また、遮蔽板84の通気孔88を除いた板状部分により受圧壁部90が形成されている。また、エア案内片89は、通気孔88における遮蔽板87の径方向内側で受圧壁部90と連続されており、遮蔽板87の径方向外側に向かって上方ヘ傾斜状に折り曲げられている。これにより、遮蔽板87のエア案内片89によってエアの流れ(図18中、太線矢印参照)を一層複雑化することができる。したがって、開弁開始時において圧力平衡室52(図2参照)に作用するエアの動圧を低減することができる。なお、エア案内片89は本明細書でいう「案内部」に相当する。
【0042】
[実施形態9]
実施形態9を説明する。本実施形態は、前記実施形態8に変更を加えたものである。図20は遮蔽板を示す斜視図である。
本実施形態は、図20に示すように、前記実施形態8(図19参照)における遮蔽板87からエア案内片89を省略したものである。すなわち、通気孔88を、遮蔽板87に対する切り起こし加工に代えて、打ち抜き加工によって形成したものである。
【0043】
[実施形態10]
実施形態10を説明する。本実施形態は、前記実施形態1に変更を加えたものである。図21はエアバイパス弁の可動側部分を示す断面図、図22はエアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図、図23は遮蔽板を示す平面図である。
本実施形態は、図21に示すように、前記実施形態1(図2参照)におけるダイアフラム42及びストッパプレート40が省略されている。また、実施形態1における金属製の筒状部材44に代えて、樹脂製の筒状部材91が用いられている。この場合、可動コア36の取付筒部36aに止めリング46を圧入することによって、可動コア36に筒状部材91が固定されている。また、可動コア36からは、前記実施形態1における横孔54が省略されている。また、筒状部材91の下端部には、実施形態1における遮蔽板60の弁部61に代わる弁部92が形成されている。
【0044】
前記取付ベース32の下面側内周部には、実施形態1(図2参照)におけるダイアフラムガイド50に代えて、樹脂製で円環状のリテーナ93が同心状に結合されている。リテーナ93の内周面には、円環状でかつ断面U字状のシール部材95の外周部が保持されている。シール部材95の内周部は、前記筒状部材91の外周面に対して摺動可能に接触されている。これにより、電磁装置24の固定側部材67と可動体65との間に密閉状の圧力平衡室96が形成されている。なお、筒状部材91は本明細書でいう「圧力応動部材」、「隔壁部材」に相当する。
【0045】
図22に示すように、前記筒状部材91の上壁91aには、上下方向に貫通する複数個(例えば4個)の連通孔98が周方向に等間隔で形成されている(図23中、二点鎖線98参照)。連通孔98は、筒状部材91の内部空間99と前記圧力平衡室96とを連通している。また、筒状部材91の内部空間99と連通孔98とによって、一連をなす圧力導入通路100が形成されている。なお、筒状部材91の連通孔98は本明細書でいう「縦通路部」に相当する。また、連通孔98の個数は適宜増減することができ、少なくとも1個あればよい。
【0046】
前記筒状部材91の下端部内には、実施形態1における遮蔽板60に代えて、金属製又は樹脂製の遮蔽板102が用いられている。遮蔽板102は、中央部に通気孔103を有する円環板状に形成されており、その板状部分が受圧壁部104となっている(図23参照)。遮蔽板102上には、通気孔103の孔縁部上に同心状に突出するストレート状の案内筒部105が形成されている。遮蔽板102の受圧壁部104は、前記筒状部材91の軸方向から見た投影視で連通孔98に重なる位置関係をもって配置されている(図23参照)。また、遮蔽板102の通気孔103は、筒状部材91の軸方向から見た投影視で連通孔98に重ならない位置関係をもって配置されている。また、圧力導入通路100を圧力平衡室96に向かって流れるエアの流れが、図22に太線矢印で示されている。なお、案内筒部105は本明細書でいう「案内部」に相当する。また、案内筒部105は省略することもできる。
【0047】
[実施形態11]
実施形態11を説明する。本実施形態は、前記実施形態10に変更を加えたものである。図24はエアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図、図25は遮蔽板を示す平面図である。
本実施形態は、図24及び図25に示すように、前記実施形態10(図23及び図24参照)における遮蔽板102の案内筒部105が、天井部105aを有する有天円筒状に形成され、その側壁部105bに径方向に開口する複数個(例えば4個)の窓孔106が周方向に等間隔で形成されている。また、遮蔽板102の窓孔106は、前記筒状部材91の連通孔98(図25中、二点鎖線98参照)に対して、径方向に関して整合しないように、位相をずらして配置されている。これにより、遮蔽板102の窓孔106から連通孔98へ流れようとするエアの流れを複雑化することができる。したがって、開弁開始時において圧力平衡室96に作用するエアの動圧を低減することができる。なお、窓孔106の個数は適宜増減することができ、少なくとも1個あればよい。
【0048】
[実施形態12]
実施形態12を説明する。本実施形態は、前記実施形態10に変更を加えたものである。図26はエアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図、図27は遮蔽板を示す平面図である。
本実施形態は、図26及び図27に示すように、前記実施形態10(図24参照)における遮蔽板102に代えて、前記実施形態6(図14参照)における遮蔽板84が用いられている。また、遮蔽板84の通気孔85は、前記筒状部材91の連通孔98(図27中、二点鎖線98参照)に対して、径方向に関して整合しないように、位相をずらして配置されている。これにより、遮蔽板102の通気孔103から連通孔98へ流れようとするエアの流れを複雑化することができる。したがって、開弁開始時において圧力平衡室96に作用するエアの動圧を低減することができる。
【0049】
[実施形態13]
実施形態13を説明する。本実施形態は、前記実施形態1に変更を加えたものである。図28はエアバイパス弁を示す断面図である。
本実施形態は、図28に示すように、前記実施形態1(図1参照)における電磁装置24を電磁装置110に変更したものである。電磁装置110は、前記電磁装置24のハウジング22に代えて、ハウジング112とヨーク114とを備えている。ヨーク114は、鉄等の磁性材により有天円筒状に形成されており、コイル26が巻回されたボビン27を収容している。ヨーク114の上壁に形成された孔114a内に固定コア28の上端部が嵌着されている。固定子としてのヨーク114、固定コア28及び端板29は、固定の磁気回路を形成している。また、ハウジング112は、樹脂製で有天円筒状に形成されており、固定コア28を含むヨーク114の上面及び外周囲を取り囲んでいる。ハウジング112の下端部には、前記実施形態1における取付ベース32に相当する取付ベース部112aが一体形成されている。また、本実施形態では、固定コア28が中空円筒状に形成されており、その中空部の下部内に案内軸34が取付けられているとともにその上部内にハウジング112の樹脂が充填されている。
【0050】
[実施形態14]
実施形態14を説明する。本実施形態は、前記実施形態1に変更を加えたものである。図30はエアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図、図31は遮蔽板を示す平面図、図32は同じく断面図である。
本実施形態は、図30〜図32に示すように、前記実施形態1のエアバイパス弁20(図1〜図3参照)における遮蔽板60(図4及び図5参照)の複数個(例えば4個)の通気孔62のうちの2個、例えば遮蔽板60の周方向に隣り合う2個の通気孔62を流入側通気孔(符号、116を付す)とするとともに、残りの2個を流出側通気孔(符号、118を付す)とする。流入側通気孔116は、遮蔽板60の上面側から下面側に向かって徐々に拡径するテーパ孔状に形成されている。また、流出側通気孔118は、遮蔽板60の下面側から上面側に向かって徐々に拡径するテーパ孔状に形成されている。また、両通気孔116,118の内周面は、断面直線状の傾斜状平面部116a,118aにより形成されている(図32参照)。また、本実施形態では、両通気孔116,118の小径側の孔径は、実施形態1における通気孔62の孔径と同一径に設定されている。また、両通気孔116,118は、同一形状で、上下方向の向きが異なっている。なお、遮蔽板60の下面側は、バイパス通路12の流入路13側に相当する。また、遮蔽板60の上面側は、可動体65の弁部材64の緩衝室56側、すなわち圧力導入通路58の入口側通路部分に相当する。
【0051】
本実施形態によると、遮蔽板60が、エアの流れの方向性を異にする2つの通気開口部すなわち流入側通気孔116と流出側通気孔118とを有する。流入側通気孔116は、流入路13のエアが緩衝室56に流入しやすく、その逆方向に流出しにくい形状となっている。また、流出側通気孔118は、緩衝室56のエアが流入路13に流出しやすく、その逆方向に流入しにくい形状となっている。したがって、エアの流れの方向性を異にする流入側通気孔116と流出側通気孔118とにより、エアの流れに方向性を付与することができる(図30中、矢印参照)。すなわち、弁部材64の開閉にともなって、流入路13のエアが緩衝室56に流入するときは、そのエアは両通気孔116,118を流れるものの、流出側通気孔118に比べて流入側通気孔116を流れやすい。また逆に、緩衝室56のエアが流入路13に流出するときは、そのエアは両通気孔116,118を流れるものの、流入側通気孔116に比べて流出側通気孔118を流れやすい。これにより、緩衝室56に対するエアの流れに方向性が付与される。このため、緩衝室56側から流入路13側へのオイルミスト、凝縮水等の異物の排出性を向上することができる。ひいては、緩衝室56を含む圧力導入通路100内への異物の侵入を防止し、その異物の堆積による通路断面積の減少、摺動部(案内軸34と可動コア36との摺動面間)への異物の侵入による可動体65の作動不良等の不具合を防止することができる。
【0052】
なお、遮蔽板60は、流入側通気孔116と流出側通気孔118を少なくとも1つずつ有するものであればよく、残りの2つのうちの少なくとも1つは、省略してもよいし、あるいは、実施形態1における通気孔62としてもよい。また、本実施形態では、遮蔽板60の周方向に隣り合う2個の通気孔62を流入側通気孔116とするとともに、残りの2個を流出側通気孔118としたが、遮蔽板60の周方向に流入側通気孔116と流出側通気孔118とを交互に配置してもよい。また、本実施形態では、両通気孔116,118を同一形状で形成したが、異なる形状でもよい。また、両通気孔116,118の孔径、テーパ角等は、適宜変更することができる。
【0053】
[実施形態15]
実施形態15を説明する。本実施形態は、前記実施形態14に変更を加えたものである。図33は遮蔽板を示す断面図である。
本実施形態は、図33に示すように、実施形態14における遮蔽板60の両通気孔116,118の内周面の傾斜状平面部116a,118a(図32参照)を、断面凸型の円弧状の曲面部116b,118bに変更したものである。
【0054】
[実施形態16]
実施形態16を説明する。本実施形態は、前記実施形態14に変更を加えたものである。図34は遮蔽板を示す断面図である。
本実施形態は、図34に示すように、実施形態14における遮蔽板60の両通気孔116,118の内周面の傾斜状平面部116a,118a(図32参照)を、断面凹型の円弧状の曲面部116c,118cに変更したものである。
【0055】
[実施形態17]
実施形態17を説明する。本実施形態は、前記実施形態14に変更を加えたものである。図35はエアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
本実施形態では、図35に示すように、実施形態14におけるターボチャージャのケーシング10及びエアバイパス弁20(図30参照)が、弁部材64の開閉方向が横方向(水平方向)となる横置き状に配置されている。また、エアバイパス弁20は、遮蔽板60の2つの流出側通気孔118のうちの1つが最下端に位置するように配置されている。
【0056】
本実施形態によると、遮蔽板60において流出側通気孔118が最下端に位置することによって、流出側通気孔118の大径側(緩衝室56側)の開口端面の下端位置を、その小径側開口端面の下端位置(前記実施形態1における通気孔62(図3参照)の下端位置が相当する)に比べて低い位置に下がる。したがって、緩衝室56の底面部(下端部)に堆積しようとするオイルミスト、凝縮水等の異物を、最下端の流出側通気孔118を通るエアの流れを利用して速やかに排出することができる。
【0057】
[実施形態18]
実施形態18を説明する。本実施形態は、前記実施形態17に変更を加えたものである。図36はエアバイパス弁の遮蔽板の周辺部を示す断面図である。
本実施形態では、図36に示すように、前記実施形態17(図35参照)の遮蔽板60において、最下端の流出側通気孔118を、その大径側の開口端面の下端位置が緩衝室56の底面(符号、56aを付す)に対して整合又は略整合する位置に配置したものである。したがって、緩衝室56の底面部に堆積しようとする異物を、最下端の流出側通気孔118を通るエアの流れを利用して効果的に排出することができる。また、本実施形態では、実施形態17における両通気孔116,118が径方向外方へずらした位置に配置されている。なお、最下端の流出側通気孔118のみを径方向外方へずらした位置に配置してもよい。
【0058】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。また、実施形態で説明した技術的要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、特許請求の範囲の請求項の記載に限定されるものではない。また、実施形態で例示した技術は、複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術的有用性をもつものである。
【符号の説明】
【0059】
10…ケーシング
12…バイパス通路
13…流入路
14…流出路
15…弁座
20…エアバイパス弁(電磁式エアバイパス弁)
24…電磁装置
36…可動コア
38…コイルばね(弾性部材)
42…ダイアフラム(圧力応動部材、隔膜部材)
44…筒状部材
52…圧力平衡室
56…内部空間(緩衝室)
57…中空部(縦通路部)
58…圧力導入通路
60…遮蔽板(動圧低減部材)
61…弁部
62…通気孔(通気開口部)
63…受圧壁部
64…弁部材
65…可動体
67…固定側部材
77…筒状部材
83…弁部
84…遮蔽板(動圧低減部材)
85…通気孔(通気開口部)
86…受圧壁部
87…遮蔽板(動圧低減部材)
88…通気孔(通気開口部)
89…エア案内片(案内部)
90…受圧壁部
91…筒状部材(圧力応動部材、隔壁部材)
92…弁部
96…圧力平衡室
98…連通孔(縦通路部)
100…圧力導入通路
102…遮蔽板(動圧低減部材)
103…通気孔(通気開口部)
104…受圧壁部
105…案内筒部(案内部)
110…電磁装置
116…流入側通気孔(通気開口部)
118…流出側通気孔(通気開口部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイパス通路の流入路と流出路との間に設けられた弁座を該流出路側において開閉する弁部材を有する可動体と、
前記可動体を閉方向に付勢する弾性部材と、
前記弾性部材の付勢力に抗して前記可動体を電磁力により開方向へ移動させる電磁装置と、
前記電磁装置の固定側部材と前記可動体との間に設けられ、前記流出路に対して区画された圧力平衡室を形成する圧力応動部材と、
前記可動体に形成され、前記流入路と前記圧力平衡室とを連通する圧力導入通路と
を備え、
前記弁座に前記弁部材が着座した閉弁状態において、該弁部材の流入路側と圧力平衡室側とに加わるエアの圧力が平衡化される電磁式エアバイパス弁であって、
前記圧力導入通路には、前記圧力平衡室へ作用するエアの動圧を低減する動圧低減部材を設けたことを特徴とする電磁式エアバイパス弁。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁式エアバイパス弁であって、
前記動圧低減部材は、エアの動圧を受圧する受圧壁部を有することを特徴とする電磁式エアバイパス弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電磁式エアバイパス弁であって、
前記圧力導入通路は、前記可動体の軸方向に延びる縦通路部を有し、
前記動圧低減部材は、前記縦通路部よりもエアの流れの上流側において前記エアの動圧を受圧する受圧壁部及びエアが流れる通気開口部を有し、
前記受圧壁部は、前記可動体の軸方向から見た投影視で前記縦通路部に重なる位置関係をもって配置され、
前記通気開口部は、前記可動体の軸方向から見た投影視で前記縦通路部に重ならない位置関係をもって配置されている
ことを特徴とする電磁式エアバイパス弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の電磁式エアバイパス弁であって、
前記動圧低減部材は、エアの流れ方向を案内する案内部を有することを特徴とする電磁式エアバイパス弁。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の電磁式エアバイパス弁であって、
前記動圧低減部材は、エアの流れの方向性を異にする少なくとも2つの通気開口部を有することを特徴とする電磁式エアバイパス弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2013−83339(P2013−83339A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−30778(P2012−30778)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】