説明

電磁波干渉フィルタ

【課題】小型化が可能な電磁波干渉フィルタを提供すること。
【解決手段】実施形態に係る電磁波干渉フィルタ10は、半導体基板11の表面上に形成された抵抗R、およびこの抵抗Rの両端にそれぞれ電気的に接続された一対のキャパシタC、をそれぞれ具備する複数の電磁波干渉フィルタ回路12と、これらの電磁波干渉フィルタ回路12間の半導体基板11に埋め込み形成された素子分離層13と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電磁波干渉フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の電子機器は、他の機器と通信するためのアンテナおよび外部接続端子、信号の電力を増幅する電力増幅器等を有する。アンテナ、または外部接続端子から受信した信号、および電力増幅器にて電力が増幅された信号はノイズ成分を含んでいる。従って、一般に電子機器には、信号のノイズ成分を除去するための複数の電磁波干渉フィルタ(EMIフィルタ)回路を1チップ化したEMIフィルタが用いられる。
【0003】
ところで、携帯電話をはじめとする近年の電子機器には、小型化、軽量化が強く望まれている。従って、電子機器に用いられるEMIフィルタも小型化することが望まれる。しかし、EMIフィルタを小型化すると、EMIフィルタ回路間の距離が短くなる。EMIフィルタ回路間の距離を短くすると、EMIフィルタ回路間でクロストークが発生し、EMIフィルタ回路から出力される信号の波形を劣化させる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−510662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、小型化が可能な電磁波干渉フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る電磁波干渉フィルタは、半導体基板の表面上に形成された、抵抗またはインダクタを構成する導体、およびこの導体の両端にそれぞれ電気的に接続された一対のキャパシタ、をそれぞれ具備する複数の電磁波干渉フィルタ回路と、これらの電磁波干渉フィルタ回路間の前記半導体基板に埋め込み形成された素子分離層と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る電磁波干渉フィルタを模式的に示す上面図である。
【図2】図1の一点鎖線X−X´に沿ったフィルタの断面図である。
【図3】第1の実施形態の変形例に係る電磁波干渉フィルタを模式的に示す上面図である。
【図4】図3の一点鎖線X−X´に沿ったフィルタの断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る電磁波干渉フィルタを模式的に示す上面図である。
【図6】図5の一点鎖線X−X´に沿ったフィルタの断面図である。
【図7】他の形態のEMIフィルタ回路が適用された電磁波干渉フィルタを示す、図2に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態に係る電磁波干渉フィルタ(以下、EMI(ElectroMagnetic Interference)フィルタと称する)について、図面を参照して説明する。なお、下記の各EMIフィルタは、複数のEMIフィルタ回路を1チップ化したものであり、例えば携帯電話のディスプレイ、カメラ等に接続される配線、若しくは携帯電話の外部出力端子等に適用されるものである。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るEMIフィルタを模式的に示す上面図である。図2は、図1の一点鎖線X−X´に沿って示すフィルタの断面図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るEMIフィルタ10は、例えばシリコンからなるP型の半導体基板11(図2)に、複数のEMIフィルタ回路12が形成されたものである。
【0010】
それぞれのEMIフィルタ回路12は、キャパシタC、および抵抗Rからなる、いわゆるローパスフィルタである。複数のEMIフィルタ回路12は、半導体基板11(図2)に、格子状に配列形成されている。
【0011】
複数のEMIフィルタ回路12間における半導体基板11(図2)には、DTI(Deep Trench Isolation)構造、すなわちトレンチ構造の素子分離層13が形成されている。素子分離層13は、複数のEMIフィルタ回路12を個々に分割するように、十字状に形成されている。
【0012】
図2に示すように、各EMIフィルタ回路12は、互いに離間した一対のN+型の不純物層14a、14b、抵抗体15、およびこれらを接続する配線パターン16a、16bを有する。
【0013】
一対のN+型の不純物層14a、14bは、それぞれ半導体基板11の表面に埋め込み形成されている。各N+型の不純物層14a、14bと半導体基板11とは、PN接合しており、ダイオードDを構成する。半導体基板11と各N+型の不純物層14a、14bとの境界部分には空乏層が形成され、この空乏層がEMIフィルタ回路12のキャパシタCとして機能する。
【0014】
抵抗体15は、一対のN+型の不純物層14a、14b間における半導体基板11の表面上に、酸化膜17を介して形成されている。抵抗体15は、例えば帯状のポリシリコン膜からなる。抵抗体15は、EMIフィルタ回路12の抵抗Rとして機能する。
【0015】
なお、酸化膜17は、N+型の不純物層14a、14b上を除く半導体基板11の全面に形成されている。また、抵抗体15を含む酸化膜17上には、抵抗体15の両端部上を除いて、絶縁体からなる層間膜18が形成されている。
【0016】
配線パターン16a、16bは、N+型の不純物層14a、14b上および抵抗体15の両端部上を含むこれらの間の半導体基板11上に形成されている。各配線パターン16a、16bの一端はN+型の不純物層14a、14bに接するとともに、各配線パターン16a、16bの他端は層間膜18から露出した抵抗体15の端部に接し、各配線パターン16a、16bの中央部は半導体基板11上に酸化膜17および層間膜18を介して形成されている。これにより、配線パターン16a、16bは、一方のN+型の不純物層14aと抵抗体15の一端とを電気的に接続し、他方のN+型の不純物層14bと抵抗体15の他端とを電気的に接続する。配線パターン16a、16bは、例えばアルミニウム配線である。
【0017】
EMIフィルタ回路12間の半導体基板11には、絶縁領域である素子分離層13が形成されている。素子分離層13は、半導体基板11に埋め込まれるように形成されている。この素子分離層13は、EMIフィルタ回路12間の半導体基板11に十字状に溝を形成し、この溝の内部に絶縁体を設けることにより、形成することができる。
【0018】
素子分離層13は、一方のEMIフィルタ回路12とこれに隣接する他方のEMIフィルタ回路12とを電気的に絶縁する。従って、素子分離層13は、EMIフィルタ回路12間のクロストークを抑制する。なお、クロストークとは、一方のEMIフィルタ回路12を流れる信号が、他方のEMIフィルタ回路12を流れる信号にノイズとして影響を与えることを意味する。
【0019】
以上に説明したEMIフィルタ10は、各配線パターン16a、16b上の一部を除くフィルタ10の全面が、保護膜であるポリイミド層19で覆われている。ポリイミド層19から露出した配線パターン16a、16bには、ボンディングワイヤ(図示せず)が形成される。配線パターン16a、16bは、実装基板上の配線(図示せず)と、ボンディングワイヤ(図示せず)によって電気的に接続される。
【0020】
図2に示すように、各EMIフィルタ回路12には、ボンディングワイヤ(図示せず)を介してそれぞれ異なる信号(sig1、sig2)が入力される。入力された各信号(sig1、sig2)のノイズは、EMIフィルタ回路12によって除去される。ノイズが除去された各信号(sig1、sig2)は、各EMIフィルタ回路12から、ボンディングワイヤ(図示せず)を介してそれぞれ出力される。
【0021】
以上に説明した第1の実施形態に係るEMIフィルタ10によれば、各EMIフィルタ回路12間に素子分離層13が形成されている。素子分離層13は、各EMIフィルタ回路12間のクロストークを抑制する。従って、EMIフィルタ回路12間の距離L、Lを従来より短くすることができるため、EMIフィルタを、従来より小型化することができる。
【0022】
(第1の実施形態の変形例)
図3は、第1の実施形態の変形例に係るEMIフィルタ20を模式的に示す上面図である。図4は、図3の一点鎖線X−X´に沿って示すフィルタ20の断面図である。図3、図4に示すように、EMIフィルタ20が、4個より多い複数のEMIフィルタ回路12を有する場合、素子分離層21を、各EMIフィルタ回路12を囲うように形成してもよい。
【0023】
この変形例に係るEMIフィルタ20であっても、素子分離層21は、各EMIフィルタ回路12間のクロストークを抑制するため、EMIフィルタ20を、従来より小型化することができる。
【0024】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係るEMIフィルタ30を模式的に示す上面図である。図6は、図5の一点鎖線X−X´に沿って示すフィルタ30の断面図である。図5、図6に示すように、第2の実施形態に係るEMIフィルタ30は、第1の実施形態に係るEMIフィルタ10と比較して、各EMIフィルタ回路12間に、複数の素子分離層31が形成されている点が異なる。第2の実施形態に係るEMIフィルタ30の例では、例えば各EMIフィルタ回路12間に、2本の素子分離層31が形成されている。
【0025】
2本の素子分離層31は、それぞれ、第1の実施形態に係るEMIフィルタに形成された素子分離層13と比較して、浅く形成される。
【0026】
この第2の実施形態に係るEMIフィルタ30であっても、2本の素子分離層31は、各EMIフィルタ回路12間のクロストークを抑制するため、EMIフィルタ30を、従来より小型化することができる。
【0027】
なお、EMIフィルタ回路12間に2本の素子分離層31を形成するため、EMIフィルタ回路12間の距離L´、L´は、第1の実施形態に係るEMIフィルタ10におけるEMIフィルタ回路12間の距離L、Lと比較して、長くなる。従って、第2の実施形態に係るEMIフィルタ30は、第1の実施形態に係るEMIフィルタ10と比較して、大型化する。しかし、第2の実施形態に係るEMIフィルタ30におけるEMIフィルタ回路12間の距離は長くなるため、素子分離層31は、第1の実施形態に係るEMIフィルタ10の素子分離層31と比較して浅く形成することができる。従って、第2の実施形態に係るEMIフィルタ30は、素子分離層31を深く形成することが不能な場合(例えば、半導体基板11自体が薄型化されている場合等)には有効である。
【0028】
なお、以上に説明した第2の実施形態に係るEMIフィルタ30も、第1の実施形態に係るEMIフィルタ10の変形例と同様に変形可能である。
【0029】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0030】
例えば、上述の各実施形態において、複数のEMIフィルタ回路12は、半導体基板11に、格子状に配列形成されていたが、複数のEMIフィルタ回路12の配列は、限定されない。従って、例えば、複数のEMIフィルタ回路12は、半導体基板11に、列状に配列されてもよい。この場合であっても、複数のEMIフィルタ回路12の間に素子分離層13、31を形成することにより、EMIフィルタを小型化することができる。
【0031】
また、EMIフィルタ回路12の構成は、上述の各実施形態に限定されない。従って、EMIフィルタ回路は、キャパシタCとインダクタLと、によって構成されてもよい。なお、インダクタLは、例えば所望の配線幅、および所望の長さの導体線からなる。
【0032】
また、上述のEMIフィルタ回路はローパスフィルタであったが、EMIフィルタは、ハイパスフィルタ、またはバンドパスフィルタであってもよい。
【0033】
また、図7に示すように、EMIフィルタ回路41は、キャパシタCとしてMOSコンデンサを適用した回路であってもよい。MOSコンデンサは、P型の半導体基板11の表面に形成されたP+型の不純物層42と、P+型の不純物層42上を含む半導体基板11の表面に一様に形成された酸化膜43と、を有する。EMIフィルタ回路41は、P+型の不純物層42上の酸化膜43と抵抗体15とが、図1等と同様に配線パターン16a、16bで接続されることにより構成される。なお、MOSコンデンサにおいて、P+型の不純物層42は、必ずしも形成する必要はない。また、配線パターン16a、16bとP+型の不純物層42上の酸化膜43とは、ポリシリコンを介して接していてもよい。
【0034】
さらに、EMIフィルタを構成するキャパシタは、図2等に示されるダイオードと、図7に示されるMOSキャパシタと、を、抵抗体15またはインダクタLの両端に、それぞれ並列に接続されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0035】
10、20、30・・・電磁波干渉(EMI)フィルタ
11・・・半導体基板
12、41・・・EMIフィルタ回路
13、21、31・・・素子分離層
14a、14b・・・N+型の不純物層
15・・・抵抗体
16a、16b・・・配線パターン
17、43・・・酸化膜
18・・・層間膜
19・・・ポリイミド層
41・・・P+型の不純物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面上に形成された、抵抗またはインダクタを構成する導体、およびこの導体の両端にそれぞれ電気的に接続された一対のキャパシタ、をそれぞれ具備する複数の電磁波干渉フィルタ回路と、
これらの電磁波干渉フィルタ回路間の前記半導体基板に埋め込み形成された素子分離層と、
を具備することを特徴とする電磁化干渉フィルタ。
【請求項2】
前記素子分離層は、それぞれの前記電磁波干渉フィルタ回路を囲うように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の電磁化干渉フィルタ。
【請求項3】
前記素子分離層は、前記電磁波干渉フィルタ回路間の前記半導体基板に複数形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波干渉フィルタ。
【請求項4】
前記素子分離層は、前記半導体基板に形成されたトレンチと、このトレンチ内に形成された絶縁体と、からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電磁波干渉フィルタ。
【請求項5】
前記半導体基板は、第1導電型の半導体基板であり、
前記キャパシタは、前記第1導電型の半導体基板と、
この半導体基板の表面に形成された第2導電型の不純物層と、
によって構成されたダイオードからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電磁波干渉フィルタ。
【請求項6】
前記半導体基板は、第1導電型の半導体基板であり、
前記キャパシタは、前記第1導電型の半導体基板と、
この半導体基板の表面に形成された酸化膜と、
によって構成されたMOSコンデンサからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電磁波干渉フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−38328(P2013−38328A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175073(P2011−175073)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】