説明

露光装置およびデバイス製造方法

【課題】実デバイスパターンの像位置を高速かつ高精度に推定あるいは決定するために有利な技術を提供する。
【解決手段】原版Rまたは原版ステージ21には、互いに異なる複数のパターンが互いに異なる領域に配置されてなる第1計測パターン23が設けられ、計測器は、前記第1計測パターン23を投影光学系30の投影倍率に応じて縮小した第2計測パターン51と、前記第1計測パターン23および前記投影光学系30を透過し更に前記第2計測パターン51を透過した光を検出するセンサ52とを含み、制御部70は、前記第1計測パターン23の照明領域を前記原版に応じて決定し、決定された前記照明領域における前記第1計測パターン23を照明して基板ステージ41を移動させながら得られた前記センサ52の出力に基づいて、前記投影光学系30によって形成される前記照明領域における前記第1計測パターン23の像の位置を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置およびそれを用いてデバイスを製造するデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
露光装置の原版と基板との位置決めに関して、露光装置の投影光学系の物体面に計測パターンを配置し、投影光学系によって形成される該計測パターンの像の位置を計測する手法が提案されている。特許文献1に開示された方法では、原版の配置位置に透光パターンの形成された試料マスクを配置するとともに露光対象物の配置位置に縮小透光パターンの形成された露光試料板を配置する。そして、試料マスクおよび露光試料板を通過した露光光の光量を測定することによって露光対象物の最適位置を検出する。特許文献2に開示された方法では、2種類以上のマークを含む収差計測用パターンを照明し、それぞれの計測用パターンの投影光学系による像を計測し、投影光学系の波面収差量をツェルニケ多項式を用いて算出し、投影光学系の光学特性を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−228130号公報
【特許文献2】特開2006−332168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された方法では、計測用パターン(透光パターン)と実デバイスパターンとでライン幅、ラインの配列ピッチなどが異なっている場合に、両者の像位置は一般的に一致しない。そのため計測パターンで計測された像の位置に基づいて基板を位置決めしても、その位置は実デバイスパターンに対する最適位置とは異なるため、誤差が生じうる。この原因は、投影光学系の波面収差に対する像位置の敏感度がパターンごとに異なるからである。
【0005】
特許文献2に開示された方法では、投影光学系の波面収差を求めることができるため、実デバイスパターンの敏感度を用いて、実デバイスパターンに対する像位置を精度良く補正することができる。しかしながら、特許文献2に開示された方法には、次のような2つの問題がある。一つは、投影光学系の波面収差をツェルニケ多項式の例えば第36項まで求めようとするため、計測用パターンの種類が多くなり、それらの計測用パターンの像を計測する時間が膨大となってしまうことである。もう一つは、使用する計測用パターンの数が多いので、ある計測用パターンの像を計測してから別の計測用パターンの像を計測するまでの間に投影光学系の波面収差が変化し、波面収差の計測誤差になってしまうことである。
【0006】
本発明は、上記の課題認識を契機としてなされたものであり、実デバイスパターンの像位置を高速かつ高精度に推定あるいは決定するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの側面は、原版のパターンを投影光学系によって基板に投影し該基板を露光する露光装置に係り、前記露光装置は、前記原版を保持する原版ステージを位置決めする原版位置決め機構と、前記基板を保持する基板ステージを位置決めする基板位置決め機構と、前記基板ステージに搭載された計測器と、制御部と、を備え、前記原版または前記原版ステージには、互いに異なる複数のパターンが互いに異なる領域に配置されてなる第1計測パターンが設けられ、前記計測器は、前記第1計測パターンを前記投影光学系の投影倍率に応じて縮小した第2計測パターンと、前記第1計測パターンおよび前記投影光学系を透過し更に前記第2計測パターンを透過した光を検出するセンサとを含み、前記制御部は、前記第1計測パターンの照明領域を前記原版に応じて決定し、決定された前記照明領域における前記第1計測パターンを照明して前記基板ステージを移動させながら得られた前記センサの出力に基づいて、前記投影光学系によって形成される前記照明領域における前記第1計測パターンの像の位置を計測する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実デバイスパターンの像位置を高速かつ高精度に推定あるいは決定するために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態の露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】第1計測パターンの構成例を示す図。
【図3】像位置を計測する処理を説明する図。
【図4】ツェルニケ多項式の各項の係数(ツェルニケ係数)に対する焦点位置敏感度を例示する図。
【図5】計測領域の設定例を示す図である。
【図6】基板を露光する方法を例示するフローチャート。
【図7】第1計測パターンの構成例を示す図。
【図8】ツェルニケ多項式の第9項および第16項の係数に対する焦点位置敏感度を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の1つの実施形態の露光装置EXの概略構成を示す図である。露光装置は、照明光学系10によって照明された原版Rのパターン(実デバイスパターン)を投影光学系30によって基板Sに投影することによって基板Sを露光するように構成されている。原版Rは、投影光学系30の物体面に配置され、基板Sは、投影光学系30の像面に配置される。露光装置は、原版Rおよび基板Sを相対的に静止させた状態で基板Sを露光する装置(ステッパ)として構成されてもよいし、原版Rおよび基板Sを走査しながら基板Sを露光する装置(スキャナ)として構成されてもよい。照明光学系10は、原版Rを照明する領域を規定するマスキングブレード12を有しうる。
【0011】
原版Rは、原版位置決め機構20によって位置決めされる。原版位置決め機構20は、原版Rを保持する原版ステージ21を位置決めすることによって原版Rを位置決めする。原版位置決め機構20は、例えば、原版Rを保持する原版チャックを有する原版ステージ21と、原版ステージ21を駆動する原版ステージ駆動機構22とを含む。原版ステージ21または原版Rには、第1計測パターン23が設けられていて、第1計測パターン23は、原版位置決め機構20によって位置決めされる。基板Sは、基板位置決め機構40によって位置決めされる。基板位置決め機構40は、基板Sを保持する基板ステージ41を位置決めすることによって基板Sを位置決めする。基板位置決め機構40は、例えば、基板Sを保持する基板チャックを有する基板ステージ41と、基板ステージ41を駆動する基板ステージ駆動機構42とを含む。
【0012】
原版ステージ駆動機構22による原版ステージ21の駆動は、原版ステージ21の位置を計測する不図示の計測装置(例えば、レーザ干渉計)による計測結果に基づいて原版ステージ制御部60によって制御される。原版ステージ制御部60は、制御部70からの指令に従って原版ステージ駆動機構22を制御する。基板ステージ駆動機構42による基板ステージ41の駆動は、基板ステージ41の位置を計測する不図示の他の計測装置(例えば、レーザ干渉計)による計測結果に基づいて基板ステージ制御部80によって制御される。基板ステージ制御部80は、制御部70からの指令に従って基板ステージ駆動機構42を制御する。
【0013】
投影光学系30の像面には、照明光学系10によって照明された第1計測パターン23の像が投影光学系30によって形成される。基板ステージ41には、投影光学系30によって形成される第1計測パターン23の像の位置を検出するための計測器50が搭載されている。計測器50は、第1計測パターン23の像の位置として、X、YおよびZ方向の位置を検出することができるように構成されうる。ここで、投影光学系30の光軸AXに平行な軸がZ軸として定義され、光軸AXに直交する面がXY平面として定義されている。計測器50は、第1計測パターン23を投影光学系30の投影倍率に応じて縮小した第2計測パターン51と、第1計測パターン23および投影光学系30を透過し更に第2計測パターン51を透過した光を検出するセンサ52とを含みうる。
【0014】
センサ52によって検出される光は、投影光学系30によって形成される第1計測パターン23の像の位置と第2計測パターン51の位置とが一致する時、即ち第1計測パターン23と第2計測パターン51とが互いに共役な位置に配置された時に最大強度となる。よって、基板ステージ41を移動させ、そのときのセンサ52の出力に基づいて、投影光学系30によって形成される第1計測パターン23の像の位置を計測することができる。第1計測パターン23の像の位置を計測する処理は、制御部70によって制御される。第1計測パターン23と原版Rのパターン(実デバイスパターン)との位置関係は、不図示の計測システムによって計測されうる。また、第1計測パターン23の像の位置を計測する後述の像位置計測処理および原版Rのパターンを基板Sに転写する露光処理において、第1計測パターン23および原版Rは、それぞれ投影光学系30の物体面に位置決めされる。よって、制御部70は、第1計測パターン23の像の位置に基づいて露光時における原版Rのパターン(実デバイスパターン)の像の位置を推定あるいは決定することができる。なお、像位置計測処理および露光処理において、第1計測パターン23および原版Rが投影光学系30の物体面に位置決めされる場合、像位置計測処理における焦点位置と露光処理における焦点位置とは一致する。
【0015】
第1計測パターン23は、図2に例示されるように、互いに異なる複数のパターンA、Bが互いに異なる領域に配置されてなる。図2において白色部分が光透過部、斜線部分が遮光部である。複数のパターンA、Bは、例えば、ライン・アンド・スペース・パターンでありうる。互いに異なる複数のパターンとは、例えば、互いにライン幅および/またはラインの配列ピッチが異なるパターンでありうる。
【0016】
以下、投影光学系30によって形成される第1計測パターン23の像の位置を計測器50を使って計測する処理(以下、像位置計測処理)を説明する。まず、原版ステージ21の側の第1計測パターン23を計測位置(例えば、投影光学系30の光軸AX)に配置するとともに、基板ステージ41の側の計測パターンである第2計測パターン51を計測位置に配置する。次に、制御部70は、基板ステージ駆動機構42に基板ステージ41(第1計測パターン51)をX、Y、Z方向について微小駆動させる。そして、制御部70は、この際に第2計測パターン51(光透過部)を透過してセンサ52によって検出される光の強度が最大となるX、Y、Z方向の座標(X、Y、Z)を決定する。座標(X、Y、Z)は、第1計測パターン23と第2計測パターン51とが互いに共役な位置に配置されたときの基板ステージ41の位置である。図3は、センサ52によって検出される光の強度と基板ステージ41のX方向における位置との関係を例示する図である。基板ステージ41をY方向に駆動したとき、および、Z方向に駆動したときにも同様の結果が得られる。
【0017】
この実施形態では、制御部70は、第1計測パターン23の全体領域のうち像位置計測処理において照明するべき計測領域(照明領域)MAを、露光のために使用する原版Rに応じて決定する。そして、制御部70は、その計測領域MAを使用してなされる像位置計測処理におけるセンサ52の出力に基づいて、投影光学系30によって形成される第1計測パターン23の像の位置を計測する。ここで、制御部70は、例えば、露光を制御するための情報(例えば、原版RのID、照明条件、ショットレイアウトなどの情報を含む)を含むレシピファイルによる指示に従って計測領域MAを決定しうる。あるいは、制御部70は、原版Rの実デバイスパターンの特徴、例えば、ライン幅および/またはラインの配列ピッチに応じて計測領域Rを決定しうる。実デバイスパターンの特徴に応じた計測領域Rの決定は、例えば、原版Rの実デバイスパターンの特徴とそれに適合した計測領域MAとの組を含むテーブルを参照することによって行うことができる。ここで、実デバイスパターンとは、デバイスの形成のために基板Sに転写すべきパターンである。実デバイスパターンの特徴に応じた計測領域Rの決定は、制御部70が実デバイスパターンの特徴に応じて演算によって求めることもできる。あるいは、より単純な方法をあげれば、実デバイスパターンの特徴に応じた計測領域Rの決定は、原版Rとそれに適合した計測領域との組を含むテーブルを参照することによって行うことができる。
【0018】
以下、原版Rの実デバイスパターン(の特徴)に適合した計測領域MAの決定方法を例示的に説明する。図4は、第1計測パターン23のパターンA、Bおよび原版Rの実デバイスパターンの波面収差の各ツェルニケ多項式の各項(Z4〜Z36)に対する焦点位置の敏感度、及びその照明条件(露光波長、NA、σ)、パターン条件(ライン幅、ピッチ)を例示している。ここで、実デバイスパターンは、図4では「実パターン」と標記されている。
【0019】
図4から明らかなように、パターンA、パターンB、実デバイスパターンでは、波面収差に対する敏感度が互いに異なる。例えば、投影光学系30の波面収差のツェルニケ多項式の第9項の係数が10mλである場合は、以下のような焦点位置となる。
【0020】
パターンAの焦点位置(FA)=−0.584um
パターンBの焦点位置(FB)=−1.391um
実デバイスパターンの焦点位置(FP)=−1.134um
したがって、パターンAのみ又はパターンBのみを使って像位置計測処理を実行すると、計測結果に相応の誤差が生じる。パターンAとパターンBの像を1つの計測器50を使って同時に計測した場合、パターンAが計測領域MAの中で占めるべき面積の比率(以下、単に面積比率ともいう。)をα(≦1)、計測器50を使って計測された焦点位置(=Z)をF’とすると、以下のように表現できる。なお、この例では、第1計測パターン23が2つのパターンA、Bで構成されているので、パターンAが計測領域MAの中で占めるべき面積の比率は、(1−α)である。
【0021】
F’= FA×α + FB×(1−α) ・・・(1)
F’とFPが一致するようなαを求め、αの値にしたがって図5に例示されるように計測領域MAを決定することができる。上記の例では、パターンAの面積比率は31.9%、パターンBの面積比率は68.1%である。計測領域MAは、パターンA、Bのそれぞれの面積比率を満たすように決定される。これにより、実デバイスパターンの特徴と第1計測パターン23のパターンA、Bの特徴との相違による計測誤差を低減することができる。
【0022】
計測領域MAは、第1計測パターン23の全体領域のうち像位置計測処理の際に照明光学系10によって照明される領域でありうる。この場合、計測領域MAの規定は、例えば、照明領域を規定するためのマスキングブレード12によって行われうる。あるいは、計測領域MAは、第2計測パターン51の全体領域のうち像位置計測処理の際に第1計測パターン23からの光が入射する領域でありうる。この場合、計測領域MAの規定は、例えば、第2計測パターン51の上に設けられた不図示の遮光部材によってなされうる。
【0023】
投影光学系30の波面収差がツェルニケ多項式の複数の項で与えられている場合は、ツェルニケの直交性から以下のように表現できる。
【0024】
【数2】

・・・(2)
【0025】
そこで、ツェルニケ多項式の各項(以下、ツェルニケ項)による焦点位置F’とFPとができるだけ一致するように、つまり各ツェルニケ項に対する焦点位置の敏感度ができるだけ一致するように計測時のパターンの面積比率を決定することが望ましい。ここで、Cは波面収差のツェルニケ係数、Sは図4に例示された敏感度、iはツェルニケ項、Nは考慮する最大ツェルニケ項である。
【0026】
以下、図6〜図8を参照しながら本発明のより具体的な実施形態を説明する。図6は、露光装置EXにより基板を露光する方法を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、制御部70によって制御される。以下では、ツェルニケ多項式の第9項および第16項に着目し、第9項、第16項の係数のそれぞれに対する第1計測パターン23の焦点位置の敏感度を原版Rの実デバイスパターンの敏感度に合わせることで焦点位置のずれを補正する方法について説明する。
【0027】
まず、ステップS101では、制御部70は、第1計測パターン23の複数のパターンA、B、Cのそれぞれの面積比率と計測時の照明条件を決定する。ここで、照明条件とは、例えば有効光源分布を決定する条件(例えば、NAおよびσなど)として決定される。以下では、演算によって面積比率を決定する処理を例示的に説明するが、面積比率は、前述のように、レシピファイルによる指示に応じて決定されてもよいし、テーブルを参照して決定されてもよいし、他の方法によってなされてもよい。ここでは、第1計測パターン23は、図7に例示されるように、パターンA、B、Cの3種類のパターンで構成されているものとする。ツェルニケ多項式の第9項、第16項に対する実デバイスパターンの焦点位置の敏感度をS、S16は以下のように表現できる。
【0028】
= S9A×α + S9B×β + S9C × (1 − α− β) ・・・(3)
16= S16A×α + S16B×β + S16C × (1 − α− β) ・・・(4)
ここで、S9A、S9B、S9Cは、ツェルニケ多項式の第9項の係数に対するパターンA、B、Cの焦点位置の敏感度である。S16A、S16B、S16Cは、ツェルニケ多項式の第16項の係数に対するパターンA、B、Cの焦点位置の敏感度である。αは、パターンAの面積比率、βは、パターンBの面積比率である。パターンCの面積比率は、(1−α−β)である。S9A、S9B、S9C、S、S16A、S16B、S16C、S16は、シミュレーションまたは実測によって求めることができる。(3)、(4)の連立方程式を解くことによりパターンA、B、Cの面積比率α、β、(1−α−β)を算出することができる。ただし、α、βは、面積比率なので、以下の制約条件がある。
【0029】
0 ≦ α ≦ 1 ・・・(5)
0 ≦ β ≦ 1 ・・・(6)
α + β ≦ 1 ・・・(7)
(5)、(6)、(7)の制約条件を満足できない場合は、計測する際の照明条件を変更し、各計測用パターンA、B、Cの敏感度S9A、S9B、S9C、S16A、S16B、S16Cを変化させることで制約条件を満足する照明条件を探索する必要がある。計測する際の照明条件はスループットの観点から基板Sを露光する際の照明条件と一致していることが望ましい。計測用パターンA、B、C及び実デバイスパターンの焦点位置の敏感度を図8のとおりとすると、α=0.6、β=0.2となる。なお、実デバイスパターンは、図4では「実パターン」と標記されている。
【0030】
ステップS102では、制御部70による制御の下で、原版Rが原版ステージ21にロードされる。ステップS103では、制御部70は、ステップS101で決定された照明条件を照明光学系10に設定する。ステップS104では、制御部70は、基板ステージ41に基板Sをロードする。ステップS105では、制御部70は、焦点調整を実行するか否かを判断する。ここで、焦点調整を実行しない場合には、処理をステップS110に進め、実行する場合には処理をステップS106に進める。
【0031】
ステップS106では、制御部70は、ステップS101で決定した計測用の照明条件が設定されているか否かを判断する。ここで、計測用の照明条件が設定されている場合には処理をステップS108に進め、計測用の照明条件が設定されていない場合には処理をステップS107に進める。ステップS107では、制御部70は、照明光学系10の照明条件をステップS101で決定した照明条件に設定する。
【0032】
ステップS108では、制御部70は、第1計測パターン23を構成する複数のパターンの面積比率がステップS101で決定した面積比率となるように、マスキングブレード12を用いて第1計測パターン23の照明領域(計測領域MA)を規定する。そして、規定された照明領域で第1計測パターン23を照明したときのセンサ52の出力に基づいて第1計測パターン23の像の位置を計測する。ここで計測する像の位置は、焦点位置(光軸方向(Z方向)における像の位置)であるが、X方向およびY方向の像の位置も計測してもよい。
【0033】
ステップS109では、制御部70は、ステップS108で計測された焦点位置に基づいて、原版Rのパターンがベストフォーカス状態で基板Sに投影されるように、基板ステージ41の光軸方向(Z方向)における位置を調整する。ステップS110では、現在の照明条件が基板Sを露光するための照明条件が設定されているか否かを判断し、基板Sを露光するための照明条件に設定されていなければ処理をステップS110に進める。一方、基板Sを露光するための照明条件に設定されていれば処理をステップS112に進める。
【0034】
ステップS111では、制御部70は、基板Sを露光するための照明条件を照明光学系10に設定する。ステップS112では、制御部70は、基板Sの露光処理を実行する。この露光処理において、原版Rは、設定された照明条件で照明光学系10によって照明され、原版Rのパターンは、投影光学系30によって基板Sに投影される。ステップS113では、制御部70による制御の下で、露光が完了した基板Sが基板ステージ41からアンロードされる。ステップS114では、制御部70は、ロットを構成するすべての基板Sの露光が終了したか否かを判断し、露光すべき基板Sが残っている場合には処理をステップS104に戻す。
【0035】
以上のように、本発明の実施形態によれば、互いに異なる複数のパターンが互いに異なる領域に配置されてなる計測パターンを使用し、その全体領域のうち像位置計測処理に使用する計測領域を原版に応じて決定する。これにより、原版の実デバイスパターンの像位置を高速かつ高精度に推定あるいは決定することができる。ここで、計測領域の決定方法としては、種々の方法を採ることができる。例えば、原版とそれに適合した計測領域との組を含むテーブルを参照することによって原版に応じた計測領域を決定する場合には、制御部は、シミュレーションや演算を行うことなく、また、原版の特性を考慮することなく、計測領域を決定することができる。
【0036】
次に、本発明の一実施形態のデバイス(半導体デバイス、液晶表示デバイス等)の製造方法について説明する。半導体デバイスは、ウエハに集積回路を作る前工程と、前工程で作られたウエハ上の集積回路チップを製品として完成させる後工程を経ることにより製造される。前工程は、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたウエハを露光する工程と、ウエハを現像する工程を含む。後工程は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)と、パッケージング工程(封入)を含む。液晶表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラス基板に感光剤を塗布する工程と、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたガラス基板を露光する工程と、ガラス基板を現像する工程を含む。本実施形態のデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原版のパターンを投影光学系によって基板に投影し該基板を露光する露光装置であって、
前記原版を保持する原版ステージを位置決めする原版位置決め機構と、前記基板を保持する基板ステージを位置決めする基板位置決め機構と、前記基板ステージに搭載された計測器と、制御部と、を備え、
前記原版または前記原版ステージには、互いに異なる複数のパターンが互いに異なる領域に配置されてなる第1計測パターンが設けられ、前記計測器は、前記第1計測パターンを前記投影光学系の投影倍率に応じて縮小した第2計測パターンと、前記第1計測パターンおよび前記投影光学系を透過し更に前記第2計測パターンを透過した光を検出するセンサとを含み、
前記制御部は、前記第1計測パターンの照明領域を前記原版に応じて決定し、決定された前記照明領域における前記第1計測パターンを照明して前記基板ステージを移動させながら得られた前記センサの出力に基づいて、前記投影光学系によって形成される前記照明領域における前記第1計測パターンの像の位置を計測する
ことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数のパターンのそれぞれが前記照明領域の中で占めるべき面積の比率を前記原版に応じて決定し、前記比率に基づいて前記照明領域を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記第1計測パターンは、前記原版ステージに設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記計測パターンは、前記原版に設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の露光装置。
【請求項5】
デバイスを製造するデバイス製造方法であって、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
露光された該基板を現像する工程と、
を含むことを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−186228(P2012−186228A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46971(P2011−46971)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】