説明

露光装置及び露光方法

【課題】投影領域の形状に応じて容易に露光を行うこと。
【解決手段】露光光のパターンを対象面に転写する露光装置であって、パターンを形成するパターン形成部と、パターンを対象面に投影する投影光学系と、対象面のうちパターンが投影される投影領域の露光光の光軸方向の形状に応じて投影光学系の開口数を調整する開口数調整部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及び露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばDMD(Digital Micromirror Device)などの画像形成素子(光変調素子)を用いてパターンを生成し、このパターンを縮小投影して基板を露光する露光装置が開発されている。このような露光装置は、マスクを制作する必要がないため、多種少量生産に適しており、例えば研究開発機関での使用などに適している。
【0003】
このような露光装置は、研究や試作などに利用されるのみならず、近年では例えばMEMS等のような多品種少量で製作する必要のあるデバイスを製造する際にも用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−317862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えばMEMSなどのデバイスは立体構造となる場合が多く、露光光の投影領域となる部分に段差や傾斜面などを含むことがあるため、従来の露光装置では対応が困難である場合があった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、投影領域の形状に応じて容易に露光を行うことが可能な露光装置及び露光方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様に従えば、露光光のパターンを対象面に転写する露光装置であって、パターンを形成するパターン形成部と、パターンを対象面に投影する投影光学系と、対象面のうちパターンが投影される投影領域の露光光の光軸方向の形状に応じて投影光学系の開口数を調整する開口数調整部とを備える露光装置が提供される。
【0008】
本発明の第二の態様に従えば、露光光のパターンを対象面に転写する露光方法であって、パターンを形成し、形成したパターンを対象面に投影し、対象面のうちパターンが投影される投影領域の形状に応じて投影光学系の開口数を調整する露光方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、投影領域の形状に応じて容易に露光を行うことが可能な露光装置及び露光方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一実施形態に係る露光装置の一構成例を示す概略構成図。
【図2】本実施形態に係る基板の一部分の構成を示す斜視図。
【図3】本実施形態に係る基板の一部分の構成を示す平面図。
【図4】図3におけるT−T断面に沿った構成を示す図。
【図5】本実施形態に係る光変調装置の動作を示す図。
【図6】本実施形態に係る光変調装置の動作を示す図。
【図7】本発明の第二実施形態に係る基板の一部分の構成を示す斜視図。
【図8】本実施形態に係る光変調装置の動作を示す図。
【図9】本実施形態に係る光変調装置の動作を示す図。
【図10】本発明のマイクロデバイスの製造工程の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る露光装置の一構成例を示す概略構成図である。
露光装置EXは、パターン生成装置PG、投影光学系PL、ステージ装置ST、フォーカス装置FC、画像取得装置CA、画像取得用照明装置EPI、表示装置DP、入力装置IP及び制御装置CONTを備えている。露光装置EXは、例えばMEMS等のデバイスを製造する際の露光工程で用いられる。露光装置EXは、例えば配線や絶縁膜など、デバイスの構成要素のパターン(以下、「デバイスパターン」と表記する)の像を投影し、当該デバイスパターンの露光パターンを基板Sに形成する。
【0012】
以下の説明では、XYZ直交座標系に基づいて、各種構成要素の位置関係等を説明する。このXYZ直交座標系において、Z軸方向は投影光学系PLの光射出側の光軸に平行な方向であり、X軸方向及びY軸方向は投影光学系PLの光射出側の光軸に直交する面内で互いに直交する方向である。例えば、X軸方向及びY軸方向が水平方向に設定され、Z軸方向が鉛直方向に設定される。
【0013】
パターン生成装置PGは、基板S上に転写するパターンを生成する。パターン生成装置PGは、露光光ELを射出する露光用光源4と、露光光ELを平行化するコレクタレンズ5と、平行化された露光光ELの開口数を調整する開口絞り6と、開口数が調整された露光光ELを導くリレーレンズ7と、露光光ELを空間変調することで露光光ELに光強度の分布を形成する光変調素子8と、空間変調された露光光ELを導光する対物レンズ9と、を有している。
【0014】
露光用光源4から射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)等が用いられる。露光用光源4の構成は、露光光ELの波長等に応じて、適宜選択される。制御装置CONTは、露光用光源4の点灯消灯等の動作を制御する。
【0015】
開口絞り6は、開口部6aを形成する複数の羽根部材を有している。開口絞り6は、開口数調整部3に接続されている。開口絞り6は、開口数調整部3により、開口部6aの面積を調整可能に設けられている。開口部6aの面積を大きくすることで開口数を大きくすることができ、解像度を向上させることができるようになっている。一方、開口部6aの面積を小さくすることで焦点深度を深くすることができるようになっている。
【0016】
光変調素子8としては、例えばデジタルミラーデバイス(DMD)が用いられている。DMDは、二次元的に配列された複数の画素を有している。DMDの各画素は、それぞれマイクロミラー8aを含んでいる。各マイクロミラー8aは、各画素に入射した露光光ELの分割光束を反射させる反射面を有している。
【0017】
各マイクロミラーは、反射面の姿勢を個別に調整できるようになっている。したがって、各分割光束の進行方向が当該分割光束毎に調整可能である。本実施形態では、光変調素子8から対物レンズ9へと向かう方向を露光光ELの進行方向としている。光変調素子8では、当該光変調素子8に入射する露光光ELを、例えば対物レンズ9へと向かう方向に沿って進行する分割光束と、当該対物レンズ9へと向かう方向とは異なる方向に進行する分割光束と、に分けて反射することができるようになっている。このため、対物レンズ9へと向かう方向に進行する露光光EL(分割光束の集合)は、進行方向に直交する方向において光強度の分布が形成されることになる。
【0018】
このように、光変調素子8は、各画素で反射した分割光束の進行方向を画素ごとに制御することにより、基板S上に転写するデバイスパターンを生成することができる構成となっている。制御装置CONTは、光変調素子8の動作、例えば個々のマイクロミラーの反射面の姿勢などを制御する。
【0019】
なお、露光用光源4及び光変調素子8に代えて、例えば自発光型のパネルを用いても構わない。この自発光型のパネルは、二次元的に配列された複数の発光素子を含んでいる。各発光素子は、露光光ELを射出する光源であり、例えばレーザーダイオードイや発光ダイオード等によって構成される。この場合、各発光素子は、発光素子ごとに点灯消灯が制御可能な構成である。自発光型のパネルは、各発光素子から各画素を示す露光光ELを射出するため、露光用光源4及び光変調素子8を用いた場合と同様のデバイスパターンを形成可能である。
【0020】
対物レンズ9から射出された露光光ELが入射する位置には、波長選択ミラー10が配置されている。波長選択ミラー10は、例えばダイクロイックミラー等によって構成されている。波長選択ミラー10は、露光光ELが反射し、後述する検出光SLが通過する特性を有している。
【0021】
対物レンズ9から射出されて波長選択ミラー10で反射した露光光ELは、波長選択ミラー10で反射した後に、投影光学系PLに入射する。投影光学系PLは、レンズ等の光学部品(第一対物レンズ)を1以上含んでいる。露光光ELが示すパターンの像を基板S上の投影領域に投影する。この投影領域は、投影光学系PLによってパターンの像を投影可能な領域を含む。
【0022】
投影光学系PLは、所定の投影領域PRに露光光ELを照射する。投影光学系PLは、投影領域PRに配置された基板Sの少なくとも一部に、デバイスパターンの像を所定の投影倍率で投影する。投影光学系PLにはレンズなどの光学素子が複数設けられている。当該複数の光学素子は、例えば鏡筒2に保持されている。本実施形態では、縮小系の投影光学系PLが用いられている。本実施形態においては、投影光学系PLの光軸は、例えばZ軸と平行である。また、投影光学系PLは、反射光学素子を含まない屈折系、屈折光学素子を含まない反射系、反射光学素子と屈折光学素子とを含む反射屈折系のいずれであってもよい。また、投影光学系PLは、倒立像と正立像とのいずれを形成してもよい。
【0023】
ステージ装置STは、ステージ本体1及びステージ駆動装置ACTを有している。ステージ本体1は、基板Sを保持して移動可能に設けられている。ステージ本体1には、例えば減圧吸着や静電吸着等によって基板Sを着脱可能に保持する保持面1aが形成されている。基板Sは、表面Sa及び裏面Sbの法線方向がZ軸方向と平行になるように、ステージ本体1の当該保持面1aに保持される。
【0024】
ステージ駆動装置ACTは、例えば不図示のリニアモータ機構などのアクチュエータを有している。ステージ駆動装置ACTは、ステージ装置STをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、X軸周りの回転方向、Y軸周りの回転方向、及びZ軸周りの回転方向の6方向に移動可能である。ステージ装置STには、ステージ本体1の位置や姿勢などの情報を検出する不図示の検出機構が設けられている。制御装置CONTは、当該検出機構の検出結果に基づいて、ステージ駆動装置ACTの駆動量を調整可能である。
【0025】
フォーカス装置FCは、例えばTTL型位相差方式のオートフォーカス(以下、AFと略記する)によって、投影光学系PLの焦点位置を露光面に合わせることが可能である。フォーカス装置FCは、AF用光源11、コレクタレンズ12、スリット13、対物レンズ(第二対物レンズ)14、絞り15、分光部品16、対物レンズ(第二対物レンズ)17、反射ミラー18、シリンドリカルレンズ19、検出部20、及び制御部を含んでいる。上述のように、フォーカス装置FCの制御部は、露光装置EXの制御装置CONTに含まれている。AF用光源11は、例えば露光光ELと異なる波長の光を検出光SLとして射出する。AF用光源11は、検出光SLとして赤外光を射出する発光素子を含んでいる。
【0026】
AF用光源11から射出された検出光SLは、コレクタレンズ12を通ってスリット13に入射する。スリット13は、視野絞りとして機能し、スリット13を通過した検出光SLのスポット形状を調整する。スリット13を通過した検出光SLは、対物レンズ14を通った後に、絞り15に入射する。
【0027】
絞り15は、絞り15よりもAF用光源11側の光学系についての瞳面に配置されている。絞り15は、開口絞りとして機能し、対物レンズ14から射出された検出光SLによって上記の瞳面に形成されるスポットのほぼ半分に相当する検出光SLを遮光する。絞り15は、上記のスポットのうちで遮光する範囲を切り替え可能であり、検出光SLのうちで絞り15を通過する角度成分を切り替え可能である。絞り15を通過した検出光SLは、分光部品16に入射する。
【0028】
分光部品16は、ハーフミラー等によって構成され、入射した検出光SLを分光する。分光部品16は、検出光SLに対する反射率が0より大きく1未満の範囲から選択される値に設定されている。分光部品16に入射した検出光SLの一部は、分光部品16で反射し、他の一部は分光部品16を通過する。分光部品16で反射した検出光SLは、波長選択ミラー10を通過した後に、投影光学系PLを経て基板Sに入射する。基板Sに入射した検出光SLの少なくとも一部は、基板Sで反射して折り返され、投影光学系PL及び波長選択ミラー10を通過して、分光部品16に再度入射する。
【0029】
基板Sを経由して分光部品16に入射した検出光SLの少なくとも一部は、分光部品16を通過した後に、対物レンズ17を通って反射ミラー18で反射する。反射ミラー18で反射した検出光SLは、シリンドリカルレンズ19を通って検出部20に入射する。シリンドリカルレンズ19を通る検出光SLは、XZ面に平行な面内で屈折し、XY面に平行な面内でほとんど屈折せずに、Y軸方向に略平行な線に向かって集光する。
【0030】
検出部20は、当該検出部20に入射した検出光SLの強度分布を検出可能である。検出部20は、例えばCCDラインセンサ等によって構成される。このCCDラインセンサは、YZ面にほぼ平行であってY軸方向に長手の領域に配列された複数の画素を含んでいる。CCDラインセンサの各画素は、例えばフォトダイオード等の受光素子と、薄膜トランジスター等のスイッチング素子とを含んでいる。検出光SLが受光素子に入射すると、受光素子に電荷が発生する。スイッチング素子は、受光素子に発生した電荷の読出しをスイッチングする。
【0031】
検出部20の検出結果に基づいて、基板Sで反射した検出光SLによるスリット13の像が検出される。絞り15を通過する検出光SLの角度成分を切替えると、検出部20に検出される像の位置が切替わる。切替前後の像の間隔(以下、像間隔という)は、投影光学系PLの焦点位置と基板Sの位置との関係によって変化する。例えば、基板Sの表面Saを合焦対象面とし、投影光学系PLの焦点が合焦対象面に合っている状態(合焦状態)での像間隔を基準値とする。投影光学系PLの焦点が合焦対象面よりも+Z側に位置する状態(以下、前ピンという)では、像間隔が基準値よりも狭くなる。投影光学系PLの焦点が合焦対象面よりも−Z側に位置する状態(以下、後ピンという)では、像間隔が基準値よりも広くなる。
【0032】
このように、検出部20の検出結果に基づいて、合焦状態であるか否かを判定することや、合焦状態から前ピン側又は後ピン側のいずれに焦点がずれているかを知ることが可能である。このように、上記の像間隔は、合焦の対象物である基板Sを経由した光(検出光)の強度に基づく値であり、合焦状態の判定に用いる判定パラメータ値として利用可能である。検出部20の検出結果は、フォーカス装置FCの制御部(ここでは制御装置CONT)に出力される。制御装置CONTは、検出部20の検出結果に基づいて、合焦状態になるようにステージ装置STの位置を制御する。
【0033】
画像取得装置CAは、例えばカメラなどの撮像装置を有している。画像取得装置CAは、例えば上記の投影光学系PL(縮小系)を対物レンズ系として用いることで、ステージ装置STに支持された基板Sの表面Saの拡大像を撮像することができる構成となっている。このように、露光装置EXは、ステージ装置STに支持された基板Sを観察する顕微鏡として用いることもできる構成となっている。
【0034】
画像取得用照明装置EPIは、画像取得装置CAを顕微鏡として用いる場合の光源である。画像取得用照明装置EPIから射出された照明光は、例えば投影光学系PLを介して基板Sの表面Saに照射されるようになっている。画像取得装置CAは、表示装置DPに接続されている。画像取得装置CAによって取得された画像は、表示装置DPに送信されるようになっている。表示装置DPは、送信された画像を表示するディスプレイを有している。画像取得装置CAa及び表示装置DPを用いることなく、例えば作業者が画像取得装置CAの位置において直接基板Sの拡大像を観察可能な構成としても構わない。
【0035】
制御装置CONTは、露光装置EXの動作を総括的に制御する。制御装置CONTは、例えばコンピューターシステムを含む。制御装置CONTには、入力装置IPが接続されている。例えば入力装置IPからの入力により、ステージ駆動装置ACTを介してステージ本体1を移動することができるようになっている。
【0036】
本実施形態で用いられる基板Sとしては、例えばMEMSなどのデバイスを製造する際に用いられるデバイス製造用の基板である。基板Sは、表面に形成された膜パターンや凹部、凸部等の段差や傾斜面を含むことがある。上記の段差や傾斜面は、例えばMEMSなどのデバイスの一部を構成する構成要素である。膜パターンの具体例として、電極や配線となる導電膜パターン、スイッチング素子の一部を構成する半導体膜パターン、パッシベーション膜等となる絶縁膜パターン等が挙げられる。
【0037】
また、基板Sは、表面に形成された感光膜(フォトレジスト膜)を含むことがある。基板Sは、デバイスの製造過程で又は製造後で機能する膜として、例えば露光光EL等の反射を防止する反射防止膜や、上記の感光膜を保護する保護膜(トップコート膜)等を含むことがある。
【0038】
次に、上記のように構成された露光装置EXの動作を説明する。
制御装置CONTは、露光動作に用いるデバイスパターンのデータを読み出すと共に、露光条件を読み込んで、露光装置EXの基本的動作を決定する。制御装置CONTは、例えば光源の出力、フォーカス値、露光量等の基本的な条件を決定する。
【0039】
各条件を決定した後、制御装置CONTは、フォーカス装置FCを用いてフォーカス処理を行わせる。フォーカス処理の後、制御装置CONTは、露光処理を行わせる。露光処理においては、まず、制御装置CONTは、ステージ本体1の保持面1a上に基板S(基板S)を保持させる。基板Sの表面Saには、予め感光剤などを塗布しておく。
【0040】
制御装置CONTは、パターン生成装置PGの露光用光源4から露光光ELを射出させ、光変調素子8によって露光光ELを変調させる。光変調素子8によって変調された露光光ELは、進行方向に直交する方向に光強度の分布が形成された状態で対物レンズ9に入射し、投影光学系PLによって投影領域PRに投影される。
【0041】
制御装置CONTは、基板Sの表面Saのうちデバイスパターンを形成する部分が投影領域PRに重なるようにステージ本体1を移動させる。上記のように、露光光ELには進行方向に直交する方向に光強度の分布が形成されているため、基板Sの表面Saにはパターンを含む像が投影されることになる。当該像により、表面Saに塗布された感光剤が露光され、1つの露光パターンが形成される。なお、基板Sの表面Saに投影される像に含まれるパターンは、光変調素子8において、対物レンズ9へと向かう方向に沿って進行するように反射したマイクロミラーの配置パターン(デバイスパターン)に一致する。
【0042】
制御装置CONTは、基板Sの表面Saに1つの露光パターンが形成された後、ステージ駆動装置ACTによってステージ本体1をX方向及びY方向に移動させ、基板Sの他の領域に露光パターンを形成する。このように、制御装置CONTは、ステージ本体1を移動させつつ基板Sの表面Saに複数の露光パターンを形成する。
【0043】
例えばMEMSなどのデバイスは上記のような立体構造となる場合が多く、露光光の投影領域となる部分(露光面)に段差部Sdや傾斜面Seなど露光光の光軸方向に形状変化を含むことがある。このような段差部Sdや傾斜面Seを含む領域に露光光を投影する場合、制御装置CONTは、基板Sの表面Saのうちパターンが投影される投影領域の形状に応じて投影光学系PLの開口数を調整する。
【0044】
図2〜図4は、基板Sの第一部分Scの構成を示す図である。図2は第一部分Scの構成を示す斜視図である。図3は、第一部分Scの構成を示す平面図である。図4は、図3におけるT−T断面に沿った構成を示す図である。図2〜図4に示すように、第一部分Scには、段差部Sd及び傾斜面Seが設けられている。
【0045】
本実施形態では、第一部分Scに対して露光パターンF1及び露光パターンF2を形成する場合を例に挙げて説明する。なお、露光パターンF1は線幅が細く、微細なパターンである。また、露光パターンF2は露光パターンF1に比べて線幅が太く、やや粗めのパターンである。
【0046】
制御装置CONTは、まず第一部分Scのうち段差部Sdの底面Bに焦点を合わせる。当該段差部Sdの底面Bには、メインとなるパターンが形成される場合があり、高い解像度で露光することが求められている。制御装置CONTは、当該底面Bに対して露光パターンF1を形成させる。
【0047】
この場合、制御装置CONTは、図5に示すように、光変調素子8の各マイクロミラー8aを制御し、露光パターンF1に対応する部分のマイクロミラー8aを作動させる。図5では、露光パターンF1に対応するマイクロミラー8aの反射パターンP1を黒色で塗りつぶして示している。
【0048】
また、高い解像度で露光することが求められた当該底面Bを露光する場合、制御装置CONTは、開口絞り6の開口部6aの面積を設定可能範囲の最大値となるようにしておく。これにより、解像度の高い露光を行うことが可能となる。なお、図4には、このときの焦点深度(α)が示されている。解像度が高い分、焦点深度は限られた範囲となっている。
【0049】
底面Bの露光を終えた後、制御装置CONTは、第一部分Scの上面A及び傾斜面Seに対して露光を行う。この場合、制御装置CONTは、底面Bに焦点を合わせたままの状態で、傾斜面Se及び上面Aが焦点深度の範囲内となるように開口絞り6の開口数を調整する。具体的には、制御装置CONTは、開口数調整部6cによって開口部6aの面積を小さくして焦点深度を調整させる。
【0050】
その後、制御装置CONTは、図6に示すように、光変調素子8のマイクロミラー8aを制御し、露光パターンF2に対応する部分のマイクロミラー8aを作動させる。図6では、露光パターンF2に対応するマイクロミラー8aの反射パターンP2を黒色で塗りつぶして示している。
【0051】
露光パターンF2の形成時においては、露光パターンF1の形成時に比べて開口絞り6の開口部6aの面積が小さくなるため、焦点深度は深くなっている(図4の矢印βで示される)が、その分解像度は小さくなっている。一方、露光パターンF2は露光パターンF1に比べて太く粗めのパターンであるため、露光精度上の問題は特に生じずに済むことになる。逆に、基板Sの平面度不良などの問題によりぼやけた状態で露光パターンF3が形成されるのを防ぐことができる。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、露光光のパターンを対象面(上面A、傾斜面Se、底面B)に転写する露光装置EXであって、パターンを形成するパターン生成装置PGと、パターンを対象面に投影する投影光学系PLと、対象面のうちパターンが投影される投影領域の形状に応じて投影光学系PLの開口数を調整する開口数調整部6cとを備えることとしたので、投影領域となる部分に段差部Sdや傾斜面Seなどを含む場合であっても少ない工数で容易に露光を行うことができる。
【0053】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を説明する。
本実施形態では、上記第一実施形態と同一構成の露光装置EXを用いて、基板Sのうち異なる部分を露光する場合を説明する。したがって、共通の構成については同一の符号を付し、その説明を省略あるいは簡略化させる。
【0054】
図7は、基板Sの第二部分Sfの構成を示す平面図である。
第二部分Sfは、例えば一の平面上に中央領域C及び周縁領域Dを有している。中央領域Cは、例えばMEMSなどのデバイスのメインとなるパターンが形成される領域である。したがって、微細な造型が求められる領域である。周縁領域Dは、上記のメインとなるパターンを支持する土台となる領域であり、微細な造型が求められない部分である。
【0055】
このような第二部分Sfのうち、本実施形態では、中央領域Cには露光パターンF3を形成し、周縁領域Dには露光パターンF4を形成する。なお、露光パターンF3は線幅が細く、微細なパターンである。また、露光パターンF4は露光パターンF3に比べて線幅が太く、やや粗めのパターンである。
【0056】
制御装置CONTは、まず中央領域Cを露光する。中央領域Cを露光する場合、制御装置CONTは、開口絞り6の開口部6aの面積を設定可能範囲の最大値とする。また、制御装置CONTは、図8に示すように、光変調素子8の各マイクロミラー8aを制御し、露光パターンF3に対応する部分のマイクロミラー8aを作動させる。図8では、露光パターンF3に対応するマイクロミラー8aの反射パターンP3を塗りつぶして示している。この状態で中央領域Cに対して露光を行うことで、微細な露光パターンF3を形成することができる。
【0057】
次に、制御装置CONTは、周縁領域Dを露光する。周縁領域Dを露光する場合、制御装置CONTは、開口絞り6の開口数を調整する。具体的には、制御装置CONTは、開口数調整部6cによって開口部6aの面積を小さくして焦点深度を深くさせる。その後、制御装置CONTは、図9に示すように、光変調素子8のマイクロミラー8aを制御し、露光パターンF4に対応する部分のマイクロミラー8aを作動させる。図9では、露光パターンF4に対応するマイクロミラー8aの反射パターンP4を黒色で塗りつぶして示している。
【0058】
露光パターンF4の形成時においては、露光パターンF2の形成時に比べて開口絞り6の開口部6aの面積が小さくなるため、焦点深度は深くなっているが、解像度は小さくなっている。一方、露光パターンF4は露光パターンF3に比べて太く粗めのパターンであるため、露光精度上の問題は特に生じずに済むことになる。逆に、基板Sの平面度不良などの問題によりぼやけた状態で露光パターンF4が形成されるのを防ぐことができる。
【0059】
このように、本実施形態では、一の平面内に設けられた中央領域Cと周縁領域Dとを露光するに当たり、投影光学系PLの開口数を調整することにより、露光不良を防ぐことができ、歩留まりの向上を図ることができる。なお、本実施形態では、中央領域Cと周縁領域Dとを区分する構成であったが、これに限られることは無い。
【0060】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、基板Sの表面Saの形状に関する形状関連データを記憶する記憶部が制御装置CONTに設けられており、開口数調整部6cが当該形状関連データに基づいて開口数を調整する構成であっても構わない。これにより、効率的に露光処理を行うことができるため、スループットの向上につながる。
【0061】
なお、本発明は、露光装置の他にも、光学系を介して処理対象物に光を照射する処理装置に適用可能である。このような処理装置の一例として、レーザ加工装置が挙げられる。
【0062】
なお、本発明は、マスクレス方式の露光装置の他に、マスクと基板とを同期移動してマスクのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)、マスクと基板とを静止した状態でマスクのパターンを一括露光し、基板を順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
【0063】
さらに、ステップ・アンド・リピート方式の露光において、第一パターンと基板とをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第一パターンの縮小像を基板上に転写した後、第二パターンと基板とをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第二パターンの縮小像を第一パターンと部分的に重ねて基板上に一括露光してもよい(スティッチ方式の一括露光装置)。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板を順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
【0064】
本発明は、例えば米国特許第6611316号明細書に開示されているように、2つのパターンの像を投影光学系を介して基板上で合成し、1回の走査露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などに適用することができる。また、本発明は、プロキシミティ方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナーなどにも適用することができる。
【0065】
本発明は、複数の基板ステージと計測ステージとを備えた露光装置にも適用することができる。
【0066】
本発明は、MEMSの他、基板に半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0067】
本発明において、レーザ干渉計を含む干渉計システムを用いて各ステージの位置情報を計測し、その計測結果を基板の位置の管理等に用いることもできる。また、レーザ干渉計を含む干渉計システムの他に、例えば基板ステージに設けられるスケール(回折格子)を検出するエンコーダシステムを用いてもよい。
【0068】
本発明は、例えば国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞を基板上に形成することによって、基板上にライン・アンド・スペースパターンを露光する露光装置(リソグラフィシステム)に、適用することができる。
【0069】
上述の実施形態の露光装置EXは、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。
【0070】
各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0071】
図10は、本実施形態のデバイス製造方法の一例を示す図である。本例では、ステップ201で、例えば液晶パネル等のデバイスの機能・性能設計を行う。ステップ202で、デバイスの設計に基づいて、マスク(レチクル)を製作する。マスクレス方式の露光装置を用いてデバイスを製造する場合には、ステップ202で、パターンの形状を例えば制御部の内部又は外部の記憶装置に登録する。ステップ203で、デバイスの基材である基板を準備しておく。ステップ204で、基板上にデバイスを構成する導電膜パターンや絶縁膜パターン、半導体膜パターン等の膜パターンを形成する。ステップ204は、基板上に膜を形成することと、この膜上にレジストパターンを形成することと、このレジストパターンをマスクにして上記膜をエッチングすることと、を含む。レジストパターンを形成するには、レジスト膜を形成することと、上記の実施形態に従って、露光光で基板を露光することにより形成予定の膜パターンに応じたパターンの像を基板上のレジスト膜に投影することと、露光されたレジスト膜を現像することと、を行う。ステップ205で、製造するデバイスに応じて、例えば基板をダイシングすることや、一対の基板を貼り合せるとともに一対の基板間に液晶層を形成すること等を行って、デバイスを組み立てる。ステップ206で、デバイスに検査等の後処理を行う。以上のようにして、デバイスを製造することができる。
【0072】
上述の各実施形態、各変形例の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態及び変形例で引用した露光装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0073】
EX…露光装置 PG…パターン生成装置 PL…投影光学系 ST…ステージ装置 IP…入力装置 CONT…制御装置 S…基板 EL…露光光 SL…検出光 PR…投影領域 ACT…ステージ駆動装置 Sa…表面 Sb…裏面 Sc…第一部分 Sf…第二部分 Sd…段差部 Se…傾斜面 F1〜F4…露光パターン P1〜P4…反射パターン A…上面 B…底面 C…中央領域 D…周縁領域 1…ステージ本体 1a…保持面 2…鏡筒 3…開口数調整部 4…露光用光源 5…コレクタレンズ 6a…開口部 6c…開口数調整部 7…リレーレンズ 8…光変調素子 8a…マイクロミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光光のパターンを対象面に転写する露光装置であって、
前記パターンを形成するパターン形成部と、
前記パターンを前記対象面に投影する投影光学系と、
前記対象面のうち前記パターンが投影される投影領域の前記露光光の光軸方向の形状に応じて前記投影光学系の開口数を調整する開口数調整部と
を備える露光装置。
【請求項2】
前記パターン形成部は、開口絞りを有し、
前記開口数調整部は、前記開口絞りを調整する
請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記対象面の形状に関する形状関連データを記憶する記憶部
を更に備え、
前記開口数調整部は、前記形状関連データに基づいて前記開口数を調整する
請求項1又は請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記開口数調整部は、
前記パターンが前記対象面のうち形状が一定である第一領域に投影される場合には前記開口数を第一開口数に調整し、
前記パターンが前記対象面のうち形状が変化する第二領域に投影される場合には前記開口数を前記第一開口数よりも小さい第二開口数に調整する
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記パターン生成部は、
複数の表示素子と、
複数の前記表示素子を個別に駆動する表示素子駆動部と
を有する
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項6】
露光光のパターンを対象面に転写する露光方法であって、
前記パターンを形成し、
形成した前記パターンを前記対象面に投影し、
前記対象面のうち前記パターンが投影される投影領域の形状に応じて前記投影光学系の開口数を調整する
露光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−137669(P2012−137669A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290982(P2010−290982)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】