説明

露光装置

【課題】露光量のばらつきがなく、かつタクト短縮が可能な露光装置を提供する。
【解決手段】基板101を載せるチャック110と、基板101に所望のパターンを転写するためのマスク102を保持するマスクホルダ120と、露光光用の光源131,132と、光源131,132からの露光光を開閉するシャッタ150とを有する露光装置において、シャッタ150は、露光光を通過させる開シャッタ板と、露光光を遮光する閉シャッタ板とを有し、開シャッタ板および閉シャッタ板は同一方向に移動し、移動する方向において閉シャッタ板は、開シャッタ板よりも寸法が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置やプリント基板、液晶基板等へのパターン形成に用いる露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置やプリント基板、液晶基板等へのパターン形成に用いる露光装置、特に露光量を調整するためのシャッタ機構については、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−67656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の露光装置において、露光量を調整するために2枚の遮光板を用いてシャッタ機構を構成し、該2枚の遮光板を交互に往復運動させることにより光路の開閉を行なっている。これにより、シャッタ板の占める面積を小さくし、かつ照射面における積算露光量を等しくすることが可能となっている。
【0005】
図3は従来のシャッタ機構の動作を説明するための図である。シャッタが閉まっているときは、図3(a)に示すように、シャッタ板151aにより露光光154が遮光されている。シャッタを開く場合には、図3(b)に示すようにシャッタ板151aが上方に移動し、図3(c)に示すように光照射面155に露光光154が照射される。このとき、まず照射面155のBの部分に光が照射され、シャッタ板151aが完全に開き終わったとき、照射面155のA部分に光が照射されることとなる。
【0006】
シャッタを閉じる場合には、図3(d)に示すように、シャッタ板151bが上方へ移動し、図3(e)に示すようにシャッタ板151bにより露光光154が遮光される。このとき、まず照射面のB部分が遮光され、シャッタ板151bが完全に露光光154を遮光するとき、遮光面A部分が遮光されることとなる。
【0007】
次にシャッタを開閉するときには、図3(e)→(d)→(c)→(b)→(a)の順序で動作させる。すなわち、図3で示したように、2枚のシャッタ板151a、151bを動作させることにより、シャッタ閉→シャッタ開→シャッタ閉の期間において照射面A部分とB部分の積算露光量が等しくなり、照射面全体の積算露光量を等しくすることができる。
【0008】
近年、基板の大型化に伴いステップ露光数が増加してきており、タクト短縮の要求が高まると考えられる。そこで、そのような要求に応えるためにシャッタの高速動作について検討を行なった。その結果、特にシャッタ板の閉動作時にシャッタ板がオーバーラップし、シャッタが一部開いて露光光が漏れることが判明した。そのため、基板の照射面上で露光量にムラが生じることが懸念された。
【0009】
特許文献1には、2枚のシャッタ板のそれぞれを冷却するための冷却ノズルを有するシャッタ機構が開示されている。しかしながら、シャッタ板を高速動作させたときの課題に関する教示や示唆はない。
【0010】
本発明の目的は、露光量のばらつきがなく、かつタクト短縮が可能な露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための一形態として、基板を載せるチャックと、前記基板に所望のパターンを転写するためのマスクを保持するマスクホルダと、露光光用の光源と、前記光源からの露光光を開閉するシャッタとを有する露光装置において、前記シャッタは、前記露光光を通過させる開シャッタ板と、前記露光光を遮断する閉シャッタ板と、を有し、前記開シャッタ板および前記閉シャッタ板は同一方向に移動し、移動する方向において前記閉シャッタ板は、前記開シャッタ板よりも寸法が大きいことを特徴とする露光装置とする。
【発明の効果】
【0012】
移動方向を同一方向にすることで方向による露光量のばらつきがなく、かつ従来と同じモータ容量でありながらタクトを約3割短縮可能な露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例に係る露光装置の概略構成図である。
【図2A】実施例に係る露光装置のシャッタ機構の概略構成を示す外観図である。
【図2B】実施例に係る露光装置のシャッタ機構の概略構成を示す外観図である。
【図3】従来のシャッタの動作説明図である。
【図4】実施例に係るシャッタの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施例で詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
第1の実施例について、図1、図2A、図2B及び図4を用いて説明する。図1は、本実施例に係る露光装置の概略構成図である。本実施例においては、マスクと基板との間に微小な間隙(プロキシミティギャップ)を設けてマスクのパターンを基板へ転写するプロキシミティ露光装置の例を示している。
【0016】
本露光装置は、ベース103、Xガイド104、Xステージ105、Yガイド106、Yステージ107、θステージ108、Z−チルト機構109、チャック110、マスクホルダ120、及び露光光照射装置130を含んで構成されている。なお、本露光装置は、これらの他に、基板101を搬入する搬入ユニット、基板101を搬出する搬出ユニット、装置内の温度管理を行なう温度制御ユニット等(図示せず)を備えている。
【0017】
図1において、チャック110は、基板101の露光を行なう露光位置にある。露光位置の上方には、マスクホルダ120によってマスク102が保持されている。基板101は、露光位置から離れた受渡し位置において、図示しない搬入ユニットによりチャック110へ搭載され、また図示しない搬出ユニットによりチャック110から回収される。
【0018】
チャック110は、Z−チルト機構109を介してθステージ108に搭載されており、θステージ108の下にはYステージ107及びXステージ105が設けられている。Xステージ105は、ベース103に設けられたXガイド104に沿ってX方向(図面横方向)へ移動する。Xステージ105のX方向への移動によって、チャック110は受渡し位置と露光位置との間を移動する。Yステージ107は、Xステージ105に設けられたYガイド106に沿ってY方向(図面奥行き方向)へ移動する。θステージ108はθ方向へ回転し、Z−チルト機構109はZ方向(図面縦方向)へ移動及びチルトする。
【0019】
露光装置において、Xステージ105のX方向への移動、Yステージ107のY方向への移動、及びθステージ108のθ方向への回転によって、基板101の位置決めが行われる。また、Z−チルト機構109のZ方向への移動及びチルトによって、マスク102と基板101とのギャップ制御が行なわれる。
【0020】
マスクホルダ120の上方には、露光光照射装置130が設けられている。露光光照射装置130は、ランプ131、集光鏡132、第1平面鏡133、レンズ134、シャッタ150、コリメータレンズ136、第2平面鏡137、電源138、ランプハウス139及び排気ファン140を含んで構成されている。
【0021】
次に、本露光装置を用いて露光を行なう手順について説明する。まず、搬送ユニットにより運ばれてきた基板101は、チャック110へ受け渡される。次に、θステージの回転によりチャック110に保持された基板101は、直交する二辺がX方向及びY方向へ向くように回転される。
【0022】
次に、Xステージ105とYステージ107を駆動してマスク102の下方へ基板101を移動し、マスク102と基板101との位置合わせが行われる。その後、露光光照射装置130によりマスクパターンが基板101に露光される。露光時間はシャッタ150の開閉時間により調整される。例えば、基板101の領域がマスク102の領域の4倍であれば、基板101は4回露光される。所望パターン露光後、この基板は搬送ユニットによりチャック110から取外され、搬送される。
【0023】
以上は全て制御装置(図示せず)を用いて処理される。
【0024】
次に、シャッタ150について説明する。図2A、図2Bは、本実施例に係るシャッタ機構の概略構成を示す外観図であり、図2Aはシャッタ150が閉の状態、図2Bはシャッタ150が開の状態を示す。図2A、図2Bにおいて、符号151a、151bはシャッタ板であり、シャッタ板151a、151bは、それぞれのシャッタ板取付け部材を介してスライダ152a、152bに取り付けられている。
【0025】
スライダ152a、152bはリニアサーボモータ等から構成される移動ガイド153に対して移動可能に取り付けられており、シャッタ板151a、151b及びスライダ152a、152bは図2A、図2Bの矢印Lで示す範囲内で示す範囲内で移動可能である。
【0026】
なお、シャッタ板151bはシャッタ板151aよりも縦方向の寸法が大きい(シャッタ板が縦方向に移動する場合)。これにより、シャッタ閉の時にシャッタ板151bを高速動作させてもシャッタ板のオーバーラップによる露光光の光漏れを防ぐことができる。シャッタ板151a、151bの寸法が異なっても重量を同じにしておくことにより、同一の特性を有するリニアサーボモータを用いてシャッタ板の移動速度を調整することができる。寸法に応じてシャッタ板の重さが変わる場合には、シャッタ板151aに用いるリニアサーボモータを、シャッタ板151bに用いるものよりも小型化できる。
【0027】
次に、本実施例のシャッタ機構の動作を、図4(a)〜(e)を用いて説明する。図4(a)はシャッタが閉の状態を示しており、図示しない光照射源から射出される露光光154がシャッタ板151aにより遮光されている。このときのシャッタ板151a、151bの位置関係は、距離Xだけ重なり合った状態(オーバーラップ)となっている。
【0028】
シャッタを開くにはリニアサーボモータを駆動することによりスライダ152aに接続されたシャッタ板151aが移動ガイド153に添って上方に移動する(図4(b))。シャッタ板151aが移動するにつれ、光照射面155のD部からC部へ向けて光の照射領域が広がる。シャッタ板151aの停止位置はリニアサーボモータのドライバ(図示せず)の登録座標によって決まり、シャッタ板151aは図2Bの実線で示す位置まで移動して停止する。これにより、シャッタは開状態となり、露光光154がシャッタ機構を通過する(図4(c))。
【0029】
次いでシャッタを閉じるには、上記と同様リニアサーボモータを駆動することによりスライダ152bに接続されたシャッタ板151bが移動ガイド153に添って上方へ移動する(図4(d))。移動距離は開シャッタ板151aと同じとなるように設定される。シャッタ板151bが移動するにつれ、光照射面155のD部からC部へ向けて光の照射領域が狭まる。なお、シャッタ板151bは、シャッタ板151aとオーバーラップして露光光が漏れない寸法を有する。露光光154の照射領域(光照射面155)ではシャッタ151bは最高速で動作する。シャッタ151bの減速区間では光照射面155に対する露光光を常時遮光している為、動作時間に含まれないため従来に比べタクトを約3割アップすることができる。
【0030】
シャッタ板151bの上方移動により、シャッタは閉状態となり、露光光154はシャッタ板151bにより遮光される(図4(e))。このときシャッタ板151a、151bの位置関係は、距離Xだけ重なり合った状態(オーバーラップ)となっており、この状態のまま初期のシャッタ閉状態(図4(a))へ移動する(巻き戻し動作)。なお、距離Xの好適な値は15mm以上である。15mmより小さいと図4(e)から図4(a)へのシャッタ移動の際、露光光が漏れる恐れがある。
【0031】
次にシャッタを開閉するには、上記と同様の手順、すなわち、図4(a)→(b)→(c)→(d)→(e)の順序でシャッタ板151a、151bを移動させる。
【0032】
本実施例においては、上記のようにシャッタ板151a、151bを同一方向に移動させてシャッタの開閉を行なっているので、従来の交互シャッタ開閉に比べシャッタ板の動作方向による露光量のばらつきを抑制することができる。なお、本実施例では、シャッタ板151a、151bの移動方向を上下方向としたが、シャッタ板の移動方向は上下、左右のいずれでもよく、装置の高さ方向、横方向の制約条件により、取付け方向を適宜選択することができる。また、閉動作用シャッタ板151bはオーバーラップ分を見込んでシャッタの移動方向の寸法(上下方向の移動なら高さ方向の寸法、左右方向の移動なら横方向の寸法)を拡大することでシャッタ板を最高速で開口部を通過させることができ、シャッタ板減速区間は、開口部を通過した後になり、露光動作時間に含まれないため、従来のタクトより約3割短縮することができる。
【0033】
以上、本実施例によれば、移動方向を同一にすることで方向による露光量のばらつきがなく、かつ従来と同じモータ容量でありながらタクトを約3割短縮が可能な露光装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0034】
101…基板、
102…マスク、
103…ベース、
104…Xガイド、
105…Xステージ、
106…Yガイド、
107…Yステージ、
108…θステージ、
109…Z−チルト機構、
110…チャック、
120…マスクホルダ、
130…露光光照射装置、
131…ランプ、
132…集光鏡、
133…第1平面鏡、
134…レンズ、
136…コリメータレンズ、
137…第2平面鏡、
138…電源、
139…ランプハウス、
140…排気ファン、
150…シャッタ、
151a、151b…シャッタ板、
152a、152b…スライダ、
153…移動ガイド、
154…露光光、
155…光照射面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載せるチャックと、前記基板に所望のパターンを転写するためのマスクを保持するマスクホルダと、露光光用の光源と、前記光源からの露光光を開閉するシャッタとを有する露光装置において、
前記シャッタは、
前記露光光を通過させる開シャッタ板と、
前記露光光を遮断する閉シャッタ板と、を有し、
前記開シャッタ板および前記閉シャッタ板は同一方向に移動し、移動する方向において前記閉シャッタ板は、前記開シャッタ板よりも寸法が大きいことを特徴とする露光装置。
【請求項2】
請求項1記載の露光装置において、
前記閉シャッタ板の寸法は、前記閉シャッタの移動時に前記開シャッタとのオーバーラップを見込んだ大きさであることを特徴とする露光装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の露光装置において、
前記開シャッタ板および前記閉シャッタ板は、直線的に移動することを特徴とする露光装置。
【請求項4】
請求項3に記載の露光装置において、
前記開シャッタ板および前記閉シャッタ板は、垂直方向に移動することを特徴とする露光装置。
【請求項5】
請求項3に記載の露光装置において、
前記開シャッタ板および前記閉シャッタ板は、水平方向に移動することを特徴とする露光装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記シャッタが閉の際、前記開シャッタ板および前記閉シャッタ板は、部分的に重なって配置されていることを特徴とする露光装置。
【請求項7】
請求項6記載の露光装置において、
前記シャッタの開閉後、前記開シャッタ板および前記閉シャッタ板は、部分的に重なって配置された状態で前記シャッタの開閉前の位置に戻るように巻き戻し動作することを特徴とする露光装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の露光装置において、
前記閉シャッタ板の移動距離は、前記開シャッタ板の移動距離と同じになるように設定されることを特徴とする露光装置。
【請求項9】
基板を載せるチャックと、前記基板に所望のパターンを転写するためのマスクを保持するマスクホルダと、露光光用の光源と、前記光源からの露光光を開閉するシャッタとを有する露光装置において、
前記シャッタは、
前記露光光を通過させる開シャッタ板と、
前記露光光を遮断する閉シャッタ板と、を有し、
前記開シャッタ板および前記閉シャッタ板は同一方向に移動し、移動する方向において前記閉シャッタ板は、前記開シャッタ板よりも寸法が大きく、
前記閉シャッタ板は移動の際1部が前記開シャッタ板とオーバーラップするものであることを特徴とする露光装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−108934(P2011−108934A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264105(P2009−264105)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】